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特開2023-163311流量測定装置、流量測定方法および流量制御装置の校正方法
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  • 特開-流量測定装置、流量測定方法および流量制御装置の校正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163311
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】流量測定装置、流量測定方法および流量制御装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/34 20060101AFI20231102BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G01F1/34
G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074129
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【テーマコード(参考)】
2F030
5H307
【Fターム(参考)】
2F030CA04
2F030CC11
2F030CD01
2F030CD15
2F030CE04
2F030CF08
5H307AA02
5H307BB01
5H307CC11
5H307DD01
5H307EE02
5H307ES02
5H307FF03
5H307FF12
5H307FF15
5H307HH12
(57)【要約】
【課題】 流量制御装置によって制御されたガスの流量を短縮された時間で測定することができる流量測定装置を提供する。
【解決手段】 流量測定装置20は、流量制御装置10の下流側に設けられた下流バルブV0とガス使用装置との間の流路に接続されており、下流バルブの下流側の流路に連通するガス入口Ginと、排気系に連通するガス出口Goutと、ガス入口とガス出口との間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブAV1と、第1内蔵バルブとガス出口との間に設けられた第2内蔵バルブAV2と、第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定する第1圧力センサ21および第1温度センサ23と、第1内蔵バルブと第2内蔵バルブとの間の圧力および温度を測定する第2圧力センサ22および第2温度センサ24と、制御回路25とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流バルブと、前記下流バルブの下流側の流路に接続されたガス使用装置とを有するガス供給システムにおいて、前記下流バルブと前記ガス使用装置との間の流路に接続され、前記流量制御装置によって制御されたガスの流量を測定するように構成された流量測定装置であって、
前記下流バルブの下流側の流路に連通するガス入口と、
排気系に連通するガス出口と、
前記ガス入口とガス出口との間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブと、
前記第1内蔵バルブと前記ガス出口との間に設けられた第2内蔵バルブと、
前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定する第1圧力センサおよび第1温度センサと、
前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の圧力および温度を測定する第2圧力センサおよび第2温度センサと、
前記第1内蔵バルブ、前記第2内蔵バルブ、前記第1圧力センサ、前記第1温度センサ、前記第2圧力センサおよび前記第2温度センサに接続された制御回路と
を備え、
前記第1内蔵バルブを閉じた状態で、前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定することができるとともに、前記第1内蔵バルブの下流側の圧力および温度をも測定できるように構成されている、流量測定装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記下流バルブと前記第1内蔵バルブとが閉じられた状態で測定された前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとが閉じられた状態で測定された前記第1内蔵バルブの下流側のガス圧力Pと、前記下流バルブと前記第2内蔵バルブとが閉じられ前記第1内蔵バルブが開いた状態で測定された前記第1内蔵バルブの上流側または下流側の圧力Pとに基づいて流量を演算するように構成されている、請求項1に記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の流路に設けられた既知容積の容量拡大チャンバをさらに備える、請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記第1圧力センサおよび第1温度センサの上流側に設けられた第3内蔵バルブをさらに備える、請求項1または2に記載の流量測定装置。
【請求項5】
流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流バルブと、前記下流バルブの下流側の流路に接続されたガス使用装置とを有するガス供給システムにおいて、前記下流バルブと前記ガス使用装置との間の流路に接続され、前記流量制御装置によって制御されたガスの流量を測定するように構成された流量測定装置を用いて行う流量測定方法であって、
前記流量測定装置は、前記下流バルブの下流側の流路に連通するガス入口と、排気系に連通するガス出口と、前記ガス入口とガス出口との間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブと前記ガス出口との間に設けられた第2内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定する第1圧力センサおよび第1温度センサと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の圧力および温度を測定する第2圧力センサおよび第2温度センサとを備えており、
前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブを開いた状態で、前記流量制御装置によって制御された流量でガスを前記流量測定装置のガス入口からガス出口に流すステップと、
ガスが流れている状態において前記第1内蔵バルブを閉じてから所定時間経過後に前記下流バルブを閉じ、ビルドアップ後に前記下流バルブおよび前記第1内蔵バルブを閉じた封止状態における前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pを前記第1圧力センサを用いて測定するステップと、
前記第2内蔵バルブを閉じ、前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態における前記第1内蔵バルブの下流側のガス圧力Pを前記第2圧力センサを用いて測定するステップと、
前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブが閉じられた状態から、前記第1内蔵バルブのみを開いて前記下流バルブから前記第2内蔵バルブまでを連通させ、前記下流バルブおよび第2内蔵バルブを閉じた封止状態におけるガス圧力Pを、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサの少なくとも一方を用いて測定するステップと、
測定されたガス圧力P、ガス圧力P、ガス圧力Pに基づいてガス流量を演算により求めるステップと
を含む、流量測定方法。
【請求項6】
前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態または前記下流バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態の少なくともいずれかにおいて、前記第2温度センサを用いて前記第1内蔵バルブの下流側のガス温度Tcを測定するステップをさらに含み、
前記ガス圧力P、ガス圧力P、およびガス圧力Pに加えて、前記ガス温度Tcと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の容量の既知容積値Vcとに基づいて、ガス流量を演算する、請求項5に記載の流量測定方法。
【請求項7】
前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブを開いた状態で、前記流量制御装置によって制御された流量でガスを前記流量測定装置のガス入口からガス出口に流している状態から、前記下流バルブと前記第1内蔵バルブとを同時に閉じ、封止状態における前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pを前記第1圧力センサを用いて測定するステップをさらに含み、
前記ガス圧力P、ガス圧力P、およびガス圧力Pに加えて、前記ガス圧力Pにも基づいてガス流量を演算する、請求項5または6に記載の流量測定方法。
【請求項8】
前記ガス圧力Pを前記第2圧力センサを用いて測定するステップは、ビルドアップを行うために前記第1内蔵バルブを閉じている期間中に、前記第1内蔵バルブの下流側が排気されている状態から前記第2内蔵バルブを閉じ、その後の前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態における圧力Pを測定するステップを含む、請求項5または6に記載の流量測定方法。
【請求項9】
請求項5または6に記載の流量測定方法に従って、前記流量制御装置が制御したガスの流量を前記流量測定装置を用いて測定するステップと、
測定された流量と、前記流量制御装置が出力する流量とを比較するステップと、
前記比較するステップにおける比較結果に基づいて、前記流量制御装置を校正するステップと
を含む、流量制御装置の校正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備、薬品製造装置又は化学プラント等で使用される流量制御装置が制御したガスの流量を測定するための流量測定装置、流量測定方法およびこれらを用いた流量制御装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造設備又は化学プラント等において、プロセスチャンバなどのガス使用装置にガスを適切な流量で供給することが要求される。ガス流量の制御装置としては、マスフローコントローラ(熱式質量流量制御装置)や圧力式流量制御装置が知られている。
【0003】
流量制御装置において、流量は高精度で管理する必要があり、随時、流量精度の確認や流量制御装置の校正を行うことが好ましい。流量制御装置が制御したガスの流量を測定するための流量測定方法として、例えばビルドアップ法が知られている。ビルドアップ法は、既知容量(ビルドアップ容量)の内部に流れ込むガスの圧力の変化を検出することによって流量を測定する方法である。
【0004】
ビルドアップ法は、流量制御装置の下流に設けられた既知容積(V)の配管内又はタンク内にガスを流し、そのときのガス圧力上昇率(ΔP/Δt)とガス温度(T)とを測定することによって、高価な流量基準器の接続を必要とせずに、正確に流量を求めることができる方法である。より具体的には、ビルドアップ法では、気体定数をRとしたとき、例えば、Q=22.4×(ΔP/Δt)×V/RTに従って流量Qを求めることができる。
【0005】
特許文献1には、ガス供給システムに組み込まれた流量制御装置の下流側に流量基準器としての流量測定装置を接続し、これを用いてビルドアップ法による流量測定を行う方法が開示されている。この方法では、流量測定装置が有するタンク内に流量制御装置からのガスを流入させ、タンク内での圧力上昇率を測定することによって流量を測定する。このようにして流量測定を行うことによって、流量制御装置の流量精度をいつでも確認することができるので、精度が低下しているときには流量制御装置を校正し、長期間にわたって信頼性の高い流量制御装置を提供することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2012/014375号
【特許文献2】国際公開第2018/147354号
【特許文献3】特開2019-120617号公報
【特許文献4】国際公開第2020/026784号
【特許文献5】特開2021-21677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、種々のガスの供給のために、流量制御装置が設けられた複数のガス供給ラインが共通ラインを介してプロセスチャンバに接続されている。ただし、複数の流量制御装置が接続されているガス供給システムにおいては、各流量制御装置から流量測定装置までの配管径の違いなどによって、ガスの流れや圧力損失のライン依存性が生じる場合がある。その結果、ビルドアップ法による流量測定を行ったときに、測定対象とする流量制御装置によって測定精度に差が生じることが起こり得る。
【0008】
これに対し、特許文献2には、流量制御装置の下流側の下流バルブと流量測定装置内のバルブとを同時に閉鎖した後のガス封止状態における圧力測定値を用いて、ビルドアップ法における測定流量を補正して、ライン依存性を低減する技術が記載されている。
【0009】
また、多数のガス供給ラインが設けられているガス供給系において、ビルドアップ容量の一部として用いられる配管は、長いものでは10mを超えることもある。そして、このような長い配管においては、温度分布が生じていることが多い。特に最近は高温ガスを扱う用途も増えてきており、流量制御装置からプロセスチャンバまでの配管がヒータによって比較的高温に加熱されていることがあり、配管温度や環境温度が場所によって異なるものとなりやすい。このように、配管全体の温度の詳細が確認できていないと、ビルドアップ法による流量測定を行ったときに、ビルドアップ容量の温度が把握できず、ガスの流量を正確に求めることが困難になるという問題がある。
【0010】
さらに、多数のガス供給ラインが設けられているガス供給系は、ライン数や配管設計が用途によって様々であり、また、使用の途中で構成が変更されることもあり、ビルドアップ容量として用いられる配管の総容積を誤差なく特定することが容易ではない。現実的には、配管寸法や流路構成に基づいて配管の総容積を正確に求めることは相当に困難である。
【0011】
このような問題に対して、特許文献3および特許文献4には、ビルドアップ流量測定中の配管部分における温度や容積値の実態が判別できないときにも、流量測定を正確に行うことができる流量測定装置が開示されている。
【0012】
図7および図8は、特許文献3および特許文献4に記載のものと同様の構成を有する従来の流量測定装置90を用いて行う、ビルドアップ法を利用した従来の流量測定方法を説明するための図である。なお、図7(a)には、簡単のため、測定対象の1つのガス供給ラインのみが示されているが、実際には配管5aに対して複数のガス供給ラインが接続されており、各ガス供給ラインにおいて流量制御装置や下流バルブV0が設けられている。
【0013】
図7(a)に示すように、ガス供給システムにおいて、従来の流量測定装置90は、流量制御装置10および下流バルブV0の下流側の配管5aに接続されている。また、流量測定装置90の下流側は、遮断弁V4を介して真空ポンプなどが設けられた排気系に接続されている。
【0014】
流量測定装置90は、ビルドアップ用の第1内蔵バルブAV1’と、その上流側の第2内蔵バルブAV2’と、これらの間のガス圧力を測定する2つの圧力センサ91a、91bと、温度センサ93とを備えている。2つの圧力センサ91a、91bは、圧力測定域の異なる大流量用圧力センサ91a(例えば定格100Torr)と小流量用圧力センサ91b(例えば定格20Torr)であり、流量またはビルドアップ圧力に応じていずれかの圧力センサの出力が用いられる。ただし、これに限られず、圧力センサは1つだけであっても良いし、正確性を高めるために設けられた同規格の2の圧力センサが搭載されていてもよい。
【0015】
流量測定装置90が、特許文献1等に記載の過去の流量測定装置と異なる点は、上流側の第2内蔵バルブAV2’を備えるとともに、第2内蔵バルブAV2’から第1内蔵バルブAV1’までの流路の容積Vbが予め正確に求められている点である。流量測定装置90は、第2内蔵バルブAV2’を用いて後述する分圧法を実施することによって、配管5aにおけるガス温度および容積の測定値を必要とせずに、ビルドアップ法による流量測定をより正確に実行することができるように構成されている。
【0016】
流量測定装置90内の第2内蔵バルブAV2’から第1内蔵バルブAV1’までの流路(以下、内部容量と称することがある)の容積Vbを測定する方法は、例えば特許文献5に記載されている。流量測定装置90の容積Vbは、ガス供給システムに接続する前に予め測定し、装置内のメモリに格納しておくことが可能である。容積Vbとしては、一定値だけでなく、特許文献4および5に開示されているように、流量測定時の環境温度やビルドアップ後の圧力の大きさ(ダイヤフラム変形による圧力センサ内部の容積変化)に応じて異なる値が用いられてもよい。
【0017】
図7(b)は、流量測定装置90を用いて行う流量測定手順を示す。図7(b)には、圧力センサ91a、91bによって測定される装置内ガス圧力Pとともに、下流バルブV0、第1内蔵バルブAV1’、第2内蔵バルブAV2’および下流側の遮断弁V4の開閉動作が示されている。なお、流量測定のためには遮断弁V4は必ずしも設けられていなくても良い。
【0018】
まず、流量測定精度のライン依存性を抑制するために、流量制御装置10が制御した流量でガスが流量測定装置90を流れている状態から、下流バルブV0および第1内蔵バルブAV1’を同時に閉じることによって、同時封止時圧力Pが測定される。
【0019】
次に、同様に制御流量でガスが流量測定装置90を流れている状態から、まず流量測定装置90の内部の第1内蔵バルブAV1’のみを閉じることによって、配管5aおよび内部容量(第2内蔵バルブAV2’から第1内蔵バルブAV1’までの流路)を含むビルドアップ容量内にガスを貯めていく。このようにしてビルドアップを行うことによって、ガス圧力Pは時間とともに線形的に増加する。
【0020】
そして、ビルドアップ時間Δtが経過した後に、流量制御装置10側の下流バルブV0を閉じ、圧力が安定した状態で、ビルドアップ後の圧力Pを測定する。ここで、本例では、上記のライン依存性を抑制するための同時封止時圧力Pを用いて流量測定を行うので、特許文献2から4に記載されているように、ビルドアップ圧力ΔPとしてΔP=(P-P)の値が用いられ、これによって、ライン依存性が排除されたうえで、流量演算に必要な圧力増加率(ΔP/Δt)を得ることができる。
【0021】
なお、圧力増加率(ΔP/Δt)は、上記のように所定のビルドアップ時間Δtが経過した後の圧力Pの測定によって得てもよいし、ビルドアップ後に圧力Pが所定圧力Pに達するまでのビルドアップ時間Δtを計測することによって得てもよい。
【0022】
そして、流量測定装置90では、配管5aの温度不明瞭による測定精度の低下を防止するために、分圧法によって、流量測定中の配管の温度Taおよび容積値Vaを、測定可能な流量測定装置90内の温度Tbおよび容積値Vbを用いて記述できるようにし、これによって、温度の影響を受けにくい流量測定を実現している。
【0023】
具体的には、ビルドアップ後に下流バルブV0および第1内蔵バルブAV1’が閉じられ、これらの間の圧力がPに維持された状態(図8(a)参照)から、第2内蔵バルブAV2’が閉じられる。そして、その上流側の圧力をPに維持したまま、第1内蔵バルブAV1’を一時的に開いて、第2内蔵バルブAV2’の下流側のガスを排気して圧力を低下させる。なお、遮断弁V4が設けられている場合には、これも開いた状態に維持するか、または、ビルドアップ後の封止時にこれが閉じられている場合には開状態に変更する。
【0024】
これによって、図8(b)に示す様に、第2内蔵バルブAV2’の下流側の圧力はPからPへと低下する。なお、圧力Pへ低下は、第1内蔵バルブAV1’の一時的開放時間を指定して行っても良いし、圧力Pを監視して所定圧力に達した時点で第1内蔵バルブAV1’を閉じるようにして行ってもよい。
【0025】
そして、第1内蔵バルブAV1’が閉じられた後は、第2内蔵バルブAV2’の上流側は圧力Pに維持され、第2内蔵バルブAV2’の下流側は圧力Pに維持された状態が実現される。その後、下流バルブV0および第1内蔵バルブAV1’を閉じたまま、第2内蔵バルブAV2’を開くことによって、上流側の圧力Pと下流側の圧力Pとの圧力差を解消させる。これによって、図8(c)に示す様に、下流バルブV0から第1内蔵バルブAV1’までのビルドアップ容量全体内が圧力Pに均一化される。
【0026】
ここで、下流バルブV0と第1内蔵バルブAV1’とが閉じたままであるので、第2内蔵バルブAV2’を開く前と、開いた後とで、下流バルブV0と第1内蔵バルブAV1’との間のガス物質量の総量は同じである。したがって、ボイル・シャルルの法則を適用すると、以下の式が得られる。
・Va/Ta+P・Vb/Tb=P・Va/Ta+P・Vb/Tb
【0027】
上記式において、Vaは配管5aの容積値であり、Taは配管5aにおけるガス温度であり、Vbは流量測定装置内の内部容量の容積値であり、Tbは温度センサ93が測定可能な内部容量のガス温度である。なお、上記式では、実際の環境に基づき、流量測定装置90におけるP測定時とP測定時とで温度Taおよび温度Tbはそれぞれ変化しないものと仮定している。
【0028】
また、上記式を整理すると、(P-P)Va・Tb=(P-P)Vb・Taから、Va/Ta=(P-P)/(P-P)×Vb/Tbが導かれる。すなわち、Va/Taは、分圧法を利用することによって、Vb/TbおよびP、P、Pを用いて記述することができる。
【0029】
一方、ビルドアップ法において、流量Qは、容積Vを有するビルドアップ容量に流れ込んだガスの物質量増加率Δn/Δtに対応する。ここで、Δnaをビルドアップ中に配管5aで増加したガスの物質量とし、Δnbをビルドアップ中に流量測定装置の内部容量で増加したガス物質量として、気体の状態方程式を適用すると、体積換算した流量Q(sccm)は以下の式で表される。
Q=22.4×Δn/Δt
=22.4×(Δna+Δnb)/Δt
=22.4×(ΔP・Va/R・Ta+ΔP・Vb/R・Tb)/Δt
=22.4×(ΔP/R・Δt)×(Va/Ta+Vb/Tb)
【0030】
上記式においてΔPは、ビルドアップによる圧力増加分(ここでは、ΔP=P-P)に対応し、Δtはビルドアップ時間(ビルドアップに要した時間)に対応する。なお、Rは気体定数であり、また、上記式は圧力の単位が(Pa)、温度の単位が(K)の場合を示している。圧力の単位が(Torr)の場合は、Q=(22.4/760)×(ΔP/RΔt)×(Va/Ta+Vb/Tb)で表される。
【0031】
そして、上述した分圧法によって、Va/Ta=(P-P)/(P-P)×Vb/Tbの関係が得られているので、体積流量Qは、Q=22.4×(ΔP/RΔt)×(Vb/Tb)×((P-P)/(P-P)+1)から求められる。このように、分圧法を適用すれば、測定値であるΔP(=P-P)/Δt、P、P、P、およびTb、ならびに、メモリから読みだされた既知の容積値Vbを用いて、配管5aの容積Vaおよびガス温度Taの測定を必要とせずに、ライン依存性および配管温度の影響を低減しながら流量Qを演算によって求めることができる。
【0032】
ただし、従来の流量測定装置90を用いたビルドアップ法では、分圧法を実施するために、第1内蔵バルブAV1’を閉じてのビルドアップ後に、下流バルブV0および第2内蔵バルブAV2’が閉じられる。さらにその後、第1内蔵バルブAV1’を一時的に開くことによって、第2内蔵バルブAV2’の上流側と下流側とで圧力Pと圧力Pとの圧力差を生じさせる必要がある。
【0033】
このため、上記の方法では、ライン依存性や温度影響を低減して精度の良い流量測定が行える一方で、比較的長い作業時間が必要になっていた。特に、上記の流量測定方法では、圧力および温度をガス安定状態で測定するために各封止状態においてある程度の待機時間が設けられており、このような待機を伴う複数回(上記例では4回)の封止工程を順々に繰り返して行う必要があることによって作業時間が長くなっていた。
【0034】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ビルドアップ法や分圧法を利用して高精度でありながらも比較的短い時間でガスの流量を測定することができる流量測定装置、流量測定方法およびそれらを用いた流量制御装置の校正方法を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の実施形態による流量測定装置は、流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流バルブと、前記下流バルブの下流側の流路に接続されたガス使用装置とを有するガス供給システムにおいて、前記下流バルブと前記ガス使用装置との間の流路に接続され、前記流量制御装置によって制御されたガスの流量を測定するように構成されており、前記下流バルブの下流側の流路に連通するガス入口と、排気系に連通するガス出口と、前記ガス入口とガス出口との間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブと前記ガス出口との間に設けられた第2内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定する第1圧力センサおよび第1温度センサと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の圧力および温度を測定する第2圧力センサおよび第2温度センサと、前記第1内蔵バルブ、前記第2内蔵バルブ、前記第1圧力センサ、前記第1温度センサ、前記第2圧力センサおよび前記第2温度センサに接続された制御回路とを備え、前記第1内蔵バルブを閉じた状態で、前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定することができるとともに、前記第1内蔵バルブの下流側の圧力および温度をも測定できるように構成されている。
【0036】
ある実施形態において、前記制御回路は、前記下流バルブと前記第1内蔵バルブとが閉じられた状態で測定された前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとが閉じられた状態で測定された前記第1内蔵バルブの下流側のガス圧力Pと、前記下流バルブと前記第2内蔵バルブとが閉じられ前記第1内蔵バルブが開いた状態で測定された前記第1内蔵バルブの上流側または下流側の圧力Pとに基づいて流量を演算するように構成されている。
【0037】
ある実施形態において、前記流量測定装置は、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の流路に設けられた既知容積の容量拡大チャンバをさらに備える。
【0038】
ある実施形態において、前記流量測定装置は、前記第1圧力センサおよび第1温度センサの上流側に設けられた第3内蔵バルブをさらに備える。
【0039】
本発明の実施形態による流量測定方法は、流量制御装置と、前記流量制御装置の下流側に設けられた下流バルブと、前記下流バルブの下流側の流路に接続されたガス使用装置とを有するガス供給システムにおいて、前記下流バルブと前記ガス使用装置との間の流路に接続され、前記流量制御装置によって制御されたガスの流量を測定するように構成された流量測定装置を用いて行う流量測定方法であって、前記流量測定装置は、前記下流バルブの下流側の流路に連通するガス入口と、排気系に連通するガス出口と、前記ガス入口とガス出口との間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブと前記ガス出口との間に設けられた第2内蔵バルブと、前記第1内蔵バルブの上流側の圧力および温度を測定する第1圧力センサおよび第1温度センサと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の圧力および温度を測定する第2圧力センサおよび第2温度センサとを備えており、前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブを開いた状態で、前記流量制御装置によって制御された流量でガスを前記流量測定装置のガス入口からガス出口に流すステップと、ガスが流れている状態において前記第1内蔵バルブを閉じてから所定時間経過後に前記下流バルブを閉じ、ビルドアップ後に前記下流バルブおよび前記第1内蔵バルブを閉じた封止状態における前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pを前記第1圧力センサを用いて測定するステップと、前記第2内蔵バルブを閉じ、前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態における前記第1内蔵バルブの下流側のガス圧力Pを前記第2圧力センサを用いて測定するステップと、前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブが閉じられた状態から、前記第1内蔵バルブのみを開いて前記下流バルブから前記第2内蔵バルブまでを連通させ、前記下流バルブおよび第2内蔵バルブを閉じた封止状態におけるガス圧力Pを、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサの少なくとも一方を用いて測定するステップと、前記測定されたガス圧力P、ガス圧力P、ガス圧力Pに基づいてガス流量を演算により求めるステップとを含む。
【0040】
ある実施形態において、前記流量測定方法は、前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態または前記下流バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態の少なくともいずれかにおいて、前記第2温度センサを用いて前記第1内蔵バルブの下流側のガス温度Tcを測定するステップをさらに含み、前記ガス圧力P、ガス圧力P、およびガス圧力Pに加えて、前記ガス温度Tcと、前記第1内蔵バルブと前記第2内蔵バルブとの間の容量の既知容積値Vcとに基づいて、ガス流量を演算する。
【0041】
ある実施形態において、前記流量測定方法は、前記下流バルブ、前記第1内蔵バルブ、および、前記第2内蔵バルブを開いた状態で、前記流量制御装置によって制御された流量でガスを前記流量測定装置のガス入口からガス出口に流している状態から、前記下流バルブと前記第1内蔵バルブとを同時に閉じ、封止状態における前記第1内蔵バルブの上流側のガス圧力Pを前記第1圧力センサを用いて測定するステップをさらに含み、前記ガス圧力P、ガス圧力P、およびガス圧力Pに加えて、前記ガス圧力Pにも基づいてガス流量を演算する。
【0042】
ある実施形態において、前記ガス圧力Pを前記第2圧力センサを用いて測定するステップは、ビルドアップを行うために前記第1内蔵バルブを閉じている期間中に、前記第1内蔵バルブの下流側が排気されている状態から前記第2内蔵バルブを閉じ、その後の前記第1内蔵バルブおよび前記第2内蔵バルブを閉じた封止状態における圧力Pを測定するステップを含む。
【0043】
本発明の実施形態による流量校正方法は、上記のいずれかの流量測定方法に従って、前記流量制御装置が制御したガスの流量を前記流量測定装置を用いて測定するステップと、前記測定された流量と、前記流量制御装置が出力する流量とを比較するステップと、前記比較するステップにおける比較結果に基づいて、前記流量制御装置を校正するステップとを含む。
【発明の効果】
【0044】
本発明の実施形態にかかる流量測定装置を用いれば、流量制御装置が制御したガスの流量を、比較的短い時間で精度よく測定することが可能であり、また、その測定結果に基づいて流量制御装置を校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の実施形態による流量測定装置が接続されたガス供給システムを示す模式図である。
図2図1に示した流量制御装置の具体構成例を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態による流量測定方法が実施される系における流量制御装置から流量測定装置までの構成例を示す模式図である。
図4】流量測定方法を実施するときの流量測定シーケンスを示す図であり、横軸を時間として、流量測定装置に設けられた圧力センサが測定する装置内ガス圧力P、および、下流バルブV0、第1内蔵バルブAV1、第2内蔵バルブAV2、第3内蔵バルブAV3の開閉動作を示す。
図5】実施形態の流量測定方法における分圧法の手順を説明するための図であり、(a)は、ビルドアップ後に、第1内蔵バルブAV1の上流側の封止空間と第1内蔵バルブAV1の下流側の封止空間とが異なる圧力に維持されている状態を示し、(b)は、その後に第1内蔵バルブAV1を開いて圧力差を解消している状態を示す。
図6】別の実施形態における流量制御装置から流量測定装置までの系の構成例を示す。
図7】従来の流量測定装置を用いて行う、ビルドアップ法を利用した従来の流量測定方法を説明するための図であり、(a)は流量制御装置から流量測定装置までの構成を示し、(b)は、横軸を時間として、流量測定装置に設けられた圧力センサが測定する装置内ガス圧力P、および、下流バルブV0、第1内蔵バルブAV1’、第2内蔵バルブAV2’、遮断弁V4の開閉動作を示す。
図8】従来の流量測定方法における分圧法の手順を示す図であり、(a)はビルドアップ後の封止状態を示し、(b)はその後に第2内蔵バルブAV2’を閉じるとともに第1内蔵バルブAV1’を開いて第2内蔵バルブAV2’の下流側を排気している状態を示し、(c)はその後に第1内蔵バルブAV1’を閉じるとともに第2内蔵バルブAV2’を開いて圧力差を解消している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
図1は、本発明の実施形態による流量測定装置20が接続されたガス供給システム100を示す。ガス供給システム100は、複数のガス供給ラインからのガスを、共通ラインに設けられた開閉弁4を介して半導体製造装置のプロセスチャンバ(ガス使用装置)6に供給できるように構成されている。プロセスチャンバ6には、真空ポンプ8が接続されており、チャンバ内およびこれに接続される流路を真空引きすることができる。流量測定装置20は、ガス供給システム100に対して着脱可能に接続されていてもよい。
【0048】
各ガス供給ラインには、ガス供給源2、流量制御装置10および下流バルブV0が設けられている。ガス供給源2からのガスは、流量制御装置10によって流量制御されたうえで、プロセスチャンバ6に供給される。ガス供給源2には、材料ガス、エッチングガス、パージガスなど、任意の種々のガスが貯蔵されている。下流バルブV0は、ガス供給を行うラインを切替えるために用いられ、各ラインの下流バルブV0の開閉を制御することによって、任意のガス種をプロセスチャンバ6に供給することができる。
【0049】
図2は、流量制御装置10の具体構成例を示す図である。本実施形態の流量測定方法を利用して校正される流量制御装置10の種類は特に限定されるものではないが、本実施形態では、流量制御装置10として公知の圧力式流量制御装置が用いられている。
【0050】
流量制御装置10は、微細開口を有する絞り部12と、絞り部12の上流側に設けられたコントロールバルブ14と、絞り部12とコントロールバルブ14との間に設けられた上流圧力センサ16および温度センサ17と、絞り部12の下流側に設けられた下流圧力センサ18とを備えている。他の態様において、下流圧力センサ18は設けられていなくても良い。また、上流圧力センサ16、温度センサ17、下流圧力センサ18は、ADコンバータを介して制御回路15のCPUに接続されており、制御回路15は各センサの出力に基づいて、コントロールバルブ14の開度を制御することができる。制御回路15には、ユーザが目標流量を入力するための外部装置19が接続されていてもよい。
【0051】
絞り部12としては、オリフィスプレート、臨界ノズルまたは音速ノズルなどが用いられる。オリフィスまたはノズルの径は、例えば10μm~2000μmに設定される。コントロールバルブ14としては、例えばピエゾ素子駆動型バルブが用いられる。ピエゾ素子駆動型バルブは、ピエゾ素子への印加電圧の制御によってダイヤフラム弁体の移動量を調節することができ、その開度を応答性良く任意に調節することができる。また、上流圧力センサ16、下流圧力センサ18としては、例えば、歪ゲージが設けられた感圧ダイヤフラムを有するシリコン単結晶製の圧力センサや、キャパシタンスマノメータが用いられる。また、温度センサ17としては、例えば、サーミスタや白金測温抵抗体が用いられる。
【0052】
流量制御装置10は、臨界膨張条件:PU/PD≧約2を満たすとき、流量Qは下流圧力PDによらず上流圧力PUによって決まるという原理を利用して流量制御を行う。ここで、PUは絞り部上流側のガス圧力(上流圧力)であり、PDは絞り部下流側のガス圧力(下流圧力)であり、約2は窒素ガスの場合である。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部下流側の流量Qは、Q=K1・PU(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられる。また、下流圧力センサ18を備える場合、臨界膨張条件を満足しない場合であっても、測定された上流圧力PUおよび下流圧力PDに基づいて、Q=K2・PD(PU-PD)(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0053】
流量制御を行うために、設定流量が制御回路15に入力され、制御回路15は、圧力センサ42の出力などに基づいて、上記の式に従って流量Qを演算により求め、この流量が入力された設定流量に近づくようにコントロールバルブ14をフィードバック制御する。演算により求められた流量は、流量出力値として外部のモニタに表示されてもよい。
【0054】
ただし、圧力式の流量制御装置10では、使用により、絞り部12に詰まりが生じたり、腐食による開口拡大が生じたりすることが原因で、上流圧力PUと流量Qとの関係性(上記の定数K1や定数K2)が変化することがある。しかし、圧力式の流量制御装置10は、直接的に流量を測定できる機構を通常は有していないため、上記のような関係性の変化、特に絞り部12に異常が生じていたとしても、これを即座に検知することが困難である。
【0055】
これに対して、本実施形態では、後述するように、流量測定装置20を用いて実際の流量を測定し、この測定結果に基づいて、流量制御装置10を校正することができる。このため、圧力式の流量制御装置10であっても、絞り部12の状態変化に対応するように、上記の定数K1やK2を更新することで校正がなされ、流量制御装置10をガス供給システム100に組み込んだまま、正確な流量制御を継続的に長期間にわたって行うことができる。
【0056】
また、図2に示す例では、下流バルブV0が流量制御装置10の外部に設けられているが、下流バルブV0は、流量制御装置10の内部に組み込まれていても良い。下流バルブV0は、流量制御装置10の内部において、絞り部12と一体的に構成され、例えば国際公開第2018/021277号に記載されているようないわゆるオリフィス内蔵弁を構成していてもよい。この場合、流量制御されたガスがその下流に流れるオリフィスと下流バルブV0との間の容積が極めて小さく設計されるため、後述するビルドアップ容量にこの容積を含めなくても流量測定精度にほとんど影響しなくなる。また、流量制御装置10において、オリフィス内蔵弁の下流側に下流圧力センサ18を配置した場合、この下流圧力センサ18は、ビルドアップ流量測定時の流量測定装置20内の第1圧力センサ21の出力の確認に用いたり、第1圧力センサ21を代替できる可能性がある。
【0057】
再び図1を参照して流量測定装置20について説明する。流量制御装置10および下流バルブV0の下流側には、ビルドアップ法による流量測定を行うための流量測定装置20が接続されている。ガス供給システム100において、流量測定装置20は、下流バルブV0とプロセスチャンバ6との間の流路に接続されており、流量制御装置10によって制御されたガスの流量を測定するように構成されている。
【0058】
本実施形態では、流量測定装置20は、開閉弁5を介して、全ての流量制御装置10と連通できるようにガス供給路に接続されている。この構成において、流量測定装置20には、任意のラインから、流量制御装置10によって流量制御したガスを流すことができ、これにより、任意のガスラインを流れるガスの流量を測定することができる。流量測定装置20は、他の態様においてプロセスチャンバ6の手前の共通ガスラインの途中に設けられていてもよい。
【0059】
流量測定装置20の下流側は、真空ポンプ28が設けられた排気系に接続されている。なお、図1に示す態様では、プロセスチャンバ6に接続された真空ポンプ8とは別個の真空ポンプ28が設けられているが、これに限られない。真空ポンプ28を用意することなく、流量測定装置20の下流側は、プロセスチャンバ6に接続された真空ポンプ8が設けられた排気系に接続されていてもよい。ただしこの場合、プロセスチャンバ6からの排気と、流量測定装置20からの排気とを切替て行えるように各排気ラインに開閉弁が設けられていることが好適である。
【0060】
以下、流量測定装置20の具体的な構成について説明する。流量測定装置20は、下流バルブV0の下流側の流路に連通するガス入口Ginと、排気系に連通するガス出口Goutと、ガス入口Ginとガス出口Goutとの間の流路に設けられたビルドアップ用の第1内蔵バルブAV1と、第1内蔵バルブAV1とガス出口Goutとの間に設けられた第2内蔵バルブAV2とを備えている。
【0061】
また、図示する態様において、流量測定装置20は、第1圧力センサ21および第1温度センサ23の上流側に設けられた第3内蔵バルブAV3をさらに備えている。ただし、第3内蔵バルブAV3は、流量制御装置10をガス供給システム100に対して着脱する場合に必要となる可能性があるため設けられているが、後述する流量測定方法を実施するためには必ずしも必要ない。このため、流量測定装置20において、第3内蔵バルブAV3は省略し得る。
【0062】
流量測定装置20は、また、第1内蔵バルブAV1の上流側の圧力Pbおよび温度Tbを測定する第1圧力センサ21および第1温度センサ23と、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の圧力Pcおよび温度Tcを測定する第2圧力センサ22および第2温度センサ24とを備えている。流量測定装置20は、第1内蔵バルブAV1を閉じた状態で、第1内蔵バルブAV1の上流側の圧力Pbおよび温度Tbを測定することができるとともに、第1内蔵バルブAV1の下流側の圧力Pcおよび温度Tcをも測定できるように構成されている。
【0063】
第1内蔵バルブAV1、第2内蔵バルブAV2、第3内蔵バルブAV3、および流量制御装置10の近傍の下流バルブV0としては、応答性の高い開閉弁として、例えば、AOV(Air Operated Valve)が好適に用いられる。ただし、これに限られず、電磁弁、電動弁などの他の開閉弁を用いることもできる。また、第1圧力センサ21、第2圧力センサ22としては、例えば、キャパシタンスマノメータや、歪ゲージが設けられた感圧ダイヤフラムを有するシリコン単結晶製の圧力センサが好適に用いられる。また、第1温度センサ23、第2温度センサ24としては、例えば、サーミスタや白金測温抵抗体が用いられる。
【0064】
なお、図7(a)に示した流量測定装置90と同様に、流量測定装置20の第1圧力センサ21は、2基の第1圧力センサによって構成されていてもよい。この場合、一方が高圧用、他方が低圧用として機能する他、同レンジの圧力センサを用いれば、ダブルチェック用に使用することもできる。第1圧力センサ21の数は任意であってよい。同様に、第2圧力センサ22も任意目的のために任意の数だけ設けられていてよい。
【0065】
流量測定装置20は、さらに、第1内蔵バルブAV1、第2内蔵バルブAV2、第1圧力センサ21、第1温度センサ23、第2圧力センサ22および第2温度センサ24に接続された制御回路25を備えている。制御回路25は、典型的には、CPU、ROMやRAMなどのメモリ(記憶部)、A/Dコンバータ等を内蔵しており、後述する流量測定動作を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよく、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。
【0066】
制御回路25は、本実施形態では流量測定装置20に内蔵されているが、外部装置として設けられていてもよい。制御回路25は、下流バルブV0の開閉動作を示す信号に基づいて、第1内蔵バルブAV1および第2内蔵バルブAV2の動作を制御するように構成されていてもよいし、各センサの出力に基づいて下流バルブV0に対して開閉指示信号を出力するように構成されていてもよい。
【0067】
以上の構成を有する流量測定装置20において、第1内蔵バルブAV1は、後述するビルドアップ工程を行うときには必ず閉じられる、ビルドアップ用の開閉弁である。本実施形態において、ビルドアップ法による流量測定は、プロセスチャンバ6につながる流路に設けられた開閉弁4が閉じられ、流量測定装置20につながる配管5aに設けられた開閉弁5が開かれ、流量測定の対象となる流量制御装置10が設けられたガスラインの下流バルブV0だけが開かれ、その他のガスラインの下流バルブV0は閉じられた状態で、対象の流量制御装置10によって流量制御されたガスが流量測定装置20を流れている状態から開始される。
【0068】
本実施形態では、図1に太線で示した流路部分(流量制御装置10から流量測定装置20までの配管5aおよび流量測定装置20における第1内蔵バルブAV1の上流側流路)がビルドアップ容量を形成している。
【0069】
なお、ビルドアップ容量には、厳密には、流量制御装置10内の絞り部12と下流バルブV0との間の流路の容量も含まれる。ただし、この容量は、ビルドアップ容量全体に対しては少容量であるので、流量測定の際にはほとんど無視することができる。特に、絞り部12と下流バルブV0とが近接して設けられている場合(ここでは、ビルドアップ総容量に対して当該容量が0.1%以下の場合をいう)には測定精度を略低下させないものとして無視して扱うことができる。ただし、より正確な測定を行うために、当該容量の容積Vstおよびガス温度Tstに固定値を用いて、流量測定の際の演算式に組み入れても良い。容積Vstは設計から推定されるおおよその既知容積を用いれば十分であり、ガス温度Tstは例えば流量制御装置10が有する温度センサ17の出力で代用すれば十分である。いずれにせよ、下流バルブV0は、流量制御装置10に近接して配置されていることが好ましい。
【0070】
以下、図3図5を参照しながら、流量測定装置20を用いて行う流量測定方法について具体的に説明する。
【0071】
図3は、測定対象となっている流量制御装置10から流量測定装置20までの系を単純化して模式的に示す図である。図3において、この系における下流バルブV0と流量測定装置20の第3内蔵バルブAV3までの間のビルドアップ容量形成部分を、容積Vaを有する配管5a(ガス温度Ta)として示し、流量測定装置20内の第3内蔵バルブAV3と第1内蔵バルブAV1との間の流路(ビルドアップ容量形成部分)を容積Vbを有する第1内部容量として示し、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の流路を容積Vcを有する第2内部容量として示している。
【0072】
第1内部容量におけるガス圧力Pbおよびガス温度Tbはセンサを用いて常時測定可能であり、また、第2内部容量におけるガス圧力Pcおよびガス温度Tcもセンサを用いて常時測定可能である。一方で、配管5aの容積Vaは正確に求めることが容易ではなく、また、配管5aにおけるガス温度Taは温度分布が存在しているため測定が困難である。このため本実施形態の流量測定方法においても、ビルドアップ法を用いるとともに、分圧法も適用して、配管5aにおけるガス温度Taや容積Vaを用いずに流量を測定するようにしている。
【0073】
また、本実施形態において、流量測定装置20内の少なくとも第2内部容量の容積Vcは、ガス供給システム100に組み込む前に予め正確に測定されており、既知の容積Vcとして制御回路25のメモリなどに格納されている。前述の従来の流量測定装置90と同様に、容積Vcの予めの測定は、例えば、特許文献5に記載の方法を利用して出荷前などに行うことができる。容積Vcとしては、一定値だけでなく、流量測定時の環境温度やビルドアップ後の圧力の大きさ(ダイヤフラム変形による圧力センサ内部の容積変化)に対応する変動値が用いられてもよい。
【0074】
流量測定の手順において、まず、図4に示すように、時刻t1において、図示される全てのバルブが開かれ、流量測定装置20には、対象の流量制御装置10によって流量制御されたガスが定常流として流れている状態から開始される。なお、図4の圧力Pのグラフにおいて、実線は、第1圧力センサ21が示す圧力Pbを示し、破線は、第2圧力センサ22が示す圧力Pcを示し、二重線は、第1圧力センサ21が出力する圧力Pbと第2圧力センサ22が示す圧力Pcとが同じであることを示している。
【0075】
その後、時刻t2において、下流バルブV0と第1内蔵バルブAV1とが同時に閉じられ、時刻t2~時刻t3の封止状態(V0-AV1間)において、ライン依存性に対応する同時封止時圧力Pが第1圧力センサ21を用いて測定される。この同時封止時圧力Pの測定は、必ずしもビルドアップ工程の前に行われる必要はなく、ビルドアップ工程および分圧法適用工程の後に、ガスが定常流で流量測定装置20を流れる状態を形成した後で実行してもよい。
【0076】
その後、時刻t3において、下流バルブV0と第1内蔵バルブAV1とが開かれ、時刻t3~t4の間、流量測定装置20には、対象の流量制御装置10によって流量制御されたガスが定常流として再び流れる。
【0077】
その後、時刻t4において、ビルドアップ用の第1内蔵バルブAV1が閉じられることによって、容積Va+Vbを有するビルドアップ容量に、流量制御装置10から制御流量でのガスを流し込むビルドアップ工程が開始される。ビルドアップ工程は、時刻t4において第1内蔵バルブAV1が閉じられてから、所定のビルドアップ時間Δtが経過した時刻t5まで続けられる。このビルドアップ期間中、ビルドアップ容量内の圧力Pbは、時間に対して線形的に増加する。
【0078】
一方で、本実施形態では、時刻t4において第1内蔵バルブAV1が閉じられた後も、第2内蔵バルブAV2は開いたままであるので、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の第2内部容量からは、ガス出口Goutを介してガスが排気される。その結果、図4に示す様に、第2圧力センサ22が示す圧力Pcは、定常流で流れているときの圧力よりも低い圧力Pに低下する。図示する例において、圧力Pは、例えば、100Torr以下の真空圧であり、時刻t4の直後に急激に低下した後、第1内蔵バルブAV1が閉じられ、排気系に接続されている第2内蔵バルブAV2が開いた状態では、おおむね一定の真空圧に維持される。
【0079】
その後、時刻t5において、下流バルブV0を閉じることによって、ビルドアップ後の封止状態(V0-AV1間)が形成される。そして、封止状態においてガスの圧力および温度が落ち着いたところで、ビルドアップ後のガス圧力Pおよびガス温度Tbが測定される。
【0080】
また、時刻t6に達する前に、第2内蔵バルブAV2も閉じることによって、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間も封止状態となり、これらの間の圧力PcはPの値に維持される。なお、第2内蔵バルブAV2は、例えば、ビルドアップ完了時に下流バルブV0が閉じられる時刻t5において閉じられても良い。
【0081】
このようにして、ビルドアップ期間中に下流側を同時に減圧することによって、時刻t6において、すでに、第1内蔵バルブAV1の上流側の封止空間と、第1内蔵バルブAV1の下流側の封止空間とで圧力差が生じている分圧前の状態(図5(a))が形成される。また、各内部容積に対応する圧力センサおよび温度センサがそれぞれ設けられているので、この状態における各封止空間における圧力P、Pおよび温度Tb、Tcを測定することができる。
【0082】
したがって、従来の図7(b)に示したような、ビルドアップ後の封止状態の後に、第2内蔵バルブAV2’を閉じるとともに第1内蔵バルブAV1’を一時的開いて測定可能な低下圧力空間を形成し、その圧力測定を行う工程を省略することができる。これによって、流量測定に要する作業時間を短縮することができる。
【0083】
なお、上記には、時刻t4では第2内蔵バルブAV2を開いた状態に維持して第1内蔵バルブAV1の下流側を排気し、時刻t5以降に第2内蔵バルブAV2を閉じる態様を説明したがこれに限られない。例えば、時刻t4において、第1内蔵バルブAV1を閉じるのと同時にまたは直後に第2内蔵バルブAV2を閉じてもよい。この場合、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の圧力Pは、真空圧にまで低下せず、定常流を流しているときの圧力と同様の圧力に維持され得る。
【0084】
また、図4に示したビルドアップ開始時刻t4、すなわち、第1内蔵バルブAV1を閉じるよりも少し前に、第2内蔵バルブAV2を閉じることも可能である。第2内蔵バルブAV2を先に閉じることによって、第1内蔵バルブAV1の上流側および下流側の圧力は、同様に、線形的に上昇し始める。その途中で、正式なビルドアップ開始のために第1内蔵バルブAV1を閉じることによって、下流バルブV0と第1内蔵バルブAV1との間の容量を用いたビルドアップ法を行うことができる。
【0085】
この場合、第1内蔵バルブAV1を閉じた時点から下流バルブV0を閉じるまでのビルドアップ時間をΔtとし、この期間の圧力上昇幅をΔPとすると、圧力上昇率ΔP/Δtは、ΔP/Δt=(P-P)/Δtで与えられる。したがって、ビルドアップ法によって流量を求めることが可能である。また、先に第2内蔵バルブAV2を閉じておいても、分圧法の前に、第1内蔵バルブAV1の上流側の封止空間の圧力Pと、下流側の封止空間の圧力Pとを異ならせるものとすることができ、分圧法による流量補正を支障なく実行することができる。
【0086】
なお、上記のように第2内蔵バルブAV2を先に閉じたときには、正式なビルドアップ開始のために第1内蔵バルブAV1を閉じるまでの所定時間に上昇した圧力Pが、ライン依存性を反映したものであり得る。したがって、上記のように(P-P)/Δtを用いてビルドアップ流量を求める場合には、同時封止による圧力Pの測定工程を省略しながらも、ライン依存性を低減できる可能性がある。
【0087】
以上の説明からわかるように、第1内蔵バルブAV1を閉じてのビルドアップ開始が可能な限り、第2内蔵バルブAV2は、分圧法前の任意のタイミングで閉じられ得る。これに伴い、ビルドアップ後、分圧法前に一定に維持されている第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の圧力P(第2圧力センサ22によって測定される封止時圧力)は、ビルドアップ後の第1内蔵バルブAV1の上流側の圧力Pよりも小さい限り、任意の値を取り得る。
【0088】
その後、時刻t6において、下流バルブV0と第2内蔵バルブAV2とを閉状態に維持したまま、第1内蔵バルブAV1を開くことによって、図5(b)に示すように、圧力差が解消され、図4に示す時刻t7以降のように均一の圧力Pに維持される。この時、第1圧力センサ21および第2圧力センサ22の少なくともいずれかを用いて、圧力Pを測定することが可能であり、また、第1温度センサ23および第2温度センサ24を用いて、ガス温度Tbおよびガス温度Tcを測定することが可能である。
【0089】
そして、分圧の前後で、流量測定装置20が備える各センサを用いて、時刻t5~t6における第1内蔵バルブAV1上流側のガス圧力Pおよび第1内部容量におけるガス温度Tbと、時刻t5~t6における第1内蔵バルブAV1下流側の第2内部容量におけるガス圧力Pとおよびガス温度Tcと、時刻t7~t8におけるガス圧力Pおよびガス温度Tb、Tcとがそれぞれ測定値として得られる。
【0090】
ここで、本実施形態の流量測定方法においても、図5(a)および(b)のそれぞれの封止状態において、下流バルブV0と第2内蔵バルブAV2との間で、トータルのガス物質量は不変であるため、ボイル・シャルルの法則を適用すると、以下の関係式が得られる。
【数1】
【0091】
上記式において、Rはガス定数であり、VaおよびTaは、測定が困難である配管5aにおける容積値およびガス温度であり、その他のP、P、P、Tb、Tcは、上記の測定可能な圧力値および温度値である。また、この式においても、実際の環境を考慮して、図5(a)および(b)に示したそれぞれの状態で、各流路部分の温度Ta、Tb、Tcは不変で同じであるものと仮定している。
【0092】
そして、上記式を変形すると、以下の式が得られる。
【数2】
【数3】
【0093】
以上のことからわかるように、実際の測定が困難であるVa/Taは、測定によって得られた各圧力P、P、P、および温度Tb、Tcと、流量測定装置20内の第1内部容量の容積Vbおよび第2内部容量の容積Vcを用いて記述できることがわかる。
【0094】
そして、本測定方法においても、ビルドアップ法において求められる流量Qは、容積値V(=Va+Vb)を有するビルドアップ容量に流れ込んだガスの物質量増加率Δn/Δtに対応しているので、気体の状態方程式を適用すると、体積換算した流量Q(sccm)は以下の式によって表すことができる。
Q=22.4×Δn/Δt
=22.4×(ΔP・Va/R・Ta+ΔP・Vb/R・Tb)/Δt
=22.4×(ΔP/R・Δt)×(Va/Ta+Vb/Tb)
【0095】
上記式においてΔPは、ビルドアップによる圧力増加分(ここでは、ΔP=P-P)に対応し、Δtはビルドアップ時間(ビルドアップに要した時間)に対応する。なお、Rは気体定数であり、また、上記式は圧力の単位が(Pa)、温度の単位が(K)の場合を示している。圧力の単位が(Torr)の場合は、Q=(22.4/760)×(ΔP/RΔt)×(Va/Ta+Vb/Tb)と表される。
【0096】
そして、上述した分圧法によって、Va/Ta=(Vc/Tc)×(P-P)/(P-P)-Vb/Tbの関係が得られているので、これを代入すると、体積流量Qは、以下の式に基づいて演算により求めることができる。
Q=22.4×((P-P)/RΔt)×(P-P)/(P-P)×(Vc/Tc)
【0097】
このようにして、本測定方法では、配管5aの容積Vaおよびガス温度Taの測定を必要とせずに、測定値およびメモリから読みだした容量値を用いて、ライン依存性および配管温度の影響を低減し、かつ、簡素化された工程により作業時間を短縮しながら、流量Qを演算により求めることができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態による流量測定装置20および流量測定方法を説明したが、他の態様において、流量測定装置20は、第1内蔵バルブAV1と第2内蔵バルブAV2との間の第2内部容量において、容積を増加させるための容量拡大チャンバを備えていてもよい。
【0099】
図6は、上記の容量拡大チャンバ5cが設けられた変形例の流量測定装置20Aを示す。既知容積の容量拡大チャンバ5cを設けることによって、ガス圧力の大きさによって生じ得る容積Vcの変動の割合が低下し、流量測定の精度をより向上させ得る。また、既知容積の容量拡大チャンバ5cを設けることによって、分圧法において、下流バルブV0から第1内蔵バルブAV1までの容積(Va+Vb)に対して、第1内蔵バルブAV1の下流側の容積Vcが小さすぎるために、分圧後にも全体がビルドアップ後の圧力Pとほとんど変わらない圧力になってしまい測定誤差が増加する事象を防止し得る。
【0100】
また、以上のようにして、測定対象の流量制御装置10によって制御されたガスの流量を流量測定装置20を用いて測定した結果、流量制御装置10の出力流量と、流量測定装置20が測定した測定流量とが大きく異なる場合、流量制御装置10に流量制御不良が生じているものと考えられる。このため、流量制御装置10の出力流量と測定流量とを比較して、その差が閾値を超える場合には流量制御装置10を校正することが好ましい。
【0101】
例えば、流量制御装置10が圧力式流量制御装置の場合、流量制御装置10の出力流量に対して流量測定装置20の測定流量が十分小さいときには、流量制御装置10の絞り部12に詰まりが生じており、上流圧力PUを参照しただけでは正確な流量でガスが流せない状態であると判断できる。この場合、流量制御装置10の流量式である上記のQ=K1・PUの定数K1を、測定流量に対応するより小さい値に更新することによって、正確な制御流量でガスを流すことができるように校正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の実施形態にかかる流量測定装置、流量測定方法、および流量制御装置の校正方法は、流量制御装置が制御した流量で流れるガスの流量をビルドダウン法を用いて測定し、流量制御装置を校正するために適切に用いられる。
【符号の説明】
【0103】
2 ガス供給源
4 開閉弁
5 開閉弁
5a 配管
6 プロセスチャンバ (ガス使用装置)
8 真空ポンプ
10 流量制御装置
12 絞り部
14 コントロールバルブ
16 上流圧力センサ
17 温度センサ
18 下流圧力センサ
20 流量測定装置
21 第1圧力センサ
22 第2圧力センサ
23 第1温度センサ
24 第2温度センサ
25 制御回路
28 真空ポンプ
100 ガス供給システム
AV1 第1内蔵バルブ
AV2 第2内蔵バルブ
AV3 第3内蔵バルブ
V0 下流バルブ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8