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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016332
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 205
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120584
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】浦島 聡
(72)【発明者】
【氏名】中村 宏幸
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA08
2C056EB58
2C056EC77
2C056ED05
(57)【要約】
【課題】画像形成に用いるインクジェットヘッドにヘッドブロックのつなぎ目部分が存在しても、違和感のない画像が形成できるようにする。
【解決手段】インクを吐出する複数のノズル241cを有する複数の記録ヘッド241aと、入力画像データから吐出用データを生成する画像処理ユニット25と、を備え、記録ヘッド241aは、端部のノズル241cが他の記録ヘッド241aのノズル241cと一部が重なる千鳥配置であり、画像処理ユニット25は、記録ヘッド241aのノズル241cの一部が重なったつなぎ目部分のノズル241cのピッチLbが、記録ヘッド241a内のノズル241cのピッチLaよりも短い場合、つなぎ目部分のノズル241cを合わせて一つの画素を形成するために、つなぎ目部分のノズル241cから吐出されるインクによる入力画像データの画像を主走査方向Yに伸長させた吐出用データを生成する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有する複数の記録ヘッドと、
入力画像データから吐出用データを生成する画像処理ユニットと、を備え、
前記記録ヘッドは、端部のノズルが他の記録ヘッドのノズルと一部が重なる千鳥配置であり、
前記画像処理ユニットは、前記記録ヘッドのノズルの一部が重なったつなぎ目部分のノズルのピッチが、前記記録ヘッド内のノズルのピッチよりも短い場合、前記つなぎ目部分のノズルを合わせて一つの画素を形成するために、前記つなぎ目部分のノズルから吐出されるインクによる前記入力画像データの画像を主走査方向に伸長させた吐出用データを生成する
ことを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置では、インクジェットヘッドのノズルから吐出したインクにより記録媒体に画像を形成する。インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドを、記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に沿って配置した複数のヘッドブロックで構成することがある。インクジェットヘッドの隣り合う2つのヘッドブロックは、互いの端部同士が一部重なるように、記録媒体の搬送方向(副走査方向)に位置をずらして千鳥状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-3455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主走査方向において2つのヘッドブロックの端部同士が重なるつなぎ目部分では、各端部のノズル同士の主走査方向における間隔が、両ヘッドブロックの位置決め精度次第で、同じヘッドブロックの主走査方向において隣り合うノズル間隔と異なる場合がある。つなぎ目部分のノズル間隔が他の部分のノズル間隔と異なると、着弾したインクのドット間隔にずれが生じる。このようなドット間隔のずれは、例えば、各ノズルから一様にインクを吐出した場合に記録媒体に形成される画像中の、上述したつなぎ目部分に対応する箇所に、搬送方向の白スジや黒スジ等の不自然な画像を発生させる原因となる。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、画像形成に用いるインクジェットヘッドにヘッドブロックのつなぎ目部分が存在しても、違和感のない画像が形成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様による画像処理装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有する複数の記録ヘッドと、
入力画像データから吐出用データを生成する画像処理ユニットと、を備え、
前記記録ヘッドは、端部のノズルが他の記録ヘッドのノズルと一部が重なる千鳥配置であり、
前記画像処理ユニットは、前記記録ヘッドのノズルの一部が重なったつなぎ目部分のノズルのピッチが、前記記録ヘッド内のノズルのピッチよりも短い場合、前記つなぎ目部分のノズルを合わせて一つの画素を形成するために、前記つなぎ目部分のノズルから吐出されるインクによる前記入力画像データの画像を主走査方向に伸長させた吐出用データを生成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像形成に用いるインクジェットヘッドにヘッドブロックのつなぎ目部分が存在しても、違和感のない画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る印刷システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す印刷システムにおいて、量子化制御部による量子化数低減処理を説明する図である。
図3図3は、図1に示す多値ハーフトーン処理部によるハーフトーン処理を説明する図である。
図4図4は、図3に示す量子化値(6,4,2,1)を間引いたハーフトーン処理を説明する図である。
図5図5は、図3に示す量子化値(6,5,3,1)を間引いたハーフトーン処理を説明する図である。
図6図6は、画素データの奇数位置と偶数位置の画素の量子化パターンを例示する図である。
図7図7は、画素データの各画素の量子化に適用した量子化パターン別に画素を仕分けた場合の配列を示す図である。
図8図8は、図1のインクジェット印刷部の概略構成を示す説明図である。
図9図9は、図8のプリンタ部を下方から示す説明図である。
図10図10は、図9のインクジェットヘッドのつなぎ目におけるノズルの間隔がノズル列のノズルの間隔と一致する場合の各画素を、図7の量子化パターン別に仕分けた場合の配列を示す説明図である。
図11図11は、図9のインクジェットヘッドのつなぎ目におけるノズルの間隔がノズル列のノズルの間隔よりも短い場合の各画素を、図7の量子化パターン別に仕分けた場合の配列を示す説明図である。
図12図12は、画素データの各画素の量子化に適用した一部変更した量子化パターン別に画素を仕分けた場合の配列を示す図である。
図13図13は、図9のインクジェットヘッドのつなぎ目におけるノズルの間隔がノズル列のノズルの間隔よりも短い場合の各画素を、図12の量子化パターン別に仕分けた場合の配列を示す説明図である。
図14図14は、図8の制御部の概略構成を示すブロック図である。
図15図15は、図14の主コントローラが行うドロップ数の復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンの設定処理の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置を含む印刷システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す印刷システム1は、端末装置100、インクジェット印刷装置200(画像形成装置)、及びネットワーク300を備える。
【0012】
端末装置100は、印刷ジョブを生成してネットワーク300に出力する。インクジェット印刷装置200は、ネットワーク300を介して端末装置100からの受信した印刷ジョブを実行し、印刷用紙に画像を印刷する。
【0013】
本実施形態の印刷システム1では、インクジェット印刷装置200によって本発明の画像処理装置を構成することができる。本実施形態では、端末装置100が、印刷ジョブの画像データのデータ量を減らしつつ、インクジェット印刷装置200が受け取った印刷ジョブの画像データにより印刷して形成される印刷用紙上の画像の画質の低下を抑えるように、画像データを加工処理する。本実施形態では、インクジェット印刷装置200が、ネットワーク300を介して受け取った端末装置100からの印刷ジョブの画像データを、端末装置100の加工処理に応じた内容で画像処理する際に、本発明を実施することができる。
【0014】
(端末装置)
まず、端末装置100について説明する。端末装置100は、アプリケーション部11、プリンタドライバ部12、印刷データ生成部13、入出力部14、及び端末側通信部15を備える。アプリケーション部11とプリンタドライバ部12は、端末装置100にインストールされたプログラムが、CPU等により実行されることで、端末装置100上に仮想的に構築することができる。
【0015】
アプリケーション部11は、文書、画像等の原稿データを生成するプログラムを備える。アプリケーション部11で生成された原稿データは、プリンタドライバ部12に出力される。
【0016】
プリンタドライバ部12は、印刷操作画面、印刷設定画面等の表示を入出力部14の出力機能に行わせ、入出力部14の入力機能を介して利用者から印刷の設定を受け、印刷に関する設定情報や印刷状態を入出力部14の出力機能を介して利用者に通知する。プリンタドライバ部12は、利用者によって設定された情報(印刷設定情報)と、原稿データに基づいて、印刷ジョブデータ(例えばPDLデータ)を生成する。印刷ジョブデータは、原稿の内容を示す原稿画像データと、印刷設定情報に関するジョブデータとを含んでいる。
【0017】
入出力部14は、入力機能及び出力機能を備える。入力機能は、キーボード等で構成され、出力機能は、液晶表示モニター等で構成される。入出力部14は、利用者により各種のデータの入力を可能とし、この入力データをプリンタドライバ部12又はアプリケーション部11に出力する。また、入出力部14は、プリンタドライバ部12又はアプリケーション部11からの出力結果を利用者に対して通知する。
【0018】
印刷データ生成部13は、原稿データの画像をインクジェット印刷装置200に印刷させるために、印刷ジョブデータを生成する。印刷データ生成部13は、RIP処理部131、RGB-CMYK変換部132、多値ハーフトーン処理部133、印刷濃度データ記憶部134、及び量子化制御部135を備える。
【0019】
RIP処理部131は、プリンタドライバ部12から出力された印刷ジョブデータの原稿画像データに基づいて、レッド(以下、R)成分、グリーン(以下、G)成分、ブルー(以下、B)成分の所定の解像度のビットマップに展開した結果のラスタデータである展開済み印刷ジョブデータ(以下、展開印刷ジョブデータ)を生成する。ここで、展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された各画素(展開印刷ジョブデータ中の各座標位置に対応する)ごとに、R成分の値(例えば、0~255)、G成分の値(例えば、0~255)、B成分の値(例えば、0~255)が対応づけられている。
【0020】
RGB-CMYK変換部132は、RIP処理部131で生成されたR成分、G成分、B成分の展開印刷ジョブデータを、シアン(以下、C)成分、マゼンダ(以下、M)成分、イエロー(以下、Y)成分、ブラック(以下、K)成分を備える展開印刷ジョブデータに変換する。展開印刷ジョブデータにおいては、所定の解像度で展開された座標位置ごとに、C成分の値(例えば、0~255)、M成分の値(例えば、0~255)、Y成分の値(例えば、0~255)、K成分の値(例えば、0~255)が対応づけられている。
【0021】
多値ハーフトーン処理部133は、RGB-CMYK変換部132により変換された展開印刷ジョブデータに対して、量子化制御部135により設定された量子化数に従って、諧調数を低減する多値ハーフトーン処理を行い、量子化数を階調数とする印刷対象データを生成する。
【0022】
具体的な説明について図2を用いて行う。多値ハーフトーン処理部133は、展開印刷ジョブデータにおいては、座標位置ごとの色成分(C~K成分)の値(0~255)に対して(図2(a))、例えば、量子化数10と設定されている場合には、量子化するための判定値(量子化値)として、28,56,85、・・・・・226,255を設定する(図2(b))。そして、色成分の値0に対して量子化された値である量子化値0、色成分の値1~28に対して量子化値1、色成分の値29~56に対して量子化値2・・・・、色成分の値227~256に対して量子化値9を対応づけることにより、量子化数10に対する量子化処理を施して、256階調の展開印刷ジョブデータから、量子化された値である量子化値を生成する。この結果、展開印刷ジョブデータの取りうる色成分値(0~255)に対して、量子化された後に取りうる量子化値は、0~9となり、階調数は、10となる。上述の量子化処理は、C、M、Y、Kの色成分ごとに行われる。
【0023】
ここで、量子化制御部135には、所定の量子化数で量子化した場合にとりうる印刷濃度を示す印刷濃度テーブルを記憶する印刷濃度データ記憶部134が接続されている。印刷濃度テーブルの一例としては、例えば、所定の量子化数で量子化した後に取りうる量子化値と、インクジェット印刷装置200で量子化値に対応するインクのドロップ数で印刷した場合の印刷濃度との関係を示すテーブルがある。
【0024】
印刷濃度テーブルの一例を以下に示す。ここで、量子化数10で量子化した場合にとりうる量子化値(0~9)はインクの0ドロップ数~9ドロップ数に対応するものである。
【0025】
そして、1ドロップ数から9ドロップ数に変化させたときの印刷濃度を、インク色毎及び印刷用紙の種類毎に、実験的に取得しておく。そして、利用者が印刷濃度等を入出力部14に入力することで、1ドロップ数~9ドロップ数と、印刷濃度と、印刷用紙の種類(普通紙、マット紙、・・・)とが対応付けられた印刷濃度テーブルがインク色毎(C、M、Y、K)に印刷濃度データ記憶部134に記憶される。
【0026】
量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する。
【0027】
具体的には、量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの量子化値のいずれか一方を削減することを繰り返して、上記少ない量子化数を決定する。この際、量子化数の決定処理は、色成分ごとに独立して行う。
【0028】
この量子化制御部135の処理の詳細な説明を以下に示す。量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、量子化数10に対応する量子化値0~9の各々に対応する印刷濃度を取得する。量子化制御部135は、量子化値0~9の各々に対応する印刷濃度の分布から、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、対応する2つの量子化値のいずれか一方を削減することを繰り返して、上記決定された量子化数以下となるように量子化数を決定する。このように量子化制御部135は、量子化数決定手段を含む。
【0029】
たとえば、図2に示すように、所定の量子化数が10であって、量子化値0~9に対応する印刷濃度が0~80の場合を一例として説明する。量子化制御部135は、印刷濃度テーブルにおける量子化毎の印刷濃度の分布に基づいて(図2(b))、量子化値間(1,2の間、8,9の間)の印刷濃度の差が所定値以内の量子化値の組み合わせを探索する。ここで、所定値は、例えば、インクジェット印刷装置200の印刷条件(印刷用紙、インク、吐出駆動条件(駆動波形電圧等)など)において、各量子化値に対応する吐出ドロップ数で印刷した場合に、印刷濃度値に差があるものの、視覚的に同等といえる量子化値の範囲を実験的に求めることにより決定される。
【0030】
量子化制御部135は、上記の探索結果、量子化値間(1,2の間、8,9の間)の印刷濃度の差が所定値以内の量子化値の組み合わせを抽出する。この際、量子化制御部135は、印刷濃度の差が最も少ない場合から順次、所定値以内の量子化値の組み合わせか否かを判断し、対応する2つの量子化値のいずれか一方を削減することを繰り返す。例えば、図2(b)の場合、量子化制御部135は、所定値が5の場合、印刷濃度の差が最も少ない量子化値の組み合わせ(量子化値1,2と量子化値8,9)を探索し、差2が所定値5以内であるので、量子化値2、8を削除すると決定する。この際、量子化制御部135は、削除する対象の2つの隣接する量子化値のうち、隣接する印刷濃度値の差がより均等になる方の量子化値を削除すると決定する。そして、量子化制御部135は、印刷濃度の差が次に少ない量子化値の組み合わせ(量子化値1,3など)を探索し、差10が所定値5より大きいので、量子化値の削除はこれ以上行わないと決定する。
【0031】
そして、量子化制御部135は、決定された量子化数(例えば、8)で、展開印刷ジョブデータの量子化を行い、印刷対象データを生成する。この結果、印刷対象データにおいては、所定の解像度で展開された座標位置ごとに、C成分の値(例えば、0~7)、M成分の値(例えば、0~7)、Y成分の値(例えば、0~7)、K成分の値(例えば、0~7)が対応づけられ、座標位置ごとの色成分値は、4ビットの値から3ビットの値に変換されて、色成分値のビット数(データ量)が低減されることになる。この際、印刷対象データには、量子化値2、8を削除した情報も含まれる。このように量子化制御部135は、展開印刷ジョブデータを量子化する量子化制御手段を含む。
【0032】
印刷データ生成部13は、多値ハーフトーン処理部133により処理された印刷対象データと、プリンタドライバ部12が生成した印刷ジョブデータ中のジョブデータとを含む印刷ジョブデータを生成する。
【0033】
端末側通信部15は、ネットワーク300を介して、インクジェット印刷装置200に印刷ジョブデータを転送する。
【0034】
(インクジェット印刷装置)
次に、インクジェット印刷装置200について説明する。インクジェット印刷装置200は、印刷側通信部21と、制御部22(画像処理装置)と、インクジェット印刷部23とを備える。印刷側通信部21は、ネットワーク300を介して転送されてきた印刷ジョブデータを受信するものである。
【0035】
制御部22は、印刷ジョブデータに含まれる印刷対象データ内の各色成分の値を、インクのドロップ数に変換する。この処理の具体的な説明を以下に示す。
【0036】
制御部22には、予め、端末装置100から、上記所定の量子化数(例えば、10)が送信されてきている。そして、制御部22は、印刷側通信部21が印刷ジョブデータを受信すると、所定の量子化数(例えば、10)に対応する色成分値(量子化値)0、1、2、3、・・・7、8、9に対して量子化値2、8を削除したことに基づいて、印刷ジョブデータに含まれる印刷対象データ内の所定の解像度で展開された座標位置ごとの各色成分の値0~7を、インクのドロップ数0、1、3、4、5、6、7、9に変換させるドロップ数変換(高bpp変換)機能を備える(図2(c)参照)。
【0037】
また、制御部22は、C成分値、M成分値、Y成分値、K成分値に対応した吐出ヘッドを備える。インクジェット印刷部23は、印刷用紙を給紙し、吐出ヘッドにより吐出動作が行われた後印刷済み用紙を排出する給排出部を備えている。インクジェット印刷部23は、制御部22のドロップ数変換機能により出力された座標位置ごとの各色成分のドロップ数に基づいて、給紙部から給紙された印刷用紙に対して、所定位置に画像形成を行うように、各吐出ヘッドのインク吐出制御を行う。
【0038】
以上、印刷濃度テーブルを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて濃度が近接する印刷濃度の少なくとも1つを削除するように、所定の量子化数より少ない量子化数を決定する方法について説明した。
【0039】
次に、端末装置100において、ネットワーク300に出力する印刷ジョブデータの印刷対象データの量子化数を間引いて画像転送量を削減する方法について説明する。
【0040】
上記の多値ハーフトーン処理は、階調表現の誤差を拡散させるのに等しいので多値誤差拡散処理と称してもよいものである。次に説明する画像処理装置は、多値誤差拡散により階調の低い所望の多値ドロップ数に変換する場合に、各画素におけるドロップ数を一定数間引くことで各画素の画像転送量を削減する。
【0041】
まず、図3を参照して量子化数を間引く前の多値誤差拡散について説明する。図3の左から1列目は、入力濃度(0~255)である。入力濃度の数値が大きいほど各成分の濃度は濃くなる。
【0042】
図3の左から2列目は、量子化数が0~7に設定されている場合に、入力濃度を量子化する多値化閾値である。この場合、256の入力濃度を8つに量子化するので256/8=32で入力濃度を分割する。よって、多値化閾値を、例えば、32,64,96,128,160,192,224に設定する。
【0043】
入力濃度の値0に対して量子化された値である量子化値0を割り当てる。したがって、入力濃度(0~255)を7分割するので、量子化閾値を36(256/7=36),72,108,144,180,216,255に設定する。
【0044】
この結果、展開印刷ジョブデータの取りうる色成分値(0~255)に対して、量子化された後に取りうる量子化値は、0~7になり階調数は8となる。この多値ハーフトーン処理部133による入力濃度を少ない階調数に変換する処理は、C、M、Y、Kの色成分ごとに行われる。
【0045】
例えば、注目画素の入力濃度が186だった場合、多値化閾値160~192の間であるため、この入力濃度の量子化閾値は180となり、量子化値は5となる。ここでの誤差は入力濃度-量子化閾値の値で求められ、186-180=6を所望の重みづけで周辺画素へと拡散する。
【0046】
量子化制御部135は、印刷濃度テーブルを参照して、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、特定の量子化値を間引き、且つ隣接する画素間で間引かれる量子化値が少なくとも1つ以上異なるように多値ハーフトーン処理部133の動作を制御する。
【0047】
図4は、上記の1~7の量子化値から、6,4,2,1の量子化値を間引いた多値誤差拡散を示す図である。図4に示すように量子化値は、3,5,7の3つである。この量子化値(0,3,5,7)を1つの画素に対応させる。
【0048】
図5は、上記の1~7の量子化値から、6,5,3,1の量子化値を間引いた多値誤差拡散を示す図である。図5に示すように量子化値は、2,4,7の3つである。この量子化値(0,2,4,7)を、上記の量子化値(0,3,5,7)を対応させた画素に隣接する画素に対応させる。
【0049】
隣接する画素間で量子化値を異ならせることで局所的に階調数を多くすることができる。つまり、上記の例の場合、隣接する2つの画素(局所)の量子化値は、0,2,3,4,5,7であり、量子化値を3つから5つに増やすことができる。また、量子化数を、間引く前の量子化数8(図2:3bit/pixel )の高bpp(bits per pixel)値から、量子化数4(図3:2bit/pixel )の低bpp値に削減することができる。
【0050】
図6(a)は、印刷濃度テーブルを示す図である。印刷濃度デーブルは、画素位置別の量子化パターンを示す。印刷濃度テーブルは、各画素位置に吐出されるインクのドロップ数を示す。
【0051】
図6(a)に示すように、奇数ライン(行)/奇数位置(列)のドロップ数は、量子化値(6,5,3,1)を間引いて多値誤差拡散して求めた値である。奇数ライン/偶数位置のドロップ数は、量子化値(6,4,2,1)を間引いて多値誤差拡散して求めた値である。この例の場合は、量子化値とドロップ数とが一致している。なお、量子化値とドロップ数とは一致しなくてもよい。量子化値とドロップ数の関係は、予め実験で求める。
【0052】
偶数ラインは、奇数ラインを反転したものである。このように例えば、市松模様(チェック柄模様)で表せるように、中間階調の画素に割り当てるドロップ数を、奇数のライン(行)と偶数のライン(行)とで異ならせ、また、奇数の位置(列)と偶数の位置(列)とで異ならせる。
【0053】
図6(b)は、各画素位置の4種類のドロップ数に対応させた2ビットで表現できる数値である。7ドロップは数値3、4ドロップと5ドロップは数値2、2ドロップと3ドロップは数値1に変換されている。端末装置100からインクジェット印刷装置200には、各画素の色成分値に対応する量子化値(ドロップ数)を2ビットで表現できる数値に変換した印刷対象データを含む印刷ジョブデータが送信される。また、各画素の量子化値から2ビットで表現できる数値への変換関係は、量子化制御部135からインクジェット印刷装置200に送信される。
【0054】
このように量子化制御部135が有する量子化制御手段は、所定の量子化数で量子化した場合に取りうる印刷濃度の分布に基づいて、特定の量子化値を間引き、且つ隣接する画素間で間引かれる量子化値が少なくとも1つ以上異なるように展開印刷ジョブデータの量子化を制御する。これにより、画素当たりのデータ転送量を削減しながら間引かれたドロップ数を周辺画素に生じさせることができる。その結果、間引かれた量子化値の数(8-4=4)よりも多い、この例の場合6つの階調を表現できる。したがって、画素当たりの削減後のデータ転送量に合わせて印刷濃度の階調数を減らす場合に比べて、印刷画質を向上させることが可能である。
【0055】
また、図6(a)に示すように画素位置毎にドロップ数をパターン化することで、ドロップ数の偏りがなくなる。また、最大ドロップ数(7ドロップ)は間引かないため、ベタ印刷部分の濃度が薄くならない。また、色成分に応じてドロップ数を切り替えるため、カラー印刷の干渉パターンが生じ難い。
【0056】
図6(a)の斜線を引いた画素では、端末装置100において、量子化値(6,5,3,1)を間引いたパターンAの多値誤差拡散処理を用いて、印刷対象データのドロップ数が2ビットの数値に変換されている。また、図6(a)の斜線を引いていない画素では、端末装置100において、量子化値(6,4,2,1)を間引いたパターンBの多値誤差拡散処理を用いて、印刷対象データのドロップ値が2ビットの数値に変換されている。
【0057】
そこで、インクジェット印刷装置200では、ネットワーク300から受信した印刷ジョブデータの印刷対象データにおける各画素の2ビットの数値(低bpp値)から、各画素のライン(行)及び位置(列)の座標に対応した多値誤差拡散のパターンに基づいて、各画素のドロップ数(高bpp値)を復元する。
【0058】
図6(c)は、図6(b)の2ビットで表現できる数値から復元した、各画素の色成分値に対応する量子化値(ドロップ数)を示す図である。2ビットで表される数値(低bpp値)は、変換関係に基づいて0,2,3,4,5,7のドロップ数(量子化値0~7から量子化値1,6を削除した高bpp値)に変換されている。
【0059】
奇数ライン(行)/奇数位置(列)の画素では、その画素のドロップ数(高bpp値)から2ビットで表された数値(低bpp値)に変換する際に用いた、量子化値(6,5,3,1)を間引いた多値誤差拡散のパターンAに基づいて、2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元する。
【0060】
奇数ライン(行)/偶数位置(列)の画素では、その画素のドロップ数(高bpp値)から2ビットで表された数値(低bpp値)に変換する際に用いた、量子化値(6,4,2,1)を間引いた多値誤差拡散のパターンBに基づいて、2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元する。
【0061】
偶数ライン(行)/奇数位置(列)の画素では、その画素のドロップ数(高bpp値)から2ビットで表される数値(低bpp値)に変換する際に用いた、量子化値(6,4,2,1)を間引いた多値誤差拡散のパターンBに基づいて、2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元する。
【0062】
偶数ライン(行)/偶数位置(列)の画素では、その画素のドロップ数(高bpp値)から2ビットで表される数値(低bpp値)に変換する際に用いた、量子化値(6,5,3,1)を間引いた多値誤差拡散のパターンAに基づいて、2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元する。
【0063】
したがって、インクジェット印刷装置200が端末装置100から受信する印刷ジョブデータの印刷対象データでは、図7に示すように、パターンAの多値誤差拡散処理によってドロップ数が2ビットの数値に変換された画素PXaと、パターンBの多値誤差拡散処理によってドロップ数が2ビットの数値に変換された画素PXbとの配列が、市松模様(チェック柄模様)のようなパターンになる。
【0064】
図8は、図1のインクジェット印刷部23の概略構成を示す説明図である。インクジェット印刷部23は、画像形成経路CR1及びプリンタ部24を有している。インクジェット印刷部23では、画像形成経路CR1上を搬送方向Xに搬送される印刷用紙Pに対して、画像形成経路CR1の上方に配置したプリンタ部24により画像が印刷される。
【0065】
図8では、画像搬送経路CR1を側方から示している。画像形成経路CR1は、無端状の搬送ベルト221、搬送ベルト221の駆動機構である駆動ローラ222及び従動ローラ223等を有している。画像形成経路CR1では、搬送ベルト221によって、印刷条件により定められる速度で印刷用紙Pが搬送方向Xに搬送される。後述するプリンタ部24は、搬送ベルト221の上方に対向配置されている。
【0066】
図9は、プリンタ部24を下方から示す説明図である。プリンタ部24は、複数のラインヘッド241を有している。図9に示すように、ラインヘッド241は、C(シアン)、K(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の色別に設けられている。各色のラインヘッド241は、印刷用紙Pの搬送方向Xである副走査方向と直交する主走査方向Yに、複数のインクジェットヘッド241a(記録ヘッド)を並べて構成されている。主走査方向Yは、搬送方向Xに搬送される印刷用紙Pの幅方向と一致する。
【0067】
各インクジェットヘッド241aは、図9中のK(ブラック)のインクジェットヘッド241aの一つに代表して模式的に示すように、ノズル列241bをそれぞれ有している。各ノズル列241bは、主走査方向Yに等間隔で並んだ複数のノズル241cで構成されている。各ノズル241cは、搬送ベルト221上の印刷用紙Pに対し、ライン単位で各色のインクを吐出し、複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0068】
各色のラインヘッド241のインクジェットヘッド241aは、図8に示すように、搬送ベルト221の上方に配置したヘッドホルダ242に保持されている。ヘッドホルダ242は、図9に示すように、ヘッドホルダ面242aを底面に有する函体であり、ヘッドホルダ面242aには、インクジェットヘッド241aを挿通する複数の取付開口部242bが、各ラインヘッド241単位で複数列形成されている。
【0069】
各ラインヘッド241に対応する複数の取付開口部242bは千鳥状に配列されており、各取付開口部242bは、インクジェットヘッド241aの水平断面と同形状に形成されている。各ラインヘッド241のインクジェットヘッド241aは、対応する列の各取付開口部242bにそれぞれ挿通されて、ノズル列241b側を図8に示すようにヘッドホルダ面242aから突出させている。
【0070】
ヘッドホルダ242に保持された各色のラインヘッド241のインクジェットヘッド241aは、図9に示すように、主走査方向Yに並べて配置されており、かつ、1つおきに副走査方向(搬送方向X)の位置をずらして配置されている。これにより、同じ色の隣り合う2つのインクジェットヘッド241aの最端部同士が、主走査方向Yにおいて一部重なるように千鳥配置されている。
【0071】
各インクジェットヘッド241aの内部には、各ノズル241cにそれぞれ連通する複数のインク室(図示せず)が形成されている。各インク室にはインクが供給され、例えばピエゾ素子を用いて各インク室の容積を変化させることで、各インク室内のインクが各ノズル241cから吐出される。
【0072】
インクジェットヘッド241aの各ノズル241cは、同一画素に吐出するインクのドロップ数を変えることができる。
【0073】
隣り合う2つのインクジェットヘッド241aの端部同士が主走査方向Yにおいて重なるつなぎ目では、各インクジェットヘッド241aの最端部にそれぞれ位置するノズル241cが、主走査方向Yにおいて隣り合うノズル241cとなる。
【0074】
図7に示す配列の印刷対象データが、図10の説明図に示す2つのインクジェットヘッド241aに亘る各ノズル241cにそれぞれ適用される場合、主走査方向Yにおいて奇数番目の位置(列)にある各ノズル241cは、搬送方向X(副走査方向)の上流側から奇数番目のライン(行)では、斜線を引いたパターンAの多値誤差拡散に基づいて2ビットの数値から復元した、量子化値(6,5,3,1)を間引いたドロップ数のインクを吐出する。また、搬送方向X(副走査方向)の上流側から偶数番目のライン(行)では、斜線を引いていないパターンBの多値誤差拡散に基づいて2ビットの数値から復元した、量子化値(6,4,2,1)を間引いたドロップ数のインクを吐出する。
【0075】
主走査方向Yにおいて偶数番目の位置(列)にある各ノズル241cは、搬送方向X(副走査方向)の上流側から奇数番目のライン(行)では、斜線を引いていないパターンBの多値誤差拡散に基づいて2ビットの数値から復元した、量子化値(6,4,2,1)を間引いたドロップ数のインクを吐出する。また、搬送方向X(副走査方向)の上流側から偶数番目のライン(行)では、斜線を引いたパターンAの多値誤差拡散に基づいて2ビットの数値から復元した、量子化値(6,5,3,1)を間引いたドロップ数のインクを吐出する。
【0076】
したがって、主走査方向Yにおいて奇数番目の位置(列)にある各ノズル241cと偶数番目の位置(列)にある各ノズル241cとは、印刷対象データの2ビットの数値が同じ中間階調(数値1又は数値2)の画素に対して、2ビットの数値から変換した互いに異なるドロップ数(一方のノズル241cではドロップ数=3又は5、他方のノズル241cではドロップ数=2又は4)のインクをそれぞれ吐出する。
【0077】
つなぎ目におけるノズル241cの間隔は、つなぎ目距離の長さに応じて定まる。つなぎ目距離とは、つなぎ目において隣り合う2つのインクジェットヘッド241aが主走査方向Yにおいて重なる部分の距離である。
【0078】
つなぎ目距離の設計値と実際のつなぎ目距離との間に誤差がなければ、図10に示すように、2つのインクジェットヘッド241aに跨がるつなぎ目の隣り合うノズル241cの間隔Lb(つなぎ目部分のノズルのピッチ)は、つなぎ目以外の部分において隣り合うノズル241cの間隔La(記録ヘッド内のノズルのピッチ)と同じになる。
【0079】
例えば、一様な濃度の画像が、2つのインクジェットヘッド241aの各ノズル241cに対応する各画素に存在する場合、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbが、つなぎ目以外の部分におけるノズル241cの間隔Laと同じならば、5,3ドロップのインクで印刷された中間階調の画像と、4,2ドロップのインクで印刷された中間階調の画像とが、2つのインクジェットヘッド241aのつなぎ目でもつなぎ目以外の部分でも、一様の分布で印刷される。
【0080】
この場合、中間階調の画像を印刷するインクのドロップ数が変わる周期が、主走査方向Y、つまり、位置(列)方向に局所的に短くなる部分が生じないので、印刷用紙Pに形成される画像は、印刷用紙Pの搬送方向Xに沿ったスジ等がつなぎ目において目立つことがない自然な画像となる。
【0081】
一方、つなぎ目距離の設計値と実際のつなぎ目距離との間に誤差があると、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbが、ノズル列241bのノズル241cの間隔Laとは異なる長さとなる。例えば、図11の説明図に示すように、実際のつなぎ目距離が設計値よりも長いと、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbは、ノズル列241bのノズル241cの間隔Laよりも短くなる。
【0082】
例えば、一様な濃度の画像が、2つのインクジェットヘッド241aの各ノズル241cに対応する各画素に存在する場合、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbがつなぎ目以外の部分におけるノズル241cの間隔Laよりも短いと、5,3ドロップのインクで印刷された中間階調の画像と、4,2ドロップのインクで印刷された中間階調の画像とが、2つのインクジェットヘッド241aのつなぎ目では、つなぎ目以外の部分よりも狭い分布で印刷される。
【0083】
この場合、中間階調の画像を印刷するインクのドロップ数が変わる周期が、位置(列)方向に局所的に短くなる部分が生じる。この部分は、同じ階調であっても両隣の画素とは異なるドロップ数のインクでインされるので、両隣の画素の画像との間に濃淡の差が生じる。この濃淡の差により、印刷用紙Pに形成される画像は、つなぎ目に対応する領域において印刷用紙Pの搬送方向Xに沿ったスジ等が目立つ不自然な画像となる。
【0084】
このような不自然な画像が印刷されることは、印刷対象データの2ビットの数値からドロップ値への復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンを変更することで、緩和することができる。
【0085】
例えば、図12の説明図に示すように、つなぎ目において一部重なる2つのインクジェットヘッド241aのうち一方のインクジェットヘッド241aの各ノズル241cに対応する画素について、印刷対象データの2ビットの数値からドロップ値への復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンを、通常のパターンとは逆のパターンに変更する。
【0086】
そうすると、パターンAの多値誤差変換処理を用いた画素とパターンBの多値誤差変換処理を用いた画素との配列が、位置(列)方向における中央を境に左右反転した配列となる。すると、2つのインクジェットヘッド241aに跨がるつなぎ目の2つのノズル241cでは、図13の説明図に示すように、2ビットで表される数値が同じ中間階調の画像が、互いに同じドロップ数(5,3ドロップ又は4,2ドロップ)のインクで印刷される。
【0087】
この場合、印刷用紙Pに形成される画像において、つなぎ目の2つのノズル241cからのインクで形成された部分が、主走査方向Y、つまり、位置(列)方向において、1つの画素を構成するように見える画像となる。このため、中間階調の画像を印刷するインクのドロップ数が変わる周期が、位置(列)方向に局所的に短くなる部分が生じない。したがって、印刷用紙Pに形成される画像は、つなぎ目において隣の画素の画像との間に濃淡の差が生じにくく、印刷用紙Pの搬送方向Xに沿ったスジ等がつなぎ目において目立ちにくい、自然に近い画像となる。
【0088】
図1の制御部22は、インクジェット印刷装置200の印刷側通信部21及びインクジェット印刷部23の動作を制御する。上述した、印刷対象データの2ビットの数値からドロップ値への復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンの変更は、制御部22によって行うことができる。
【0089】
図14は、制御部22の概略構成を示すブロック図である。図14に示すように、制御部22は、主コントローラ25(画像処理ユニット)、メカコントローラ26及びヘッド制御回路27を有している。主コントローラ25、メカコントローラ26及びヘッド制御回路27は、図示を省略するが、CPU(Central Processing Unit )及びメモリを含むプロセッサと、記憶装置と、各種のインタフェース回路とをそれぞれ備える。メモリは、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。プロセッサは、1又は複数の情報処理回路として機能することができる。
【0090】
本実施形態では、プロセッサが備える情報処理回路をソフトウェアによって実現する例を示すが、もちろん、以下に示す情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、情報処理回路が複数である場合、一部の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0091】
本実施形態では、プロセッサの情報処理回路は、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することで、プロセッサのハードウェア上に仮想的に構築することができる。記憶装置は、アクセス可能な記憶装置として機能する。記憶装置は、例えば、主記憶装置及び補助記憶装置等を備える構成とすることができる。主記憶装置は、例えば、RAMによって構成することができる。補助記憶装置は、例えば、SSD(Solid State Drive )又はHDD(Hard Disk Drive )によって構成することができる。
【0092】
主コントローラ25は、ネットワーク300を介して端末装置100から入力された印刷ジョブを、印刷対象データ(画像データ)とジョブデータに分割する。主コントローラ25は、印刷対象データを画像処理してヘッド制御回路27に出力する。主コントローラ25は、ジョブデータをメカコントローラ26に出力する。
【0093】
メカコントローラ26は、主コントローラ25から入力されたジョブデータに基づいて、インクジェット印刷装置200のモータ等を駆動する。モータには、図8の駆動ローラ222を回転させるモータが含まれる。メカコントローラ26は、インクジェット印刷装置200における印刷用紙Pの搬送部分を含むメカニズム部分の動作を制御する。
【0094】
メカコントローラ26は、主記憶装置内にデータ保持部261を有している。メカコントローラ26は、主記憶装置に格納されたプログラムを実行させて、インクジェット印刷装置200のモータを駆動し印刷用紙Pを搬送する際に、プロセッサに接続されたインクジェット印刷装置200内の各種センサ(図示せず)の出力信号等に基づく条件判断の結果を利用する。
【0095】
メカコントローラ26は、印刷用紙Pの搬送タイミングに応じて、主コントローラ25及びヘッド制御回路27に対し、印刷用紙Pの搬送に同期して処理を実行させるためのパラメータ等を設定する。設定したパラメータは、例えば、主記憶装置内に記憶させておくことができる。
【0096】
メカコントローラ26のデータ保持部261には、主コントローラ25が印刷対象データの2ビットの数値からドロップ値への復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンを変更するか否かを判断するために参照する情報が記憶される。データ保持部261に記憶される情報は、つなぎ目距離情報、パターン切り替え判定しきい値情報、つなぎ目補正情報を含んでいる。
【0097】
つなぎ目距離情報は、各ラインヘッド241における、2つのインクジェットヘッド241aのつなぎ目の主走査方向Yにおける間隔を示す情報である。つなぎ目距離情報は、例えば、各インクジェットヘッド241aの主走査方向Yにおける設計上の間隔を示す情報とすることができる。つなぎ目距離情報は、つなぎ目において隣り合う2つのインクジェットヘッド241aが主走査方向Yにおいて重なるつなぎ目距離の設計値を特定するために用いられる。つなぎ目距離は、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbを算出するのに用いることができる。
【0098】
パターン切り替え判定しきい値情報は、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbに対するしきい値Thを示す情報である。パターン切り替え判定しきい値情報は、間隔Lbとの比較により、主コントローラ25が印刷対象データの2ビットの数値からドロップ値への復元の際に参照する多値誤差拡散処理のパターンを変更するか否かを判断するために用いられる。
【0099】
つなぎ目補正情報は、つなぎ目距離の実測値を示す情報である。つなぎ目補正情報は、つなぎ目距離の実測値であってもよく、つなぎ目距離の設計値に対する実測値の差分であってもよい。つなぎ目補正情報は、つなぎ目距離情報から特定したつなぎ目距離の設計値からつなぎ目距離の実測値を特定し、つなぎ目距離の実測値から、つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbを算出するのに用いることができる。
【0100】
データ保持部261に記憶される情報は、不図示の入力部からの入力により更新することができる。入力部は、例えば、テンキー等を含む操作部であってもよく、キーボード等の入力デバイスであってもよい。
【0101】
主コントローラ25の各情報処理回路は、主に、プリンタ部24による印刷用紙Pへの画像の印刷に関する動作を制御することができる。主コントローラ25の情報処理回路は、高bpp変換部251、画像処理部252、変換パターン設定部253及び主走査方向画素カウント部254を含んでいる。
【0102】
高bpp変換部251は、印刷側通信部21が受信した印刷ジョブデータのうち印刷対象データの、各画素の2ビットで表された数値(低bpp値)から、各画素のライン(行)及び位置(列)に対応する多値誤差拡散処理のパターン(パターンA又はパターンB)に基づいて、元のドロップ数(高bpp値)を復元する。各画素のドロップ数の復元に用いる多値誤差拡散処理のパターンは、各画素毎に、変換パターン設定部253によってそれぞれ設定される。
【0103】
画像処理部252は、高bpp変換部251で復元された各画素のドロップ数のインクを、各画素に対して各インクジェットヘッド241aの各ノズル241cに吐出させるための、印刷データを生成する。
【0104】
変換パターン設定部253は、データ保持部261のつなぎ目距離情報、パターン切り替え判定しきい値情報、つなぎ目補正情報に基づいて、高bpp変換部251が元のドロップ数(高bpp値)の復元に際して用いる多値誤差拡散処理のパターンを、印刷対象データの各画素について設定する。変換パターン設定部253は、各ライン(行)の主走査方向Yにおける位置が同じ各ノズル241cに対応する画素に対して、共通の多値誤差拡散処理のパターンをそれぞれ設定する。
【0105】
主コントローラ210は、印刷ジョブの実行により印刷する画像の画像データ(印刷対象データ)に対し、1ライン(行)毎に、図15のフローチャートに示す手順の処理を実行する。
【0106】
主コントローラ210は、まず、2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元する画素の画像データとして、1つのライン上の画素の画像データを、高bpp変換部251により、主走査方向Yの上流側から1画素ずつ読み込み(リード)させる(ステップS11)。
【0107】
主コントローラ210は、画像データを読み込ませた画素が、インクジェットヘッド241aのつなぎ目に位置する画素に該当するか否かを、変換パターン設定部253によって確認させる(ステップS13)。変換パターン設定部253は、つなぎ目に位置する画素に該当するか否かを、例えば、データ保持部261のつなぎ目距離情報を利用して確認することができる。
【0108】
つなぎ目に位置する画素に該当しない場合は(ステップS13でNO)、後述するステップS19に処理を移行する。つなぎ目に位置する画素に該当する場合は(ステップS13でYES)、主コントローラ210は、その画素に対応するノズル241cと、インクジェットヘッド241aのつなぎ目を挟んで隣り合うノズル241cとの間隔Lbが、データ保持部261のパターン切り替え判定しきい値情報のしきい値Thよりも短いか否かを、変換パターン設定部253によって確認させる(ステップS15)。
【0109】
つなぎ目におけるノズル241cの間隔Lbがしきい値Th以上である場合は(ステップS15でNO)、ステップS19に処理を移行する。間隔Lbがしきい値Th未満である場合は(ステップS15でYES)、主コントローラ210は、1つ前にドロップ数を復元した画素で用いたのと同じパターンを、変換パターン設定部253によって、ドロップ数の復元に用いる多値誤差拡散処理のパターンに設定させた後(ステップS17)、ステップS25に処理を移行する。
【0110】
ステップS19では、主コントローラ210は、高bpp変換部251によって1つ前にドロップ数を復元した画素で用いた多値誤差拡散処理のパターンがパターンAであるか否かを、変換パターン設定部253によって確認させる。
【0111】
パターンAである場合は(ステップS19でYES)、主コントローラ210は、ドロップ数の復元に用いる多値誤差拡散処理のパターンを、変換パターン設定部253によって、パターンBに設定させた後(ステップS21)、ステップS25に処理を移行する。パターンAでない場合は(ステップS23)、主コントローラ210は、ドロップ数の復元に用いる多値誤差拡散処理のパターンを、変換パターン設定部253によって、パターンAに設定した後(ステップS21)、ステップS25に処理を移行する。
【0112】
ステップS25では、主コントローラ210は、ステップS11で画像データを読み出した画素が、1つのライン上の主走査方向Yにおける最端部(最後)の画素に達したか否かを、高bpp変換部251によって確認させる。
【0113】
高bpp変換部251がステップS11で画素の画像データを読み出すと、その度に、主走査方向画素カウント部254において、内部のカウント値がインクリメントされる。高bpp変換部251は、ステップS11で画像データを読み出した画素が、1つのライン上の主走査方向Yにおける最端部(最後)の画素に達したか否かを、主走査方向画素カウント部254のカウント値に基づいて確認することができる。
【0114】
ステップS11で画像データを読み出した画素が、主走査方向Yにおける最端部の画素に達していない場合は(ステップS25でNO)、ステップS11にリターンし、最端部の画素に達した場合は(ステップS25でYES)、一連の処理を終了する。
【0115】
ヘッド制御回路27は、主コントローラ25の制御出力に基づいて、プリンタ部24の各インクジェットヘッド241aによるインクの吐出動作を制御することができる。
【0116】
以上に説明した本実施形態の印刷システム1では、インクジェット印刷装置200の高bpp変換部251が、印刷側通信部21が受信した印刷対象データの、つなぎ目に位置する画素の2ビットで表された数値(低bpp値)から元のドロップ数(高bpp値)を復元するのに用いる多値誤差拡散処理のパターンを、つなぎ目の画素に対応するノズル241cの間隔Lbに基づいて、変換パターン設定部253が決定する。
【0117】
変換パターン設定部253が決定するパターンの多値誤差拡散処理でドロップ数を復元すると、例えば、つなぎ目部分のノズル241cの間隔Lbが1画素の画像のサイズに満たない場合は、主走査方向Yにおいて隣り合う2つのノズル241cがそれぞれ吐出するインクで、1画素分の画像が形成される。これにより、1画素分の画像のサイズに満たない間隔Lbのつなぎ目に位置するノズル241cに対応する画素を主走査方向Yに少し伸ばした画像を得て、搬送方向Xの白スジや黒スジ等が画像に発生するのを抑制することができる。
【0118】
よって、隣り合う2つのインクジェットヘッド241aのつなぎ目に位置するノズル241cから吐出されたインクを使って印刷用紙Pに画像を印刷しても、違和感のない画像を形成することができる。
【0119】
なお、最大又は最低濃度の画素が一様に分布したベタ画像又は空白画像では、濃度分布が生じず不自然なスジ等が画像中に発生しない。インクジェットヘッド241aのつなぎ目に位置するノズル241cに対応する画素に、ベタ部分又は空白部分が分布する画像については、つなぎ目に位置するノズル241cに対応する画素の印刷対象データに対して、本実施形態で説明したドロップ数の復元処理を行わなくてもよい。
【0120】
また、インクジェット印刷装置200が画像を印刷する印刷用紙Pは、カット紙であってもロール紙であってもよい。
【0121】
さらに、本発明は上記の実施形態のままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記の実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0122】
[付記]
以上に説明した実施形態によって、以下に示す態様の発明が開示される。
【0123】
即ち、一つの態様の発明として、
インクを吐出する複数のノズルを有する複数の記録ヘッドと、
入力画像データから吐出用データを生成する画像処理ユニットと、を備え、
前記記録ヘッドは、端部のノズルが他の記録ヘッドのノズルと一部が重なる千鳥配置であり、
前記画像処理ユニットは、前記記録ヘッドのノズルの一部が重なったつなぎ目部分のノズルのピッチが、前記記録ヘッド内のノズルのピッチよりも短い場合、前記つなぎ目部分のノズルを合わせて一つの画素を形成するために、前記つなぎ目部分のノズルから吐出されるインクによる前記入力画像データの画像を主走査方向に伸長させた吐出用データを生成する
ことを特徴とする画像処理装置が開示される。
【0124】
そして、上記態様による発明によれば、画像形成に用いるインクジェットヘッドにヘッドブロックのつなぎ目部分が存在しても、違和感のない画像を形成することができる。
【符号の説明】
【0125】
22 制御部(画像処理装置)
25 主コントローラ(画像処理ユニット)
241a インクジェットヘッド(記録ヘッド)
241c ノズル
La 間隔(記録ヘッド内のノズルのピッチ)
Lb 間隔(つなぎ目部分のノズルのピッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15