(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163327
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】鍵盤楽器
(51)【国際特許分類】
G10B 3/12 20060101AFI20231102BHJP
G10C 3/12 20060101ALI20231102BHJP
G10H 1/34 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G10B3/12 100
G10C3/12 100
G10H1/34
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074164
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】弁理士法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 弘和
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478BD01
(57)【要約】
【課題】取付部材を取り付けることができる良質な鍵ベース部材を備える鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】鍵盤楽器10は、天板301の上面301pである天面と、該天面の下面301qから垂下して設けられる天面支持部材としての縦板380を含む鍵ベース部材300と、天面支持部材である縦板380の側面381,382に配置される取付部材(第1部材310、第2部材320)と、を有し、縦板380は、鍵ベース部材300の長手方向の互いに異なる位置に、鍵の配列方向LRの肉厚が第1肉厚の厚肉部386と、第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部385と、を含み、厚肉部386における取付部材との接触領域は、薄肉部385と取付部材との接触領域よりも大きい、鍵を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面と、前記天面の下面から垂下して設けられる天面支持部を含む鍵ベース部材と、
前記天面支持部の側面に配置される取付部材と、
を有し、
前記天面支持部は、前記鍵ベース部材の長手方向の互いに異なる位置に、鍵の配列方向の肉厚が第1肉厚の厚肉部と、前記第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部と、を含み、
前記厚肉部における前記取付部材との接触領域は、前記薄肉部と前記取付部材との接触領域よりも大きい、
鍵を備える鍵盤楽器。
【請求項2】
前記天面支持部は、下側が開放する下側開放部を含み、
前記天面の下側かつ前記下側開放部の上側に、前記厚肉部と前記薄肉部が鍵の前後方向の同一線上に交互に設けられる、請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記側面から凹状に設けられる肉盗み部を含む、請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記肉盗み部は、鍵の前後方向に亘って間欠的に設けられる、請求項3に記載の鍵盤楽器。
【請求項5】
前記肉盗み部は、鍵の前後方向に同一線上に設けられる、請求項4に記載の鍵盤楽器。
【請求項6】
鍵の前後方向の長さが異なる複数の前記肉盗み部が設けられる、請求項5に記載の鍵盤楽器。
【請求項7】
前記天面支持部における前記天面の下側かつ前記厚肉部又は前記薄肉部の上側の前記側面には、鍵の前後方向に設けられる凹溝部が設けられる、請求項6に記載の鍵盤楽器。
【請求項8】
前記鍵ベース部材は、前記天面の幅が広い幅広部と、前記天面の幅が狭い幅狭部とを有し、
前記天面支持部は、前記幅狭部に対応して設けられる、請求項1乃至請求項7の何れかに記載の鍵盤楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鍵ベース部材に木目調部材や木質部材等の取付部材を取り付けた鍵を備える鍵盤楽器が提案されている。例えば、特許文献1では、鍵ベース部材の天板の幅が広い幅広部に対応して、板状の木質部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木質部材等の取付部材は、取り付ける目的に応じて、厚みが厚いものが用いられることがある。また、鍵ベース部材の幅広部に対応した側面だけでなく、幅狭部に対応した側面にも設けたいことがある。このような場合には、左右の両側面を備える側板の間隔が狭くなってしまう。すると、鍵ベース部材が樹脂の射出成形にて製造される場合には、狭くなった2枚の両側面間に挿入される薄いコアブロックを備える金型を作ることが難しく、また、両側面板の厚みが極端に薄くなってしまう等、射出成形も難しくなることがある。従って、良質な鍵ベース部材の提供が困難になることが懸念される。
【0005】
本発明は、取付部材を取り付けることができる良質な鍵ベース部材を備える鍵盤楽器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鍵盤楽器は、天面と、前記天面の下面から垂下して設けられる天面支持部を含む鍵ベース部材と、前記天面支持部の側面に配置される取付部材と、を有し、前記天面支持部は、前記鍵ベース部材の長手方向の互いに異なる位置に、鍵の配列方向の肉厚が第1肉厚の厚肉部と、前記第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部と、を含み、前記厚肉部における前記取付部材との接触領域は、前記薄肉部と前記取付部材との接触領域よりも大きい、鍵を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、取付部材を取り付けることができる良質な鍵ベース部材を備える鍵盤楽器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の
図1のII-II断面図である。白鍵と黒鍵は側面を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵ベース部材の左側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の鍵ベース部材の右側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵を下方から見た斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵の
図4のVII-VII断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る鍵盤楽器の白鍵の
図4のVIII-VIII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示す鍵盤楽器10は、複数の鍵としての複数の白鍵30と複数の黒鍵40を備えるフルサイズ(88鍵)の鍵盤50と、ケース20とを備える。なお、以下の説明においては、鍵盤50の鍵の前後方向FBにおける前を前側F、鍵の前後方向FBの後を後側Bとし、鍵盤50に向かって左を左側L、右を右側Rとする。鍵盤50の鍵の配列方向LRは、左右方向である。また、鍵盤楽器10の上下方向ULにおいて上を上側Up、下を下側Loとする。本実施形態の鍵盤楽器10は、電子ピアノについて示しているが、奏者(ユーザ)の押鍵操作に応じて発音する楽器であればその他の鍵盤楽器であってもよい。
【0010】
ケース20は、左右方向を長手方向とする略長矩形板状であり、上ケース21と下ケース22に分割される。上ケース21及び下ケース22は、それぞれ樹脂材料により形成される。ケース20の内部には、基板や電源である電池等が収納される。上ケース21の左側の上面には、ボリュームや各種設定用のツマミやダイヤルを備える操作部11が設けられている。また、上ケース21の左側の前面には、イヤフォンジャック12が設けられている。
【0011】
上ケース21の左側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21a及び右側において鍵盤50に隣接する上ケース21の上面21bは、後方から前方に亘って下る傾斜面とされている。また、上ケース21の中央上部に設けられる左右に長い上面21cも傾斜面とされている。また、図示しないが、上ケース21の背面には、スピーカに対応する孔部が設けられている。
【0012】
図2に示すように、ケース20は、下ケース22から立設する下ボス部23と、上ケース21から立設する上ボス部24とがボルトにより螺合接合される等して、上ケース21と下ケース22が組み合わされている。ケース20の内部には、内部ケース25が設けられている。内部ケース25は、鍵の配列方向LRに長く設けられ、
図2の断面視においては下側Loに開口側を向けた略コ字状の断面を備えている。内部ケース25には、上面に回路基板60が設けられている。回路基板60には、各白鍵30及び各黒鍵40に対応して、複数のスイッチ61が設けられている。各白鍵30及び各黒鍵40には、スイッチ61に対応する位置にスイッチ押圧部33(
図2は白鍵30のスイッチ押圧部33を示し、黒鍵40のスイッチ押圧部は不図示)が設けられている。
【0013】
内部ケース25の後方には、各白鍵30及び各黒鍵40を回動自在に支持する支持軸25aが、各白鍵30及び各黒鍵40に対応して設けられている。内部ケース25内には、各白鍵30及び各黒鍵40に対応してハンマー部材70が設けられている。ハンマー部材70は、後側Bにウェイト部71が設けられている。ウェイト部71から前側Fに延びる腕部72は、内部ケース25に設けられる支持軸25bにより回動自在に支持されている。腕部72の先端には、各白鍵30及び各黒鍵40から下側Loに延びるハンマー押圧部31(
図2は白鍵30のハンマー押圧部31を示し、黒鍵40のハンマー押圧部は不図示)に係合するハンマーキャップ73が設けられている。ハンマー押圧部31には、ハンマーキャップ73が係合する孔部31aが設けられている。また、各白鍵30には、前端部に、下側Loに延びて、先端部分が後方に突出する鉤状の規制突起32が設けられている。
【0014】
白鍵30を例に、白鍵30とハンマー部材70の動作を説明する。白鍵30を押下すると、白鍵30のハンマー押圧部31がハンマーキャップ73を押し下げる。すると、ハンマーキャップ73と支持軸25bを挟んで対向して設けられるハンマー部材70のウェイト部71は上昇する。このようにして、白鍵30は、本物のピアノと同様の重みを感じながら打鍵することができる。そして、上昇したウェイト部71は、内部ケース25に設けられるハンマー用の上クッション26に当接する。
【0015】
一方、白鍵30の押下により規制突起32は押し下げられて、規制突起32に対応して設けられる下クッション29に当接する。また白鍵30を押下したとき、白鍵30に設けられるスイッチ押圧部33によりスイッチ61が押下され、打鍵した白鍵30に対応する音が発音される。そして、白鍵30から手を離すと、ハンマー部材70のウェイト部71が下がって下クッション27に当接し、規制突起32の顎部は上クッション28と当接し、
図2の状態となる。なお、
図4及び
図5に示すように、規制突起32は、板状の左規制突起32aと、板状の右規制突起32bとからなる。
【0016】
次に、白鍵30の構成について説明する。以下では、音階Cに対応するC鍵としての鍵である白鍵30を例として、
図3~
図8に基づいて説明する。
図3に示すように、白鍵30は、取付部材(第1部材310及び第2部材320)と、鍵ベース部材300とを備える。鍵ベース部材300は、樹脂の射出成形により製造される。取付部材(第1部材310及び第2部材320)は、木質の部材である。白鍵30は、取付部材(第1部材310及び第2部材320)が鍵ベース部材300に取り付けられることで、質感が高められている。
【0017】
鍵ベース部材300には、先述のハンマー押圧部31と、規制突起32、スイッチ押圧部33が設けられている。また、鍵ベース部材300には、右側Rに段部305が設けられている。段部305よりも後方側は、黒鍵40に隣接して配置される幅狭の部分であり、段部305よりも前方側は、打鍵面を備える幅広の部分である。
【0018】
図3~
図5に示すように、鍵ベース部材300は、天面である上面301p、下面301qとされる天板301を備える。天板301は、段部305から前方の幅広部301aと、段部305から後方の幅狭部301bとを備える。天板301の前端部の下面301qからは、下方に延設する前板302が設けられている。前板302は、前後方向FBに板面を向けて配置され、天板301の幅広部301aと同幅に設けられている。
【0019】
また、鍵ベース部材300は、天板301の幅広部301aに対応する左右の側板(左側板303、右側板304)が設けられている。左側板303、右側板304は、それぞれ、天面の下面301q(換言すれば、天板301の下面301q)から垂下して設けられている。一方、鍵ベース部材300は、天板301の幅狭部301bに対応して、縦板380(天面支持部)が設けられている。換言すれば、縦板380は、天板301の下面301q(換言すれば、天面に対応する下面301q)から垂下して縦板状に設けられ、段部305よりも後側から後述の後板380aまでの部分である。縦板380における左右の側面381,382のうち、左側Lの側面381は、幅広部301aに対応する左側板303の側面303aと連続して設けられている。一方、右側Rの側面382は、段部305の接続板305aを介して右側板304の側面304aと接続している。すなわち、右側板304の側面304aと、縦板380の右側Rの側面382とは連続していない。
【0020】
第1部材310は、配置される左側板303の側面303a及び縦板380の左側Lの側面381に対応した外形を備える板状に設けられている。第1部材310は、前方部311と、後方部312とを備え、前方部311と後方部312が連続して設けられている。前方部311の上下方向ULの長さは、後方部312の上下方向ULの長さより長く設けられている。第1部材310の上面310aは連続面とされて、下面310bは前方部311と後方部312の接続部で段状に設けられている。前方部311は、左側板303の側面303aに配置される部分を含み、後方部312は縦板380の側面381に配置される部分を含む。
【0021】
より具体的には、
図3及び
図4に示すように、第1部材310は、前面310cを鍵ベース部材300の前板302の後面302cと当接させ、上面310aを天板301の下面301qと当接させて、側面310eを左側板303、縦板380の側面303a,381の当接面170に当接させて、鍵ベース部材300の左側板303及び縦板380に配置される。
【0022】
第2部材320は、配置される右側板304及び縦板380に対応した外形を備える板状に設けられている。第2部材320は、前後方向FBに長い略長矩形状の板状の前第2部材321と、前後方向FBに長い略長矩形状の板状の後第2部材322とを備える。前第2部材321の上下方向ULの長さは、後第2部材322の上下方向ULの長さより長く設けられている。前第2部材321は、右側板304の側面304aに配置され、後第2部材322は、縦板380の右側Rの側面382に配置される。
【0023】
より具体的には、
図3及び
図5に示すように、第2部材320の前第2部材321は、前面321cを鍵ベース部材300の前板302の後面302cと当接させ、上面321aを天板301の下面301qと当接させて、側面321eを右側板304の側面304aの当接面271に当接させて、鍵ベース部材300の右側板304に配置される。
【0024】
同様に、第2部材320の後第2部材322は、前面322cを接続板305aの後面に当接させ、上面322aを天板301の下面301qと当接させて、側面322eを縦板380の側面382の当接面272に当接させて、鍵ベース部材300の縦板380に配置される。
【0025】
なお、第1部材310の後面310d及び後第2部材322の後面322dは、縦板380の後端において左右方向に立設して後面310d,322dと対向する後板380a(
図6も参照)に当接せず、隙間が設けられている。また、第2部材320の前第2部材321の後面321dは、開放されている。
【0026】
また、左側板303、右側板304の側面303a,304a及び縦板380の側面381,382は、天板301の左側Lの側端301c1,301c2,301c3と第1部材310の外側の側面310f、前第2部材321の外側の側面321f、後第2部材322の外側の側面322fが略同一面となる位置に設けられている。
【0027】
図4に示すように、左側板303及び縦板380の側面303a,381は、それぞれ、天板301の下面301qに沿って設けられる凹溝部としての第1溝部110a,110bと、左側板303及び縦板380の下縁近傍の側面303a,381に設けられる第2溝部120a,120bとを含む。第1溝部110a,110bや第2溝部120a,120bは、それぞれ、深さや幅が異なって設けられている。第1溝部110aと第2溝部120aは前端部で、第1溝部110bと第2溝部120bは後端部で、それぞれ凹状の溝により互いに接続されている。
【0028】
図5に示すように、右側板304及び縦板380の側面304a,382は、それぞれ、天板301の下面301qに沿って設けられる凹溝部としての第1溝部210a,210bと、右側板304及び縦板380の下縁近傍の側面304a,382に設けられる第2溝部220a,220bとを含む。右側板304の側面304aに設けられる第1溝部210aと第2溝部220aは、前後端部で、凹状の接続溝により接続されて、略長矩形の環状に設けられている。縦板380の側面382に設けられる第1溝部110b、第2溝部220bは、後端部で凹状の溝により接続されている。
【0029】
第1溝部110a,110b,210a,210b及び第2溝部120a,120b,220a,220bは、余分な接着剤が退避することができる溝部である。すなわち、第1溝部110a,110b,210a,210b及び第2溝部120a,120b,220a,220bは、第1部材310や第2部材320を、左側板303、縦板380の側面303a,381及び右側板304、縦板380の側面304a,382に設けられる当接面170,271,272に接着剤を用いて取り付けた際に、余分な接着剤が流れ込み貯留される。
【0030】
縦板380の左側Lの側面381には、鍵の前後方向FBに長い略長矩形状の複数の凹部130が設けられている。凹部130は、縦板380の前側Fの部分で上下に並んで設けられる第1凹部131及び第2凹部132と、その後側Bに設けられる第3凹部133と、その後側Bに設けられる第4凹部134と、その後側Bに設けられる第5凹部135とを備える。凹部130は、射出成形にて製造される鍵ベース部材300における肉盗み部とされている。
【0031】
縦板380の右側Rの側面382には、前後方向FBに長い略長矩形状の複数の凹部230が設けられている。凹部230は、当接面272の前側Fに上下に3つ並んで設けられる第1凹部231、第2凹部232、第3凹部233と、その後側Bに設けられる第4凹部234と、その後側Bに設けられる第5凹部235と、その後側Bに設けられる第6凹部236とを備える。凹部230は、射出成形にて製造される鍵ベース部材300における肉盗み部とされている。
【0032】
また、縦板380の側面381における凹部130の第3凹部133は、側面382における凹部230の第4凹部234と上下方向UL及び前後方向FBの位置及び大きさが同じとされている。同様に、第4凹部134は第5凹部235と、第5凹部135は第6凹部236と、上下方向UL及び前後方向FBの位置及び大きさが同じとされている。すなわち、凹部130と凹部230は、対向して配置される凹部130,230を含む。第3凹部133(第4凹部234)、第4凹部134(第5凹部235)、第5凹部135(第6凹部236)は、鍵の前後方向FBの同一直線上に、間欠的に設けられている。また、第3凹部133(第4凹部234)、第4凹部134(第5凹部235)、第5凹部135(第6凹部236)は、それぞれ鍵の前後方向FBの長さ寸法が異なり、上下方向ULの高さ寸法は同じとされている。
【0033】
凹部130,230と第2溝部120b,220bとの間の当接面170,272は、鍵の前後方向FBの同一線上である直線状に連続面とされている。よって、この連続する当接面170,272に、第1部材310、第2部材320(後第2部材322)を側面381,382に取り付けるための接着剤を良好に塗布することができる。
【0034】
図6に示すように、縦板380には、後述する下側開放部383の内面から下側Loに向けて突出する板状のスイッチ押圧部33が設けられている。また、右側板304の下面には、右側Rに突出する突起板306が設けられている。同様に、縦板380の後側Bの下面には、鍵の配列方向LRにそれぞれ突出する2つの突起板307が設けられている。突起板306,307は、万が一、第1部材310や第2部材320が落下してしまった場合でも、第1部材310、第2部材320を受けることができる。
【0035】
また、鍵ベース部材300の後端部には、ケース20の内部の内部ケース25の支持軸25aと回転自在に係合する回転孔部308が、鍵の配列方向LRに貫通するように設けられている。また、天板301の幅広部301aの下面には、カウンタウェイト100と、カウンタウェイト100を固定するための第1リブ91、第2リブ92がカウンタウェイト100の前後に設けられている。
【0036】
図7及び
図8に示すように、天板301の上面301p(天面)を支持する天面支持部としての縦板380は、下側が二股状に開放する下側開放部383と、側面381,382とを含む。
図7、
図8の断面視(縦断面視)における縦板380において、第1溝部110b,210bの下縁から下側開放部383の二股の起点までの領域VL(接触領域)は、第2肉厚の薄肉部385又は第1肉厚の厚い厚肉部386とされている。第2肉厚の薄肉部385は、第1肉厚の厚肉部386よりも鍵の配列方向LRの肉厚が薄い。
【0037】
図7に示すように、縦板380において、凹部130,230(第4凹部134、第5凹部235)が設けられる箇所の縦断面における第1溝部110b,210bの下縁から下側開放部383の二股の起点までの領域VLは、薄肉部385とされている。一方、
図8に示すように、縦板380において、凹部130,230が設けられていない箇所の縦断面における第1溝部110,210の下縁から下側開放部383の二股の起点までの領域VLは、厚肉部386とされている。
【0038】
前述の通り、縦板380の側面381,382には、凹部130,230が鍵の前後方向FBに間欠的に設けられている。従って、縦板380は、鍵の前後方向FBにおいて厚肉部386と薄肉部385が交互に設けられる領域を含むこととなる。更に、厚肉部386と薄肉部385は、鍵の前後方向FBの同一線上(例えば、
図7、
図8で示す、縦板380における領域VLの中心VCを通る鍵の前後方向FBの直線上)に交互に設けられる。換言すれば、天面支持部(縦板380)は、鍵ベース部材300の長手方向(前後方向FB)の互いに異なる位置に、鍵の配列方向LRの肉厚が第1肉厚の厚肉部386と、第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部385とを含む。
【0039】
図7に示すように、縦断面視において、薄肉部385における側面381,382と第1部材310、後第2部材322が接する領域である接触領域VL1は、領域VLのうち、凹部130,230(第4凹部134、第5凹部235)を除く領域(領域VL1+領域VL2<領域VL)である。
【0040】
同様に、
図8に示すように、縦断面視において、厚肉部386における側面381,382と第1部材310、後第2部材322が接する領域である接触領域は、領域VLの全範囲である。
【0041】
厚肉部386の接触領域は、薄肉部385の接触領域よりも大きい。すなわち、凹部130,230が設けられる薄肉部385は、凹部130,230の上下方向ULの長さ分だけ、第1部材310、後第2部材322と接する領域である接触領域が少なくなる。
【0042】
仮に、肉盗みのため、縦板380の側面381,382の前後方向に亘って長い凹部を設けた場合には、鍵の前後方向FBに亘って薄肉部385が設けられることとなり、側面381,382と第1部材310、後第2部材322が接する、側面381,382に直交する縦断面の接触領域が極端に小さくなってしまう。すると、第1部材310、後第2部材322と接触する側面381,382の当接面170,272の面積が少なくなり、接着力不足により、第1部材310、後第2部材322が良好に側面381,382に取り付けられないことがある。
【0043】
しかしながら、本構成のように、凹部130,230を間欠的に設け、厚肉部386と薄肉部385を交互に設けることで、厚肉部386により側面381,382と第1部材310、後第2部材322が接する、側面381,382に直交する縦断面の接触領域が大きくなり、第1部材310、後第2部材322が側面381,382と接する当接面170,272の面積、すなわち、第1部材310、後第2部材322が接着剤で側面381,382に接着されている領域(接触領域)を十分に確保することができる。
【0044】
なお、以上の実施形態においては、C鍵に係る鍵ベース部材300について説明したが、A~Fの他の鍵における鍵ベース部材に対しても、本発明を実施することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態では、鍵盤楽器10は、天板301の上面301pである天面と、該天面の下面301q(該天面に対応する下面301q)から垂下して設けられる天面支持部材としての縦板380を含む鍵ベース部材300と、天面支持部材(縦板380)の側面381,382に配置される取付部材(第1部材310、第2部材320)と、を有し、天面支持部材(縦板380)は、鍵ベース部材300の長手方向の互いに異なる位置に、鍵の配列方向LRの肉厚が第1肉厚の厚肉部386と、第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部385と、を含み、厚肉部386における取付部材との接触領域(領域VLの全範囲)は、薄肉部385と取付部材との接触領域(領域VL1+VL2)よりも大きい、鍵を備える。
【0046】
これにより、接着剤等により側面381,382に取り付けられる取付部材としての第1部材310及び第2部材320(後第2部材322)が、側面381,382と接触する面積を良好に確保しつつ、薄肉部385により適切に薄肉化されることで、射出成形による成形性を向上することができる。よって、取付部材である木質の第1部材310及び第2部材320(後第2部材322)が取り付けられる良質な鍵ベース部材300を備える鍵盤楽器を提供することができる。なお、本実施例では、天板301、縦板380は板状としたが、ブロック状等の他の形態でも良い。
【0047】
また、天面支持部としての縦板380は、下側が開放する下側開放部383を含み、天板301の下側Lo(換言すれば、天面の下側Lo)かつ下側開放部383の上側Upに、厚肉部386と薄肉部385が鍵の前後方向FBの同一線上に交互に設けられる。これにより、直線的に長い縦板380を良好に成形でき、更に第1部材310及び第2部材320(後第2部材322)も良好に取り付けることができるので、鍵ベース部材300の幅狭部301bの部分を良質なものとすることができる。特に、第1部材310は、鍵の前後方向FBに長いので反りが発生し易いが、間欠的に接着の面積が大きい部分(厚肉部386)が現れることで、木質の部材とされる第1部材310の反りによる脱落を低減することができる。
【0048】
また、薄肉部385は、側面381,382から凹状に設けられる凹部130,230とされる肉盗み部を含む。これにより、下方側から金型のコアブロックが入り込み難い縦板380であっても、側面381,382側から凹部130,230を形成するコアブロックを金型に設けることで、容易に薄肉部385を成形する金型を構成することができる。
【0049】
また、肉盗み部である凹部130,230は、鍵の前後方向に亘って間欠的に設けられる。これにより、厚肉部386と薄肉部385を交互に設けるための金型構造を容易に構成することができる。肉盗み部である各凹部130,230は、本実施例では、鍵の長手方向の幅(長さ)は同じでないものを含む。しかし、肉盗み部である各凹部130,230の鍵の長手方向の幅(長さ)は、全て同じであってもよい。
【0050】
また、肉盗み部である凹部130,230は、鍵の前後方向に同一線上に設けられる。これにより、側面381,382と第1部材310及び第2部材320(後第2部材322)が接する接触領域が連続した直線状の領域を含めることができ、接着剤の塗布がし易い鍵ベース部材300とすることができる。肉盗み部である各凹部130,230は、本実施例では、上下方向の幅(長さ)はほぼ同じである。しかし、肉盗み部である各凹部130,230の上下方向の幅(長さ)は、必ずしも同じである必要はない。
【0051】
また、鍵の前後方向FBの長さが異なる複数の肉盗み部である凹部130,230が設けられる。これにより、金型内の樹脂の冷却速度に合わせた適切な肉盗み部を設けて、良好にヒケ防止された鍵ベース部材300とすることができる。
【0052】
また、天面支持部である縦板380における天板301の下側Lo(換言すれば、天面の下側Lo)かつ厚肉部386又は薄肉部385の上側Upの側面381,382には、凹溝部である第1溝部110b,210bが設けられる。これにより、余分な接着剤を貯留しつつ、天板301にも接着剤を回し込むよう構成することができる。
【0053】
また、鍵ベース部材300は、天板301の幅(換言すれば、天面の幅)が広い幅広部301aと、天板301の幅(換言すれば、天面の幅)が狭い幅狭部301bとを有し、縦板380は、幅狭部301bに対応して設けられる。これにより、細くて長く、成形が難しい幅狭部301bであっても、良好に成形しつつ、第1部材310及び第2部材320(後第2部材322)を良好に取り付けた鍵ベース部材300を備える鍵盤楽器10を提供することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0055】
以下に、本願出願の最初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]天面と、前記天面の下面から垂下して設けられる天面支持部を含む鍵ベース部材と、
前記天面支持部の側面に配置される取付部材と、
を有し、
前記天面支持部は、前記鍵ベース部材の長手方向の互いに異なる位置に、鍵の配列方向の肉厚が第1肉厚の厚肉部と、前記第1肉厚より薄い第2肉厚の薄肉部と、を含み、
前記厚肉部における前記取付部材との接触領域は、前記薄肉部と前記取付部材との接触領域よりも大きい、
鍵を備える鍵盤楽器。
[2]前記天面支持部は、下側が開放する下側開放部を含み、
前記天面の下側かつ前記下側開放部の上側に、前記厚肉部と前記薄肉部が鍵の前後方向の同一線上に交互に設けられる、前記[1]に記載の鍵盤楽器。
[3]前記薄肉部は、前記側面から凹状に設けられる肉盗み部を含む、前記[1]に記載の鍵盤楽器。
[4]前記肉盗み部は、鍵の前後方向に亘って間欠的に設けられる、前記[3]に記載の鍵盤楽器。
[5]前記肉盗み部は、鍵の前後方向に同一線上に設けられる、前記[4]に記載の鍵盤楽器。
[6]鍵の前後方向の長さが異なる複数の前記肉盗み部が設けられる、前記[5]に記載の鍵盤楽器。
[7]前記天面支持部における前記天面の下側かつ前記厚肉部又は前記薄肉部の上側の前記側面には、鍵の前後方向に設けられる凹溝部が設けられる、前記[6]に記載の鍵盤楽器。
[8]前記鍵ベース部材は、前記天面の幅が広い幅広部と、前記天面の幅が狭い幅狭部とを有し、
前記天面支持部は、前記幅狭部に対応して設けられる、前記[1]乃至前記[7]の何れかに記載の鍵盤楽器。
【符号の説明】
【0056】
10 鍵盤楽器 11 操作部
12 イヤフォンジャック 20 ケース
21 上ケース 21a 上面
21b 上面 21c 上面
22 下ケース 23 下ボス部
24 上ボス部 25 内部ケース
25a 支持軸 25b 支持軸
26 上クッション 27 下クッション
28 上クッション 29 下クッション
30 白鍵 31 ハンマー押圧部
31a 孔部 32 規制突起
32a 左規制突起 32b 右規制突起
33 スイッチ押圧部 40 黒鍵
50 鍵盤 60 回路基板
61 スイッチ 70 ハンマー部材
71 ウェイト部 72 腕部
73 ハンマーキャップ 91 第1リブ
92 第2リブ 100 カウンタウェイト
110a 第1溝部 110b 第1溝部
120a 第2溝部 120b 第2溝部
130 凹部 131 第1凹部
132 第2凹部 133 第3凹部
134 第4凹部 135 第5凹部
170 当接面 210 第1溝部
210a 第1溝部 210b 第1溝部
220a 第2溝部 220b 第2溝部
230 凹部 231 第1凹部
232 第2凹部 233 第3凹部
234 第4凹部 235 第5凹部
236 第6凹部 271 当接面
272 当接面 300 鍵ベース部材
301 天板 301a 幅広部
301b 幅狭部 301c1 側端
301c2 側端 301c3 側端
301p 上面 301q 下面
302 前板 302c 後面
303 左側板 303a 側面
304 右側板 304a 側面
305 段部 305a 接続板
306 突起板 307 突起板
308 回転孔部 310 第1部材
310a 上面 310b 下面
310c 前面 310d 後面
310e 側面 310f 側面
311 前方部 312 後方部
320 第2部材 321 前第2部材
321a 上面 321c 前面
321d 後面 321e 側面
321f 側面 322 後第2部材
322a 上面 322c 前面
322d 後面 322e 側面
322f 側面 380 縦板
380a 後板 381 側面
382 側面 383 下側開放部
385 薄肉部 386 厚肉部