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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163345
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】自動閉蓋装置および自動閉蓋方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20231102BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G21F9/36 521A
G21F5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074194
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】飯室 洋一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 敏克
(57)【要約】
【課題】放射性物質を含む被処理物から分離され濃縮された放射性物質が収容された鋼製の容器に蓋体を自動でボルト締結する自動閉蓋装置を提供する。
【解決手段】自動閉蓋装置は、放射性物質が収容された容器本体と前記容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器に対して、前記容器本体に対する前記蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋機構を備えた閉蓋作業部と、前記閉蓋作業部に対して容器搬入搬出部から前記閉蓋対象容器を自動搬入または自動搬出する容器搬送機構と、前記容器搬送機構により前記閉蓋作業部に搬入された前記容器本体を所定位置に位置決めして固定する固定機構と、が共通の支持フレームに構築されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質が収容された容器本体と前記容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器に対して、前記容器本体に対する前記蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋機構を備えた閉蓋作業部と、
前記閉蓋作業部に対して容器搬入搬出部から前記閉蓋対象容器を自動搬入または自動搬出する容器搬送機構と、
前記容器搬送機構により前記閉蓋作業部に搬入された前記容器本体を所定位置に位置決めして固定する固定機構と、
が共通の支持フレームに構築されている自動閉蓋装置。
【請求項2】
前記自動閉蓋機構は、
前記蓋体を上方から撮像する撮像装置を備え、前記撮像装置により撮影された画像に基づいて、前記容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔と、前記蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔との間の相対的な位置ずれ量を検出し、各位置ずれ量に基づいて前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める自動位置ずれ検出機構と、
前記自動位置ずれ検出機構により検出された位置補正情報に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との相対位置を適切な位置に調節する自動位置調節機構と、
前記自動位置調節機構より調節された相対位置で各ボルト挿通孔にボルトを挿通して締結する自動ボルト締結機構と、
を備えている請求項1記載の自動閉蓋装置。
【請求項3】
前記自動位置調節機構は、前記固定機構により固定された前記容器本体に仮置きされた前記蓋体を挟むように対向配置され、前記蓋体を水平方向に押圧する複数組の押圧機構を備えている請求項2記載の自動閉蓋装置。
【請求項4】
閉蓋ヘッドと、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構と、を備えた閉蓋処理装置を備え、
前記閉蓋ヘッドに前記撮像装置と前記自動ボルト締結機構が装着されている請求項2または3記載の自動閉蓋装置。
【請求項5】
前記自動ボルト締結機構によりボルト締結した前記ボルトにマーキングするマーキング機構をさらに備え、前記閉蓋ヘッドに前記マーキング機構が装着されている請求項4記載の自動閉蓋装置。
【請求項6】
前記マーキング機構によるマーキング後に、前記撮像装置によりマーキング位置を撮像するマーキング確認機構を備えている請求項5記載の自動閉蓋装置。
【請求項7】
自動位置ずれ検出機構は、前記撮像装置により撮影された画像から各ボルト締結孔の中心位置と各ボルト挿通孔の中心位置とのずれ量を求め、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める請求項2記載の自動閉蓋装置。
【請求項8】
自動位置ずれ検出機構は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、補正量が最小となるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める請求項7記載の自動閉蓋装置。
【請求項9】
自動位置ずれ検出機構は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求めることができない場合に、異常信号を出力する請求項2記載の自動閉蓋装置。
【請求項10】
前記支持フレームは床面に対して移動可能なキャスターを備えている請求項1または2記載の自動閉蓋装置。
【請求項11】
方法クレーム
放射性物質が収容された容器本体と前記容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器を容器搬入搬出部から閉蓋作業部に自動搬入する搬入工程と、
前記搬入工程で前記閉蓋作業部に自動搬入した前記容器本体を、所定位置に位置決めして固定する固定工程と、
前記固定工程で固定された前記容器本体に対する前記蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋工程と、
前記自動閉蓋工程で閉蓋された閉蓋対象容器を前記閉蓋作業部から前記容器搬入搬出部に自動搬出する搬出工程と、
を備えている自動閉蓋方法。
【請求項12】
前記自動閉蓋工程は、
撮像装置を用いて前記蓋体を上方から撮像した画像に基づいて、前記容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔と、前記蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔との間の相対的な位置ずれ量を検出し、各位置ずれ量に基づいて前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める自動位置ずれ検出工程と、
前記自動位置ずれ検出工程により検出された位置補正情報に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との相対位置を適切な位置に調節する自動位置調節工程と、
前記自動位置調節工程により調節された相対位置で、自動ボルト締結機構を用いて各ボルト挿通孔にボルトを挿通して締結する自動ボルト締結工程と、
を備えている請求項11記載の自動閉蓋方法。
【請求項13】
前記自動位置調節工程は、前記固定工程により固定された前記容器本体に仮置きされた前記蓋体を挟むように対向配置された複数組の押圧機構により、前記蓋体を水平方向に押圧して位置調節する工程である請求項12記載の自動閉蓋方法。
【請求項14】
前記撮像装置と前記自動ボルト締結機構が装着された閉蓋ヘッドと、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構と、を備えた閉蓋処理装置を用いて、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間で移動させることにより、前記自動位置ずれ検出工程と前記自動ボルト締結工程を実行する請求項12または13記載の自動閉蓋方法。
【請求項15】
前記閉蓋ヘッドにマーキング機構が装着され、前記マーキング機構を用いて前記自動ボルト締結工程によりボルト締結した前記ボルトにマーキングするマーキング工程をさらに備えている請求項14記載の自動閉蓋方法。
【請求項16】
前記マーキング機構によるマーキング後に、前記撮像装置によりマーキング位置を撮像するマーキング確認工程を備えている請求項15記載の自動閉蓋方法。
【請求項17】
自動位置ずれ検出工程は、前記撮像装置により撮影された画像から各ボルト締結孔の中心位置と各ボルト挿通孔の中心位置とのずれ量を求め、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める工程である請求項12記載の自動閉蓋方法。
【請求項18】
自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、補正量が最小となるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める工程である請求項17記載の自動閉蓋方法。
【請求項19】
自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求めることができない場合に、異常信号を発する請求項11または12記載の自動閉蓋方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動閉蓋装置および自動閉蓋方法に関し、特に放射性物質が収容された容器本体と容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器に対して、蓋体を容器本体に自動的に締付固定する自動閉蓋装置および自動閉蓋方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の核分裂反応を利用する機器等から漏洩した放射性物質で汚染された土壌や草木、海や河川等の自然環境を回復するために、放射性物質を含む被処理物から放射性物質を分離して濃縮する様々な方策が研究されてきた。
【0003】
放射性物質の中でもセシウム134、セシウム137は水溶性で体内に取り込まれやすく健康への影響が大きいため、ヨウ素131と併せて主要三核種と言われている。特にセシウム137は、半減期が30年と長く、土壌に吸着されると容易に除染できない。
【0004】
このような放射性物質で汚染された土壌、草木や廃材等、一時的に蓄積された大量の汚染物も、保管設備に限界があり、減容化する必要性に迫られている。例えば草木や廃材等の可燃物や下水処理場で発生した汚泥であれば、焼却処理して放射性物質が濃縮された焼却主灰や焼却飛灰として減容化した後に厳しい管理下で保管されているが、同様にそれらの保管設備の容量に限界がある。
【0005】
特許文献1には、土壌を含む被処理物に含まれる放射性セシウムを溶融処理により分離濃縮する放射性セシウム分離濃縮方法が提案されている。当該放射性セシウム分離濃縮方法は、塩素系塩基度調整助剤を含む塩基度調整助剤を被処理物に添加する塩基度調整工程と、塩基度調整助剤が添加された被処理物を1200℃から1500℃に加熱して被処理物から放射性セシウムを揮散分離する分離工程と、前記分離工程で揮散分離された放射性セシウムを捕集する捕集工程と、を備えており、分離工程で放射性物質が除去された残物質は溶融スラグとして減容化される。
【0006】
特許文献1に記載されたような放射性セシウム分離濃縮方法を採用して、放射性物質で汚染された焼却主灰や焼却飛灰さらには土壌を溶融処理して、放射性物質を溶融スラグから揮散分離させることにより、放射性物質を溶融飛灰として濃縮分離することで、汚染物を減容化することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-011924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように濃縮分離された放射性物質は、最終的に鋼製の容器本体に収容されて保管されるのであるが、放射性物質が収容された容器本体に同じく重量物である鋼製の蓋体をボルト固定するために、容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔に、蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔を位置合わせした後に、其々にボルト締結する作業が必要となる。
【0009】
しかし、このような容器本体への蓋体の位置合せ作業およびボルト締結作業は、微妙な位置合わせ作業が必要となるため、現状は人手で行なわざるを得ず、その際に作業者が被ばくする虞があった。そのため、人手を介することなく自動で蓋体の締付作業を行なえる環境の整備が望まれていた。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題に鑑み、放射性物質を含む被処理物から分離され濃縮された放射性物質が収容された鋼製の容器に蓋体を自動でボルト締結する自動閉蓋装置および自動閉蓋方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による自動閉蓋装置の第一の特徴構成は、放射性物質が収容された容器本体と前記容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器に対して、前記容器本体に対する前記蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋機構を備えた閉蓋作業部と、前記閉蓋作業部に対して容器搬入搬出部から前記閉蓋対象容器を自動搬入または自動搬出する容器搬送機構と、前記容器搬送機構により前記閉蓋作業部に搬入された前記容器本体を所定位置に位置決めして固定する固定機構と、が共通の支持フレームに構築されている点にある。
【0012】
自動閉蓋装置は、閉蓋作業部と、容器搬送機構と、固定機構とが共通の支持フレームに構築されている。容器本体の開口に蓋体が仮置きされた閉蓋対象容器が、フォークリフトのような運搬車両によって自動閉蓋装置の容器搬入搬出部に運搬されると、閉蓋対象容器が容器搬送機構によって閉蓋作業部に自動搬送され、固定機構によって閉蓋作業部に位置決め固定される。閉蓋作業部に位置決め固定された閉蓋対象容器は、自動閉蓋機構によって容器本体に対する蓋体の相対位置が調節されて容器本体にボルトで締結固定される。その後、閉蓋対象容器が容器搬送機構によって閉蓋作業部から容器搬入搬出部に搬送されると、フォークリフトのような運搬車両によって自動閉蓋装置から搬出される。閉蓋対象容器の自動閉蓋装置への搬入から、蓋体が容器本体にボルトで締結固定され、自動閉蓋装置から搬出されるまでの間の一連の作業が人手を介することなく自動で行われるので、容器本体に収容された放射性物質による作業者の被ばくが回避できるようになる。
【0013】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記自動閉蓋機構は、前記蓋体を上方から撮像する撮像装置を備え、前記撮像装置により撮影された画像に基づいて、前記容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔と、前記蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔との間の相対的な位置ずれ量を検出し、各位置ずれ量に基づいて前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める自動位置ずれ検出機構と、前記自動位置ずれ検出機構により検出された位置補正情報に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との相対位置を適切な位置に調節する自動位置調節機構と、前記自動位置調節機構により調節された相対位置で各ボルト挿通孔にボルトを挿通して締結する自動ボルト締結機構と、を備えている点にある。
【0014】
撮像装置によって閉蓋対象容器の上方から撮像した蓋体に形成されたボルト挿通孔を含む画像を画像処理することにより、ボルト挿通孔とボルト挿通孔の内部に存在するボルト締結孔との間の相対的な位置ずれ量が検出でき、その結果からボルト挿通孔を介してボルトを挿通してボルト締結孔にボルトを締結可能となる適切な位置に対する位置ずれ量が検出される。自動位置調節機構によって当該位置ずれ量に基づいて容器本体と蓋体との相対位置が適切な位置に自動調節されると、自動ボルト締結機構によって各ボルト挿通孔にボルトが挿通されて締結され、蓋体が容器に自動で固定される。
【0015】
同第三の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、前記自動位置調節機構は、前記固定機構により固定された前記容器本体に仮置きされた前記蓋体を挟むように対向配置され、前記蓋体を水平方向に押圧する複数組の押圧機構を備えている点にある。
【0016】
固定機構により固定された容器本体に対して蓋体は水平方向に移動可能な状態となる。そこで、蓋体を挟むように対向配置された押圧機構の何れか一方を押圧作動させることで、蓋体を作動方向に移動させることができる。そのような押圧機構を複数組設けることにより、蓋体を複数方向に移動させることができ、蓋体に形成されたボルト挿通孔と容器本体に形成されたボルト締結孔との相対位置を適切に調整することができるようになる。
【0017】
同第四の特徴構成は、上述した第一または第三の特徴構成に加えて、閉蓋ヘッドと、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構と、を備えた閉蓋処理装置を備え、前記閉蓋ヘッドに前記撮像装置と前記自動ボルト締結機構が装着されている点にある。
【0018】
閉蓋処理装置に備えたXY移動機構を介して、撮像装置と自動ボルト締結機構を備えた閉蓋ヘッドを、蓋体の上方空間でXY二次元平面に沿って移動させることで、撮像装置を用いて各ボルト挿通孔を上方から撮像することができ、自動ボルト締結機構を用いて各ボルト挿通孔にボルトを挿通させ、ボルト締結孔にボルトを締付固定することができる。
【0019】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記自動ボルト締結機構によりボルト締結した前記ボルトにマーキングするマーキング機構をさらに備え、前記閉蓋ヘッドに前記マーキング機構が装着されている点にある。
【0020】
閉蓋ヘッドにマーキング機構を備えることにより、ボルト締結孔に締付固定されたボルトに締結作業の終了を示すマーキングすることで、作業の進捗を管理することができるようになる。
【0021】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記マーキング機構によるマーキング後に、前記撮像装置によりマーキング位置を撮像するマーキング確認機構を備えている点にある。
【0022】
自動ボルト締結機構によりボルトが締結された後に、マーキング機構によりマーキングされたボルトが撮像装置で撮像される。マーキング確認機構は、当該撮像画像に基づいてボルトに適切にマーキングされているか否かを確認することができるようになる。
【0023】
同第七の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出機構は、前記撮像装置により撮影された画像から各ボルト締結孔の中心位置と各ボルト挿通孔の中心位置とのずれ量を求め、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める点にある。
【0024】
撮像画像に表れるボルト挿通孔に対して画像処理を施すことにより、ボルト挿通孔の中心位置が求まり、ボルト挿通孔の内部に表れるボルト締結孔に対して画像処理を施すことにより、ボルト締結孔の中心位置が求まる。各ボルト挿通孔の中心位置と各ボルト締結孔の中心位置から両者のずれ量およびずれ方向が其々求まるので、其々のずれ量のうちの最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体に対する蓋体の位置補正情報、つまりずれ補正量とずれ補正方向を求めることで、全てのボルト締結孔にボルトを締め付けることができるようになる。
【0025】
同第八の特徴構成は、上述した第七の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出機構は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、補正量が最小となるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める点にある。
【0026】
其々のずれ量のうちの最大値が所定の許容ずれ量に収まり、その補正量が最小となるように蓋体の位置補正情報、つまりずれ補正量とずれ補正方向を求めることで、容器本体と蓋体との位置関係を効率的に調節することができる。
【0027】
同第九の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出機構は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求めることができない場合に、異常信号を出力する点にある。
【0028】
ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体に対する蓋体の位置補正情報が求められない場合には、規格を外れた容器または蓋体である可能性が高く、異常信号を出力することで不良品であることを管理者に報知し、適切な対応を促すことができる。
【0029】
同第十の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、前記支持フレームは床面に対して移動可能なキャスターを備えている点にある。
【0030】
支持フレームにキャスターを備えることにより、重量物である自動閉蓋装置であっても、作業場の任意の位置に柔軟に移動設置することができるようになる。
【0031】
本発明による自動閉蓋方法の第一の特徴構成は、放射性物質が収容された容器本体と前記容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器を容器搬入搬出部から閉蓋作業部に自動搬入する搬入工程と、前記搬入工程で前記閉蓋作業部に自動搬入した前記容器本体を、所定位置に位置決めして固定する固定工程と、前記固定工程で固定された前記容器本体に対する前記蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋工程と、前記自動閉蓋工程で閉蓋された閉蓋対象容器を前記閉蓋作業部から前記容器搬入搬出部に自動搬出する搬出工程と、を備えている点にある。
【0032】
同第二の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記自動閉蓋工程は、撮像装置を用いて前記蓋体を上方から撮像した画像に基づいて、前記容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔と、前記蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔との間の相対的な位置ずれ量を検出し、各位置ずれ量に基づいて前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める自動位置ずれ検出工程と、前記自動位置ずれ検出工程により検出された位置補正情報に基づいて、前記容器本体と前記蓋体との相対位置を適切な位置に調節する自動位置調節工程と、前記自動位置調節工程により調節された相対位置で、自動ボルト締結機構を用いて各ボルト挿通孔にボルトを挿通して締結する自動ボルト締結工程と、を備えている点にある。
【0033】
同第三の特徴構成は、上述した第一の特徴構成に加えて、前記自動位置調節工程は、前記固定工程により固定された前記容器本体に仮置きされた前記蓋体を挟むように対向配置された複数組の押圧機構により、前記蓋体を水平方向に押圧して位置調節する工程である点にある。
【0034】
同第四の特徴構成は、上述した第二または第三の特徴構成に加えて、前記撮像装置と前記自動ボルト締結機構が装着された閉蓋ヘッドと、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構と、を備えた閉蓋処理装置を用いて、前記閉蓋ヘッドを前記蓋体の上方空間で移動させることにより、前記自動位置ずれ検出工程と前記自動ボルト締結工程を実行する点にある。
【0035】
同第五の特徴構成は、上述した第四の特徴構成に加えて、前記閉蓋ヘッドにマーキング機構が装着され、前記マーキング機構を用いて前記自動ボルト締結工程によりボルト締結した前記ボルトにマーキングするマーキング工程をさらに備えている点にある。
【0036】
同第六の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記マーキング機構によるマーキング後に、前記撮像装置によりマーキング位置を撮像するマーキング確認工程を備えている点にある。
【0037】
同第七の特徴構成は、上述した第二の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出工程は、前記撮像装置により撮影された画像から各ボルト締結孔の中心位置と各ボルト挿通孔の中心位置とのずれ量を求め、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める工程である点にある。
【0038】
同第八の特徴構成は、上述した第七の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、補正量が最小となるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求める工程である点にある。
【0039】
同第九の特徴構成は、上述した第一または第二の特徴構成に加えて、自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、前記容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求めることができない場合に、異常信号を出力する点にある。
【発明の効果】
【0040】
以上説明した通り、本発明によれば、放射性物質を含む被処理物から分離され濃縮された放射性物質が収容された鋼製の容器に蓋体を自動でボルト締結する自動閉蓋装置および自動閉蓋方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】(a)は容器搬入搬出部の右手前上方から俯瞰した自動閉蓋装置の斜視図、(b)は容器搬入搬出部の左手前上方から俯瞰した自動閉蓋装置の斜視図
図2】(a)は閉蓋作業部の右奥上方から俯瞰した自動閉蓋装置の斜視図、(b)は閉蓋作業部の左奥上方から俯瞰した自動閉蓋装置の斜視図
図3】(a)は閉蓋対象容器を上方手前から眺めた斜視図、(b)は閉蓋対象容器を下方手前から眺めた斜視図、(c)は閉蓋対象容器を縦積した状態の説明図、(d)は蓋体に形成したボルト挿通孔と、容器本体に形成したボルト締結孔と、パッキンとの位置関係を説明する要部断面図、(e)は蓋体の上方から撮像したボルト挿通孔とボルト締結孔の位置関係を示す画像の説明図、(f)は蓋体の上方から撮像したボルト挿通孔とボルト締結孔の位置関係を示し、所定の許容ずれ量に収まった状態を示す画像の説明図
図4】(a)は自動閉蓋装置に備えた容器搬送機構の平面図、(b)は同斜視図
図5】自動閉蓋装置に備えた固定機構の説明図
図6】(a)は自動閉蓋装置に備えたXYZ移動機構の説明図、(b)はXYZ移動機構に備えた閉蓋ヘッドの説明図
図7】(a)は閉蓋ヘッドに備えた撮像装置の説明図、(b)は閉蓋ヘッドに備えた自動ボルト締結機構の説明図、(c)は閉蓋ヘッドに備えたマーキング機構の説明図
図8】自動閉蓋装置に備えた自動位置調節機構の説明図
図9】自動閉蓋装置を用いた自動閉蓋方法の全体の手順を示すフローチャート
図10】自動閉蓋装置を用いた自動閉蓋方法の主に搬入および固定の手順を示すフローチャート
図11】自動閉蓋装置を用いた自動閉蓋方法の主にボルト締結の手順を示すフローチャート
図12】自動閉蓋装置を用いた自動閉蓋方法の主に搬出の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明による自動閉蓋装置および自動閉蓋方法を、図面を参照して説明する。
【0043】
[閉蓋対象容器の構成]
図3(a)から(c)には、自動閉蓋装置により閉蓋処理される閉蓋対象容器10が示されている。
閉蓋対象容器10は、放射性物質による汚染物から濃縮分離された高濃度の放射性物質が収容される鋼製の直方体形状の容器本体11と、容器本体11の開口部を閉塞する蓋体12とで構成されている(図3(a)参照。)。本実施形態では、容器本体11は、左右幅1300mm、奥行き1300mm、高さ1200mm、厚み3mmに設定されている。なお、容器本体11のサイズは例示に過ぎず、適宜設定可能な値である。
【0044】
蓋体12の上面には一対の把持部12Aが形成されており、蓋体12の四辺の縁部には、其々等間隔で4か所にボルト挿通孔12Hが形成されている。当該ボルト挿通孔12Hに対応して、容器本体11の開口縁部に形成されたフランジ部11Aには、其々等間隔で4か所にボルト締結孔11Hが形成されている。内径が10mmに形成されたボルト締結孔11Hの内面には締結用のボルトBと螺合する雌ねじが形成され、内径が15mmに形成されたボルト挿通孔12Hよりも小径に形成されている。
【0045】
蓋体12の下面には、容器本体11の開口サイズより若干小さな寸法で、端縁よりも内側で突起12Bが下方に延出形成されている。別設備である濃縮分離装置で濃縮分離された放射性物質が別設備である自動投入機構を介して容器本体11に自動投入された後に、別設備である蓋体自動仮置き機構を介して容器本体11の開口部を覆うように蓋体12が仮置きされる。
【0046】
容器本体11の開口部に仮置きされた蓋体12が横ずれしても、容器本体11に嵌入した突起12Bが容器本体11の内壁面と当接するため、離脱することはない。なお、ボルト挿通孔12Hとボルト締結孔11Hとの間にはパッキンPが介装され、当該パッキンPは蓋体12に形成されたボルト挿通孔12Hの周囲に接着固定されている(図3(d)参照。)。
【0047】
容器本体11の底部には、左右幅方向端部に脚部11Bが延出形成され、左右の脚部11Bの間には、フォークリフトの爪を受け入れる爪案内部11Cが設けられている(図3(b)参照。)。
【0048】
蓋体12が仮置きされた容器本体11がフォークリフトで搬送されて、本発明の自動閉蓋装置に搬入される。自動閉蓋装置では、蓋体12に形成された各ボルト挿通孔12Hを介してボルトBが挿通され、容器本体11に形成された各ボルト締結孔11HにボルトBが締付固定された後に、自動閉蓋装置から搬出され、フォークリフトを介して管理された保管場所に縦積されて保管される(図3(C)参照。)。
【0049】
[自動閉蓋装置の構成]
図1(a),(b)および図2(a),(b)には、自動閉蓋装置1が示されている。自動閉蓋装置1は、閉蓋作業部1Aと、容器搬送機構1Bと、固定機構1Cとが共通の支持フレームFに構築されている。鋼製の支持フレームFは、平面視が矩形に形成され、支持フレームFの下面には、8か所にキャスターCAが取り付けられ、各キャスターCAの近傍には支持フレームFとの螺合により伸縮自在なアンカーボルトABが取り付けられている。
【0050】
作業場の適切な位置に自動閉蓋装置1を移動させた後にアンカーボルトABを伸長させることで、相対的に床面からキャスターCAを浮上させて、自動閉蓋装置1を位置固定することができる。なお、移動の必要が無い場合には、作業場の床面に埋設したアンカーを介して固定してもよい。
【0051】
支持フレームFには、閉蓋作業部1Aと、容器搬送機構1Bと、固定機構1Cとを覆うように、縦および横方向に複数本の補助フレームSFが設けられ、図示していないが、補助フレームSFには、容器搬入搬出部1Dを除いて、メッシュ状の安全柵が取り付けられている。
【0052】
容器本体11の開口に蓋体12が仮置きされた閉蓋対象容器10が、フォークリフトのような運搬車両によって自動閉蓋装置1の容器搬入搬出部1Dに搬入されると、容器搬送機構1Bによって閉蓋対象容器10が閉蓋作業部1Aに自動搬送された後に、固定機構1Cにより位置決め固定される。
【0053】
閉蓋作業部1Aに位置決め固定された閉蓋対象容器10は、自動閉蓋機構20によって、容器本体11に対する蓋体12の相対位置、つまり、ボルト挿通孔12Hとボルト締結孔11Hの孔位置が合うように調節され、容器本体11にボルトBで締結固定され、ボルトBに締結固定済みであることを示すマークがスタンプされる。
【0054】
その後、固定機構1Cが解除され、閉蓋対象容器10が容器搬送機構1Bによって閉蓋作業部1Aから容器搬入搬出部1Dに搬送され、フォークリフトによって自動閉蓋装置1から搬出される。
【0055】
閉蓋対象容器10の自動閉蓋装置1への搬入から、蓋体12が容器本体11にボルトBで締結固定され、自動閉蓋装置1から搬出されるまでの間の一連の作業が人手を介することなく自動で行われるので、容器本体11に収容された放射性物質による作業者の被ばくが回避できるようになる。
【0056】
[容器搬送機構の構成]
図1,2,4に示すように、容器搬送機構1Bは、容器搬入搬出部1Dから閉蓋作業部1Aにかけて延在する一対の案内レール30,31と、一対の案内レール30,31の間に回転可能に支持された複数の搬送ローラ32とを備えたローラコンベアで構成されている。
【0057】
容器搬入搬出部1Dと閉蓋作業部1Aの中間部を境にして、容器搬入搬出部1D側に配された一対の案内レール30,31は、容器搬入搬出部1D側が幅広になるように平面視で傾斜配置されている。容器搬入搬出部1Dに搬入された閉蓋対象容器10を幅広部で受け入れて、閉蓋作業部1Aへの搬送に連れて案内レール30,31の間の中央部に移動される。案内レール30,31の上部には、案内レール30,31に沿って垂直軸心周りに転動することで、閉蓋対象容器10を閉蓋作業部1Aに案内する複数の案内コロ33が配置されている。
【0058】
容器搬入搬出部1Dから閉蓋作業部1Aに到る長手方向の中間部を境にして、容器搬入搬出部1D側に配された搬送ローラ32Dが第1駆動モータ34により駆動され、閉蓋作業部1A側に配された搬送ローラ32Aが第2駆動モータ35により駆動されるように、其々駆動連結機構を介して駆動連結されている。
【0059】
案内レール30,31の上部には、容器搬入搬出部1D側に排出到着センサ36および容器有無センサ37が搬送方向に沿って所定距離離れて設置され、閉蓋作業部1Aの端部側に搬入到着センサ38および搬入到着前センサ39が設置されている。何れも搬送路を挟んで配置された発光素子と受光素子でなる光電センサで構成され、発光素子からの光が受光素子で検出されるか否かで閉蓋対象容器10の存在を認識するセンサである。
【0060】
閉蓋対象容器10の搬入時には、フォークリフトで搬送された閉蓋対象容器10が容器有無センサ37で検知された後、操作スイッチ盤1Fに備えた容器搬入スイッチが作業者によってオン操作されると、制御盤1Gに備えた制御部により第1駆動モータ34および第2駆動モータ35が正転起動される。さらに、搬入到着センサ38で閉蓋対象容器10が検知されると、制御部により第1駆動モータ34および第2駆動モータ35が停止される。
【0061】
閉蓋対象容器10の搬出時には、制御盤1Gに備えた制御部により第1駆動モータ34および第2駆動モータ35が逆転起動され、閉蓋対象容器10が排出到着センサ36で検知されると、制御盤1Gに備えた制御部により第1駆動モータ34および第2駆動モータ35が停止される。
【0062】
[固定機構の構成]
図1,2,5に示すように、固定機構1Cは、閉蓋作業部1Aに搬送された閉蓋対象容器10の容器本体11を位置決め固定する機構であり、平面視で閉蓋作業部1Aに搬送された容器本体11を対角方向の一対の角部に当接する角度90度の受止部40,41を備えている。
【0063】
一方の受止部40は、搬入された容器本体11の角部を受け止めるべく、搬入方向に沿って容器本体11の前端部に当接するように容器搬送機構1Bに固定設置されている。他方の受止部41は、図5に示すように、エアシリンダ42のピストンに取付けられている。エアシリンダ42は、フレームFに固定される基台43に立設された支持部44に取り付けられている。
【0064】
閉蓋対象容器10の搬入または搬出時に、他方の受止部41が閉蓋対象容器10の通過経路から退避すべく、エアシリンダ42のピストンは引退姿勢に切替えられる。そして、閉蓋対象容器10が閉蓋作業部1Aに搬入された後に、ピストンが伸長駆動されて、受止部41により容器本体11が押圧される。
【0065】
基台43に対するピストンの進退作動は、制御盤1Gに備えた制御部により制御される。
【0066】
[自動閉蓋機構の構成]
図1,2に示すように、閉蓋作業部1Aには、自動閉蓋機構20が設けられている。
自動閉蓋機構20は、自動位置ずれ検出機構50と、自動位置調節機構60と、自動ボルト締結機構70とを備えている。
【0067】
自動位置ずれ検出機構50は、蓋体12を上方から撮像する撮像装置52(図6(b)参照。)と、撮像装置52により撮影された画像(図3(e)参照。)に基づいて、容器本体11の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔11Hと、蓋体12の周縁部に形成されたボルト挿通孔12Hとの間の相対的な位置ずれ量を、各ボルト挿通孔12Hに対して検出し、各位置ずれ量に基づいて容器本体11に対する蓋体12の位置補正情報を求める演算部とを備えている。当該演算部は、制御盤1Gに備えた制御部に備わっている。
【0068】
図3(e)には、撮像装置52により撮影された画像に含まれる一つのボルト挿通孔12Hと対応するボルト締結孔11Hの位置関係が例示されている。撮像画像に表れる円形のボルト挿通孔12Hに対して画像処理を施すことにより、ボルト挿通孔12Hの中心位置12Oが求まり、ボルト挿通孔12Hの内部に表れる弧状のボルト締結孔11Hに対して画像処理を施すことにより、ボルト締結孔11Hの中心位置11Oが求まる。
【0069】
各ボルト挿通孔12Hの中心位置12Oと各ボルト締結孔11Hの中心位置11Oから両者のずれ量およびずれ方向が其々求まるので、其々のずれ量のうちの最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体11に対する蓋体12の位置補正情報、つまりずれ補正量とずれ補正方向を求めることで、全てのボルト締結孔11HにボルトBを締め付けることができる位置関係に調節できる。
【0070】
本実施形態では、図3(f)に示すように、所定の許容ずれ量を、ボルト締結孔11Hの内周全体がボルト挿通孔12Hに位置し、ボルト締結孔11Hの内周の一部がボルト挿通孔12Hの内周と接する場合の中心位置11Oと中心位置12Oとの間のずれ量としている。なお、許容ずれ量は、当該ずれ量よりも小さな値に設定してもよい。
【0071】
自動位置ずれ検出機構50は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、その際の補正量が最小となるように、容器本体11に対する蓋体12の位置補正情報を求めることが好ましく、容器本体11と蓋体12との位置関係を迅速かつ効率的に調節することができる。
【0072】
自動位置ずれ検出機構50に備えた演算部は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体11に対する蓋体12の位置補正情報を求めることができない場合には、容器本体11に形成されたボルト締結孔11H、または蓋体12に形成されたボルト挿通孔12Hの規格が外れた不良品であると認識して、異常信号を出力するように構成されている。異常信号に基づいて警報(例えば警告音の鳴動や警告ランプの点滅など)を出力することにより、不良品であることを作業者や管理者に報知し、適切な対応を促す。
【0073】
図1,2,8に示すように、自動位置調節機構60は、閉蓋作業部1Aを囲むようにフレームFに立設されたアルミニウム製の4本の支柱21,22,23,24を連結する横梁25,26,27に支持され、固定機構1Cにより固定された容器本体11に仮置きされた蓋体12を挟むように対向配置され、蓋体12を水平方向に押圧する4組の押圧機構62,64,66,68により構成されている。
【0074】
図8には、平面視で4組の押圧機構62,64,66,68が示されている。
何れも電動シリンダと、電動シリンダのピストン先端に備えた押圧部で構成されている。押圧機構66,68のうち、容器搬入搬出部1Dの側に配された押圧機構66,68は、閉蓋対象容器10の搬入および搬出時に閉蓋対象容器10の通過経路から退避可能なように、退避用のエアシリンダ67,69のピストンに固定されている。
【0075】
自動位置ずれ検出機構50により検出された位置ずれ量に基づいて位置調節を行なう手順を説明する。先ず、各電動シリンダ66,68が蓋体12を挟んで対向配置されるように、退避用のエアシリンダ67,69が伸長作動される。その後、電動シリンダ62,64,66,68の全8本が蓋体12に接触する位置まで伸出して、全てのシリンダ62,64,66,68が蓋体12に接触した状態で停止する。各シリンダ62,64,66,68の作動状態によって蓋体12の現在位置を認識した後に全8本のピストンが原点位置へ後退する。その後に蓋体12を補正量分だけ移動させるために必要となるシリンダのピストンのみ(最大で4本)が伸出して蓋体12を所定位置まで移動させる。つまり、X方向とY方向の位置調節が同時に実施される。なお、各シリンダ62,64,66,68には、ピストンの進退状態を検知するストロークセンサが設けられ、制御盤1Gに備えた制御部により各ストロークセンサの値が読み込まれ、各シリンダ62,64,66,68が制御される。
【0076】
その結果、蓋体12に形成されたボルト挿通孔12Hと容器本体11に形成されたボルト締結孔11Hとの相対位置を適切に調整することができるようになる。
【0077】
自動ボルト締結機構70は、自動位置調節機構60より調節された相対位置で各ボルト挿通孔12HにボルトBを挿通して各ボルト締結孔11Hに締結する電動ドライバを備えている。以下に、詳述する。
【0078】
図6(a)に示すように、自動閉蓋機構20には、閉蓋ヘッド80と、閉蓋ヘッド80を蓋体12の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構90と、を備えた閉蓋処理装置を備えている。
【0079】
XY移動機構90は、支柱21,22の間に架け渡された横梁28に沿うY軸方向に閉蓋ヘッド80を往復駆動するモータ駆動式の第1駆動機構91と、横梁28を横梁28と直交する横梁26,27に沿うX軸方向に駆動するモータ駆動式の第2駆動機構92を備えて構成されている。さらに、横梁28に対して閉蓋ヘッド80をZ軸方向に駆動する電動シリンダを備えた第3駆動機構93を備えている。
【0080】
図6(b)に示すように、閉蓋ヘッド80には、撮像装置52、自動ボルト締結機構70、マーキング機構100が装着されている。
図7(a)には、撮像装置52の外観が示され、カメラ、合焦レンズ、照明光源などがケーシングに装着されている。XY移動機構90による閉蓋ヘッド80の基準位置からの移動量に基づいて、閉蓋ヘッド80の座標が把握される。閉蓋ヘッド80に対する撮像装置52の取付位置を加味して、閉蓋作業部1Aに搬入された閉蓋対象容器10の蓋体12およびボルト挿通孔12Hなどの閉蓋作業部1Aにおける座標が正確に把握できる。
【0081】
図7(b)には、自動ボルト締結機構70の外観が示され、ボルト締結用のドライバとドライバを駆動する電動モータなどを備えている。図7(c)には、自動ボルト締結機構70により締結されたボルトBの頭部にバーマーク「-」をスタンプするマーキング機構100の外観が示されている。
【0082】
当該実施形態では、ボルトBの頭部にバーマーク「-」をスタンプするスタンプヘッド101が設けられている。締結が終了したボルトBにスタンプマークを付すことで、作業の進捗を管理することができ、後にボルトBの緩みの有無を検知することができる。
【0083】
スタンプヘッド101は予め設定された高さだけ第3駆動機構93によってZ軸方向に沿って下方に降下することにより、ボルトBの頭部にボルトの緩み確認用のバーマーク「-」が付される。
【0084】
なお、本実施形態では、スタンプヘッド101により各ボルトの頭部に一定方向に指向したバーマーク「-」をスタンプすることで、後に各バーマーク「-」の相対的位置のずれの有無に基づいて、弛みが生じたボルトを特定できるように構成しているが、スタンプマークはバーマーク「-」に限るものではない。
【0085】
図9には、上述した自動閉蓋装置1を用いた自動閉蓋方法の全工程が示されている。閉蓋対象容器10が閉蓋作業部1Aに搬入されると(SA1)、XY移動機構90により撮像装置52が蓋体12に備えたボルト挿通孔12Hに沿って移動されて、蓋体12の位置補正量情報が算出される(SA2)。
【0086】
位置補正量情報に基づいて自動位置調節機構60により蓋体12の位置が補正されると(SA3)、XY移動機構90により自動ボルト締結機構70が目標となるボルト挿通孔12Hに移動されて、順番にボルトBが仮止めされ、その後に初期位置に戻って本締めされ(SA4)、さらに、マーキング機構100によりボルトの頭部などにスタンプが付される(SA5)。このようにして閉蓋処理が終了すると、閉蓋作業部1Aから閉蓋対象容器10が搬出される(SA6)。
【0087】
各ボルト挿通孔と対応するボルト締結孔との位置関係、つまり容器本体と蓋体との位置関係が適切に調節された後に、所定のボルト挿通孔から所定の順序でボルトを挿通して対応するボルト締結孔に仮止めすることで、ボルトの仮止め時に容器本体と蓋体との位置関係が変動することがあっても、全てのボルトを仮止めすることができ、仮止めした後に適切に本締めすることができる。
【0088】
なお、所定のボルト挿通孔とは、予め設定することができるとの意味であり、例えば位置調節後のずれ量が最も大きな位置であるとか、ずれ量が最も小さな位置であるとか、蓋体が矩形形状であれば角の位置であるとか、閉蓋ヘッドが最も近い位置であるとか、といったように任意に設定することができる。また、所定の順序とは、仮止めする順序を予め設定することができるとの意味であり、所定のボルト挿通孔から右回りに順番にとか、左回りに順番にとか、左右交互にとか、所定のボルト挿通孔に対して左右何れかの方向で対向位置に順番にとか、といったように任意に設定することができる。
【0089】
図10には、ステップSA1,SA2の詳細フローが示されている。閉蓋対象容器10がフォークリフトで自動閉蓋装置1に搬入され、閉蓋対象容器10が容器有無センサ37で検知された後、作業者が操作スイッチ盤1Fに備えた容器搬入スイッチをオン操作すると(SB1)、制御盤1Gに備えた制御部により第1駆動モータ34および第2駆動モータ35が正転起動されて閉蓋作業部1Aに搬送される(SB2)。その後、固定機構1Cにより閉蓋対象容器10が位置決め固定される(SB3)。
【0090】
閉蓋処理装置が作動してXY移動機構により閉蓋ヘッド80が予め定めた移動経路(例えば、蓋体12に配されたボルト挿通孔12Hの配列方向に沿って一回りする経路)に従って移動し(SB4)、撮像装置52により蓋体12に形成されたボルト挿通孔12Hが上方から撮像される(SB5)。全てのボルト挿通孔12Hが撮像されると(SB6,Y)、演算部によって、ボルト挿通孔12Hとボルト締結孔11Hの中心位置のずれに基づいて蓋体12の位置補正情報が算出される(SB7)。適切に位置補正情報が求まらない場合には(SB8,N)、演算部から異常信号が出力される(SB9)。
【0091】
図11には、ステップSA3,SA4の詳細フローが示されている。ステップSB7で蓋体12の位置補正情報が算出されると、自動位置調節機構60が作動して(SC1)、4組の押圧機構62,64,66,68により蓋体12の位置が調節される(SC2)。その後、閉蓋処理装置が作動して、XY移動機構により閉蓋ヘッド80が予め定めた移動経路(例えば、蓋体12に配されたボルト挿通孔12Hの配列方向に沿って一回りする経路や、ボルト挿通孔12Hの位置が対角となる順番に沿う経路)に従って移動して(SC3)、順番にボルト締結孔11HにボルトBが仮止めされる(SC4,SC5)。
【0092】
さらに、閉蓋処理装置が作動して、XY移動機構により閉蓋ヘッド80が同じ移動経路に移動して(SC6)、各ボルトBが本締めされる(SC7,SC8)。
【0093】
図12には、ステップSA5,SA6の詳細フローが示されている。閉蓋処理装置が作動して、XY移動機構により閉蓋ヘッド80が同じ移動経路に移動して(SD1)、順番にボルトBの頭部に本締め完了を示すマークがスタンプされた後に(SD2)、撮像装置52により撮像された画像に対する画像処理でボルトBの頭部に適切にスタンプされているか否かが確認される(SD3,SD4)。スタンプが適切でないと判断された場合には、再度ボルトマーキングが繰り返され(SD4,N)、スタンプが適切であると判断された場合に(SD4,Y)、ステップSD1に戻り、全てのボルトBに対して同様の処理が繰り返される(SD5)。
【0094】
全てのボルトBに対してスタンプが終了すると(SD5,Y)、固定機構1Cによる位置決め固定を解除して(SD6)、容器搬送機構1Bを作動させる。閉蓋作業部1Aから閉蓋対象容器10を容器搬入搬出部1Dに向けて搬送されたことが排出到着センサ36で検出されると容器搬送機構1Bが停止され、作業者が操作スイッチ盤1Fに備えた容器搬出スイッチをオン操作した後に(SD7)、閉蓋対象容器10がフォークリフトを用いて搬出される(SD8)。
【0095】
以上説明したように、本発明による自動閉蓋方法は、放射性物質が収容された容器本体と容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器を容器搬入搬出部から閉蓋作業部に自動搬入する搬入工程と、搬入工程で閉蓋作業部に自動搬入した容器本体を、所定位置に位置決めして固定する固定工程と、固定工程で固定された容器本体に対する蓋体の相対位置を調節して蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋工程と、自動閉蓋工程で閉蓋された閉蓋対象容器を閉蓋作業部から容器搬入搬出部に自動搬出する搬出工程と、を備えている。
【0096】
自動閉蓋工程は、撮像装置を用いて前記蓋体を上方から撮像した画像に基づいて、容器本体の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔と、蓋体の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔との間の相対的な位置ずれ量を検出し、各位置ずれ量に基づいて容器本体に対する蓋体の位置補正情報を求める自動位置ずれ検出工程と、自動位置ずれ検出工程により検出された位置補正情報に基づいて、容器本体と蓋体との相対位置を適切な位置に調節する自動位置調節工程と、自動位置調節工程により調節された相対位置で、自動ボルト締結機構を用いて各ボルト挿通孔にボルトを挿通して締結する自動ボルト締結工程と、を備えている。
【0097】
自動位置調節工程は、固定工程により固定された容器本体に仮置きされた蓋体を挟むように対向配置された複数組の押圧機構により、蓋体を水平方向に押圧して位置調節する工程である。
【0098】
撮像装置と自動ボルト締結機構が装着された閉蓋ヘッドと、閉蓋ヘッドを蓋体の上方空間でXY二次元平面上を移動可能に支持するXY移動機構と、を備えた閉蓋処理装置を用いて、閉蓋ヘッドを蓋体の上方空間で移動させることにより、自動位置ずれ検出工程と自動ボルト締結工程を実行する。
【0099】
自動位置ずれ検出工程は、撮像装置により撮影された画像から各ボルト締結孔の中心位置と各ボルト挿通孔の中心位置とのずれ量を求め、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体に対する蓋体の位置補正情報を求める工程である。
【0100】
自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まり、かつ、補正量が最小となるように、容器本体に対する蓋体の位置補正情報を求める工程である。
【0101】
自動位置ずれ検出工程は、ずれ量の最大値が所定の許容ずれ量に収まるように、容器本体に対する前記蓋体の位置補正情報を求めることができない場合に、異常信号を出力する。
【0102】
上述した実施形態では、放射性物質が収容された容器本体と容器本体の開口に仮置きされた蓋体とを含む閉蓋対象容器に対して、容器本体に対する蓋体の相対位置を調節して前記蓋体をボルトで締結固定する自動閉蓋装置について説明したが、閉蓋ヘッドに備えた自動ボルト締結機構に代えて、自動ボルト解除機構を備えてもよい。
【0103】
固定機構1Cにより閉蓋作業部1Aに対応する開蓋作業部に固定された開蓋対象容器に対して、XY移動機構により移動される撮像装置52により撮影された画像によりボルト締結位置が把握される。把握されたボルト締結位置に自動ボルト解除機構を移動させてボルトを解除するように構成すればよい。
【0104】
なお、自動ボルト締結機構や自動ボルト解除機構の駆動源として電動モータを用いることができるが、圧縮エアや油圧を用いてもよい。
【0105】
上述した実施形態では、位置補正量情報に基づいて自動位置調節機構60により蓋体12の位置が補正されると、直ちにXY移動機構90により自動ボルト締結機構70が目標となるボルト挿通孔12Hに移動されて、順番にボルトBが仮止めされる例を説明したが、自動位置調節機構60により蓋体12の位置が補正された後に、再度、自動位置ずれ検出機構50に備えた撮像装置52により蓋体12を上方から撮像し、当該撮像画像に基づいて、容器本体11の開口端縁に形成された複数のボルト締結孔11Hと、蓋体12の周縁部に形成された複数のボルト挿通孔12Hとの間の位置ずれが解消されているか否かの判断を行なうように構成してもよい。
【0106】
再度の撮像画像に基づいて位置ずれが解消されていると判断すると、自動ボルト締結機構70によりボルトの仮止めを行ない、位置ずれが解消されていないと判断すると、再度の撮像画像に基づいて蓋体12の位置補正量情報を算出して、自動位置調節機構60により蓋体12の位置を補正するように制御してもよい。なお、このとき、再度の蓋体12の位置補正の回数を所定回数、例えば5回に制限し、それでも位置ずれが解消されない場合には、自動位置ずれ検出機構50は、異常信号を出力するように構成してもよい。
【0107】
上述した実施形態は何れも本発明の一例であり、該記載により本発明の技術的範囲が限定されるものではなく、本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0108】
1:自動閉蓋装置
1A:閉蓋作業部
1B:容器搬送機構
1C:固定機構
10:閉蓋対象容器
11:容器本体
11H:ボルト締結孔
12:蓋体
12H:ボルト挿通孔
20:自動閉蓋機構
50:自動位置ずれ検出機構
52:撮像装置
60:自動位置調節機構
70:自動ボルト締結機構
80:閉蓋ヘッド
90:XY移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12