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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163350
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】チュアブル錠又は口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/451 20060101AFI20231102BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231102BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/451
A61K9/20
A61P1/12
A61P1/16
A61P1/14
A61P43/00 121
A61K47/10
A61K47/26
A61K36/9066
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074200
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】釣 真由美
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC16
4C076DD37
4C076DD38
4C076FF52
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA09
4C086NA10
4C086ZA69
4C086ZA73
4C086ZA75
4C086ZC75
4C088AB81
4C088MA02
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA09
4C088NA10
4C088ZA69
4C088ZA73
4C088ZA75
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種の存在下でも主にロペラミド塩酸塩に起因する、保存後に発生する不快味を改善するチュアブル錠又は口腔内崩壊錠の提供。
【解決手段】(A)成分:ロペラミド塩酸塩と、(B)成分:ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種と、(C)成分:メントールと、(D)成分:糖アルコールと、を含む素錠を有する、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ロペラミド塩酸塩と、
(B)成分:ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種と、
(C)成分:メントールと、
(D)成分:糖アルコールと、
を含む素錠を有する、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記(D)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~6である、請求項1に記載のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記(D)成分/前記(C)成分で表される質量比が40~500である、請求項1又は2に記載のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【請求項4】
前記(D)成分がマンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、及びマルチトールから選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【請求項5】
前記(C)成分の平均粒子径が1~200μmである、請求項1又は2に記載のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
下痢の原因は、食べ過ぎ飲みすぎ、食あたり、ストレスなど様々であるが、どのような原因であっても、下痢止め用薬としては即効性が要求される。
例えば食べ過ぎ飲み過ぎによる下痢の場合、下痢以外に胃や肝機能の低下による消化不良などの合併症を引き起こすことがある。そのため、有効成分として止瀉成分だけでなく、例えば胃や肝臓の働きを正常にする生薬の配合が望まれている。
【0003】
肝機能の回復に効果を有する生薬成分として、ウコンが知られている。そのため、ウコンと止瀉成分とを組み合わせて使用することが望まれている。
一方、止瀉成分であるロペラミド塩酸塩は特有の苦味、収れん味等の不快味を有し、ウコンと一緒に配合すると、その不快味が増強される。特に、口腔内でかみ砕いて服用するチュアブル錠や、口腔内で崩壊する口腔内崩壊錠では、不快味が顕著になる傾向にある。
不快味を改善する成分として、メントールが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-95707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロペラミド塩酸塩単剤ではメントールを配合することでロペラミド特有の不快味を改善することができるものの、ロペラミド塩酸塩とウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種との配合剤では、経時でメントールの昇華が生じ、ロペラミド塩酸塩に起因する苦味・収れん味が復活するという課題がある。
本発明は、ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種の存在下でも主にロペラミド塩酸塩に起因する、保存後に発生する不快味を改善するチュアブル錠又は口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ロペラミド塩酸塩と、ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種と、メントールとの組み合わせにおいて、糖アルコールを併用することにより、保存後に発生する不快味を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分:ロペラミド塩酸塩と、
(B)成分:ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種と、
(C)成分:メントールと、
(D)成分:糖アルコールと、
を含む素錠を有する、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
[2] 前記(D)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~6である、前記[1]のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
[3] 前記(D)成分/前記(C)成分で表される質量比が40~500である、前記[1]又は[2]のチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
[4] 前記(D)成分がマンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、及びマルチトールから選択される少なくとも1種である、前記[1]~[3]のいずれかのチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
[5] 前記(C)成分の平均粒子径が1~200μmである、前記[1]~[4]のいずれかのチュアブル錠又は口腔内崩壊錠。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種の存在下でも主にロペラミド塩酸塩に起因する、保存後に発生する不快味を改善するチュアブル錠又は口腔内崩壊錠を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[チュアブル錠及び口腔内崩壊錠]
チュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、水なしで服用可能な固形製剤である。
チュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、水と一緒に服用する汎用の錠剤に対して、水なしで外出時など場面に依らず服用できること、嚥下機能が低下している場合でも飲みこみやすく服用性に優れる点に特徴を有する剤形であり、口腔内での咀嚼可能な、また口腔内で崩壊が可能な硬度を有する。一般に、チュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、水と一緒に服用する錠剤と比較して崩壊性に優れ、口腔内崩壊錠はチュアブル錠よりもさらに崩壊性に優れる固形製剤である。
具体的には、チュアブル錠とは、口腔内で咀嚼により崩壊させ服用する固形製剤であり、例えば口腔内での崩壊性を評価したときの崩壊時間は、口腔内で咀嚼することなしに、8分未満が好ましく、5分未満がより好ましい。
口腔内崩壊錠とは、口腔内で唾液により崩壊させて服用する固形製剤であり、例えば口腔内での崩壊性を評価したときの崩壊時間は、口腔内で咀嚼することなしに、60秒未満が好ましく、45秒未満がより好ましく、30秒未満がさらに好ましい。
なお、水と一緒に服用する錠剤の場合、例えば口腔内での崩壊性を評価したときの崩壊時間は、口腔内で咀嚼することなしに、10分以上である。
崩壊時間は、固形製剤が崩壊剤を含む場合は、その崩壊剤の種類及びその量により制御できる。また、固形製剤を製造するに際して、打錠時の打錠圧によっても崩壊時間を制御できる。
ここで、口腔内での崩壊性を評価とは、口腔内で、咀嚼はせずに、舌の上で錠剤1錠を転がした時の崩壊時間を測定することを意味し、崩壊時間が短いほど崩壊性に優れることを意味する。
【0010】
本発明のチュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む素錠を有する固形製剤である。
素錠は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
本発明のチュアブル錠は、必要に応じて素錠の表面にコーティング層が形成されていてもよい。すなわち、チュアブル錠は、素錠のみからなるものであってもよいし、素錠と素錠の表面に形成されたコーティング層とを有するものであってもよい。
本発明の口腔内崩壊錠は、必要に応じて素錠の表面にコーティング層が形成されていてもよい。すなわち、口腔内崩壊錠は、素錠のみからなるものであってもよいし、素錠と素錠の表面に形成されたコーティング層とを有するものであってもよい。ただし、口腔内での崩壊性を良好に維持する観点から、口腔内崩壊錠はコーティング層を有しない、すなわち素錠のみからなることが好ましい。
【0011】
「素錠」
<(A)成分>
(A)成分は、ロペラミド塩酸塩である。
(A)成分は止瀉成分であり、下痢止めの効果がある。
【0012】
(A)成分の含有量は、1回の服用量として0.1~100mgが好ましく、0.5 ~30mgがより好ましく、0.5~5mgがさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分による薬理効果(特に飲酒に起因する下痢止め)が向上する。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、苦みが抑えられ、服用性が向上する。
なお、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠を1回に1錠服用する場合、各成分の1回の服用量は素錠1錠当たりの含有量(mg)に相当する。
【0013】
素錠の総質量に対する(A)成分の含有割合は、0.01~1質量%が好ましく、0.03~0.6質量%がより好ましく、0.05~0.3質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、(A)成分による薬理効果(特に飲酒に起因する下痢止め)が向上する。(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、苦みが抑えられ、服用性が向上する。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、ウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種である。
(B)成分には、胃や肝臓の働きを正常にする胃腸薬として機能する。
【0015】
ウコンはショウガ科の多年草本で、卵型や円筒形の表面に輪状に節がある直径3~4cm、内側は黄色を呈する根茎を有している。ウコンは高温多湿を好み、インドから東南アジアを中心とした熱帯夜亜熱帯で広く栽培されている。日本では、沖縄、奄美大島などで栽培されており、根茎が薬用、食用、染料に用いられる。ウコンの主な薬理作用としては、肝機能改善、抗菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用などがある。
(B)成分としては特に限定されないが、ウコン末;ウコン軟エキス、ウコン流エキス、ウコン乾燥エキス等のウコンエキスなどが挙げられる。ウコン末は、第17改正日本薬局方にも収載されている。これらの中でもチュアブル錠及び口腔内崩壊錠の製造性(打錠障害の生じ難さ)や保存安定性(素錠同士の固結の生じ難さ)の点で、ウコン末、ウコン乾燥エキスが好ましく、ウコン乾燥エキスがより好ましい。
なお、ウコンエキスとしては、第18改正日本薬局方に収載される製剤総則に記載の、生薬固有製剤「エキス剤」を製する方法に準じて製造されたものを用いてもよい。上記方法としては、具体的には、適切な大きさとした生薬を処方に従って一定量ずつ量り、全量に水10~20倍量を加え、一定時間加熱し、遠心分離などにより固液分離し、得られた浸出液を適切な方法で濃縮又は乾燥する方法が挙げられる。ウコン軟エキスは水あめ様の稠度とし、ウコン乾燥エキスは砕くことができる固塊、粒状又は粉末とする。
ウコンは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0016】
(B)成分の含有量は、1回の服用量として、ウコンエキスでは原生薬換算で10~3000mgが好ましく、10~2000mgがより好ましく、10~900mgがさらに好ましい。ウコン末では10~1000mgが好ましく、10~300mgがより好ましい。
(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(B)成分による有効性が向上する。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、経時で(C)成分であるメントールの昇華が生じ難くなる。加えて、不快味が少なくなり、服用性が向上する。
【0017】
素錠の総質量に対する(B)成分の含有割合は、ウコン末の場合は3~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。ウコン流エキスの場合は1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。ウコン軟エキスの場合は1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。ウコン乾燥エキスの場合は1~70質量%が好ましく、4~50質量%がより好ましく、4~40質量%がさらに好ましい。
(B)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、(B)成分による有効性が向上する。(B)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、経時で(C)成分であるメントールの昇華が生じ難くなる。加えて、不快味が少なくなり、服用性が向上する。
【0018】
(B)成分の(A)成分に対する質量比である、(B)成分/(A)成分で表される質量比(以下、「B/A比」ともいう。)は、65~6000が好ましく、100~2000がより好ましい。詳細は、以下の通りである。
(B)成分がウコンエキスである場合、B/A比は200~6000が好ましく、600~2000がより好ましい。B/A比が上記下限値以上であれば、下痢止め効果に加えて胃や肝機能の回復効果が向上する。B/A比が上記上限値以下であれば、経時で(C)成分であるメントールの昇華がより生じ難くなり、不快味が少なくなるため服用性が向上する。
(B)成分がウコン末である場合、B/A比は65~2000が好ましく、100~670がより好ましい。B/A比の下限値理由及び上限値理由は、ウコンエキスの場合と同様である。
なお、(B)成分がウコンエキスである場合、B/A比における(B)成分の質量は、原生薬換算とする。また、(B)成分がウコン末である場合、B/A比における(B)成分の質量は、ウコン末の含有量である。
【0019】
<(C)成分>
(C)成分は、メントールである。
(C)成分は、主に(A)成分に起因する特有の苦味、収れん味等の不快味を改善する成分である。
メントールはd体、l体、dl体のいずれでもよいが、l体、dl体が好ましく、l体がより好ましい。
【0020】
(C)成分の平均粒子径は1~200μmが好ましく、1~150μmがより好ましく、1~100μmがさらに好ましい。(C)成分の平均粒子径が上記下限値以上であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味をより改善できる。(C)成分の平均粒子径が上記上限値以下であれば、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠の製造工程(例えば後述する(C)成分の粉砕工程)での(C)成分のハンドリング性が向上する。加えて、チュアブル錠表面又は口腔内崩壊錠表面での穴抜け(錠剤表面からのメントール粒子等の脱落)が生じにくくなる。
なお、本発明において「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定法に準じて測定される、体積平均粒子径(D50)である。
【0021】
(C)成分の含有量は、1回の服用量として0.01~10mgが好ましく、0.1~10mgがより好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味が改善されると共に、清涼感が得られるため、服用性が向上する。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(C)成分由来の刺激や苦みが少なく、服用性が向上する。
【0022】
素錠の総質量に対する(C)成分の含有割合は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.1~1質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味が改善されると共に、清涼感が得られるため、服用性が向上する。(C)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、(C)成分由来の刺激や苦みが少なく、服用性が向上する。
【0023】
<(D)成分>
(D)成分は、糖アルコールである。
素錠が(D)成分を含むことで、主に(A)成分に起因する、保存後に発生する不快味を改善できる。
糖アルコールとしては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどが挙げられる。これらの中でもチュアブル錠及び口腔内崩壊錠の製造性(粉体混合時のハンドリング性)や経時品質確保(崩壊遅延の生じ難さ)の点で、マンニトール、エリスリトールが好ましい。
糖アルコールは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0024】
(D)成分の含有量は、1回の服用量として10~700mgが好ましく、50~500mgがより好ましく、100~300mgがさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味を改善できる。(D)成分の含有量が上記上限値以下であれば、素錠が大型化しにくく、服用性が向上する。
【0025】
素錠の総質量に対する(D)成分の含有割合は、10~80質量%が好ましく、30~75質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味を改善できる。(D)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、素錠が大型化しにくく、服用性が向上する。
【0026】
(D)成分の(B)成分に対する質量比である、(D)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「D/B比」ともいう。)は、0.05~6が好ましく、0.1~3がより好ましい。詳細は、以下の通りである。
(B)成分がウコンエキスである場合、D/B比は0.05~2が好ましく、0.1~1がより好ましい。D/B比が上記下限値以上であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味をより改善できる。D/B比が上記上限値以下であれば、生薬由来の芳香性の作用を阻害しにくい。
(B)成分がウコン末である場合、D/B比は0.15~6が好ましく、0.3~3がより好ましい。D/B比の下限値理由及び上限値理由は、ウコンエキスの場合と同様である。
なお、(B)成分がウコンエキスである場合、D/B比における(B)成分の質量は、原生薬換算とする。また、(B)成分がウコン末である場合、D/B比における(B)成分の質量は、ウコン末の含有量である。
【0027】
(D)成分の(C)成分に対する質量比である、(D)成分/(C)成分で表される質量比(以下、「D/C比」ともいう。)は40~500が好ましく、80~400がより好ましい。D/C比が上記下限値以上であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味をより改善できる。D/C比が上記上限値以下であれば、(C)成分の清涼感を感じやすく、服用性が向上する。
【0028】
<任意成分>
任意成分としては、(A)成分及び(B)成分以外の生理活性成分(以下、「他の生理活性成分」ともいう。)、(C)成分及び(D)成分以外の添加剤(以下、「他の添加剤」ともいう。)などが挙げられる。
他の添加剤としては、例えば結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、酸味剤、発泡剤、甘味剤、香料などが挙げられる。
これら任意成分は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
これらの任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で、目的に応じて適宜設定することができる。
【0029】
他の生理活性成分としては、例えばタンニン酸ベルベリン、ロートエキス、アクリノール、サリチル酸フェニル、グアヤコール、次サリチル酸ビスマス、次硝酸ビスマス、次炭酸ビスマス、次没食子酸ビスマス、塩化ベルベリン、クレオソート、タンニン酸アルブミン、アズレンスルホン酸ナトリウム、胆汁末、胆汁エキス、デヒドロコール酸、オウバク、オウゴン、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、スクラルファート水和物、合成ヒドロタルサイト、グリチルリチン酸及びその塩類、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、無水カフェイン、生菌成分、(B)成分以外の生薬及びそのエキス(シャクヤク、エンゴサク、カンゾウ、アセンヤク、ウバイ、ゲンノショウコ、五倍子、サンザシ、クジン、センブリ、ヨウバイヒ、コウボク、アカメガシワ)などが挙げられる。
生薬の抽出方法は特に限定されず、原末だけでなく、流エキス、乾燥エキス、チンキ等加工原料として用いることができる。
他の生理活性成分は、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び滑沢剤等を用いて造粒し、有効成分造粒物としてもよい。
【0030】
結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、寒天、ハチミツなどが挙げられる。
これらの中でも、チュアブル錠ではポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、口腔内崩壊錠ではヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
結合剤の含有量は、素錠の総質量に対して、0.01~30質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
【0031】
賦形剤としては、例えば結晶セルロース、乳糖、トレハロース、メチルエチルセルロース、デキストリン、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、トウモロコシデンプン、バレイショデンプンなどが挙げられる。
これらの中でも、トウモロコデンプンが好ましい。
【0032】
崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、部分α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらの中でも、チュアブル錠では低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースが好ましく、口腔内崩壊錠ではクロスポビドン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムが好ましい。
崩壊剤の含有量は、素錠の総質量に対して、0.1~30質量%が好ましく、0.2~20質量%がより好ましい。
【0033】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルクなどが挙げられる。
滑沢剤の含有量は、素錠の総質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましい。
【0034】
着色剤としては、例えば酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄色5号、黄色4号などが挙げられる。
酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びこれらの塩などが挙げられる。
甘味剤としては、例えばアスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチンなどが挙げられる。
香料としては、粉末香料を好適に使用でき、例えば、リモネン、及び植物精油(ライチ油、オレンジ油、及びレモン油等)をアラビアゴムやデキストリン、乳糖、ゼラチン等で倍散させた粉末香料を例示することができる。
【0035】
<素錠の形態>
素錠の寸法は特に限定されないが、素錠の取り扱いやすさと服用性の観点から素錠の直径φとして5~14mmが好ましく、6~13mmがより、7~12mmがさらに好ましい。また素錠1錠あたりの質量は、100~1000mgが好ましい。
また、素錠の形状としては特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。特に口腔内崩壊錠においては、スミ角平錠、スミ丸平錠がより好ましい。
【0036】
素錠は、単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(多層錠)であってもよい。
素錠が単層錠の場合、素錠は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)及び(D)成分と、必要に応じて任意成分の1つ以上とを含む薬物層で構成される。一方、素錠が積層錠の場合、素錠は、前記薬物層と、薬物層以外の層(任意層)とで構成される。
なお、素錠が積層錠の場合、層の数は2層であってもよいし、3層以上であってもよい。
また、素錠が積層錠の場合、任意層は、(A)成分、(B)成分、(C)及び(D)成分のいずれか1つ以上を含んでいてもよいし、いずれも含まなくてもよい。任意層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有割合等は、1回当たりのこれらの成分の服用量や、素錠におけるこれら成分の含有割合等を勘案して適宜、選択することができる。また、上述した任意成分は、薬物層のみに含まれていてもよいし、任意層のみに含まれていてもよいし、薬物層及び任意層の両方に含まれていてもよい。素錠が単層錠の場合、任意成分は薬物層に含まれる。
【0037】
<素錠の硬度>
素錠の硬度は、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠として錠剤サイズに応じた硬度に設定すればよい。例えば、直径φ9.5mmの2段階R錠のチュアブル錠の場合、硬度は3~15kgfが好ましく、4~14kgfがより好ましく、6~14kgfがさらに好ましく、8~14kgfが特に好ましい。直径φ9.5mmの2段階R錠の口腔内崩壊錠の場合、硬度は3~12kgfが好ましく、3~10kgfがより好ましく、3~8kgfがさらに好ましい。
なお、硬度は錠剤硬度計(例えばPHARMATEST社製の製品名「PTB111E」)を用いて測定することができる。
【0038】
<素錠の水分量>
素錠の水分量は、素錠の総質量に対して0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。水分量が上記下限値以上であれば、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠としたときの硬度などを維持でき、保形性を容易に担保できる。水分量が上記上限値以下であれば、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味をより改善できる。
素錠の水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば京都電子工業株式会社製、製品名「MKC-210」)を用いて測定される値である。
【0039】
素錠の水分量の調整方法としては、混合前の各成分のうち任意の成分の粉体そのものを、もしくはチュアブル錠又は口腔内崩壊錠とした後に恒温槽や乾燥機、流動層造粒機等で加湿、乾燥することで調整することができる。製剤の安定性を確保する点から、配合成分の一部を混合前に流動層造粒機等を用いて水をスプレーする、もしくは乾燥させることで調整することが望ましい。
【0040】
「コーティング層」
コーティング層は、素錠の表面に形成される層である。
チュアブル錠又は口腔内崩壊錠が素錠に加えてコーティング層をさらに有していれば、服用性及び安定性(生理活性成分の分解抑制、チュアブル錠又は口腔内崩壊錠の物性維持)が向上する。特に、チュアブル錠がコーティング層をさらに有していれば、チュアブル錠に噛み応えを付与できる。
なお、上述したように、口腔内での崩壊性を良好に維持する観点から、口腔内崩壊錠はコーティング層を有しない、すなわち素錠のみからなることが好ましい。
また、本明細書において、コーティング層を有するチュアブル錠又は口腔内崩壊錠を特に「コーティング錠」ともいう。
【0041】
コーティング層は、コーティング剤を含む。
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物、可塑剤、着色剤及び矯味剤の1つ以上を含有することが好ましく、少なくとも水溶性高分子化合物を含有することがより好ましい。
コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、コーティング剤として、Opadry(日本カラコン合同会社製)等の市販のプレミックス品を用いてもよい。
【0042】
水溶性高分子化合物としては、例えばカルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、単糖類、二糖類以上の多糖類、糖アルコール、水飴、異性化糖類、オリゴ糖、スクロース、トレハロースなどが挙げられる。
可塑剤としては、例えばマクロゴール、グリセリン、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黄色5号、黄色4号(又はアルミニウムレーキ)などが挙げられる。
矯味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びこれらの塩等、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア、精製白糖、サッカリン、グリチルリチンなどが挙げられる。
水溶性高分子化合物、可塑剤、着色剤及び矯味剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
コーティング錠におけるコーティング剤の使用量(被覆量)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定される。例えば、素錠100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。コーティング剤の使用量が上記下限値以上であれば、コーティング錠の服用性を良好に維持できる。加えて、経時で生じる(C)成分の昇華と、主に(A)成分に起因する不快味、特に服用後数分後の不快味をより改善できる。コーティング剤の使用量が上記上限値以下であれば、崩壊性を良好に維持できる。
なお、コーティング錠とした場合の、コーティング錠の形態、コーティング錠の硬度、コーティング錠の水分量は、素錠のそれぞれの項で説明した通りである。
【0044】
「チュアブル錠、口腔内崩壊錠の製造方法」
本発明のチュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、それぞれ上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて任意成分とを混合し、得られた混合物(混合粉体)を打錠することにより得ることができる。各成分は公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。また、各成分は原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。本発明では、各成分を一括混合、あるいは逐次混合して混合粉体とし、打錠することができるが、(A)成分の不快味抑制効果(特に服用後数分後の不快味の改善)をより向上させるために、(C)成分と任意成分とを共粉砕した後、混合することが好ましい。また、チュアブル錠中又は口腔内崩壊錠中の含量均一性の点からの点から、(A)成分と(D)成分とを造粒した後、混合することが好ましい。
以下、チュアブル錠の製造方法の一例について、工程ごとに説明する。
【0045】
<チュアブル錠の製造方法>
本実施形態のチュアブル錠の製造方法の一例としては、以下に示す(C)成分の粉砕工程と、(A)成分の造粒工程と、混合工程と、打錠工程とを有する。チュアブル錠がコーティング層を有する場合、打錠工程の後に以下に示すコーティング工程をさらに有する。
【0046】
((C)成分の粉砕工程)
(C)成分の粉砕工程は、(C)成分を粉砕し、粉砕物を得る工程である。
(C)成分は、市販品をそのまま後述する混合工程で用いてもよいが、(A)成分の不快味抑制効果をより向上させる点から、事前に粉砕物としておくことが好ましい。
(C)成分の粉砕物は、(C)成分のみからなるものであってもよいし、(C)成分と(C)成分以外の成分を含むものであってもよい。粉砕工程での(C)成分の機器付着抑制や、チュアブル錠表面又は口腔内崩壊錠表面での穴抜け(錠剤表面からのメントール粒子等の脱落)が生じ難くなる点から、(C)成分と任意成分とを共粉砕することが好ましい。なお、(C)成分と任意成分とを共粉砕して得られる粉砕物を特に「共粉砕物」ともいう。
【0047】
(C)成分を粉砕する方法としては従来公知の粉砕方法が挙げられるが、好ましくは、微粉砕機や撹拌造粒機による粉砕方法が挙げられる。より好ましくは、粉体にせん断力がかかる微粉砕方法や加温可能な粉砕方法が挙げられる。例えば、石臼粉砕機(有限会社ウエスト製)、ピンミル(株式会社パウレック製)、アトマイザー(株式会社ダルトン製)等の微粉砕機による粉砕や、ジャケット等で外部から加温しながら撹拌造粒機(株式会社パウレック製、製品名「バーチカルグラニュレーターVG-25」)にて粉砕する方法などが挙げられる。
(C)成分と任意成分とを共粉砕する場合は、(C)成分に任意成分を加えた後に粉砕すればよい。
粉砕物又は共粉砕物は、篩を使用するなどして粒子径を整えてもよい。粉砕物及び共粉砕物の平均粒子径は、それぞれ10~200μmが好ましい。
【0048】
((A)成分の造粒工程)
(A)成分の造粒工程は、(A)成分を造粒する工程である。
(A)成分は、市販品をそのまま後述する混合工程で用いてもよいが、混合均一性や打錠均一性を確保する点から、事前に造粒物としておくことが好ましい。
(A)成分の造粒物は、(A)成分のみからなるものであってもよいし、(A)成分と(A)成分以外の成分を含むものであってもよい。チュアブル錠中の含量均一性の点から、(A)成分と、(D)成分と、賦形剤とを含む造粒物とすることが好ましい。
【0049】
(A)成分を造粒する方法としては従来公知の方法が挙げられるが、好ましくは、流動層造粒、撹拌造粒、押出造粒が挙げられる。例えば流動層造粒により(A)成分を造粒する場合、流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、製品名「FLO-5」)に(A)成分と、必要に応じて(D)成分及び賦形剤の1つ以上とを投入後、結合液(ポリビニルアルコール等の結合剤の水溶液など)を噴霧して流動層造粒を行い、排気温度が65℃となるまで乾燥させて造粒物を得る。得られた造粒物は、篩を使用するなどして粒子径を整えてもよい。
【0050】
(混合工程)
混合工程は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と、必要に応じて任意成分とを混合し、混合粉体を得る工程である。
混合工程に用いられる各成分は、公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法、例えば流動層造粒や撹拌造粒、押出造粒等を採用できる。特に、(A)成分は上述した理由から、(D)成分と共に造粒したもの(造粒物)を用いることが好ましい。(C)成分は上述した理由から、粉砕したもの(粉砕物又は共粉砕物)を用いることが好ましい。
【0051】
混合工程における混合方法としては従来公知の混合方法が挙げられ、一般的に用いられる混合機を用いることができる。混合機としては、例えばボーレコンテナミキサー(寿工業株式会社製)や、V型混合機(株式会社ダルトン製)、リボンミキサー(株式会社ダルトン製)などが挙げられる。
全成分を混合容器に投入し混合することもできるし、一部の成分を混合した後、更に他の成分を逐次投入し混合することもできる。
【0052】
(打錠工程)
打錠工程は、上記混合工程で作製した混合粉体を打錠し、素錠を得る工程である。
打錠工程では、公知の打錠機を使用することができる。打錠機としては、例えばロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「リブラ2」)などが挙げられる。
打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定される。例えば、打錠圧は8~15kN(素錠の硬度として3~15kgf)が好ましく、9~15kNがより好ましく、10~15kNがさらに好ましく、10kN超、15kN以下が特に好ましい。
【0053】
上述したように、チュアブル錠は単一の層からなる単層錠であってもよく、二層以上の層を有する多層錠であってもよい。チュアブル錠が単層錠である場合は、上記の各成分を含む混合粉体を打錠することにより製造できる。多層錠を作製する場合は、例えば、(A~(D)成分を含む混合粉体、及び任意成分の粉体のいずれか一方を第1層、他方を第2層とし、第1層と第2層とを積層した後、上杵と下杵の間で圧縮成形することにより製造できる。
このようにして得られた素錠をそのままチュアブル錠としてもよい。チュアブル錠をコーティング錠とする場合は、以下のコーティング工程をさらに行う。
【0054】
(コーティング工程)
コーティング工程は、素錠の表面にコーティング層を形成する工程である。
コーティング剤の調製方法、コーティング処理方法は、従来知られた方法を用いることができ、例えば、HC-FZ-LABO(フロイント産業株式会社製)、アクアコーター(フロイント産業株式会社製)等のパン型コーティング装置を用いることができる。具体的には、まず、上述したコーティング剤を水等の溶媒に分散させ、コーティング液を得る。次いで、素錠を被覆するようにコーティング液を噴霧等によりコーティングする。次いで、コーティング液中の溶媒成分を乾燥させ、素錠の表面にコーティング層を形成し、コーティング錠を得る。
【0055】
<口腔内崩壊錠の製造方法>
口腔内崩壊錠を製造する場合は、口腔内での崩壊性を確保する点でチュアブル錠の製造方法と異なる。そのため、打錠工程において、口腔内での崩壊性を適宜確認しながらチュアブル錠より低圧で混合粉体を打錠して、素錠を製造する。口腔内崩壊錠を製造する場合、打錠圧は5~10kN(素錠の硬度として3~12kgf)が好ましく、5~9kNがより好ましく、5~8kNがさらに好ましく、5kN以上、8kN未満が特に好ましい。
打錠工程における打錠圧以外は、チュアブル錠と同様の製造方法を準用することで口腔内崩壊錠を製造することができる。
【0056】
「作用効果」
本発明のチュアブル錠及び口腔内崩壊錠によれば、保存後の(C)成分であるメントールの含量の低下が、(D)成分である糖アルコールを配合することにより抑制される。さらには、(A)成分であるロペラミド塩酸塩特有の服用後に後に引く苦味が抑制される。よって、本発明のチュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、(B)成分であるウコン及びそのエキスから選択される少なくとも1種の存在下でも主に(A)成分に起因する、保存後に発生する不快味を改善できる。
上記効果を奏する理由としては、(A)成分と(B)成分との配合により促進された(C)成分の揮発が、(C)成分、(A)成分、(B)成分、(D)成分の間に働く官能基由来の化学物理的相互作用等により抑制されるものと考えられる。
特に、事前に(A)成分と(D)成分とを造粒し、素錠内での均一性を得ることにより、個々間でばらつきが少なくなり、(C)成分の揮発及び(A)成分特有の後に引く不快味について、効果的に抑制される。
【実施例0057】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各例で使用した原料、打錠条件及び評価方法は、以下の通りである。
【0058】
「使用原料」
使用原料として、以下に示す化合物を用いた。
・ロペラミド塩酸塩:シオノケミカル株式会社製、製品名「ロペラミド塩酸塩」。
・ウコン乾燥エキス:松浦薬業株式会社製、製品名「ウコン乾燥エキス」。
・ウコン末:日本粉末薬品株式会社製、製品名「ウコン末」。
・l-メントール:長岡実業株式会社製、製品名「スーパーメントール3003」。
・エリスリトール:物産フードサイエンス株式会社製、製品名「エリスリトール50M」。
・D-マンニトール:ロケットジャパン株式会社製、製品名「ペアリトール50C」。
・トウモロコシデンプン:松谷化学工業株式会社製、製品名「局方松谷コーンスターチ」。
・結晶セルロース:旭化成株式会社製、製品名「セオラスUF-711」。
・ケイ酸アルミン酸マグネシウム:富士化学工業株式会社製、製品名「ノイシリンA AS」。
・ポリビニルアルコール:三菱ケミカル株式会社製、製品名「ゴーセノールEG-05(P)」、部分けん化物。
・クロスポビドン:BASFジャパン株式会社製、製品名「コリドンCL-SF」。
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、製品名「ステアリン酸マグネシウム(植物性)」。
【0059】
[実施例1~11、比較例1、2]
<(C)成分及びトウモロコシデンプンの共粉砕物の製造>
表1、2に記載の量比となるように(C)成分と、トウモロコシデンプン(共粉砕)とを卓上粉砕機(大阪ケミカル株式会社製、製品名「WONDER CRUSHER WC-3」)に投入し、20000rpmで任意秒間、混合物が造粒する前まで粉砕した。得られた混合物を目開き500μmの篩を用いて全量通過させ、共粉砕物を得た。共粉砕物の平均粒子径は、約95μmであった。
【0060】
<(A)成分及び(D)成分の造粒物の製造>
実施例1~9、11については、(A)成分と、(D)成分と、結晶セルロース又はトウモロコシデンプン(造粒)とを流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、製品名「FLO-5」)に投入後、予め調製した8質量%結合液(ポリビニルアルコール水溶液)を表1、2に記載の所定量となるまで噴霧しながら、給気温度90℃、排気風量2.0m/分で流動層造粒を行った。噴霧終了後、排気温度が65℃となるまで乾燥させ、粒状乾燥物を得た。得られた粒状乾燥物を目開き850μmの篩を用いて全量通過させ、造粒物を得た。
比較例1、2については、(A)成分と、結晶セルロースと、トウモロコシデンプン(造粒)又はケイ酸アルミン酸マグネシウムとを流動層造粒機に投入した以外は、実施例1~9、11と同様にして造粒物を得た。
実施例10については、(A)成分と、(D)成分と、結晶セルロースとを流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、製品名「FLO-5」)に投入後、予め調製した8質量%結合液(ポリビニルアルコール水溶液)を表2に記載の所定量となるまで噴霧しながら、給気温度90℃、排気風量2.0m/分で流動層造粒を行った。噴霧終了後、排気温度が55℃となるまで乾燥させ、粒状乾燥物を得た。得られた粒状乾燥物を目開き850μmの篩を用いて全量通過させ、造粒物を得た。
【0061】
<チュアブル錠の製造>
以下の手順でチュアブル錠を製造した。
表1、2に記載の量比となるように、(A)成分及び(D)成分の造粒物と、(B)成分と、(C)成分及びトウモロコシデンプンの共粉砕物と、ステアリン酸マグネシウムとを混合後、直径9.5mmの臼杵を装着した単発打錠機(株式会社菊水製作所製)で打錠し、直径9.5mmの素錠を得た。なお、打錠圧は、錠剤硬度測定器(ヤマト科学株式会社製)にて素錠の硬度が約8kgfになるように調整した。
得られた素錠をチュアブル錠とし、以下に示す方法にて水分量を測定し、保存試験を行った。結果を表1、2に示す。
【0062】
<チュアブル錠の評価>
「水分量の測定」
チュアブル錠中の水分含量は、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製、製品名「MKC-210」)を用い、以下のようにして測定した。
チュアブル錠を乳鉢ですり潰し、測定サンプルとした。室温(25℃)で測定サンプル10~100mgをカールフィッシャー試薬に溶解し、常法に従い測定を開始した。電極反応の終了に伴い、測定を自動的に停止した。投入サンプル量をカールフィッシャー水分計に入力してチュアブル錠中の水分量を算出した。
【0063】
「保存試験」
チュアブル錠約100錠をガラス瓶(日電理化硝子株式会社製、ねじ口瓶、容量50mL)に入れ密閉状態とし、35℃70%RHの恒温槽内で5日間保存し、短期苛酷評価にて保存試験を実施した。
【0064】
(メントールの対初期含量の測定)
以下の測定条件に基づき、保存試験前と保存試験後のチュアブル錠中のメントールの含有量をガスクロマトグラフィーにてそれぞれ定量した。なお、測定前にチュアブル錠を乳鉢ですり潰したものを所定の濃度になるようにメタノールで溶解した溶液を測定サンプルとして用いた。
<<測定条件>>
・試験機:株式会社島津製作所製、製品名「GC-2050」。
・キャリア―ガス:ヘリウム。
・カラム:TC-1。
・カラム温度:110℃。
・測定サンプルの注入量:0.5μL。
【0065】
保存試験前のチュアブル錠中のメントールの含有量を「初期含量」とし、初期含量に対する、保存試験後のチュアブル錠中のメントールの含有量を「対初期含量」として、下記式(1)より対初期含量を求めた。対初期含量が50%以上を合格とした。
対初期含量(%)=保存試験後のメントールの含有量/保存試験前のメントールの含有量×100 ・・・(1)
【0066】
(服用性の評価)
パネラー(健常な成人男女)4人が、保存試験後のチュアブル錠1錠を口腔内で咀嚼により崩壊させて服用し、服用から5分経過した後に感じる不快味(ロペラミド塩酸塩特有の後にひく苦味)について、以下に示す不快味の抑制効果の評価基準に従い点数をつけ、パネラー4人の平均値を算出した。平均値が3点以上を合格とした。
<<不快味の抑制効果の評価基準>>
4点:不快味を全く、又は殆ど感じない。
3点:不快味をわずかに感じる。
2点:不快味を強く感じる。
1点:不快味を非常に強く感じる。
【0067】
[実施例12]
<(C)成分及びトウモロコシデンプンの共粉砕物の製造>
表2に記載の量比となるように(C)成分と、トウモロコシデンプン(共粉砕)とを卓上粉砕機(大阪ケミカル株式会社製、製品名「WONDER CRUSHER WC-3」)に投入し、20000rpmで任意秒間、混合物が造粒する前まで粉砕した。得られた混合物を目開き500μmの篩を用いて全量通過させ、共粉砕物を得た。共粉砕物の平均粒子径は、約95μmであった。
【0068】
<(A)成分及び(D)成分の造粒物の製造>
(A)成分と、(D)成分と、結晶セルロースとを流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、製品名「FLO-5」)に投入後、予め調製した8質量%結合液(ポリビニルアルコール水溶液)を表2に記載の所定量となるまで噴霧しながら、給気温度90℃、排気風量2.0m/分で流動層造粒を行った。噴霧終了後、排気温度が65℃となるまで乾燥させ、粒状乾燥物を得た。得られた粒状乾燥物を目開き850μmの篩を用いて全量通過させ、造粒物を得た。
【0069】
<口腔内崩壊錠の製造>
以下の手順で口腔内崩壊錠を製造した。
表2に記載の量比となるように、(A)成分及び(D)成分の造粒物と、(B)成分と、(C)成分及びトウモロコシデンプンの共粉砕物と、クロスポビドンと、ステアリン酸マグネシウムとを混合後、直径9.5mmの臼杵を装着した単発打錠機(株式会社菊水製作所製)で打錠し、直径9.5mmの素錠を得た。なお、打錠圧は、錠剤硬度測定器(ヤマト科学株式会社製)にて素錠の硬度が約5kgfになるように調整した。
得られた素錠を口腔内崩壊錠とし、以下のようにして水分量を測定し、保存試験を行った。結果を表2に示す。
【0070】
<口腔内崩壊錠の評価>
口腔内崩壊錠中の水分量の測定、保存試験(メントールの対初期含量の測定)は、チュアブル錠と同様に行った。
保存試験(服用性の評価)は、保存試験後の口腔内崩壊1錠を口腔内で咀嚼せず唾液により崩壊させて服用した以外は、チュアブル錠と同様に行った。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表中、「B/A比」は、(B)成分/(A)成分で表される質量比である。「D/B比」は、(D)成分/(B)成分で表される質量比である。「D/C比」は、(D)成分/(C)成分で表される質量比である。なお、「B/A比」「D/B比」の(B)成分の質量は、(B)成分がウコンエキスの場合は原生薬換算であり、(B)成分がウコン末の場合はウコン末の含有質量である。
表中の空欄はその成分が配合されていないことを示す。
【0074】
各実施例で得られたチュアブル錠及び口腔内崩壊錠は、保存後に発生する不快味を改善できた。
一方、(D)成分を含まない比較例1、2で得られたチュアブル錠は、保存試験によるメントールの対初期含量が低く、保存後に発生する不快味を改善できなかった。