(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163352
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20231102BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20231102BHJP
C08G 59/40 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08G18/00 030
C08G18/80 077
C08G59/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074205
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】中島 和子
【テーマコード(参考)】
4J034
4J036
【Fターム(参考)】
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB04
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(57)【要約】
【課題】柔軟性が良好であり、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性に優れる硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】硬化性組成物は、エポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)と、を含み、前記ブロックイソシアネート(C)が、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)、ポリオール化合物(C-2)、並びにオキシム系ブロック化剤(C-3)から誘導され、前記ポリオール化合物(C-2)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)と、
潜在性硬化剤(B)と、
ブロックイソシアネート(C)と、を含み、
前記ブロックイソシアネート(C)が、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)、ポリオール化合物(C-2)、並びにオキシム系ブロック化剤(C-3)から誘導され、
前記ポリオール化合物(C-2)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含む、
硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物(C-2)が、300以上5000以下の数平均分子量を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)が、ジイソシアネート化合物、及び/又は、ジイソシアネートモノマーから誘導されるポリイソシアネート化合物である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物(C-2)が、更にポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール以外のポリオール化合物を含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物を基材に塗布、含浸、又は付着させ、次いで硬化させる工程を含む、硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスに関して軽量化や柔軟化が市場ニーズとして増えている。軽量化や柔軟化は電子デバイスを構成する基材、絶縁膜や導電膜だけでなく、それらに付随する保護膜、粘着剤、接着剤、封止剤やシーリング剤においても求められる傾向がある。特に絶縁シートや熱伝導性シート、積層板、プリント配線板のようにシート状、膜状にして使用される場合は、柔軟性だけでなく表面の乾燥性も求められる傾向がある。
また、地球環境保護の観点から、熱硬化時のエネルギー消費の低減が求められており、従来よりも低温での硬化性が求められている。
【0003】
特許文献1には、エポキシ樹脂と、ケトオキシム化合物でキャップされたイソシアネート基を含む反応性エラストマー強化剤と、硬化剤とを含む構造用接着剤が開示されており、180℃で加熱したときに接着剤として引張せん断強度や剥離強度に優れることが開示されている。
特許文献2には、エポキシ樹脂、アミン系潜在性硬化剤、ブロックウレタン、及び活性水素含有化合物を含有する樹脂組成物が開示されており、180℃で加熱したときに接着剤として剥離強度に優れることが開示されている。
特許文献3にも、エポキシ樹脂、アミン系潜在性硬化剤、ブロックウレタンを含有する硬化性樹脂組成物が開示されており、180℃で加熱したときに接着剤として鉄、アルミに対する接着性に優れることが開示されている。
特許文献4には、エポキシ樹脂と、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物から得られるウレタンプレポリマーを、アルキルアミンでマスクして得られるブロックドイソシアネート化合物と、潜在性硬化剤とを必須成分とする硬化性エポキシブロックウレタン組成物が開示されており、150℃で加熱したときに接着剤として引張せん断強度や剥離強度に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/056357号
【特許文献2】国際公開第2021/106962号
【特許文献3】国際公開第2020/095995号
【特許文献4】特開平5-155973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と2と3に記載の硬化性組成物は、従来通り高温で加熱した場合に接着剤として引張せん断強度や剥離強度に優れることが開示されている。特許文献4に記載の硬化性組成物は、従来よりも低温で加熱した場合でも接着剤として引張せん断強度や剥離強度に優れることが開示されている。しかし膜状に加工した場合の柔軟性や乾燥性については開示されていない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、柔軟性と、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性とに優れた硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1)の態様は、エポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)と、を含み、前記ブロックイソシアネート(C)が、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)、ポリオール化合物(C-2)、並びにオキシム系ブロック化剤(C-3)から誘導され、前記ポリオール化合物(C-2)が、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含む、硬化性組成物である。
(2)の態様は、前記ポリオール化合物(C-2)が、300以上5000以下の数平均分子量を有する、(1)の態様に記載の硬化性組成物である。
(3)の態様は、前記脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)が、ジイソシアネート化合物、及び/又は、ジイソシアネートモノマーから誘導されるポリイソシアネート化合物である、(1)又は(2)の態様に記載の硬化性組成物である。
(4)の態様は、前記ポリオール化合物(C-2)が、更にポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール以外のポリオール化合物を含む、(1)~(3)のいずれか一の態様に記載の硬化性組成物である。
(5)の態様は、(1)~(4)のいずれか一の態様に記載の硬化性組成物を硬化させてなる、硬化物である。
(6)の態様は、(1)~(4)のいずれか一の態様に記載の硬化性組成物を基材に塗布、含浸、又は付着させ、次いで硬化させる工程を含む、硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性が良好であり、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性に優れる硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
≪硬化性組成物≫
本実施形態の硬化性組成物は、エポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)と、を含む。
本実施形態の硬化性組成物は、上記ブロックイソシアネート(C)を含むことで、柔軟性と、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性とに優れる硬化物が得られる。
本実施形態の硬化性組成物の各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0011】
≪エポキシ樹脂(A)≫
本実施形態のエポキシ樹脂(A)としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、テトラブロモビフェニル型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ベンゾフェノン型エポキシ樹脂、フェニルベンゾエート型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホキシド型エポキシ樹脂、ジフェニルスルホン型エポキシ樹脂、ジフェニルジスルフィド型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、メチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、ジブチルヒドロキノン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、メチルレゾルシン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、N,N-ジグリシジルアニリン型エポキシ樹脂等の2官能型エポキシ樹脂類;N,N-ジグリシジルアミノベンゼン型エポキシ樹脂、o-(N,N-ジグリシジルアミノ)トルエン型エポキシ樹脂、トリアジン型エポキシ樹脂等の3官能型エポキシ樹脂類;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジアミノベンゼン型エポキシ樹脂等の4官能型エポキシ樹脂類;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ブロモ化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂類;及び脂環式エポキシ樹脂類等が挙げられる。また、これらをイソシアネート等で変性したエポキシ樹脂等も併用することができる。
【0012】
これらのエポキシ樹脂の中でも、硬化物の物性が良好になること、入手が容易で安価であることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂を使用することが好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することがより好ましい。
これらのエポキシ樹脂は、いずれを単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本実施形態のエポキシ樹脂(A)の含有量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂(A)とブロックイソシアネート(C)の合計質量100質量部に対して、60質量部以上95質量部以下であることが好ましく、70質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。
エポキシ樹脂(A)の含有量を上述の範囲とすることが、硬化性組成物の硬化性の観点から好ましい。
【0014】
≪潜在性硬化剤(B)≫
本実施形態の潜在性硬化剤(B)としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができ、例えばジシアンジアミド類、イミダゾール類、ポリアミン類、イミダゾール系アダクトやアミンアダクトをカプセル化したもの等が挙げられる。
これらの潜在性硬化剤(B)の中でも、入手が容易で安価であることから、ジシアンジアミド類が好ましい。
これらの潜在性硬化剤は、いずれを単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本実施形態の潜在性硬化剤(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂(A)とブロックイソシアネート(C)の合計質量100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
潜在性硬化剤(B)の含有量を上述の範囲とすることが、硬化性組成物の硬化性の観点から好ましい。
【0016】
≪ブロックイソシアネート(C)≫
本実施形態のブロックイソシアネート(C)は、脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)、ポリオール化合物(C-2)、並びにオキシム系ブロック化剤(C-3)から誘導される。
本実施形態のブロックイソシアネート(C)の各構成成分について以下に詳細を説明する。
【0017】
<脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)>
本実施形態の脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)は、脂肪族のジイソシアネート化合物、脂環族のジイソシアネート化合物、脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートモノマーから誘導されるポリイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
[ジイソシアネート]
ジイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらのジイソシアネートは、上述の脂肪族又は脂環族のジイソシアネート化合物であってもよく、上述の脂肪族及び/又は脂環族ジイソシアネートモノマーであってもよい。
【0019】
脂肪族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、エチル(2,6-ジイソシアナト)ヘキサノエート、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、「HDI」と略記する場合がある)、1,9-ジイソシアナトノナン、1,12-ジイソシアナトドデカン、2,2,4-又は2,4,4-トリメチル-1、6-ジイソシアナトヘキサン等が挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
脂環族ジイソシアネートとしては、以下のものに限定されないが、例えば、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「水添XDI」と略記する場合がある)、1,3-又は1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3,5,5-トリメチル1-イソシアナト-3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、「IPDI」と略記する場合がある)、4-4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(以下、「水添MDI」と略記する場合がある)、2,5-又は2,6-ジイソシアナトメチルノルボルナン等が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
これら脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートは、いずれを単独で使用してもよく、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを2種以上組み合わせて用いてもよい。
中でも、ジイソシアネートとしては、HDI、IPDI、水添XDI、又は水添MDIが好ましく、HDI又はIPDIがより好ましく、HDIがさらにより好ましい。
【0022】
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導されるポリイソシアネートを含んでもよい。
上記ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば、以下の(a)~(h)に示すポリイソシアネート等が挙げられる。
(a)2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート;
(b)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造又はイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネート;
(c)3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート;
(d)2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート;
(e)1つのイソシアネート基と1つの水酸基を反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート;
(f)2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート;
(g)1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート;
(h)1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素構造を有するポリイソシアネート。
【0023】
また、ポリイソシアネートは、脂肪族トリイソシアネート、または脂肪族トリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを含んでもよい。
脂肪族トリイソシアネートとしては、例えば、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナートメチルオクタン、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナト-ヘキサノエート等が挙げられる。
【0024】
これらのポリイソシアネートは、いずれを単独で使用してもよく、または、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
<ポリオール化合物(C-2)>
本実施形態のブロックイソシアネート(C)は、ポリオール化合物(C-2)がポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含むことで、得られる硬化物が従来と同等の柔軟性を示しつつ、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性に優れる。
【0026】
[ポリエステルポリオール]
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる化合物、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるような化合物、及びこれらの共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0027】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0028】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0029】
ポリエステルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の成分を混合し、約160℃以上220℃以下程度で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。
ε-カプロラクトンの開環重合は、特に限定されないが、具体的には、窒素ガス雰囲気下、所望の分子量になるようにε-カプロラクトンと上記開始剤とのモル比を設定し、さらに、ε-カプロラクトンに対して触媒を0.1質量ppm以上100質量ppm以下添加し、150℃以上200℃以下の温度で4時間以上10時間以下反応させることによって行なうことができる。
触媒としては、特に限定されないが、具体的には、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラエチルチタネート等の有機チタン系化合物;オクチル酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、塩化第一スズ、臭化第一スズ等のスズ化合物が用いられる。
【0030】
ポリエステルポリオールの平均水酸基官能基数は、2.0以上8.0以下が好ましく、2.0以上4.0以下がより好ましい。なお、ここでいうポリエステルポリオールの平均水酸基官能基数はポリエステルポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
【0031】
ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、特に限定されないが、300以上5000以下が好ましく、500以上3000以下がより好ましい。
ポリエステルポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることが、得られる柔軟性の観点から好ましい。ポリエステルポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0032】
[ポリカーボネートポリオール]
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、低分子カーボネート化合物と、低分子ポリオールとを、縮重合して得られるものが挙げられる。
前記低分子カーボネート化合物としては、例えば、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等が挙げられる。
前記低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0033】
ポリカーボネートポリオールの平均水酸基官能基数は、2.0以上8.0以下が好ましく、2.0以上4.0以下がより好ましい。なお、ここでいうポリカーボネートポリオールの平均水酸基官能基数はポリカーボネートポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
【0034】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量としては、特に限定されないが、300以上5000以下が好ましく、500以上3000以下がより好ましい。
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることが、得られる柔軟性の観点から好ましい。ポリカーボネートポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0035】
[他のポリオール]
本実施形態のポリオール化合物(C-2)は、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール以外に、他のポリオールを含んでいてもよく、他のポリオールを含まなくてもよい。
他のポリオールとしては、アルキレンジオール、アルキレントリオール、ひまし油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0036】
[アルキレンジオール]
アルキレンジオールは、その骨格は飽和炭化水素基であるが、骨格中にエーテル結合及びエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも一方の結合を含んでいてもよい。このようなアルキレンジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-メチル-2,3ブタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ブタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、ヘキサメチルトリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジメチル-1,3-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1、3-ペンタンジオール、3-メチル-2,5-ペンタンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールモノヒドロキシピバレート等が挙げられる。
【0037】
[アルキレントリオール]
アルキレントリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0038】
[ひまし油ポリオール]
ひまし油ポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、ひまし油、又はひまし油誘導体等が挙げられる。上記ひまし油誘導体としては、ひまし油脂肪酸;ひまし油又はひまし油脂肪酸に水素付加した水素化ひまし油;ひまし油とその他の油脂のエステル交換物;ひまし油と多価アルコールの反応物;ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物;これらにアルキレンオキサイドを付加重合したもの等が挙げられる。
【0039】
[ポリオレフィンポリオール]
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0040】
[ポリエーテルポリオール]
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、アルコラート、アルキルアミン等の強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、さらにエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等、並びにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類が含まれる。
【0041】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール系化合物;エリスリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;スタキオース等の四糖類等が挙げられる。
【0042】
[数平均分子量]
ポリオール化合物(C-2)の数平均分子量としては、特に限定されないが、300以上5000以下が好ましく、500以上3000以下がより好ましい。
ポリオール化合物(C-2)の数平均分子量が上記範囲内であることが、得られる柔軟性の観点から好ましい。ポリオール化合物(C-2)の数平均分子量Mnは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0043】
本実施形態のポリオール化合物(C-2)がポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール以外に他のポリオールを含む場合、他のポリオールの含有量は特に限定されないが、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールの合計100質量部に対して、1質量部以上300質量部以下が好ましく、10質量部以上200質量部以下がより好ましい。
【0044】
<ウレタンプレポリマー>
上記ブロックイソシアネート(C)は、上記脂肪族及び/又は脂環族イソシアネート化合物(C-1)及びポリオール化合物(C-2)を反応させてウレタンプレポリマーを得た後に、後述のオキシム系ブロック化剤(C-3)を反応させて得ることが好ましい。
【0045】
本実施形態のウレタンプレポリマーについて以下に詳細を説明する。
【0046】
[イソシアネート基含有率(NCO含有率)]
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(NCO含有率)は、実質的に溶剤を含んでいない状態で、ウレタンプレポリマーの総質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上13質量%以下が更により好ましい。
NCO含有率は、例えば、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基を過剰のアミン(ジブチルアミン等)と反応させ、残ったアミンを塩酸等の酸で逆滴定することによって求めることができる。
【0047】
[ウレタンプレポリマーの製造方法]
本実施形態のウレタンプレポリマーは、先述のイソシアネート化合物(C-1)と、ポリオール化合物(C-2)とを反応させて得られる。
【0048】
ポリオール化合物(C-2)は、それぞれ単独又は混合物として用いることができる。混合物として用いる場合には、イソシアネート化合物(C-1)と反応させる前に混合してもよいし、それぞれのポリオール化合物(C-2)を単独でイソシアネート化合物(C-1)と反応させてウレタンプレポリマーとした後で混合することもできる。
【0049】
すなわち、ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、イソシアネート化合物(C-1)と、一種目のポリオール化合物(C-2)と、二種目のポリオール化合物(C-2)とを同時に反応させてウレタンプレポリマーを得る方法;イソシアネート化合物(C-1)と、一種目のポリオール化合物(C-2)とを反応させたものと、イソシアネート化合物(C-1)と、二種目のポリオール化合物(C-2)とを反応させたものとを混合して、ウレタンプレポリマーを得る方法;イソシアネート化合物(C-1)と、一種目のポリオール化合物(C-2)を反応させた後、二種目のポリオール化合物(C-2)をさらに反応させてウレタンプレポリマーを得る方法等が挙げられる。
【0050】
イソシアネート化合物(C-1)とポリオール化合物(C-2)との反応は下記のように行われる。反応温度は、通常、室温(23℃程度)以上200℃以下であり、80℃以上120℃以下が好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、反応時間がより短くなり、一方、上記上限値以下であれば、望ましくない副反応によるウレタンプレポリマーの粘度上昇を回避できる。
反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基と水酸基の反応を促進するため、公知の触媒を用いてもよい。
【0051】
イソシアネート化合物(C-1)がジイソシアネート化合物である場合は、反応に際して、ポリオール化合物(C-2)の水酸基に対する、イソシアネート化合物(C-1)のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)が2以上50以下であることが好ましく、3以上20以下がより好ましい。イソシアネート基/水酸基のモル比が上記下限値以上であることで、イソシアネートとポリオールとの間の逐次付加反応による、ウレタンプレポリマーの粘度上昇をより回避できる。一方で、上記上限値以下であることで、生産性がより良好となる。
反応終了時には、反応混合物中の未反応のジイソシアネート化合物を、例えば、薄膜蒸留装置、溶剤抽出等の公知の方法により回収してもよい。
【0052】
イソシアネート化合物(C-1)がポリイソシアネート化合物である場合は、反応に際して、ポリオール化合物(C-2)の水酸基に対する、イソシアネート化合物(C-1)のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基のモル比)が3以上100以下であることが好ましく、4以上50以下がより好ましい。イソシアネート基/水酸基のモル比が上記下限値以上であることで、ウレタンプレポリマーの粘度上昇を回避できる。
【0053】
ポリオール化合物(C-2)は、先述のポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールに限られない。ポリオール化合物(C-2)がさらに他のポリオールを含む場合も、他のポリオールは、先述のポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールと同様の方法でイソシアネート化合物(C-1)と反応させることができる。
【0054】
<オキシム系ブロック化剤(C-3)>
本実施形態のオキシム系ブロック化剤(C-3)としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系化合物が挙げられる。これらのオキシム系化合物はいずれを単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0055】
<ブロックイソシアネート(C)の製造方法>
本実施形態のブロックイソシアネート(C)は、先述のウレタンプレポリマーと、オキシム系ブロック化剤(C-3)との反応(以下、「ブロック化反応」という場合がある)により得られる。
【0056】
ブロック化反応に際して、オキシム系ブロック化剤(C-3)の添加量は、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のモル総量に対して80モル%以上120モル%以下であってよく、90モル%以上110モル%以下であることが好ましく、95モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。
オキシム系ブロック化剤(C-3)のモル比率が上記範囲内であることが、得られる硬化性組成物の貯蔵安定性の観点から好ましい。
【0057】
ブロック化反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下で行うことが好ましく、10℃以上90℃以下で行うことがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることにより、反応速度をより高めることができ、上記上限値以下であることにより、副反応をより抑制することができる。
【0058】
ブロック化反応は、無溶媒で行なってもよく、イソシアネート基に不活性な任意の溶媒を用いて行なってもよい。また、必要であれば、イソシアネート基とオキシム系化合物の反応を促進するため、公知の触媒を用いてもよい。
【0059】
≪硬化性組成物の製造方法≫
本実施形態の硬化性組成物は、先述のエポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)を混合して得られる。
【0060】
混合に際して、エポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)の比率としては、エポキシ樹脂(A)とブロックイソシアネート(C)の合計質量100質量部に対して、エポキシ樹脂(A)が60質量部以上95質量部以下であることが好ましく、70質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、潜在性硬化剤(B)が1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、ブロックイソシアネート(C)が5質量部以上40質量部以下であることが好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
【0061】
本実施形態の硬化性組成物は、先述のエポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)と、ブロックイソシアネート(C)以外に、液状ゴム及び粉末状ゴム、エポキシ基を少なくとも1つ有する反応性希釈剤、有機溶剤、可塑剤、エポキシ樹脂の硬化促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、無機充填剤、フィラー、顔料、等を含有してもよい。これらの各成分は、所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0062】
本実施形態の硬化性組成物の製造方法としては、従来公知の方法により製造できる。
例えば、自転公転攪拌機、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて均一に混合することにより製造することができる。
【0063】
本実施形態の硬化性組成物の用途は、特に限定されず、塗料、コーティング剤、粘着剤、接着剤、封止剤、シーリング剤、成型材、絶縁材、導電材、放熱材、保護膜、繊維処理剤、繊維結束剤等に使用することができる。
【0064】
本実施形態の硬化物は、硬化性組成物を加熱によって硬化させることで得られる。加熱時間や加熱温度等の加熱条件に特に制限はなく、公知の条件を採用することができる。具体的には、加熱温度は160~200℃が好ましく、170~190℃がより好ましく、加熱時間は20~40分が好ましく、30~40分がより好ましい。
【0065】
本実施形態の硬化物は、硬化性組成物を型に流し込んでそのまま加熱によって硬化させる製造方法により得てもよく、硬化性組成物を基材に塗布、含浸、又は付着させ、次いで硬化させる工程を含む製造方法により得てもよい。
【0066】
基材としては、特に限定されないが、例えば、電子デバイスを構成する基材、絶縁性基材、導電性基材、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材、繊維基材等が挙げられる。
【実施例0067】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0068】
実施例及び比較例で製造されたポリイソシアネート組成物について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
【0069】
[物性1]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(NCO%)(質量%)を算出した。
【0070】
イソシアネート基(NCO)含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0071】
[物性2]
(ポリオール化合物の数平均分子量)
ポリオール化合物の数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
【0072】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0073】
<ブロックイソシアネート(C)の合成>
[合成例1]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、HDI1,000gと、ポリカプロラクトン(PCL)トリオール(製品名:プラクセル(登録商標)305、株式会社ダイセル製、3官能、数平均分子量550)150gを仕込み、窒素雰囲気下、95℃で1時間撹拌して反応を行った。得られた反応液から流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)の条件で、未反応のHDIを除去することにより、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は11.5質量%であった。
【0074】
次に、撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、得られたウレタンプレポリマーを100g仕込み、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.0倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、60℃に加温し、2時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C1)を得た。
【0075】
[合成例2]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、HDI1,000gと、ポリカプロラクトン(PCL)トリオール(製品名:ポリライト(登録商標)OD-X-2586、DIC株式会社製、3官能、数平均分子量850)237gを仕込み、窒素雰囲気下、95℃で1時間撹拌して反応を行った。得られた反応液から流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)の条件で、未反応のHDIを除去することにより、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は9.1質量%であった。
【0076】
次に、撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、得られたウレタンプレポリマーを100g仕込み、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.05倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、60℃に加温し、2時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C2)を得た。
【0077】
[合成例3]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、HDI1,000gと、ポリカプロラクトン(PCL)トリオール(製品名:ポリライト(登録商標)OD-X-2588、DIC株式会社製、3官能、数平均分子量1250)496gを仕込み、窒素雰囲気下、95℃で1時間撹拌して反応を行った。得られた反応液から流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)の条件で、未反応のHDIを除去することにより、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は7.0質量%であった。
【0078】
次に、撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、得られたウレタンプレポリマーを100g仕込み、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、0.98倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、60℃に加温し、2時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C3)を得た。
【0079】
[合成例4]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、HDI1,000gと、ポリカプロラクトン(PCL)トリオール(製品名:ポリライト(登録商標)OD-X-2735、DIC株式会社製、3官能、数平均分子量500)65g、及びポリオキシテトラメチレンジオール(製品名:PTG1000、保土谷化学工業製、2官能、数平均分子量1,000)130gの混合物を仕込み、窒素雰囲気下、95℃で1時間撹拌して反応を行った。得られた反応液から流下式薄膜蒸留装置を用いて、1回目160℃(27Pa)、2回目150℃(13Pa)の条件で、未反応のHDIを除去することにより、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は8.8質量%であった。
【0080】
次に、撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、得られたウレタンプレポリマーを100g仕込み、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.05倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、60℃に加温し、2時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C4)を得た。
【0081】
[合成例5]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたセパラブルフラスコに、ポリエステルポリオール(製品名:プラクセル(登録商標)220、株式会社ダイセル製、2官能、数平均分子量2000)200g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)44.4g、およびスズ触媒0.1gを添加し、混合物を80℃、窒素下で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は3.5質量%であった。
【0082】
次いで、ウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.0倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、80℃で3時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C5)を得た。
【0083】
[合成例6]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたセパラブルフラスコに、ポリカーボネートポリオール(製品名:デュラノール(登録商標)T5652、旭化成製、2官能、数平均分子量2000)200g、イソホロンジイソシアネート(IPDI)44.4g、およびスズ触媒0.1gを添加し、混合物を80℃、窒素下で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は3.5質量%であった。
【0084】
次いで、ウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.0倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、80℃で3時間撹拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C6)を得た。
【0085】
[合成例7]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたフラスコに、HDI系ポリイソシアネート(製品名:A201H、旭化成製、NCO含有量=17.2%)100g、ポリカーボネートポリオール(製品名:デュラノール(登録商標)T5651、旭化成製、2官能、数平均分子量1000)40gを仕込み、窒素下で100℃で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は10.0質量%であった。
【0086】
次いで、ウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.0倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、80℃で3時間撹拌した。酢酸ブチル20gを加えて、更に30分攪拌した。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C7)を得た。
【0087】
[比較合成例1]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたセパラブルフラスコに、PTMG-2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000、三菱ケミカル(株)製)80.1部、トリメチロールプロパン(TMP)0.6部、およびスズ触媒0.1部を窒素下で混合し、均一な混合物が得られるまで85℃で加熱することによって調製した。次に、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)13.4部を添加し、混合物を85℃、窒素下で1時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は3.0質量%であった。
【0088】
次いで、得られたウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム(MEKO)5.9部を添加し、更に85℃で60分間攪拌して反応させた。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C11)を得た。
【0089】
[比較合成例2]
メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、PTBP(p-tert-ブチルフェノール)に変えた以外は合成例2と同様の方法でブロックイソシアネート組成物(C12)を得た。
【0090】
[比較合成例3]
撹拌器、温度計、冷却管、窒素吹き込み管を取り付けたセパラブルフラスコに、PTMG-2000:ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量2000、三菱ケミカル(株)製)を300.0g、トリメチロールプロパン(TMP)を3.96g、IPDIを68.2g加え、窒素下で100~110℃で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。このウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率は2.50質量%であった。
【0091】
次いで、得られたウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトオキシム(MEKO)を、ポリイソシアネートのNCO含有モル量に対し、1.05倍モル量を徐々に加えた。全て加えた後で、更に90~100℃で3時間反応させた。IR吸収スペクトルにてNCOの吸収が消失したことを確認して反応を終了させ、ブロックイソシアネート組成物(C13)を得た。
【0092】
各合成例及び比較合成例の概要を以下の表1に示す。
【0093】
【0094】
[実施例1]
ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(製品名:jER(登録商標)828、三菱ケミカル株式会社製)60g、ブロックイソシアネート組成物(C1)40g、潜在性硬化剤ジシアンジアミド(製品名:jERキュア(登録商標)DICY7、三菱ケミカル株式会社製)3gを、300mLカップに量り取り、25℃で3分間、スパチュラで攪拌した後、自転・公転方式ミキサーを使用して更に攪拌し、硬化性組成物を得た。
【0095】
[実施例2から11、比較例1から3]
表2に記載の配合で、実施例1と同様に硬化性組成物を得た。
【0096】
<表面の乾燥性>
硬化性組成物を、直径54mmのアルミ皿に3.0g量り取り、80℃で30分加熱した。表面に気泡等がないことを確認し、更に160℃で30分加熱した。その後、23℃で1時間冷却し、厚さ約1mmの硬化物を得た。
得られた硬化物をアルミ皿ごと秤量し、試験前の重量を測定した。次に、硬化物上にコットンボール(直径2.5cm、高さ2.0cmの円柱型)を置き、その上に100gの分銅を60秒間置いた。その後、分銅とコットンを取り除き、試験後のアルミ皿の重量を測定し、硬化物上に残ったコットンの付着量を求めた。
コットンの付着量(mg)=(試験後のアルミ皿の重量)-(試験前のアルミ皿の重量)
【0097】
(乾燥性の評価基準)
◎:コットンの付着量が0.5mg未満
○:コットンの付着量が0.5mg以上、1.0mg未満
△:コットンの付着量が1.0mg以上、2.0mg未満
×:コットンの付着量が2.0mg以上
【0098】
<硬化物の柔軟性>
硬化性組成物を、厚さ0.1mmのブリキ板に塗布後、160℃で60分加熱し、厚さ約30μmの膜を作製した。
JIS K5600-5-1(耐屈曲性(円筒形マンドレル))に準拠した試験を行い、マンドレルの直径2mmで試験した結果を示す。
【0099】
(柔軟性の評価基準)
○:塗膜に異常なし
×:塗膜に割れ、剥がれが見られた。
【0100】
実施例及び比較例で得られた評価結果を以下の表2に示す。
なお、比較例2の硬化性組成物は、160℃で60分加熱しても硬化しなかったため、柔軟性を評価することができなかった。比較例2の乾燥性は、硬化性組成物が硬化しなくても、硬化物と同様に試験した。
【0101】
本実施形態の硬化性組成物によれば、柔軟性が良好であり、従来よりも低温で加熱した場合の乾燥性に優れる硬化性組成物、硬化物及び硬化物の製造方法を提供することができる。