(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163354
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】難燃性樹脂組成物とその製造方法、難燃性樹脂成形品及び難燃性樹脂筐体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231102BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20231102BHJP
C08L 5/08 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08L101/00 ZBP
C08L5/00
C08L5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074207
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱口 進一
(72)【発明者】
【氏名】中村 公亮
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼村 友男
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AA01W
4J002AB05X
4J002BC03W
4J002BG06W
4J002BN15W
4J002CG00W
4J002FD13X
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、難燃性及び耐衝撃性が向上した難燃性樹脂組成物とその製造方法、難燃性樹脂成形品及び難燃性樹脂筐体を提供することである。
【解決手段】本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記塩基性官能基が、アミノ基又は置換アミノ基である
ことを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アミノ基又は置換アミノ基を有する糖骨格が、それぞれ、グルコサミン骨格又はN-アセチルグルコサミン骨格である
ことを特徴とする請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多糖類が、キトサン又はキチンである
ことを特徴とする請求項3に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂である
ことを特徴とする請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、少なくとも、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートを含有する
ことを特徴とする請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
粒子状態で分散している前記多糖類の平均一次粒子径が、0.10~300.00μmの範囲内である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
前記多糖類の含有量が、前記難燃性樹脂組成物の全質量に対して、5~40質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項5に記載の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記多糖類を乾式粉砕する工程、及び
前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程、を有する
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項5に記載の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程を有し、
前記溶融混練の回数が2回以上である
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1又は請求項2に記載の難燃性樹脂組成物を用いて形成された
ことを特徴とする難燃性樹脂成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の難燃性樹脂成形品を含む
ことを特徴とする難燃性樹脂筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性樹脂組成物とその製造方法、難燃性樹脂成形品及び難燃性樹脂筐体に関する。より詳しくは、難燃性及び耐衝撃性が向上した難燃性樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の低減が求められており、石油原料を、バイオマス原料で代替するバイオマス樹脂が注目を集めている。バイオマス樹脂の使用により、石油系樹脂(石油を原料として合成される樹脂)と比較して、製造時のエネルギー使用量の削減や最終焼却処分時の二酸化炭素排出量の削減が期待されている。
【0003】
バイオマス樹脂については、近年利用が増大している電気・電子機器への使用が検討されている。ただし、電気・電子機器は潜在的に回路の短絡、劣化等による発火の危険性を有しているため、バイオマス樹脂を電気・電子機器における部品や筐体の材料として使用するには、火災防止等の安全性の観点から、難燃性を付与する必要がある。
【0004】
難燃性を付与するために用いられる難燃剤としては、例えばリン系難燃剤が挙げられるが、リン系難燃剤の多くは化石資源を原料としており、十分な難燃性を付与するためにリン系難燃剤を適当量添加すると、樹脂全体のバイオマス度が大きく低下してしまう。そこで、樹脂全体のバイオマス度と難燃性を両立させる観点から、天然の多糖類を難燃剤として使用する技術が注目されている。
【0005】
特許文献1では、糖類化合物を含有する難燃剤に関する技術が開示されている。特に、糖類化合物に含まれる多糖類は、ヒドロキシ基を多量に有する環状構造を基本骨格とする化合物であり、燃焼時に加熱に伴う脱水縮合の結果、水蒸気を発生させることで、多量の吸熱による冷却、燃焼ガスの希釈化、酸素の遮断等が生じ、加えて、脱水後の多糖類が炭化することにより、断熱効果のある被膜(以下、「チャー」又は「炭化層」ともいう。)が形成されるため、高い難燃効果が得られる。
【0006】
しかし、樹脂に多糖類を添加して難燃性を付与する場合には、樹脂と多糖類との相溶性によっては、多糖類が樹脂中に均一に分散しづらく、樹脂全体に均一に難燃性を付与することが困難であった。また、樹脂に多糖類を添加して混合する際に生じる熱により、多糖類の脱水縮合が進行してしまい、難燃性が低下してしまう等の問題があった。
【0007】
特許文献2では、耐衝撃性、成形性及び難燃性を兼ね備えた、天然多糖類の側鎖にリン酸エステルを付加してなるリン含有多糖類を難燃剤として含む難燃性樹脂組成物に関する技術が開示されている。ただし、当該リン含有多糖類の難燃性は、多糖類よりもリンの方がその寄与が大きいと考えられるため、難燃剤中におけるリンの濃度が比較的低い当該リン含有多糖類は、多糖類を含まない従来使用されているリン系難燃剤よりも、難燃性が低く、当該リン含有多糖類を難燃剤として使用するためには、更なる難燃性の向上が求められていた。
【0008】
また、特許文献3では、分子内に少なくともヒドロキシ基とカルボキシ基を有する生分解性難燃剤が主成分である難燃性生分解樹脂組成物に関する技術が開示されており、当該生分解性難燃剤として、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、没食子酸の群から選ばれる酸、エステル誘導体、又は金属塩が例示されている。しかし、これらの例示化合物は分解温度が比較的低く、当該生分解樹脂組成物を熱で溶融し、金型に射出して成形し得られる成形品においては、例示化合物が分解してしまう場合があるため、十分な難燃性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006-77215公報
【特許文献2】特開2010-31230号公報
【特許文献3】特開2003-213149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、難燃性及び耐衝撃性が向上した難燃性樹脂組成物とその製造方法、難燃性樹脂成形品及び難燃性樹脂筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物において、当該多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することにより、難燃性及び耐衝撃性が向上することを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、
前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物。
【0013】
2.前記塩基性官能基が、アミノ基又は置換アミノ基である
ことを特徴とする第1項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0014】
3.前記アミノ基又は置換アミノ基を有する糖骨格が、それぞれ、グルコサミン骨格又はN-アセチルグルコサミン骨格である
ことを特徴とする第2項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0015】
4.前記多糖類が、キトサン又はキチンである
ことを特徴とする第3項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0016】
5.前記樹脂が、熱可塑性樹脂である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0017】
6.前記熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂である
ことを特徴とする第5項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0018】
7.前記熱可塑性樹脂が、少なくとも、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートを含有する
ことを特徴とする第5項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0019】
8.粒子状態で分散している前記多糖類の平均一次粒子径が、0.10~300.00μmの範囲内である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0020】
9.前記多糖類の含有量が、前記難燃性樹脂組成物の全質量に対して、5~40質量%の範囲内である
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の難燃性樹脂組成物。
【0021】
10.第5項に記載の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記多糖類を乾式粉砕する工程、及び
前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程、を有する
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法。
【0022】
11.第5項に記載の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、
前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程を有し、
前記溶融混練の回数が2回以上である
ことを特徴とする難燃性樹脂組成物の製造方法。
【0023】
12.第1項又は第2項に記載の難燃性樹脂組成物を用いて形成された
ことを特徴とする難燃性樹脂成形品。
【0024】
13.第12項に記載の難燃性樹脂成形品を含む
ことを特徴とする難燃性樹脂筐体。
【発明の効果】
【0025】
本発明の上記手段により、難燃性及び耐衝撃性が向上した難燃性樹脂組成物とその製造方法、難燃性樹脂成形品及び難燃性樹脂筐体を提供することができる。
【0026】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0027】
樹脂に難燃性を付与するための一つの方法として、樹脂に火を点けた際に樹脂の内部から水蒸気を発生させて樹脂の温度を下げ、燃焼を止める方法がある。具体的には、前述のとおり、樹脂に多糖類を含有させることにより、多糖類の脱水縮合反応が進行して水蒸気が発生し、温度を下げることができると考えられる。
【0028】
本発明においては、樹脂と多糖類を含有する樹脂組成物において、多糖類に含まれる糖骨格が、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することにより、樹脂組成物が加熱される際に生じる脱水縮合反応が促進されると考えられる。そして、水蒸気の発生と同時に、樹脂の表面が炭化する炭化作用が促進され、例えばセルロース等の、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有しない中性多糖類と比較して、難燃性が向上すると考えられる。
【0029】
また、本発明において、多糖類は樹脂とは完全には相溶せず、多糖類を微粒子として樹脂組成物中に分散させることにより、安定して分散状態を保つことができ(分散安定化)、ムラのない均一な特性を有する樹脂組成物とすることができるため、耐衝撃性が向上すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の難燃性樹脂筐体に収容されている大型複写機10の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することを特徴とする。
この特徴は、下記実施態様に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0032】
本発明の実施形態としては、本発明の効果発現の観点から、前記塩基性官能基が、アミノ基又は置換アミノ基であることが好ましい。
【0033】
本発明の実施形態としては、外観及び耐衝撃性の観点から、前記アミノ基又は置換アミノ基を有する糖骨格が、それぞれ、グルコサミン骨格又はN-アセチルグルコサミン骨格であることが好ましい。
【0034】
本発明の実施形態としては、外観及び耐衝撃性の観点から、前記多糖類が、キトサン又はキチンであることが好ましい。
【0035】
本発明の実施形態としては、取り扱い性の容易性の観点から、前記樹脂が、熱可塑性樹脂であることが好ましく、耐衝撃性の観点から、前記熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂であることが好ましい。
【0036】
本発明の実施形態としては、外観、難燃性及び耐衝撃性の観点から、前記熱可塑性樹脂が、少なくとも、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートを含有することが好ましい。
【0037】
本発明の実施形態としては、外観、難燃性及び耐衝撃性の観点から、粒子状態で分散している前記多糖類の平均一次粒子径が、0.10~300.00μmの範囲内であることが好ましい。
【0038】
本発明の実施形態としては、外観及び難燃性の観点から、前記多糖類の含有量が、前記難燃性樹脂組成物の全質量に対して、5~40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0039】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、本発明の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、前記多糖類を乾式粉砕する工程、及び前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程、を有することを特徴とする。
【0040】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、本発明の難燃性樹脂組成物を製造する難燃性樹脂組成物の製造方法であって、前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程を有し、前記溶融混練の回数が2回以上であることを特徴とする。
【0041】
本発明の難燃性樹脂成形品は、本発明の難燃性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とし、本発明の難燃性樹脂筐体は、本発明の難燃性樹脂成形品を含むことを特徴とする。
【0042】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
≪難燃性樹脂組成物の概要≫
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することを特徴とする。
なお、本発明において、「難燃性樹脂組成物」とは、樹脂組成物のうち、以下の「難燃性」を有するもののことをいう。
【0044】
「難燃性」とは、耐熱性の一つであり、燃焼する速さは遅いが、ある程度は燃焼し続ける性質のことをいう。
具体的には、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94規格において合格基準を満たす、詳しくは、UL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)において、UL94HBで合格基準を満たすことをいう。加えて、UL94VでV-2の基準を満たすことが好ましく、V-1の基準を満たすことがより好ましく、V-0の基準を満たすことが更に好ましい。
【0045】
「燃焼」とは、光と熱の発生を伴う酸化反応のことをいい、燃焼するためには、可燃物、酸素供給源及び点火源の三要素が必要である。
樹脂(可燃物)においては、いったん火を点ける(点火源)と、下記のア~ウの現象が繰り返され、燃焼が継続する。
ア)高温により樹脂(可燃物)が溶融・分解し、多量の可燃性ガスが発生する。
イ)高温環境下により、可燃性ガスがラジカル化し、空気中の酸素(酸素供給源)との化学反応が促進されるため、相当量の光と熱が発生する。
ウ)発生した熱により高温が維持されるため、樹脂の分解が継続する。
【0046】
したがって、温度を下げる、酸素の供給を断つ、可燃性ガスを除去する、のいずれかを行うことにより、燃焼を止めることができ、火を点けた際にこのような現象が生じるよう樹脂を設計することで、樹脂に難燃性を付与することができる。
【0047】
具体的には、例えば、樹脂の内部から水蒸気を発生させて温度を下げる(多量の吸熱による冷却)、樹脂の内部から多量の不燃性ガスを発生させ酸素濃度を下げて酸素の供給を断つ、樹脂の表面を炭化させてバリヤー層(本発明では、「チャー」又は「炭化層」に相当する。)を形成し酸素の供給を断つ、等が挙げられる。
【0048】
本発明においては、樹脂組成物が多糖類を含有し、さらに、当該多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することにより、上記現象を発現させることができ、難燃性を付与することができると考えられる。
【0049】
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性及び耐衝撃性に優れており、適当な形態及び形状に成形することにより、電子機器等における筐体や部品として使用できる。また、筐体として使用する場合には、外観に優れていることが好ましい。
【0050】
≪難燃性樹脂組成物の構成≫
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂と多糖類を含有する難燃性樹脂組成物であって、前記多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することを特徴とする。
なお、環境負荷の低減の観点から、本発明の難燃性樹脂組成物に用いられる材料は、バイオマス材料であることが好ましいが、バイオマス材料以外の材料を用いてもよい。
【0051】
[1 多糖類]
本発明の難燃性樹脂組成物は、多糖類を含有し、さらに、当該多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する。
本発明の難燃性樹脂組成物は、当該多糖類を含有することにより、難燃性を付与することができる。
【0052】
本発明において、「多糖類」とは、多数の単糖が、グリコシド結合により脱水縮合した物質のことをいい、その総称である。多糖類の構成単位となる単糖の種類は、一種であっても、二種以上であってもよい。
【0053】
多糖類の重合度は、50~20000の範囲内であることが好ましく、200~1500の範囲内であることがより好ましく、200~1100の範囲内であることが更に好ましい。
【0054】
多糖類の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求められるポリスチレン基準の重量平均分子量において、1万~25万の範囲内であることが好ましく、2万~8万の範囲内であることがより好ましい。
【0055】
なお、「単糖」とは、それ以上加水分解できない糖のことをいい、その総称である。構造としては、アルデヒド基又はケトン基を有する鎖式ポリヒドロキシ化合物であり、通常、分子内でヘミアセタール化した環状の形で存在する。当該単糖としては、五炭糖(ペントース)又は六炭糖(ヘキソース)であることが好ましく、六炭糖であることがより好ましい。また、本発明において、「糖骨格」とは、単糖の骨格構造のことをいう。
【0056】
例えば、多糖類の構成単位となる単糖の種類が一種(A)のみである場合、糖骨格には、単糖Aの骨格構造が該当する。本発明においては、糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することを特徴としており、この場合、単糖Aの骨格構造において、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する。
【0057】
多糖類の構成単位となる単糖の種類が二種(A及びB)である場合、糖骨格には、単糖A及びBの骨格構造が該当する。この場合、単糖A又は単糖Bの骨格構造において、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する。
【0058】
多糖類の構成単位となる単糖の種類が三種以上である場合も同様に、糖骨格には、各単糖の骨格構造が該当し、各単糖の骨格構造において、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する。
なお、多糖類は、必ずしも繰り返し単位を有する構造である必要はない。
【0059】
本発明において、「多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有する。」とは、多糖類に含まれる単糖の骨格構造において、ヒドロキシ基以外の塩基性官能基を少なくとも一つ以上有することをいい、当該塩基性官能基は、塩を形成していてもよい。以下、「塩基性官能基又は塩基性官能基の塩」をまとめて、「塩基性官能基等」ともいう。なお、本発明において、ヒドロキシ基は、塩基性官能基には含まれない。
多糖類は、本発明の効果を阻害しない程度で、塩基性官能基等の他に、酸性官能基を有していてもよく、さらに、酸性官能基は塩を形成していてもよい。また、本発明の効果発現の観点から、多糖類全体における、塩基性官能基及び塩基性官能基の塩の合計数が、酸性官能基及び酸性官能基の塩の合計数よりも多いことが好ましい。
【0060】
本発明において、バイオマス材料を用いることが好ましい観点から、多糖類は、天然の多糖類を用いることが好ましい。ただし、本発明に係る多糖類は、天然由来のものに限定されない。
【0061】
また、天然の多糖類の一部を改質したものであってもよい。具体的には、塩基性官能基等を有さない多糖類に、塩基性官能基等を導入し、本発明に係る多糖類としてもよく、また、必要に応じて、誘導体としてもよい。
【0062】
多糖類の誘導体としては、塩基性官能基等以外の原子を異なる原子や置換基で置き換えた化合物、例えば、多糖類における水素原子を、ハロゲノ基(ハロゲン原子)又は炭化水素基等の置換基で置き換えた化合物等が挙げられる。
また、塩基性官能基等以外の官能基を介して他の化合物又は当該多糖類の他の分子と結合して得られる化合物、例えば、多糖類におけるヒドロキシ基と、ヒドロキシ基との反応性を有する官能基を有する化合物とを、反応させて得られるエステル誘導体、エーテル誘導体等、後述する架橋多糖類が挙げられる。
【0063】
塩基性官能基としては、例えば、アミノ基(第一級アミノ基)、置換アミノ基(第二級アミノ基及び第三級アミノ基)、アミド基、ピリジル基、ピリジン基、ピロリドン基、イミダゾール基、イミン基等が挙げられ、中でも、アミノ基又は置換アミノ基(第一級アミノ基、第二級アミノ基又は第三級アミノ基)であることが好ましい。
【0064】
塩基性官能基の塩としては、例えば、第四級アンモニウム塩が挙げられ、塩素イオン、臭素イオン、炭素数1又は2のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1~12の範囲内の脂肪酸イオン、炭素数1~3の範囲内のアルキル基が1~3個の範囲内で置換しているベンゼンスルホン酸イオン等との塩が挙げられる。
【0065】
中でも、二価以上のアニオンとの塩であることが好ましい。二価以上のアニオンとの塩であることにより、分子内又は分子間において架橋構造が形成され、剛直な構造となる。そのため、耐熱性が飛躍的に向上し、溶融混練時や成形時において難燃性樹脂組成物の変形を防ぐことができるため、強度や外観に優れる。
【0066】
塩基性官能基を有する単糖としては、例えば、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン等、及びこれらの誘導体が挙げられ、塩基性官能基の塩を有する単糖としては、これらの塩が挙げられる。
【0067】
誘導体としては、硫酸等の無機塩や酢酸等の有機酸によるN置換体又は塩が挙げられる。中でも、有機酸によるN置換体であることが好ましく、N-アシル置換体であることがより好ましい。
【0068】
N-アシル置換体としては、例えば、N-ホルミル置換体、N-アセチル置換体、N-プロピオニル置換体、N-ブチリル置換体、N-イソブチリル置換体、N-バレリル置換体、N-イソバレリル置換体、N-ピバロイル置換体等が挙げられる。中でも、N-アセチル置換体であることが好ましく、N-アセチル置換体としては、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルマンノサミン等が挙げられる。
【0069】
塩基性官能基等を有する単糖は、塩基性官能基等以外の官能基を有していてもよく、酸性官能基又は酸性官能基の塩(以下、「酸性官能基等」ともいう。)を有していてもよい。塩基性官能基等及び酸性官能基等を両方有する単糖としては、例えば、ムラミン酸、N-アセチルグルコサミン-4-硫酸、N-アセチルガラクトサミン-4-硫酸、ノイラミン酸、N-アセチルノイラミン酸等が挙げられる。
【0070】
多糖類の構成単位となる単糖の種類が二種以上である場合、少なくとも一種は上記単糖に該当するが、その他の単糖については、特に制限されず、上記単糖に該当するものであっても、該当しないものであってもよい。
【0071】
上記単糖に該当しないその他の単糖としては、例えば、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、キシルロース、リブロース、デオキシリボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース、フコース、フクロース、ラムノース等が挙げられる。
【0072】
また、その他の単糖は、酸性官能基等を有していてもよく、酸性官能基としては、カルボキシ基、スルホオキシ基等が挙げられる。カルボキシ基を有する単糖としては、ウロン酸が挙げられ、ウロン酸としては、例えば、グルクロン酸、イズロン酸、マンヌロン酸、ガラクツロン酸等が挙げられる。スルホオキシ基を有する単糖としては、例えば、ガラクトース-3-硫酸等が挙げられる。
【0073】
糖骨格が一種の単糖で構成される場合の多糖類としては、例えば、グルコサミンを構成成分とするキトサン、N-アセチルグルコサミンを構成成分とするキチン等が挙げられる。ただし、天然のキチンについては、N-アセチルグルコサミンだけでなく、グルコサミンを含んでおり、N-アセチルグルコサミンとグルコサミンの構成比は、約9:1である。
【0074】
また、糖骨格が二種の単糖で構成される場合の多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸等が挙げられる。
【0075】
多糖類の誘導体としては、架橋多糖類を用いてもよい。
本発明において、「架橋多糖類」とは、二つ以上の多糖類分子において、糖鎖中のヒドロキシ基間を架橋させた構造を有する化合物のことをいう。架橋多糖類は、例えば、多糖類の少なくとも異なる分子間でヒドロキシ基同士を、架橋剤を用いて架橋することで得られる。なお、異なる分子間で架橋している場合に限り、同一分子内で二つのヒドロキシ基同士を、架橋剤を用いて架橋してもよい。
【0076】
本発明に用いられる架橋多糖類は、上記多糖類の架橋体であり、架橋多糖類を構成する多糖類としては、上記多糖類を制限なく用いることができる。
【0077】
架橋剤としては、ヒドロキシ基と、ヒドロキシ基との反応性を有する官能基を二つ以上有する化合物であることが好ましい。ヒドロキシ基との反応性を有する官能基としては、例えば、エポキシ基、クロロ基、シリル基、イソシアネート基、酸無水物等が挙げられる。架橋剤としては、例えば、エピクロロヒドリン、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラエチルシリケート等が挙げられ、中でも、エピクロロヒドリンであることが好ましい。
【0078】
エピクロロヒドリンを用いた多糖類の架橋は、例えば、以下の式(I-1)及び(I-2)に示される反応により行うことができる。各式において、「※」は、単糖がグリコシド結合により脱水縮合した骨格構造との結合部分を示す。
【0079】
式(I-1)は、アルカリ条件下で行われ、エピクロロヒドリンのエポキシ環が開環し、多糖類分子のOH基と反応して中間体(P)が得られる。さらに、式(I-2)により、中間体(P)におけるエピクロロヒドリン由来の末端クロロ基が、別の多糖類分子のOH基と反応し、二つの多糖類分子が、連結基(-CH2-CH(OH)-CH2-)で架橋される。
【0080】
【0081】
架橋多糖類における架橋の程度は、多糖類に対する架橋剤の添加量により調整できる。多糖類における架橋の程度は、得られる架橋多糖類の重量平均分子量が、前述の多糖類の重量平均分子量の好ましい範囲内となるよう調整することが好ましい。
【0082】
樹脂組成物が多糖類を含有し、当該多糖類に含まれる糖骨格が、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有するかどうかについては、樹脂組成物を微粉砕し、溶剤にて洗浄、抽出し、多糖類のみを分別した後、単糖にまで加水分解し、高速クロマトグラフィーにて単糖の分子構造を特定することにより判断することができる。
【0083】
本発明の難燃性樹脂組成物中において、多糖類は、粒子状態で分散していると考えられ、粒子径を特定の範囲内に調整することにより、安定して多糖類の分散状態を保つことができると考えられる。また、多糖類の分散状態が安定することにより、難燃性樹脂組成物における特性が均一に発現すると考えられる。具体的には、難燃性樹脂成形品において、ムラがなく均一な難燃性、耐衝撃性及び外観を付与することができると考えられる。
【0084】
外観については、不良があった場合には、金型の修正及び成形条件(冷却時間等)の変更を行う必要があるため、生産効率の観点からも外観に優れることが好ましい。
【0085】
多糖類の粒子の平均一次粒子径は、0.10~300.00μmの範囲内であることが好ましく、0.10~80.00μmの範囲内であることがより好ましく、0.10~30.00μmの範囲内であることが更に好ましい。
【0086】
多糖類の粒子の平均一次粒子径は、以下の方法で測定できる。
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)により、難燃性樹脂組成物の1000倍の拡大写真(SEM像)を撮影し、スキャナーによりコンピューターに取り込む。そして、SEM像を、自動画像処理解析装置「ルーゼックス(登録商標)AP」(株式会社ニレコ製)により、ソフトウェアVer.1.3.2を用いて2値化処理した後、無作為に選択した300個の多糖類粒子の径を水平方向フェレ径として計算し、その平均値を平均一次粒子径とする。なお、「水平方向フェレ径」とは、多糖類粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さのことをいう。
【0087】
多糖類の平均一次粒子径は、後述の本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法を用いることにより、上記範囲内に調整することができる。特に、天然の多糖類については、粒子径の比較的大きいものが多いが、当該製造方法を用いることにより、天然の多糖類であっても粒子径を比較的小さくすることができる。
【0088】
なお、後述の本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は溶融混練法を用いているが、樹脂が熱可塑性樹脂以外の樹脂である場合には、多糖類を乾式粉砕する工程(前処理)を行った後、各成分を均一に混合する公知の方法を用いることにより、多糖類の平均一次粒子径を上記範囲内に調整することができる。
【0089】
難燃性に加えて、耐衝撃性及び外観の観点から、多糖類の含有量は、難燃性樹脂組成物の全質量に対して、5~40質量%の範囲内であることが好ましく、20~30質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0090】
[2 樹脂]
本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂を含有する。
樹脂の種類は、特に制限されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱・光硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、取り扱いが容易である観点から、樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0091】
環境負荷の低減の観点から、本発明に係る樹脂は、バイオマス樹脂であることが好ましいが、本発明は、バイオマス樹脂以外の樹脂においても適用が可能である。また、バイオマス樹脂と、バイオマス樹脂以外の樹脂とを組み合わせて用いてもよい。
【0092】
樹脂の含有量は、難燃性樹脂組成物の全質量に対して、30~95質量%の範囲内であることが好ましく、40~90質量%の範囲内であることがより好ましく、50~80質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0093】
[2.1 熱可塑性樹脂]
本発明に係る樹脂は、取り扱いの容易性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されないが、多糖類の分解を抑制でき、難燃性に加えて耐衝撃性や外観に優れる観点から、熱可塑性樹脂の軟化点は、200℃以下であることが好ましい。
【0094】
また、熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂であっても、非晶性樹脂であってもよいが、耐衝撃性の観点から、非晶性樹脂であることが好ましい。
【0095】
本発明において、「非晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークが認められない樹脂のことをいう。つまり、融点(示差走査熱量測定(DSC)装置を用いて測定されるDSC曲線において、明確な吸熱ピーク)を有さず、比較的高いガラス転移点(Tg)を有する樹脂のことをいう。一方、「結晶性樹脂」とは、DSCにおいて、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有する樹脂のことをいう。
【0096】
ここでの、「明確な吸熱ピーク」とは、具体的には、DSC測定において、昇温速度10℃/分で測定した際に、吸熱ピークの半値幅が15℃以内であるピークのことをいう。なお、DSC測定としては、例えば、示差走査熱量計(「Diamond DSC」、パーキンエルマー社製)を用い、この装置の検出部の温度補正にはインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いることができる。
【0097】
樹脂が、結晶性樹脂である場合には、結晶化温度を有する。結晶性樹脂では、冷却過程において、ある温度で結晶化速度が最も速くなるが、この温度を、「結晶化温度」という。
したがって、結晶化温度の有無により、樹脂が、結晶性樹脂か非晶性樹脂かを判別することができる。
【0098】
結晶化温度は、以下の方法で測定することができる。
示差走査型熱量計(DSC)として、「DSC Pyris1」(株式会社パーキンエルマージャパン製)又は「DSC7020」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を、樹脂ごとに設定した到達温度まで昇温し、その温度で3分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却して30℃で1分間保持し、10℃/分で上記到達温度まで昇温する。そして、昇温過程における結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を算出し、降温過程における結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を算出することができる。なお、複数の結晶溶融ピークが観測された場合は、高温側ピークを融点(Tm)とする。
【0099】
結晶性樹脂は、溶融、成形した後、冷却する過程において、結晶構造の形成による成形収縮が生じやすい。一方、非晶性樹脂は、成形収縮が生じにくく、難燃性樹脂組成物中における多糖類の分散状態を保つことができるため、耐衝撃性により優れると考えられる。
【0100】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ乳酸、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、1,2-ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0101】
環境負荷の低減の観点から、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性のバイオマス樹脂を用いてもよい。熱可塑性のバイオマス樹脂としては、例えば、脂肪族ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール及びこれらを含む共重合体が挙げられる。また、熱可塑性のバイオマス樹脂と、熱可塑性のバイオマス樹脂以外の樹脂を組み合わせ、両者の有する利点を併せ持つ熱可塑性樹脂としてもよい。
これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0102】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。
【0103】
芳香族ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル誘導体成分と、脂肪族ジオールや脂環族ジオール等のジオール成分とがエステル反応により連結した構造を有する芳香族ポリエステルが挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4′-ジカルボキシレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート等の共重合ポリエステルが挙げられる。
【0104】
脂肪族ポリエステルとしては、オキシ酸の共重合体であるポリオキシ酸及び脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の重縮合体が挙げられる。ポリオキシ酸としては、例えば、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリ-D-乳酸(PDLA)、L-乳酸とD-乳酸とのランダム共重合体、L-乳酸とD-乳酸とのステレオコンプレックス等のポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸等が挙げられる。脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の重縮合体としては、例えば、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート等が挙げられる。
【0105】
耐衝撃性の観点から、熱可塑性樹脂は、非晶性樹脂であることが好ましく、特に、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートであることが好ましい。熱可塑性樹脂は、二種以上を併用してもよく、少なくとも、これらの樹脂のうち一種以上用いることが好ましい。
【0106】
熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、「トヨラック(登録商標)」(ABS樹脂、東レ株式会社製)、「サンタック(登録商標)」(ABS樹脂、日本エイアンドエル株式会社製)、「トーヨースチロール(登録商標)」(ポリスチレン、東洋スチレン株式会社製)、「アクリペット(登録商標)」(ポリメチルメタクリレート、三菱ケミカル株式会社製)、「タフロン(登録商標)」(ポリカーボネート、出光興産株式会社製)、「パンライト(登録商標)」(ポリカーボネート、帝人化成株式会社製)、「プライムポリプロ(登録商標)」(ポリプロピレン、株式会社プライムポリマー製)、「ジュラネックス(登録商標)」(ポリブチレンテレフタレート、ポリプラスチック株式会社製)、「クラペット(登録商標)」(ポリエチレンテレフタレート、クラレ株式会社製)、「アラミン」(ポリアミド、東レ株式会社製)、「レイシア(登録商標)」(ポリ乳酸、三井化学株式会社製)、「テラマック(登録商標)」(ポリ乳酸、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0107】
[2.1.1 ポリスチレン系樹脂]
本発明に係る熱可塑性樹脂は、耐衝撃性の観点から、ポリスチレン系樹脂であることが好ましく、中でも、ABS樹脂又はポリスチレンであることが好ましい。
【0108】
本発明において、「ポリスチレン系樹脂」とは、少なくともスチレン系単量体を単量体成分として含む重合体のことをいう。ここで、「スチレン系単量体」とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体のことをいう。
【0109】
スチレン系単量体としては、その構造中にスチレン骨格を有する単量体であれば、特に制限されず、例えば、スチレン、核アルキル置換スチレン(o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等)、α-アルキル置換スチレン(α-メチルスチレン等)等が挙げられ、中でも、スチレンであることが好ましい。
【0110】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体の単独重合体であっても、スチレン系単量体と他の単量体成分との共重合体であってもよい。スチレン系単量体と共重合可能な単量体成分としては、例えば、アルキルメタクリレート単量体(メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等)、アルキルアクリレート単量体(メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等)等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が挙げられる。
【0111】
また、不飽和カルボン酸単量体(メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸等)、不飽和ジカルボン酸無水物単量体(無水マレイン酸等)、不飽和ニトリル単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、共役ジエン単量体(1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等)等が挙げられる。
なお、スチレン系単量体と、他の単量体成分一種を共重合しても、他の単量体成分二種以上を共重合してもよい。
【0112】
他の単量体成分の共重合の割合は、スチレン系単量体の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることが更に好ましい。
【0113】
本発明において、「ABS樹脂」とは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体のことをいう。また、「ポリスチレン」とは、上記スチレン系単量体の単独重合体のことをいう。
【0114】
耐熱性の観点から、ポリスチレン系樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等であることが好ましい。
【0115】
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)において、耐衝撃性及び耐熱性の観点から、共重合体におけるアクリロニトリル単量体の割合が、ABS樹脂の全質量に対して、1~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~30質量%の範囲内であることがより好ましく、1~25質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0116】
スチレン-メタクリル酸共重合体において、耐熱性の観点から、共重合体におけるメタクリル酸単量体の割合が、スチレン-メタクリル酸共重合体の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。また、透明性を付与する場合には、50質量%以下であることが好ましい。耐熱性と透明性を両立させる場合には、0.1~40質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~30質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0117】
スチレン-無水マレイン酸共重合体において、耐熱性の観点から、共重合体における無水マレイン酸単量体の割合が、スチレン-無水マレイン酸共重合体の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。また、透明性を付与する場合には、50質量%以下であることが好ましい、耐熱性と透明性を両立させる場合には、0.1~40質量%の範囲内であることがより好ましく、0.1~30質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0118】
ポリスチレン系樹脂の市販品としては、例えば、「トヨラック(登録商標)」(ABS樹脂、東レ株式会社製)、「サンタック(登録商標)」(ABS樹脂、日本エイアンドエル株式会社製)、「トーヨースチロール(登録商標)」(ポリスチレン、東洋スチレン株式会社製)、「クリアレン(登録商標)」(スチレン-ブタジエン共重合体、デンカ株式会社製)、「アサフレックス(登録商標)」(スチレン-ブタジエン共重合体、旭化成ケミカルズ株式会社製)、「Styrolux(登録商標)」(スチレン-ブタジエン共重合体、BASF株式会社製)、「PSJ(登録商標)-ポリスチレン」(ポリスチレン、PSジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0119】
ポリスチレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、本発明の難燃性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂はポリスチレン系樹脂のみで構成されることが特に好ましい。
【0120】
[2.1.2 ポリメチルメタクリレート]
本発明に係る熱可塑性樹脂は、耐衝撃性の観点から、ポリメチルメタクリレートであることが好ましい。
【0121】
ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレートの単独重合体であっても、メチルメタクリレートと他の単量体成分との共重合体であってもよい。メチルメタクリレートと共重合可能な単量体成分としては、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)クリレート、プロピル(メタ)クリレート、イソプロピル(メタ)クリレート、ブチル(メタ)クリレート、アミル(メタ)クリレート、ヘキシル(メタ)クリレート、オクチル(メタ)クリレート、2-エチルヘキシル(メタ)クリレート、シクロヘキシル(メタ)クリレート、ドデシル(メタ)クリレート、オクタデシル(メタ)クリレート、フェニル(メタ)クリレート、ベンジル(メタ)クリレート等のアルキル(メタ)クリレートが挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)クリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を表す。
また、メチルメタクリレートと、他の単量体成分一種を共重合しても、他の単量体成分二種以上を共重合してもよい。
【0122】
ポリメチルメタクリレートにおいて、耐衝撃性及び耐熱性の観点から、共重合体におけるメチルメタクリレートの割合が、ポリメチルメタクリレートの全質量に対して、50~99質量%の範囲内であることが好ましく、60~95質量%の範囲内であることがより好ましく、70~95質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0123】
ポリメチルメタクリレートの市販品としては、例えば、「アクリペット(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0124】
ポリメチルメタクリレートの含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、本発明の難燃性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂はポリメチルメタクリレートのみで構成されていてもよい。
【0125】
[2.1.3 ポリカーボネート]
本発明に係る熱可塑性樹脂は、耐衝撃性の観点から、ポリカーボネートであることが好ましい。
【0126】
ポリカーボネートは、単量体同士の接合部がカーボネート基で構成される化合物であり、下記一般式(1)で表される構造を有する。
一般式(1) -(-O-R-O-C(=O)-)-
ただし、式中、Rは、炭化水素基を表す。
【0127】
ポリカーボネートは、2価のヒドロキシ化合物とホスゲンに代表されるカーボネート前駆体との反応によって得られ、2価のヒドロキシ化合物の構造によって、芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート、脂環族ポリカーボネート等が得られる。なお、本発明においては、耐衝撃性の観点から、芳香族ポリカーボネートであることがより好ましい。
【0128】
2価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2′-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン〔ビスフェノールB〕、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン〔ビスフェノールAP〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン〔ビスフェノールBP〕等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が挙げられる。
【0129】
また、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン〔ビスフェノールZ〕、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン〔ビスフェノールTMC〕等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類が挙げられ、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類が挙げられ、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類が挙げられ、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類が挙げられる。
【0130】
さらに、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類が挙げられ、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、また、その他、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
【0131】
これらは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
中でも、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類であることが好ましく、特に、ビスフェノールAであることが好ましい。
【0132】
また、3価以上の芳香族ヒドロキシ化合物と、上記2価の芳香族ヒドロキシ化合物とを併用し、分岐構造を有するポリカーボネートとしてもよい。
3価以上の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、フロログルシン、フロログルシドが挙げられ、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが挙げられる。
【0133】
また、テトラ(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)ケトン、1,4-ビス(4,4-ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン等が挙げられ、その他、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸及びこれらの酸クロライド等が挙げられる。
中でも、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン又は1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタンであることが好ましく、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであることがより好ましい。
【0134】
カーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン、ジアリールカーボネート類(ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等)、ジアルキルカーボネート類(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等)、二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられ、中でも、ホスゲンであることが好ましい。
これらは、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0135】
ポリカーボネートの市販品としては、例えば、「タフロン(登録商標)」(出光興産株式会社製)、「パンライト(登録商標)」(帝人化成株式会社製)、「ユーピロン(登録商標)」(三菱エンジニアリングプラスチック社製)、「ノバレックス(登録商標)」(三菱エンジニアリングプラスチック社製)等が挙げられる。
【0136】
ポリカーボネートの含有量は、熱可塑性樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。また、本発明の難燃性樹脂組成物において、熱可塑性樹脂はポリカーボネートのみで構成されていてもよい。
【0137】
[3 その他添加剤]
本発明の難燃性樹脂組成物は、目的に応じて、本発明の効果を損なわない程度で、その他添加剤を含有してもよい。
【0138】
添加剤としては、例えば、酸化防止剤、フィラー、結晶核剤等が挙げられる。
また、本発明においては、上記多糖類と、一般的に用いられる難燃剤とを併用してもよい。難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤(赤リンを含む)、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、アンチモン系難燃剤、ホウ素系難燃剤、窒素系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、シリコーン系難燃剤等が挙げられる。
【0139】
添加剤の含有量は、難燃性樹脂組成物の全質量に対して、0~30質量%の範囲内であることが好ましく、0~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0140】
≪難燃性樹脂組成物の製造方法≫
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、前記多糖類を乾式粉砕する工程、及び前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程、を有することを特徴とする。
【0141】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、前記熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程を有し、前記溶融混練の回数が2回以上であることを特徴とする。
【0142】
本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、溶融混練法を用いることが好ましく、公知の溶融混練法を用いることができる。また、樹脂が熱可塑性樹脂以外の樹脂である場合には、各成分を均一に混合する公知の方法を用いることができる。
【0143】
以下、溶融混練法により、本発明の難燃性樹脂組成物を製造する方法について説明する。なお、当該製造方法を用いることにより、難燃性樹脂組成物に含有される多糖類の平均一次粒子径を、前述の好適な範囲内に調整することができる。特に、天然の多糖類については、粒子径の比較的大きいものが多いが、当該製造方法を用いることにより、天然の多糖類であっても粒子径を比較的小さくすることができる。
【0144】
当該製造方法では、下記工程を有することが好ましい。ただし、前処理の工程はあってもなくてもよい。
【0145】
1)多糖類を乾式粉砕する工程(前処理)
多糖類をその他の材料と混合する前に、予め乾式粉砕し、粒子径を小さくしておくことにより、溶融混練の回数を減らすことができる。
【0146】
乾式粉砕の方法は、特に制限されず、使用できる粉砕機としては、例えば、乳鉢、ボールミル、ポットミル、擂潰機、カッターミル、ホモジナイザー、マルチビーズショッカー、ピンミル、ジェットミル、ハイブリダイゼーション、エクストルーダー、マスコロイダー等が挙げられる。粉砕時間、処理圧等は、多糖類の種類及び粒子径に応じて適宜調整することが好ましい。
【0147】
難燃性樹脂組成物中において、分散性に優れる観点から、中でも、ボールミル、ポットミル、擂潰機又はマルチビーズショッカーを用いて、乾式粉砕を行うことが好ましい。
【0148】
2)熱可塑性樹脂と多糖類を溶融混練する工程
溶融混練法としては、例えば、熱可塑性樹脂、多糖類等をタンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサー等の各種混合機を用いて予備混合した後、バンバリミキサー、ロール、プラストグラフ、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等の混練装置で溶融混練する方法が挙げられる。
【0149】
中でも、生産効率の観点から、押出機を用いることが好ましく二軸押出機を用いることがより好ましい。押出機を用いて材料を溶融混練し、混練物をストランド状に押し出した後、混練物をペレット状やフレーク状等の形状に加工することができる。
【0150】
なお、予め材料を混合する予備混合を行う前に、各材料を十分に乾燥させておくことが好ましい。乾燥温度は、特に制限されず、60~120℃の範囲内であることが好ましく、乾燥時間は、特に制限されず、2~6時間の範囲内であることが好ましい。また、乾燥がより進行しやすい観点から、減圧下で乾燥させることが好ましい。上記乾燥は、予備混合の後に行ってもよい。
【0151】
溶融混練の温度は、特に制限されず、用いる樹脂の種類等に応じて適宜選択することが好ましく、具体的には、150~280℃の範囲内であることが好ましい。ここで、溶融混練の温度は、例えば、二軸押出機等の混練装置におけるシリンダー温度に相当する。
なお、「シリンダー温度」とは、混練装置のシリンダーにおいて、複数の温度設定がなされる場合には、最も高いシリンダー部の温度のことをいう。
混練圧力は、特に制限されず、1~20MPaの範囲内であることが好ましい。
【0152】
混練装置からの吐出量は、特に制限されず、溶融混練が十分に行われる観点から、10~100kg/hrの範囲内であることが好ましく、20~70kg/hrの範囲内であることがより好ましい。
【0153】
上記の方法で、混練装置により溶融混練された混練物は、混練装置から押し出された後、冷却処理されることが好ましい。冷却処理の方法は、特に制限されず、例えば、混練物を0~60℃の範囲内の水に浸漬して水冷する方法、-40~60℃の範囲内の気体で冷却する方法、-40~60℃の範囲内の金属に接触させる方法等が挙げられる。
【0154】
本発明の難燃性樹脂組成物の形態及び形状は、特に制限されず、例えば、粉末状、顆粒状、タブレット(錠剤)状、ペレット状、フレーク状、繊維状等の固体状であっても、液体状であってもよい。
【0155】
また、溶融混練を複数回行うことにより、難燃性樹脂組成物に含有される多糖類の平均一次粒子径を、より小さくすることができる。溶融混練を複数回行う場合には、混練物を冷却処理した後、再度、混練装置で溶融混練を行う。溶融混練の回数は、多糖類の種類及び粒子径に応じて適宜調整することが好ましい。
【0156】
≪難燃性樹脂成形品≫
本発明の難燃性樹脂成形品は、前述の難燃性樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
本発明の難燃性樹脂成形品は、前述の難燃性樹脂組成物を用いて形成されることにより、難燃性及び耐衝撃性向上させることができる。
【0157】
樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、本発明の難燃性樹脂成形品は、前述の難燃性樹脂組成物を各種成形機内で溶融し、成形することにより得られる。成形方法としては、成形品の形態及び用途に応じて適宜選択することができ、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、インフレーション成形等が挙げられる。また、押出成形、カレンダー成形等で得られたシート状又はフィルム状の成形品について、真空成形や圧空成形等の二次成形を行ってもよい。
【0158】
また、樹脂が熱可塑性樹脂以外の硬化性樹脂である場合には、前述の難燃性樹脂組成物を硬化することにより成形品が得られる。なお、硬化する方法は、従来公知の方法を用いることができる。
【0159】
難燃性樹脂成形品としては、特に制限されず、例えば、家電製品及び自動車等の分野における部品(電気・電子部品、電装部品、外装部品、内装部品等)、各種包装資材、家庭用品、事務用品、配管、農業用資材等が挙げられる。
【0160】
≪難燃性樹脂筐体≫
本発明の難燃性樹脂筐体は、前述の難燃性樹脂成形品を含むことを特徴とする。
本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性及び耐衝撃性を向上させることができ、さらに、外観に優れているため、適当な形態及び形状に成形し、筐体として使用することが好ましい。
なお、本発明の難燃性樹脂筐体は、前述の難燃性樹脂成形品のみとする構成であっても、前述の難燃性樹脂成形品を一部含む構成であってもよい。
【0161】
本発明の難燃性樹脂筐体が収容する物品は特に制限されないが、電子機器等を収容することが好ましい。その他、一般的に難燃性の樹脂で製造されることが好ましい筐体においても、本発明の難燃性樹脂筐体を適用することができる。
【0162】
本発明において、「電子機器」とは、電子工学の技術を応用した電気製品のことをいう。電子機器は、特に制限されず、例えば、コンピューター、スキャナー、複写機、プリンター、ファクシミリ装置、これらの機能を兼ね備えたMFP(Multi Function Peripheral)と称される複合機等のOA機器、商業印刷用のデジタル印刷システム等が挙げられる。
【0163】
本発明の難燃性樹脂筐体は、難燃性及び耐衝撃性に優れているため、外部からの衝撃により内部の電子機器が破損し発火しても、燃え広がりづらくすることができ、火災のリスクを軽減することができる。
【0164】
本発明の難燃性樹脂筐体の例を示す。
図1は、本発明の難燃性樹脂筐体に収容されている大型複写機10の概略斜視図である。なお、難燃性樹脂筐体は、外装部品G1~G9としての難燃性樹脂成形品を含む。
【実施例0165】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
また、下記実施例において、特記しない限り操作は室温(25℃)で行われた。
【0166】
[難燃性樹脂組成物の調製]
難燃性樹脂組成物の構成材料として、以下の樹脂及び多糖類を準備した。
【0167】
(樹脂)
ABS1(ABS樹脂):「トヨラック(登録商標)700-314」、東レ株式会社製
ABS2(ABS樹脂):「サンタック(登録商標)AT-05」、日本エイアンドエル株式会社製
PS(ポリスチレン):「トーヨースチロール(登録商標)HI H450 K9-020」、東洋スチレン株式会社製
PP(ポリプロピレン):「プライムポリプロ(登録商標)J715M」、株式会社プライムポリマー製
PC(ポリカーボネート樹脂):「タフロン(登録商標)A1900」、出光興産株式会社製
PMMA(ポリメチルメタクリレート):「アクリペット(登録商標)VRS40 0001」、三菱ケミカル株式会社製
なお、PP(ポリプロピレン)は結晶性樹脂であり、その他の樹脂は非晶性樹脂であった。
【0168】
(多糖類)
キチン:東京化成工業株式会社製
キトサン:キトサン(5-20mPa・s,0.5%/0.5%酢酸溶液/20℃)、東京化成工業株式会社製
セルロース:セルロース,粉末,38μm(400mesh)通過、富士フイルム和光純薬株式会社製
A4(コンドロイチン硫酸ナトリウム):東京化成工業株式会社製
【0169】
(多糖類の前処理)
難燃性樹脂組成物1~3、5~9、11~22及び24においては、事前に、多糖類をボールミルで乾式粉砕する前処理を行った。
乾式粉砕は、粒子状の多糖類50質量部に対して、アルミナボール(直径10mm)300質量部の比率で、直径180mmのポットに投入し、ボールミル(卓上型ポットミル架台「PM-002」、アズワン株式会社製)にて、粉砕を行った。
回転数:100rpm
時間:表Iに記載の前処理時間[hr]
【0170】
(難燃性樹脂組成物の調製)
混練前の事前乾燥として、樹脂及び多糖類を、それぞれ80℃で4時間乾燥させた。そして、表Iに示される成分比[質量%]で秤量し、ドライブレンドした。
次いで、二軸押出混練機「KTX-30」(株式会社神戸製鋼所製)の原料供給口(ホッパー)から、ドライブレンドして得られた混合物を毎時10kgで供給し、表Iに記載のシリンダー温度、スクリュー回転数200rpmの条件で溶融混練を行った。
混練後の溶融樹脂を30℃の水槽にて冷却した後、ペレタイザーにてペレット化して、難燃性樹脂組成物を得た。
【0171】
なお、表Iにおいて、溶融混練の回数が2回以上(2回又は3回)であるものについては、ペレット化した難燃性樹脂組成物を、再度、二軸押出混練機の原料供給口から供給し、上記の条件で更に溶融混練を1回又は2回行った。
【0172】
最終的に得られた難燃性樹脂組成物について、以下の方法で結晶化温度を測定した。
示差走査型熱量計(DSC)として、「DSC Pyris1」(株式会社パーキンエルマージャパン製)又は「DSC7020」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、窒素雰囲気下(20mL/min)、試料(約5mg)を、樹脂ごとに設定した到達温度(表Iに記載のシリンダー温度)まで昇温し、その温度で3分間保持した後、10℃/分で30℃まで冷却して30℃で1分間保持し、10℃/分で上記到達温度まで昇温し、降温過程における結晶化ピークのピーク頂点から結晶化温度(Tc)を算出した。
【0173】
難燃性樹脂組成物11及び12では、表Iに記載のシリンダー設定温度より低温の領域において結晶化温度が測定されたが、その他の難燃性樹脂組成物では、結晶化温度は測定されなかった。
【0174】
また、難燃性樹脂組成物中における多糖類の平均一次粒子径を、以下の方法で測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)により、難燃性樹脂組成物の1000倍の拡大写真を撮影し、スキャナーによりコンピューターに取り込んだ。そして、SEM像を、自動画像処理解析装置「ルーゼックス(登録商標)AP」(株式会社ニレコ製)により、ソフトウェアVer.1.3.2を用いて2値化処理した後、無作為に選択した300個の多糖類粒子の径を水平方向フェレ径として計算し、その平均値を平均一次粒子径とした。なお、「水平方向フェレ径」とは、多糖類粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さのことをいう。
【0175】
<評価>
上記で得られた各難燃性樹脂組成物について、以下の評価を行った。
【0176】
(評価1:外装部品の外観)
上記で得られたペレット状の各難燃性樹脂組成物を、80℃で5時間、熱風循環式乾燥機により乾燥させた後、射出成形機「J1300E-C5」(株式会社日本製鋼所製)を用いて、
図1に示す大型複写機の外装部品G8を想定した模擬成形品を、表Iに記載のシリンダー設定温度、金型温度50℃にて成形し、模擬成形品の中央部からサンプルを採取した。
得られたサンプルについて、目視にて外観を観察し、外観不良があった場合には、金型の修正及び成形条件(冷却時間等)の変更を行い、外観不良が改善するかどうか、以下の基準で評価を行った。なお、△以上を実用上問題がなく、合格とした。
【0177】
◎:外観不良のない成形品が得られ、金型の修正が不要である。
〇:金型の修正のみを行うことにより、外観不良のない成形品が得られる。
△:金型の修正及び成形条件の変更を行うことにより、外観不良のない成形品が得られる。
×:金型の修正及び成形条件の変更を行っても、外観不良(激しい反り)が改善しない。
【0178】
(評価2:難燃性)
上記で得られたペレット状の各難燃性樹脂組成物を、80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J55ELII」(株式会社日本製鋼所製)を用いて、表Iに記載のシリンダー温度、金型温度50℃にて成形し、縦125mm、横13mm、厚さ1.6mmの短冊型試験片を得た。
【0179】
次いで、得られた試験片を、温度23℃、湿度50%の恒温室の中で48時間調湿し、米国アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)が定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験)に準拠して、難燃性試験を行った。試験は、UL94V試験を最初に実施し、判定基準がV-2に満たなかったものについては、更にUL94HB試験を実施し、以下の基準で評価を行った。なお、△以上を実用上問題がなく、合格とした。
【0180】
◎:UL94V試験において、V-0に該当する。
〇:UL94V試験において、V-1又はV-2に該当する。
△:UL94V試験において、V-2の判定基準を満たさないが、UL94HB試験において、判定基準を満たす。
×:UL94V試験において、V-2の判定基準を満たさず、UL94HB試験においても、判定基準を満たさない。(規格外)
【0181】
(評価3:耐衝撃性(衝撃強さ))
上記で得られたペレット状の各難燃性樹脂組成物を、80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機「J55ELII」(株式会社日本製鋼所製)を用いて、表Iに記載のシリンダー温度、金型温度50℃にて成形し、縦80mm、横10mm、厚さ4.0mmの短冊型試験片を得た。
なお、300ショットを捨てショットとした後、連続100ショットを試験片とした。
得られた100個の試験片について、JIS K7110:1999に準拠してアイゾット衝撃強さを測定し、以下の基準で評価を行った。なお、〇以上を実用上問題がなく、合格とした。
【0182】
◎:10kJ/m2以上である。
〇:7kJ/m2以上、10kJ/m2未満である。
△:4kJ/m2以上、7kJ/m2未満である。
×:4kJ/m2未満である。
【0183】
上記で得られた各難燃性樹脂組成物の構成と、その評価結果を表Iに示す。なお、表内の前処理時間における「-」は、前処理を行わなかったことを表す。
【0184】
【0185】
難燃性樹脂組成物1~22(本発明)と、23及び24(比較例)との比較から、多糖類に含まれる糖骨格が、少なくとも、塩基性官能基又は塩基性官能基の塩を有することにより、本発明の効果が発現することがわかる。
また、難燃性樹脂組成物1~22から、塩基性官能基が、アミノ基又は置換アミノ基であることにより、本発明の効果が発現することがわかる。
【0186】
難燃性樹脂組成物1及び6と、13との比較から、アミノ基又は置換アミノ基を有する糖骨格が、それぞれ、グルコサミン骨格又はN-アセチルグルコサミン骨格であることにより、さらに、多糖類が、キトサン又はキチンであることにより、外観及び耐衝撃性が更に向上することがわかる。
【0187】
難燃性樹脂組成物1~22から、樹脂が、熱可塑性樹脂であることにより、取り扱い性が容易であり、本発明の効果が発現することがわかる。
難燃性樹脂組成物8と12との比較から、熱可塑性樹脂が、非晶性樹脂であることにより、外観及び耐衝撃性が更に向上することがわかる。
【0188】
難燃性樹脂組成物1~5、14及び15と、11との比較から、熱可塑性樹脂が、少なくとも、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネートを含有することにより、外観、難燃性及び耐衝撃性が更に向上することがわかる。
【0189】
難燃性樹脂組成物1~3、17及び18と、10及び16との比較から、多糖類の平均一次粒子径が、0.1~300μmの範囲内であることにより、外観、難燃性及び耐衝撃性が更に向上することがわかる。
【0190】
難燃性樹脂組成物1、20及び22と、19及び21との比較から、多糖類の含有量が、前記難燃性樹脂組成物の全質量に対して、5~40質量%の範囲内であることにより、外観及び難燃性が向上することがわかる。
【0191】
また、難燃性樹脂組成物の製造方法において、多糖類を乾式粉砕する工程、及び熱可塑性樹脂と前記多糖類を溶融混練する工程、を有することにより、又は、熱可塑性樹脂と多糖類を溶融混練する工程を有し、溶融混練の回数が2回以上であることにより、難燃性及び耐衝撃性が向上することがわかる。