(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163355
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ラパマイシンまたはその誘導体を含むリポソーム、およびそれらの治療における使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/436 20060101AFI20231102BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20231102BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231102BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231102BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231102BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20231102BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20231102BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231102BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231102BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20231102BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/436
A61P3/04
A61P3/10
A61P25/00
A61P35/00
A61P43/00
A61K47/28
A61K47/24
A61K47/34
A61K47/26
A61K9/127
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074208
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】522172416
【氏名又は名称】プレシエンス バイオテクノロジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ツェン ツ-イン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA53
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC16
4C076CC21
4C076CC27
4C076DD63H
4C076DD67Q
4C076DD70H
4C076EE23H
4C076FF36
4C076FF63
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA37
4C086NA10
4C086ZA01
4C086ZA70
4C086ZB08
4C086ZB26
4C086ZC35
(57)【要約】
【課題】ラパマイシンまたはその誘導体を含むリポソーム、およびそれらの治療における使用。
【解決手段】本開示は、ラパマイシンおよびその誘導体を含む脂質ベースの製剤に関するものであり、また、がん、免疫関連疾患などの疾患または状態の処置のための製剤の使用に関するものである。本発明は、ラパマイシンまたはその類似体の、凍結乾燥および水和の前後の良好な安定性、優れた腫瘍阻害能力および毒性の低下を有する、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩に特異的なリポソームの開発に部分的に基づく。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化する脂質成分を含むリポソームであって、
ここで、前記脂質成分は、コレステロール、ホスファチジルコリン(PC)、L-α-ホスファチジルコリン(EggPC)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、1,2-パルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、パルミトイル-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、またはPEGおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記ラパマイシン類似体はラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害することができ;
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記脂質成分の量は、約30%(w/w)から95%(w/w)の範囲であり;リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、約5%(w/w)から30%(w/w)の範囲である、リポソーム。
【請求項2】
前記リポソームが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾リポソームである、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項3】
ラパマイシンの前記類似体が、エベロリムス、テムセロリムス、タクロリムス、プレラパマイシン、ゾタロリムス、リダフォロリムス、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシン、および42-O-(2-ヒドロキシ)エチルラパマイシン、ラパマイシンオキシム、ラパマイシンアミノエステル、ラパマイシンジアルデヒド、ラパマイシン29-エノール、O-アルキル化ラパマイシン誘導体、水溶性ラパマイシンエステル、アルキル化ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアミジノカルバメート、ラパマイシンのビオチンエステル、ラパマイシンのカルバメート、ラパマイシンヒドロキシエステル、ラパマイシン42-スルホネート、42-(N-カルバルコキシ)スルファメート、ラパマイシンオキセパン異性体、イミダゾリジルラパマイシン誘導体、ラパマイシンアルコキシエステル、ラパマイシンピラゾール、ラパマイシンのアシル誘導体、ラパマイシンアミドエステル、ラパマイシンフッ素化エステル、ラパマイシンアセタール、オキソラパマイシン、およびラパマイシンシリルエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項4】
リポソームの総量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量が10%(w/w)から25%(w/w)の範囲である、請求項1に記載のリポソーム。
【請求項5】
前記脂質成分がDOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DPPC、DMPC、DSPC、PC、DPPCとDDPCとコレステロールとDSPE(もしくはDSPE-PEG)との組み合わせ、DOPEとDDPCとコレステロールとDSPE(もしくはDSPE-PEG)との組み合わせ、HSPCとDDPCとの組み合わせ、DSPCとDDPCとの組み合わせ、DOPEとHSPCとの組み合わせ、またはDOPEとDSPCとの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項6】
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記脂質成分の量が約65%(w/w)から約95%(w/w)もしくは70%(w/w)から約90%(w/w)のDOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DPPC、DMPC、DSPC、もしくはPC、または約15%(w/w)から約65%(w/w)のDPPCと約20%(w/w)から約65%(w/w)のDDPCと約0%(w/w)から約30%(w/w)のコレステロールと約15%(w/w)から約65%(w/w)のDSPE(またはDSPE-PEG)との組み合わせ、約25%(w/w)から約60%(w/w)のDOPEと約25%(w/w)から約70%(w/w)のDDPCと、約0%(w/w)から約20%(w/w)のコレステロールと約0%(w/w)から約25%(w/w)のDSPE(もしくはDSPE-PEG)との組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のHSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のDSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約35%(w/w)から約45%(w/w)のDOPEと約35%(w/w)から約50%(w/w)のHSPCとの組み合わせ、または約35%(w/w)から約45%(w/w)DOPEのと約35%(w/w)から約50%(w/w)のDSPCとの組み合わせである、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項7】
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記脂質成分およびラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量が以下
【表4】
に記載されるものである、請求項6に記載のリポソーム。
【請求項8】
前記リポソームの平均粒子サイズが、約100nmから約500nmの範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソーム。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソームおよび凍結保護物質を含む、リポソーム製剤。
【請求項10】
前記凍結保護物質が二糖である、請求項9に記載のリポソーム製剤。
【請求項11】
前記凍結保護物質が、スクロースまたはトレハロースである、請求項10に記載のリポソーム製剤。
【請求項12】
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記凍結保護物質が約80%から約97%(w/w)の範囲である、請求項10に記載のリポソーム製剤。
【請求項13】
対象における、がん、糖尿病、肥満、神経疾患もしくは遺伝的障害を処置するための、および/または臓器移植拒絶を予防するための医薬の製造における、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソームの使用。
【請求項14】
対象における、がん、糖尿病、肥満、神経疾患もしくは遺伝的障害を処置するための、および/または臓器移植拒絶を予防するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のリポソームを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラパマイシンおよびその誘導体を含む脂質ベースの製剤およびそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)は、ヒトではMTOR遺伝子によってコードされるキナーゼである。mTORは上流経路からの入力を統合し、mTOR経路は哺乳類の代謝および生理学の中心的な調節因子であり、組織の機能に重要な役割を果たす。例えば、mTORシグナル伝達は、代謝、免疫機能、脳機能、老化、さらにはがんに関連する疾患を引き起こし得る。mTORの制御、主に阻害は、疾患および状態を改善または処置し得る。mTORの最初の公知の阻害剤はラパマイシンであり、mTORの名前が由来する:
【化1】
【0003】
ラパマイシンの臨床用途は、免疫抑制剤としての使用、結節性硬化症の処置、薬剤溶出性冠状動脈ステントなどを含む。BCSクラスII薬剤としてのラパマイシン、すなわち、低い水溶性(2.6μg/mL)および高い透過性を有するため、14%から18%のバイオアベイラビリティのみを示し、そのため抗がん剤としての臨床開発を妨げている。ラパマイシンの低い溶解度を克服するための解決策は、その類似体または誘導体、すなわち「ラパログ」を開発することである。ラパログの例は、エベロリムス、テムシロリムスなどを含む。エベロリムスは錠剤の形で約20%のバイオアベイラビリティを示し、テムシロリムスは静脈内注入により最大100%のバイオアベイラビリティを示し得るが、経口ラパログはバイオアベイラビリティが低く、注射可能なラパログは賦形剤に起因して非常にアレルギー性が高い。したがって、高いバイオアベイラビリティ、高い有効性、および低い毒性を備えた臨床的に利用可能なラパマイシンまたはラパログ製剤はまだない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の概要
本発明は、ラパマイシンまたはその類似体の、凍結乾燥および水和の前後の良好な安定性、優れた腫瘍阻害能力および毒性の低下を有する、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩に特異的なリポソームの開発に部分的に基づく。
【0005】
本開示は、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化する脂質成分を含むリポソームを提供し、
ここで:
脂質成分は、コレステロール、ホスファチジルコリン(PC)、L-α-ホスファチジルコリン(EggPC)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロール-3-ホスホコリン(DDPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール-3-ホスホリルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、1,2-パルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、パルミトイル-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、またはPEGおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;
ラパマイシン類似体は、ラパマイシンの哺乳類標的(mTOR)を阻害することができ;
リポソームの総量の乾燥重量に基づく脂質成分の量は、約30%(w/w)から95%(w/w)の範囲であり、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、約5%(w/w)から30%(w/w)の範囲である。
【0006】
一実施形態では、リポソームは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾リポソームである。
【0007】
いくつかの実施形態において、ラパマイシンの類似体は、エベロリムス、テムシロリムス、タクロリムス、プレラパマイシン、ゾタロリムス、リダフォロリムス、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシン、および42-O-(2-ヒドロキシ)エチルラパマイシン、ラパマイシンオキシム、ラパマイシンアミノエステル、ラパマイシンジアルデヒド、ラパマイシン29-エノール、 O-アルキル化ラパマイシン誘導体、水溶性ラパマイシンエステル、アルキル化ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアミジノカルバメート、ラパマイシンのビオチンエステル、ラパマイシンのカルバメート、ラパマイシンヒドロキシエステル、ラパマイシン42-スルホネート、42-(N-カルボアルコキシ)スルファメート、ラパマイシンオキセパン異性体、イミダゾリジルラパマイシン誘導体、ラパマイシンアルコキシエステル、ラパマイシンピラゾール、ラパマイシンのアシル誘導体、ラパマイシンアミドエステル、ラパマイシンフッ素化エステル、ラパマイシンアセタール、オキソラパマイシン、およびラパマイシンシリルエーテルからなる群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態において、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、約5%(w/w)から25%(w/w)、約5%(w/w)から20%(w/w)、約10%(w/w)から30%(w/w)、約10%(w/w)から25%(w/w)、約10%(w/w)から20%(w/w)、約15%(w/w)から30%(w/w)、約15%(w/w)から25%(w/w)または約15%(w/w)から20%(w/w)の範囲である。いくつかのさらなる実施形態において、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、約10%(w/w)、約12%(w/w)、約14%(w/w)、約15%(w/w)、約16%(w/w)、約17%(w/w)、約18%(w/w)、約5%(w/w)から20%(w/w)、約10%(w/w)から20%(w/w)、約15%(w/w)から25%(w/w)または約15%(w/w)から20%(w/w)の範囲である。
【0009】
いくつかの実施形態において、脂質成分は、DOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DPPC、DMPC、DSPC、PC、DPPCとDDPCとコレステロールとDSPE(またはDSPE-PEG)との組み合わせ、DOPEとDDPCとコレステロールとDSPE(またはDSPE-PEG)との組み合わせ、HSPCとDDPCとの組み合わせ、DSPCとDDPCとの組み合わせ、DOPEとHSPCとの組み合わせ、またはDOPEとDSPCとの組み合わせである。いくつかのさらなる実施形態において、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、脂質成分は、約65%(w/w)から約95%(w/w)もしくは70%(w/w)から約90%(w/w)のDOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DMPC、DPPC、DSPC、もしくはPCまたは約15%(w/w)から約65%(w/w)のDPPCと約20%(w/w)から約65%(w/w)のDDPCと約0%(w/w)から約30%(w/w)のコレステロールと約15%(w/w)から約65%(w/w)のDSPE(またはDSPE-PEG)との組合せ、約25%(w/w)から約60%(w/w)のDOPEと約25%(w/w)から約70%(w/w)のDDPCと約0%(w/w)から約20%(w/w)のコレステロールと約0%(w/w)から約25%(w/w)のDSPE(またはDSPE-PEG)との組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のHSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のDSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約35%(w/w)から約45%(w/w)のDOPEと約35%(w/w)から約50%(w/w)のHSPCとの組合せ、または約35%(w/w)から約45%(w/w)のDOPEと約35%(w/w)から約50%(w/w)のDSPCとの組み合わせである。上記の実施形態におけるラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグまたは塩の量は、前述した量である。
【0010】
いくつかのさらなる実施形態において、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、脂質成分およびラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、以下に列挙されるものである。
【表2】
【0011】
一実施形態において、リポソームの平均粒子サイズは、約100nmから約500nmの範囲である。いくつかの実施形態において、リポソームの平均粒子サイズは、約100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、260nm、270nm、280nm、290nm、300nm、310 nm、320nm、330nm、340nm、350nm、360nm、370nm、380nm、390nm、400nm、410nm、420nm、430nm、440nm、450nm、460nm、470nm、480nm、490nm、500nm、または上記の任意の2つの値からなる範囲(例えば、100nmから500nm、150nmから450nm、100nmから250、180nmから220nmなど)であり得る。
【0012】
本開示はまた、本開示のリポソームおよび凍結保護物質を含むリポソーム製剤を提供する。
【0013】
一実施形態において、凍結保護物質は二糖である。いくつかの実施形態において、凍結保護物質は、スクロースまたはトレハロースである。一実施形態において、リポソームの総量の乾燥重量に基づく凍結保護物質は、約80%(w/w)、約84%(w/w)、約87%(w/w)、約90%(w/w)、約94%(w/w)、約95%(w/w)、約97%(w/w)、または上記の任意の2つの値からなる範囲、例えば、約80%から約97%、約84%から約98%など、である。
【0014】
本開示はまた、対象において、がん、糖尿病、肥満、神経疾患および遺伝的障害を処置するための、ならびに/または臓器移植拒絶を予防するための、治療的に有効な量の本開示のリポソームを対象に投与することを含む方法を提供する。
特定の実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化する脂質成分を含むリポソームであって、
ここで、脂質成分は、コレステロール、ホスファチジルコリン(PC)、L-α-ホスファチジルコリン(EggPC)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、1,2-パルミトイルホスファチジル酸(DPPA)、1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、パルミトイル-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、パルミトイル-オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、またはPEGおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され;
前記ラパマイシン類似体は哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)を阻害することができ;
リポソームの総量の乾燥重量に基づく脂質成分の量は、約30%(w/w)から95%(w/w)の範囲であり;リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量は、約5%(w/w)から30%(w/w)の範囲である、リポソーム。
(項目2)
前記リポソームが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾リポソームである、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目3)
ラパマイシンの類似体が、エベロリムス、テムセロリムス、タクロリムス、プレラパマイシン、ゾタロリムス、リダフォロリムス、7-エピ-ラパマイシン、7-チオメチル-ラパマイシン、7-エピ-トリメトキシフェニル-ラパマイシン、7-エピ-チオメチル-ラパマイシン、7-デメトキシ-ラパマイシン、32-デメトキシ-ラパマイシン、2-デスメチル-ラパマイシン、および42-O-(2-ヒドロキシ)エチルラパマイシン、ラパマイシンオキシム、ラパマイシンアミノエステル、ラパマイシンジアルデヒド、ラパマイシン29-エノール、O-アルキル化ラパマイシン誘導体、水溶性ラパマイシンエステル、アルキル化ラパマイシン誘導体、ラパマイシンアミジノカルバメート、ラパマイシンのビオチンエステル、ラパマイシンのカルバメート、ラパマイシンヒドロキシエステル、ラパマイシン42-スルホネート、42-(N-カルバルコキシ)スルファメート、ラパマイシンオキセパン異性体、イミダゾリジルラパマイシン誘導体、ラパマイシンアルコキシエステル、ラパマイシンピラゾール、ラパマイシンのアシル誘導体、ラパマイシンアミドエステル、ラパマイシンフッ素化エステル、ラパマイシンアセタール、オキソラパマイシン、およびラパマイシンシリルエーテルからなる群から選択される、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目4)
リポソームの総量に基づく、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量が10%(w/w)から25%(w/w)の範囲である、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目5)
前記脂質成分がDOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DPPC、DMPC、DSPC、PC、DPPCとDDPCとコレステロールとDSPE(もしくはDSPE-PEG)の組み合わせ、DOPEとDDPCとコレステロールとDSPE(もしくはDSPE-PEG)の組み合わせ、HSPCとDDPCとの組み合わせ、DSPCとDDPCとの組み合わせ、DOPEとHSPCとの組み合わせ、またはDOPEとDSPCとの組み合わせである、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目6)
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記脂質成分の量が約65%(w/w)から約95%(w/w)もしくは70%(w/w)から約90%(w/w)のDOPE、DDPC、コレステロール、DSPE、EggPC、HSPC、DPPC、DMPC、DSPC、もしくはPC、または約15%(w/w)から約65%(w/w)のDPPCと約20%(w/w)から約65%(w/w)のDDPCと約0%(w/w)から約30%(w/w)のコレステロールと約15%(w/w)から約65%(w/w)のDSPE(またはDSPE-PEG)との組み合わせ、約25%(w/w)から約60%(w/w)のDOPEと約25%(w/w)から約70%(w/w)のDDPCと約0%(w/w)から約20%(w/w)のコレステロールと約0%(w/w)から約25%(w/w)のDSPE(もしくはDSPE-PEG)との組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のHSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約40%(w/w)から約55%(w/w)のDSPCと約30%(w/w)から約40%(w/w)のDDPCとの組み合わせ、約35%(w/w)から約45%(w/w)のDOPEと約35%(w/w)から約50%(w/w)のHSPCとの組み合わせ、または約35%(w/w)から約45%(w/w)のDOPEと約35%(w/w)から約50%(w/w)のDSPCとの組み合わせである、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目7)
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、脂質成分およびラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩の量が以下
【表3】
に記載されるものである、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目8)
前記リポソームの平均粒子サイズが約100nmから約500nmの範囲である、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム。
(項目9)
先行する項目のいずれか一項に記載のリポソームおよび凍結保護物質を含む、リポソーム製剤。
(項目10)
前記凍結保護物質が二糖である、項目9に記載のリポソーム製剤。
(項目11)
前記凍結保護物質がスクロースまたはトレハロースである、項目10に記載のリポソーム製剤。
(項目12)
リポソームの総量の乾燥重量に基づく、前記凍結保護物質が約80%から約97%(w/w)の範囲である、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソーム製剤。
(項目13)
対象における、がん、糖尿病、肥満、神経疾患もしくは遺伝的障害を処置するための、および/または臓器移植拒絶を予防するための医薬の製造における、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソームの使用。
(項目14)
対象における、がん、糖尿病、肥満、神経疾患もしくは遺伝的障害を処置するための、および/または臓器移植拒絶を予防するための、先行する項目のいずれか一項に記載のリポソームを含む組成物。
(摘要)
本開示は、ラパマイシンおよびその誘導体を含む脂質ベースの製剤に関するものであり、また、がん、免疫関連疾患などの疾患または状態の処置のための製剤の使用に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(A)および1(B)は、リポソームラパマイシン製剤の異なる比率の粒子サイズを示す。
【0016】
【
図2】
図2(A)、2(B)、3(A)および3(B)は、凍結乾燥生成物および再水和凍結乾燥生成物の特徴を示す。
【
図3】
図2(A)、2(B)、3(A)および3(B)は、凍結乾燥生成物および再水和凍結乾燥生成物の特徴を示す。
【0017】
【
図4】
図4(A)および4(B)は、Balb/cマウスにおけるインビボ毒性の結果を示す。
【0018】
【
図5】
図5(A)および5(B)は、SKOV3異種移植NOD/SCIDマウスでのインビボ実験結果を示す。
【0019】
【
図6】
図6(A)および6(B)は、MDA-MB-231異種移植NOD/SCIDマウスでのインビボ実験結果を示す。
【0020】
【
図7】
図7(A)および7(B)は、CT26Balb/cマウスでのインビボ実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
開示の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。すべての特許、出願、公開された出願、およびその他の刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。用語の定義が複数ある場合は、特に明記されていない限り、このセクションの定義が優先される。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「ラパログ」は、mTORに対して阻害活性を有するラパマイシンの誘導体を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「リポソーム」は、脂質二重層によって囲まれた内相を有する微視的な閉じた小胞を指す。リポソームは、小さな単層ベシクル(SUV)などの小さな単一膜リポソーム、大きな単層ベシクル(LUV)などの大きな単一膜リポソーム、巨大な単層ベシクル(GUV)などのさらに大きな単一膜リポソーム、多層ベシクル(MLV)などの複数の同心膜を有する多層リポソーム、または多胞体ベシクル(MVV)などの不規則で同心ではない複数の膜を有するリポソームであり得る。本開示によれば、リポソームは、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単層および多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、一般にリン脂質と内部媒体を含む二重膜を備えた小胞構造を有することを特徴とする場合がある。リポソームのサイズは、直径数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲であり得る。本開示に従って使用されるリポソームは、当業者に公知であるように、異なる方法で作製することができる。リポソームの調製に関するさらなる詳細は、米国特許第4,342,826号およびPCT国際公開第WO80/01515号(これらは両方とも参照により組み込まれる)に記載されている。
【0024】
本明細書で使用される場合、「腫瘍」は新生物を意味し、良性および悪性腫瘍の両方を含む。この用語は特に悪性腫瘍を含み、これは固形または非固形のいずれかであり得る。腫瘍は、腺がんなどのサブタイプにさらに分類することもできる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「(治療的に)有効な用量/量」は、疾患の進行を防ぐもしくは退縮させるのに十分な、または疾患によって引き起こされる症状を軽減することができる用量/量である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物」または「哺乳動物対象」は、牛、ブタ、および羊などの家畜、ならびに馬、犬、および猫などのスポーツで使用されるペットまたは動物を含む。
【0027】
ラパマイシン(C51H79NO13)は、1975年にストレプトミセス・ヒグロスコピカスから単離されたマクロライド化合物である。ラパマイシン(別名シロリムス)は、インターロイキン-2(IL-2)に対する応答を阻害することにより、T細胞およびB細胞の活性化を防ぐ、mTORの阻害剤である。これは、FDAが承認した免疫抑制薬であり、抗真菌性および抗腫瘍性の両方の特性を備える。
【0028】
しかしながら、ラパマイシンは溶解性および薬物動態が不十分であり、したがってその治療効果は制限されている。BCSクラスIIまたはIVの薬物(つまり、低い溶解度を有する)の場合、ナノ担体またはコンジュゲートは、それらのバイオアベイラビリティを高めるための有望な方法であり得る。例として、リポソームなどの脂質ベースのナノ担体;ポリマーミセルなどのポリマーベースのナノ担体;シリカナノ粒子などの無機ナノ粒子;ウイルスナノ粒子;抗体薬物コンジュゲートなどの薬物コンジュゲートなどが挙げられる。従来の可溶化剤またはポリマー製剤と比較して、ビヒクルとしての脂質は、高度に生体適合性および生分解性である。特に、リポソームは両親媒性リン脂質で作ることができ、両親媒性リン脂質は、疎水性薬物を水溶液または生物学的環境への曝露から保護するための障壁を形成することができる。それらはまた、薬物動態および分布に影響を与え得る。しかしながら、リポソームベースの経口ラパログのバイオアベイラビリティは大幅に改善されていない。
【0029】
したがって、本開示は、可溶化剤の低いバイオアベイラビリティおよびアレルギーの問題を改善するために、特に、がん治療のための、ラパマイシンもしくはその類似体またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化するためのリポソームを提供する。本開示のリポソームは、高いバイオアベイラビリティ、高い有効性、および低い毒性を提供する。
【0030】
リポソームは、水のコンパートメントによって分離された同心脂質二重層で構成される人工小胞であり、ドラッグデリバリービヒクルとして広く研究されてきた。すべて調製方法によって十分に制御することができるそれらの構造、化学組成およびコロイドサイズに起因して、リポソームは様々な用途に有用である可能性があるいくつかの特性を示す。いくつかの異なる目的を果たすことができるため、リポソームは、薬物および抗原の担体として使用される。リポソームにカプセル化された薬物は、代謝している酵素にアクセスできない。逆に、体の構成要素(赤血球や注射部位の組織など)は、薬物の全量に直接さらされることはない。体内での薬物の放出が遅いため、リポソームによって薬物作用の持続時間が延長され得る。リポソームには直接的な可能性があり、つまり、標的の選択によって体内の薬物の分布が変化する。細胞は、エンドサイトーシスまたはファゴサイトーシスのメカニズムを使用して、リポソームをサイトゾルに取り込む。さらに、リポソームは、薬物を分解(例えば、代謝分解)から保護することができる。しかし、リポソームは、特定のカプセル化された薬物(抗がん剤など)を適切に放出する能力が比較的限られているという潜在的な欠点を有している。
【0031】
リポソーム粒子の品質を改善するために、サブミクロンろ過、凍結乾燥などのいくつかの手段を採用することができる。一実施形態において、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化するリポソーム粒子をサブマイクロろ過によって処理して、沈殿した薬物またはより大きなサイズの粒子を除去する。
【0032】
別の実施形態において、ラパマイシンもしくはその類似体、またはラパマイシンもしくはその類似体のプロドラッグもしくは塩をカプセル化するリポソームは、凍結乾燥によって処理される。リポソーム凍結乾燥は、以下のステップを含み得る:(1)温度を下げることによりリポソーム粒子を含む液体を凍結して固体/氷形態を形成するステップ、(2)圧力を下げることによって固体/氷形態を凍結濃縮するステップ、(3)温度を上げることによって固体/氷を昇華し粗生成物を取得するステップ、(4)最終乾燥を行って最終的なリポソーム凍結乾燥安定生成物(例えば、リオケーキ(lyo-cake))を取得するステップ。凍結乾燥プロセスの前に、凍結保護物質をリポソーム粒子を含む液体に導入して、有効成分(すなわち、ラパマイシン、ラパログ)を保護することができる。本開示の凍結乾燥リポソームは、長期間(少なくとも20週間)安定であり、臨床用途に適している。凍結乾燥されたリポソームの水和後、リポソームは、凍結乾燥前に粒子サイズおよび安定性を維持することができる。
【0033】
本開示のリポソームは、ラパマイシンまたはその類似体の、凍結乾燥および水和の前後の良好な安定性、優れた腫瘍阻害能力、および毒性の低下を示す。
【0034】
本開示のリポソームは、リポソームを適切なまたは望ましい作用部位に効果的に輸送する任意の経路によって投与され得る。好ましい投与様式は、静脈内(IV)および動脈内(IA)を含む。他の適切な投与様式は、筋肉内(IM)、皮下(SC)、および腹腔内(IP)を含む。そのような投与は、ボーラス注射または注入であり得る。別の投与様式は、血管周囲送達であり得る。製剤は、直接または希釈後に投与され得る。本開示のリポソームを含む医薬組成物は、有効成分を薬学的に使用できる調製物の処理することを容易にする、当該分野で公知である賦形剤および補助剤を含む1つまたは複数の生理学的に許容される担体を使用して処方することができる。
【0035】
本開示の概念をより明確に説明するために、以下に実施例が提供される。
【実施例0036】
実施例1 本開示のリポソームの調製
ラパマイシンを含むリポソームの調製
ラパマイシン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)、コレステロールおよびN-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE-PEG2000)は、ラパマイシンをカプセル化するリポソームの調製のための段落[0010]の表に示すように異なる乾燥重量比で提供された。原料はクロロホルムおよびメタノールの混合物に溶解する。溶液を40℃に加熱し、圧力を下げて有機溶媒を除去し、薄膜を形成した。有機溶媒を完全に除去した後、凍結保護物質を含む溶液を加えて、薄膜を1時間水和させる。リポソーム製剤の粒子サイズを
図1(A)および1(B)に示す。これらの結果は、適切な量のDSPE-PEG2000でラパマイシンをカプセル化するリポソームがより小さな粒子サイズを実行することを明らかにした。
ラパマイシンを含むリポソーム(RAP-P)の調製
【0037】
ラパマイシン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)およびN-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE-PEG2000)を、ラパマイシンをカプセル化するリポソームの調製のために、乾燥重量比1:2.4:1.9:1.6で提供した。原料をクロロホルムおよびメタノールの混合物に溶解する。溶液を40℃に加熱し、圧力を下げて有機溶媒を除去し、薄膜を形成した。有機溶媒を完全に除去した後、凍結保護物質を含む溶液を加えて、薄膜を1時間水和する。得られた生成物を凍結乾燥し、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシン、DPPC、DDPC、DSPE-PEG2000の量は、それぞれ15%、35%、27%、23%である。最終生成物は、RAP-P製剤にちなんで名付けられる。
ラパマイシンを含むリポソーム(RAP-E)の調製
【0038】
ラパマイシン、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DDPC)およびN-(メチルポリオキシエチレンオキシカルボニル)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを、ラパマイシンをカプセル化するリポソームの調製のために、乾燥重量比1:2.4:1.8:1.6で提供した。原料をクロロホルムおよびメタノールの混合物に溶解する。溶液を40℃に加熱し、圧力を下げて有機溶媒を除去し、薄膜を形成した。有機溶媒を完全に除去した後、凍結保護物質を含む溶液を加えて、薄膜を1~2時間水和する。得られた生成物を凍結乾燥し、リポソームの総量の乾燥重量に基づく、ラパマイシン、DOPE、DDPCおよびDSPE-PEG2000の量は、それぞれ15%、35%、27%、23%である。最終生成物は、RAP-E製剤にちなんで名付けられる。
特性評価
【0039】
RAP-P製剤の粒子サイズの平均粒子サイズおよび多分散度指数(PI)は、それぞれ、127.4+/-10.8nmおよび1.29+/-0.41であった。RAP-E製剤の平均粒子サイズおよび粒子サイズのPIは、それぞれ348.6+/-30.9nmおよび0.47+/-0.13であった。結果は、RAP-PおよびRAP-Eの両方がラパマイシンの投与に使用するための適切な製剤として使用できることを示している。
【0040】
実施例2 異なる形態のリポソーム製剤
リポソーム製剤の用途を調査するために、実施例1に記載のRAP-PおよびRAP-E製剤をさらに処理した。
サブミクロンろ過
【0041】
RAP-PおよびRAP-E製剤を、0.45μmの膜を介してろ過し、生成物の安定性および安全性を高めるために、より大きなサイズの遊離または沈殿した薬物、粒子および不純物を除去した。データの妥当性を検証するために、異なる濃度(0.05~5μg/mL)のラパマイシン標準を含む試料をUPLC-MS/MS試験で使用して、ラパマイシン濃度に対するシグナル(面積)の検量線を作成した。結果は、前記線形検量線の決定係数(r2)が0.9999であることを示した。
【0042】
ろ過後のRAP-P製剤の平均粒子サイズおよび粒子サイズのPIは、それぞれ、182.4+/-4.3nmおよび1.10+/-0.07であった。ろ過後のRAP-E製剤の平均粒子サイズおよび粒子サイズのPIは、それぞれ219.0+/-5.1nmおよび0.58+/-0.09であった。結果は、ろ過後、RAP-PおよびRAP-E製剤の両方がより狭い粒子サイズ分布を示し、RAP-E製剤の平均粒子サイズが約37%減少によって減少することを示した。
凍結乾燥
【0043】
RAP-PおよびRAP-E製剤を凍結乾燥して、凍結乾燥生成物を得た。まず、マイナス45℃で試料を凍結する。次に、圧力を200mTorrに真空引きして、一次乾燥によってほとんどの水溶液を除去する。最後に、残留水溶液を除去するために、二次乾燥のために温度をマイナス20℃に上げる。凍結保護物質の効果を評価するために、87%または94%の最終濃度(w/w)のスクロースおよびトレハロースを凍結乾燥前に製剤に導入した。平均粒子サイズを
図2(A)および2(B)に示し、結果は、87%または94%の最終濃度(w/w)で、スクロースおよびトレハロースの両方が凍結乾燥後のリポソーム粒子の特性を変化しないかまたは特性に影響を与えないことを示す。
【0044】
凍結乾燥生成物の長期保存安定性も検証した。凍結保護物質として87%(w/w)のトレハロースを含む、RAP-PおよびRAP-E製剤の凍結乾燥生成物を-20℃(マイナス20℃)で20週間保存し、生成物の一部を4、16および20週間保存した後に回収し、特性評価のために2mg/mLに再水和した。再水和物の平均粒子サイズおよび粒子サイズのPIを
図3(A)および
図3(B)に示す。結果は、凍結乾燥生成物が-20℃(マイナス20℃)で保存した場合、少なくとも20週間安定であり得ることを明らかにした。
実施例3 インビボ研究
【0045】
請求項の製剤の適用可能性を研究するために、その毒性研究、薬物動態および有効性を、マウスを用いてインビボで研究した。
毒性試験
【0046】
6~8週齢の雄のBALB/cマウスを、BioLasco(Ilan,Taiwan)から入手した。RAP-PおよびRAP-E製剤の単回容量を投与したマウスを用いて予備毒性試験を実施し、体重変化を指標として選択した。
図4(A)および4(B)は、RAP-P製剤の最大耐量(MTD)がマウスで120 mg/kgであり、RAP-EのMTDがマウスで220mg/kgであることを示す研究の結果を示す。比較のために、以前の静脈内注射製剤におけるラパマイシンの致死容量50%(LD
50)は、ラットで40mg/kgであり、マウスで80mg/kgに相当する(Baker,H.;Sidorowicz,A.;Sehgal,S.N.; Vezina,C.Rapamycin(ay-22,989),a new antifungal antibiotic. Iii. In vitro and in vivo evaluation. The Journal of antibiotics 1978, 31, 539-545)。ラパマイシンの本発明のリポソーム製剤は、以前の静脈内注射製剤のLD
50よりも有意に高いMTD用量を提供し、これは、臨床用途において利益をもたらすであろう。
薬物動態研究
【0047】
6~8週齢の雄のBALB/cマウスは、BioLasco(Ilan, Taiwan)から入手した。動物をランダムに2つの群に分けた(n=6)。注射前に頬から採血した。尾静脈から薬剤を投与した後、0.083、0.5、1、2、4、8、10、および24時間で採血した。血液をメタノールおよび0.1M硫酸亜鉛で抽出した。血中の薬物濃度をUPLC-MS/MSによって分析した。RAP-PおよびRAP-E製剤の薬物動態データの詳細を以下の表1に示す。
【0048】
【0049】
マウスにおける異種移植卵巣腫瘍の処置への影響
AktおよびmTORリン酸化は、卵巣がんにおいて頻繁に検出され、卵巣がん細胞株であるSKOV3は、シスプラチンおよびドキソルビシンに耐性がある。したがって、SKOV3を、ラパマイシンを含む本発明のリポソームの処置有効性を評価するためのモデル腫瘍として選択した。NOD/SCIDマウスのSKOV3異種移植片を動物モデルとして使用し、対照群(薬物なし)、比較群(ドセタキセルの投与、用量:4mg/kg、Q3d*4)および本発明の群(RAP-E製剤の投与、用量:50mg/kg、Q3d*4)の3つの群に分類した。6週齢のNOD SCID免疫不全マウス(BioLasco, Ilan, Taiwan)に8*10
5 SKOV3細胞(ヒト卵巣がん細胞)を皮下接種した。腫瘍接種後、週に2回腫瘍サイズを測定し、腫瘍が80~100mm
3に成長したときに処置を開始する。
図5(A)は、各群の0日目と39日目の腫瘍体積を示す。ドセタキセルとRAP-E製剤の平均阻害率はそれぞれ53%および62%であった。ドセタキセルおよびRAP-E製剤の39日目の腫瘍阻害率は57%および61%であり、両方の群は、対照群よりも腫瘍体積の有意な阻害を示した。
図5(B)は各群のマウスの体重変化を示す。結果は、本発明の製剤(RAP-E)がドセタキセルと同等の有効性(腫瘍サイズの阻害)を達成できるが、毒性がより低いことを明らかにしている。
【0050】
マウスにおける異種移植乳房腫瘍の処置への影響
卵巣がんに加えて、研究は、PI3K/AKT/mTORおよび経路が乳がんにおいて頻繁に調節不全であることを示した。アップレギュレーションされたmTORC1は、細胞の成長、増殖に寄与し、腫瘍形成を促進する。mTORの阻害剤であるラパマイシンも乳がんの処置に有望であり得る。標的療法が利用できないトリプルネガティブ乳がん細胞株であるMDA-MB-231細胞は、化学療法しか選択できない。ただし、深刻な副作用が発生し得る。したがって、MDA-MB-231は、ラパマイシンを含む本発明のリポソームの処置有効性を評価するためのモデルとして選択した。NOD/SCIDマウスのMDA-MB-231異種移植を動物モデルとして使用し、対照群(薬物なし)、比較群(Lipo-Doxの投与、用量:2 mg/kg、Q3d*4)および本発明の群(RAP-E製剤の投与、用量:25mg/kg、Q3d*4)の3つの群に分類した。6週齢のNOD SCID免疫不全マウス(BioLasco, Ilan, Taiwan)に1*10
6 MDA-MB-231細胞(ヒト乳がん細胞)を皮下接種した。腫瘍接種後、週に2回腫瘍サイズを測定し、腫瘍が80~100mm
3に成長したときに処置を開始する。
図6(A)は、各群の0日および16日目の腫瘍体積を示す。Lipo-DoxおよびRAP-E製剤の平均阻害率はそれぞれ27%および34%であった。Lipo-DoxおよびRAP-E製剤の16日目の腫瘍阻害率は55%および52%であり、両方の群は、対照群よりも腫瘍体積の有意な阻害を示した。
図6(B)は、各群のマウスの体重変化、特にLipo-Dox投与群の有意な体重減少を示す。結果は、本発明の製剤(RAP-E)がLipo-Doxと同等の有効性(腫瘍サイズの阻害)を達成できるが、毒性がより低いことを明らかにしている。
マウス結腸がんに対する5-FUおよび本発明の製剤との間の有効性の比較
【0051】
Balb/cマウスのCT26モデルを別の動物モデルとして使用し、対照群(薬物なし)、比較群(5-FUの投与、用量:25mg/kg、Q3d*4)および本発明の群(RAP-E製剤の投与、用量:25mg/kg、Q3d*4)の3つの群に分類した。6週齢のBalb/cマウス(BioLasco, Ilan, Taiwan)に1*10
5 CT26細胞(マウス結腸直腸がん細胞)を皮下接種した。腫瘍接種後、週に2回腫瘍サイズを測定し、腫瘍が80~100mm
3に成長したときに処置を開始する。
図7(A)は、各群の0日目および16日目の腫瘍体積を示す。5-FUおよびRAP-E製剤の平均阻害率はそれぞれ11%および37%であり;5-FUおよびRAP-E製剤の16日目の腫瘍阻害率はそれぞれ26%および53%であり;両方の群は、対照群よりも腫瘍体積のより大きな阻害を示した。
図7(B)は、各群のマウスの体重変化、特に5-FUの投与群での有意な体重減少を示す。結果は、本発明の製剤(RAP-E)が、5-FUよりも優れた有効性(腫瘍サイズの阻害)を達成できるが、毒性がより低いことを明らかにしている。