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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163359
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231102BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074214
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川高 伸人
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730BB11
5H730BB21
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730EE59
5H730FF01
5H730FF02
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】出力電圧の低周波リップル成分を容易に低減できるシンプルな構成のスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】出力電圧信号Vo1から基準電圧Vrefを差し引いた電圧を反転増幅した第一の制御信号Ver1を生成する誤差増幅回路18を備える。中間電圧Vcに含まれる商用周波数Facに対応した周波数Frの脈流成分Vripを検出し、脈流成分Vripを反転増幅した電圧信号と第一の制御信号Ver1とが加算された第二の制御信号Ver2を生成する脈流成分信号注入回路36を備える。第二の制御信号Ver2をパルス幅変調してスイッチング素子14aの駆動パルスVgを生成する駆動パルス生成回路20を備える。駆動パルス生成回路20は、第二の制御信号Ver2が低下した時に、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電圧を整流平滑して中間電圧を出力する整流平滑回路と、前記中間電圧を所定の出力電圧に変換するDC-DCコンバータと、前記出力電圧を検出した電圧信号である出力電圧信号が基準電圧に近づくように、前記DC-DCコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路は、
前記出力電圧信号から前記基準電圧を差し引いた電圧を反転増幅した電圧信号である第一の制御信号を生成する誤差増幅回路と、
前記中間電圧に含まれる商用周波数に対応した周波数の脈流成分を検出し、前記第一の制御信号又は前記第一の制御信号を非反転増幅した電圧信号に、前記脈流成分を反転増幅した電圧信号が加算された第二の制御信号を生成する脈流成分信号注入回路と、
前記第二の制御信号をパルス幅変調して前記スイッチング素子の駆動パルスを生成する駆動パルス生成回路とを備え、
駆動パルス生成回路は、前記第二の制御信号が低下した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を小さくする方向に変化させ、前記第二の制御信号が上昇した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を大きくする方向に変化させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記脈流成分信号注入回路は、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記整流平滑回路の出力端との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成される請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記脈流成分信号注入回路は、前記中間電圧を抵抗分圧して降圧電圧を生成する分圧回路と、前記降圧電圧に基づいてデューティが設定された矩形波電圧を生成するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記降圧電圧に比例した平滑電圧を生成する平滑回路と、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記平滑回路の出力端との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成される請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記脈流成分信号注入回路は、前記中間電圧を抵抗分圧して降圧電圧を生成する分圧回路と、前記降圧電圧をデジタル信号である降圧電圧信号に変換するADコンバータと、前記降圧電圧信号に基づいて、前記降圧電圧に対応したデジタル信号である比例電圧信号を生成するデジタル信号処理部と、前記比例電圧信号をアナログ電圧である比例電圧に変換するDAコンバータと、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記DAコンバータの出力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成される請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
商用交流電圧を整流平滑して中間電圧を出力する整流平滑回路と、前記中間電圧を所定の出力電圧に変換するDC-DCコンバータと、前記出力電圧の電圧信号である出力電圧信号が基準電圧に近づくように、前記DC-DCコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路は、
前記出力電圧信号から前記基準電圧を差し引いた電圧を非反転増幅した電圧信号である第一の制御信号を生成する誤差増幅回路と、
前記中間電圧に含まれる商用周波数に対応した周波数の脈流成分を検出し、前記第一の制御信号又は前記第一の制御信号を非反転増幅した電圧信号に、前記脈流成分を非反転増幅した電圧信号が加算された第二の制御信号を生成する脈流成分信号注入回路と、
前記第二の制御信号をパルス幅変調して前記スイッチング素子の駆動パルスを生成する駆動パルス生成回路とを備え、
駆動パルス生成回路は、前記第二の制御信号が上昇した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を小さくする方向に変化させ、前記第二の制御信号が低下した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を大きくする方向に変化させることを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用交流電圧を整流平滑して中間電圧を生成し、中間電圧をDC-DCコンバータで所定の出力電圧に変換するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、入力電圧を所定の出力電圧に変換する電力変換回路を備え、出力電圧を検出した電圧信号である出力電圧信号が基準電圧に近づくように、電力変換回路のスイッチング素子のオンオフが制御されるスイッチング電源装置があった。この種のスイッチング電源装置は、入力電源が商用交流電源だとすると、図8に示すスイッチング電源装置10のように表すことができる。
【0003】
スイッチング電源装置10は、商用交流電圧Vi(商用周波数Fac)を整流平滑して中間電圧Vcを出力する整流平滑回路12と、中間電圧Vcを所定の出力電圧Voに変換するDC-DCコンバータ14と、出力電圧Voを検出した電圧信号である出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefに近づくように、DC-DCコンバータ14のスイッチング素子14aのオンオフをフィードバック制御するスイッチング制御回路16とで構成される。
【0004】
DC-DCコンバータ14のインバータ方式は特に限定されないが、商用交流電源に対する安全性を確保するため(例えば、感電事故を防止するため)、多くの場合、入出力絶縁型のコンバータが選択される。
【0005】
スイッチング制御回路16は、出力電圧信号Vo1と基準電圧Vrefとの差を増幅した電圧信号である第一の制御信号Ver1を生成する誤差増幅回路18と、第一の制御信号Ver1をパルス幅変調してスイッチング素子14aの駆動パルスVgを生成する駆動パルス生成回路20とで構成される。
【0006】
誤差増幅回路18は、いわゆる反転増幅回路であり、出力電圧信号Vo1から基準電圧Vrefを差し引いた電圧を反転増幅した第一の制御信号Ver1を、絶縁手段18aを通じて出力する構成になっている。
【0007】
駆動パルス生成回路20は、比較器22と三角波発生器24とで構成される。三角波発生器24は所定周波数の基準三角波Voscを発生させるブロックで、基準三角波Voscの周波数がスイッチング素子14aのスイッチング周波数となる。
【0008】
比較器22は、反転入力端子に基準三角波Voscが入力され、非反転入力端子に第一の制御信号Ver1が入力され、出力端子から駆動パルスVgを出力する。つまり、第一の制御信号Ver1が基準三角波Voscよりも高い期間、駆動パルスVgをハイレベルにしてスイッチング素子14aをオンさせ、第一の制御信号Ver1が基準三角波Voscよりも低い期間、駆動パルスVgをローレベルにしてスイッチング素子14aをオフさせる構成となっている。
【0009】
したがって、駆動パルス生成回路20は、第一の制御信号Ver1が低下した時に、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させ、第一の制御信号Ver1が上昇した時に、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させる動作を行う。
【0010】
次に、スイッチング電源装置10のフィードバック制御の動作を簡単に説明する。例えば、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し上昇したとすると、誤差増幅回路18が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより高くなったことを検出して第一の制御信号Ver1を低下させ、駆動パルス生成回路20が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させるので、出力電圧Voが低下して目標値に戻る。反対に、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し低下したとすると、誤差増幅回路18が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより低くなったことを検出して第一の制御信号Ver1を上昇させ、駆動パルス生成回路20が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させるので、出力電圧Voが上昇して目標値に戻る。
【0011】
このスイッチング電源装置10は、中間電圧Vcが完全な直流電圧にならず、直流成分Vdcに、商用周波数Facに対応した周波数Frの脈流成分Vripが重畳した電圧となるので、出力電圧Voに、脈流成分Vripとほぼ同位相で振幅する不要な低周波リップル成分Vorが発生するという問題がある。
【0012】
まず、脈流成分Vrip及び周波数Frについて説明する。商用交流電源が単相の場合、例えば図9(a)に示すように、整流平滑回路12は、商用交流電圧Vi(商用周波数Fac)を4つのダイオードで全波整流する整流部26と、全波整流された電圧を平滑するコンデンサで成る平滑部28とで構成することができるが、この場合、図9(c)に示すように、中間電圧Vcに、周波数Fr=2・Facの脈流成分Vripが発生する。また、図9(b)に示すように、整流平滑回路12が、上記の整流部26と、力率改善用のチョッパ回路で成る平滑部30とで構成された時も、中間電圧Vcに、周波数Fr=2・Facの脈流成分Vripが発生する。
【0013】
また、商用交流電圧が三相の場合、例えば図10(a)に示すように、整流平滑回路12は、商用交流電圧Viを6つのダイオードで全波整流する整流部32と、上記の平滑部28とで構成することができるが、この場合は、図10(b)に示すように、中間電圧Vcに、周波数Fr=3・Facの脈流成分Vripが発生する。
【0014】
低周波リップル成分Vorの主原因となる脈流成分Vripは、平滑部28,30のコンデンサの値を大きくすれば低減できるが、周波数Frが低周波なので多数の大容量コンデンサが必要になり、装置の大型化やコストアップが問題になる。
【0015】
また、脈流成分Vripが発生していても、出力電圧Voのフィードバック制御系の低周波帯域(周波数Frを含む帯域)のゲインを高くすれば、原理的には低周波リップル成分Vorを低減できる。しかし、周波数Frの帯域のゲインを高くすると、高周波帯域におけるフィードパック制御系のゲイン余裕や位相余裕が確保できずに発振してしまうので、実際は、周波数Frの帯域のゲインは低く抑えざるを得ない。そのため、図11に示すように、第一の制御信号Ver1の波形に、脈流成分Vripに対応した周波数Frの振動成分(低周波リップル成分Vorを抑えようとする成分)を発生させることができず、出力電圧Voに大きな低周波リップル成分Vorが発生してしまう。
【0016】
その他、低周波リップル成分Vorを低減する方法として、スイッチング電源装置10を、図12に示すスイッチング電源装置10xのように改変する方法が考えられる。スイッチング電源装置10xの特徴は、三角波発生器24を独特な三角波発生器24xに変更し、基準三角波Voscの傾きを中間電圧Vcに略比例して変化させている点である。この改変により、中間電圧Vcの変化に応じて主スイッチング素子14aのオンの時比率を変化させて出力電圧Voを安定化するフィードフォワード制御が行われ、低周波リップル成分Vorを低減することができる。このフィードフォワード制御の技術は、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2014-128110号公報
【特許文献2】特開2010-124524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記のように、従来のスイッチング電源装置10は、出力電圧Voの低周波リップル成分Vorを低減することが難しい。
【0019】
従来のスイッチング電源装置10xは、基準三角波Voscの傾きを利用したフィードフォワード制御を行うので、原理的には出力電圧Voの低周波リップル成分Vorを低減することができる。しかし、基準三角波Voscの傾きは、フィードバック制御系のゲイン特性にも大きく影響するものなので、中間電圧Vcの脈流成分Vripの影響でフィードバック制御系のゲイン特性が周期的に変動して不安定になってしまうという問題がある。また、特許文献2の中で説明されているように、基準三角波Voscの傾きを利用したフィードフォワード制御は、低入力電圧時にトランスが飽和するのを回避する特別な対策が必要であり、その対策の内容によっては電源効率が低下してしまう等の課題があるため、シンプルで安価な構成にすることが求められる汎用の電源装置や、入力電圧Viの範囲が広い電源装置に使用するのは避けたいという事情がある。
【0020】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、出力電圧の低周波リップル成分を容易に低減できるシンプルな構成のスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、商用交流電圧を整流平滑して中間電圧を出力する整流平滑回路と、前記中間電圧を所定の出力電圧に変換するDC-DCコンバータと、前記出力電圧を検出した電圧信号である出力電圧信号が基準電圧に近づくように、前記DC-DCコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路は、前記出力電圧信号から前記基準電圧を差し引いた電圧を反転増幅した電圧信号である第一の制御信号を生成する誤差増幅回路と、前記中間電圧に含まれる商用周波数に対応した周波数の脈流成分を検出し、前記第一の制御信号又は前記第一の制御信号を非反転増幅した電圧信号に、前記脈流成分を反転増幅した電圧信号が加算された第二の制御信号を生成する脈流成分信号注入回路と、前記第二の制御信号をパルス幅変調して前記スイッチング素子の駆動パルスを生成する駆動パルス生成回路とを備え、
駆動パルス生成回路は、前記第二の制御信号が低下した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を小さくする方向に変化させ、前記第二の制御信号が上昇した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を大きくする方向に変化させるスイッチング電源装置である。
【0022】
前記脈流成分信号注入回路は、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記整流平滑回路の出力端との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成することができる。
【0023】
前記脈流成分信号注入回路は、前記中間電圧を抵抗分圧して降圧電圧を生成する分圧回路と、前記降圧電圧に基づいてデューティが設定された矩形波電圧を生成するパルス幅変調部と、前記矩形波電圧を平滑して前記降圧電圧に比例した平滑電圧を生成する平滑回路と、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記平滑回路の出力端との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成することができる。
【0024】
前記脈流成分信号注入回路は、前記中間電圧を抵抗分圧して降圧電圧を生成する分圧回路と、前記降圧電圧をデジタル信号である降圧電圧信号に変換するADコンバータと、前記降圧電圧信号に基づいて、前記降圧電圧に対応したデジタル信号である比例電圧信号を生成するデジタル信号処理部と、前記比例電圧信号をアナログ電圧である比例電圧に変換するDAコンバータと、非反転入力端子に前記第一の制御信号が入力され、出力端子から前記第二の制御信号を出力するオペアンプと、前記オペアンプの反転入力端子と前記DAコンバータの出力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の直列回路で成る入力回路と、前記オペアンプの出力端子と反転入力端子との間に接続された、コンデンサ及び抵抗の並列回路で成る帰還回路とで構成することができる。
【0025】
また、本発明は、商用交流電圧を整流平滑して中間電圧を出力する整流平滑回路と、前記中間電圧を所定の出力電圧に変換するDC-DCコンバータと、前記出力電圧の電圧信号である出力電圧信号が基準電圧に近づくように、前記DC-DCコンバータのスイッチング素子のオンオフを制御するスイッチング制御回路とを備え、
前記スイッチング制御回路は、前記出力電圧信号から前記基準電圧を差し引いた電圧を非反転増幅した電圧信号である第一の制御信号を生成する誤差増幅回路と、前記中間電圧に含まれる商用周波数に対応した周波数の脈流成分を検出し、前記第一の制御信号又は前記第一の制御信号を非反転増幅した電圧信号に、前記脈流成分を非反転増幅した電圧信号が加算された第二の制御信号を生成する脈流成分信号注入回路と、前記第二の制御信号をパルス幅変調して前記スイッチング素子の駆動パルスを生成する駆動パルス生成回路とを備え、
駆動パルス生成回路は、前記第二の制御信号が上昇した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を小さくする方向に変化させ、前記第二の制御信号が低下した時に、前記駆動パルスのハイレベルとローレベルの時比率を、前記スイッチング素子のオンの時比率を大きくする方向に変化させるスイッチング電源装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスイッチング電源装置は、独特な構成の脈流成分信号注入回路を設けることによって、中間電圧の脈流成分が上昇方向に振幅した時に主スイッチング素子のオンの時比率を低下させ、脈流成分が低下方向に振幅した時に主スイッチング素子のオンの時比率を低下させるフィードフォワード制御を行うので、中間電圧の脈流成分が原因で出力電圧に低周波リップル成分が発生する問題を、フィードバック制御系に大きな影響を与えることなく、容易に解決することができる。
【0027】
また、脈流成分信号注入回路は、脈流成分の信号を、フィードバック制御系の中の、パルス幅制御を行って駆動パルスを生成する直前の位置(駆動パルス生成回路の入力端)に注入するので、脈流成分の変化に対し、主スイッチング素子の動作を極めて高速に変化させることができ、非常に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態を示す回路図である。
図2図1の脈流成分信号注入回路の動作及び定数の設定方法の例を示す図である。
図3】第一の実施形態のスイッチング電源装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図4】本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態を示す回路図である。
図5】第二の実施形態のスイッチング電源装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図6】本発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態を示す回路図である。
図7】第三の実施形態のスイッチング電源装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図8】従来のスイッチング電源装置の一例を示す回路図である。
図9】一般的な整流平滑回路の例を示す回路図(a)、(b)と、中間電圧の波形を示すタイムチャート(c)である。
図10】一般的な整流平滑回路の例を示す回路図(a)と、中間電圧の波形を示すタイムチャート(b)である。
図11図8のスイッチング電源装置の各部の動作波形を示すタイムチャートである。
図12】従来のスイッチング電源装置の他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第一の実施形態>
以下、本発明のスイッチング電源装置の第一の実施形態について、図1図3に基づいて説明する。ここで、従来のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
この実施形態のスイッチング電源装置34は、図1の回路図に示すように、全体としてスイッチング電源装置10と共通する点が多いが、大きく異なるのは、スイッチング制御回路16の中に、脈流成分信号注入回路36が追加されている点である。
【0031】
脈流信号注入回路36は、オペアンプ38を有し、オペアンプ38の反転入力端子と整流平滑回路12の出力端との間に、コンデンサC1及び抵抗R1の直列回路で成る入力回路40が接続され、オペアンプ38の反転入力端子と出力端子との間に、コンデンサC2及び抵抗R2の並列回路で成る帰還回路42が接続されている。そして、オペアンプ38の非反転入力端子が誤差増幅回路18の出力端に接続され、オペアンプ38の出力端子が駆動パルス生成回路20の比較器22の非反転入力端子に接続されている。
【0032】
図2に示すように、脈流信号注入回路36は、一方の入力端であるオペアンプ38の非反転入力端子に、誤差増幅回路18が出力した第一の制御信号Ver1が入力され、反対側の入力端である入力回路40側の一端に、中間電圧Vc(=直流成分Vdc+脈流成分Vrip)が入力され、出力端であるオペアンプ38の出力端子から第二の制御信号Ver2を出力する。第二の制御信号Ver2は、次の式[1]、[2]のように表ことができる。
Ver2=(1+Z2/Z1)・Ver1-(Z2/Z1)・Vc ・・・[1]
Ver2≒(1+Z2/Z1)・Ver1-(Z2/Z1)・Vrip ・・・[2]
ここで、Z1は、入力回路40のコンデンサC1及び抵抗R1の合成インピーダンス、Z2は、帰還回路42のコンデンサC2及び抵抗R2の合成インピーダンスである。式[2]は、式[1]にVc=Vdc+Vripを代入した後、コンデンサC1によってカップリングされるVdcを式から消去したものである。
【0033】
インピーダンスZ1,Z2を決めるR1,C1,R2,C2の値は、電源装置の事情に合わせて個別に調整されるが、脈流成分Vripの周波数Fr[商用周波数に対応した周波数]において、R1>>(ωC1)-1、R2<<(ωC2)-1を満たすように調整し、式[3]のように、位相遅れがほとんど発生しない設定にすることが好ましい。さらに、R1>>R2を満たすように調整すると、次の式[4]に示す設定となる。
Ver2≒(1+R2/R1)・Ver1-(R2/R1)・Vrip ・・・[3]
Ver2≒ Ver1-(R2/R1)・Vrip ・・・[4]
スイッチング電源装置34の場合、中間電圧Vcの脈流成分Vripが数十ボルト、第一の制御信号Ver1が数ボルトになるので、脈流成分Vripを第一の制御信号Ver1に注入できる大きさに降圧する必要がある。したがって、脈流信号注入回路36は、R1>>R2の条件を満たすように調整し、式[4]の設定にすることが好ましい。
【0034】
このように、脈流信号注入回路36は、中間電圧Vcに含まれる周波数Frの脈流成分Vripを検出し、第一の制御信号Ver1を増幅率1で非反転増幅した電圧信号に、脈流成分Vripを反転増幅した電圧信号-(R2/R1)・Vripが加算された第二の制御信号Ver2を生成し、後段の駆動パルス生成回路20に向けて出力する。
【0035】
次に、スイッチング電源装置34の動作を説明する。まず、中間電圧Vcに脈流電圧Vripが発生していないと仮定して、スイッチング電源装置34のフィードバック制御の動作を簡単に説明する。例えば、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し上昇したとすると、誤差増幅回路18が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより高くなったことを検出して第一の制御信号Ver1が低下させ、第一の制御信号Ver1が脈流成分注入回路36を通過して駆動パルス生成回路20に入力され、駆動パルス生成回路20が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させるので、出力電圧Voが低下して目標値に戻る。反対に、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し低下したとすると、誤差増幅回路18が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより低くなったことを検出して第一の制御信号Ver1を上昇させ、第一の制御信号Ver1が脈流成分注入回路38を通過して駆動パルス生成回路20に入力され、駆動パルス生成回路20が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させるので、出力電圧Voが上昇して目標値に戻る。以上の動作は、従来のスイッチング電源装置10の場合と基本的に同じである。
【0036】
スイッチング電源装置34の実際の動作、すなわち中間電圧Vcに大きい脈流成分Vrip(周波数Fr)が発生している時の動作は、図3のように表される。誤差増幅回路18は、周波数Frを含む低周波帯域のゲインが低く抑えられているので、第一の制御信号Ver1の波形に、脈流成分Vripに対応した周波数Frの振動成分(低周波リップル成分Vorを抑えようとする成分)はほとんど発生しない。
【0037】
脈流成分信号注入回路36は、中間電圧Vc及び第一の制御信号Ver1を受けて、脈流成分Vripを反転増幅した電圧信号-(R2/R1)・Vripと第一の制御信号Ver1とが加算された第二の制御信号Ver2を生成する。したがって、第二の制御信号Ver2の波形は、脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時に時に低下方向に振幅し、脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時に低下方向に振幅する波形となる。
【0038】
駆動パルス生成回路20は、第二の制御信号Ver2が低下方向に振幅している時(脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で上昇することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。反対に、第二の制御信号Ver2が上昇方向に振幅している時(脈流成分Vripが低下方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で低下することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。したがって、低周波リップル成分Vorはほとんど発生しない。
【0039】
なお、Vor≒0を実現するためには、脈流成分Vripに対応した電圧信号-(R2/R1)・Vripの大きさを適切な値に設定することが条件になるが、抵抗R1,R2の値を調節することによって容易に最適化することができる。
【0040】
以上説明したようにスイッチング電源装置34は、独特な構成の脈流成分信号注入回路36を設けることによって、中間電圧Vcの脈流成分Vripが上昇方向に振幅した時に主スイッチング素子14aのオンの時比率を低下させ、脈流成分Vripが低下方向に振幅した時に主スイッチング素子14aのオンの時比率を低下させるフィードフォワード制御を行うので、中間電圧Vcの脈流成分Vripの影響で出力電圧Voに低周波リップル成分Vorが発生する問題を、フィードバック制御系に大きな影響を与えることなく、容易に解決することができる。
【0041】
また、脈流成分信号注入回路36は、脈流成分の信号-(R2/R1)・Vripを、フィードバック制御系の中の、パルス幅制御を行って駆動パルスVgを生成する直前の位置(駆動パルス生成回路20の入力端)で注入するので、脈流電圧Vripの変化に対し、主スイッチング素子の動作を極めて高速に変化させることができ、非常に効果的である
【0042】
<第二の実施形態>
次に、本発明のスイッチング電源装置の第二の実施形態について、図4図5に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置34と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
この実施形態のスイッチング電源装置44は、図4の回路図に示すように、全体としてスイッチング電源装置34と共通する点が多いが、異なるのは、スイッチング制御回路16の中に、上記の脈流成分信号注入回路36に代えて新規な脈流電圧注入回路46が設けられている点である。
【0044】
脈流電圧注入回路46は、分圧回路48、パルス幅変調部50及び平滑回路52を備えている。パルス幅変調部50は、デジタル信号処理を行うブロックであり、低電圧で動作するデジタルプロセッサ内に設けられる。
【0045】
分圧回路48は、数百ボルトの高電圧である中間電圧Vcを抵抗分圧し、デジタルプロセッサ内のパルス幅変調部50が取り扱うことができる低い電圧(降圧電圧Vc1)を生成する。パルス変調部50は、降圧電圧Vc1に基づいてデューティDが設定された矩形波電圧Vp(波高値V1)を生成する。そして、平滑回路52は、矩形波電圧Vpを平滑し、降圧電圧Vc1に比例した平滑電圧Vc2を生成する。したがって、平滑電圧Vc2は式[5]のように表すことができる。
Vc2=D・V1=k2・Vc1=k2・(k1・Vc)=k1・k2(Vdc+Vrip) ・・・・[5]
ここで、k2は、D・V1のVc1に対する比例係数、k1は、分圧回路40の分圧比である。
【0046】
その他、脈流電圧注入回路46は、上記と同様のオペアンプ38、入力回路40及び帰還回路42で構成された増幅回路を備えている。ただし、入力回路40の一端は、整流平滑回路12の出力端ではなく、平滑回路52の出力端に接続される。
【0047】
脈流電圧注入回路46の場合、入力回路40の一端に平滑電圧Vc2(=k1・k2・Vc)が入力されるので、式[1]のVcがk1・k2・Vcに置き換えられ、式[2]~[4]のVripがk1・k2・Vripに置き換えられることになる。だだし、ここではk1・k2・Vripが十分な低電圧なので、R1,R2の値は、R1>>R2にならないように調整し、式[3]の設定にすることが好ましい。
【0048】
このように、脈流信号注入回路46は、中間電圧Vcに含まれる周波数Frの脈流成分Vripを検出し、第一の制御信号Ver1を非反転増幅した電圧信号(1+R2/R1)・Ver1に、脈流成分Vripを反転増幅した電圧信号-(R2/R1)・k1・k2・Vripが加算された第二の制御信号Ver2を生成し、後段の駆動パルス生成回路20に向けて出力する。
【0049】
次に、スイッチング電源装置44の動作を説明する。スイッチング電源装置44のフィードバック制御の動作(中間電圧Vcに脈流電圧Vripが発生していないと仮定した時の動作)は、スイッチング電源装置34と同様なので、説明を省略する。
【0050】
スイッチング電源装置34の実際の動作、すなわち中間電圧Vcに大きい脈流成分Vrip(周波数Fr)が発生している時の動作は、図5のように表される。誤差増幅回路18は、周波数Frを含む低周波帯域のゲインが低く抑えられているので、第一の制御信号Ver1の波形に、脈流成分Vripに対応した周波数Frの振動成分(低周波リップル成分Vorを抑えようとする成分)はほとんど発生しない。
【0051】
脈流成分信号注入回路46は、中間電圧Vc及び第一の制御信号Ver1を受けて、脈流成分Vripを反転増幅した脈流電圧信号-(R2/R1)・k・Vripと第一の制御信号Ver1を非反転増幅した電圧信号(1+R2/R1)・Ver1とが加算された第二の制御信号Ver2を生成する。したがって、第二の制御信号Ver2の波形は、脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時に時に低下方向に振幅し、脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時に低下方向に振幅する波形となる。
【0052】
駆動パルス生成回路20は、第二の制御信号Ver2が低下方向に振幅している時(脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で上昇することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。反対に、第二の制御信号Ver2が上昇方向に振幅している時(脈流成分Vripが低下方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で低下することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。したがって、低周波リップル成分Vorはほとんど発生しない。
【0053】
なお、Vor≒0を実現するためには、脈流成分Vripに対応した電圧信号-(R2/R1)・k1・k2・Vripを適切な大きさに設定することが条件になるが、抵抗R1,R2及び係数k1,k2の値を調節することによって容易に最適化することができる。
【0054】
以上説明したように、スイッチング電源装置44によれば、第一の実施形態のスイッチング電源装置34と同様の作用効果を得ることができる。さらに、脈流成分信号注入回路46にパルス幅変調部50及び平滑回路52を設け、これらが協働してアナログの平滑電圧Vc2を生成する構成なので、別の優れた効果も得られる。
【0055】
パルス幅変調部50はデジタルプロセッサ内に設けられてデジタル信号処理を行うブロックであるが、平滑回路52と組み合わせることによって、高価な高速デジタルプロセッサを使用しなくても、平滑電圧Vc2を高い分解能で生成することが可能になり、中間電圧Vcを高い精度で検出することができる。
【0056】
また、パルス幅変調部50の動作はプログラムを書き換えることによって自由に設定することができるので、例えば、通常時は「脈流成分信号を注入するための動作を行う」という動作モードに設定しておき、特定の状況になった時に別の動作モードに切り替えるという使い方ができる。したがって、この脈流成分信号注入回路46を設けることによって、特定の状況になった時に別目的のフィードフォワード制御を行ったり、異常が発生した時に出力電圧Voをダウンさせる保護動作の制御を行ったりすることが可能になるので、インテリジェンス性の高い高度な制御を行うことができる。
【0057】
<第三の実施形態>
次に、本発明のスイッチング電源装置の第三の実施形態について、図6図7に基づいて説明する。ここで、上記のスイッチング電源装置34と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
この実施形態のスイッチング電源装置54は、図6の回路図に示すように、スイッチング電源装置34の誤差増幅回路18、脈流成分信号注入回路36及び駆動パルス生成回路20を、新たな誤差増幅回路56、脈流成分信号注入回路58及び駆動パルス生成回路60に各々置き換えたものである。
【0059】
誤差増幅回路56は、出力電圧信号Vo1から基準電圧Vrefを差し引いた電圧を非反転増幅した電圧信号である第一の制御信号Ver1を生成する。つまり、上記の誤差増幅回路18との違いは、差電圧(Vo1―Vref)を反転増幅するのではなく非反転増幅するという点である。
【0060】
脈流成分信号注入回路58は、中間電圧Vcに含まれる周波数Frの脈流成分Vripを検出し、脈流成分Vripを非反転増幅した電圧信号+A・Vripと第一の制御信号Ver1(第一の制御信号Ver1を非反転増幅した電圧信号でもよい)とを加算した第二の制御信号Ver2を生成する。つまり、上記の脈流成分信号注入回路36との違いは、脈流成分Vripを反転増幅するのではなく非反転増幅するという点である。
【0061】
駆動パルス生成回路60は、第二の制御信号Ver2をパルス幅変調してスイッチング素子14aの駆動パルスVgを生成する回路であって、第二の制御信号Ver2が低下した時に、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させ、第二の制御信号Ver2が上昇した時に、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させる。上記の駆動パルス生成回路20との違いは、第二の制御信号Ver2が低下/上昇した時、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きく/小さくするのではなく、小さく/大きくする点である。
【0062】
次に、スイッチング電源装置54の動作を説明する。まず、中間電圧Vcに脈流電圧Vripが発生していないと仮定して、スイッチング電源装置54のフィードバック制御の動作を簡単に説明する。例えば、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し上昇したとすると、誤差増幅回路56が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより高くなったことを検出して第一の制御信号Ver1を上昇させ、第一の制御信号Ver1が脈流成分注入回路58を通過して駆動パルス生成回路60に入力され、駆動パルス生成回路60が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させるので、出力電圧Voが低下して目標値に戻る。反対に、目標値に保持されていた出力電圧Voが何らかの原因で少し低下したとすると、誤差増幅回路56が、出力電圧信号Vo1が基準電圧Vrefより低くなったことを検出して第一の制御信号Ver1を低下させ、第一の制御信号Ver1が脈流成分注入回路58を通過して駆動パルス生成回路60に入力され、駆動パルス生成回路60が、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させるので、出力電圧Voが上昇して目標値に戻る。
【0063】
スイッチング電源装置34の実際の動作、すなわち中間電圧Vcに大きい脈流成分Vrip(周波数Fr)が発生している時の動作は、図7のように表される。誤差増幅回路56は、周波数Frを含む低周波帯域のゲインが低く抑えられているので、第一の制御信号Ver1の波形に、脈流成分Vripに対応した周波数Frの振動成分(低周波リップル成分Vorを抑えようとする成分)はほとんど発生しない。
【0064】
脈流成分信号注入回路58は、中間電圧Vc及び第一の制御信号Ver1を受けて、脈流成分Vripを非反転増幅した脈流電圧信号+A・Vripと第一の制御信号Ver1(第一の制御信号Ver1を非反転増幅した電圧信号でもよい)とが加算された第二の制御信号Ver2を生成する。したがって、第二の制御信号Ver2の波形は、脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時に時に上昇方向に振幅し、脈流成分Vripが低下方向に振幅している時に低下方向に振幅する波形になる。
【0065】
駆動パルス生成回路60は、第二の制御信号Ver2が上昇方向に振幅している時(脈流成分Vripが上昇方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を小さくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で上昇することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。反対に、第二の制御信号Ver2が低下方向に振幅している時(脈流成分Vripが低下方向に振幅している時)は、駆動パルスVgのハイレベルとローレベルの時比率を、スイッチング素子14aのオンの時比率を大きくする方向に変化させる。したがって、出力電圧Voは、脈流成分Vripと同位相で低下することができなくなり、ほぼ一定の値に保持される。したがって、低周波リップル成分Vorはほとんど発生しない。
【0066】
なお、Vor≒0を実現するには、脈流成分Vripに対応した電圧信号+A・Vripを適切な大きさに設定することが条件になるが、増幅率Aの値を調節することによって容易に最適化することができる。
【0067】
以上説明したように、スイッチング電源装置54においても、第一の実施形態のスイッチング電源装置34と同様の作用効果を得ることができる。さらに、脈流成分信号注入回路58の内部の中間電圧Vc(=Vdc+Vrip)を検出する部分に、上記の分圧回路48、パルス幅変調部50及び平滑回路52を使用すれば、第二の実施形態のスイッチング電源装置44と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
なお、本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図1に示すスイッチング電源装置10は、高電圧である中間電圧Vcを入力回路40に直接入力する構成になっているが、中間電圧Vcを抵抗分圧して降圧電圧を生成する分圧回路を設け、降圧電圧を入力回路40に入力する構成に変更してもよい。前者の場合、コンデンサC1として比較的高価な高耐圧コンデンサを使用しなければならないが、後者の構成にすれば、比較的安価な低耐圧コンデンサを使用することができる。
【0069】
図4に示すスイッチング電源装置44は、インテリジェンス性の高い制御を可能にするため、脈流成分信号注入回路46に、分圧回路48、パルス幅変調部50及び平滑回路52を設け、平滑回路52の出力電圧Vc2を入力回路40に入力する構成にしているが、この部分は、分圧回路48、ADコンバータ、デジタル信号処理部及びDAコンバータに変更し、DAコンバータの出力電圧Vc2を入力回路40に入力する構成に変更してもよい。この場合、ADコンバータは、分圧回路48が生成した降圧電圧Vc1をデジタル信号である降圧電圧信号に変換する処理を行い、デジタル信号処理部は、降圧電圧信号に基づいて、降圧電圧Vc1に対応したデジタル信号である比例電圧信号を生成する処理を行い、DAコンバータは、比例電圧信号をアナログ電圧である比例電圧Vc2に変換する処理を行う。
【0070】
なお、DAコンバータで電圧Vc2を生成する場合、電圧Vc2の分解能を向上させることが課題になる。しかし、例えば本願出願人による特許第6368696号公報に記載されたディザリング技術を適用すれば、電圧Vc2の分解能を容易に向上させることができ、高価な高速デジタルプロセッサを使用しなくても、中間電圧Vcを高精度に検出することが可能になる。
【0071】
その他、上記の脈流成分信号注入回路36,46は、請求項1記載のスイッチング電源装置の脈流成分信号注入回路として使用するのに好適な構成(具体例)を示したものであるが、本発明の狙いの動作が可能なものであれば、脈流成分信号注入回路36,46以外の構成に変更してもよい。また、上記の脈流成分信号注入回路58は、請求項5記載のスイッチング電源装置の脈流成分信号注入回路の一例であり、好ましい具体例は示していないが、公知な回路を適宜組み合わせることによって、自由に構成することができる。
【符号の説明】
【0072】
10,34、44,54 スイッチング電源装置
12 整流平滑回路
14 DC-DCコンバータ
14a スイッチング素子
16 スイッチング制御回路
18,54 誤差増幅回路
20,60 駆動パルス生成回路
36,46,58 脈流成分信号注入回路
38 オペアンプ
40 入力回路(コンデンサC1、抵抗R1)
42 帰還回路(コンデンサC2、抵抗R2)
48 分圧回路
50 パルス幅変調部
52 平滑回路
D 矩形波電圧のデューティ
Vc 中間電圧
Vc1 降圧電圧
Vc2 平滑電圧
Vdc 中間電圧の直流成分
Ver1 第一の制御信号
Ver2 第二の制御信号
Vg 駆動パルス
Vi 商用交流電圧
Vo 出力電圧
Vo1 出力電圧信号
Vp 矩形波電圧
Vref 基準電圧
Vrip 中間電圧の脈流成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12