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特開2023-163360光伝送装置、光伝送システム、および送信光パワー制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163360
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】光伝送装置、光伝送システム、および送信光パワー制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/294 20130101AFI20231102BHJP
   H04B 10/079 20130101ALI20231102BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H04B10/294
H04B10/079 170
H04J14/02 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074215
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】山内 智裕
(72)【発明者】
【氏名】寺原 隆文
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛二
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA55
5K102AD01
5K102LA07
5K102LA11
5K102LA24
5K102LA33
5K102LA52
5K102MA03
5K102MB09
5K102MC17
5K102MD01
5K102MD04
5K102MD07
5K102MH04
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH17
5K102MH22
5K102PH42
(57)【要約】
【課題】広帯域のWDM信号の波長チャネルの伝送性能のばらつきを抑制する。
【解決手段】光伝送システムは、送信ノードにおいてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する第1の光チャネルモニタ、受信ノードにおいて各波長チャネルの光パワーを検出する第2の光チャネルモニタ、第1~第3の計算部、及びパワー制御部を備える。第1の計算部は、第2の光チャネルモニタにより検出される光パワーに基づいて各波長チャネルの線形SNRを計算する。第2の計算部は、第1の光チャネルモニタにより検出される光パワーに基づいて各波長チャネルの非線形SNRを計算する。第3の計算部は、線形SNRおよび非線形SNRを利用して各波長チャネルのGSNRを計算する。パワー制御部は、送信ノードにおいて、各波長チャネルのGSNRに基づいて各波長チャネルの送信パワーを制御する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する光伝送システムであって、
前記第1の光伝送装置において、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する第1の光チャネルモニタと、
前記第2の光伝送装置において、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する第2の光チャネルモニタと、
前記第2の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの光パワーに基づいて、各波長チャネルの線形SNRを計算する第1の計算部と、
前記第1の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの光パワーに基づいて、各波長チャネルの非線形SNRを計算する第2の計算部と、
前記第1の計算部により計算される線形SNRおよび前記第2の計算部により計算される非線形SNRを利用して、各波長チャネルのGSNRを計算する第3の計算部と、
前記第1の光伝送装置において、前記第3の計算部により計算される各波長チャネルのGSNRに基づいて、前記第1の光伝送装置から送信されるWDM信号の各波長チャネルの送信パワーを制御するパワー制御部と、
を備える光伝送システム。
【請求項2】
前記パワー制御部は、前記第3の計算部により計算される各波長チャネルのGSNRのばらつきを小さくするように、前記第1の光伝送装置から送信されるWDM信号の各波長チャネルの送信パワーを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記第1の光伝送装置は、
前記パワー制御部から与えられる指示に応じて前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する光回路と、
前記パワー制御部から与えられる指示に応じて前記WDM信号の光パワーを制御する光増幅回路と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記第2の計算部は、各波長チャネルについて、前記第1の光チャネルモニタにより検出される光パワーの3乗に所定の比例係数を乗算することで非線形雑音を計算し、前記第1の光チャネルモニタにより検出される光パワーと前記非線形雑音との比を計算することで前記非線形SNRを計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記第2の計算部は、前記光ファイバ伝送路のファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、および前記ランプロスの大きさに基づいて前記比例係数を補正する
ことを特徴とする請求項4に記載の光伝送システム。
【請求項6】
光ファイバ伝送路を介して受信ノードにWDM信号を送信する光伝送装置であって、
前記受信ノードにおいて検出される前記WDM信号の各波長チャネルの受信光パワーに基づいて計算される、前記WDM信号の各波長チャネルの線形SNRを表す情報を取得する取得部と、
前記WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを検出する光チャネルモニタと、
前記光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの光パワーに基づいて、各波長チャネルの非線形SNRを計算する非線形SNR計算部と、
前記線形SNRおよび前記非線形SNRを利用して、各波長チャネルのGSNRを計算するGSNR計算部と、
前記GSNR計算部により計算される各波長チャネルのGSNRに基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御するパワー制御部と、
を備える光伝送装置。
【請求項7】
前記WDM信号の各波長チャネルの線形SNRは、前記受信ノードにおいて計算され、
前記取得部は、前記WDM信号の各波長チャネルの線形SNRを表す情報を前記受信ノードから取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の光伝送装置。
【請求項8】
前記WDM信号の各波長チャネルの線形SNRは、前記光伝送装置および前記受信ノードに接続するネットワーク制御装置において計算され、
前記取得部は、前記WDM信号の各波長チャネルの線形SNRを表す情報を前記ネットワーク制御装置から取得する
ことを特徴とする請求項6に記載の光伝送装置。
【請求項9】
第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する光伝送システムにおいて、前記WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する送信光パワー制御方法であって、
前記第1の光伝送装置において第1の光チャネルモニタを用いて前記WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを検出し、
前記第2の光伝送装置において第2の光チャネルモニタを用いて前記WDM信号の各波長チャネルの受信光パワーを検出し、
前記第2の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの受信光パワーに基づいて、各波長チャネルの線形SNRを計算し、
前記第1の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの送信光パワーに基づいて、各波長チャネルの非線形SNRを計算し、
前記線形SNRおよび前記非線形SNRを利用して、各波長チャネルのGSNRを計算し、
前記第1の光伝送装置において、前記各波長チャネルのGSNRに基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの送信パワーを制御する
ことを特徴とする送信光パワー制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送装置、光伝送システム、および送信光パワー制御方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
大容量の光通信を提供するために、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)が実用化されている。WDMは、複数の波長チャネルを使用して信号を伝送する。したがって、多数の波長チャネルを多重化することで大容量の光通信が実現される。
【0003】
ただし、WDM信号の伝送性能は、波長に依存する。このため、WDM伝送システムにおいてプリエンファシス(または、予等化)が行われることがある。例えば、受信ノードは各波長チャネルの光パワーまたは光信号対雑音被(OSNR)をモニタする。そして、送信ノードは、受信ノードにおいてモニタされる各波長チャネルの光パワーまたはOSNRが均一になるように、各波長チャネルの送信パワーを制御する。この結果、各波長チャネルの伝送性能のばらつきが抑制される。
【0004】
なお、光伝送システムにおいて光信号の送出パワーを調整する装置および方法が提案されている(例えば、特許文献1)。波長多重伝送システムにおいて反射点(障害箇所)を特定する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-287649号公報
【特許文献2】特開2012-124686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、WDM伝送システムの帯域幅が拡大している。例えば、従来は、Cバンドのみを利用して信号が伝送されていたが、今日では、CバンドおよびLバンドを同時に利用して信号を伝送するWDM伝送システムが提案されている。このため、既存のプリエンファシスでは、各波長チャネルの伝送性能のばらつきを十分に抑制できないことがある。
【0007】
本発明の1つの側面に係わる目的は、広帯域のWDM伝送システムにおいて波長チャネルの伝送性能のばらつきを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様の光伝送システムは、第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する。この光伝送システムは、前記第1の光伝送装置において、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する第1の光チャネルモニタと、前記第2の光伝送装置において、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する第2の光チャネルモニタと、前記第2の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの光パワーに基づいて、各波長チャネルの線形SNRを計算する第1の計算部と、前記第1の光チャネルモニタにより検出される各波長チャネルの光パワーに基づいて、各波長チャネルの非線形SNRを計算する第2の計算部と、前記第1の計算部により計算される線形SNRおよび前記第2の計算部により計算される非線形SNRを利用して、各波長チャネルのGSNRを計算する第3の計算部と、前記第1の光伝送装置において、前記第3の計算部により計算される各波長チャネルのGSNRに基づいて、前記第1の光伝送装置から送信されるWDM信号の各波長チャネルの送信パワーを制御するパワー制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上述の態様によれば、広帯域のWDM伝送システムにおいて波長チャネルの伝送性能のばらつきが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す図である。
図2】受信ノードにおけるGSNRの一例を示す図である。
図3】OSNR、非線形SNR、及びGSNRの関係を説明する図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す図である。
図5】波長チャネルの線形SNRを計算する方法の一例を示す図である。
図6】波長チャネルの線形SNRを計算する方法の他の例を示す図である。
図7】GSNRを算出する処理の一例を示すフローチャートである。
図8】各波長チャネルの送信パワーを制御する方法の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施形態に係わる光伝送システムのバリエーションを示す図である。
図10】ランプロスが発生している光ファイバ伝送路の光パワープロファイルの一例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す図である。
図12】GSNRに対するランプロスの影響についてのシミュレーションの一例を示す図である。
図13】第2の実施形態においてGSNRを算出する処理の一例を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態においてGSNRを算出する処理のバリエーションを示すフローチャートである。
図15】送信光パワー制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光伝送システム100は、光伝送装置1および光伝送装置2を備える。光ファイバ伝送路3は、光伝送装置1と光伝送装置2とを接続する。なお、図1においては、光伝送装置1から光伝送装置2に光信号が伝送されるが、光伝送装置2から光伝送装置1に光信号を伝送することも可能である。すなわち、図1においては、光伝送装置1の光受信回路が省略されており、光伝送装置2の光送信回路が省略されている。
【0012】
光伝送システム100は、WDM信号を伝送する。すなわち、光伝送装置1により生成されるWDM信号は光ファイバ伝送路3を介して伝送される。そして、光伝送装置2は、このWDM信号を受信する。なお、この実施例では、WDM信号は、Cバンドの光信号およびLバンドの光信号を含む。
【0013】
光伝送装置1は、波長選択スイッチ(WSS)11、光増幅回路12、および制御部13を備える。なお、光伝送装置1は、図1に示していない他の素子、回路、または機能を備えてもよい。
【0014】
WSS11は、制御部13から与えられる指示に応じて、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する。なお、WSS11は、制御部13から与えられる指示に応じてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する光回路の一例である。すなわち、光伝送装置1は、WSS11の代わりに、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する他の形態の光回路を使用してもよい。
【0015】
光増幅回路12は、制御部13から与えられる指示に応じてWDM信号を増幅する。光増幅回路12は、この実施例では、光アンプ12a、可変光減衰器(VOA)12b、および光アンプ12cを備える。光アンプ12aは、WSS11から出力されるWDM信号を増幅する。VOA12bは、光アンプ12aから出力されるWDM信号を減衰させる。光アンプ12cは、VOA12bから出力されるWDM信号を増幅する。
【0016】
光増幅回路12は、光アンプ12aの入力と光アンプ12cの出力との間の利得を一定にする利得一定制御(AGC)を行う。ここで、VOA12bの減衰量を変化させることで光増幅回路12の利得を波長に対して傾斜させることができる。具体的には、VOA12bの減衰量を増加させると、光アンプ12aと光アンプ12cの利得の足し算が、VOAのロス増加量と同じ量だけ増える。光アンプ12aおよび12cは、EDFなどの希土類ドープの増幅媒体であり、利得を増加させると、短波長側が高くなる短波長上がりのチルトが発生する。これにより光増幅回路12の出力に短波長上がりチルトを発生させることができる。反対に、VOA12bの減衰量を減少させると逆向きのチルトが発生する。
【0017】
制御部13は、光伝送装置2から受信するフィードバック情報に基づいて、WSS11および光増幅回路12を制御する。なお、図1に示す例では、WSS11の出力側に光増幅回路12が設けられるが、WSS11の入力側に光増幅回路12を設けてもよい。
【0018】
光伝送装置2は、光アンプ21、光チャネルモニタ(OCM)22、および制御部23を備える。なお、光伝送装置2は、図1に示していない他の素子、回路、または機能を備えてもよい。
【0019】
光アンプ21は、光ファイバ伝送路3を介して受信するWDM信号を増幅する。OCM22は、受信WDM信号の各波長チャネルの光パワーをモニタする。制御部23は、OCM22の出力信号に基づいてフィードバック情報を生成する。フィードバック情報は、受信WDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す情報であってもよい。或いは、フィードバック情報は、受信WDM信号の各波長チャネルのOSNRを表す情報であってもよい。フィードバック情報は、例えば、OSC(Optical Supervisory Channel)を利用して光伝送装置2から光伝送装置1に送られる。この場合、光伝送装置2のOSC光送信機は、フィードバック情報を表す光信号を、光伝送装置2から光伝送装置1に光を伝搬する光ファイバを介して送信する。そして、光伝送装置2のOSC光受信器は、この光信号を受信することでフィードバック情報を取得する。
【0020】
上記構成の光伝送システム100において、光伝送装置2が受信する各波長チャネルの品質は、例えば、OSNRで表される。ただし、WDM信号の帯域幅が広いケースにおいては、光ファイバ伝送路3において発生する非線形雑音を考慮することが好ましい。すなわち、光信号の品質は、GSNR(Generalized SNR)で表されることが好ましい。ここで、GSNRは(1)式で表される。
【数1】
SNR_Lは、光信号と線形雑音との比を表し、OSNRから算出可能である。また、SNR_NLは、光信号と非線形雑音との比を表す。
【0021】
図2は、受信ノードにおけるGSNRの一例を示す。図2(a)に示す例では、送信ノード(図1では、光伝送装置1)から送信されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーは一定である。ただし、WDM信号が光ファイバ伝送路3を介して伝搬するとき、線形雑音および非線形雑音が発生する。このため、受信ノード(図1では、光伝送装置2)において、GSNRは波長に対してフラットにならない。図2に示す例では、Cバンドの中の短波長領域でGSNRが最も小さくなっている。ここで、GSNRが最も小さい波長チャネルにおいてエラーが発生しやすい。したがって、最小GSNRを大きくすることが重要である。
【0022】
光伝送装置1は、上述したように、光伝送装置2により生成されるフィードバック情報に基づいてWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。このとき、光伝送装置1は、受信ノードにおける最小GSNRを大きくするようにWDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御することが好ましい。たとえば、光伝送装置1は、図2(b)に示すように、波長に対してGSNRがフラットになるように、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する。そうすると、最小GSNRが大きくなり、WDM信号の品質が改善する。
【0023】
図3は、OSNR、非線形SNR、及びGSNRの関係を説明する図である。ここで、図3(a)は、光ファイバに入力されるWDM信号(図1では、光伝送装置1から送信されるWDM信号)の各波長チャネルの光パワーが波長に対してフラットであるときの特性を示している。光ファイバ伝送路においは、誘導ラマン散乱(SRS)により、短波長領域のチャネルの光パワーの一部が長波長領域のチャネルにより吸収される。このため、短波長領域の波長チャネルの光パワーが低下し、短波長領域のOSNRが低下する。他方、光パワーが高いほど非線形雑音が大きくなる。よって、SRSにより長波長領域の波長チャネルの光パワーが増加すると、非線形雑音が増加するので、長波長領域の非線形SNRが劣化する。
【0024】
この課題に対して、送信ノードは、受信ノードにおける各波長チャネルのOSNRが波長に対してフラットになるように、各波長チャネルの送信パワーを制御してもよい。すなわち、プリエンファシスにより、受信ノードにおけるOSNRを波長に対してフラットにすることができる。ただし、この場合、短波長領域の送信パワーを高くするプリエンファシスが行われるので、図3(b)に示すように、短波長領域の波長チャネルの非線形SNRが低下する。ここで、GSNRは、(1)式で表されるように、OSNRおよび非線形SNRの双方に依存する。よって、波長に対してOSNRをフラットにするだけでは、波長に対してGSNRがフラットにならないことがある。
【0025】
そこで、本発明の実施形態に係わる送信パワー制御方法は、各波長チャネルのGSNRを計算する。そして、波長に対して各波長チャネルのGSNRがフラットまたはほぼフラットになるように、各波長チャネルの送信パワーが制御される。これにより、図2(b)に示すように、受信ノードにおいて波長に対して各波長チャネルのGSNRがフラットになる。したがって、最小GSNRが改善し、WDM信号の品質が改善する。
【0026】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第1の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す。第1の実施形態においては、光伝送装置1は、図1を参照して説明したWSS11、光増幅回路12、制御部13に加えて、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源14を備えてもよい。ASE光源14は、ASE光を生成する。ここで、ASE光源14は、高パワーかつ広帯域のASE光を生成できるものとする。そして、ASE光源14により生成されるASE光は、WSS11に導かれる。WSS11は、このASE光を利用して、所望の1または複数の波長チャネルを介して伝送される疑似的な光信号を生成できる。
【0027】
なお、WDM信号の特性をモニタするときは、WDM信号の総光パワーが所定のレベルに保持されていることが好ましい。よって、WDM信号中に多重化される光信号の数が少ないときは、ASE光を利用して生成される疑似的な光信号をWDM信号に挿入することで、WDM信号の総光パワーを所定のレベルに保持してもよい。
【0028】
また、光伝送装置1は、OCM15を備える。OCM15は、光伝送装置1から光ファイバ伝送路3に出力されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーをモニタする。OCM15のモニタ結果は、制御部13に通知される。
【0029】
受信ノード(すなわち、光伝送装置2)において、制御部23は、線形SNR計算部31を備える。線形SNR計算部31は、OCM22の出力信号を利用して、WDM信号の各波長チャネルの線形SNRを計算する。ここで、線形SNRは、厳密にはOSNRと同じではないが、この実施例では、OSNRと等価であるものとする。
【0030】
図5は、波長チャネルの線形SNRを計算する方法の一例を示す。波長チャネルの線形SNRを計算するときは、光伝送装置1は光伝送装置2にWDM信号を送信する。このとき、信号を伝送しない波長チャネルには、ASE光源14を利用して生成される疑似的な光信号が挿入されることが好ましい。
【0031】
光伝送装置2において、OCM22は、WDM信号の光パワーをモニタする。即ち、光伝送装置2が受信するWDM信号のスペクトルが検出される。そして、線形SNR計算部31は、OCM22の出力信号を利用して各波長の線形SNRを算出する。具体的には、線形SNR計算部31は、図5(a)に示すように、波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する(測定1)。また、線形SNR計算部31は、波長λ0からΔλだけシフトした波長の光パワーを検出する(測定2)。なお、λ0+Δλは、信号成分が十分に小さい波長である。よって、λ0+Δλにおいて検出される光パワーは、ASE雑音のパワーに相当する。したがって、線形SNR計算部31は、図5(b)に示す手順で線形SNRを算出することができる。
【0032】
S1において、線形SNR計算部31は、波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する。これにより、信号の光パワーP_chが得られる。S2において、線形SNR計算部31は、波長λ0からΔλだけシフトした波長の光パワーを検出する。これにより、ASE雑音の光パワーP_ASEが得られる。そして、S3において、線形SNR計算部31は、S1で得られる信号の光パワーP_chおよびS2で得られるASE雑音の光パワーP_ASEから線形SNRを計算する。線形SNR(SNR_L)は、(2)式で表される。
【数2】
【0033】
図5に示す方法によれば、信号を送信しながら線形SNRを算出することができる。ただし、WDM信号の波長チャネルの間隔が狭いケースでは、ASE雑音の光パワーを精度よく測定することは困難である。
【0034】
図6は、波長チャネルの線形SNRを計算する方法の他の例を示す。この方法では、図6(a)に示すように、信号が送信されている状態で波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する(測定1)。また、信号を停止した状態で波長λ0の光パワーを検出する(測定2)。具体的には、線形SNR計算部31は、図6(b)に示す手順で線形SNRを算出することができる。
【0035】
S11において、送信ノードは、測定対象の波長チャネルを介して信号を送信する。S12において、受信ノードに実装される線形SNR計算部31は、波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する。これにより、信号の光パワーP_chが得られる。S13において、送信ノードは、WSS11を制御することにより、測定対象の波長チャネルを停止する。S14において、線形SNR計算部31は、波長λ0の光パワーを検出する。これにより、ASE雑音の光パワーP_ASEが得られる。そして、S15において、線形SNR計算部31は、S12で得られる信号の光パワーP_chおよびS14で得られるASE雑音の光パワーP_ASEから線形SNRを計算する。線形SNRは、図5に示す方法と同様に、(2)式で表される。
【0036】
線形SNR計算部31は、図5または図6に示す方法で各波長チャネルの線形SNRを計算する。そして、光伝送装置2は、線形SNR計算部31が計算した線形SNRを表す情報をフィードバック情報として光伝送装置1に送信する。加えて、光伝送装置2は、OCM22により検出された各波長チャネルの光パワーを表す情報をフィードバック情報として光伝送装置1に送信してもよい。
【0037】
光伝送装置1に実装される制御部13は、非線形SNR計算部32、GSNR計算部33、およびパワー制御部34を備える。また、制御部13は、図示しないが、光伝送装置2において算出された線形SNRを表す情報を取得する取得部(または、受信部)を備える。そして、制御部13は、光伝送装置2から受信するフィードバック情報に基づいてGSNRを計算し、波長に対してGSNRをフラットにするように、或いは、最小GSNRを高くするように、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。
【0038】
非線形SNR計算部32は、OCM15により検出される光パワーに基づいて、各波長チャネルの非線形SNRを計算する。ここで、非線形雑音の強度は、光ファイバ伝送路3に入力される光のパワーの3乗に比例する。すなわち、非線形雑音P_NLIは、(3)式で表される。
【数3】
「η」は、非線形SNRを計算するための比例係数を表す。また、「T」は光伝送装置1(送信ノード)を示し、「P_CH(T)」は、光伝送装置1(送信ノード)から出力される測定対象波長チャネルの伝送路入力パワーを表す。なお、この関係は、例えば、P. Poggiolini, Analytical modeling of non-linear propagation in coherent systems, in Proc. OFC 2013, Anaheim, CA, Mar. 2013.に記載されている。
【0039】
ここで、波長チャネルの帯域幅が一定であれば、単位帯域幅(例えば、12.5GHz)当たりの非線形雑音は(4)式で表される。
【数4】
「ηd」は、比例係数を表す。「B_CH」は、波長チャネルの帯域幅を表す。
【0040】
したがって、非線形SNRは(5)式で表される。
【数5】
【0041】
ここで、比例係数ηdは、伝送路のファイバの種類などによって決まる既知の値であるものとする。また、波長チャネルの帯域幅は既知である。したがって、OCM15を用いて波長チャネルの光パワーP_CH(T)を検出すれば、非線形SNRが算出される。なお、「P_CH(T)/B_CH」は、単位帯域幅当たりの光ファイバ入力パワーに相当する。
【0042】
GSNR計算部33は、受信ノード(即ち、光伝送装置2)から通知される線形SNRおよび非線形SNR計算部32により算出される非線形SNRに基づいてGSNRを計算する。この実施例では、GSNRは(6)式で算出される。
【数6】
【0043】
図7は、GSNRを算出する処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、この実施例では、送信ノード(即ち、光伝送装置1)の制御部13により実行される。
【0044】
S21において、非線形SNR計算部32は、OCM15を利用して対象波長チャネルの中心波長の光パワーを測定する。即ち、送信光パワー(または、ファイバ入力パワー)が測定される。S22において、非線形SNR計算部32は、S21で測定した光パワーに基づいて、対象波長チャネルの非線形SNRを計算する。非線形SNRは、例えば、上述した(5)式で計算される。なお、係数ηdおよび波長チャネルの帯域幅は与えられるものとする。
【0045】
S23において、GSNR計算部33は、対象波長チャネルの線形SNRを表す情報を取得する。線形SNRを表す情報は、フィードバック情報として、受信ノードにおいて生成される。S24において、GSNR計算部33は、S22で計算した非線形SNRおよびS23で取得した線形SNRに基づいてGSNRを計算する。GSNRは、(6)式で計算される。なお、制御部13は、WDM信号の各波長チャネルについてGSNRを計算する。
【0046】
パワー制御部34は、光伝送装置1において、GSNR計算部33により計算される各波長チャネルのGSNRに基づいて、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。具体的には、パワー制御部34は、例えば、各波長チャネルのGSNRのばらつきを小さくするように、或いは、最小GSNRを大きくするように、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御してもよい。このとき、パワー制御部34は、WSS11における各波長チャネルに対する減衰量を制御すると共に、光増幅回路12のVOA12bの減衰量を制御する。
【0047】
ここで、波長チャネルiの送信光パワー(すなわち、ファイバ入力パワー)の目標値TP_CH(i)は、(7)式により更新される。
【数7】
P_CH(i)は、更新前の波長チャネルiのファイバ入力パワーを表す。また、ΔP_CH(i)は、波長チャネルiの目標値の調整値を表す。
【0048】
波長チャネルiのファイバ入力パワーの目標値の調整値は、例えば、(8)式に示すように、波長チャネルiのGSNRおよびGSNRの平均値に基づいて決定される。
【数8】
GSNR(i)は、波長チャネルiのGSNRを表す。そして、関数f1は、例えば、波長チャネルiのGSNRをGSNRの平均値に近づける計算式により実現される。
【0049】
或いは、波長チャネルiのファイバ入力パワーの目標値の調整値は、(9)式に示すように、波長チャネルiの線形SNR、線形SNRの平均値、波長チャネルiの非線形SNR、および非線形SNRの平均値に基づいて決定してもよい。
【数9】
SNR_L(i)は、波長チャネルiの線形SNRを表し、SNR_NL(i)は、波長チャネルiの非線形SNRを表す。そして、関数f2は、例えば、波長チャネルiの線形SNRを線形SNRの平均値に近づけ、且つ、波長チャネルiの非線形SNRを非線形SNRの平均値に近づける計算式により実現される。
【0050】
パワー制御部34は、例えば、波長チャネルiの目標値の調整値ΔP_CH(i)の波長特性を光増幅回路12の出力のチルトによって補償しようとした場合に、最もΔP_CH(i)の波長特性に近くなる光増幅回路12の中のVOA12bの変化量ΔVOAを算出し、この量だけVOA12bの減衰量を変化させる。そして、この利得のチルトで補償しきれない残りの成分は、WSS11の各チャネルの減衰量を変化させることで補償される。これにより、ΔP_CH(i)の波長特性の変化を実現する。また、光増幅回路12は、図1または図4に示すように、光アンプ12a、VOA12b、および光アンプ12cを備える。
【0051】
図8は、各波長チャネルの送信パワーを制御する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、例えば、定期的に実行される。或いは、ネットワーク管理者からの指示に応じてこのフローチャートの処理を実行してもよい。
【0052】
S31において、受信ノードに実装される制御部23は、各波長チャネルの線形SNRを算出する。S32において、送信ノードに実装される制御部13は、各波長チャネルの非線形SNRを算出する。S33において、制御部13は、S31で得られる線形SNRおよびS32で得られる非線形SNRに基づいて各波長チャネルのGSNRを算出する。S34において、制御部13は、各波長チャネルのGSNRに基づいて、送信ノードに実装されるWSS11および光増幅回路12を制御する。上述の送信パワー制御により、図2(b)に示すように、各波長チャネルのGSNRのばらつきが小さくなる。この結果、最小GSNRが大きくなり、WDM信号の品質が改善する。
【0053】
なお、図4に示す実施例では、受信ノード(即ち、光伝送装置2)において線形SNRが算出され、線形SNRを表すフィードバック情報が送信ノード(即ち、光伝送装置1)に通知されるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。例えば、光伝送装置2は、OCM22により検出されるスペクトル情報を光伝送装置1に送信してもよい。このスペクトル情報は、光伝送装置2が受信するWDM信号のスペクトルを表す。この場合、図4に示す線形SNR計算部31は、光伝送装置1の制御部13に実装され、光伝送装置2から受信するスペクトル情報を利用して各波長チャネルの線形SNRを算出する。
【0054】
図9は、本発明の第1の実施形態に係わる光伝送システムのバリエーションを示す。図9に示す光伝送システム100は、ネットワーク制御装置50を備える。ネットワーク制御装置50は、光伝送システム100中の各通信機器を制御することができる。また、ネットワーク制御装置50は、光伝送装置1、2に接続されている。そして、ネットワーク制御装置50は、図4に示す線形SNR計算部31、非線形SNR計算部32、およびGSNR計算部33を備える。
【0055】
光伝送装置2は、OCM22により検出されるスペクトル情報をネットワーク制御装置50に送信する。このスペクトル情報は、光伝送装置2が受信するWDM信号のスペクトルを表す。そして、ネットワーク制御装置50に実装される線形SNR計算部31は、光伝送装置2から受信するスペクトル情報に基づいて各波長チャネルの線形SNRを計算する。
【0056】
光伝送装置1は、OCM12により検出されるスペクトル情報をネットワーク制御装置50に送信する。このスペクトル情報は、光伝送装置1から光ファイバ伝送路3に入力されるWDM信号のスペクトルを表す。そして、ネットワーク制御装置50に実装される非線形SNR計算部32は、光伝送装置1から受信するスペクトル情報に基づいて各波長チャネルの非線形SNRを計算する。
【0057】
ネットワーク制御装置50に実装されるGSNR計算部33は、線形SNRおよび非線形SNRに基づいて、各波長チャネルのGSNRを計算する。さらに、ネットワーク制御装置50は、各波長チャネルのGSNRに基づいて、光伝送装置1のWSS11および光増幅回路12を制御するための制御情報を生成する。そして、ネットワーク制御装置50は、この制御情報を光伝送装置1に送信する。そうすると、光伝送装置1において、パワー制御部34は、ネットワーク制御装置50から受信する制御情報に従ってWSS11および光増幅回路12を制御する。この結果、図2(b)に示すように、各波長チャネルのGSNRのばらつきが抑制される。なお、図9に示す構成によれば、光伝送装置1、2の負荷を削減することができる。
【0058】
線形SNR計算部31、非線形SNR計算部32、GSNR計算部33、およびパワー制御部34は、たとえば、プロセッサおよびメモリを備えるコンピュータにより実現される。この場合、メモリに保存されているプログラムをプロセッサが実行することで、線形SNR計算部31、非線形SNR計算部32、GSNR計算部33、およびパワー制御部34の機能が提供される。
【0059】
図4に示す構成においては、光伝送装置2に実装されるプロセッサにより線形SNR計算部31の機能が提供され、光伝送装置1に実装されるプロセッサにより非線形SNR計算部32、GSNR計算部33、およびパワー制御部34の機能が提供される。また、図9に示す構成では、ネットワーク制御装置50に実装されるプロセッサにより線形SNR計算部31、非線形SNR計算部32、およびGSNR計算部33の機能が提供され、光伝送装置1に実装されるプロセッサによりパワー制御部34の機能が提供される。
【0060】
<第2の実施形態>
光ファイバを介して伝搬する光のパワーは、伝搬距離に依存する。すなわち、送信ノードからの距離が大きくなると、光パワーが徐々に小さくなる。ただし、光ファイバ伝送路上で、光ファイバの特性に依存しない、意図しない損失が発生することがある。例えば、曲げ損失、接続損失、結合損失などが生じることがある。そして、このような意図しない損失が発生する場合、上述した方法で算出されるGSNRの誤差が大きくなる。そこで、第2の実施形態では、この誤差を抑制する手順を提供する。なお、以下の記載では、光ファイバ伝送路上で発生する意図しない損失を「ランプロス」と呼ぶことがある。
【0061】
図10は、ランプロスが発生している光ファイバ伝送路の光パワープロファイルの一例を示す。この例では、光ファイバ伝送路の長さ(すなわち、スパン長)がLSであり、送信ノードから距離L1だけ離れた位置PLにおいてランプロスが発生している。
【0062】
この場合、送信ノードからの位置PLに向かって光が伝搬すると、光パワーは徐々に低下していく。そして、位置PLにおいてランプロスにより光パワーがδ1だけ低下する。さらに、位置PLから受信ノードに向かって光が伝搬すると、光パワーはさらに低下していく。
【0063】
ここで、ランプロスが発生するケースでは、ランプロスが無いケースと比較すると、受信ノードに到達する光のパワーは低くなる。具体的には、ランプロスが発生するケースでは、ランプロスが無いケースと比較すると、位置PLと受信ノードとの間で光パワーが低くなる。よって、非線形SNRを計算するときに、(4)式または(5)式で使用される係数ηdを補正することが好ましい。例えば、係数ηdは、(10)式で補正される。
【数10】
【0064】
「α」は、光ファイバ伝送路3のファイバ損失係数(即ち、単位長さ当たりの損失)を表す。関数f3は、ファイバ損失係数αに依存する値を生成する。例えば、関数f3は、ファイバ損失係数αが大きいほど演算結果が小さくなる計算式で実現してもよい。また、関数f4は、ランプロスδ1、送信ノードからランプロス発生位置PLまでの距離L1、およびスパン長LSに依存する値を生成する。例えば、関数f4は、ランプロスδ1が大きいほど演算結果が小さくなり、且つ、ランプロス発生位置PLから受信ノードまでの距離(すなわち、「LS-L1」)が大きいほど演算結果が小さくなる計算式で実現してもよい。
【0065】
なお、光ファイバ伝送路上の複数の位置でランプロスが発生するときには、係数ηdは(11)式で補正される。
【数11】
【0066】
ファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、およびランプロスの大きさは、例えば、光時間領域反射率計(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)を用いて検出することができる。OTDRは、光ファイバの不連続点を検出する光測定器である。具体的には、OTDRは、光ファイバに光パルスを入射し、その光ファイバからの反射光を検出する。そして、OTDRは、反射光のパワーおよびタイミングに基づいて、光ファイバの光パワープロファイル(光ファイバの不連続点の位置を表す情報を含む)を検出することができる。なお、光ファイバの不連続点は、破断点および端点を含む。また、光ファイバの不連続点は、光ファイバどうしの接続点も含む。よって、OTDRは、ファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、およびランプロスの大きさを検出できる。
【0067】
図11は、本発明の第2の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す。第2の実施形態においては、光伝送装置1は、WSS11、光増幅回路12、制御部13、ASE光源14、OCM15に加えて、OTDR16を備える。OTDR16は、光伝送装置1と光伝送装置2とを接続する光ファイバ伝送路3の状態を検出する。すなわち、OTDR16は、光ファイバ伝送路3に光パルスを入力し、その反射パルスを検出することで、光ファイバ伝送路3の光パワープロファイルを作成することができる。
【0068】
制御部13は、OTDR16により作成される光パワープロファイルに基づいて、ファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、およびランプロスの大きさを検出する。ここで、スパン長LS(即ち、光伝送装置1、2間の距離)は既知である。したがって、制御部13は、(11)式を使用して、非線形SNRを計算するための係数ηdを補正することができる。
【0069】
なお、図11に示す実施例では、送信ノードに実装されるOTDRを利用して光ファイバ伝送路3の状態が検出されるが、受信ノードに実装されるOTDRを利用して光ファイバ伝送路3の状態を検出してもよい。この場合、光伝送装置2は、OTDRにより得られる情報を光伝送装置1に送信する。
【0070】
図12は、GSNRに対するランプロスの影響についてのシミュレーションの一例を示す。図12(a)は、光ファイバのランプロスが無いと仮定して事前にパラメータを設定したケースを示す。すなわち、波長に対してGSNRがフラットになるように、事前設計により、線形SNRの波長特性および非線形SNRの波長特性が設定されている。
【0071】
ところが、事前設計に基づいて送信パワー制御を行う場合、ランプロスが発生すると、光ファイバ伝送路中で光のパワーが低くなるので、SRSが小さくなる。すなわち、短波長領域から長波長領域への光パワーの遷移が少なくなる。この結果、事前設計と比較すると、長波長領域の光パワーが低下し、図12(b)に示すように、長波長領域の線形SNRが劣化する。また、光ファイバ伝送路を伝搬する光のパワーがランプロスにより低下するので、非線形SNRは全体的に高くなる。SRSが小さくなることから、その傾向は長波長領域で顕著であるが、結果として線形SNRの波長特性および非線形SNRの波長特性のバランスが失われ、波長に対してGSNRがフラットにならなくなる。図12に示す例では、短波長領域のGSNRが相対的に低下している。なお、ランプロスが発生する場合は、GSNRの波長特性に対する非線形SNRの波長特性の寄与は相対的に小さくなるが、図12(c)に示すように、線形SNRの波長特性をフラットにしたとしても、必ずしもGSNRの波長特性はフラットにならない。
【0072】
そこで、本発明の実施形態では、波長に対してGSNRがフラットになるように、WSS11および光増幅回路12をフィードバック制御する。加えて、第2の実施形態では、ランプロスを考慮して、非線形SNRを計算するための係数ηdが補正される。
【0073】
図13は、第2の実施形態においてGSNRを算出する処理の一例を示すフローチャートである。第2の実施形態においては、図7に示す手順に加えてS41の処理が実行される。
【0074】
S41において、制御部13は、OTDR16を用いて光ファイバ伝送路3の状態を検出する。そして、非線形SNR計算部32は、OTDR16により得られる情報に基づいて、光ファイバ伝送路3のファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、およびランプロスの大きさを検出する。
【0075】
制御部13は、図7に示すS21~S24と同様の手順で非線形SNRおよびGSNRを計算する。ただし、第2の実施形態においては、非線形SNR計算部32は、S42において、非線形SNRを計算するための係数ηdを補正する。このとき、係数ηdは、S41で得られるファイバ損失係数、ランプロスの発生位置、およびランプロスの大きさに基づいて補正される。そして、非線形SNR計算部32は、補正された係数ηdを用いて非線形SNRを計算する。その後、GSNR計算部33がGSNRを計算する。
【0076】
図14は、第2の実施形態においてGSNRを算出する処理のバリエーションを示すフローチャートである。図13に示す手順では、OTDR16を用いて光ファイバ伝送路3のファイバ損失係数αが検出される。これに対して、図14に示すバリエーションでは、他の方法で光ファイバ伝送路3のファイバ損失係数が検出される。なお、制御部13は、S41において、OTDR16を用いて光ファイバ伝送路3のファイバ損失係数を検出する必要はない。
【0077】
光伝送装置1は、WDM信号を生成して光伝送装置2に送信する。このとき、制御部13は、ASE光源14およびWSS11を用いてWDM信号を生成してもよい。
【0078】
S51において、送信ノード(すなわち、光伝送装置1)のOCM15は、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを測定する。すなわち、各波長チャネルのファイバ入力パワーが測定される。S52において、受信ノード(すなわち、光伝送装置2)のOCM22は、WDM信号の各波長チャネルの受信光パワーを測定する。S53において、制御部23は、各波長チャネルの受信光パワーを表す情報を光伝送装置1に送信する。S54において、制御部13は、S51で測定された送信光パワーおよびS52で測定された受信光パワーに基づいて、波長チャネル毎にファイバ損失係数を計算する。この場合、波長チャネルiに対するファイバ損失係数は(12)式で表される。図14に示す手順では、S51とS21で同じ測定が行われているが、これは経時的な変化がある場合に測定値の更新を行うためであり、経時的な変化がないと見込まれる場合にはS51の測定値をそのまま流用することも可能である。
【数12】
【0079】
P_CH(T)(i)は波長チャネルiの送信光パワーを表す。P_CH(R)(i)は波長チャネルiの受信光パワーを表す。δは、OTDRにより検出されるランプロスの大きさを表す。光ファイバ伝送路上で複数のランプロスが存在するときは、δは、ランプロスの総和を表す。LSは、スパン長を表す。この後、S21~S24を実行することにより、GSNRが算出される。
【0080】
図15は、送信光パワー制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0081】
S61において、送信ノードの制御部13は、各波長チャネルのGSNRを計算する。このとき、制御部13は、受信ノードの制御部23と連携して各波長チャネルのGSNRを計算する。具体的には、GSNRは、例えば、図7図13、または図14に示す手順で計算される。
【0082】
S62において、制御部13は、各波長チャネルのGSNRに基づいて、WSS11および光増幅回路12を制御する。このとき、制御部13は、例えば、各波長チャネルのGSNRのばらつきを小さくするように、WSS11における各波長チャネルの減衰量および光増幅回路12の利得を制御する。
【0083】
図15に示す手順を所定の周期で繰り返し実行することにより、波長に対する各波長チャネルのGSNRのばらつきが小さくなり、WDM信号の最小GSNRが安定する。したがって、安定したWDM伝送が実現される。
【符号の説明】
【0084】
1、2 光伝送装置
3 光ファイバ伝送路
11 波長選択スイッチ(WSS)
12 光増幅回路
12a、12c 光アンプ
12b 可変光減衰器(VOA)
13 制御部
14 ASE光源
15 光チャネルモニタ(OCM)
16 光時間領域反射率計(OTDR)
22 光チャネルモニタ(OCM)
23 制御部
31 線形SNR計算部
32 非線形SNR計算部
33 GSNR計算部
34 パワー制御部
50 ネットワーク制御装置
100 光伝送システム

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15