(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163362
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】光伝送システムおよび光伝送装置
(51)【国際特許分類】
H04B 10/294 20130101AFI20231102BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20231102BHJP
H04B 10/079 20130101ALI20231102BHJP
【FI】
H04B10/294
H04J14/02 121
H04B10/079 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074218
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】合中 直樹
(72)【発明者】
【氏名】歩行田 祥人
(72)【発明者】
【氏名】山内 智裕
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA55
5K102AD01
5K102LA07
5K102LA11
5K102LA24
5K102LA33
5K102LA52
5K102MA03
5K102MB09
5K102MC17
5K102MD01
5K102MD04
5K102MD07
5K102MH04
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH17
5K102MH22
5K102PH42
5K102RB12
(57)【要約】
【課題】WDM信号を伝送する光伝送システムにおいて、送信光パワー制御に起因する光パワーの変動を抑制する。
【解決手段】WDM信号を送信する光伝送装置は、制御部、光回路、および収束判定部を備える。制御部は、受信ノードにおいて検出されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す光パワー情報に基づいて、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する。光回路は、制御部からの制御信号に基づいてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する。収束判定部は、光パワー情報に基づいて、WDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか判定する。各波長チャネルの光パワーが収束していないときは、制御部は、第1の周期で光回路を制御する。各波長チャネルの光パワーが収束しているときは、制御部は、第1の周期より長い第2の周期で光回路を制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する光伝送システムであって、
前記第2の光伝送装置において、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する光チャネルモニタと、
前記第1の光伝送装置において、前記光チャネルモニタによる検出結果に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する制御部と、
前記第1の光伝送装置において、前記制御部からの制御信号に基づいて前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する光回路と、
前記光チャネルモニタによる検出結果に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか否かを判定する収束判定部と、を備え、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束していないときは、前記制御部は、第1の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御し、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束しているときは、前記制御部は、前記第1の周期より長い第2の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項2】
前記光回路は、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整するチャネルパワー調整デバイスと、
前記チャネルパワー調整デバイスから出力されるWDM信号の光パワーを調整する光増幅回路と、を備え、
前記光増幅回路は、
前記チャネルパワー調整デバイスから出力されるWDM信号を増幅する第1の光アンプと、
前記第1の光アンプから出力されるWDM信号を減衰させる可変光減衰器と、
前記可変光減衰器から出力されるWDM信号を増幅する第2の光アンプと、を備え、
前記制御部により生成される制御信号は、前記チャネルパワー調整デバイスにおける各波長チャネルの損失量を表す第1の制御信号、および、前記可変光減衰器の減衰量を表す第2の制御信号を含み、
前記チャネルパワー調整デバイスは、前記第1の制御信号に従って各波長チャネルの光パワーを調整し、
前記可変光減衰器は、前記第2の制御信号に従って前記第1の光アンプから出力されるWDM信号を減衰させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光伝送システム。
【請求項3】
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが非収束状態から収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第2の制御信号を用いて前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期を前記第1の周期から前記第2の周期に変更し、
前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期が前記第1の周期から前記第2の周期に変更されたときから所定時間経過後に、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束していれば、前記制御部は、前記第1の制御信号を用いて前記チャネルパワー調整デバイスにおける各波長チャネルの損失量を調整する制御の周期を前記第1の周期から前記第2の周期に変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項4】
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが収束状態から非収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第2の制御信号を用いて前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期を前記第2の周期から前記第1の周期に変更し、
前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期が前記第2の周期から前記第1の周期に変更されたときから所定時間経過後に、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束していなければ、前記制御部は、前記第1の制御信号を用いて前記チャネルパワー調整デバイスにおける各波長チャネルの損失量を調整する制御の周期を前記第2の周期から前記第1の周期に変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項5】
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが非収束状態から収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第1の制御信号を用いて前記チャネルパワー調整デバイスにおける各波長チャネルの損失量を調整する制御の周期を前記第1の周期から前記第2の周期に変更し、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが収束状態から非収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第1の制御信号を用いて前記チャネルパワー調整デバイスにおける各波長チャネルの損失量を調整する制御の周期を前記第2の周期から前記第1の周期に変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項6】
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが非収束状態から収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第2の制御信号を用いて前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期を前記第1の周期から前記第2の周期に変更し、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが収束状態から非収束状態に遷移したときに、前記制御部は、前記第2の制御信号を用いて前記可変光減衰器の減衰量を調整する制御の周期を前記第2の周期から前記第1の周期に変更する
ことを特徴とする請求項2に記載の光伝送システム。
【請求項7】
第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する光伝送システムであって、
前記WDM信号の各波長チャネルのGSNRを計算するGSNR計算部と、
前記第1の光伝送装置において、前記GSNR計算部により計算されるGSNRに基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する制御部と、
前記第1の光伝送装置において、前記制御部からの制御信号に基づいて前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する光回路と、
前記WDM信号の各波長チャネルのGSNRが目標レベルに収束しているか否かを判定する収束判定部と、を備え、
前記WDM信号の各波長チャネルのGSNRが前記目標レベルに収束していないときは、前記制御部は、第1の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御し、
前記WDM信号の各波長チャネルのGSNRが前記目標レベルに収束しているときは、前記制御部は、前記第1の周期より長い第2の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御する
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項8】
光ファイバ伝送路を介して受信ノードにWDM信号を送信する光伝送装置であって、
前記受信ノードにおいて検出される前記WDM信号の各波長チャネルの受信光パワーを表す光パワー情報に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する制御部と、
前記制御部からの制御信号に基づいて前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する光回路と、
前記光パワー情報に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか否かを判定する収束判定部と、を備え、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束していないときは、前記制御部は、第1の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御し、
前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束しているときは、前記制御部は、前記第1の周期より長い第2の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御する
ことを特徴とする光伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WDM信号を伝送する光伝送システムおよび光伝送装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
大容量の光通信を提供するために、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)が実用化されている。WDMは、複数の波長チャネルを使用して信号を伝送する。したがって、多数の波長チャネルを多重化することで大容量の光通信が実現される。
【0003】
WDM信号を伝送する光伝送システムにおいては、多くのケースにおいて、各ノードにROADM(Reconfigurable Optical Add-Drop Multiplexer)が実装される。ROADMは、波長選択スイッチ(WSS)および光増幅回路を備え、WDM信号の各波長チャネルを処理する。WSSは、WDM信号から所望の波長チャネルの光信号を分岐し、WDM信号の空波長チャネルに光信号を挿入する。光増幅回路は、WSSから出力されるWDM信号を増幅する。なお、光信号の分岐や挿入が不要の場合、WSSの代わりにDGE(Dynamic Gain Equalizer)を備えてもよい。
【0004】
WDM信号の各波長チャネルの光パワーは、波長依存性を有する。このため、この波長依存性の影響を抑制するために、プリエンファシス制御およびスロープ制御が行われることがある。例えば、受信ノードにおいて各波長チャネルの光パワーがモニタされる。送信ノードは、受信ノードにおいて得られるモニタ結果に基づいて、各波長チャネルの送信光パワーを制御する。このとき、送信ノードは、光ファイバ伝送路の出力光パワー(即ち、受信ノードにおける受信光パワー)が波長に対してフラットになるように、WSSおよび光増幅回路を制御する。或いは、受信ノードにおいて受信光増幅器の出力光パワーが波長に対してフラットになるように制御してもよい。この結果、受信ノードにおける各波長チャネルの受信光パワーが波長に対してフラットになり、WDM信号の品質が改善する。
【0005】
なお、受信側で測定されるOSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)等の受信情報に基づいて、各波長の光信号についての伝送特性のばらつきを抑えるWDM光通信システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、送信ノードは、受信ノードにより検出される情報に基づいてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する。ただし、大規模ネットワークにおいては、多数のROADMが接続されている。このため、あるROADMノードで行われた光パワー制御が、他のROADMノードで行われる光パワー制御に影響を及ぼすおそれがある。即ち、複数のROAMDノードの光パワー制御が互いに干渉するおそれがある。例えば、複数のROADMノードが「光パワーを増加させる必要がある」と判定し、それら複数のROADMノードが同時に光パワーを増加させると、光パワーが過剰に大きくなることがある。すなわち、定常時に予期しない大きな光パワー変動が発生することがある。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、WDM信号を伝送する光伝送システムにおいて、送信光パワー制御に起因する光パワーの変動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様の光伝送システムは、第1の光伝送装置から光ファイバ伝送路を介して第2の光伝送装置にWDM信号を伝送する。光伝送システムは、前記第2の光伝送装置において前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する光チャネルモニタと、前記第1の光伝送装置において、前記光チャネルモニタによる検出結果に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する制御部と、前記第1の光伝送装置において、前記制御部からの制御信号に基づいて前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する光回路と、前記光チャネルモニタによる検出結果に基づいて、前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか否かを判定する収束判定部と、を備える。前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束していないときは、前記制御部は、第1の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御する。前記WDM信号の各波長チャネルの光パワーが前記目標レベルに収束しているときは、前記制御部は、前記第1の周期より長い第2の周期で前記制御信号を用いて前記光回路を制御する。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、WDM信号を伝送する光伝送システムにおいて、送信光パワー制御に起因する光パワーの変動が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係わる光通信ネットワークの一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す図である。
【
図6】収束判定部の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】判定結果取得部および周期選択部の処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図8】収束判定部の処理のバリエーションを示すフローチャートである。
【
図9】収束判定部が
図8に示す手順を実行するときの判定結果取得部および周期選択部の処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図10】収束判定部の処理のさらに他のバリエーションを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の実施形態に係わる光伝送システムの第1のバリエーションを示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に係わる光伝送システムの第2のバリエーションを示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係わる光伝送システムの第3のバリエーションを示す図である。
【
図14】下流局におけるGSNRの一例を示す図である。
【
図15】GSNRに基づいて送信光パワーを制御する光伝送システムの一例を示す図である。
【
図16】波長チャネルの線形SNRを計算する方法の実施例を示す図である。
【
図17】GSNRを算出する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係わる光通信ネットワークの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光通信ネットワーク100は、複数のROADM1(1a~1n)を備える。複数のROADM1は、光ファイバ伝送路2により接続されている。各ROADM1は、WDM信号を伝送する。例えば、ROADM1aにより生成されるWDM信号は、ROADM1b~1dを介してROADM1nまで伝送される。ただし、各ROADM1は、受信WDM信号から所望の波長チャネルの光信号を分岐することができる。また、各ROADM1は、WDM信号の空波長チャネルに光信号を挿入することができる。なお、ROADMは、光伝送装置の一例である。
【0013】
図2は、光伝送システムの一例を示す。
図2に示す光伝送システムは、
図1に示す複数のROADM1のうちの互いに隣接する2個のROADMにより構成される。
図2に示す例では、光伝送システムは、ROADM1aおよびROADM1bから構成される。そして、ROADM1aから光ファイバ伝送路2xを介してROADM1bにWDM信号が伝送されるものとする。よって、以下の記載では、ROADM1aを「上流局10」と呼ぶことがある。また、ROADM1bを「下流局50(又は、受信ノード)」と呼ぶことがある。
【0014】
上流局10は、WSS11、光増幅回路12、受光器(PD)13および14、AGC制御部15、励起光源(LD)16および17、OSC受信部18、パワー制御情報生成部19、WSS制御部20、OCM21、およびVOA制御部22を備える。なお、上流局10は、
図2に示していない他の素子、回路、または機能を備えてもよい。下流局50は、OCM51およびOSC送信部52を備える。なお、下流局50は、
図2に示していない他の素子、回路、または機能を備えてもよい。
【0015】
WSS11は、WSS制御部20から与えられる指示に応じて、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する。なお、WSS11は、WSS制御部20から与えられる指示に応じてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する光回路の一例である。すなわち、上流局10は、WSS11の代わりに、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する他の形態の光回路を備えてもよい。
【0016】
光増幅回路12は、WSS11から出力されるWDM信号を増幅する。光増幅回路12は、この実施例では、光アンプ12a、可変光減衰器(VOA)12b、および光アンプ12cを備える。光アンプ12aは、WSS11から出力されるWDM信号を増幅する。VOA12bは、光アンプ12aから出力されるWDM信号を減衰させる。光アンプ12cは、VOA12bから出力されるWDM信号を増幅する。光アンプ12aおよび12cは、例えば、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)である。
【0017】
光アンプ12aおよび12cの利得は、AGC(Automatic Gain Control)により決定される。すなわち、受光器13は、光増幅回路12に入力するWDM信号を電気信号に変換する。受光器14は、光増幅回路12から出力されるWDM信号を電気信号に変換する。AGC制御部15は、受光器13の出力信号および受光器14の出力信号に基づいて、WDM信号に対する光増幅回路12の利得が目標値に近づくように、励起光源16および17を制御する。励起光源16および17は、それぞれ、AGC制御部15から与えられる信号に応じて励起光を生成する。なお、励起光源16により生成される励起光は光アンプ12aに与えられ、励起光源17により生成される励起光は光アンプ12cに与えられる。VOA12bにおけるWDM信号に対する減衰量は、VOA制御部22により制御される。
【0018】
上流局10から出力されるWDM信号は、光ファイバ伝送路2xを介して伝搬する。そして、下流局50は、光ファイバ伝送路2xを介してこのWDM信号を受信する。
【0019】
下流局50において、OCM51は、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する。すなわち、OCM51は、下流局50が受信するWDM信号のスペクトルを検出できる。OSC送信部52は、OSC(Optical Supervisory Channel)を利用して、OCM51により検出される光パワーを表す情報を上流局10に送信する。OSCは、例えば、データを伝送するための波長チャネルとは別に設けられる所定の波長チャネルにより実現される。なお、以下の記載では、OCM51により検出される光パワーを表す情報を「光パワー情報」と呼ぶことがある。また、OSCは、下流局50から上流局10に光信号を伝送する光ファイバ伝送路2yに設定される。
【0020】
上流局10において、OSC受信部18は、OSCから光パワー情報を抽出する。光パワー情報は、パワー制御情報生成部19に導かれる。
【0021】
パワー制御情報生成部19は、下流局50から送られてくる光パワー情報に基づいてパワー制御情報を生成する。パワー制御情報は、WDM信号の各波長チャネルの損失量を表すWSS損失情報および波長に対するWDM信号のチルトを表すチルト情報を含む。WSS損失情報はWSS制御部20に与えられる。また、チルト情報はVOA制御部22に与えられる。
【0022】
WSS制御部20は、WSS損失情報に従ってWSS11を制御する。このとき、OCM21は、WSS11に入力するWDM信号の各波長チャネルの光パワー、及び、WSS11から出力されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーを検出する。また、WSS制御部20は、OCM21による測定に基づいて、WSS11における各波長チャネルの損失をモニタする。そして、WSS制御部20は、WSS11における各波長チャネルの損失が、WSS損失情報が表す損失量と一致するように、WSS11を制御する。
【0023】
VOA制御部22は、チルト情報に従ってVOA12bを制御する。ここで、VOA12bが1組の光アンプ(12a、12c)の間に設けられる構成において、光アンプ12a、12cに対してAGC制御を行いながら、VOA12bを用いてWDM信号の光パワーを調整すると、下流局50が受信するWDM信号のチルトが変化する。したがって、下流局50において生成される光パワー情報に基づいてVOA12bを制御すことにより、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーをフラットにすることができる。
【0024】
図3は、送信光パワー制御の一例を示す。この例では、WDM信号は、波長チャネルCH1~CH8から構成される。そして、
図3(a)に示すように、上流局10から送信される波長チャネルCH1~CH8の光パワーが互いに同じであるときに、
図3(b)に示すWDM信号が下流局50に到着するものとする。
【0025】
この場合、下流局50において、OCM51を用いてWDM信号をモニタすることで、
図3(b)に示す光パワー情報が得られる。そして、上流局10のパワー制御情報生成部19は、下流局50からこの光パワー情報を取得する。
【0026】
パワー制御情報生成部19は、下流局50から受信する光パワー情報に基づいてパワー制御情報を生成する。具体的には、パワー制御情報生成部19は、波長に対するWDM信号のチルト(即ち、傾き)をフラットに近づけるためのチルト情報を生成する。ここで、VOA12bを用いてWDM信号の光パワーを調整すると、下流局50が受信するWDM信号のチルトが変化する。すなわち、パワー制御情報生成部19は、
図3(c)に示すように、下流局50が受信するWDM信号のチルトをフラットに近づけることができる。
【0027】
ただし、WDM信号のチルトを制御するだけでは、
図3(d)に示すように、下流局50が受信するWDM信号の波長チャネルCH1~CH8の光パワーがばらついていることがある。このため、各波長チャネルの光パワーのばらつきは、WSS11を用いて補償される。すなわち、パワー制御情報生成部19は、光パワー情報に基づいて、WSS11における各波長チャネルの損失を制御するWSS損失情報を生成する。
【0028】
例えば、
図3(d)に示す例では、波長チャネルCH1、CH3、CH6~CH8の受信光パワーが平均パワーより大きく、波長チャネルCH2、CH4~CH5の受信光パワーが平均パワーより小さい。この場合、パワー制御情報生成部19は、波長チャネルCH1、CH3、CH6~CH8の損失を大きくし、波長チャネルCH2、CH4~CH5の損失を小さくするWSS制御情報を生成する。そして、WSS11は、このWSS制御情報に従って各波長チャネルの光パワーを制御する。この結果、WSS11から出力されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーは、
図3(e)に示すように調整される。
【0029】
このように、上流局10は、下流局50から受信する光パワー情報に基づいて、WSS11における各波長チャネルの損失およびVOA12bの減衰量を制御する。この結果、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーは均一になり、各波長チャネルの品質が安定する。
【0030】
なお、VOA12bを用いることなく、WSS11のみを使用して受信WDM信号の各波長チャネルの光パワーを均一にすることも可能である。ただし、この場合、WSS11において損失が大きくなり、OSNRが低下しやすくなる。他方、VOA12bの減衰量を調整することで波長に対するWDM信号のチルトを制御する方法は、OSNRの劣化が少ない。したがって、
図2に示すように、WSS11およびVOA12bを制御することで受信WDM信号の各波長チャネルの光パワーを均一にする構成が好ましい。
【0031】
ところで、パワー制御情報生成部19は、例えば、所定の周期で、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。ただし、制御周期を短くすると、複数のROAMDノードの光パワー制御が互いに干渉するおそれがある。例えば、
図1に示すROADM1aからROADM1nにWDM信号を伝送するケースでは、ROADM1bの受信WDM信号を等化するROADM1aの送信パワー制御、ROADM1cの受信WDM信号を等化するROADM1bの送信パワー制御、ROADM1dの受信WDM信号を等化するROADM1cの送信パワー制御が互いに影響を及ぼすことで、定常時に予期しない大きな光パワー変動が発生するおそれがある。他方、制御周期を長くすると、伝送条件が変化したときに、各ROADMノードにおける受信WDM信号が等化されるまでの時間が長くなる。この場合、長い期間にわたって、幾つかの波長チャネルの品質が低い状態が継続するおそれがある。本発明の実施形態に係わる光伝送装置または光伝送システムは、このトレードオフを緩和する。
【0032】
図4は、本発明の実施形態に係わる光伝送システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光伝送システム200は、
図1に示す複数のROADM1のうちの互いに隣接する2個のROADMにより構成される。
図4に示す例では、光伝送システム200は、ROADM1aおよびROADM1bから構成される。そして、ROADM1aから光ファイバ伝送路2xを介してROADM1bにWDM信号が伝送される。よって、以下の記載では、ROADM1aを「上流局10」と呼ぶことがある。また、ROADM1bを「下流局50(または、受信ノード)」と呼ぶことがある。
【0033】
なお、上流局10において、WSS11および光増幅回路12は、WSS制御部20およびVOA制御部22から与えられる御信号に基づいてWDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整する光回路の一例である。この場合、WSS制御部20およびVOA制御部22は、下流局50に実装されるOCM51による検出結果に基づいて、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する制御信号を生成する制御部の一例である。
【0034】
光伝送システムの構成は、
図2および
図4において概ね同じである。ただし、本発明の実施形態に係わる光伝送システム200においては、上流局10は、
図2に示す構成に加えて、収束判定部31、判定結果取得部32、周期選択部33、判定結果取得部34、および周期選択部35を備える。
【0035】
収束判定部31は、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す光パワー情報に基づいて、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系が収束しているか否かを判定する。このとき、収束判定部31は、光パワー情報に基づいて、各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか否かを判定する。ここで、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーは、OCM51により検出される。また、光パワー情報は、OSCを利用して、下流局50から上流局10に送信される。そして、収束判定部31は、OSCから光パワー情報を抽出することにより、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを認識する。
【0036】
図5は、収束判定について説明する図である。ここで、
図5は、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを示している。目標レベルは、この実施例では、各波長チャネルの光パワーの平均である。収束範囲は、目標レベルに対して所定の誤差を付加することで設定される。
【0037】
収束判定部31は、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内であるか否かを判定する。
図5に示す例では、波長チャネルCH2の光パワーが収束範囲の上限値より大きい。よって、この場合、収束判定部31は、各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束していないと判定する。すなわち、収束判定部31は、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系が未だ収束していないと判定する。なお、収束判定部31は、所定の周期(例えば、1~5秒程度)で収束判定を行う。
【0038】
図4~
図5に示す実施例では、収束判定部31は、受信WDM信号の各波長チャネルの光パワーをモニタするが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、各ノードが受信WDM信号を増幅する受信光増幅器を備えるときは、収束判定部31は、その受信光増幅器から出力されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーをモニタしてもよい。
【0039】
判定結果取得部32は、収束判定部31による判定結果を取得する。そして、判定結果が変化すると、判定結果取得部32は、周期選択部33に切替え要求を送信する。具体的には、制御系の状態が収束状態から非収束状態に変化すると、判定結果取得部32は、周期選択部33に対して低速モードから高速モードへの切替えを要求する。また、制御系の状態が非収束状態から収束状態に変化すると、判定結果取得部32は、周期選択部33に対して高速モードから低速モードへの切替えを要求する。
【0040】
周期選択部33は、判定結果取得部32からの要求に従って、WSS制御部20の動作周期を制御する。例えば、低速モードから高速モードへの切替え要求を受信したときは、周期選択部33は、第1の周期(例えば、10秒)でWSS制御部20を動作させる。また、高速モードから低速モードへの切替え要求を受信したときは、周期選択部33は、第1の周期より長い第2の周期(例えば、10分)でWSS制御部20を動作させる。そして、WSS制御部20は、周期選択部33が選択した周期でWSS11を制御する。
【0041】
判定結果取得部34および周期選択部35の動作は、判定結果取得部32および周期選択部33の動作と実質的に同じである。すなわち、判定結果が変化すると、判定結果取得部34は、周期選択部35に切替え要求を送信する。そして、周期選択部35は、判定結果取得部34からの要求に従って、VOA制御部22の動作周期を制御する。VOA制御部22は、周期選択部35が選択した周期でVOA12bを制御する。
【0042】
このように、光伝送システム200においては、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束していないときは、高速モードが選択され、WDM信号の送信光パワーを調整する処理の頻度が高くなる。したがって、光伝送システム200の伝送条件が変化した場合であっても、各ROADMノードにおける受信WDM信号が等化されるまでの時間は短い。また、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束すると、低速モードが選択され、WDM信号の送信光パワーを調整する処理の頻度が低くなる。したがって、複数のROAMDノードの光パワー制御が互いに干渉しにくくなり、予期しない光パワー変動が抑制される。
【0043】
なお、WSS制御部20およびVOA制御部22は、互いに連携して動作することが好ましい。例えば、WSS制御部20およびVOA制御部22は、対応する光回路を交互に制御してもよい。
【0044】
また、
図4に示す実施例では、各ノードに設けられるROADMがWSSを備えるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、WDM信号を伝送する光伝送装置は、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを調整するチャネルパワー調整デバイスを備えていればよい。ここで、WSSは、チャネルパワー調整デバイスの一例である。また、チャネルパワー調整デバイスとしてDGEを使用してもよい。
【0045】
図6は、収束判定部31の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、ROADM1が動作しているときは、継続的に実行される。なお、このフローチャートの開始時において、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系は高速モードで動作するものとする。
【0046】
S1において、収束判定部31は、下流局50において生成される光パワー情報を受信する。光パワー情報は、上述したように、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す。
【0047】
S2において、収束判定部31は、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内か否かを判定する。収束範囲については、
図5を参照して説明した通りである。ここで、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に収束していないときは、収束判定部31の処理はS1に戻る。したがって、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に収束するまでの期間は、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系は高速モードで動作する。そして、すべての波長チャネルの光パワーが収束範囲内に収束すると、収束判定部31は、S3において、判定結果取得部32、34に収束通知を送信する。なお、後で説明するが、収束判定部31が収束通知を発行すると、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系の動作モードが高速モードから低速モードに切り替わる。
【0048】
S4において、収束判定部31は光パワー情報を受信する。S5において、収束判定部31は、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れているか否かを判定する。ここで、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に収束していれば、収束判定部31の処理はS4に戻る。即ち、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に収束している期間は、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系は低速モードで動作する。そして、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れると、収束判定部31は、S6において、判定結果取得部32、34に非収束通知を送信する。なお、後で説明するが、収束判定部31が非収束通知を発行すると、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系の動作モードが低速モードから高速モードに切り替わる。
【0049】
図7は、判定結果取得部および周期選択部の処理の一例を示すシーケンス図である。この実施例では、ROADM1が動作を開始するときに、周期選択部33、35は高速モードを選択する。すなわち、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系は、高速モードで動作を開始する。
【0050】
判定結果取得部32、34は、収束判定部31から送信される通知を待ち受ける。そして、
図6に示すS3において収束判定部31が収束通知を発行すると、判定結果取得部32、34は、それぞれ周期選択部33、35に対して切替え要求を送信する。この切替え要求は、高速モードから低速モードへの切替えを要求する。
【0051】
周期選択部33は、この切替え要求を受信すると、WSS制御部20の動作モードを高速モードから低速モードに切り替える。すなわち、周期選択部33は、第2の周期でWSS11を制御することを表す指示をWSS制御部20に与える。同様に、周期選択部35は、この切替え要求を受信すると、VOA制御部22の動作モードを高速モードから低速モードに切り替える。すなわち、周期選択部35は、第2の周期でVOA12bを制御することを表す指示をVOA制御部22に与える。
【0052】
続いて、判定結果取得部32、34は、収束判定部31から送信される通知を待ち受ける。そして、
図6に示すS6において収束判定部31が非収束通知を発行すると、判定結果取得部32、34は、それぞれ周期選択部33、35に対して切替え要求を送信する。この切替え要求は、低速モードから高速モードへの切替えを要求する。
【0053】
周期選択部33は、この切替え要求を受信すると、WSS制御部20の動作モードを低速モードから高速モードに切り替える。すなわち、周期選択部33は、第2の周期よりも短い第1の周期でWSS11を制御することを表す指示をWSS制御部20に与える。同様に、周期選択部35は、この切替え要求を受信すると、VOA制御部22の動作モードを低速モードから高速モードに切り替える。すなわち、周期選択部35は、第1の周期でVOA12bを制御することを表す指示をVOA制御部22に与える。
【0054】
図8は、収束判定部31の処理のバリエーションを示すフローチャートである。なお、
図6に示す手順では、WSS11の制御周期およびVOA12bの制御周期が同時に切り替わる。これに対して、
図8に示す手順では、WSS11の制御周期を切り替えるタイミングとVOA12bの制御周期を切り替えるタイミングとが互いに異なっている。なお、
図8に示すフローチャートでは、収束判定部31が光パワー情報を受信する処理は省略されている。
【0055】
S11において、収束判定部31は、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内か否かを判定する。そして、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に入っていれば、収束判定部31は、S12において、VOA収束通知を発行する。なお、収束判定部31がVOA収束通知を発行すると、VOA制御部22の動作モードが高速モードから低速モードに切り替わる。この後、収束判定部31は、S13において、所定時間の経過を待つ。
【0056】
S14において、収束判定部31は、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内か否かを判定する。すなわち、低速モードでVOA12bが制御されている状況で、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に保持されているか否かを判定する。そして、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に保持されていれば、収束判定部31は、S15において、WSS収束通知を発行する。なお、収束判定部31がWSS収束通知を発行すると、WSS制御部20の動作モードが高速モードから低速モードに切り替わる。
【0057】
S16において、収束判定部31は、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れているか否かを判定する。そして、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れていると、収束判定部31は、S17において、VOA非収束通知を発行する。なお、収束判定部31がVOA非収束通知を発行すると、VOA制御部22の動作モードが低速モードから高速モードに切り替わる。この後、収束判定部31は、S18において、所定時間の経過を待つ。なお、S14において1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れていると判定されたときも、収束判定部31は、S17において、VOA非収束通知を発行する。
【0058】
S19において、収束判定部31は、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れているか否かを判定する。すなわち、高速モードでVOA12bが制御されている状況で、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れているか否かを判定する。そして、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れているときは、収束判定部31は、S20において、WSS非収束通知を発行する。なお、収束判定部31がWSS非収束通知を発行すると、WSS制御部20の動作モードが低速モードから高速モードに切り替わる。
【0059】
収束判定部31が
図8に示す処理を実行するとき、判定結果取得部および周期選択部は
図9に示す処理を実行する。
図7に示す手順および
図9に示す手順は概ね同じである。ただし、判定結果取得部34および周期選択部35は、S12においてVOA収束通知が発行されたときにVOA制御部22の動作モードを高速モードから低速モードに切り替え、S17においてVOA非収束通知が発行されたときにVOA制御部22の動作モードを低速モードから高速モードに切り替える。また、判定結果取得部32および周期選択部33は、S15においてWSS収束通知が発行されたときにWSS制御部20の動作モードを高速モードから低速モードに切り替え、S20においてWSS非収束通知が発行されたときにWSS制御部20の動作モードを低速モードから高速モードに切り替える。
【0060】
図10は、収束判定部31の処理のさらに他のバリエーションを示すフローチャートである。
図8~
図9に示す実施例では、WSS11の制御周期の切替えおよびVOA12bの制御周期の切替えが互いに連動している。これに対して、
図10に示す実施例では、WSS11の制御周期およびVOA12bの制御周期が互いに独立して切り替えられる。
【0061】
WSS11の制御周期は、
図10(a)に示すフローチャートのS51~S55に従って制御される。すなわち、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に入っていれば、収束判定部31は、WSS収束通知を発行する。また、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れると、収束判定部31は、WSS非収束通知を発行する。判定結果取得部32および周期選択部33の動作は、
図9に示す通りである。したがって、収束判定部31がWSS収束通知を発行すると、WSS制御部20の動作モードが高速モードから低速モードに切り替えられる。また、収束判定部31がWSS非収束通知を発行すると、WSS制御部20の動作モードが低速モードから高速モードに切り替えられる。
【0062】
VOA12bの制御周期は、
図10(b)に示すフローチャートのS61~S65に従って制御される。すなわち、各波長チャネルの光パワーが収束範囲内に入っていれば、収束判定部31は、VOA収束通知を発行する。また、1以上の波長チャネルの光パワーが収束範囲から外れると、収束判定部31は、VOA非収束通知を発行する。判定結果取得部34および周期選択部35の動作は、
図9に示す通りである。したがって、収束判定部31がVOA収束通知を発行すると、VOA制御部22の動作モードが高速モードから低速モードに切り替えられる。また、収束判定部31がVOA非収束通知を発行すると、VOA制御部22の動作モードが低速モードから高速モードに切り替えられる。なお、収束判定部31は、
図10(a)に示す処理および
図10(b)に示す処理を独立して実行することができる。
【0063】
<構成のバリエーション>
図4に示す構成では、上流局10がパワー制御情報(WSS損失情報およびチルト情報を含む)を生成する機能および制御系の収束を判定する機能を備えるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。例えば、本発明の実施形態に係わる光伝送システムは、
図11~
図13に示す構成であってもよい。
【0064】
図11に示す構成では、下流局50がパワー制御情報生成部19を備える。この場合、下流局50においてパワー制御情報が生成される。下流局50は、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す光パワー情報に加えてパワー制御情報を上流局10に送信する。そして、上流局10は、下流局50から受信する光パワー情報およびパワー制御情報に基づいてWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。ただし、制御系が収束しているか否かの判定は、上流局10に実装される収束判定部31により行われる。
【0065】
図12に示す構成では、下流局50が収束判定部31を備える。この場合、制御系が収束しているか否かの判定が下流局50において行われる。下流局50は、光パワー情報に加えて判定結果を上流局10に送信する。そして、上流局10は、下流局50から受信する光パワー情報および判定結果に基づいてWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。ただし、パワー制御情報は、上流局10に実装されるパワー制御情報生成部19により生成される。
【0066】
図13に示す構成では、下流局50がパワー制御情報生成部19および収束判定部31を備える。この場合、下流局50においてパワー制御情報が生成され、また、制御系が収束しているか否かの判定が行われる。下流局50は、光パワー情報、パワー制御情報、および判定結果を上流局10に送信する。そして、上流局10は、下流局50から受信する光パワー情報、パワー制御情報、および判定結果に基づいてWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。
【0067】
<GSNRに基づく送信光パワー制御>
上述した実施例では、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーが均等になるように、上流局10において送信光パワー制御が行われる。ただし、各波長チャネルの品質を均等にするためには、各波長チャネルの光信号対雑音比(OSNR)またはGSNR(Generalized SNR)に基づいて送信光パワー制御を行うことが好ましいことがある。以下の実施形態では、各波長チャネルのGSNRが均等になるように送信光パワー制御が行われる。
【0068】
GSNRは(1)式で表される。
【数1】
SNR_Lは、光信号と線形雑音との比を表し、OSNRから算出可能である。また、SNR_NLは、光信号と非線形雑音との比を表す。
【0069】
図14は、下流局50におけるGSNRの一例を示す。
図14(a)に示す例では、上流局10から送信されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーは均一である。但し、WDM信号が光ファイバ伝送路を介して伝搬するとき、線形雑音および非線形雑音が発生する。このため、下流局50において、GSNRは波長に対してフラットにならない。
図14(a)に示す例では、Cバンドの中の短波長領域でGSNRが最も小さくなっている。ここで、GSNRが小さい波長チャネルにおいてエラーが発生しやすい。よって、最小GSNRを大きくすることが重要である。
【0070】
上流局10は、上述したように、下流局50により生成される光パワー情報に基づいてWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。このとき、上流局10は、下流局50における最小GSNRを大きくするようにWDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御することが好ましい。例えば、上流局10は、
図14(b)に示すように、波長に対してGSNRがフラットになるように、WDM信号の各波長チャネルの光パワーを制御する。そうすると、最小GSNRが大きくなり、WDM信号の品質が改善する。
【0071】
図15は、GSNRに基づいて送信光パワーを制御する光伝送システムの一例を示す。この実施例では、上流局10は、
図4に示す構成に加えて、OCM41およびGSNR計算部42を備える。なお、下流局50の構成は、
図4および
図15において実質的に同じである。
【0072】
OCM41は、上流局10から光ファイバ伝送路2に出力されるWDM信号の各波長チャネルの光パワーをモニタする。OCM41のモニタ結果は、GSNR計算部42に通知される。GSNR計算部42は、WDM信号の各波長チャネルのGSNRを計算する。GSNRは、上述したように、線形SNRおよび非線形SNRから算出される。なお、線形SNRは、厳密にはOSNRと同じではないが、この実施例では、OSNRと等価であるものとする。
【0073】
線形SNRは、下流局50から受信する光パワー情報に基づいて計算される。光パワー情報は、上述したように、下流局50が受信するWDM信号の各波長チャネルの光パワーを表す。すなわち、光パワー情報は、下流局50が受信するWDM信号のスペクトルを表す。
【0074】
図16は、波長チャネルの線形SNRを計算する方法の実施例を示す。
図16(a)に示す方法では、GSNR計算部42は、波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する(測定1)。これにより、波長チャネルiの信号の光パワーP_CH(i)が検出される。また、GSNR計算部42は、波長λ0からΔλだけシフトした波長の光パワーを検出する(測定2)。λ0+Δλは、信号成分が十分に小さい波長である。よって、λ0+Δλにおいて検出される光パワーは、ASE雑音のパワーに相当する。すなわち、ASE雑音の光パワーP_ASEが検出される。そして、GSNR計算部42は、(2)式を用いて波長チャネルiの線形SNRを計算する。
【数2】
【0075】
図16(a)に示す方法によれば、データ信号を送信しながら線形SNRを算出することができる。ただし、WDM信号の波長チャネルの間隔が狭いケースでは、ASE雑音の光パワーを精度よく測定することは困難である。
【0076】
図16(b)に示す方法では、信号が送信されている状態で波長チャネルの中心波長λ0の光パワーを検出する(測定1)。これにより、波長チャネルiの信号の光パワーが検出される。また、信号を停止した状態で波長λ0の光パワーを検出する(測定2)。これにより、ASE雑音の光パワーが検出される。そして、GSNR計算部42は、(2)式を用いて波長チャネルiの線形SNRを計算する。このように、GSNR計算部42は、下流局50から受信する光パワー情報に基づいて、各波長チャネルの線形SNRを計算する。また、増幅器への入力パワー及び、NF(Noise Figure)から線形SNRを算出してもよい。
【0077】
各波長チャネルの非線形SNRは、上流局10に実装されるOCM41により検出される光パワーに基づいて計算される。ここで、非線形雑音の強度は、光ファイバ伝送路2に入力される光のパワーの3乗に比例する。すなわち、非線形雑音P_NLIは、(3)式で表される。
【0078】
【数3】
「η」は、非線形SNRを計算するための比例係数を表す。「P_CH(T)」は、測定対象波長チャネルの送信光パワーを表す。なお、この関係は、例えば、P. Poggiolini, Analytical modeling of non-linear propagation in coherent systems, in Proc. OFC 2013, Anaheim, CA, Mar. 2013.に記載されている。
【0079】
ここで、波長チャネルの帯域幅が一定であれば、単位帯域幅(例えば、12.5GHz)当たりの非線形雑音は(4)式で表される。
【数4】
「ηd」は、比例係数を表す。「B_CH」は、波長チャネルの帯域幅を表す。
【0080】
したがって、非線形SNRは(5)式で表される。
【数5】
【0081】
ここで、比例係数ηdは、既知であるものとする。また、波長チャネルの帯域幅は既知である。よって、OCM41を用いて波長チャネルの光パワーP_CH(T)を検出すれば、非線形SNRが算出される。なお、「P_CH(T)/B_CH」は、単位帯域幅当たりの光ファイバ入力パワーに相当する。
【0082】
GSNR計算部42は、波長チャネルごとに、線形SNRおよび非線形SNRに基づいてGSNRを計算する。この実施例では、GSNRは(6)式で算出される。
【数6】
【0083】
図17は、GSNRを算出する方法の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、この実施例では、上流局10に実装されるGSNR計算部42により実行される。
【0084】
S31において、GSNR計算部42は、下流局50から光パワー情報を取得する。S32において、GSNR計算部42は、光パワー情報に基づいて各波長チャネルの線形SNRを計算する。S32において、GSNR計算部42は、OCM41を用いて各波長チャネルの送信光パワーを測定する。S34において、GSNR計算部42は、S33の測定結果に基づいて各波長チャネルの非線形SNRを計算する。そして、S35において、GSNR計算部42は、各波長チャネルについて(6)式に従ってGSNRを計算する。
【0085】
図15の説明に戻る。パワー制御情報生成部19は、GSNR計算部42により計算される各波長チャネルのGSNRに基づいて、WDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御する。具体的には、パワー制御情報生成部19は、例えば、各波長チャネルのGSNRのばらつきを小さくするようにWDM信号の各波長チャネルの送信光パワーを制御してもよい。このとき、パワー制御情報生成部19は、WSS11における各波長チャネルに対する減衰量を制御すると共に、VOA12bの減衰量を制御する。
【0086】
ここで、波長チャネルiの送信光パワー(すなわち、ファイバ入力パワー)の目標値TP_CH(i)は、(7)式により更新される。
【数7】
P_CH(i)は、更新前の波長チャネルiのファイバ入力パワーを表す。また、ΔP_CH(i)は、波長チャネルiの目標値の調整値を表す。
【0087】
波長チャネルiのファイバ入力パワーの目標値の調整値は、例えば、(8)式に示すように、波長チャネルiのGSNRおよびGSNRの平均値に基づいて決定される。
【数8】
GSNR(i)は、波長チャネルiのGSNRを表す。そして、関数f1は、例えば、波長チャネルiのGSNRをGSNRの平均値に近づける計算式により実現される。
【0088】
そして、パワー制御情報生成部19は、例えば、各波長チャネルのファイバ入力パワーの目標値の平均に基づいて、光増幅回路12の利得を決定する。ここで、光アンプ12aおよび12cの利得は、AGC制御部15により制御される。よって、パワー制御情報生成部19は、実質的には、VOA12bの減衰量を決定する。
【0089】
さらに、パワー制御情報生成部19は、ファイバ入力パワーの目標値および光増幅回路12の利得に基づいて、WSS11における各波長チャネルの減衰量を決定する。たとえば、WSS11における波長チャネルiの減衰量ATT_CH(i)は、(9)式で計算される。
【0090】
【数9】
P_in(i)は、波長チャネルiのWSS11の入力パワーを表す。Gは、光増幅回路12の利得を表す。
【0091】
収束判定部31は、
図4に示す実施形態では、各波長チャネルの光パワーが目標レベルに収束しているか否かを判定する。これに対して
図15に示す実施形態では、収束判定部31は、各波長チャネルのGSNRが目標レベルに収束しているか否かを判定する。目標レベルは、例えば、各波長チャネルのGSNRの平均である。この場合、収束判定部31は、すべての波長チャネルのGSNRが目標レベルに対応する収束範囲の中に入っていれば、WDM信号の送信光パワーを制御する制御系が収束していると判定する。また、収束判定部31は、1以上の波長チャネルのGSNRが収束範囲から外れていれば、制御系が収束していないと判定する。
【0092】
判定結果取得部32、34および周期選択部33、35の動作は、
図7を参照して説明した通りである。よって、
図15に示す実施形態においても、制御系が収束していなければ第1の周期で送信光パワーが調整され、制御系が収束していれば第1の周期より長い第2の周期で送信光パワーが調整される。
【0093】
<ハードウェア構成>
パワー制御情報生成部19、WSS制御部20、VOA制御部22、収束判定部31、判定結果取得部32、34、周期選択部33、35、およびGSNR計算部42は、例えば、プロセッサおよびメモリを備えるコンピュータにより実現される。この場合、メモリに保存されているプログラムをプロセッサが実行することで、パワー制御情報生成部19、WSS制御部20、VOA制御部22、収束判定部31、判定結果取得部32、34、周期選択部33、35、およびGSNR計算部42の機能が提供される。ただし、これらの機能のうちの一部または全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【符号の説明】
【0094】
1(1a~1n) ROADM
2(2x、2y) 光ファイバ伝送路
10 上流局
11 波長選択スイッチ(WSS)
12 光増幅回路
12a、12c 光アンプ
12b 可変光減衰器(VOA)
19 パワー制御情報生成部
20 WSS制御部
22 VOA制御部
31 収束判定部
32、34 判定結果取得部
33、35 周期選択部
41 光チャネルモニタ(OCM)
42 GSNR計算部
50 下流局
51 光チャネルモニタ(OCM)
200 光伝送システム