(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163363
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】セメント固化装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/16 20060101AFI20231102BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G21F9/16 521H
G21F9/06 521M
G21F9/06 521A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074219
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 優太
(72)【発明者】
【氏名】角田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】上田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 透
(57)【要約】
【課題】ドラム缶1本当たりの液体廃棄物充填量を増加させ、廃棄ドラム缶発生本数を低減することで、廃棄物発生量を低減できるセメント固化装置を提供する。
【解決手段】
本発明のセメント固化装置100は、液体廃棄物中の固形分をろ過するフィルタ装置11と、フィルタ装置11を通して固形分を除去したろ過残渣を洗浄槽6に供給するろ過残渣供給部8と、フィルタ装置11を通したろ液を洗浄槽6に洗浄水として供給する洗浄水供給部10と、洗浄槽6にセメントを投入するセメント投入部1と、洗浄槽6に投入したろ過残渣およびセメントを混練する混練機5を備えることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体廃棄物中の固形分をろ過するフィルタ装置と、前記フィルタ装置を通して固形分を除去したろ過残渣を洗浄槽に供給するろ過残渣供給部と、前記フィルタ装置を通したろ液を前記洗浄槽に洗浄水として供給する洗浄水供給部と、前記洗浄槽にセメントを投入するセメント投入部と、前記洗浄槽に投入したろ過残渣およびセメントを混練する混練機を備えることを特徴とするセメント固化装置。
【請求項2】
前記洗浄水供給部は、スプレーノズルを有することを特徴とする請求項1に記載のセメント固化装置。
【請求項3】
前記フィルタ装置は、クロスフローフィルタを有することを特徴とする請求項1または2に記載のセメント固化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント固化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラント等から排出される放射性廃棄物を処理する手法の1つとして、セメント固化がある。セメント固化は、ドラム缶内に収容した放射性廃棄物にセメントを投入し、固化する方法である。
【0003】
セメント固化装置の例として、下記特許文献1がある。特許文献1には、単一の設備にて注入固化(事前に廃棄物をドラム缶に充填し、その後固化材を上方から注入して固化する方法)と混練固化(廃棄物と固化材を混練して固化する方法)を行うことができ、かつ放射性2次廃棄物の発生を低減する放射性廃棄物処理設備が記載されている。この特許文献1には、「廃棄物投入混練手段は混練固化時放射性廃棄物が投入されるため洗浄廃液は放射性2次廃棄物となるが、この廃棄物投入混練手段はインドラム方式とすることができるので、洗浄するのは例えば混練翼のみで足り、放射性2次廃棄物の発生量を少なくすることができる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1には、混練後の洗浄水を次バッチのドラム缶に排出することで、洗浄水の受入・供給機構を省略できるという特徴を持つインドラム混練式セメント固化設備が記されている。しかし、特許文献1に記載されたインドラム混練式セメント固化設備では、処理対象廃棄物が液体の場合、「セメントと混練できる水の量=液体廃棄物+洗浄水」となるため、洗浄水の分、処理できる液体廃棄物の量が少なくなるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、ドラム缶1本当たりの液体廃棄物充填量を増加させ、廃棄ドラム缶発生本数を低減することで、廃棄物発生量を低減できるセメント固化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、液体廃棄物中の固形分をろ過するフィルタ装置と、フィルタ装置を通して固形分を除去したろ過残渣を洗浄槽に供給するろ過残渣供給部と、フィルタ装置を通したろ液を洗浄槽に洗浄水として供給する洗浄水供給部と、洗浄槽にセメントを投入するセメント投入部と、洗浄槽に投入したろ過残渣およびセメントを混練する混練機を備えることを特徴とするセメント固化装置である。
【0008】
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドラム缶1本当たりの液体廃棄物充填量を増加させ、廃棄ドラム缶発生本数を低減することで、廃棄物発生量を低減できるセメント固化装置を提供できる。
【0010】
上記に記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施例2のセメント固化装置の洗浄水供給部スプレーノズルの模式図
【
図6】実施例1のセメント固化装置の固化処理のフロー図
【
図8】従来のセメント固化装置の固化処理のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例0013】
図1および
図2は実施例1のセメント固化装置の断面模式図である。
図1および
図2に示すように、本発明のセメント固化装置100は、インドラム式(廃棄処理対象物とセメントの混練、注入を1つのドラム缶で行う方式)であり、廃棄処理対象物である液体廃棄物3中の固形分をろ過するフィルタ装置11と、フィルタ装置11を通して固形分を除去したろ過残渣をドラム缶(洗浄槽)6に供給するろ過残渣供給部8と、フィルタ装置11を通したろ液をドラム缶6に洗浄水として供給する洗浄水供給部10と、ドラム缶6にセメントを投入するセメント投入部1と、ドラム缶6に投入したろ過残渣およびセメントを混練する混練機5を備える。
【0014】
洗浄水供給部10は、洗浄ノズル2を備えており、フィルタ装置11を通して固形分を取り除いたろ液(液体廃棄物)を洗浄水として洗浄ノズル2から供給し、混練機5を洗浄する。
【0015】
ドラム缶6は、コンベヤ等の移動機構7によって移動し(
図2の右矢印の方向)、セメント固化装置100の真下の位置(
図2のA位置)まで運ばれたところで昇降機構20によって持ち上げられ、セメント固化装置100から液体廃棄物およびセメントが投入・混練される。混練後、昇降機構20は移動機構7にドラム缶6を降ろし、液体廃棄物を閉じ込めたセメント30を収容するドラム缶6を再び移動する(
図2の右矢印の方向)。このように、ドラム缶6を移動機構7によって順次送ることで、セメント固化の連続的な処理ができる。
【0016】
本発明のセメント固化装置100は、上述したように、液体廃棄物3を洗浄水として用いるものである。液体廃棄物3を洗浄水として用いるために、液体廃棄物3をドラム缶6に投入する前にフィルタ装置11を用いて液体廃棄物3をろ過することで、液体廃棄物3をろ過残渣とろ液に分離する。その後、ろ過残渣をろ過残渣供給部8を用いてドラム缶6に投入し、一方、ろ液は洗浄水として、洗浄水(ろ液)供給部10によって洗浄ノズル2へ供給する。
【0017】
図6は実施例1のセメント固化装置の固化処理のフロー図である。
図6に示すように、空のドラム缶6をセメント固化装置100の真下の位置(
図2のA位置)に運ぶ(S1)。ドラム缶6への液体廃棄物およびセメントの投入に先立ち、フィルタ装置11で液体廃棄物3をろ過し、ろ液(洗浄水)とろ過残渣に分ける(S21~S23)。ろ液は、洗浄水として洗浄水供給部10から混練機5に供給され、混練機5を洗浄する(S2)。ろ過残渣は、ろ過残渣供給部8にからドラム缶6に投入される(S3)。その後、ドラム缶にセメント投入部1からセメントを供給し(S4)、混練機5によって混練する(S5)。そして、液体廃棄物を固化して閉じ込めたセメント30を収容するドラム缶6を移動する(S6)。
上述した本実施例のセメント固化装置100の構成によれば、洗浄水に液体廃棄物を用いることから、ドラム缶一本当たりの液体廃棄物充填量が増加し、廃棄体発生本数を低減できる。
【0018】
図7は従来のセメント固化装置の断面模式図であり、
図8は従来のセメント固化装置の固化処理のフロー図である。
図8および
図9に示すように、従来のセメント固化装置では、混練機5を洗浄した洗浄水を、次パッチのドラム缶6に排出することで、洗浄水の受入供給部を省略しているが、処理対象廃棄物が液体廃棄物3である場合、洗浄水の量が増えるほど、セメントと混練できる液体廃棄物3の量は少なくなってしまうという課題がある。