(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163385
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両用ハンドル
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20231102BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
E05B85/16 A
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074269
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宣明
(72)【発明者】
【氏名】西塚 三男
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL01
2E250PP12
2E250PP15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリンダ錠をハンドル本体部の表面近くに配置することが可能な車両用ハンドルの提供。
【解決手段】車両のドアに引き出し操作可能に装着される車両用ハンドルであって、
前記ドアに装着されるシリンダ錠への操作用開口2を備えたハンドル本体部と、
前記操作用開口2を閉塞するキャップ4とを有し、
前記キャップ4とハンドル本体部のいずれか一方には、キャップ4の操作用開口2への着脱操作に伴ってドア表面に沿って並進移動して他方に設けられる被係止部5に弾発的に係脱する弾発係止部6が設けられる車両用ハンドル。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに引き出し操作可能に装着される車両用ハンドルであって、
前記ドアに装着されるシリンダ錠への操作用開口を備えたハンドル本体部と、
前記操作用開口を閉塞するキャップとを有し、
前記キャップとハンドル本体部のいずれか一方には、キャップの操作用開口への着脱操作に伴ってドア表面に沿って並進移動して他方に設けられる被係止部に弾発的に係脱する弾発係止部が設けられる車両用ハンドル。
【請求項2】
前記弾発係止部は、両端がハンドル本体部に保持され、中間部が前記キャップの装着、離脱操作経路に進退するスプリングである請求項1記載の車両用ハンドル。
【請求項3】
前記弾発係止部は、弾性材により形成され、円弧状の主体部の両端に形成された係止屈曲部を前記ハンドル本体部に形成されるスプリング係止部に係止させて保持される請求項2記載の車両用ハンドル。
【請求項4】
前記被係止部はキャップに形成されるとともに、該被係止部の係止面は、自由端部に向かって前下がりの傾斜面により形成され、
前記弾発係止部は被係止部への係止状態において前記係止面に圧接する請求項1記載の車両用ハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ハンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアを開閉する際に使用する車両用ハンドルとしては、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
この従来例のハンドルは、
図7に示すように、非常時等の解錠操作に使用するためのシリンダ錠のキー操作部に連通するキーアクセス開口2’を備えたハンドル本体部3’を有する。
【0004】
ハンドル本体部3’のキーアクセス開口2’は通常状態においてシリンダ錠の外部への露出を防ぐためにキャップ4’により着脱操作可能に閉塞されており、シリンダ錠へのアクセスが必要な際に取り外される。
【0005】
上記キャップ4’はキャップ本体部4a’から裏面方向に突設する筒部4b’を備えており、筒部4b’の一部をスリット4c’を介して分離することにより弾性変形可能な係止脚4d’が形成される。係止脚4d’の先端には係止突部4e’が膨隆され、キャップ4をキーアクセス開口2’に押し込むと、係止突部4e’がキーアクセス開口2’から裏面側に突設される嵌合筒部3a’の周壁に干渉して係止脚4d’は一旦弾性変形した後、原位置に復帰して係止突部4e’が嵌合筒部3a’に弾発係止し、キャップ4の装着操作が完了する。
【0006】
装着状態からキャップ4の筒部4b’の先端を表面側に押し出すと、係止脚4d’が一旦弾性変形して係止突部4e’の係止が解除され、キャップ4’を取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第EP2853664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来例において、キャップ4’の着脱には係止脚4d’の弾性変形を伴うために、キャップ4の着脱操作、とりわけ取り外し操作時の操作力が過大になって操作性の低下を惹起しないようにするためには、係止脚4d’のアーム長を確保する必要がある。
【0009】
しかし、アーム長が長くなると、キャップ本体部4a’から筒部先端までの長さが長くなり、結果、その奥側に配置される図外のシリンダ錠とハンドル本体部3’の表面との距離も長くなり、シリンダ錠に対する操作性も悪くなるという問題が発生する。
【0010】
本発明は、以上の問題を解決すべくなされたもので、シリンダ錠をハンドル本体部の表面近くに配置することが可能な車両用ハンドルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記目的は、
車両のドアに引き出し操作可能に装着される車両用ハンドルであって、
前記ドアに装着されるシリンダ錠1への操作用開口2を備えたハンドル本体部3と、
前記操作用開口2を閉塞するキャップ4とを有し、
前記キャップ4とハンドル本体部3のいずれか一方には、キャップ4の操作用開口2への着脱操作に伴ってドア表面に沿って並進移動して他方に設けられる被係止部5に弾発的に係脱する弾発係止部6が設けられる車両用ハンドルを提供することにより達成される。
【0012】
車両用ハンドルは、シリンダ錠1への操作用開口2が開設されたハンドル本体部3と、操作用開口2への着脱操作可能で、装着状態において操作用開口2を閉塞してシリンダ錠1の外部への露出を防止するキャップ4とを有し、ハンドル本体部3とキャップ4のいずれか一方には被係止部5が、他方には、キャップ4の操作用開口2への着脱操作に伴ってシリンダ錠1が配置されるドアの表面に沿って並進移動して被係止部5に弾性的に係脱する弾発係止部6が形成される。
【0013】
被係止部5への係脱動作時に弾発係止部6がドアの表面に沿って並進移動する本発明において、ハンドル本体部3の高さ方向に弾発係止部6の移動スペース等を設定する必要がなくなるために、シリンダ錠1をハンドル本体部3の表面近くに配置し、シリンダ錠1への操作性を向上させることができる。
【0014】
また、前記弾発係止部6は、両端がハンドル本体部3に保持され、中間部が前記キャップ4の装着、離脱操作経路に進退するスプリングとして構成することができ、この場合、前記弾発係止部6は、弾性材により形成され、円弧状の主体部7の両端に形成された係止屈曲部8を前記ハンドル本体部3に形成されるスプリング係止部9に係止させて保持されるように構成することができる。
【0015】
さらに、
前記被係止部5はキャップ4に形成されるとともに、該被係止部5の係止面10は、自由端部に向かって前下がりの傾斜面により形成され、
前記弾発係止部6被係止部5への係止状態において前記係止面10に圧接するように構成すると、弾発係止部6の弾性によってキャップ4に装着方向への分力が働くために、装着状態でのガタツキを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリンダ錠をハンドル本体部の表面近くに配置することが可能になり、シリンダ錠への操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の1B-1B線断面図である。
【
図2】カバーハンドルを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の2B-2B線断面図である。
【
図3】弾発係止部を示す図で、(a)はカバーハンドルへの取付操作を示す図、(b)はカバーハンドルに固定した状態を示す図である。
【
図4】キャップを示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)の4B方向矢視図、(c)は(a)の4C-4C線断面図、(d)は(b)の4D方向矢視図、(e)は裏面方向から見た斜視図である。
【
図5】キャップの装着操作を示す図で、(a)は未装着状態を示す図、(b)は装着操作の開始を示す図、(c)はキャップを回転操作する状態を示す図、(d)は装着が完了した状態を示す図、(e)は(d)の要部を拡大した図である。
【
図7】従来例を示す図で、(a)は特許文献1の
図2に記載された斜視図、(b)は特許文献1の
図6に示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
【0019】
ハンドル装置(A)は、本発明の車両用ハンドルと、車両用ハンドルをドアに固定するためのハンドルベース11とを有し、ハンドルベース11に装着した状態で車両用ハンドルは回転中心(CH)周りに回転操作することができる。
【0020】
車両用ハンドルを回転先端側をドア表面から引き出すように回転中心(CH)周りに回転操作すると、作動脚部12aがドア表面方向に移動してハンドルベース11に連結されたレバー12bが回転軸12c周りに回転し、図外のドアラッチ装置に対するラッチ解除操作力として伝達される。
【0021】
ドアラッチ装置は、図外の電子的制御装置により施解錠状態間を遷移操作可能であり、解錠状態であるとき、ラッチ操作解除操作力が付与されるとドアの閉塞状態を保持しているラッチが解除されてドアの開放操作が可能になる。これに対し、施錠状態であるときにラッチ操作解除操作力が付与、すなわち、車両用ハンドルに回転操作を加えても、ラッチは解除されることなく、ドアの閉扉状態は保持される。
【0022】
また、ハンドルベース11には上記電子的制御装置によるドアラッチ装置への補助的な施解錠操作手段としてシリンダ錠1が固定され、ドアラッチ装置が施錠状態であっても、利用者によるシリンダ錠1への解錠操作によりドアラッチ装置を解錠状態に移行させてラッチ解除操作を行うことができる。
【0023】
上記車両用ハンドルは、上記シリンダ錠1へのアクセスを可能にするための操作用開口2が開設されたハンドル本体部3と、ハンドル本体部3の操作用開口2を通常時に閉塞するためのキャップ4とを有しており、本例においてハンドル本体部3は、上記作動脚部12a等が形成されたベースハンドル12に車両用ハンドルの外観を構成するカバーハンドル13をボルト14等により連結して形成される。
【0024】
ベースハンドル12の中央部には、車両用ハンドルを操作する際の手掛けとなるなる手掛凹部12dが形成され、前端部(本明細書において
図1において左側を「前方」、右側を「後方」、
図1(b)の上方を「表面側」、反対方を「裏面側」とする。)には車両用ハンドルの回転中心(CH)を提供するためのヒンジ突部12eが設けられる。
【0025】
カバーハンドル13は、周縁を裏面側に立ち上げたトレイ形状に形成され、後端部に操作用開口2が開設される。
【0026】
操作用開口2は、
図2、3に示すように、後述するキャップ4の意匠形成部4aが嵌合する嵌合凹部2aと、嵌合凹部2aの中心部から裏面方向に突設される膨隆部2bを貫通する貫通孔部2cとを有する。膨隆部2bの後端部で、裏面側端面には貫通孔部2cに続く平面状のキャップ係止面2dが形成される。
【0027】
本例において貫通孔部2cは円形孔として形成され、膨隆部2bは円筒形状に形成される。
【0028】
図2(b)に示すように、膨隆部2bの底面には、後方から前方に行くに従って漸次低背となる傾斜面からなる押し出し用凹部2eが形成される。この押し出し用凹部2eにより、後述するように、装着されたキャップ4を取り外す際の指の逃げが提供される。
【0029】
また、
図2、3に示すように、カバーハンドル13の裏面には、スプリング係止部9とスプリング押さえ13aが突設され、スプリング押さえ13aと上記膨隆部2bには、後述するスプリング6の線径よりやや大寸の高さ寸法を有するスリット13bが対向位置に形成される。
【0030】
さらに、上記操作用開口2の近傍には弾発係止部6が形成される。本例において弾性係止部は円形断面のスプリング線材を折り曲げたスプリングであり、ほぼ円形に屈曲された主体部7と、主体部7の両自由端を折り返して上記スプリング係止部9に係止可能とした係止屈曲部8とを有する。
【0031】
図3(b)に示すように、スプリング6、およびスプリング係止部9は、係止屈曲部8をスプリング係止部9に係止させた状態で主体部7の一部が上記膨隆部2bに形成されたスリット13bから貫通孔部2c内に飛び出し、さらに、操作用開口2への進入部に対向する部位がスプリング押さえ13aのスリット13bに進入するように位置等が設定される。
【0032】
上記操作用開口2を閉塞してシリンダ錠1の外部への露出を防止するキャップ4は、
図4に示すように、操作用開口2の嵌合凹部2aの正面視形状と相似形状で、嵌合凹部2aに嵌合可能な意匠形成部4aを有し、意匠形成部4aの裏面には嵌合突部4bが突設される。嵌合突部4bは、操作用開口2の貫通孔部2cに
図5(c)に示すように、斜め姿勢で嵌合可能であり、側壁部には、操作用開口2に装着した状態で膨隆部2bのスリット13bに対向する切込み4cを入れることにより切込み4cから裏面側に被係止部5が形成される。
【0033】
被係止部5の表面側壁面は、嵌合突部4bの中心部に行くに従って漸次表面に向かう傾斜面からなる係止面10が形成されるとともに、嵌合突部4bの裏面側端面には上記係止面10と平面視において重合する位置に装着用傾斜面4dが形成される。装着用傾斜面4dは、上記係止面10が自由端部に向かって前下がりの傾斜面により形成されるのに対し、嵌合突部4bの中心部に行くに従って漸次裏面に向かう傾斜面、すなわち、自由端部に向かって前上がりの傾斜面とされる。
【0034】
また、嵌合突部4bの後端側側壁部には、操作用開口2にキャップ4を装着した状態で上記キャップ係止面2dに係止する係止段部4eが突設される。
【0035】
したがって本例において、
図5(a)に示すように、スプリング6は、カバーハンドル13への装着状態でカバーハンドル13の裏面にほぼ平行な姿勢で保持され、主体部7の対向する2箇所が膨隆部2b、およびスプリング押さえ13aのスリット13bに挿入することによってカバーハンドル13からの脱落が防止される。
【0036】
この状態から
図5(b)に示すように、キャップ4の意匠形成部4aの後端部裏面を嵌合凹部2aの底壁に載せ、次いで、この当接部を支点にして意匠形成部4aの前端部を押し付けるようにして
図5(b)において反時計回りに回転させると、
図5(c)に示すように、装着用傾斜面4dがスプリング6の貫通孔部2cへの突出部分に当接する。この状態からさらにキャップ4に押し込み方向の力を負荷すると、スプリング6はキャップ4の装着用傾斜面4dにより中心方向に押されて主体部7が縮径する方向に弾性変形して被係止部5の通過を許容した後、弾性的に原位置に復帰し、
図5(d)に示すように、キャップ4の被係止部5に弾発係止する。
【0037】
係止状態でキャップ4の係止段部4eがカバーハンドル13のキャップ係止面2dに係止し、さらに、スプリング6が被係止部5の表面側への移動を規制するために、キャップ4の操作用開口2からの離脱が規制される。
【0038】
また、キャップ4の装着状態において、スプリング6はやや撓んでおり、
図5(e)に示すように、弾性的な復元力によりキャップ4の係止面10に圧接する。この結果、キャップ4の係止面10には裏面側への分力が作用し、キャップ4の意匠形成部4aの周縁部裏面が嵌合凹部2aの表面壁に押し付けられてガタツキが防止される。
【0039】
この状態からキャップ4を取り外す際には、一旦、
図6に示すように、車両用ハンドル全体を回転中心(CH)周りに回転させる。ドアラッチ装置が解錠状態でない場合、この操作によりドアラッチのラッチ解除操作が行われることがなく、この状態でシリンダ錠1とキャップ4との間に形成される指が入る程度のスペースを利用してキャップ4を取り外すことができる。
【0040】
キャップ4の取り外しは、
図5(e)において矢印で示すように、キャップ4の嵌合突部4bの裏面側端面を指で表面側に押し上げることにより行うことができる。キャップ4の押し上げ操作によってキャップ4には係止段部4eとカバーハンドル13のキャップ係止面2dとの接触部を支点とする
図5(e)における反時計回りの回転力が発生し、係止面10がスプリング6に中心方向への押し込み力を作用させる。
【0041】
この結果、スプリング6は被係止部5との係止解除方向に後退してキャップ4の回転を許容し、さらに、嵌合突部4bに形成された押し出し用凹部2eがキャップ4への操作スペースを提供するために、キャップ4を操作用開口2から離脱させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 シリンダ錠
2 操作用開口
3 ハンドル本体部
4 キャップ
5 被係止部
6 弾発係止部
7 主体部
8 係止屈曲部
9 スプリング係止部
10 係止面