(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163391
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231102BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B25F5/00 A
B25F5/00 C
B25F5/00 G
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074277
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】西村 篤
(72)【発明者】
【氏名】上田 敏
【テーマコード(参考)】
3C064
5H505
【Fターム(参考)】
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA04
3C064BA06
3C064BA18
3C064BA36
3C064BB01
3C064BB14
3C064CA55
3C064CA72
3C064CA75
3C064CA78
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3C064CB63
3C064CB69
3C064CB71
3C064DA02
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3C064DA35
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3C064DA38
3C064DA39
3C064DA43
3C064DA56
3C064DA59
3C064DA60
3C064DA89
3C064DA91
5H505AA13
5H505BB06
5H505CC04
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ18
5H505JJ28
5H505LL08
5H505LL09
5H505LL45
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明はモータの発熱を抑制可能な電動作業機を提供する。
【解決手段】電動作業機1は、モータ6、操作部31、作業部8及び制御部10を備える。作業部はモータにより駆動されて作業対象に作用する。操作部は作業者によって操作される。制御部は操作部への操作量を示す操作信号を受信した場合、モータへの入力可能な最大電力を第1電力に制御する。作業部への負荷でモータの回転速度が第1閾値未満になった場合、最大電力を第1電力より小さい第2電力に切り替える第1切替制御を行う。第1切替制御から第1期間が経過した場合、最大電力を第2電力より大きい第3電力に切り替える第2切替制御を行う。第2切替制御を実施したあとにモータの回転速度が第2閾値以上になった場合、最大電力を第1電力に切り替える第3切替制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動作業機であって、
モータ、操作部、作業部及び制御部を備え、
前記作業部は、前記モータにより駆動されて作業対象に作用し、
前記操作部は、作業者によって操作され、
前記制御部は、
前記操作部への操作量を示す操作信号を受信した場合、前記モータへの入力可能な最大電力を第1電力に制御し、
前記作業部への負荷で前記モータの回転速度が第1閾値未満になった場合、前記最大電力を前記第1電力より小さい第2電力に切り替える第1切替制御を行い、
前記第1切替制御から第1期間が経過した場合、前記最大電力を前記第2電力より大きい第3電力に切り替える第2切替制御を行い、
前記第2切替制御を実施したあとに前記モータの回転速度が第2閾値以上になった場合、前記最大電力を前記第1電力に切り替える第3切替制御を行う、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記第3電力は、前記第1電力よりも小さい、もの。
【請求項3】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記制御部は、前記第2切替制御から前記モータの回転速度が第2閾値以上になる前に第2期間が経過した場合は、前記モータへの電力の入力を停止させる、もの。
【請求項4】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記制御部は、前記モータの温度の状態を示す温度情報を取得し、取得した前記温度情報に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第1パラメータを変化させ、前記第1パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【請求項5】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記モータは、バッテリから供給される電力で作動し、
前記制御部は、前記バッテリの残量に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第2パラメータを変化させ、前記第2パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【請求項6】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記制御部は、前記第2切替制御が行われてから前記第3切替制御が行われるまでの時間の履歴に基づいて前記作業対象の硬さを判定し、判定した前記硬さに基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第3パラメータを変化させ、前記第3パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【請求項7】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記制御部は、前記作業部が停止した回数に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第4パラメータを変化させ、前記第4パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【請求項8】
請求項1に記載の電動作業機において、
前記制御部は、前記作業部を通常の消費電力で駆動させる第1モードと、前記第1モードよりも少ない消費電力で前記作業部を駆動させる第2モードとにより前記モータを制御し、前記第2モードの場合、前記第1モードの場合よりも前記第3電力を少なくする、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、管理装置からモータ禁止信号が電動作業機に対して送信された場合に、電動作業機の制御部が、バッテリパックからモータへの電力供給を停止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動作業機での作業中に負荷が大きくなると、モータの発熱が大きくなり、その状態で作業を続けていると、熱による部品の故障の原因になる。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、モータの発熱を抑制することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電動作業機が提供される。この電動作業機は、モータ、操作部、作業部及び制御部を備える。作業部は、モータにより駆動されて作業対象に作用する。操作部は、作業者によって操作される。制御部は、操作部への操作量を示す操作信号を受信した場合、モータへの入力可能な最大電力を第1電力に制御する。作業部への負荷でモータの回転速度が第1閾値未満になった場合、最大電力を第1電力より小さい第2電力に切り替える第1切替制御を行う。第1切替制御から第1期間が経過した場合、最大電力を第2電力より大きい第3電力に切り替える第2切替制御を行う。第2切替制御を実施したあとにモータの回転速度が第2閾値以上になった場合、最大電力を第1電力に切り替える第3切替制御を行う。
【0007】
このような態様によれば、モータの発熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】チェンソー1のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】電動モータ6の回転速度と入力電力の関係の一例を示すグラフである。
【
図5】電動モータ6の回転速度と入力電力の関係の別の一例を示すグラフである。
【
図10】電動モータ6の入力電力の変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。本実施形態では、本発明に係る電動作業機の一例として、樹木や板などを切断するためのチェンソーを説明する。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行されうる。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.ハードウェア構成
本節では、本実施形態に係るチェンソー1のハードウェア構成について説明する。
【0014】
図1は、チェンソー1のハードウェア構成を示すブロック図である。チェンソー1は、本体部2と、トリガ3と、バッテリ4と、電動モータ6と、出力シャフト7と、切断ツール8と、送風ファン9と、制御ユニット10とを備える。本体部2は、樹脂などで形成されたハウジング等を有し、他の各部を保持する部分である。本体部2は、トリガ3と切断ツール8とを外部に露出させて保持し、バッテリ4を着脱可能に保持する。本体部2は、その他の各部を、ハウジングの内部に保持する。
【0015】
トリガ3は、作業者がチェンソー1で作業を行う際に操作される部分である。トリガ3は、レバー31と、信号生成部32とを有する。レバー31は、チェンソー1を動作させる際に作業者によって操作される操作部の一例である。信号生成部32は、作業者によるレバー31の操作量を示す操作信号を生成する。バッテリ4は、他の各部に直流電力を供給する。インバータ5は、バッテリ4が供給する直流電力を所定の交流電力に変換する。電動モータ6は、インバータ5により変換された交流電力により動作するモータである。
【0016】
出力シャフト7は、電動モータ6が生じさせた駆動力を切断ツール8に伝達する。切断ツール8は、出力シャフト7により伝達された駆動力により回転し、作業対象を切断する。本実施形態では、作業対象は、樹木及び板等である。このように、切断ツール8は、モータ(本実施形態では電動モータ6)により駆動されて作業対象に作用する作業部の一例である。送風ファン9は、電動モータ6が生じさせた駆動力により回転し、ハウジング内に冷却風を送風する。
【0017】
制御ユニット10は、電動モータ6の動作を制御する制御部の一例である。制御ユニット10は、インバータ5を備え、作業者がレバー31を握る操作を行うことによって信号生成部32から送信される操作信号に基づいて、電動モータ6の動作を制御する。制御ユニット10は、制御基板を有し、この基板上にメモリ11、回転速度検出部12、モータ制御部13等のIC回路(Integrated Circuit回路)が設けられ、これらのIC回路などによって制御信号の生成及び送信等を行う。制御ユニット10は、メモリ11と、回転速度検出部12と、モータ制御部13とを有する。
【0018】
メモリ11は、様々な情報を記憶する。メモリ11は、例えば、制御ユニット10によって実行されるチェンソー1に係る種々のプログラム等を記憶するフラッシュメモリ又はソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。メモリ11は、制御ユニット10によって実行されるチェンソー1に係る種々のプログラムや変数等を記憶している。
【0019】
回転速度検出部12は、電磁式又は光電式等の回転速度センサを有し、電動モータ6の単位時間あたりの回転速度を検出する。モータ制御部13は、スイッチングの動作を行わせるための制御信号をインバータ5に送信することで、電動モータ6に入力する電力(以下「入力電力」と言う)の電力を制御する。モータ制御部13は、メモリ11に記憶されているパラメータと、回転速度検出部12により検出された回転速度とに基づいて、電動モータ6への入力電力を制御する。また、回転速度検出部12は、電動モータ6から出力される波形から電動モータ6の単位時間あたりの回転速度を算出してもよい。
【0020】
図2は、チェンソー1の外観を示す図である。
図2では、左から見たチェンソー1が示されている。チェンソー1においては、
図1に示すように、上下方向、前後方向及び左右方向が定められている。チェンソー1は、本実施形態では、チェンソー1を平らで水平な設置面に置いたときの鉛直方向が上下方向として定められている。また、上下方向に直交する方向として前後方向が定められ、上下方向及び前後方向に直交する方向として左右方向が定められている。
【0021】
図2では、本体部2と、バッテリ4と、切断ツール8と、レバー31とが示されている。本体部2は、フロントハンドル21と、リヤハンドル22と、吸気部23と、排気部24とを有する。フロントハンドル21は、本体部2の前側に設けられ、作業者が電動作業を行う際に把持する部分である。リヤハンドル22は、本体部2の後側に設けられ、作業者が電動作業を行う際に握る部分である。吸気部23は、吸気口を有し、吸気口から取り込んだ冷却風を本体部2の内部に送り込むための通路を形成する。排気部24は、排気口を有し、吸気部23から取り込まれ、本体部2の内部に配置されたモータ等の発熱部品を冷却した冷却風を外部空間に排出する。
【0022】
3.情報処理
本節では、本実施形態の情報処理について説明する。チェンソー1においては、制御ユニット10のモータ制御部13が、インバータ5から電動モータ6に入力される電流の電力(以下「入力電力」と言う)を制御する制御処理を実行する。
【0023】
図3は、制御処理の一例を示すフローチャートである。作業者が図示されない電源ボタンを押すなどの安全動作を行った後に、
図1に示すレバー31を握る操作を行うことにより、信号生成部32が操作信号を制御ユニット10に送信する。制御ユニット10は、操作信号を受信した場合に制御処理を開始する。また、制御ユニット10は、レバー31を握る操作からレバー31を解放するなどのチェンソー1の動作を終了させる操作を作業者が行った場合に、制御処理を終了させる。この制御処理には、ループする処理が含まれるが、それらのループ処理は、所定の時間間隔(0.1秒毎など)で繰り返し実行される。
【0024】
モータ制御部13は、電動モータ6を始動する操作を受け付けた場合に、A11において、まず、メモリ11に記憶されている最大入力可能電力を第1電力A1に設定する。最大入力可能電力とは、電動モータ6に対して入力可能な最大電力を意味する。モータ制御部13は、電動モータ6への入力電力を、レバー31の操作量に基づき、設定された最大入力可能電力である第1電力A1以下となるように制御する。
【0025】
また、モータ制御部13は、所定のタイミングで回転速度検出部12が検出する回転速度を単位時間(本実施形態では1分間)あたりの回転速度に変換した値を電動モータ6の回転速度として検出する。第1電力A1について、
図4を参照して説明する。
図4は、電動モータ6の回転速度と入力電力の関係の一例を示すグラフである。
図4では、横軸が時間軸であり、縦軸が回転速度(単位は1分あたりの回転数:r/min)と入力電力(単位はワット:W)とを示す折れ線グラフが示されている。
【0026】
図4に示すグラフでは、レバー31が操作され電動モータ6が回転を開始した時刻t0からの回転速度及び入力電力の変化が示されている。
図4の例では、操作開始時において作業者がレバー31を握る操作量が最大で且つ、切断ツール8が作業対象に接触しておらず、切断ツール8に作業対象からの負荷がかかっていないものとする。電動モータ6は、入力電力が第1電力A1で、さらに切断ツール8への負荷がない状態において、回転速度B1(
図4の例では10000r/min)で回転している。
【0027】
切断ツール8が作業対象に接触して作用(本実施形態では作業対象の切断)が開始されると、切断ツール8に負荷が加わり、切断ツール8の回転速度が低下し、切断ツール8と出力シャフト7を介して繋がる電動モータ6の回転速度も低下する。
図4の例の場合、時刻t1に切断が開始され、作業者が切断ツール8を作業対象に押し付ける力が強くなるにつれて、切断ツール8への負荷が次第に大きくなり、それとともに電動モータ6の回転速度も次第に低下している。
【0028】
モータ制御部13は、A12において、電動モータ6の回転速度が高回転から第1閾値Th1未満の回転速度になった(YES)と判断した場合、A13において、最大入力可能電力を第1電力A1から第2電力A2に切り替える第1切替制御を行う。第2電力A2は、第1電力A1より小さい電力である。つまり、モータ制御部13は、切断ツール8への負荷によって、電動モータ6の回転速度が高回転から第1閾値Th1未満の回転速度になった場合に第1切替制御を行う。また、モータ制御部13は、A12において、電動モータ6の回転速度が第1閾値Th1以上の回転速度である(NO)と判断した場合は、電動モータ6への最大入力可能電力を第1電力A1のまま、電動モータ6を制御する。
【0029】
図4の例の場合、時刻t3において、第1切替制御により電動モータ6への最大入力可能電力が第2電力A2になった結果、電動モータ6の回転速度は0r/minまで低下している。つまり、時刻t3には、作業者がトリガ3の操作量を最大で握っていたとしても、切断ツール8を作業対象に押し付けている場合に、切断ツール8の回転も停止することによって、作業者は電動モータ6が停止間際であることを認識することができる。
【0030】
続いて、モータ制御部13は、A14において、第1期間T1の間は、最大入力可能電力を第2電力A2に維持する制御を行う。そして、モータ制御部13は、A15において、最大入力可能電力を第2電力A2から第3電力A3に切り替える第2切替制御を行う。つまり、モータ制御部13は、第1切替制御を行ってから第1期間T1が経過した場合に第2切替制御を行う。第3電力A3は、第2電力A2より大きい電力である。また、第3電力A3は、本実施形態では、第1電力A1よりも小さい電力である。
【0031】
制御ユニット10は、
図4の例では、時刻t2から第1期間T1が経過した時刻t4に、電動モータ6への最大入力可能電力を第3電力A3に設定する第2切替制御を行っている。ここで第1期間T1としては、作業者に駆動状況を気付かせるための時間が設定されている。例えば、作業者が切断ツール8を切断対象に押し付けている場合、第1切替制御が行われることで切断ツール8の回転力が極端に低下するので、作業者がその回転力の低下に気付くまでに要する時間又はそれよりも長い時間が、第1期間T1として設定されている。
【0032】
続いて、モータ制御部13は、A16において、第2切替制御を行った後に第2期間T2が経過したか否かを判断する。モータ制御部13は、第2期間T2が経過した(YES)と判断した場合、A17において、電動モータ6の回転速度が低回転から第2閾値Th2以上になったか否かを判断する。モータ制御部13は、A17において電動モータ6の回転速度が低回転から第2閾値Th2以上になった(YES)と判断した場合、A11に戻り、最大入力可能電力を第3電力A3から第1電力A1に切り替える第3切替制御を行う。つまり、モータ制御部13は、第2切替制御のあとに電動モータ6の回転速度が低回転から第2閾値Th2以上になった場合に第3切替制御を行う。
【0033】
また、モータ制御部13は、A17において、電動モータ6の回転速度が低回転から第2閾値Th2以上になっていない(NO)と判断した場合、A18において、電動モータ6への電力供給を停止する(電力の入力を停止する)ことによって、電動モータ6を停止させる。
【0034】
なお、A16において、モータ制御部13は、第2期間T2が経過していない(NO)と判断した場合は、電動モータ6への最大入力可能電力を第3電力A3としたまま、電動モータ6を制御する。ここで第2期間T2としては、作業者が切断ツール8を作業対象に押し付ける力を弱めてから、電動モータ6の回転速度が第2閾値Th2以上になるまでに要すると考えられる時間又はそれよりも長い時間が設定されている。
【0035】
モータ制御部13は、
図4の例の場合、第2閾値Th2を第1閾値Th1と同じ閾値に設定して第3切替制御を行っている。第3切替制御により入力電力が第1電力A1になった結果、時刻t6に、電動モータ6の回転速度は始動時の回転速度B1(10000r/min)まで上昇している。
【0036】
図5は、電動モータ6の回転速度と入力電力の関係の別の一例を示すグラフである。
図5の例では、時刻t4までは
図4の例と同様に電動モータ6の回転速度が変化しているが、第2切替制御から第2期間T2が経過した時刻t5において、回転速度が第2閾値Th2未満となっている。その場合、モータ制御部13は、時刻t6から電動モータ6への電力の入力を停止して(入力電力を0Wにして)、電動モータ6の回転速度を0r/minに制御する。
【0037】
このように、モータ制御部13は、本実施形態では、第2切替制御が行われてから電動モータ6の回転速度が第2閾値Th2以上になる前に第2期間T2が経過した場合は、電動モータ6への電力の入力を停止させる。
【0038】
切断ツール8への負荷が高まると、切断ツール8の回転速度が遅くなり、それに伴い電動モータ6の回転速度も遅くなる。一方、入力電力がそのままだと、回転力に変わるはずのエネルギーが熱に変換され、過剰な発熱の原因となり、過剰な発熱を抑制するために電動モータ6の動作が停止する。そこで、チェンソー1においては、切断ツール8への負荷が高まると、電動モータ6の動作が停止するよりも前に、あえて電動モータ6への最大入力可能電力を下げる第2切替制御及び第3切替制御を行い、電動モータ6の回転速度を落としている。
【0039】
これにより、電動モータ6の動作が過剰な発熱により本当に停止する前に、電動モータ6が停止間際であることを作業者が気付きやすいようにしている。そして、電動モータ6が停止間際であることに気付いた作業者が切断ツール8を作業対象に押し付ける力を抜くことで、電動モータ6を停止させることなく、作業に復帰させることができる。
【0040】
さらに、上記のとおり第2切替制御のあとに回転速度が上がらない場合に電動モータ6を停止させることで、切断ツール8への負荷が高くなって電動モータ6の熱が高まってきたときに、切断ツール8への負荷が解消しなくとも、過剰な発熱を防ぐことができる。
【0041】
また、第1期間T1には、電動モータ6の回転が低下するとともに送風ファン9の回転も低下する。本実施形態では、電動モータ6の回転力低下による温度上昇の抑制よりも、送風ファン9の回転力低下による冷却風の停滞の方が影響が大きく、第1期間T1には、ハウジング内の温度が高まるものとする。そして、第1期間T1が終わり第2切替制御が行われると、今後は電動モータ6の回転が増加するとともに送風ファン9の回転が増加し、冷却風が再び吹き始める。
【0042】
第1切替制御が行われた後、電動モータ6が停止間際であることに作業者が気がついて切断ツール8を作業対象に押し付ける力を弱めるタイミングが早いほど、電動モータ6の回転数が早く上がって冷却風も早く強くなり、ハウジング内の温度上昇が抑制される。このように、第1切替制御が行われることで、第1切替制御が行われない場合に比べて、過剰な発熱により電動モータ6の動作が本当に停止するよりも早く電動モータ6が停止間際であることを作業者に気付かせることができる。
【0043】
また、第2切替制御が行われることで、第2切替制御が行われない場合に比べて、電動モータ6の発熱を抑制しつつ、送風ファン9の復帰を行うので、電動モータ6の過剰な発熱による停止を防ぐことができる。また、作業者がレバー31を操作し続ける状態で上記のとおり電動モータ6の動作が制御されるので、作業者はレバー31を握り直す必要がなく、切断ツール8を作業対象に押し付ける力加減に集中することができる。
【0044】
また、第2切替制御により、入力電力を第3電力A3まで上昇させることで、切断ツール8に駆動力を与え、作業者にチェンソー1からの手応えを与えるようにして、まだ電動モータ6が停止していないことを認識させることができる。その際、第3電力A3を第1電力A1よりも小さくすることで、第3電力A3を第1電力A1よりも大きくする場合に比べて、第1期間T1に停止していた切断ツール8の回転が再開したときに、急に強い力で回転してキックバックのような現象が起こることを抑制し、安全に作業を継続することができる。
【0045】
<その他の実施形態>
(1)電動作業機
実施形態では、電動作業機の一例として、チェンソーを説明したが、これに限らない。例えば、ヘッジトリマー及びエンジンカッター等であってもよい。要するに、本体部に着脱可能なバッテリから供給される電力で作動する作業部を備えるものであれば、どのような電動作業機であってもよい。また、モータ制御部13は、第2閾値Th2を第1閾値Th1と同じ閾値に設定して制御を行っていたが、第2閾値Th2を第1閾値Th1と異なる閾値に設定して制御を行ってもよい。
【0046】
(2)温度の状態
電動モータ6は、上記のとおり、切断ツール8への負荷が高まると過剰な発熱をすることになるが、電動モータ6自身又は周囲の温度が高い状態であるほど、過剰な発熱による温度も高くなりやすい。そこで、モータ制御部13は、電動モータ6の温度の状態を示す温度情報を取得し、取得した温度情報に基づいて、電動モータ6の回転速度の制御に用いる第1パラメータを変化させてもよい。第1パラメータには、例えば、第1閾値Th1、第2閾値Th2、第1期間T1、第2期間T2、第2電力A2又は第3電力A3が含まれる。
【0047】
温度情報は、例えば、電動モータ6の温度そのものを示す情報である。この場合、チェンソー1は、例えば、電動モータ6の温度を検出する温度センサを備える。温度センサは、接触型でも非接触型でもよく、測定した電動モータ6の温度を示す温度情報をモータ制御部13に供給する。なお、温度情報は、電動モータ6の温度を直接示す情報に限らない。例えば、制御ユニット10の制御基板の温度や本体部2のハウジングの内面の温度を示す情報が温度情報として用いられてもよい。制御基板やハウジングの内面は、電動モータ6と近接する空間にあるので、電動モータ6と同じように温度が上下するからである。
【0048】
モータ制御部13は、電動モータ6の温度情報と、各第1パラメータとを対応付けた第1テーブルを用いて第1パラメータを変化させる。
図6は、第1テーブルの一例を示す図である。
図6の例では、「C1未満」、「C1以上C2未満」、「C2以上」という温度情報Cが示されている。温度情報Cが高い温度の状態を示すほど、切断ツール8の負荷が高まったときの電動モータ6の温度も高くなりやすい。
【0049】
温度情報Cには、「Th1-1」、「Th1-2」、「Th1-3」という第1閾値Th1が対応付けられ、「Th2-1」、「Th2-2」、「Th2-3」という第2閾値Th2が対応付けられている。また、温度情報Cには、「T2-1」、「T2-2」、「T2-3」という第2期間T2が対応付けられている。また、温度情報Cには、「A2-1」、「A2-2」、「A2-3」という第2電力A2が対応付けられ、「A3-1」、「A3-2」、「A3-3」という第3電力A3が対応付けられている。
【0050】
例えば、第1閾値Th1は、Th1-1<Th1-2<Th1-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の温度が高くなりやすい状況であるほど第1閾値Th1が大きくなるので、第1切替制御が行われるタイミングが早まり、電動モータ6が過剰に発熱する前に回転速度を低下させ、又は、電動モータ6が過剰に発熱する状態を早く終了させることができる。また、第2閾値Th2は、Th2-1<Th2-2<Th2-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の温度が高くなりやすい状況であるほど第2閾値Th2が大きくなり、第3切替制御が行われて第3電力A3に復帰するタイミングが遅れて、電動モータ6を冷ます時間を長くすることができる。
【0051】
また、第2電力A2は、A2-1>A2-2>A2-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の温度が高くなりやすい状況であるほど第1期間T1における入力電力(第2電力A2)が小さくなるので、第1期間T1において電動モータ6がより冷めやすいようにすることができる。また、第3電力A3は、A3-1>A3-2>A3-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の温度の過剰な上昇の抑制と、チェンソー1の動作継続の認識のしやすさとのバランスをとることができる。
【0052】
第2期間T2は、T2-1>T2-2>T2-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の温度が高くなりやすい状況であるほど第2期間T2が短くなるため、電動モータ6への入力電力が停止されやすくなり、電動作業機の作業ペースが低下するため、電動モータ6の過剰な発熱による故障が起こりにくいようにすることができる。
【0053】
作業をする上では電動モータ6による駆動力は大きいほどよいが、切断ツール8への負荷により回転速度が低下したときは過剰な発熱の原因になる。そこで、上記のとおり、温度情報に基づき第1パラメータを変化させることで、なるべく駆動力を大きくしつつ、温度が高くなりすぎそうな状況では、駆動力を抑えて発熱を抑制することができる。言い換えると、電動モータ6の発熱の抑制と、電動モータ6が生じさせる駆動力のバランスをとることができる。
【0054】
(3)バッテリの残量
電動モータ6は、バッテリ4から供給される電力で作動する。モータ制御部13は、バッテリ4の残量(State Of Charge)に応じて、電動モータ6の回転速度の制御に用いる第2パラメータを変化させてもよい。バッテリの残量は、例えば、バッテリの残容量又は充電率によって表される。第2パラメータには、例えば、第1閾値Th1、第2閾値Th2、第1期間T1、第2期間T2、第2電力A2又は第3電力A3が含まれる。
【0055】
モータ制御部13は、バッテリ4から、バッテリ4の残量を示す残量情報を取得する。残量情報は、例えば、0%から100%までの数値でバッテリ4の残量を示す情報である。モータ制御部13は、バッテリ4の残量情報と、各第2パラメータとを対応付けた第2テーブルを用いて第2パラメータを変化させる。
【0056】
図7は、第2テーブルの一例を示す図である。
図7の例では、「D1未満」、「D1以上D2未満」、「D2以上」という残量情報Dが示されている。残量情報Dには、
図6に示す第1閾値Th1、第2閾値Th2、第2期間T2、第2電力A2又は第3電力A3と同様の値がそれぞれ対応付けられている。
【0057】
例えば、第1閾値Th1は、Th1-1>Th1-2>Th1-3となるように定められている。これにより、バッテリ4の残量が少ない状況であるほど第1閾値Th1が大きくなるので、第1切替制御が行われるタイミングが早まり、電力の消費量が減って電動モータ6の作動時間を伸ばすことができる。また、第2閾値Th2は、Th2-1>Th2-2>Th2-3となるように定められている。これにより、バッテリ4の残量が少ない状況であるほど第2閾値Th2が大きくなり、第3切替制御が行われて第3電力A3に復帰するタイミングが遅れて、バッテリ4の残量を温存することができる。
【0058】
また、第2期間T2は、T2-1<T2-2<T2-3となるように定められている。これにより、バッテリ4の残量が少ない状況であるほど入力電力が停止されやすくなり、使用中に電力切れで電動モータ6が急に停止することを起こりにくくすることができる。
【0059】
また、第2電力A2は、A2-1<A2-2<A2-3となるように定められている。これにより、バッテリ4の残量が少ない状況であるほど第1期間T1における入力電力(第2電力A2)が小さくなるので、第1期間T1における電力の消費を抑えることができる。また、第3電力A3は、A3-1<A3-2<A3-3となるように定められている。これにより、電動モータ6の電力消費の抑制と、チェンソー1の動作継続の認識のしやすさとのバランスをとることができる。
【0060】
作業をする上では電動モータ6による駆動力は大きいほどよいが、バッテリ4の残量が少ない状況では作動時間をより短くする原因になる。そこで、上記のとおり、残量情報Dに基づき第2パラメータを変化させることで、なるべく駆動力を大きくしつつ、バッテリ4の残量が少ない状況では、駆動力を抑えて消費電力を減らすことができる。言い換えると、電動モータ6の駆動力と作動時間とのバランスをとることができる。
【0061】
(4)作業対象の硬さ
作業対象が硬いほど、切断ツール8への負荷が大きくなりやすい。そして、切断ツール8への負荷が大きいほど、切断ツール8及び電動モータ6の回転速度が低下して、電動モータ6が発熱しやすくなる。そこで、モータ制御部13は、作業対象の硬さを判定し、判定した硬さに基づいて、モータの回転速度の制御に用いる第3パラメータを変化させてもよい。
【0062】
モータ制御部13は、例えば、第2切替制御が行われてから第3切替制御が行われるまでの時間(以下「制御間時間」と言う)の履歴に基づいて作業対象の硬さを判定する。制御間時間は、一度低下させた回転速度が再び第2閾値Th2以上になるまで増加するのに要する時間であり、切断ツール8への負荷が小さいほど短くなる。作業対象が硬いほど切断ツール8への負荷が大きくなるから、制御間時間が長いほど作業対象が硬いことを示し、制御間時間が短いほど作業対象が柔らかいことを示す。モータ制御部13は、この関係を用いて、作業対象の硬さを判定する。
【0063】
第3パラメータには、第1閾値Th1、第2閾値Th2、第2電力A2又は第3電力A3が含まれる。モータ制御部13は、制御間時間と、作業対象の硬さと、各第3パラメータとを対応付けた第3テーブルを用いて第3パラメータを変化させる。
【0064】
図8は、第3テーブルの一例を示す図である。
図8の例では、「E1未満」、「E1以上E2未満」、「E2以上」という制御間時間Eに、「柔らかい」、「中間」、「硬い」という作業対象の硬さが対応付けて示されている。作業対象の硬さには、
図6に示す第1閾値Th1、第2閾値Th2、第2期間T2、第2電力A2又は第3電力A3と同様の値がそれぞれ対応付けられている。
【0065】
前述したように、作業対象が硬いほど、切断ツール8の負荷が高まったときに、電動モータ6の温度が高くなりやすい。従って、第3テーブルでは、
図6に示す第1テーブルと同様の大小関係を示すように各第3パラメータが定められていればよい。例えば、第1閾値Th1であれば、Th1-1<Th1-2<Th1-3となるように定められていればよい。これにより、
図6の例と同様に、電動モータ6の温度の過剰な上昇の抑制と、チェンソー1の動作継続の認識のしやすさとのバランスをとることができる。
【0066】
(5)停止回数
例えば作業者が切断ツール8を作業対象に強く押し付ける傾向にあると、第2期間T2において回転速度が第2閾値Th2以上に至らず、
図3に示すA18の動作(電動モータ6への電力の入力停止)が行われて切断ツール8が停止しやすくなる。そこで、モータ制御部13は、切断ツール8が停止した回数に基づいて、電動モータ6の回転速度の制御に用いる第4パラメータを変化させてもよい。第4パラメータには、第1閾値Th1、第2閾値Th2、第2電力A2又は第3電力A3が含まれる。
【0067】
モータ制御部13は、切断ツール8の停止回数を記憶しておき、A18の動作を行う度に、記憶している停止回数に1を加算する処理を行う。モータ制御部13は、そうして記憶する切断ツール8の停止回数と、各第4パラメータとを対応付けた第4テーブルを用いて第4パラメータを変化させる。
【0068】
図9は、第4テーブルの一例を示す図である。
図9の例では、「F1未満」、「F1以上F2未満」、「F2以上」という停止回数Fが示されている。停止回数Fには、
図6に示す第1閾値Th1、第2閾値Th2、第2期間T2、第2電力A2又は第3電力A3と同様の値がそれぞれ対応付けられている。
【0069】
切断ツール8の停止回数Fが多いほど、作業中に切断ツール8の負荷が高い状態が多い傾向にあるので、電動モータ6の温度も高い状態が多い傾向になる。従って、第5テーブルでは、
図6に示す第1テーブルと同様の大小関係を示すように各第5パラメータが定められていればよい。例えば、第1閾値Th1であれば、Th1-1<Th1-2<Th1-3となるように定められていればよい。これにより、
図6の例と同様に、電動モータ6の温度の過剰な上昇の抑制と、チェンソー1の動作継続の認識のしやすさとのバランスをとることができる。
【0070】
(6)省電力モード
チェンソー1は、省電力モードを備えている場合がある。その場合、モータ制御部13は、切断ツール8を通常の消費電力で駆動させる第1モードと、第1モードよりも少ない消費電力で切断ツール8を駆動させる第2モードとにより、電動モータ6を制御する。そして、モータ制御部13は、第2モードの場合、第1モードの場合よりも第3電力A3を少なくする。
【0071】
図10は、電動モータ6の入力電力の変化の一例を示すグラフである。
図10の例では、
図4に示す入力電力の変化が黒丸を結んだ折れ線A101で示されている。この折れ線A101は、第1モードでの入力電力の変化を示すものとする。そして、
図10では、第2モードでの入力電力の変化を折れ線A102が示している。
【0072】
第1モードにおいては、実施形態で述べたように、第2期間T2の入力電力を第3電力A3とすることで、切断ツール8に駆動力を与え、作業者にまだ電動モータ6が停止していないことを認識させることができるようにしていた。
【0073】
ここで、第2モードにおいて、第2切替制御により第1モードと同じ第3電力A3に切り替えた場合、作業者は、第1モードでの作業時と同じ手応えになるため、このあと第1モードと第2モードのどちらに戻るのかを迷うことが起こりうる。
図10の例では、第2モードの場合、第1モードの場合よりも第3電力A3を少なくしているので、第2切替制御のあとの手応えが第1モードと第2モードとで異なる。その結果、作業者は、作業時に現在のモードがどちらなのかを迷いにくいようにすることができる。
【0074】
<付記>
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0075】
(1)電動作業機であって、モータ、操作部、作業部及び制御部を備え、前記作業部は、前記モータにより駆動されて作業対象に作用し、前記操作部は、作業者によって操作され、前記制御部は、前記操作部への操作量を示す操作信号を受信した場合、前記モータへの入力可能な最大電力を第1電力に制御し、前記作業部への負荷で前記モータの回転速度が第1閾値未満になった場合、前記最大電力を前記第1電力より小さい第2電力に切り替える第1切替制御を行い、前記第1切替制御から第1期間が経過した場合、前記最大電力を前記第2電力より大きい第3電力に切り替える第2切替制御を行い、前記第2切替制御を実施したあとに前記モータの回転速度が第2閾値以上になった場合、前記最大電力を前記第1電力に切り替える第3切替制御を行う、もの。
【0076】
このような態様によれば、モータの発熱を抑制することができる。
【0077】
(2)上記(1)に記載の電動作業機において、前記第3電力は、前記第1電力よりも小さい、もの。
【0078】
このような態様によれば、安全に作業を継続することができる。
【0079】
(3)上記(1)又は(2)に記載の電動作業機において、前記制御部は、前記第2切替制御から前記モータの回転速度が第2閾値以上になる前に第2期間が経過した場合は、前記モータへの電力の入力を停止させる、もの。
【0080】
このような態様によれば、作業部の負荷が解消しなくとも過剰な発熱を防ぐことができる。
【0081】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の電動作業機において、前記制御部は、前記モータの温度の状態を示す温度情報を取得し、取得した前記温度情報に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第1パラメータを変化させ、前記第1パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【0082】
このような態様によれば、モータの発熱の抑制と駆動力のバランスをとることができる。
【0083】
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の電動作業機において、前記モータは、バッテリから供給される電力で作動し、前記制御部は、前記バッテリの残量に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第2パラメータを変化させ、前記第2パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【0084】
このような態様によれば、モータの駆動力と作動時間のバランスをとることができる。
【0085】
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の電動作業機において、前記制御部は、前記第2切替制御が行われてから前記第3切替制御が行われるまでの時間の履歴に基づいて前記作業対象の硬さを判定し、判定した前記硬さに基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第3パラメータを変化させ、前記第3パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【0086】
このような態様によれば、モータの発熱の抑制と駆動力のバランスをとることができる。
【0087】
(7)上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の電動作業機において、前記制御部は、前記作業部が停止した回数に基づいて、前記モータの回転速度の制御に用いる第4パラメータを変化させ、前記第4パラメータには、前記第1閾値、前記第2閾値、前記第2電力又は前記第3電力が含まれる、もの。
【0088】
このような態様によれば、モータの発熱の抑制と駆動力のバランスをとることができる。
【0089】
(8)上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の電動作業機において、前記制御部は、前記作業部を通常の消費電力で駆動させる第1モードと、前記第1モードよりも少ない消費電力で前記作業部を駆動させる第2モードとにより前記モータを制御し、前記第2モードの場合、前記第1モードの場合よりも前記第3電力を少なくする、もの。
【0090】
このような態様によれば、作業時に現在のモードを迷いにくいようにすることができる。
もちろん、この限りではない。
また、上述した実施形態及び変形例を任意に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0091】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0092】
1 :チェンソー
2 :本体部
3 :トリガ
4 :バッテリ
5 :インバータ
6 :電動モータ
7 :出力シャフト
8 :切断ツール
9 :送風ファン
10 :制御ユニット
11 :メモリ
12 :回転速度検出部
13 :モータ制御部
21 :フロントハンドル
22 :リヤハンドル
23 :吸気部
24 :排気部
31 :レバー
32 :信号生成部