(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163395
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】回転弁体式開閉弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074287
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】杉村 瞭
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】下村 嘉徳
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA07
3H062AA12
3H062BB10
3H062BB24
3H062CC01
3H062EE07
3H062HH03
3H062HH04
3H062HH07
3H062HH08
(57)【要約】
【課題】高速で開閉を行うことができる開閉弁であって、開閉弁を開閉する駆動部にかかる負荷が小さな高速開閉弁を提供すること。
【解決手段】流体が内部に流入する流体流入部11と流体が外部に流出する流体流出部12を備えるケーシング10と、ケーシングの内部に収容され、ケーシングの外部に備えられたモータ30のモータ軸31と連結して、モータによって回転させられる回転体20と、を備える。回転体は、当該回転体の回転軸に対する横断面が円板形状であり、外周に沿って一部が切り欠かれた切り欠き部22を有する形状をしている。回転体の切り欠き部でない大径部21が、流体流出部のケーシング側の内側開口12bを封鎖することによって、流体の流体流出部からの流出が止められ、切り欠き部が内側開口に対面しているときに流体が流体流出部から流出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が内部に流入する流体流入部と前記流体が外部に流出する流体流出部を備えるケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容され、前記ケーシングの外部に備えられたモータのモータ軸と連結して、当該モータによって回転する回転体と、を備える回転弁体式開閉弁であって、
前記回転体は、当該回転体の回転軸に対する横断面が円板形状であり、外周に沿って一部が切り欠かれた切り欠き部を有する形状をしており、
前記回転体の切り欠き部でない大径部が、前記流体流出部の前記ケーシング側の内側開口を封鎖することによって、前記流体の前記流体流出部からの流出が止められ、前記切り欠き部が前記内側開口に対面しているときに前記流体が前記流体流出部から流出する回転弁体式開閉弁。
【請求項2】
前記流体流出部の開口形状が、前記回転軸の軸方向に延びるスリット形状であることを特徴とする請求項1に記載の回転弁体式開閉弁。
【請求項3】
前記流体流出部の開口形状が、円形であることを特徴とする請求項1に記載の回転弁体式開閉弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の流れの開閉を行う回転弁体式開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を間歇的に流すための開閉弁は、種々の分野で用いられている。例えば、内燃機関に流す流体の開閉、冷暖房流体の開閉、2サイクルエンジンにおけるエアクリーナ装置等の開閉、水の散水のための開閉、繰り返しパターン印刷のための開閉などの用途に用いられている。
【0003】
特許文献1には、
図5に示すような繰り返しパターン印刷のための開閉弁120が開示されている。塗布装置100は、タンク116内の塗料が、第2流通路136を経由して導入ポート158からボディ150内部へ入る。ロッド168の上端には弁体170が備えられ、弁体170の上下動によって、弁体170と弁座163とが接触・離間されて、塗料は、導出ポート160から間歇的に流れ出て、第1流通路134を経由して、ダイ118へ送られる。メインローラ122に巻かれたシート112は搬送装置114によって送られて、ダイ118の先端から塗料が間歇的に吐出させられて、
図5に示す塗布領域124と非塗布領域126がシート112の表面に形成される。ロッド168は、コントローラ180でコントロールされるリニアモータ140によって上下動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の塗布装置100は、シート112に塗布領域124と非塗布領域126とが形成するが、高速で印刷するためには、開閉弁120の開閉を高速で行う必要があり、この高速開閉の要求は、印刷分野に限られず、開閉弁が用いられる多くの分野で要求されている。リニア駆動のソレノイドバルブや回転駆動のボール弁であっても、電圧が溜まり、駆動力が発生して、弁体が加速して規定ストロークを動作するまでに時間がかかる。特許文献1に記載のリニアモータであっても、6msで2000μm(2mm)移動して閉弁するとされている(特許文献1段落[0028])。また、加速減速や反転を繰り返す駆動装置では、モータ等の駆動装置が過熱してしまうという問題もある。種々の産業分野で、開閉速度が従来の開閉弁の開閉速度よりも大きな高速開閉弁であり、かつ、駆動部にかかる負荷が小さな高速開閉弁が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速で開閉を行うことができる開閉弁であって、開閉弁を開閉する駆動部にかかる負荷が小さな高速開閉弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明(1)は、流体が内部に流入する流体流入部と前記流体が外部に流出する流体流出部を備えるケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記ケーシングの外部に備えられたモータのモータ軸と連結して、当該モータによって回転する回転体と、を備える回転弁体式開閉弁であって、前記回転体は、当該回転体の回転軸に対する横断面が円板形状であり、外周に沿って一部が切り欠かれた切り欠き部を有する形状をしており、前記回転体の切り欠き部でない大径部が、前記流体流出部の前記ケーシング側の内側開口を封鎖することによって、前記流体の前記流体流出部からの流出が止められ、前記切り欠き部が前記内側開口に対面しているときに前記流体が前記流体流出部から流出する回転弁体式開閉弁である。
【0008】
本発明(1)の回転弁体式開閉弁は、横断面が円板形状であり、回転体の外周に沿って一部が切り欠かれた切り欠き部を有し、回転体の切り欠き部でない大径部が、流体流出部のケーシング側の内側開口を封鎖することによって、流体の前記流体流出部からの流出が止められ、切り欠き部が内側開口に対面しているときに流体が流体流出部から流出する構造であるため、回転体を一定速度で回転させるだけで、流体を間歇的に吐出することができ、回転体の回転スピードを上げるだけで、弁の開閉を高速で行うことができる。
【0009】
また、回転体は一定のスピードで回転させればよいので、従来の開閉弁のような加速、減速、反転時に発生する過大な負荷が駆動部にかけられることがなくなる。駆動部の回転スピード等を回転弁体式開閉弁の外部に設けられた駆動部によってコントロールすることは勿論可能である。
【0010】
本発明(2)は、前記流体流出部の開口形状が、前記回転軸の軸方向に延びるスリット形状であることを特徴とする本発明(1)の回転弁体式開閉弁である。
【0011】
本発明(2)の回転弁体式開閉弁では、流体流出部の開口形状が、回転軸の軸方向に延びるスリット形状であるので、流体流出部から吐出される流体はライン状となり、流体が吐出される相手の被吐出体が一定速度で直線運動をすると、流体は被吐出体の表面に矩形形状に塗布される。
【0012】
本発明(3)は、前記流体流出部の開口形状が、円形であることを特徴とする本発明(1)の回転弁体式開閉弁である。
【0013】
本発明(3)の回転弁体式開閉弁では、前記流体流出部の開口形状が円形であるので、流体流出部から吐出される流体は円形となり、被吐出体が一定速度で直線運動をすると、流体は被吐出体に長円形状に塗布される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高速で開閉を行うことができる開閉弁であって、開閉弁を開閉する駆動部にかかる負荷が小さな高速開閉弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態1に係る回転弁体式開閉弁の一部断面図である。
【
図2】実施形態1の回転弁体式開閉弁を用いて、流体を間歇的に流す状態の変化を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す回転弁体式開閉弁の状態の変化に対応する流体の吐出の状態(経過時間とバルブ開度の関係)を示す。
【
図4】発明の実施形態2に係る回転弁体式開閉弁の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0017】
<実施形態1>
図1~
図3に、本発明の回転弁体式開閉弁の実施形態1に係る構造、流体を流す際の状態変化、経過時間とバルブ開度の関係を示す。
【0018】
図1の(A)は、回転弁体式開閉弁1の正面から見た断面図を示し、
図1の(B)は、側面から見た一部縦断面を示す。回転弁体式開閉弁1は、流体流入部11と流体流出部12が備えられた円筒形のケーシング10と、ケーシング10の内部に配設された回転体20とを有している。流体は、流体流入部11の流入口11aからケーシング10の内部に流れ込み、流体流出部12の吐出口12aから流れ出る。
【0019】
回転体20は、断面形状が略円形であり、実施形態1では、外周に沿って切り欠かれた切り欠き部22と切り欠かれていない大径部21を備えており、中心にモータ軸31と係合するモータ軸係合穴23が形成されている。切り欠き部22の切り欠き方法は、
図1に示すような円形状に切り欠くことが必ずしも必要ではなく、楕円形状や直線を用いた切り欠き方法でもよい。また、大径部21の配設は、
図1では一か所であるが、必ずしも一か所である必要はなく、複数個所であってもよい。
【0020】
ケーシング10の外部には回転体20を回転するモータ30が備えられ、モータ軸31にはベアリング32が取り付けられ、モータ軸31は、モータ軸係合穴23を貫通し回転体20と係合し、図示しないシール部材によってケーシング10の内部を密封している。モータ30によって回転体20は回転し、流体流出部12の吐出口12aのケーシング10の内部側の口である内側開口12bに、大径部21と切り欠き部22とが交互に接近する。大径部21が接近すると閉状態となって流体の流れは遮断される。切り欠き部22が接近すると開状態となって流体は吐出口12aから外部に流れ出る。
【0021】
実施形態1では、吐出口12aはモータ軸31の方向に延びたスリット状になっている。シート40が矢印方向に搬送されると、シート40の表面には流体が噴霧された矩形状の噴霧領域と流体が噴霧されない非噴霧領域が形成される。
【0022】
流体の粘度によっては、内側開口12bと大径部21とが接触しなくとも流体は外部に流出しないように調整できる。このような場合は、流体流出部12と大径部21とが直接に接触しないので大径部21や流体流出部12の摩耗を防ぐことができる。例えば、リチウムイオン電池の電極部材の形成に用いられ、正極部材を形成する場合は、アルミ箔からなるシートの表面にコバルト酸リチウム酸化コバルトを主体とする溶剤を塗布するが、このような流体の粘度は高く数Pa・sとなり、せん断速度は1m/s~100m/sとなるので、内側開口12bと大径部21とを直接に接触させなくともよくなる。
【0023】
図1に示す回転弁体式開閉弁1を噴霧装置に用いた場合の噴霧パターンとしては、開度100%(全開状態)から開度0%(全閉状態)に移行する時間と、開度0%(全閉状態)から開度100%(全開状態)に移行する時間を約2msとし、特許文献1の開閉弁の3倍も短くなっている。閉止持時間は、例えば、10msとして、開止持時間は250msとなっている。全体のサイクル時間は、回転体20の回転速度で調整可能であり、閉止持時間と開止維持時間の比率は、大径部21と切り欠き部22の周長を調整することで可能となる。
【0024】
回転弁体式開閉弁1を用いた装置で流体を噴霧する場合、被噴霧体である、例えばシート状の部材をスピードS(m/s)で搬送したとすると、流体の噴霧領域の縦方向の長さは、スリットの開口長さLとなる(
図1(B)参照)。矩形の噴霧パターンの間の非噴霧領域の横幅は、S(m/s)×0.01sとなり、噴霧領域の横幅は、S(m/s)×0.25sとなる。
【0025】
図2は、回転弁体式開閉弁1の内部で、回転体20の回転に伴って流体2がどのようななるか模式的に示したものである。(A)から(F)まで順に変化する様子を説明する。(A)は、大径部21が流体流出部12の内側開口12bにかかる直前の状態を示している。この状態では、流体2はまだ下方に流れ出ている。(A)の時の時刻Tをt
0としている。
【0026】
回転体20がわずかに回転すると(B)の状態になり流体は外部に出ることが出来ず、回転弁体式開閉弁1は閉状態となる。この時の時刻Tはt1である。(C)の状態では閉状態は維持されているが(T=t2)、直後(T=t3)に(D)の状態となり全開状態に移行する。(E)の状態は全開維持状態の中間時点である(T=T4)。その後、(F)の状態となる。この(F)の状態は、(A)の状態と同じ状態となる。回転体20の1回転に要する時間は(t5-t0)である。
【0027】
このように、回転体20が一定速度で回転するだけで開閉弁の開閉を行うことが出来るので、モータ30等の駆動装置に対しては、加速・減速・反転を行う必要がなく、これらの運動に伴う負荷を駆動部にかけることがなくなる。なお、流入口11aから供給される流体は、吐出用ポンプ(図示省略)から所定圧力に昇圧された状態で供給され、流体流出部12の内側開口12bが開放されている状態で流体が途切れることなく吐出される。
【0028】
図3は、
図2の状態変化を、経過時間と開度との関係と見た場合のチャートである。実施形態1では、(t
1-t
0)は2msであり、(t
2-t
1)は10msであり、(t
5-t
3)は250msである。
【0029】
<実施形態2>
図4は、実施形態2の回転弁体式開閉弁3の横断面図を示している。回転弁体式開閉弁3は、流体流入部51と流体流出部52が備えられた円筒形のケーシング50と、ケーシング50の内部に配設された回転体60とを有している。流体は、流体流入部51の流入口51aからケーシング50の内部に流れ込み、流体流出部52の吐出口52aから流れ出る。
【0030】
回転体60は、断面形状が略円形であり、実施形態2では、外周に沿って切り欠かれた切り欠き部62と切り欠かれていない大径部61を備えている。モータ軸との係合部は図示を略している。実施形態1では、流体流出部12がスリットを形成していたが、実施形態2では円筒形の形状をしている。
【0031】
図4に示す実施形態2の回転弁体式開閉弁3の設計方法を検討する。大径部61の直径を84mm(二点鎖線の円の直径)、切り欠き部62の直径を80mm、吐出口52aの直径を9mmとする。大径部61の直径の全円周は、263.8mmとなる。回転体60の1回転に要する時間を0.264sとすると、全閉時間(完全閉鎖)を0.012sとすると、この時間を周長に換算すると約12mmに相当する。吐出口52aの直径が9mmなので、12mmと9mmを加えて21mmとなり、この周長を角度に換算すると28.7°となる。このようにして回転体60の形状を決定することができる。
【0032】
実施形態2の回転弁体式開閉弁3を2連並列に並べてシート40に噴霧をした場合、噴霧された噴霧領域は長円形であり幅が9mmとなり、非噴霧領域44の幅は12mmとなる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明の回転弁体式開閉弁は、内燃機関に流す流体の開閉、冷暖房流体の開閉、2サイクルエンジンにおけるエアクリーナ装置等の開閉、水の散水のための開閉、繰り返しパターン印刷のための開閉などの用途に用いることができ、高速での開閉が可能であり、しかも、開閉する駆動部にかかる負荷を小さくすることが出来る。
【符号の説明】
【0034】
1 回転弁体式開閉弁
2 流体
3 回転弁体式開閉弁
10 ケーシング
11 流体流入部
11a 流入口
12 流体流出部
12a 吐出口
12b 内側開口
20 回転体
21 大径部
22 切り欠き部
23 モータ軸係合穴
30 モータ
31 モータ軸
32 ベアリング
40 シート
50 ケーシング
51 流体流入部
51a 流入口
52 流体流出部
52a 吐出口
60 回転体
61 大径部
62 切り欠き部