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特開2023-163396水中翼船の推進システムおよび水中翼船
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163396
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】水中翼船の推進システムおよび水中翼船
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/38 20060101AFI20231102BHJP
   B63B 1/18 20060101ALI20231102BHJP
   F01D 15/04 20060101ALI20231102BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20231102BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B63H21/38 B
B63B1/18 Z
F01D15/04
F02C7/22 C
F02C7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074288
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】宇井 岳夫
(57)【要約】
【課題】停電時の非常用燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジンへの燃料供給を継続して行う。
【解決手段】水中翼船100の推進システム7は、燃料タンク74と、燃料タンク74の燃料によって駆動され、水中翼船100の船体2を推進させるエンジン72と、エンジン72によって駆動される第1ポンプ77と、両端が第1ポンプ77に接続され、第1ポンプ77によって燃料が循環する第2流路73bと、第2流路73bの燃料の一部をエンジン72に分配する流量制御弁78と、第2流路73bに設けられ、第2流路73bの燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口79cが第1流路73aを介して燃料タンク74と連通するエゼクタ79とを備えている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクと、
前記燃料タンクの燃料によって駆動され、水中翼船の船体を推進させるエンジンと、
前記エンジンによって駆動される第1ポンプと、
両端が前記第1ポンプに接続され、前記第1ポンプによって燃料が循環する第2流路と、
前記第2流路の燃料の一部を前記エンジンに分配する分配機構と、
前記第2流路に設けられ、前記第2流路の燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口が第1流路を介して前記燃料タンクと連通するエゼクタとを備えている、水中翼船の推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記エンジンは、ガスタービンエンジンである、水中翼船の推進システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記第1流路に設けられ、前記燃料タンクの燃料を前記エゼクタの吸引口に供給する電動式の第2ポンプとをさらに備えている、水中翼船の推進システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記第2ポンプは、容積式ポンプであり、
前記第1流路に接続され、前記第2ポンプをバイパスする第4流路と、
前記第4流路を開閉する開閉弁とをさらに備えている、水中翼船の推進システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記開閉弁は、前記第1流路のうち前記第2ポンプよりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると開弁する、水中翼船の推進システム。
【請求項6】
請求項3に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記第1流路に設けられ、燃料に含まれる異物を分離除去するフィルタをさらに備えている、水中翼船の推進システム。
【請求項7】
請求項3に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記第1流路のうち前記第2ポンプよりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると、前記燃料圧力が閾値以下になったことを水中翼船の操縦者に報知する報知部をさらに備えている、水中翼船の推進システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の水中翼船の推進システムにおいて、
前記燃料タンクの底面は、前記エンジンよりも下方に位置する、水中翼船の推進システム。
【請求項9】
船体と、
前記船体に搭載される請求項1または2に記載の推進システムとを備えている水中翼船。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、水中翼船及びその推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、推進用のエンジンを備えた船舶の推進システムが知られている。この推進システムは、燃料タンクの燃料を昇圧してエンジンに供給する主ポンプと、主ポンプが故障等した際に代用される予備ポンプとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-68846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述したような一般船舶では、停電によりポンプが作動不可となった場合でも、エンジンへの燃料供給が継続して行われるよう、エンジンよりも高い位置に非常用の燃料タンクが設けられる場合がある。つまり、ポンプが作動不可となった際には、非常用の燃料タンクの燃料がその自重によってエンジンへ供給されるので、継続した燃料供給が可能となる。しかしながら、一般船舶よりも小型の水中翼船の場合、このような非常用の燃料タンクの設置スペースを確保するのは容易ではなく、そのため、停電時等にエンジンへの燃料供給を継続して行うことが困難である。
【0005】
本開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、停電時の非常用燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジンへの燃料供給を継続して行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水中翼船の推進システムは、燃料タンクと、エンジンと、第1ポンプと、第2流路と、分配機構と、エゼクタとを備えている。前記エンジンは、前記燃料タンクの燃料によって駆動され、水中翼船の船体を推進させる。前記第1ポンプは、前記エンジンによって駆動される。前記第2流路は、両端が前記第1ポンプに接続され、前記第1ポンプによって燃料が循環するものである。前記分配機構は、前記第2流路の燃料の一部を前記エンジンに分配する。前記エゼクタは、前記第2流路に設けられ、前記第2流路の燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口が第1流路を介して前記燃料タンクと連通している。
【0007】
また、本開示の水中翼船は、船体と、前記船体に搭載される前述の推進システムとを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の水中翼船の推進システムによれば、停電時の非常用燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジンへの燃料供給を継続して行うことができる。
【0009】
本開示の水中翼船によれば、停電時の非常用燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジンへの燃料供給を継続して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、右前方から視た水中翼船の斜視図である。
図2図2は、左後方から視た水中翼船の斜視図である。
図3図3は、右側方から視た水中翼船の側面図である。
図4図4は、水中翼船の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。
図5図5は、第1運転モード時の推進システムを示す概略構成図である。
図6図6は、第2運転モード時の推進システムを示す概略構成図である。
図7図7は、その他の実施形態に係る推進システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、右前方から視た水中翼船100の斜視図である。図2は、左後方から視た水中翼船100の斜視図である。
【0012】
図1および図2に示すように、水中翼船100は、船体2と、船体2に前部ストラット3を介して設けられた前部フォイル4と、船体2に後部ストラット5を介して設けられた後部フォイル6とを備えている。前部フォイル4および後部フォイル6は、水中翼であり、水中において揚力を発生させる。水中翼船100は、船の重量が船体2の浮力で支持される艇走状態と、前部フォイル4および後部フォイル6による揚力によって船体2が水面よりも上に浮上した状態で航行する翼走状態とに切り替え可能となっている。
【0013】
以下、水中翼船100の進行方向の前方を「前」、後方を「後」として前後方向を設定する。水中翼船100の進行方向の前方を向いて右側を「右」、左側を「左」として左右方向、即ち、幅方向を設定する。水中翼船100の高さ方向を上下方向に設定する。特段の断りが無い限り、「前後方向」とは、水中翼船100の前後方向を意味し、「幅方向」とは、水中翼船100の幅方向を意味する。また、船体2の前部とは、船体2を前後方向に2等分した場合の前半分を意味する。船体2の後部とは、船体2を前後方向に2等分した場合の後半分を意味する。
【0014】
図3は、右側方から視た水中翼船100の側面図である。尚、図3においては、水面Wが図示されており、実線は翼走時の水面Wであり、二点鎖線は艇走時の水面Wである。
【0015】
図3に示すように、船体2は、船底21を有している。この例では、船底21は、いわゆるストレートVタイプである。つまり、船底21は、幅方向の中央において船首から船尾に向かって延び、下方に突出する稜部22を有する。稜部22は、船底21の最下部を規定する。ただし、船底21のうち後部ストラット5よりも後方の最後部は、水平面で形成され、いわゆるフラットボトムとなっている。以下、船底21のうち、稜部22を有する部分をV字部23と称し、水平面で形成された部分をフラット部24と称する。
【0016】
図4は、水中翼船100の前後のストラット及びフォイルの斜視図である。この例では、水中翼船100は、1本の前部ストラット3を備えている。前部ストラット3は、船体2の前部であって幅方向の中央に設けられている。前部ストラット3の上端部は、船体2、より詳しくは、船底21に連結されている。
【0017】
前部ストラット3は、前部フォイル4を揚力が発生する第1位置に位置させる第1状態(図3参照)と、前部フォイル4を第1位置よりも上方の第2位置に位置させる第2状態(図示省略)との間で切り替え可能に構成されている。具体的には、前部ストラット3は、前後方向に回転するように、即ち、幅方向に延びる軸回りに回転するように、船体2に設けられている。
【0018】
第1状態は、前部ストラット3が船底21から下方へ延びる状態である。第1状態は、使用状態ということもできる。第2状態は、前部ストラット3が第1状態から前方へ回転して、船底21から前方へ延びる状態である。第2状態は、前部ストラット3および前部フォイル4を船体2に接近させた状態であり、格納状態ということもできる。さらに、前部ストラット3は、前後方向だけでなく、その軸心を中心に回転可能に船体2に設けられている。以下、特に断りがない限り、前部ストラット3等の構成を説明する際には、前部ストラット3は第1状態にあるものとする。
【0019】
前部フォイル4は、図4に示すように、前部ストラット3の下端部からそれぞれ左右に延びている。つまり、前部フォイル4は、前部ストラット3によって支持されている。
【0020】
前部フォイル4の後端部には、複数の前部フラップ41が設けられている。前部フラップ41は、船体2の幅方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。前部フラップ41が回動することにより、前部フォイル4による揚力が調節される。
【0021】
この例では、水中翼船100は、船体2の幅方向に並んで配置された少なくとも2本の後部ストラット5、より詳しくは、3本の後部ストラット5を備えている。後部ストラット5の上端部は、船体2、より詳しくは、船底21に連結されている。
【0022】
3本の後部ストラット5は、船体2の後部、即ち、船体2を前後方向に2等分した場合の後半分において幅方向に並んで設けられている。後部ストラット5は、後部フォイル6を揚力が発生する第1位置に位置させる第1状態(図3参照)と、後部フォイル6を第1位置よりも上方の第2位置に位置させる第2状態(図示省略)との間で切り替え可能に構成されている。具体的には、後部ストラット5は、前後方向に回転するように、即ち、幅方向に延びる軸回りに回転するように、船体2に設けられている。
【0023】
第1状態は、後部ストラット5が船底21から下方へ延びる状態である。第1状態は、使用状態ということもできる。第2状態は、後部ストラット5が第1状態から後方へ回転して、船底21から後方へ延びる状態である。第2状態は、後部ストラット5および後部フォイル6を船体2に接近させた状態であり、格納状態ということもできる。以下、3本の後部ストラット5を区別する場合には、左側から順に、左後部ストラット5、中央後部ストラット5、右後部ストラット5と称する。
【0024】
後部フォイル6は、図4に示すように、3本の後部ストラット5の下端部に設けられている。具体的には、左後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延び、右後部ストラット5の下端部と中央後部ストラット5の下端部とを連結するように後部フォイル6が左右に延びている。つまり、後部フォイル6は、後部ストラット5によって支持されている。
【0025】
後部フォイル6の後端部には、複数の後部フラップ61が設けられている。後部フラップ61は、幅方向に延びる軸回りに回動可能に設けられている。後部フラップ61が回動することにより、後部フォイル6による揚力が調節される。
【0026】
艇走状態では、前部ストラット3および後部ストラット5は第1状態でも第2状態でもよく、前部ストラット3および後部ストラット5の一方が第1状態となり他方が第2状態となる場合もある。翼走状態では、図3に示すように、前部ストラット3および後部ストラット5の両方が第1状態になる。つまり、水中翼船100は、翼走時には前部フォイル4および後部フォイル6の全体が水面Wよりも下方に没水する、いわゆる全没翼型の水中翼船である。
【0027】
また、水中翼船100は、翼走時において、前部ストラット3がその軸心回りに回転することにより、旋回時の釣り合いを取る。つまり、前部ストラット3は、前部フォイル4を支持する機能と、方向舵としての機能とを有している。
【0028】
水中翼船100は、図4に示すように、推進システム7を備えている。推進システム7は、船体2の内部に搭載され、船体2を推進させる。この例の推進システム7は、2組のジェットポンプ71およびエンジン72を備えている。1基のジェットポンプ71と1基のエンジン72とが1組となっている。
【0029】
2基のジェットポンプ71は、船体2の後部且つ底部において左右に配置されている。中央後部ストラット5の下端部には、前方に開口する吸水口51が設けられている。中央後部ストラット5の上端部は、二股に分岐し、それぞれ2基のジェットポンプ71に接続されている。中央後部ストラット5の内部には、給水路が形成されている。水は、吸水口51から中央後部ストラット5の内部に流入し、給水路を流れ、2基のジェットポンプ71にそれぞれ流入する。
【0030】
2基のエンジン72は、船体2の後部の左右にそれぞれ配置されている。各エンジン72は、ギヤボックス72a内の減速ギヤを介して、ジェットポンプ71に連結されている。
【0031】
ジェットポンプ71は、軸流ウォータジェットポンプである。ジェットポンプ71は、中央後部ストラット5から流入した水を後方へ噴射し、船体2を前方へ推進させる。エンジン72は、ジェットポンプ71を駆動する。エンジン72は、後述する燃料タンク74の燃料によって駆動される。つまり、エンジン72は、ジェットポンプ71を駆動することで船体2を推進させる。
【0032】
この例では、エンジン72は、ガスタービンエンジンである。ガスタービンエンジンでは、燃料を圧縮空気に噴射して燃焼させることでタービンが回転して、動力としての回転力が発生する。このエンジン72の回転力によって、ジェットポンプ71が駆動される。
【0033】
図5は、第1運転モード時の推進システム7を示す概略構成図である。図6は、第2運転モード時の推進システム7を示す概略構成図である。尚、図5および図6においては、ジェットポンプ71およびギヤボックス72aの図示を省略している。
【0034】
推進システム7は、燃料タンク74の燃料をエンジン72に供給する燃料供給システムも有する。具体的には、図5に示すように、推進システム7は、燃料タンク74と、燃料の流路73と、第1ポンプ77と、流量制御弁78と、エゼクタ79とを、燃料供給システムとして有している。流路73は、第1流路73a、第2流路73bおよび第3流路73cを有している。
【0035】
燃料タンク74は、エンジン72に供給する燃料、即ちエンジン72を駆動するための燃料を貯留する。この例では、燃料は、軽油等の油である。図3に示すように、燃料タンク74の底面74aは、エンジン72よりも下方に位置する。エンジン72および燃料タンク74は、船体2内の船底21に設けられている。より詳しくは、燃料タンク74は、V字部23に設けられ、エンジン72は、V字部23よりも高位置のフラット部24に設けられている。つまり、燃料タンク74の燃料は、その自重のみでエンジン72に供給されない。
【0036】
第2流路73b、第3流路73c、第1ポンプ77、流量制御弁78およびエゼクタ79は、2基のエンジン72のそれぞれに対応して2組設けられている。
【0037】
第1ポンプ77は、エンジン72によって駆動される燃料ポンプである。つまり、第1ポンプ77は、電動式の燃料ポンプではない。具体的には、第1ポンプ77の駆動軸は、エンジン72の出力軸と連結されており、エンジン72の回転力によって第1ポンプ77が駆動される。つまり、この例では、エンジン72の回転力によって、ジェットポンプ71および第1ポンプ77が駆動される。第1ポンプ77は、ガスタービンエンジンに付属する、いわゆる機付きポンプとも称される。
【0038】
第2流路73bは、両端が第1ポンプ77に接続され、第1ポンプ77によって燃料が循環する循環流路である。つまり、第2流路73bの一端である流入端は、第1ポンプ77の流出口77bに接続され、第2流路73bの他端である流出端は、第1ポンプ77の流入口77aに接続されている。第1ポンプ77は、第2流路73bにおいて燃料を循環させる。
【0039】
流量制御弁78は、第2流路73bの燃料の一部をエンジン72に分配する。流量制御弁78は、分配機構の一例である。流量制御弁78は、第2流路73bに設けられている。具体的には、流量制御弁78は、第2流路73bにおける第1ポンプ77の下流側、より詳しくは、第2流路73bにおける流入口77aよりも流出口77bに近い位置に設けられている。
【0040】
流量制御弁78は、第2流路73bを循環する燃料、即ち、第1ポンプ77から吐出された燃料の一部を第3流路73cを介してエンジン72に供給し、残りの燃料を第2流路73bで循環させる。第3流路73cは、流量制御弁78とエンジン72との間に接続されている。流量制御弁78は、エンジン72の駆動に必要な流量の燃料を第2流路73bから分流させる。つまり、流量制御弁78は、エンジン72に分配する燃料の流量を調整する。
【0041】
エゼクタ79は、第2流路73bに設けられ、第2流路73bの燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口79cが第1流路73aを介して燃料タンク74と連通している。第1流路73aの一端である流入端は、燃料タンク74に接続され、第1流路73aの他端である流出端は、吸引口79cに接続されている。より詳しくは、第1流路73aの流出端は、2つに分岐し、それぞれ2つのエゼクタ79の吸引口79cに接続されている。
【0042】
より詳しくは、エゼクタ79は、第2流路73bにおける第1ポンプ77の流入口77aと流量制御弁78との間に設けられている。つまり、第2流路73bでは、第1ポンプ77の流出口77b側から順に、流量制御弁78およびエゼクタ79が設けられている。エゼクタ79は、吸引口79c以外に、流入口79aおよび流出口79bを有している。エゼクタ79では、駆動流体である燃料が流入口79aから流入して流出口79bから流出することにより、吸引口79cに吸引作用が生じる。そのため、燃料タンク74の燃料が第1流路73aを介して吸引口79cに吸引され得る。つまり、第1ポンプ77が第2流路73bにおいて燃料を循環させることで、燃料タンク74の燃料が第2流路73bひいてはエンジン72に供給される。
【0043】
推進システム7には、エンジン72を始動させるモータ81が設けられている。具体的に、モータ81は、エンジン72に連結されると共に、直接もしくは歯車装置(図示省略)等を介して第1ポンプ77にも連結されている。すなわち、モータ81は、エンジン72および第1ポンプ77を同時に駆動する。モータ81は、エンジン72および第1ポンプ77の回転数を、エンジン72の始動に必要な初期回転数まで上昇させる。その後、エンジン72は、始動させられ、燃料を燃焼させての稼働となる。エンジン72が始動した後は、第1ポンプ77はエンジン72の動力によって駆動される。モータ81は、油圧式や電動式、空圧式等、種々の型式のモータを用いることができる。
【0044】
推進システム7は、第2ポンプ75と、フィルタ76と、第4流路73dと、逆止弁82とをさらに備えている。つまり、流路73は、第4流路73dをさらに有している。
【0045】
第2ポンプ75は、第1流路73aに設けられ、燃料タンク74の燃料をエゼクタ79の吸引口79cに供給する電動式の燃料ポンプである。第2ポンプ75は、容積式ポンプである。例えば、第2ポンプ75は、ギヤポンプやスクリューポンプである。容積式ポンプは、停止しているときは、燃料は流通不可である。
【0046】
フィルタ76は、第1流路73aに設けられ、燃料に含まれる異物を分離除去する。より詳しくは、フィルタ76は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分に設けられている。つまり、フィルタ76は、第2ポンプ75から吐出された燃料に含まれる異物を分離除去する。
【0047】
第4流路73dは、第1流路73aに接続され、第2ポンプ75をバイパスするバイパス流路である。より詳しくは、第4流路73dは、第2ポンプ75およびフィルタ76をバイパスしている。第4流路73dの一端である流入端は、第1流路73aにおける第2ポンプ75の上流側に接続され、第4流路73dの他端である流出端は、第1流路73aにおけるフィルタ76の下流側に接続されている。つまり、第4流路73dは、燃料タンク74とエゼクタ79の吸引口79cとに連通している。
【0048】
逆止弁82は、第4流路を開閉する。逆止弁82は、開閉弁の一例である。逆止弁82は、第4流路73dに設けられている。逆止弁82は、第4流路73dにおいて燃料タンク74側からエゼクタ79の吸引口79c側へ向かう燃料の流れのみを許容する。
【0049】
より詳しくは、逆止弁82は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると開弁する。図示しないが、例えば、逆止弁82は、弁体を開弁方向に付勢する付勢部材を有し、前述した燃料圧力が閾値以下になると、弁体が付勢部材の付勢力に抗して開弁する。この閾値は、例えば、第2ポンプ75が運転中に何らかの要因で作動不可となって停止した際、第1流路73aにおける第2ポンプ75よりもの下流側の部分の圧力が低下し得る値に設定される。
【0050】
推進システム7は、第5流路73eおよび圧力調整弁83をさらに備えている。つまり、流路73は、第5流路73eをさらに有している。
【0051】
第5流路73eは、第1流路73aの燃料を燃料タンク74に戻す戻し流路である。第5流路73eは、燃料タンク74と、第1流路73aにおける第2ポンプ75よりも下流側の部分とに連通している。より詳しくは、第5流路73eは、第1流路73aにおけるフィルタ76よりも下流側の部分に連通している。つまり、第5流路73eの一端である流入端は、第4流路73dにおける逆止弁82よりも下流側の部分に接続されている。第5流路73eの他端である流出端は、燃料タンク74に接続されている。
【0052】
圧力調整弁83は、第5流路73eに設けられている。圧力調整弁83は、第2ポンプ75が吐出する流量のうち、エンジン72が消費しない分の流量を燃料タンク74に還流させる一方、第1流路73aの圧力、すなわち吸引口79cの圧力を所定の値に調整する。
【0053】
推進システム7は、圧力センサ85および制御装置86をさらに備えている。
【0054】
圧力センサ85は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力を検出する。圧力センサ85は、第1流路73aにおいて、第2ポンプ75よりも下流側の部分、より詳しくは、フィルタ76よりも下流側の部分に設けられている。圧力センサ85は、制御装置86と通信可能であり、検出した燃料圧力を制御装置86に送信する。以下、特段の断りが無い限り、「検出圧力」とは、圧力センサ85が検出した燃料圧力を意味する。
【0055】
制御装置86は、第2ポンプ75、流量制御弁78、圧力調整弁83、モータ81等、推進システム7の全体を制御する。
【0056】
また、制御装置86は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が前述の閾値以下になると、前記燃料圧力が閾値以下になったことを水中翼船100の操縦者に報知する。つまり、制御装置86は、圧力センサ85から送信された検出圧力が閾値以下になると、そのことを操縦者に報知する。制御装置86は、報知部の一例である。例えば、制御装置86は、操縦者の操作画面等に表示したり、所定の報知音を発したりすることで報知する。
【0057】
このように構成された推進システム7では、第1運転モードと第2運転モードとが切り替え可能になっている。第1運転モードは、第2ポンプ75を駆動しながら、エンジン72に燃料を供給するモードである。第2運転モードは、第2ポンプ75が停止している状態で、エンジン72に燃料を供給するモードである。
【0058】
第1運転モード時の推進システム7では、図5に矢印で示すように、燃料タンク74の燃料がエンジン72に供給される。具体的には、先ず、モータ81によってエンジン72および第1ポンプ77の回転数が所定の回転数まで上昇し、それに伴って、第2流路73bにおいて燃料が循環し始める。このとき、流量制御弁78は、第2流路73bからエンジン72に燃料を分配しないように設定されている。つまり、第2流路73bでは、第1ポンプ77から吐出された燃料の全量が循環する。
【0059】
第1ポンプ77の回転数が所定の初期回転数まで上昇すると、制御装置86が流量制御弁78を制御して、第2流路73bの燃料の一部を第3流路73cを介してエンジン72に分配する。つまり、第2流路73bを循環する燃料の圧力が、エンジン72を駆動するために必要な圧力まで上昇すると、第2流路73bからエンジン72に高圧の燃料が分配される。こうして、エンジン72が駆動される。これに伴い、第1ポンプ77がエンジン72によって駆動される。
【0060】
第2流路73bでは、第1ポンプ77によって燃料が循環することで、エゼクタ79の吸引口79cに吸引作用が生じる。そのため、第1流路73aから吸引口79cに燃料が吸引される。吸引口79cに吸引された燃料は、第1ポンプ77によって第2流路73bを循環する。
【0061】
一方、エンジン72の始動操作を始める直前もしくは同時に、制御装置86によって第2ポンプ75が駆動される。そうすると、第2ポンプ75によって、燃料タンク74の燃料が第1流路73aを介して2つのエゼクタ79の吸引口79cに供給される。第1流路73aでは、第2ポンプ75から吐出された燃料がフィルタ76を通過する際、燃料に含まれる異物が分離除去される。そのため、清浄な燃料が吸引口79cに供給される。
【0062】
このように、第1運転モードでは、第2ポンプ75が燃料タンク74の燃料を吸引口79cに供給すると共に、吸引口79cが第2ポンプ75からの燃料を吸引する。つまり、第2ポンプ75によるポンプ作用と、エゼクタ79による吸引作用とによって、燃料タンク74の燃料が第2流路73bひいてはエンジン72に供給される。こうして、第2流路73bでは、循環する燃料の一部がエンジン72に供給される一方、燃料タンク74の燃料が補給される。これにより、エンジン72が正常に駆動される。
【0063】
また、第1運転モードでは、圧力制御弁83によって第1流路73aの圧力が制御される。つまり、圧力制御弁83により、燃料タンク74からエゼクタ79の吸引口79cに供給する燃料の圧力が調整される。これにより、適切な圧力の燃料を第2流路73bに供給することができる。
【0064】
第1運転モード時において、例えば、停電により第2ポンプ75が作動不可、即ち停止した場合、自動的に第2運転モードに切り替わる。第2運転モード時の推進システム7では、図6に矢印で示すように、燃料タンク74の燃料がエンジン72に供給される。
【0065】
具体的には、第2ポンプ75が停止すると、逆止弁82が自動的に開弁する。より詳しくは、第2ポンプ75が停止すると、第1流路73aにおける第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下、すなわち逆止弁82が開弁する圧力以下に低下するため、逆止弁82が開弁する。つまり、第1流路73aにおける第2ポンプ75よりも下流側の部分では、第2ポンプ75が停止することに加え、吸引口79cの吸引作用により、圧力が閾値以下に急激に低下する。そのため、逆止弁82は、第2ポンプ75の停止と略同時に開弁する。
【0066】
一方、第1ポンプ77は、エンジン72によって駆動されていることから停電によっては停止しない。そのため、第2流路73bでは、燃料が循環し続けるので、エゼクタ79の吸引口79cに吸引作用が継続して生じる。
【0067】
こうして、逆止弁82が開弁すると、燃料タンク74と吸引口79cとが、第1流路73aおよび第4流路73dを介して連通する。そのため、燃料タンク74の燃料は、吸引口79cに吸引される。吸引口79cに吸引された燃料は、第1ポンプ77によって第2流路73bを循環する。そして、第2流路73bを循環する燃料の一部は、第1運転モードと同様、エンジン72に分配される。こうして、燃料タンク74の燃料は、継続して第2流路73bひいてはエンジン72に供給される。
【0068】
また、圧力センサ85の検出圧力が閾値以下になると、制御装置86はそのことを水中翼船100の操縦者に報知する。これにより、操縦者は、第2ポンプ75が停止したことを速やかに把握することができる。そのため、第2ポンプ75の停止に関して速やかに対処することができる。
【0069】
このように、水中翼船100の推進システム7では、エンジン72によって駆動される第1ポンプ77が燃料を循環させる第2流路73bと、第2流路73bの燃料の一部をエンジン72に分配する流量制御弁78と、第2流路73bの燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口79cが第1流路73aを介して燃料タンク74と連通するエゼクタ79とが設けられている。そのため、停電した場合でも、エゼクタ79の吸引口79cには吸引作用が生じるので、継続して燃料タンク74の燃料が吸引口79cに吸引される。したがって、停電時の非常用燃料タンク、即ち、エンジン72よりも高い位置に設けられ、燃料がその自重のみでエンジン72に供給される燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジン72への燃料供給を継続して行うことができる。
【0070】
また、エンジン72は、ガスタービンエンジンである。ガスタービンエンジンは、例えばディーゼルエンジンと比べて、燃焼開始の回転数が高い。そのため、第1ポンプ77の運転回転数も高くなるので、第2流路73bにおける燃料の圧力が高くなる。そうすると、エゼクタ79の吸引口79cに生じる吸引力が増大する。そのため、例えば、第1流路73aの長さが長い場合やエンジン72と燃料タンク74との高低差が大きい場合であっても、吸引口79cは燃料タンク74の燃料を吸引し得る。
【0071】
また、推進システム7では、第1流路73aに設けられ、燃料タンク74の燃料を吸引口79cに供給する電動式の第2ポンプ75が設けられている。そのため、吸引口79cによる吸引力が不足する状態、例えば、燃料タンク74の燃料の液位が低下して吸引口79cが燃料を吸引し難くなる状態になった場合でも、燃料タンク74の燃料が第2流路73bに供給される。
【0072】
また、第2ポンプ75が容積式ポンプであるため、例えば燃料タンク74が第2ポンプ75よりも低い位置に設けられていても、燃料タンク74の燃料を第2ポンプ75によって容易に汲み上げることができる。そのため、燃料タンク74等の配置の自由度が増す。
【0073】
さらに、第1流路73aには第2ポンプ75をバイパスする第4流路73dが設けられ、第4流路73dには第4流路73dを開閉する開閉弁が設けられている。第2ポンプ75は容積式ポンプであるところ、停止した状態の第2ポンプ75では燃料を流通させることができない。この例では、停電等により第2ポンプ75が停止した場合、開閉弁を開弁することにより、燃料タンク74の燃料を第4流路73dを介して吸引口79cに供給することができる。
【0074】
また、第4流路73dに設けられる開閉弁は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると開弁する。停電等により第2ポンプ75が停止すると、吸引口79cの吸引作用にもよって、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下に低下する。そのため、第2ポンプ75が停止すると、自動的に開閉弁が開弁する。これにより、開閉弁に対する人為的操作が省略される。
【0075】
特に、開閉弁は、逆止弁82である。そのため、逆止弁82は、電気的な通信を行うことなく、自動的に開弁することができる。したがって、部品点数を削減することができる。
【0076】
また、第2ポンプ75が設けられている第1流路73aには、燃料に含まれる異物を分離除去するフィルタ76が設けられている。そのため、異物が分離除去された清浄な燃料を第2流路73bひいてはエンジン72に供給することができる。一方、フィルタ76を設けることにより、第1流路73aにおける圧力損失が増大する。そうすると、吸引口79cが燃料タンク74の燃料を十分に吸引することが困難になる虞がある。しかしながら、この例では、第2ポンプ75が設けられているため、燃料タンク74の燃料を吸引口79cに十分に供給することができる。
【0077】
また、推進システム7では、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になったことを操縦者に報知する制御装置86が設けられている。そのため、操縦者は、第2ポンプ75が停止したことを速やかに把握することができる。したがって、第2ポンプ75の停止に関して速やかに対処することができる。
【0078】
また、燃料タンク74の底面74aは、エンジン72よりも下方に位置する。そのため、エンジン72の上方空間が極めて制限される水中翼船100において、推進システム7を容易に配置することができる。
【0079】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0080】
例えば、本開示の水中翼船100の推進システムは、図7に示す構成としてもよい。図7は、その他の実施形態に係る推進システム7Aを示す概略構成図である。尚、図7においては、ジェットポンプ71およびギヤボックス72aの図示を省略している。この推進システム7Aは、前記実施形態の推進システム7において、第2ポンプ75、フィルタ76、第4流路73d、第5流路73eおよび圧力調整弁83を省略したものである。この推進システム7Aは、運転モードとしては、前記実施形態の第2運転モードのみを有する。つまり、この推進システム7Aでは、非停電時であっても停電時であっても、燃料タンク74の燃料は、第1流路73aを介してエゼクタ79の吸引口79cに吸引される。第2流路73bにおける動作や第1ポンプ77等の動作については前記実施形態と同様である。この例においても、前記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0081】
また、エンジン72は、ガスタービンエンジンに限らず、例えば、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0082】
また、推進システム7では、第5流路73eおよび圧力調整弁83を省略してもよい。
【0083】
また、第4流路73dに設ける開閉弁は、逆止弁82に限らず、例えば、電磁弁や電動弁等でもよい。
【0084】
また、制御装置86において、報知部としての機能を省略するようにしてもよい。
【0085】
以上のように、本開示の技術における第1の側面に係る水中翼船100の推進システム7,7Aは、燃料タンク74と、燃料タンク74の燃料によって駆動され、水中翼船100の船体2を推進させるエンジン72と、エンジン72によって駆動される第1ポンプ77と、両端が第1ポンプ77に接続され、第1ポンプ77によって燃料が循環する第2流路73bと、第2流路73bの燃料の一部をエンジン72に分配する流量制御弁78と、第2流路73bに設けられ、第2流路73bの燃料が駆動流体として流通すると共に、吸引口79cが第1流路73aを介して燃料タンク74と連通するエゼクタ79とを備えている。
【0086】
この構成によれば、停電した場合でも、エゼクタ79の吸引口79cには吸引作用が生じるため、継続して燃料タンク74の燃料が吸引口79cに吸引される。したがって、停電時の非常用燃料タンクを設けることなく、停電時でもエンジン72への燃料供給を継続して行うことができる。
【0087】
また、本開示の技術における第2の側面に係る水中翼船100の推進システム7,7Aは、第1の側面に係る水中翼船100の推進システム7,7Aにおいて、エンジン72は、ガスタービンエンジンである。
【0088】
この構成によれば、ガスタービンエンジンは、例えばディーゼルエンジンと比べて、燃焼開始の回転数が高いため、第1ポンプ77の運転回転数も高くなり、第2流路73bにおける燃料の圧力が高くなる。そのため、エゼクタ79の吸引口79cに生じる吸引力が増大する。そのため、吸引口79cは、確実に燃料タンク74の燃料を吸引することができる。
【0089】
また、本開示の技術における第3の側面に係る水中翼船100の推進システム7,7Aは、第1または第2の側面に係る水中翼船100の推進システム7において、第1流路73aに設けられ、燃料タンク74の燃料をエゼクタ79の吸引口79cに供給する電動式の第2ポンプ75とをさらに備えている。
【0090】
この構成によれば、吸引口79cによる吸引力が不足する状態になった場合でも、燃料タンク74の燃料を容易に第2流路73bに供給することができる。
【0091】
また、本開示の技術における第4の側面に係る水中翼船100の推進システム7は、第1乃至第3の側面の何れか1つに係る水中翼船100の推進システム7において、第2ポンプ75は、容積式ポンプであり、第1流路73aに接続され、第2ポンプ75をバイパスする第4流路73dと、第4流路73dを開閉する開閉弁とをさらに備えている。
【0092】
この構成によれば、第2ポンプ75が容積式ポンプであるため、例えば燃料タンク74が第2ポンプ75よりも低い位置に設けられていても、燃料タンク74の燃料を第2ポンプ75によって容易に汲み上げることができる。そのため、燃料タンク74等の配置の自由度が増す。さらに、第1流路73aには第2ポンプ75をバイパスする第4流路73dが設けられ、第4流路73dには第4流路73dを開閉する開閉弁が設けられている。第2ポンプ75は容積式ポンプであるところ、停止した状態の第2ポンプ75では燃料を流通させることができない。本開示の技術では、停電等により第2ポンプ75が停止した場合、開閉弁を開弁することにより、燃料タンク74の燃料を第4流路73dを介して吸引口79cに供給することができる。
【0093】
また、本開示の技術における第5の側面に係る水中翼船100の推進システム7は、第4の側面に係る水中翼船100の推進システム7において、開閉弁は、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると開弁する。
【0094】
この構成によれば、停電等により第2ポンプ75が停止すると、吸引口79cの吸引作用にもよって、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下に低下する。そのため、第2ポンプ75が停止すると、自動的に開閉弁が開弁する。これにより、開閉弁に対する人為的操作を省略することができる。
【0095】
また、本開示の技術における第5の側面に係る水中翼船100の推進システム7は、第3の側面に係る水中翼船100の推進システム7において、第1流路73aに設けられ、燃料に含まれる異物を分離除去するフィルタ76をさらに備えている。
【0096】
この構成によれば、異物が分離除去された清浄な燃料を第2流路73bひいてはエンジン72に供給することができる。一方、フィルタ76を設けることにより、第1流路73aにおける圧力損失が増大する。そうすると、吸引口79cが燃料タンク74の燃料を十分に吸引することが困難になる虞がある。しかしながら、この例では、第2ポンプ75が設けられているため、燃料タンク74の燃料を吸引口79cに十分に供給することができる。言い換えれば、第1流路73aに第2ポンプ75を設けているので、第1流路73aにおける圧力損失をそれ程気にすることなく、第1流路73aにフィルタ76を設けることができる。
【0097】
また、本開示の技術における第7の側面に係る水中翼船100の推進システム7は、第3乃至第6の側面の何れか1つに係る水中翼船100の推進システム7において、第1流路73aのうち第2ポンプ75よりも下流側の部分の燃料圧力が閾値以下になると、前記燃料圧力が閾値以下になったことを水中翼船の操縦者に報知する制御装置86をさらに備えている。
【0098】
この構成によれば、操縦者は、第2ポンプ75が停止したことを速やかに把握することができる。したがって、第2ポンプ75の停止に関して速やかに対処することができる。
【0099】
また、本開示の技術における第8の側面に係る水中翼船100の推進システム7は、第1乃至第7の側面の何れか1つに係る水中翼船100の推進システム7,7Aにおいて、燃料タンク74の底面74aは、エンジン72よりも下方に位置する。
【0100】
この構成によれば、エンジン72の上方空間が極めて制限される水中翼船100において、推進システム7を容易に搭載することができる。
【0101】
また、本開示の技術における第9の側面に係る水中翼船100は、船体2と、船体2に搭載される第1乃至第8の側面の何れか1つに係る推進システム7,7Aとを備えている。
【0102】
この構成によれば、第1の側面に係る水中翼船100の推進システム7,7Aと同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0103】
100 水中翼船
2 船体
7,7A 推進システム
72 ガスタービンエンジン(エンジン)
73a 第1流路
73b 第2流路
73d 第4流路
74 燃料タンク
74a 底面
75 第2ポンプ
76 フィルタ
77 第1ポンプ
78 流量制御弁(分配機構)
79 エゼクタ
79c 吸引口
82 逆止弁(開閉弁)
86 制御装置(報知部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7