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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163402
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】シートカバー
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20231102BHJP
   B60N 2/58 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A47C31/02 J
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074300
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛山 剛志
(72)【発明者】
【氏名】新田 厚史
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE03
(57)【要約】
【課題】シートに着座した際の撓みやすさを適切に調節することが可能なシートカバーを提供すること。
【解決手段】クッションカバー3C(シートカバー)は、シート天板部Aを覆う表皮材31と、表皮材31の裏面に積層されるカバーパッド32と、カバーパッド32の裏面に積層される裏基布33と、を有する。クッションカバー3Cは、その着座者を支持する高座圧領域Pのシート幅方向の複数の位置に、表皮材31を残してカバーパッド32と裏基布33とを貫通する孔部34を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート天板部を覆う表皮材と、該表皮材の裏面に積層されるカバーパッドと、該カバーパッドの裏面に積層される裏基布と、を有するシートカバーであって、
当該シートカバーの着座者を支持する高座圧領域のシート幅方向の複数の位置に、前記表皮材を残して前記カバーパッドと前記裏基布とを貫通する孔部を有するシートカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のシートカバーであって、
当該シートカバーが、前記シート天板部のシート幅方向に平坦状に延びる中央部分を覆う前記高座圧領域を成す天板メイン部と、前記シート天板部の前記中央部分よりも膨らむシート幅方向の両サイド部分を覆う一対の天板サイド部と、を有し、
前記天板メイン部の着座者から受ける荷重により伸長する前の前記カバーパッド及び前記裏基布のシート幅方向の周長が互いに同一とされるシートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートカバーに関する。詳しくは、シート天板部を覆う表皮材と、表皮材の裏面に積層されるカバーパッドと、カバーパッドの裏面に積層される裏基布と、を有するシートカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗物用シートのシート天板部を覆うシートカバーが開示されている。このシートカバーは、表皮材がファブリックで構成され、その所々の密度が部分的に下げられることで、シートに着座した際の撓みやすさが調節されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、表皮材が皮革で構成される場合に、撓みやすさの調節が難しい。そこで、本発明は、シートに着座した際の撓みやすさを適切に調節することが可能なシートカバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本発明のシートカバーは、次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明の第1の発明は、シート天板部を覆う表皮材と、該表皮材の裏面に積層されるカバーパッドと、該カバーパッドの裏面に積層される裏基布と、を有するシートカバーであって、当該シートカバーの着座者を支持する高座圧領域のシート幅方向の複数の位置に、前記表皮材を残して前記カバーパッドと前記裏基布とを貫通する孔部を有するシートカバーである。
【0007】
第1の発明によれば、シートカバーの高座圧領域のシート幅方向の複数の位置に表皮材を残してカバーパッドと裏基布とを貫通する孔部を形成する簡単な構成により、表皮材の見栄えを崩すことなく、シートに着座した際の撓みやすさを適切に調節することが可能となる。具体的には、シートカバーは、その高座圧領域のシート幅方向の複数の位置に孔部が形成されていることで、着座者から受ける荷重により裏基布が各孔部の孔幅を広げながら表皮材よりもシート幅方向に大きく伸長するように撓むことができるようになる。
【0008】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、当該シートカバーが、前記シート天板部のシート幅方向に平坦状に延びる中央部分を覆う前記高座圧領域を成す天板メイン部と、前記シート天板部の前記中央部分よりも膨らむシート幅方向の両サイド部分を覆う一対の天板サイド部と、を有し、前記天板メイン部の着座者から受ける荷重により伸長する前の前記カバーパッド及び前記裏基布のシート幅方向の周長が互いに同一とされるシートカバーである。
である。
【0009】
第2の発明によれば、シートカバーの天板メイン部を、シート天板部の平坦状に延びる中央部分に沿って見栄え良く張設することができる。なおかつ、このように見栄え良く張設できるシートカバーの天板メイン部を、撓みやすさを適切に調節することが可能な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係るシートカバーが適用されたシートの構成を表す斜視図である。
図2】シートクッションの平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図3のIV部拡大図である。
図5】シートカバーが着座者から受ける荷重により撓んだ状態を表す図4に対応する断面図である。
図6】他の実施形態に係るシートカバーの構成を表す図2に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートカバー(クッションカバー3C)を備えるシート1の構成について、図1図5を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、後述するシート1の左右方向を指すものとする。また、以下の説明において、具体的な参照図を示さない場合、或いは参照図に該当する符号がない場合には、図1図5のいずれかの図を適宜参照するものとする。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るシートカバー(クッションカバー3C)は、自動車の右側座席を成すシート1に適用されている。シート1は、着座乗員の背凭れ部を成すシートバック2と、着座部を成すシートクッション3と、を備える。
【0014】
図2図3に示すように、シートクッション3は、その内部骨格を成す金属製のクッションフレーム3F(シートフレーム)と、クッション部を成す発泡ウレタン製のクッションパッド3Pと、を有する。また、シートクッション3は、その表面全体を覆う面状のクッションカバー3C(シートカバー)を有する。
【0015】
クッションフレーム3Fは、その具体的な図示は省略されているが、シートクッション3の周囲側面に沿って延びる平面視枠状に組まれた構成とされる。クッションパッド3Pは、上記クッションフレーム3Fの上部に組み付けられて、その周縁部がクッションフレーム3Fにより図示下方から強固に支持される構成とされる。
【0016】
クッションパッド3Pは、シートクッション3の基本形状を形作っている。具体的には、クッションパッド3Pは、その上面部により、シートクッション3の着座面となる正面視凹状のシート天板部Aを形成している。シート天板部Aは、そのシート幅方向の中央部分A1において、着座者の尻部や大腿部を図示下方から真っ直ぐ支持する。また、シート天板部Aは、その中央部分A1よりも膨らむシート幅方向の両サイド部分A2において、着座者の尻部や大腿部をシート幅方向の両サイドから斜めに支持する。
【0017】
上記クッションパッド3Pの中央部分A1は、その上面部がシート幅方向に平坦状に延びる形状とされる。このクッションパッド3Pの中央部分A1のうち、着座者の尻部を支える後部領域は、着座者の体重の大部分を支える高座圧領域Pとなっている。上記クッションパッド3Pの中央部分A1は、図示は省略されているが、クッションフレーム3Fの前後の枠間に架橋された布バネ或いはSばねにより図示下方から弾性的に支持される構成とされる。
【0018】
クッションカバー3Cは、クッションパッド3Pの表面形状に合わせてカットされた複数枚のカバーピースが1枚に縫合されて成る。具体的には、クッションカバー3Cは、クッションパッド3Pの中央部分A1を覆う天板メイン部C1と、クッションパッド3Pの各側のサイド部分A2を覆う各天板サイド部C2と、を有する。クッションカバー3Cを構成する天板メイン部C1及び各天板サイド部C2は、それぞれ、次のような3層構造で構成されている。
【0019】
すなわち、図4に示すように、クッションカバー3Cは、本革製の表皮材31と、表皮材31の裏面に積層されるスラブウレタン製のカバーパッド32と、カバーパッド32の裏面に積層される不織布製の裏基布33と、の3層構造で構成されている。カバーパッド32は、その発泡成形後に裏基布33がラミネート加工により一体に接着された状態に積層されている。また、カバーパッド32は、上記成形後、その表面に表皮材31がホットメルト加工されて一体に接着された状態に積層されている。
【0020】
図3図4に示すように、上記クッションカバー3Cのうち、天板メイン部C1の高座圧領域Pに被せられる箇所には、丸孔状にあけられた複数の孔部34が形成されている。各孔部34は、天板メイン部C1の高座圧領域Pの全域に亘ってシート幅方向及びシート前後方向に満遍なく広く分布する形に形成されている。詳しくは、図4に示すように、各孔部34は、それぞれ、表皮材31を残してカバーパッド32と裏基布33とを厚さ方向に丸孔状に貫通する形に形成されている。
【0021】
上記構成により、図5に示すように、クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、着座者から受ける荷重によりシート裏側に向かって押圧される際に、裏基布33及び裏基布33に一体に接着されたカバーパッド32が各孔部34の孔幅を広げながらシート幅方向に大きく伸長するように撓むことができるようになっている。すなわち、図3に示すように、クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、前述したように、クッションパッド3Pのシート幅方向に平坦状に延びる中央部分A1の上面部に沿ってシート幅方向に平坦状に延びる形に張設されている。
【0022】
それに伴い、クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、着座者の荷重を受ける前の初期状態では、カバーパッド32及び裏基布33のシート幅方向の周長Wが互いに同一とされている。ここで、天板メイン部C1のカバーパッド32及び裏基布33のシート幅方向の周長Wとは、図3に示すように、天板メイン部C1がクッションパッド3Pの中央部分A1によってシート裏側(図示下側)から支えられる右端から左端までの間の領域のシート幅方向の周長Wを指している。
【0023】
天板メイン部C1は、その左右両サイドの各縁部が、隣り合う各天板サイド部C2のシート幅方向の内側の縁部と互いに縫合されている(縫合部C3)。そして、天板メイン部C1は、上記各縫合部C3が、クッションパッド3Pの中央部分A1と左右の各サイド部分A2との境界に沿って形成された吊込み溝内に吊り込まれて止着されている。
【0024】
クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、クッションパッド3Pのシート幅方向に平坦状に延びる中央部分A1の上面部に沿って張設されていることで、カバーパッド32の表面(図示上面)と裏基布33の裏面(図示下面)とが互いにシート幅方向に略平行に延びる形状とされる。それゆえに、天板メイン部C1のカバーパッド32及び裏基布33の初期状態におけるシート幅方向の周長Wは、互いに同一とされている。
【0025】
上記構成により、クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、クッションパッド3Pの平坦状に延びる中央部分A1に沿って浮きや皺を生じることなく見栄え良く張設される構成とされる。しかし、クッションカバー3Cの天板メイン部C1は、このような見栄え良く張設される構成でありながらも、着座者の荷重を受けて撓む時には、裏基布33及びカバーパッド32が、各孔部34の孔幅を広げながらシート幅方向に大きく伸長するように撓むことができるようになっている。
【0026】
すなわち、裏基布33は、カバーパッド32に一体に接着されてそれ自体がシート幅方向に伸長しにくい構成とされている。また、カバーパッド32も同様に、その裏面が裏基布33に一体接着されていることによりそれ自体がシート幅方向に伸長しにくい構成とされている。しかし、これらに貫通するように各孔部34が形成されていることにより、裏基布33及びカバーパッド32が、表皮材31よりもシート幅方向に大きく伸長するように撓むことができるようになっている。
【0027】
それにより、シートクッション3に着座した際の座圧を局所的に高くすることなく、シートクッション3の面内方向に広く適切に分散させて座り心地を向上させることができる。なお、各孔部34の配置や個々の大きさは特に限定されない。例えば、各孔部34を、着座者の座圧が特に高くなりやすい坐骨結節点の直下において他の領域よりも多く密集させたり形状を大きくしたりして、座圧が高くなりがちな箇所の座圧分散性をより高めるような構成としても良い。
【0028】
各孔部34は、丸孔形状に限らず、角孔や長孔その他の異形孔から成る構成であっても良い。
【0029】
以上をまとめると、本実施形態に係るシートカバー(クッションカバー3C)は次のような構成とされている。なお、以下において括弧書きで付す符号は、上記実施形態で示した各構成に対応する符号である。
【0030】
すなわち、シートカバー(3C)は、シート天板部(A)を覆う表皮材(31)と、表皮材(31)の裏面に積層されるカバーパッド(32)と、カバーパッド(32)の裏面に積層される裏基布(33)と、を有する。シートカバー(3C)は、その着座者を支持する高座圧領域(P)のシート幅方向の複数の位置に、表皮材(31)を残してカバーパッド(32)と裏基布(33)とを貫通する孔部(34)を有する。
【0031】
上記構成によれば、シートカバー(3C)に表皮材(31)を残してカバーパッド(32)と裏基布(33)とを貫通する複数の孔部(34)を形成する簡単な構成により、表皮材(31)の見栄えを崩すことなく、シートに着座した際の撓みやすさを適切に調節することが可能となる。具体的には、シートカバー(3C)は、その高座圧領域(P)のシート幅方向の複数の位置に孔部(34)が形成されていることで、着座者から受ける荷重により裏基布(33)が各孔部(34)の孔幅を広げながら表皮材(31)よりもシート幅方向に大きく伸長するように撓むことができるようになる。
【0032】
また、シートカバー(3C)が、シート天板部(A)のシート幅方向に平坦状に延びる中央部分(A1)を覆う高座圧領域(P)を成す天板メイン部(C1)と、シート天板部(A)の中央部分(A1)よりも膨らむシート幅方向の両サイド部分(A2)を覆う一対の天板サイド部(C2)と、を有する。天板メイン部(C1)の着座者から受ける荷重により伸長する前のカバーパッド(32)及び裏基布(33)のシート幅方向の周長(W)が互いに同一とされる。
【0033】
上記構成によれば、シートカバー(3C)の天板メイン部(C1)を、シート天板部(A)の平坦状に延びる中央部分(A1)に沿って見栄え良く張設することができる。なおかつ、このように見栄え良く張設できるシートカバー(3C)の天板メイン部(C1)を、撓みやすさを適切に調節することが可能な構成とすることができる。
【0034】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0035】
1.本発明のシートカバーは、自動車のシートクッションへの適用の他、シートバックやオットマン等の他のシート構造部にも適用することができるものである。また、鉄道等の自動車以外の車両の他、航空機や船舶等の車両以外の乗物用に供されるシートにも広く適用することができる。また、乗物の他、スポーツ施設や劇場、コンサート会場、イベント会場等の各種施設に設置されるシートやマッサージシート等の乗物以外のシートにも適用することができる。
【0036】
2.シートカバーは、合成皮革等の本革以外の皮革材の他、織物又は編物等のファブリックから成るものであっても良い。カバーパッドの表皮材への接着は、ホットメルト加工の他、ラミネート加工や接着剤を用いた接着によるものであっても良い。また、カバーパッドの裏基布への接着も、ラミネート加工の他、含浸硬化を伴う一体発泡成形によるもののや、接着剤を用いた接着によるものであっても良い。
【0037】
3.シートカバーの表皮材を残してカバーパッドと裏基布とを貫通するように形成される孔部は、図6に示すように、カバーパッド32と裏基布33とを貫通するように平面視C字状に切れ込みを入れる孔部35として形成されるものであっても良い。また、孔部を切れ込みによって形成する場合、切れ込みは特にC字状に限られるものでなく、V字状やU字状、クランク状、直線状、曲線状、又は折れ線状等の様々な形の切れ込みを採用することができる。
【0038】
4.シートカバーの複数の孔部が形成される高座圧領域は、着座者を支持する領域であれば良く、シートクッションにおける着座者の尻部を支える領域に限定されるものではない。すなわち、複数の孔部を形成するシートカバーの高座圧領域は、シートクッションにおける着座者の大腿部を支える領域であっても良い。また、シートバックにおける着座者の腰部や背部を支える領域であっても良い。
【0039】
なお、シートバックにおいては、着座者の腰部や肩甲骨を支える領域が、着座者の座圧が特に高くなりやすい領域とされる。したがって、このような領域に、複数の孔部を設定すると効果的な座圧分散が可能となる。着座者の座圧が特に高くなりやすい領域では、複数の孔部を他の領域よりも多く密集させたり形状を大きくしたりすることで、座圧分散性を適切に高めることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
3F クッションフレーム
3P クッションパッド
3C クッションカバー(シートカバー)
C1 天板メイン部
C2 天板サイド部
C3 縫合部
31 表皮材
32 カバーパッド
33 裏基布
34 孔部
35 孔部
A シート天板部
A1 中央部分
A2 サイド部分
W 周長
P 高座圧領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6