(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163406
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】毛髪処理剤、多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20231102BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20231102BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231102BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20231102BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20231102BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q5/00
A61K8/73
A61K8/46
A61K8/365
A61K8/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074308
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】辻 志保
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 亮子
(72)【発明者】
【氏名】名和 哲兵
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AB012
4C083AB351
4C083AB352
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC332
4C083AC352
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC681
4C083AC682
4C083AC691
4C083AC692
4C083AC771
4C083AC772
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC861
4C083AC862
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD282
4C083AD391
4C083AD392
4C083AD662
4C083CC33
4C083DD27
4C083DD41
4C083EE07
4C083EE28
4C083EE29
(57)【要約】
【課題】毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善する毛髪処理剤、多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法を提供する。
【解決手段】A及びBを含む毛髪処理剤であって、Aは、a1乃至a5から選ばれ、a1はスルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩、a2はステビオール配糖体又はその誘導体、a3はフルクタン又はその誘導体、a4は単糖アルコール又は二糖アルコール、a5は芳香族スルホン酸又はその塩であり、Bは還元剤である。第1剤と第2剤とを有する多剤式毛髪処理剤であって、第1剤が上記A及び上記Bを含み、第2剤が、コンディショニング成分を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A及び下記Bを含むことを特徴とする毛髪処理剤。
A:下記a1乃至a5からなる群から選ばれる少なくとも1種
a1:スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩
a2:ステビオール配糖体又はその誘導体
a3:フルクタン又はその誘導体
a4:単糖アルコール又は二糖アルコール
a5:芳香族スルホン酸又はその塩
B:還元剤
【請求項2】
前記Bが、SH基を有さない還元剤である請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
前記Aが0.01質量%以上含有され、且つ、Bが0.01質量%以上含有される請求項1又は2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
第1剤と第2剤とを有する多剤式毛髪処理剤であって、
前記第1剤が、下記A及びBを含み、
前記第2剤が、コンディショニング成分を含むことを特徴とする多剤式毛髪処理剤。
A:下記a1乃至a5からなる群から選ばれる少なくとも1種
a1:スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩
a2:ステビオール配糖体又はその誘導体
a3:フルクタン又はその誘導体
a4:単糖アルコール又は二糖アルコール
a5:芳香族スルホン酸又はその塩
B:還元剤
【請求項5】
請求項1に記載の毛髪処理剤と、毛髪と、を接触させる第1処理工程を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【請求項6】
請求項4に記載の多剤式毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法であって、
前記第1剤と、毛髪と、を接触させる第1処理工程と、
前記第2剤と、前記第1処理工程を経た毛髪と、を接触させる第2処理工程と、を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤、多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法に関する。更に詳しくは、毛質を改善する毛髪処理剤、多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛質は各人様々であるため、例えば、まとまり難い毛質である場合は、まとまり易くしたいというように、日常生活においてより扱い易い毛質を求めるという要求が存在する。このように必要に応じて毛質を変化させる技術として、下記特許文献1乃至3が知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-132191号公報
【特許文献2】特開2013-103882号公報
【特許文献3】特開2016-113384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、毛質は、例えば、人種差に起因するものや、生来の固有の毛質の差異だけでなく、各個人においても一定ではない。例えば、生活習慣の変化、ストレス、出産、加齢等の影響を受けて毛質が変化する。そのような毛質変化のなかでも、1本1本の毛髪に凸凹した形状を生じ、この凸凹に起因して、指当たりの悪さや、毛髪の広がりが生じ、日常生活における毛髪の扱い難さを生む場合がある。このような、毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さの改善が求められている。
【0005】
上記特許文献1には、毛髪一本一本の弾性を低下させて柔軟化し、太いアジア人毛の生来の硬い感触や、毛髪が損傷を受けることによる感触の悪化を改善することを目的とした毛髪化粧料が記載(段落[0007])されている。即ち、0.1~20質量%の所定の芳香族スルホン化合物と、カルニチン量として0.01~5質量%のカルニチン又はその塩と、を含有し、25℃におけるpHが2~8である毛髪化粧料が記載(請求項1)されている。しかしながら、特許文献1には、毛質変化によって生じる毛髪の凸凹について言及はなく、課題ともされておらず、まして解決手段についての記載はない。
【0006】
上記特許文献2には、毛髪中間部から毛先にかけてのうねりや毛先のハネを改善する毛髪処理剤組成物及び毛髪処理方法の記載(段落[0007])、並びに、たんぱく変性剤によるさらなる毛髪の引張り強度の低下を伴うことなく上記効果を奏する毛髪処理剤組成物及び毛髪処理方法の記載(段落[0007])がある。即ち、2剤以上を含む多剤式の毛髪処理剤組成物であって、サッカリンを含有する第1剤と、所定の化学構造(化1)を有する(A)成分(アスパルテーム、アスパルテーム酸に代表される)を含有する第2剤と、を含む毛髪処理剤組成物が記載(請求項2)されている。しかしながら、特許文献2には、毛質変化によって生じる毛髪の凸凹について言及はなく、課題ともされておらず、まして解決手段についての記載はない。
【0007】
上記特許文献3には、高温の加熱を伴う毛髪変形処理を行った際の毛髪について、柔らかさと滑らかさの感触に優れるものとする毛髪変形用第1剤及びこれを使用する毛髪変形処理方法の記載(段落[0006])がある。即ち、還元工程と、当該還元工程後の毛髪と70℃以上の発熱体とを接触させる加熱工程と、を備える毛髪変形処理方法における還元工程で毛髪に塗布される毛髪変形用第1剤であって、チオグリコール酸、システアミン、亜硫酸、及びそれらの塩から選ばれた1種又は2種以上の還元剤、トレハロース、並びにキレート剤が配合された毛髪変形用第1剤が記載(請求項1)されている。しかしながら、特許文献3には、毛質変化によって生じる毛髪の凸凹について言及はなく課題ともされておらず、まして解決手段についての記載はない。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善する毛髪処理剤、多剤式毛髪処理剤及び毛髪処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、毛髪の扱い難さの改善を目的として、毛質変化によって生じる凸凹形状の特定に努めた。その結果、凸凹形状は、(1)毛径(毛髪の長径や短径等、観察対象の径種に関わらない)の大きさが変化して生じる比較的小さな凸凹形状と、(2)毛髪の長径の角度が軸方向で変化(観察対象の毛径を長径等、1種に固定した場合に観察される変化)して生じる比較的大きな凸凹形状と、の少なくとも2種類が存在することを知見した。即ち、上記(1)の凸凹形状は、毛径の大きさ変化(長径角度変化の有無とは無関係)によって生じる形状であり、上記(2)に起因する凸凹形状と比較して相対的に小さく、例えば、長径が約1~20μm変化して生じるものであることを知見した。一方で、上記(2)の凸凹形状は、長径の角度変化(長径の大きさ変化の有無とは無関係)によって毛髪が伸長方向にねじれ、毛髪を側面視した場合にねじれが凸凹形状として認識されるものであることが知見された。この上記(2)の凸凹形状は、(1)の凸凹形状と比較して相対的に大きく、長径の40~80%に相当する凸凹形状であることを知見した。そして、これら(1)及び(2)の凸凹形状が、ざらざらとした指当たりの悪さを誘発したり、毛髪の広がりを誘発したりすると考えられた。
【0010】
しかしながら、上述のような凸凹形状、特に、上記(2)の凸凹形状は、コーティング剤によって緩和できるサイズを超えるものである。その一方、パーマネント処理剤や縮毛矯正処理等の化学処理を利用すれば毛髪形状を変えることは可能であるが、毛髪の中心部まで作用を及ぼし、相応の損傷を与えることになる。毛質変化は長期に及ぶことも多く、毛髪更新(毛髪伸長、生え変わり等)による改善が難しいため、長期利用し易い、解決手段が望ましい。そこで、本発明者らは、温和に毛髪の扱い難さを改善する方法について検討を行った。その結果、所定のA(a1乃至a5からなる群から選ばれる少なくとも1種)とB(還元剤)との併用により、上記凸凹形状が軽減されて上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明には以下が含まれる。
[1]下記A及び下記Bを含むことを特徴とする毛髪処理剤。
A:下記a1乃至a5からなる群から選ばれる少なくとも1種
a1:スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩
a2:ステビオール配糖体又はその誘導体
a3:フルクタン又はその誘導体
a4:単糖アルコール又は二糖アルコール
a5:芳香族スルホン酸又はその塩
B:還元剤
[2]前記Bが、SH基を有さない還元剤である上記[1]に記載の毛髪処理剤。
[3]前記Aが0.01質量%以上含有され、且つ、Bが0.01質量%以上含有される上記[1]又は[2]に記載の毛髪処理剤。
[4]第1剤と第2剤とを有する多剤式毛髪処理剤であって、
前記第1剤が、下記A及びBを含み、
前記2剤が、コンディショニング成分を含むことを特徴とする多剤式毛髪処理剤。
A:下記a1乃至a5からなる群から選ばれる少なくとも1種
a1:スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩
a2:ステビオール配糖体又はその誘導体
a3:フルクタン又はその誘導体
a4:単糖アルコール又は二糖アルコール
a5:芳香族スルホン酸又はその塩
B:還元剤
[5]上記[1]乃至[3]のうちのいずれかに記載の毛髪処理剤と、毛髪と、を接触させる第1処理工程を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
[6]上記[4]に記載の多剤式毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法であって、
前記第1剤と、毛髪と、を接触させる第1処理工程と、
前記第2剤と、前記第1処理工程を経た毛髪と、を接触させる第2処理工程と、を備えることを特徴とする毛髪処理方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の毛髪処理剤によれば、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる。
本発明の多剤式毛髪処理剤によれば、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる。
本発明の毛髪処理方法によれば、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】処理前毛髪(毛質変化による凸凹を有する)の3次元化像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳しく説明する。
尚、別途に明記しない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味し、「X~Y」の表記は「X以上且つY以下」を意味する。
また、一部の化合物の名称に関して、日本化粧品工業連合会成分表示名称リストに準じた名称、又は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)に準じた名称を用いる。
更に、一部の化合物の名称に関して、ポリオキシアルキレン鎖について、ポリオキシエチレン鎖を「POE」、ポリオキシプロピレン鎖を「POP」と略記する場合がある。また、これらの略記に続くカッコ内の数字は、各々付加モル数を表す。更に、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を表す。
【0015】
[1]毛髪処理剤
本発明の毛髪処理剤は、A(以下、「成分A」ともいう)及びB(以下、「成分B」ともいう)を含む。
【0016】
(1)成分A
成分Aは、下記a1乃至a5(以下、「成分a1」、「成分a2」、「成分a3」、「成分a4」、「成分a5」ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
a1:スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物又はその塩
a2:ステビオール配糖体又はその誘導体
a3:フルクタン又はその誘導体
a4:単糖アルコール又は二糖アルコール
a5:芳香族スルホン酸又はその塩
【0017】
(1-1)成分a1
成分a1には、スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物及びその塩が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記複素環化合物は、スルホニル基(-SO2-)を構成するS原子が、複素環の環骨格を形成している。環骨格を形成するスルホニル基は、1つの複素環に2つ以上を備えてもよいが、通常、1つである。
また、複素環は、何員環でもよいが、通常、4~8員環であり、4~6員環がより好ましい。
更に、複素環は、スルホニル基由来のS原子以外に、環骨格を構成する他のヘテロ原子を有することができる。
複素環骨格を構成する他のヘテロ原子を有する場合、他のヘテロ原子としては、窒素原子(N原子)、酸素原子(O原子)等を用いることができる。
【0018】
複素環骨格を構成する他のヘテロ原子としてN原子を有する場合、N原子は、複素環骨格を構成すると同時に、例えば、アミノ基(2級アミノ基、3級アミノ基)、アミド結合等を形成できる。
複素環骨格において、スルホニル基を構成するS原子と、他のヘテロ原子とは、炭素原子を介して結合されてもよいが、炭素原子を介さず、ヘテロ原子同士が結合されてもよい(例えば、スルホニル基とアミノ基とが隣り合って存在する等)
更には、複素環骨格を構成する他のヘテロ原子としては、窒素原子がより好ましい。
【0019】
このような複素環骨格としては、スルタム環、アセスルファム環等が挙げられる。
更に具体的には、このような複素環骨格を有する化合物として、サッカリン、サッカリン塩、アセスルファム、アセスルファム塩等が挙げられる。
塩(サッカリン塩、アセスルファム塩)を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのなかでは、アセスルファムやその塩よりもサッカリンやその塩の方が、アルカリ環境で利用し易いという観点から、サッカリン及び/又はサッカリン塩がより好ましい。
【0020】
(1-2)成分a2
成分a2には、ステビオール配糖体及びその誘導体が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ステビオール配糖体としては、ステビオシド、レバウジオシド(レバウジオシドA、同B、同C、同D、同E、同F等)、ズルコシド(ズルコシドA、同B等)、ルブソシド、ステビオールモノシド、ステビオールビオシド等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ステビオール配糖体の誘導体は、構造変化を伴ったステビオール配糖体を意味し、具体的には、ステビオール配糖体が有する置換基(例えば、ヒドロキシ基)のうちの少なくとも1つが他の置換基に置換された化合物が含まれる。他の置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基及びシアノ基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、ステビオール配糖体の塩、ステビオール配糖体の誘導体の塩、も成分a2に含まれる。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
この成分a2としては、上述の各種ステビオール配糖体のうちの特定のものを用いてもよいが、複数種のステビオール配糖体が同時に含まれたステビア抽出物を用いることができる。
【0021】
(1-3)成分a3
成分a3には、フルクタン及びその誘導体が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
フルクタンは、フルクトースが重合された形態を有する多糖である。フルクタンは、フルクトース以外に末端にグルコースを有することができる。フルクタンとしては、イヌリン型フルクタン、レバン型フルクタン、分岐型フルクタンなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、イヌリン型フルクタンとしては、イヌリンが挙げられる。レバン型フルクタンとしてはレバンが挙げられる。更に、分岐型フルクタンとしてはグラミナンが挙げられる。
【0022】
フルクタンの誘導体は、構造変化を伴ったフルクタンを意味し、具体的には、フルクタンが有する置換基(例えば、ヒドロキシ基)のうちの少なくとも1つが他の置換基に置換された化合物が含まれる。他の置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基及びシアノ基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、フルクタンの塩、フルクタンの誘導体の塩、も成分a3に含まれる。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分a3として、イヌリン型フルクタン及び/又は分岐型フルクタンが好ましく、更には、イヌリン型フルクタンが好ましく、イヌリンがより好ましい。
【0023】
(1-4)成分a4
成分a4には、単糖アルコール及び二糖アルコールが含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、単糖アルコールは、カルボニル基を有する単糖(アルドース、ケトース等)のカルボニル基がヒドロキシ基へ還元された形態を有する化合物である。単糖アルコールとしては、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、二糖アルコールは、カルボニル基を有する二糖のカルボニル基がヒドロキシ基へ還元された形態を有する化合物である。二糖アルコールとしては、ラクチトール、マルチトール等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0024】
更に、単糖アルコールの誘導体、二糖アルコールの誘導体等も成分a4として利用できる。これらの誘導体は、構造変化を伴った糖アルコールを意味し、具体的には、糖アルコールが有する置換基(例えば、ヒドロキシ基)のうちの少なくとも1つが他の置換基に置換された化合物が含まれる。他の置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基及びシアノ基等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、糖アルコールの塩も成分a4に含まれる。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分a4として、上述の化合物のなかでも二糖アルコールが好ましく、更には、ラクチトールが好ましい。
【0025】
(1-5)成分a5
成分a5には、芳香族スルホン酸及びその塩が含まれる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、芳香族スルホン酸は、芳香環とスルホン酸基とを有する化合物であり、ベンゼンスルホン酸(4-アミノベンゼンスルホン酸等);トルエンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸、オルトトルエンスルホン酸、メタトルエンスルホン酸等);キシレンスルホン酸(2,3-キシレンスルホン酸、2,4-キシレンスルホン酸、2,5-キシレンスルホン酸(2,5-ジメチルベンゼンスルホン酸等)、2,6-キシレンスルホン酸等):ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸;ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸;オキシベンゼンスルホン酸類(アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸等);グアイアズレンスルホン酸;クロモトロープ酸;インデンスルホン酸;ナフタレンスルホン酸(1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸等);ナフタレンジスルホン酸(2,7-ナフタレンジスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物等);1-アミノ-8-ナフトール-3,6-ジスルホン酸(H酸等);テトラヒドロナフタレンスルホン酸;6-テトラリンスルホン酸(1-メチル-4-ブチル-6-テトラリンスルホン酸等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、芳香族スルホン酸の塩も成分a5に含まれる。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分a5として、上述の化合物のなかでもパラトルエンスルホン酸塩(特にパラトルエンスルホン酸ナトリウム)が好ましい。
【0026】
これらの成分Aの利用が、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる理由は定かではないが、成分Aの使用・不使用の比較から、毛髪の摩擦低減に寄与すると共に、毛径の均一化により大きく寄与していることが分かる。更に、成分Aの利用により毛髪の柔軟性が上がり、各種成分の浸透を促進する効果があると考えられる。より具体的には、成分Aは、毛髪内のイオン結合や疎水結合を弱めたり、緩めたり、切断したりする作用、これらのうちの少なくとも1つの作用を有するのではないかと考えられる。その一方、S-S結合(ジスルフィド結合)のような共有結合を切断するほどの強い作用は有していないものと考えられる。このような作用は、化合物の構造内に疎水部と親水部とを有し、毛髪内部へ浸透し易い化合物としての大きさを有しているという共通項を有しているが、成分Aのなかでも、特に成分a1を利用する場合に最も優れた効果を発揮できる。
【0027】
(2)成分B
成分Bは、還元剤である。
成分Bとして利用できる還元剤は、還元作用があれば限定されることなく利用できる。この還元剤としては、チオール基を有さない還元剤と、チオール基を有する還元剤と、が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。本発明の毛髪処理剤では、より温和な作用を有することから、チオール基を有さない還元剤が好ましい。
【0028】
チオール基を有さない還元剤としては、亜硫酸、亜硫酸塩、ピロ亜硫酸、ピロ亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸、チオ硫酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
チオール基を有する還元剤としては、メルカプトアルカノール類(チオグリコール酸、チオグリコール酸塩(チオグリコール酸物エタノールアミン、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸グリセリルなど)等)、メルカプトカルボン酸類(チオ乳酸等)、メルカプトジカルボン酸類(チオリンゴ酸等)、システイン、システイン誘導体(システアミン、アセチルシステイン等)、ジチオ化合物類(ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール等)、グルタチオン、グルタチオン誘導体、チオタウリン、チオタウリン誘導体、チオール基を有するラクトン化合物類(プロピオラクトンチオール、ブチロラクトンチオール、バレロラクトンチオール)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。塩を構成する陽イオンとしては、Na、K、Li等のアルカリ金属イオンや、アンモニウムイオン(-NH3)、エルゴチオネイン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0029】
成分Bの利用が、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる理由は定かではないが、成分Bの使用・不使用の比較から、成分Bの利用により毛径の均一化に寄与すると共に、毛髪の摩擦低減により大きく寄与していることが分かる。更に、成分Bの利用により毛髪の柔軟性が上がり、各種成分の浸透を促進する効果があると考えられる。より具体的には、成分Bは、S-S結合(ジスルフィド結合)を切断する作用を有すると考えられ、成分Aと異なる作用により、成分Aと相乗的に毛髪の扱い難さを改善できると考えられる。特に後述の毛髪強度の評価から、成分Bのなかでも、チオール基を有さない還元剤は、毛髪強度の低下を抑制しつつ上記作用を発揮できることが分かる。これは、亜硫酸塩等の還元剤が親水性に優れ、毛髪の親水領域のジスルフィド結合を切断するためと考えられる。毛髪のジスルフィド結合は、親水領域にも疎水領域にも存在するが、一般に、親水領域のジスルフィド結合は毛髪強度への影響が小さいとされる。このため、毛髪強度への影響がより少ないジスルフィド結合の選択的切断により、毛髪強度への影響を抑えて、毛径の均一化及び摩擦低減に寄与できるのではないかと考えることができる。
【0030】
(3)成分Aと成分Bとの量比
本毛髪処理剤に含まれる成分A及び成分Bの量は限定されないが、本毛髪処理剤全体を100質量%とした場合に、成分Aの含有量の下限は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上とすることができ、0.1質量%以上とすることができ、1質量%以上とすることができ、2質量%以上とすることができる。一方、成分Aの含有量の上限は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下とすることができ、10質量%以下とすることができ、5質量%以下とすることができ、3質量%以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。
【0031】
また、成分Aのなかでも、a1(スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物、その塩)であって、更には、スルホニル基構成S原子を環骨格に有する複素環化合物の塩であって、更には、複素環化合物がサッカリンである場合、優れた水溶性を示す。このため、成分Aがa1の塩であり、a1の複素環化合物がサッカリンである場合の含有量の下限は、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることができ、1質量%以上とすることができ、2質量%以上とすることができる。一方、その上限は40質量%以下とすることができ、30質量%以下とすることができ、20質量%以下とすることができ、15質量%以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.1質量%以上40質量%以下とすることができ、0.5質量%以上30質量%以下とすることができ、1質量%以上30質量%以下とすることができ、2質量%以上30質量%以下とすることができ、2質量%以上20質量%以下とすることができ、2質量%以上15質量%以下とすることができる。
【0032】
また、本毛髪処理剤全体を100質量%とした場合に、成分Bの含有量の下限は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上とすることができ、0.1質量%以上とすることができ、0.5質量%以上とすることができる。一方、成分Bの含有量の上限は15質量%以下とすることができ、7質量%以下とすることができ、3.5質量%以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上15質量%以下とすることができ、0.05質量%以上7質量%以下とすることができ、0.1質量%以上3.5質量%以下とすることができる。
【0033】
更に、成分Aを100質量部とした場合に、成分Bの含有量の下限は0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上とすることができ、10質量部以上とすることができ、20質量部以上とすることができる。一方、成分Bの含有量の上限は100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下とすることができ、40質量部以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.1質量部以上100質量部以下とすることができ、1質量部以上50質量部以下とすることができ、20質量部以上40質量部以下とすることができる。
【0034】
(4)その他の成分
本毛髪処理剤は、上述した成分A及び成分B以外の他の成分を含まなくてもよいが、必要に応じて他の成分を含むことができる。
他の成分を含有する場合、毛髪処理剤全体を100質量%とした場合に、99質量%以下とすることが好ましく、98質量%以下とすることができ、更に97質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、50質量%以上、更には、65質量%以上、更には、80質量%以上とすることができる。具体的には、毛髪処理剤全体に対してその他の成分は、50~99質量%とすることができ、65~98質量%とすることができ、80~97質量%とすることができる。
【0035】
他の成分としては、高分子化合物、アルカリ剤、pH調整剤(緩衝剤を含む)、界面活性剤、油性成分、多価アルコール、安定剤、酸化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、無機塩、液媒、キレート化剤、ペプチド類、アミノ酸類、ビタミン類、糖類(成分Aを除いた糖類)、植物エキス、香料、着色剤(染料を含む)、並びに「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種等の成分などを含有できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0036】
(4-1)高分子化合物
本毛髪処理剤では、高分子化合物の利用によりその性状(粘性等)を調整することができる。高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアルキルエーテル(メチルセルロース、エチルセルロース等)、ニトロセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系高分子;アラビアガム、カラギーナン、ガラクタン、グアーガム、クインスシードガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、カードラン、サクシノグルカン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アルゲコロイド(褐藻エキス)、アルブミン、プルラン等の天然系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム等)、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;カルボキシビニルポリマー、高重合ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン等の合成高分子等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。尚、高分子化合物の重量平均分子量は、100,000以上とすることができる。
【0037】
本毛髪処理剤では、これらのなかでもセルロース系高分子が好ましく、更には、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
高分子化合物を用いる場合、その含有量は限定されない。毛髪処理剤全体を100質量%とした場合、高分子化合物の含有量の下限は限定されないが、通常、0.1質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。高分子化合物の含有量の上限は限定されないが、通常、20質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.1質量%以上20質量%以下とすることができ、1質量%以上10質量%以下とすることができ、2質量%以上7質量%以下とすることができる。
【0038】
(4-2)アルカリ剤
本毛髪処理剤では、アルカリ剤の利用により毛髪を膨潤させることができ、成分A及び成分Bの作用をより効果的に発揮させることができる。アルカリ剤としては、本毛髪処理剤をアルカリ性状にすることができる成分であれば限定なく利用できる。アルカリ剤としては、有機化合物(有機アルカリ剤)を用いてもよく無機化合物(無機アルカリ剤)を用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0039】
上述のうち有機アルカリ剤としては、アミン化合物、塩基性アミノ酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、アミン化合物としては、アルカノールアミンや、その他のアミン化合物(アルカノールアミン以外のアミン化合物)が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミン等が挙げられる。その他のアミン化合物としては、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジンが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、塩基性アミノ酸としては、アルギニン、リジン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0040】
また、無機アルカリ剤としては、アンモニア、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、水酸化物(アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物)、無機アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等が挙げられる。炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩としては、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸第1アンモニウム、リン酸第2アンモニウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物としては、塩化アンモニウム等が挙げられる。水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。無機アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸第1アンモニウム、リン酸第2アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0041】
本毛髪処理剤では、これらのなかでも、アンモニア、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウムが好ましく、更には、毛髪への浸透の観点からモノエタノールアミン、アンモニアが好ましい。
アルカリ剤を用いる場合、その含有量は限定されない。毛髪処理剤全体を100質量%とした場合、アルカリ剤の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。アルカリ剤の含有量の上限は限定されないが、通常、15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上15質量%以下とすることができ、0.5質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上5質量%以下とすることができる。
【0042】
(4-3)pH調整剤
本毛髪処理剤では、pH調整剤の利用により毛髪処理剤全体のpHを調整することができ、特にアルカリ剤との併用により、所望のアルカリ性状へ調整できる。pH調整剤としては、本毛髪処理剤のpHを調整することができる成分であれば限定なく利用できる。pH調整剤としては、無機化合物(無機pH調整剤)を用いてもよく有機化合物(有機pH調整剤)を用いてもよく、これらを併用してもよい。
このうち、無機pH調整剤としては、無機酸を利用することができる。無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。また、有機pH調整剤としては、有機酸を利用することができる。有機酸としては、クエン酸、酢酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
本毛髪処理剤では、これらのなかでも、無機pH調整剤が好ましく、更には、アルカリ性条件下で緩衝能を有するという観点から、リン酸が好ましい。
pH調整剤を用いる場合、その含有量は限定されない。毛髪処理剤全体を100質量%とした場合、pH調整剤の含有量の下限は限定されないが、通常、0.001質量%以上であり、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。pH調整剤の含有量の上限は限定されないが、通常、5質量%以下であり、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.001質量%以上5質量%以下とすることができ、0.01質量%以上2質量%以下とすることができ、0.05質量%以上1質量%以下とすることができる。
【0044】
(4-4)液媒
本毛髪処理剤では、液媒の利用により毛髪処理剤全体の性状及び使用感等を調整することができる。液媒としては、溶媒及び分散媒を含む。液媒としては、水及び有機液媒が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、有機液媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、シリコーン、炭化水素等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。アルコールとしては、エタノール、プロパノール(イソプロパノール、n-プロパノール等)、ブタノール(2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、n-ブタノール等)等が挙げられる。エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステルとしては、酢酸エチル、酢酸ビニル等が挙げられる。シリコーンとしては、シクロトリシロキサン、シクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シリコーン、低重合ジメチルポリシロキサン(例えば、平均重合度10以下)、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。炭化水素としては、イソドデカン、イソオクタン等の分枝炭化水素(例えば、炭素数16以下)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
本毛髪処理剤では、これらのなかでも、水を用いることが好ましい。
液媒を用いる場合、その含有量は限定されない。毛髪処理剤全体を100質量%とした場合、液媒の含有量の下限は限定されないが、通常、1質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。液媒の含有量の上限は限定されないが、通常、99質量%以下であり、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、1質量%以上99質量%以下とすることができ、30質量%以上95質量%以下とすることができ、60質量%以上90質量%以下とすることができる。
【0046】
(5)剤型
本毛髪処理剤の剤型(25℃における剤型)は、限定されないが、例えば、液状(液体)とすることができ固体状とすることができる。液状である場合、粘稠な液状(粘稠な液体)であってもよいし、非粘稠な液状(非粘稠な液体)であってもよい。粘稠な状態として、例えば、クリーム状、ペースト状、ジェル状等が挙げられる。一方、非粘稠な状態として、例えば、水溶液状、乳液状(OW乳化液、WO乳化液、多重乳化液)、泡状(ムース上)等が挙げられる。一方、固体状である場合、例えば、粉状、粒状、ゲル状などが挙げられる。
本毛髪処理剤では、これらのなかでも、毛髪への浸透性等を効果的に得るという観点、及び、使用時に必要に応じたpHを得やすいという観点等から、剤型は液状が好ましい。液状の毛髪処理剤は、どのような包材を用いて扱ってもよく、公知の包材を適宜利用できる。即ち、例えば、ポンプ、ミスト容器、ムース容器等から吐出することが可能となり、ポンプタイプ、ミストタイプ、ムースタイプの製品とすることができる。
【0047】
液状の場合の粘度の下限は限定されないが、例えば、1~20,000mPa・s、更に5~15,000mPa・s、更に10~10,000mPa・sとすることができる。
また、特に上述のうち粘稠な液状とする場合、その下限は限定されないが、例えば、5,000mPa・s以上、更に7,500mPa・s以上、更に10,000mPa・s以上とすることができ、その上限は限定されないが、例えば、25,000mPa・s以下、更に20,000mPa・s以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、5,000~25,000mPa・sとすることができ、7,500~20,000mPa・sとすることができ、10,000~20,000mPa・sとすることができる。
また、特に上述のうち非粘稠な液状とする場合、その下限は限定されないが、例えば、1mPa・s以上、更に10mPa・s以上、更に50mPa・s以上とすることができ、その上限は限定されないが、例えば、10,000mPa・s以下、更に5,000mPa・s以下とすることができ、更に2,500mPa・s以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。即ち、例えば、1~10,000mPa・sとすることができ、10~5,000mPa・sとすることができ、50~2,500mPa・sとすることができる。
尚、粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で行う。また、粘度5,000mPa・s未満の場合、3号ローター、回転速度12rpm且つ1分間の測定条件、粘度5,000~50,000mPa・sの場合、4号ローター、回転速度12rpm且つ1分間の測定条件、粘度50,000mPa・s超の場合、4号ローター、回転速度6rpm且つ1分間の測定条件とする。
【0048】
本毛髪処理剤の用途は限定されず、単独で用いることもできるが、各種トリートメント成分を含む組成物(トリートメント組成物、シャンプー組成物等)、毛髪着色組成物(酸化染毛剤、カラートリートメント、カラーシャンプー、ヘアマニキュア等)、毛髪形状変更組成物(パーマ剤、縮毛矯正剤、カーリング剤、スタイリング剤等)などを後処理剤とし、これら後処理剤の使用前に本毛髪処理剤を用いることができる。即ち、これら後処理剤の前に利用する前処理剤として用いることができる。これにより、後処理剤の作用を向上させることができる。即ち、例えば、後処理剤に含まれるトリートメント成分等が毛髪へ浸透することを促進させることができる。上述のなかでも、本発明では、トリートメント組成物、シャンプー組成物が好ましく、更には、トリートメント、シャンプーがより好ましい。
【0049】
[2]毛髪処理方法
本発明の毛髪処理方法は、前述した毛髪処理剤と毛髪とを接触させる第1処理工程を備えることを特徴とする。そして、本毛髪処理方法によれば、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる。
【0050】
第1処理工程において、毛髪処理剤と毛髪とを接触させる方法は限定されず、結果的にこれらが接触されればよい。即ち、例えば、毛髪へ直接毛髪処理剤を滴下する操作、刷毛等を用いて毛髪処理剤を毛髪に塗布する操作、櫛を用いて毛髪処理剤を毛髪に塗布する操作、手袋を装着した手で毛髪処理剤を毛髪に塗布する操作、毛髪処理剤をミストとして毛髪に塗布する操作等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、第1処理工程において用いる毛髪処理剤はpH6.5超に調整されていることが好ましい。この調整は、予め施されており、例えば、容器に収容された毛髪処理剤が既にpH6.5超に調整されていてもよいし、第1処理工程前にpHを調整するpH調整工程を備えることで、pH調整を行ってもよい。
第1処理工程において用いる毛髪処理剤がpH6.5超に調整されている場合には、より効果的に扱い難さを改善でき、特に摩擦低減効果、まとまり促進効果、くせ改善効果において優れる。
【0052】
第1処理工程における毛髪処理剤pHの下限は上記の通り6.5超が好ましく、7.1以上がより好ましく、8.0以上が更に好ましく、8.8以上が特に好ましい。一方、第1処理工程における毛髪処理剤pHの上限は11.5以下が好ましく、10.4以下がより好ましく、9.9以下が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、pH6.5超pH11.5以下とすることができ、pH6.8以上pH11.5以下とすることができ、pH7.1以上pH10.4以下とすることができ、pH8.8以上pH9.9以下とすることができる。
【0053】
本発明の毛髪処理方法では、更に、本毛髪処理剤と毛髪とを接触させた状態を保持する第1保持工程を備えることができる。第1保持工程を備える場合、保持時間は限定されないが、保持時間の下限は、例えば、0.5分以上とすることができ、1分以上とすることができ、2分以上とすることができ、3分以上とすることができる。一方、保持時間の上限は、例えば、60分以下とすることができ、45分以下とすることができ、30分以下とすることができ、15分以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.5分以上60分以下とすることができ、1分以上45分以下とすることができ、2分以上30分以下とすることができる。
【0054】
また、第1処理工程における温度は限定されないが、温度の下限は、例えば、-10℃以上とすることができ、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。一方、温度の上限は、例えば、60℃以下とすることができ、55℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、-10℃以上60℃以下とすることができ、0℃以上55℃以下が好ましく、5℃以上50℃以下がより好ましく、10℃以上45℃以下が更に好ましい。尚、この温度は、赤外線温度計により毛髪の温度を測定することにより取得できる。
【0055】
本毛髪処理方法は、接触された毛髪処理剤を毛髪から洗い落とす第1洗毛工程を備えることができる。第1洗毛工程はどのように行ってもよく、例えば、水で毛髪を濯ぐ操作、お湯で毛髪を濯ぐ操作、洗浄剤(シャンプー、石鹸)を用いて洗い落す操作などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、本毛髪処理方法は、第1洗毛工程の後、毛髪を乾燥させる第1乾燥工程を備えることができる。第1乾燥工程はどのように行ってもよく、例えば、自然乾燥、吸水乾燥(タオル等を利用)、風乾燥(ドライヤー等を利用、熱風乾燥、冷風乾燥等)などの方法を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0056】
[3]多剤式毛髪処理剤
本発明の多剤式毛髪処理剤は、第1剤と第2剤とを有する。
このうち第1剤は、成分A及び成分Bを含む。即ち、本発明の多剤式毛髪処理剤が有する第1剤は、上記[1]において毛髪処理剤として説明した通りである。
一方、第2剤は、コンディショニング成分を含む。
コンディショニング成分(以下、単に「成分C」ともいう)は、より良い毛質へと整える作用を有する成分である。
成分Cとしては、例えば、下記の成分c1乃至成分c7が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分c1:有機酸
成分c2:アミノ酸、ペプチド及びタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種
成分c3:糖
成分c4:植物油及び植物エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種
成分c5:カチオン性ポリマー及びシリコーン油からなる群から選ばれる少なくとも1種
成分c6:尿素又はその誘導体
成分c7:18-MEA又はその類似体
【0057】
(1)コンディショニング成分
(1-1)成分c1
成分c1は、有機酸である。有機酸の種類は限定されないが、例えば、酒石酸、レブリン酸、乳酸、グリコール酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、アスコルビン酸等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、酒石酸、レブリン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酢酸が好ましく、更に、乳酸、酒石酸、レブリン酸がより好ましく、とりわけ乳酸が好ましい。成分c1の利用により、毛髪を引き締めて第1剤の効果を高めることができる。
成分c1を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c1の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.10質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c1の含有量の上限は限定されないが、通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上10質量%以下とすることができ、0.10質量%以上10質量%以下とすることができ、0.15質量%以上2質量%以下とすることができる。
【0058】
(1-2)成分c2
成分c2は、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
成分c2であるアミノ酸(アミノ酸類似物質を含む)の種類は限定されないが、例えば、アルギニン、テアニン、ヒスチジン、トレオニン、グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、シスチン等のアミノ酸及びこれらの塩;タウリン等のアミノ酸類似化合物及びこれらの塩;などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分c2であるペプチド及びタンパク質としては、動物性蛋白質、植物性蛋白質、これらの加水分解物(加水分解蛋白)、カチオン化加水分解蛋白等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、動物性蛋白質としては、ケラチン、コラーゲン、シルク、コンキオリン、エラスチン、フィブロイン、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。植物性蛋白質としては、大豆、コムギ、オオムギ、カラスムギ、アーモンド等の植物から得られる植物性蛋白質(大豆蛋白、コムギ蛋白、オオムギ蛋白、カラスムギ蛋白、アーモンド蛋白)が挙げられる。加水分解蛋白には、上述の各種蛋白質を、酸、アルカリ、酵素等により加水分解した成分が含まれる。また、カチオン化加水分解蛋白には、加水分解蛋白を変性剤によりカチオン化させた成分や、予め変性されたカチオン化蛋白を加水分解した成分等が含まれる。加水分解蛋白としては、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解シルク、加水分解コンキオリン、加水分解大豆蛋白等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0059】
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、アミノ酸(アミノ酸類似物質を含む)が好ましく、更には、アルギニン、テアニン、タウリン、シスチンが好ましい。成分c2の利用により、毛髪の強度を高めることができる。
成分c2を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c2の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c2の含有量の上限は限定されないが、通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上10質量%以下とすることができ、0.05質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上2質量%以下とすることができる。
【0060】
(1-3)成分c3
成分c3は、糖(第1剤の成分Aを除く)である。糖の種類は限定されないが、例えば、トレハロース、マルトース、グリコシルトレハロース、N-アセチルグルコサミン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、トレハロースが好ましい。成分c3の利用により、まとまりを向上させることができる。
成分c3を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c4の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c3の含有量の上限は限定されないが、通常、10質量%以下であり、7質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上10質量%以下とすることができ、0.05質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上3.5質量%以下とすることができる。
【0061】
(1-4)成分c4
成分c4は、植物油及び植物エキスからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
植物油は植物から得られた油であればよく、その種類、採取方法、採取部位等は限定されない。植物エキスは植物から得られたエキスであればよく、その種類、採取方法、採取部位等は限定されない。例えば、植物から搾汁した搾汁液、植物や搾汁液等から抽出された抽出液等を利用できる。また、抽出液を利用する場合、抽出方法は限定されず、水及び/又は有機溶媒(メタノール、エタノールなど)等を用いた抽出液(メタノール抽出液、エタノール抽出液)を利用できる。植物油及び植物エキスのための原料植物は限定されず、例えば、葉、茎、根、花、樹皮、果皮、果実、種、樹液等のいずれの部位を用いてもよく、これらのうちの1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0062】
成分c4である植物油としては、マカデミア種子油、メドウフォーム油、ホホバ種子油、コメ胚芽油、ヒマワリ種子油、オリーブ油、ブドウ種子油、アーモンド油、杏仁油、桃仁油、パーシック油、シア脂、ローズヒップ油、ツバキ油、茶実油、サザンカ油、アルガニアスピノサ核油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、月見草油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、アボカド油、カロット油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、パーム油等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0063】
成分c4である植物エキスとしては、ホウライシダ葉エキス、モモ葉エキス、マンダリンオレンジ果皮エキス、サトウカエデ樹液、ロブスタコーヒーノキ種子エキス、ハマメリス葉エキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アロエエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オトギリソウエキス、オレンジエキス、カイソウエキス、カミツレエキス、カモミールエキス、カンゾウエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、グレープフルーツエキス、クワエキス、コケモモエキス、ゴボウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンショウエキス、ゼニアオイエキス、ジオウエキス、シソエキス、シナノキエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、セイヨウサンザシエキス、タイムエキス、チャエキス、チョウジエキス、ドクダミエキス、ハイビスカスエキス、パセリエキス、ビワエキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ムクロジエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ライチエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0064】
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、植物エキスが好ましく、更には、ホウライシダ葉エキスが好ましい。成分c4の利用により、手触りを向上させることができる。
成分c4を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c4の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c4の含有量の上限は限定されないが、通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上10質量%以下とすることができ、0.05質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上2質量%以下とすることができる。
【0065】
(1-5)成分c5
成分c5は、カチオン性ポリマー及びシリコーン油からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
成分c5であるカチオン性ポリマーの種類は限定されないが、例えば、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
このうち、カチオン化セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10)等が挙げられる。カチオン化グアーガムとしては、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム等が挙げられる。ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム)(ポリクオタニウム-6)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)、アクリル酸/ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体等が挙げられる。4級化ポリビニルピロリドンとしては、ビニルピロリドンとメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体と硫酸ジエチルから得られる4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
成分c5であるシリコーンの種類は限定されないが、例えば、変性シリコーン、ジメチルシリコーン(ジメチコン、高重合ジメチコン、低重合ジメチコン、ジメチコノール、高重合ジメチコノール、低重合ジメチコノール等)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、変性シリコーンが好ましい。変性シリコーンとしては、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、アミノ変性シリコーンが好ましい。アミノ変性シリコーンとしては、ジメチルシリコーンとγ-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルシロキサンの共重合体が挙げられる。具体的には、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アモジメチコン)、アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(アミノプロピルジメチコン)、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体(トリメチルシリルアモジメチコン)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本多剤式毛髪処理剤における第2剤では、これらのなかでも、アモジメチコンが好ましい。
【0067】
成分c5を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c5の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c5の含有量の上限は限定されないが、通常、20質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上20質量%以下とすることができ、0.05質量%以上10質量%以下とすることができ、0.1質量%以上7質量%以下とすることができる。
【0068】
(1-6)成分c6
成分c6は、尿素又はその誘導体である。尿素の誘導体としては、尿素が備えるアミノ基を構成する水素原子が他の原子団によって置換された構造が挙げられる。これらの置換は、1つのアミノ基が有する2つの水素原子に対する置換であってもよいし、1つの水素原子に対する置換であってもよい。更に、これらの置換は、尿素が有する2つのアミノ基のうちの一方のみになされていてもよいし、両方になされていてもよい。このような尿素の誘導体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル尿素、1,3-ビス(2-ヒドロキシエチル)尿素などのモノウレイド系化合物(尿素誘導体)が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分c6を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c6の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c6の含有量の上限は限定されないが、通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上10質量%以下とすることができ、0.05質量%以上5質量%以下とすることができ、0.1質量%以上3質量%以下とすることができる。
【0069】
(1-7)成分c7
成分c7は、18-MEA又はその類似体である。このうち、18-MEAは、18-メチルエイコサン酸を表す。また、18-MEA類似体は、毛髪に対して18-MEAと同様の毛髪表面に対する保護作用を発揮する成分であり、炭素数10~40の脂肪酸、炭素数10~40の脂肪酸のカルボキシ末端に4級アンモニウム化合物を結合させてなる4級アンモニウム化合物及びその塩等が挙げられる。炭素数10~40の脂肪酸としては、ラノリン脂肪酸が挙げられる。また、上記4級アンモニウム化合物及びその塩としては、イソアルキル(C10-40)アミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート、クオタニウム-33等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
成分c7を用いる場合、その含有量は限定されない。多剤式毛髪処理剤の第2剤全体を100質量%とした場合、成分c7の含有量の下限は限定されないが、通常、0.01質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。成分c7の含有量の上限は限定されないが、通常、5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、0.01質量%以上5質量%以下とすることができ、0.05質量%以上3質量%以下とすることができ、0.1質量%以上1.5質量%以下とすることができる。
【0070】
(6)その他の成分
本多剤式毛髪処理剤の第2剤は、上述した成分c1乃至成分c7以外の他の成分を含まなくてもよいが、必要に応じて他の成分を含むことができる。
他の成分を含有する場合、第2剤全体を100質量%とした場合に、99質量%以下とすることが好ましく、98質量%以下とすることができ、更に97質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、50質量%以上、更には、65質量%以上、更には、80質量%以上とすることができる。具体的には、多剤式毛髪処理剤の第2剤全体に対してその他の成分は、50~99質量%とすることができ、65~98質量%とすることができ、80~97質量%とすることができる。
【0071】
他の成分としては、高分子化合物(カチオン性ポリマー及びシリコーン油を除く)、pH調整剤(緩衝剤を含む)、界面活性剤、油性成分、多価アルコール、安定剤、酸化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、無機塩、液媒、キレート化剤、ビタミン類、香料、着色剤(染料を含む)、並びに「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種等の成分などを含有できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0072】
(6-1)液媒
本多剤式毛髪処理剤の第2剤は、液媒の利用により多剤式毛髪処理剤全体の性状及び使用感等を調整することができる。液媒としては、溶媒及び分散媒を含む。液媒としては、水及び有機液媒が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、有機液媒としては、第1剤(毛髪処理剤)として前述した通りである。
本多剤式毛髪処理剤の第2剤では、これらのなかでも、水を用いることが好ましい。
液媒を用いる場合、その含有量は限定されない。第2剤全体を100質量%とした場合に、99質量%以下とすることが好ましく、98質量%以下とすることができ、更に97質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、50質量%以上、更には、65質量%以上、更には、80質量%以上とすることができる。具体的には、多剤式毛髪処理剤の第2剤全体に対して液媒は、50~99質量%とすることができ、65~98質量%とすることができ、80~97質量%とすることができる。
【0073】
(7)剤型
本多剤式毛髪処理剤の第2剤の剤型(25℃における剤型)は、限定されないが、例えば、液状(液体)とすることができ固体状とすることができる。液状である場合、粘稠な液状(粘稠な液体)であってもよいし、非粘稠な液状(非粘稠な液体)であってもよい。粘稠な状態として、例えば、クリーム状、ペースト状、ジェル状等が挙げられる。一方、非粘稠な状態として、例えば、水溶液状、乳液状(OW乳化液、WO乳化液、多重乳化液)、泡状(ムース上)等が挙げられる。一方、固体状である場合、例えば、粉状、粒状、ゲル状などが挙げられる。
本多剤式毛髪処理剤の第2剤では、これらのなかでも、毛髪への浸透性等を効果的に得るという観点、及び、使用時に必要に応じたpHを得やすいという観点等から、剤型は液状が好ましく、更には、非粘稠な液状がより好ましい。非粘稠な液状の毛髪処理剤は、どのような包材を用いて扱ってもよく、公知の包材を適宜利用できる。即ち、例えば、ポンプ、ミスト容器、ムース容器等から吐出することが可能となり、ポンプタイプ、ミストタイプ、ムースタイプの製品とすることができる。
【0074】
非粘稠な液状の場合の粘度の下限は限定されないが、例えば、1mPa・s以上、更には10mPa・s以上、特に50mPa・s以上とすることができる。一方、粘度の上限は限定されないが、例えば、30,000mPa・s以下、更には10,000mPa・s以下、特に5,000mPa・s以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。
尚、粘度の測定は、B型粘度計を用いて25℃で行う。また、粘度5,000mPa・s未満の場合、3号ローター、回転速度12rpm且つ1分間の測定条件、粘度5,000~50,000mPa・sの場合、4号ローター、回転速度12rpm且つ1分間の測定条件、粘度50,000mPa・s超の場合、4号ローター、回転速度6rpm且つ1分間の測定条件とする。
【0075】
本多剤式毛髪処理剤の第2剤の用途は限定されず、単独で用いることもできるが、各種トリートメント成分を含む組成物(トリートメント組成物、シャンプー組成物等)などとすることができる。即ち、第1剤を前処理剤とし、第2剤を後処理剤として用いることができる。第1剤を第2剤の前に利用することにより、第2剤の作用を向上させることができる。即ち、例えば、第2剤に含まれるトリートメント成分等が毛髪へ浸透することを促進させることができる。
【0076】
[4]毛髪処理方法
本発明の毛髪処理方法は、本発明の多剤式毛髪処理剤を用いた毛髪処理方法であって、
第1剤と、毛髪と、を接触させる第1処理工程と、
第2剤と、第1処理工程を経た毛髪と、を接触させる第2処理工程と、を備えることを特徴とする。そして、本毛髪処理方法によれば、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる扱い難さを改善できる。
【0077】
本多剤式毛髪処理剤は、前述の通り、第1剤と第2剤とを有するが、このうち第1剤は、上記[1]において毛髪処理剤として説明した剤である。従って、本毛髪処理方法の第1処理工程は、上記[2]において毛髪処理方法として説明した通りである。
【0078】
第2処理工程は、第2剤と第1処理工程を経た毛髪とを接触させる工程である。
第2処理工程において、第2剤と毛髪とを接触させる方法は限定されず、結果的にこれらが接触されればよい。即ち、例えば、毛髪へ直接第2剤を滴下する操作、刷毛等を用いて第2剤を毛髪に塗布する操作、櫛を用いて第2剤を毛髪に塗布する操作、手袋を装着した手で第2剤を毛髪に塗布する操作、第2剤をミストとして毛髪に塗布する操作等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0079】
本毛髪処理方法では、更に、第2剤と毛髪とを接触させた状態を保持する第2保持工程を備えることができる。第2保持工程を備える場合、保持時間は限定されないが、保持時間の下限は、例えば、5秒以上とすることができ、15秒以上とすることができ、30秒以上とすることができ、1分以上とすることができる。一方、保持時間の上限は、例えば、120分以下とすることができ、90分以下とすることができ、60分以下とすることができ、30分以下とすることができる。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。
【0080】
また、第2処理工程における温度は限定されないが、温度の下限は、例えば、-10℃以上とすることができ、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。一方、温度の上限は、例えば、60℃以下とすることができ、55℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、45℃以下が更に好ましい。これらの上下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、-10℃以上60℃以下とすることができ、0℃以上55℃以下が好ましく、5℃以上50℃以下がより好ましく、10℃以上45℃以下が更に好ましい。尚、この温度は、赤外線温度計により毛髪の温度を測定することにより取得できる。
【0081】
本毛髪処理方法は、接触された第2剤を毛髪から洗い落とす第2洗毛工程を備えることができる。第2洗毛工程はどのように行ってもよく、例えば、水で毛髪を濯ぐ操作、お湯で毛髪を濯ぐ操作、洗浄剤(シャンプー、石鹸)を用いて洗い落す操作などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、本毛髪処理方法は、第2洗毛工程の後、毛髪を乾燥させる第2乾燥工程を備えることができる。第2乾燥工程はどのように行ってもよく、例えば、自然乾燥、吸水乾燥(タオル等を利用)、風乾燥(ドライヤー等を利用、熱風乾燥、冷風乾燥等)などの方法を利用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0082】
例えば、第1処理工程と第2処理工程とを連続的に行う場合、これらの工程の間に時間を介してもよい。第1処理工程において第1剤と毛髪とが接触されてから、第2処理工程において第2剤と毛髪とを接触されるまでの間は、30分以内とすることが好ましく、20分以内とすることがより好ましく、10分以内とすることが更に好ましい。
【0083】
また、濯ぎ工程は有さなくともよいが、上述の通り、第1処理工程と第2処理工程との間に毛髪を濯ぐ工程を介することができる。濯ぎ工程の導入により、第1剤が毛髪内に残留することによって、第2剤の作用濃度が低下することを抑制できる。このような観点からは、第1剤を洗い流すための工程、即ち、例えば、濯ぎ工程を導入することが好ましい。更に、濯ぎ工程の導入により、第1処理工程における第1剤の作用時間をより適切にコントロールできる。即ち、第1剤に含まれる還元剤は、毛髪に対して過剰な時間にわたって作用されることは好ましくない。このため、濯ぎ工程の導入により、還元剤を毛髪から洗い流すことで、第1処理工程をより確実に停止させることができる。この場合、濯ぎ工程の開始は、第1処理工程における第1剤の適用開始から、60分以内であることが好ましく、45分以内がより好ましく、30分以内がさらに好ましく、15分以内が特に好ましい。
【0084】
また、本方法において利用する第1剤と第2剤との量は各々限定されないが、例えば、第1剤全体を100質量%とした場合に、第2剤の使用量は、400質量%以下とすることが好ましく、300質量%以下とすることができ、更に200質量%以下とすることができ、更に150質量%以下とすることができる。その下限値は限定されないが、例えば、10質量%以上、更には、30質量%以上、更には、50質量%以上、更には、70質量%以上とすることができる。10~400質量%とすることができ、30~300質量%とすることができ、50~200質量%とすることができ、70~150質量%とすることができる。
更に、第1処理工程及び第2処理工程は、各々1回ずつ行ってもよいが、繰り返して行うこともできる。即ち、第1処理工程と第2処理工程とを1セットとして繰り返すこともできるし、第1処理工程後に第2処理工程のみを繰り返すこともできる。また、これらの工程後に、第1剤及び第2剤とは異なる他剤(第3剤など)を適用する更なる多剤式毛髪処理工程とすることもできる(即ち、3剤以上の多剤式毛髪処理剤の利用)。
【実施例0085】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0086】
[1]毛髪処理剤(多剤式毛髪処理剤における第1剤)の調製
表1及び表2に示す成分(但し、HECを除く)を表1及び表2に示す質量割合で混合することにより、水溶液状の毛髪処理剤(実施例1-1乃至1-14及び比較例1-15乃至1-16)を調製した。これらは、表1及び表2に示す「毛径変化低減」、「摩擦低減」及び「毛髪強度」の評価に利用した。
表1及び表2に示す成分(但し、HECを含む)を表1及び表2に示す質量割合で混合することにより、ゲル状の毛髪処理剤(実施例1-1乃至1-14及び比較例1-15乃至1-16)を調製した。これらは、表5に示す多剤式毛髪処理剤における第1剤として利用し、「まとまり」の評価に利用した。
尚、水溶液状の毛髪処理剤と、ゲル状の毛髪処理剤と、はHEC配合の有無による性状のみが異なる剤であるため、便宜的に同じ実施例番号及び比較例番号を付した。各毛髪処理剤の調製方法は以下の通りである。
【0087】
(1)調製方法
水溶液状の毛髪処理剤は、成分Aと成分Bを精製水に溶かし、アルカリと酸でpHを調整し、合計100%となるように精製水を加えて調製した。
また、ゲル状の毛髪処理剤は、成分Aと成分Bを精製水に溶かし、アルカリと酸でpHを調整した後、増粘させた高分子化合物(下記HEC)と混合し、合計100%となるように精製水を加えて調製した。
【0088】
(2)成分の詳細
表1及び表2に示す各成分は、以下の通りである。
・(成分A、成分a1)サッカリンNa:サッカリンナトリウム
・(成分A、成分a2)ステビオシド
・(成分A、成分a3)イヌリン
・(成分A、成分a4)ラクチトール
・(成分A、成分a5)PTS-Na:パラトルエンスルホン酸ナトリウム
・(成分B)亜硫酸Na:亜硫酸ナトリウム、SH基を有さない還元剤
・(成分B)ピロ亜硫酸Na:ピロ亜硫酸ナトリウム、SH基を有さない還元剤
・(成分B)システアミン塩酸塩:SH基を有する還元剤
・(成分B)チオグリコール酸アンモニウム:SH基を有する還元剤
・HEC:ヒドロキシエチルセルロース(高分子化合物)
・アルカリ剤:モノエタノールアミン
・リン酸:(pH調整剤)
【0089】
[2]毛髪処理剤(多剤式毛髪処理剤における第1剤)の評価
(1)毛径変化低減の評価
本発明の効果を確認するため下記により毛径変化低減の評価を行った。
中国人毛(ビューラックス社)であって同一人毛から、根元側(外因に拠らない新生毛による凸凹形状を有する箇所、以下同様)に凸凹形状を有する毛髪を25本選択し、プロマスターLT(ホーユー社製)を用いてブリーチ処理を3回行ったものを処理前毛髪とした。そして、毛髪1本1本を略直線状に透明支持台に支持し、各毛髪を伸長方向に沿って回転させながら、毛髪の外径を寸法測定器(キーエンス社製、型式「LS-9000」)により測定した。この測定は、各毛髪の根元側から先端側へ向けて5cmの範囲を測定し、0.25mm毎に360度回転するように螺旋状に計測を行った。得られたデータから、根元側から先端側へ向けて5cmの範囲の0.25mm毎の長径を算出した。得られた複数の長径値の平均値及び標準偏差を算出した。これら平均値及び標準偏差から、1本の毛髪の長径の相対標準偏差を算出し、処理前毛髪の平均相対標準偏差R0を得た。
【0090】
上記の処理前測定を終えた25本の毛髪を、実施例1-1の毛髪処理剤に15分間浸漬した後、水1Lを利用して毛髪を濯ぎ、乾燥させることで実施例1-1の毛髪処理剤を用いた処理後毛髪を得た。そして、処理前毛髪と同様にして、処理後毛髪の平均相対標準偏差R1を得た。
次いで、得られた平均相対標準偏差R0及びR1を用いて「R1/R0×100」を計算して処理前後の相対標準偏差変化率(%)を得た。同様の操作を、実施例1-2乃至1-14及び比較例1-15乃至1-16の各毛髪処理剤を用いて行った。
その結果、変化率が80%以下であるものを「◎」、80%超90%以下であるものを「〇」、90%超100%以下であるものを「△」として評価し、表1の毛径変化低減の欄に示した。
【0091】
(2)摩擦低減の評価
本発明の効果を確認するため下記により摩擦低減の評価を行った。
中国人毛(ビューラックス社)であって同一人毛から、根元側に凸凹形状を有する毛髪を選択して処理前毛髪とした。そして、この処理前毛髪20本を互いに重ならないように並べたうえで、摩擦感テスター(KES-SE型、カトーテック株式会社製)を使用し、ピアノ線ワイヤセンサーを用いて、処理前毛髪のMIU値(平均摩擦係数)とMMD値(平均摩擦係数の変動)とを記録した。
上記(1)毛径変化低減の評価において用いた処理後毛髪20本を同様に測定して、処理後毛髪のMIU値(平均摩擦係数)とMMD値(平均摩擦係数の変動)とを記録した。
得られたデータから処理前毛髪のMIU値(MIU0)に対する処理後毛髪のMIU値(MIU1)の低減率[(MIU0-MIU1)/MIU0×100]を算出した。また、同様に、処理前毛髪のMMD値(MMD0)に対する処理後毛髪のMMD値(MMD1)の低減率[(MMD0-MMD1)/MMD0×100]を算出した。
その結果、MIU値の低減率及びMMD値の低減率の両方が35%以上であるものを「◎」、MIU値の低減率及びMMD値の低減率のいずれかが35%以上であるものを「〇」、MIU値の低減率及びMMD値の低減率のいずれもが35%未満であるものを「△」として評価し、表1及び表2に示した。尚、例えば、実施例1-1のMIU値の低減率は50.5%、MMD値の低減率は40.3%であった。比較例1-15のMIU値の低減率は40.6%、MMD値の低減率は21.3%であった。比較例1-16のMIU値の低減率は26.2%、MMD値の低減率は34.6%であった。
【0092】
【0093】
【0094】
(3)毛髪強度の評価
本発明の効果を確認するため下記により毛髪強度の評価を行った。
中国人毛(ビューラックス社)であって同一人毛から、毛径の揃った(毛径75~90μm且つ真円率80%以上)毛髪20本を選別し、レセ パウダーブリーチEX(ホーユー社製)を用いてパウダーブリーチ処理を2回行ったうえで、毛髪強度測定に供した(毛径が不揃いな毛髪は小径部の強度が小さいため、この毛径由来の影響を排除して、毛髪処理剤のみの影響を観測し難い。このため、毛径の揃った毛髪を利用)。の各1本ずつの断面積当たりの降伏応力(N/mm2)を、水中引張試験(サンプル毛髪を水に浸漬した状態で測定)により測定し、得られた20本分の測定値から、処理前毛髪20本の降伏応力の平均値を算出した。
上記(1)で用いた処理後毛髪のうち、実施例1-1の処理後毛髪20本を同様に測定して、処理後毛髪20本の降伏応力の平均値を算出した結果、32.08N/mm2であった。また、上記(1)で用いた処理後毛髪のうち、実施例1-9の処理後毛髪20本を同様に測定して、処理後毛髪20本の降伏応力の平均値を算出した結果、26.89N/mm2であった。
尚、上述の降伏応力の測定には、引張圧縮試験機(株式会社今田製作所製、型式「SV-201N」)を用い、サンプル長20mm、引張速度20mm/secの測定条件とした。また、各サンプル毛髪の断面積は(毛髪の平均径/2)×2×π(単位はμm2)により計測した値を利用した。
【0095】
[3]多剤式毛髪処理剤における第2剤の調製
多剤式毛髪処理剤における第2剤である実施例2-1乃至2-10を調製した。調製方法は以下の通りである。
【0096】
(1)調製方法
表4に示す成分を表4に示す質量割合で混合することにより3種類の乳化クリーム(A)乃至(C)を得た。このうち、乳化クリーム(A)に、表3に示す各コンディショニング成分c1乃至c7をそれぞれ後添加して混合し、合計100%となるように精製水を加えた。尚、混合機として「乳化試験器ET-3A型」(日光ケミカルズ社製)を用いた。
【0097】
(2)コンディショニング成分の詳細
表3に示す各成分は、以下の通りである。
・(成分c1)酒石酸
・(成分c2)アルギニン
・(成分c2)タウリン
・(成分c2)テアニン
・(成分c3)トレハロース
・(成分c4)ホウラシダ葉エキス
・(成分c5)アモジメチコン:アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体
・(成分c6)尿素
・(成分c7)18-MEA類似体:イソアルキル(C10-40)アミドプロピルエチルジモニウムエトサルフェート
【0098】
【0099】
【0100】
[4]多剤式毛髪処理剤の評価
(1)まとまりの評価
本発明の効果を確認するため下記方法を用いてまとまりの評価を行った。
何らの処理を行っていない試験用毛束と、処理済みの評価用毛束と、を比較して、毛束の幅が狭くなったか否かを、専門のパネリスト10名に問うた結果を集計した。各毛束の上端を固定し、角度が90度異なる側方4方向から目視で観察し、その結果、幅が狭くなったと回答したパネリストの人数を集計した。この結果、幅が狭くなったと回答したパネリストの割合が7割以上である実験例を「◎」、4割以上7割未満である実験例を「○」、4割未満である実験例を「△」と評価し、表4に示した。
【0101】
【0102】
(2)3次元画像による形状変化の評価
本発明の効果を確認するため下記により形状変化の評価を行った。
1本の処理前毛髪と、同じ1本の処理前毛髪を実施例3-2の毛髪処理剤で処理した後の1本の処理後毛髪と、の処理前後の外径を上記[2](1)の「毛径変化低減の評価」と同様に寸法測定して、毛髪の根元側から先端側へ向けて5cmの範囲を0.25mm毎に360度回転するように螺旋状に外径測定したデータを得た。得られたデータから、根元側から先端側へ向けて5cmの範囲の0.25mm毎の長径を算出し、各長径の中心を毛髪の伸長方向における中心軸であるものとして3次元画像化を行った。即ち、これにより、毛髪の処理前後の形状変化が視覚化された。この結果を
図1(処理前毛髪)及び
図2(処理後毛髪)に示した。
【0103】
[5]実施例の効果
上記[2](1)毛径変化低減の評価(表1及び表2参照)の結果から、比較例1-15では「△」であるのに対して、実施例1-1乃至1-7ではいずれも「○」又は「◎」であることから、成分A及び成分Bの両方を含んだ毛髪処理剤が、毛質変化による毛髪の凸凹を低減する効果を有していることが分かる。また、なかでも、実施例1-1及び1-2の結果は「◎」であり、特に優れた効果を奏することが分かる。
【0104】
上記[2](2)摩擦低減の評価(表1及び表2参照)の結果から、比較例1-16では「△」であるのに対して、実施例1-1乃至1-7ではいずれも「○」又は「◎」であることから、成分A及び成分Bの両方を含んだ毛髪処理剤が、毛質変化による毛髪の凸凹に起因して生じる摩擦を低減する効果を有していることが分かる。即ち、これらの毛髪処理剤により指通り良く改善できることが分かる。また、なかでも、実施例1-1、1-2及び1-8乃至1-10の結果は「◎」であり、特に優れた効果を奏することが分かる。
その一方で、上記[2](3)毛髪強度の評価の結果から、成分Bとして、SH基を有する還元剤であるシステアミン塩酸塩を利用した実施例1-9の平均降伏応力が26.89N/mm2であるのに対し、成分Bとして、SH基を有さない還元剤である亜硫酸ナトリウムを利用した実施例1-1の平均降伏応力は32.08N/mm2である。即ち、実施例1-9に対して実施例1-1は処理後の降伏応力の低下が顕著に抑制されていることが分かる。これらのことから、成分Bとしては、SH基を有さない還元剤の選択により、凸凹低減に伴う毛髪へのダメージを抑制できることが分かる。
【0105】
更に、
図1(処理前毛髪)及び
図2(処理後毛髪)の結果から、凸凹形状には2種のタイプが存在することが分かる。即ち、一方は、毛髪の長径の角度が軸方向で変化することによって、毛髪にねじれD
1を生じ、そのねじれD
1に伴って生じている凸凹形状D
2である。他方は、毛径(毛髪の長径や短径等)の大きさが変化することによって生じている凸凹形状D
3である。この凸凹形状D
3は、毛髪のねじれを伴っていない点において、凸凹形状D
2と異なっている。そして、
図2では、毛髪のねじれD
1が大幅に解消されていることが分かる。そして、このねじれD
1の解消によって、毛髪の長径の角度が軸方向で変化して生じていた大きな凸凹形状D
2が消滅していることが分かる。また、毛径の大きさが変化することによって生じていた凸凹形状D
3も消滅していることが分かる。以上から、本発明の毛髪処理剤は、毛髪の長径の角度が軸方向で変化して生じる大きな凸凹形状D
2と、毛径の大きさの変化により生じる凸凹形状D
3と、を同時に効果的に低減できることが分かる。そして、実施例1-1の毛髪処理剤で、上述の毛径変化低減及び摩擦低減を生じているのと共に、当該実施例1-1を利用した処理後毛髪では
図2の通りのねじれや凸凹形状の解消を生じていることから、他の実施例の毛髪処理剤においても程度の差はあれ同様な作用を生じていることが類推される。
【0106】
また、表5の結果から、多剤式毛髪処理剤の第1剤のみを利用して処理を行い、多剤式毛髪処理剤の第2剤を利用していない実施例3-1では「まとまり」の結果が「○」であるのに対して、実施例3-2乃至実施例3-11では「まとまり」の結果が「◎」へ向上されていることが分かる。この結果から、第2剤の利用により「まとまり」を向上させることができることが分かる。
尚、コンディショニング成分として、乳酸に替えて同量のシスチンを配合した多剤式毛髪処理剤の第2剤を用い、実施例3-1と同手順の評価を行った。その結果、乳酸を用いた実施例3-1と同様の優れた効果が得られた。
また、多剤式毛髪処理剤の第2剤の調製において、表4に示した乳化クリーム(A)に替えて、乳化クリーム(B)を利用した場合も、乳化クリーム(C)を利用した場合も、同様に実施例においてはいずれも優れたまとまりが得られた。