(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163412
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】バッフルプレート
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20231102BHJP
【FI】
F16H57/04 P
F16H57/04 Z
F16H57/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074324
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】星野 良明
(72)【発明者】
【氏名】川松 英雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友作
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA40
3J063AC03
3J063BA01
3J063BA04
3J063BA11
3J063CA01
3J063CD44
3J063CD65
3J063XA11
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD32
3J063XD72
3J063XE38
(57)【要約】
【課題】ケースに取り付け容易なバッフルプレートを提供する。
【解決手段】バッフルプレート10は、先端部60をケース内面に形成された取付孔12aに挿入される第1ロッド22aと、第1ロッド22aに支持されるプレート20と、を備える。プレート20は、第1ロッド22aを保持する第1保持部と、第1保持部よりも取付孔側に位置し、第1ロッド22aを保持する第2保持部と、を有する。第1ロッド22aは、第1保持部および第2保持部によって取付孔に進退する軸方向に移動可能に保持され、第1ロッド22aは、軸方向の移動によって、第1ロッド22aの先端部が取付孔に挿入されるロック位置と、先端部がロック位置よりも第2保持部側に引き込まれたロック解除位置をとる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションのケース内面に形成された取付孔に取り付けられるバッフルプレートであって、
先端部を前記ケース内面に形成された取付孔に挿入されるロッドと、
前記ロッドに支持されるプレートと、を備え、
前記プレートは、
前記ロッドを保持する第1保持部と、
前記第1保持部よりも前記取付孔側に位置し、前記ロッドを保持する第2保持部と、を有し、
前記ロッドは、前記第1保持部および前記第2保持部によって前記取付孔に進退する軸方向に移動可能に保持され、
前記ロッドは、軸方向の移動によって、前記ロッドの先端部が前記取付孔に挿入されるロック位置と、前記先端部がロック位置よりも前記第2保持部側に引き込まれたロック解除位置をとることを特徴とするバッフルプレート。
【請求項2】
前記プレートは、
ロック位置にて前記ロッドの軸方向の移動を制限する第1制限部と、
前記ロック解除位置で前記ロッドの軸方向の移動を制限する第2制限部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のバッフルプレート。
【請求項3】
前記ロッドは、
前記軸方向に交差する方向に延在し、ロック位置で前記第1制限部に係合し、ロック解除位置で前記第2制限部に係合する少なくとも1つの延在部を有し、
前記延在部は、前記ロッドの軸周り回転によって前記第1制限部および前記第2制限部を乗り越え可能な位置をとることを特徴とする請求項2に記載のバッフルプレート。
【請求項4】
前記ロッドは、前記延在部を含む略U字状の屈曲部を有し、線材で形成されており、
前記ロッドの前記先端部および基端部は、自由状態では軸方向に見てずれて位置し、
前記先端部が前記取付孔に挿入された状態で前記先端部および前記基端部が軸方向に見て互いに接近して、前記ロッドは前記基端部を前記プレートに押し当てる付勢力を発生することを特徴とする請求項3に記載のバッフルプレート。
【請求項5】
前記プレートの縁部に設けられ、前記ケース内面に当接するシール部をさらに備え、
前記プレートは、前記縁部から前記ケース内面に向かって突出する凸部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバッフルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッスミッションのケースに取り付けられるバッフルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、デファレンシャルケース内に配設されるデファレンシャル装置用バッフルプレートが開示されている。このバッフルプレートは、ボルトによってデファレンシャルケースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるバッフルプレートは、デファレンシャルケースに複数のボルトによって固定されるが、複数のボルトの締め付け作業は煩瑣である。
【0005】
本発明の目的は、ケースに取り付け容易なバッフルプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、トランスミッションのケース内面に形成された取付孔に取り付けられるバッフルプレートであって、先端部をケース内面に形成された取付孔に挿入されるロッドと、ロッドに支持されるプレートと、を備える。プレートは、ロッドを保持する第1保持部と、第1保持部よりも取付孔側に位置し、ロッドを保持する第2保持部と、を有する。ロッドは、第1保持部および第2保持部によって取付孔に進退する軸方向に移動可能に保持され、ロッドは、軸方向の移動によって、ロッドの先端部が取付孔に挿入されるロック位置と、先端部がロック位置よりも第2保持部側に引き込まれたロック解除位置をとる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケースに取り付け容易なバッフルプレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】トランスミッションのケースに取り付けた状態の実施例のバッフルプレートの斜視図である。
【
図3】第1ロッドについて説明するための図である。
【
図4】第2ロッドについて説明するための図である。
【
図5】
図5(a)は、バッフルプレートの背面図であり、
図5(b)は、バッフルプレートの正面図である。
【
図6】バッフルプレートの取り付け工程について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、トランスミッションのケース12に取り付けた状態の実施例のバッフルプレート10の斜視図である。バッフルプレート10は、ケース12に固定され、トランスミッションの内部空間を仕切り、トランスミッション内のオイルの移動を制限する。
【0010】
ケース12は、取付孔12a、内面12b、隆起部12cおよび貫通孔部12dを有する。取付孔12aは、バッフルプレート10を取り付けるためにケース12の内面12bに形成され、同軸に一対設けられる。隆起部12cは、ケース12の内面12bを隆起するように形成され、バッフルプレート10に仕切られる2つの内部空間のうち、一方の内部空間に位置する。バッフルプレート10は、隆起部12cに押し当てられ、隆起部12cはバッフルプレート10の回転止めとして機能する。貫通孔部12dは、ケース12の底面に形成される。バッフルプレート10は、隆起部12cおよび貫通孔部12dの間に配置される。
【0011】
バッフルプレート10は、プレート20、第1ロッド22a、第2ロッド22bおよびシール24を備える。プレート20は、略板状に形成され、第1ロッド22aおよび第2ロッド22bに支持されるとともに、隆起部12cに押し当てられて固定する。プレート20の下側の縁部は円弧状に形成され、ゴムや粘弾性体などで形成されたシール24が取り付けられる。
【0012】
第1ロッド22aは、一方の取付孔12aに挿入され、第2ロッド22bは、他方の取付孔12aに挿入され、第1ロッド22aおよび第2ロッド22b(これらを区別しない場合、「ロッド22」という)はプレート20を支持する。ロッド22は、プレート20の背面側を隆起部12cに押し当てるよう、プレート20の正面側を付勢する。
【0013】
図2は、実施例のバッフルプレート10の斜視図である。また、
図3は、第1ロッド22aについて説明するための図である。また、
図4は、第2ロッド22bについて説明するための図である。
【0014】
図3(a)には、第1ロッド22aの正面図を示し、
図3(b)には、第1ロッド22aの上面図を示し、
図3(c)には、第1ロッド22aの側面図を示す。第1ロッド22aは、金属製の線材を曲げて形成される。第1ロッド22aは、先端部60、基端部62および屈曲部64を有する。先端部60は、取付孔12aに挿入される。
【0015】
屈曲部64は、第1延在部66aおよび第2延在部66b(これらを区別しない場合、「延在部66」という)を含み、一対の延在部66をつなげた形状であり、略U字状に形成される。延在部66は、先端部60および基端部62の軸方向に交差する方向に延在し、より好適には先端部60および基端部62の軸方向に直交する。先端部60の軸方向と基端部62の軸方向とは交差してよい。第1延在部66aおよび第2延在部66bは、長さが異なっており、第1延在部66aは、第2延在部66bよりも短い。第1延在部66aおよび第2延在部66bは、互いに交差する方向に延在する。
【0016】
図3(b)および
図3(c)に示す自由状態では、先端部60および基端部62は、軸方向に見てずれて位置する。
図1に示す先端部60が取付孔12aに挿入された状態では、先端部60および基端部62が軸方向に見て自由状態よりも互いに接近して、第1ロッド22aは基端部62をプレート20に押し当てる付勢力を発生する。この第1ロッド22aによる回転方向の付勢力によって、プレート20が隆起部12cに押し当てられ、バッフルプレート10のガタつき抑えられた状態で固定される。
【0017】
図4(a)には、第2ロッド22bの正面図を示し、
図4(b)には、第2ロッド22bの上面図を示し、
図4(c)には、第2ロッド22bの側面図を示す。第2ロッド22bは、金属製の線材を曲げて形成される。第2ロッド22bは、先端部68、基端部70および屈曲部72を有する。先端部68は取付孔12aに挿入される。
【0018】
屈曲部72は、先端部68および基端部70の軸方向に交差する方向に延在する延在部74を含み、略U字状に形成される。自由状態では、先端部68および基端部70は、軸方向に見てずれて位置する。
図1に示す先端部68が取付孔12aに挿入された状態では、先端部68および基端部70が自由状態よりも接近して、第2ロッド22bは基端部70をプレート20に押し当てる付勢力を発生する。
【0019】
図5(a)は、バッフルプレート10の背面図であり、
図5(b)は、バッフルプレート10の正面図である。プレート20は、第1保持部30、第2保持部32、第3保持部34、第1突出部36、第2突出部38、第3突出部40、第1保持部42、第2保持部44、第4突出部46、第5突出部48、第1弾性爪部50、第2弾性爪部52および凸部54を有する。
【0020】
第1保持部30、第2保持部32および第3保持部34は、第1ロッド22aを保持する。第1保持部30は、第1ロッド22aの基端部62側を保持し、第2保持部32は、第1ロッド22aの先端部60側を保持し、第3保持部34は、第1保持部30および第2保持部32の間に設けられる。第2保持部32は、第1保持部30よりも、第1ロッド22aを挿入する取付孔12a側に位置する。
【0021】
第2保持部32は、
図2に示すように、第1保持部30よりも大径であり、第1ロッド22aは隙間を有して第2保持部32に挿通される。一方、第1保持部30は、第1ロッド22aの直径よりも大きいがほぼ同じ径である。これにより、第1ロッド22aの基端部62側のガタつきを第1保持部30によって抑えられる。第1ロッド22aの先端部60側のガタつきは、取付孔12aと第3保持部34で抑える。第3保持部34は、逆L字状に形成され、第1ロッド22aがプレート20から離れる動きを止める。
【0022】
第1保持部30、第2保持部32および第3保持部34は、取付孔12aの軸方向と同じ方向に貫通しており、第1ロッド22aを取付孔12aの軸方向に移動可能に保持している。なお、取付孔12aの軸方向、第1保持部30および第2保持部32の軸方向は同じであり、単に「軸方向」という場合がある。第1ロッド22aの先端部60および基端部62も、軸方向に沿って取り付けられ、同軸である。
【0023】
第1保持部42および第2保持部44は、第2ロッド22bを保持する。第2保持部44は、第1保持部42よりも、第2ロッド22bを挿入する取付孔12a側に位置し、第1保持部42よりも大径である。
【0024】
第1突出部36、第2突出部38および第3突出部40は、プレート20の表面から突出し、第1ロッド22aの軸方向への移動を制限する。第2突出部38および第3突出部40は、
図1に示すロック位置で、第1ロッド22aの軸方向の移動を制限する第1制限部として機能する。第2突出部38は、第1延在部66aに当接して第1ロッド22aの退行を制限し、第3突出部40は、第2延在部66bに当接して第1ロッド22aの進行を制限する。
【0025】
第1突出部36および第2突出部38は、
図5(b)に示すロック解除位置で、第1ロッド22aの軸方向の移動を制限する第2制限部として機能する。第1突出部36は、第1延在部66aに当接して第1ロッド22aの退行を制限し、第2突出部38は、第1延在部66aに当接して第1ロッド22aの進行を制限する。このように、第2突出部38は、第1制限部として機能するとともに、第2制限部としても機能する。
【0026】
延在部66は、
図1に示すロック位置で第1制限部(第2突出部38および第3突出部40)に係合し、
図5(b)に示すロック解除位置で第2制限部(第1突出部36および第2突出部38)に係合する。このように、第1ロッド22aが2つの位置で姿勢が維持されるため、ケース12に取り付ける前の搬送時に第1ロッド22aの動きを抑えることができる。また、バッフルプレート10がケース12に取り付けられた後、第1ロッド22aが取付孔12aから外れる動きを制限できる。
【0027】
第4突出部46および第5突出部48は、プレート20の表面から突出する。第4突出部46および第5突出部48は、一対の延在部74に当接して第2ロッド22bの進退を制限する第3制限部として機能する。
【0028】
第1弾性爪部50および第2弾性爪部52は、プレート20の表面に立設し、撓み可能に設けられる。第1弾性爪部50は、第1ロッド22aの屈曲部64に係止して、第1ロッド22aの軸周りの回転を止める。第2弾性爪部52は、第2ロッド22bの屈曲部72に係止して、第2ロッド22bの軸周りの回転を止める。
【0029】
凸部54は、プレート20の略円弧状の縁部55に外向きに突出して形成され、ケース12の内面12bに向かって突出する。シール24部は、プレート20の略円弧状の縁部55に設けられ、ケース12の内面12bに当接する。車両の振動や衝撃によってシール24がケース12の内面12bに押し当てられた場合に、凸部54が内面12bに当接して、シール24が過度に潰れることを防ぐことができる。
【0030】
シール24は、複数の嵌合部76によって、プレート20に組み付けられる。嵌合部76は、シール24に突起状に形成され、プレート20に凹凸嵌合する。
【0031】
図6は、バッフルプレート10の取り付け工程について説明するための図である。作業者は、
図5(b)に示すロック解除位置にある第1ロッド22aに対して、屈曲部64を工具等で引っ掛けて第1ロッド22aを軸回転させ、
図6に実線で示す屈曲部64を持ち上げる。また、第1ロッド22aを回転させる際に、第1弾性爪部50は撓んで係止を解除する。
【0032】
延在部66を含む屈曲部64は、第1ロッド22aの軸周り回転によって第1制限部(第2突出部38および第3突出部40)および第2制限部(第1突出部36および第2突出部38)を乗り越え可能な位置をとる。これにより、第1ロッド22aが軸方向に移動可能となり、
図6に破線で示すように、取付孔12aに向かって移動し、先端部60が取付孔12aに挿入される。
【0033】
作業者は、先端部60を取付孔12aに挿入させた後、屈曲部64をプレート20に向かって回転させて、屈曲部64をロック位置で第1制限部(第2突出部38および第3突出部40)に係合させる。このように、第1ロッド22aは、
図5(b)に示す先端部60がロック位置よりも第2保持部32側に引き込まれたロック解除位置から、軸方向の移動によって、
図1に示す第1ロッド22aの先端部60が取付孔12aに挿入されるロック位置をとる。作業者は、プレート20に予め組み付けられている第1ロッド22aを回転させて移動させることで、バッフルプレート10を取り付けることができるため、取り付け作業が容易である。
【0034】
第2保持部32は、第1保持部30よりも大径である。このため、取付孔12aの位置に製造誤差があっても吸収でき、第1ロッド22aを取付孔12aに挿入しやすくできる。また、第1ロッド22aは、第2保持部32内で撓んで、プレート20を隆起部12cに押し当てる付勢力を発生できる。
【0035】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0036】
10 バッフルプレート、 12 ケース、 12a 取付孔、 20 プレート、 22a 第1ロッド、 22b 第2ロッド、 24 シール、 30 第1保持部、 32 第2保持部、 34 第3保持部、 36 第1突出部、 38 第2突出部、 40 第3突出部、 42 第1保持部、 44 第2保持部、 46 第4突出部、 48 第5突出部、 50 第1弾性爪部、 52 第2弾性爪部、 54 凸部、 60 先端部、 62 基端部、 64 屈曲部、 66a 第1延在部、 66b 第2延在部。