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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163419
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】浴室装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/14 20060101AFI20231102BHJP
   F24D 15/00 20220101ALI20231102BHJP
   A61H 33/06 20060101ALI20231102BHJP
   A61H 33/10 20060101ALI20231102BHJP
   A61L 2/07 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A61L2/14
F24D15/00 B
A61H33/06 G
A61H33/10 G
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074333
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐貴
【テーマコード(参考)】
3L072
4C058
4C094
【Fターム(参考)】
3L072AA05
3L072AB06
3L072AC00
4C058AA07
4C058BB05
4C058BB06
4C058CC02
4C058CC04
4C058CC07
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD11
4C058DD13
4C058KK06
4C094AA01
4C094DD09
4C094EE03
4C094EE14
4C094FF20
(57)【要約】
【課題】浴室でのロドトルラの繁殖を抑制してピンク汚れの発生を防止することができる浴室装置を提供する。
【解決手段】浴室装置1は、熱源3、送風手段7、換気手段20、ミストノズル8、湿度検知手段19、イオン発生手段11、及び、制御手段30を備える。制御手段30は、ミストノズル8から温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行する温水ミスト噴霧制御部と、温水ミスト噴霧運転の完了後、換気手段20で浴室内を換気しながら、送風手段7が浴室内の空気を吸い込み、熱源3で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行する乾燥運転制御部と、イオン発生手段11を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第1イオン供給運転を実行するイオン供給制御部とを備えて、乾燥運転の実行中に所定の条件を満たしたとき、当該乾燥運転の実行中と当該乾燥運転停止後の何れか一方又は両方に、第1イオン供給運転を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを備える浴室装置であって、
浴室内に臨むミストノズルと、前記ミストノズルに温水を供給する給湯路と、浴室内の湿度を検知する湿度検知手段と、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生手段と、制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ミストノズルから温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行する温水ミスト噴霧制御部と、前記温水ミスト噴霧運転の完了後、前記換気手段で浴室内を換気しながら、前記送風手段が浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行する乾燥運転制御部と、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第1イオン供給運転を実行するイオン供給制御部とを備えて、当該乾燥運転の実行中と当該乾燥運転停止後の何れか一方又は両方に、前記第1イオン供給運転を実行することを特徴とする浴室装置。
【請求項2】
請求項1記載の浴室装置において、
前記乾燥運転の実行中に所定の条件を満たしたときに前記第1イオン供給運転を実行し、
前記所定の条件は、前記湿度検知手段によって検知した浴室内の湿度が所定値より小さいとき、であることを特徴とする浴室装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の浴室装置において、
前記イオン供給制御部は、前記第1イオン供給運転とは異なる実行条件で、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第2イオン供給運転を実行可能であり、
前記制御手段は、予め設定された時間間隔毎、又は、予め設定された時刻に、前記第2イオン供給運転を実行させる運転時間制御部を備えることを特徴とする浴室装置。
【請求項4】
浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを備える浴室装置であって、
浴室内に臨むミストノズルと、前記ミストノズルに温水を供給する給湯路と、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生手段と、前記ミストノズルから温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行する温水ミスト噴霧制御部と、制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記換気手段で浴室内を換気しながら、前記送風手段が浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行する乾燥運転制御部と、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第2イオン供給運転を実行するイオン供給制御部と、予め設定された時間間隔毎、又は、予め設定された時刻に、前記第2イオン供給運転を実行させる運転時間制御部とを備えることを特徴とする浴室装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室における菌類の繁殖を抑制する浴室装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の浴室装置として、浴室内にミストを噴霧させることで、浴室内の壁面や空気をカビの発生しない温度及び湿度にする機能を有するものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
浴室内での黒ずみ汚れは、黒カビと言われるクラドスポリウム属真菌によるものであることが知られている。上記従来の浴室装置は、浴室内に噴霧したミストによって、浴室内を高温高湿とし、このときの温湿度ショックによりクラドスポリウム属真菌の繁殖を抑える。これにより、浴室の黒ずみ汚れを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-34898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、浴室の汚れは、クラドスポリウム属真菌等の黒カビによるもの以外に、ピンク汚れと言われるものもある。ピンク汚れの原因菌はロドトルラである。
【0006】
ロドトルラはクラドスポリウム属真菌よりも繁殖力が強く、クラドスポリウム属真菌と同じ方法では、ロドトルラの繁殖を抑制することは困難である。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、浴室内に発生するクラドスポリウム属真菌による黒ずみ汚れの発生の防止のみならず、浴室でのロドトルラの繁殖を抑制してピンク汚れの発生を防止することができ、且つユーザの利便性の高い浴室装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを備える浴室装置であって、浴室内に臨むミストノズルと、前記ミストノズルに温水を供給する給湯路と、浴室内の湿度を検知する湿度検知手段と、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生手段と、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記ミストノズルから温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行する温水ミスト噴霧制御部と、前記温水ミスト噴霧運転の完了後、前記換気手段で浴室内を換気しながら、前記送風手段が浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行する乾燥運転制御部と、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第1イオン供給運転を実行するイオン供給制御部とを備えて、前記乾燥運転の実行中に所定の条件を満たしたとき、当該乾燥運転の実行中と当該乾燥運転停止後の何れか一方又は両方に、前記第1イオン供給運転を実行することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、制御手段の温水ミスト噴霧制御部が、温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行することにより、浴室内の菌類として特にクラドスポリウム属真菌の繁殖を抑制することができ、浴室の黒ずみ汚れの発生を防止することができる。温水ミスト噴霧運転が終了した後には、制御手段の乾燥運転制御部が、浴室内の乾燥運転を所定時間実行するが、前記制御装置は、イオン供給制御部を介して第1イオン供給運転を実行する。第1イオン供給運転が行われることによって、正イオンと負イオンとがロドトルラの繁殖を抑制し、浴室のピンク汚れの発生を防止することができる。
【0010】
このように、本発明によれば、浴室内に発生するクラドスポリウム属真菌による黒ずみ汚れの発生と、ロドトルラによるピンク汚れの発生を防止することができる。加えて、ユーザにとっては、温水ミスト噴霧運転が実行されれば、乾燥運転、第1イオン供給運転までが一度に実行されるので、浴室の黒ずみ汚れの発生の抑制とピンク汚れの発生の抑制とを一度に実現することができ、ユーザは高い利便性を得ることができる。
【0011】
また、本発明において、前記乾燥運転の実行中に所定の条件を満たしたときに前記第1イオン供給運転を実行し、前記所定の条件は、前記湿度検知手段によって検知した浴室内の湿度が所定値より小さいとき、であることを特徴とする。
【0012】
乾燥運転中に所定の条件が満たされていれば、乾燥運転停止後にイオン供給運転を実行して、ロドトルラの繁殖を抑制し、浴室のピンク汚れの発生を防止することができる。
また、イオン発生手段は、放電によって正イオンと負イオンとを発生させるが、高湿環境下で放電を行うと、イオン濃度が低下したり、放電電極の腐食や劣化が生じるおそれがある。本発明においては、湿度検知手段によって検知した浴室内の湿度が所定値より小さいときに第1イオン供給運転を行うので、正イオンと負イオンとを効率よく発生させることができ、また、放電電極の腐食や劣化を防止することができて、イオン発生手段の耐久性を向上させることができる。
また、乾燥運転の実行中に並行して第1イオン供給運転を実行するので、乾燥運転停止後に第1イオン供給運転を実行開始する場合に比べて第1イオン供給運転を早く終了することができ、ユーザの利便性がさらに向上する。
【0013】
また、本発明において、前記イオン供給制御部は、前記第1イオン供給運転とは異なる実行条件で、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第2イオン供給運転を実行可能であり、前記制御手段は、予め設定された時間間隔毎、又は、予め設定された時刻に、前記第2イオン供給運転を実行させる運転時間制御部を備えることが好ましい。
【0014】
これによれば、第2イオン供給運転を行う時間間隔、又は、イオン供給運転を行う時刻を予め設定しておくことで、温水ミスト噴霧運転が行われない場合であっても、ロドトルラの繁殖が抑えられる好適なタイミングで第2イオン供給運転を行うことができる。
【0015】
なお、クラドスポリウム属真菌の繁殖力に比べてロドトルラの繁殖力が大きい。従って、ロドトルラの繁殖を抑制するためのイオン供給運転を頻繁に行う必要がある。このため、第1イオン供給運転が実行される前に、温水ミスト噴霧運転も実行するようになっていると、温水ミストを生成する温水ミスト噴霧運転はエネルギー消費が比較的大きいためランニングコストが高く不経済であり、且つ、時間もかかる。一方、正イオンと負イオンとを発生させる第2イオン供給運転は、温水ミストを生成する温水ミスト噴霧運転と第1イオン供給運転とを実行するよりもエネルギー消費が小さく、時間もかからない。本発明は、第2イオン供給運転によりロドトルラの繁殖を抑制するため、ランニングコストを抑えることができて経済的である。
【0016】
また、本発明は、浴室内の空気を加熱する熱源と、浴室内の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を浴室内に吹き出して浴室内の空気を循環させる送風手段と、浴室内の空気を浴室外に排気して換気する換気手段とを備える浴室装置であって、浴室内に臨むミストノズルと、前記ミストノズルに温水を供給する給湯路と、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生手段と、前記ミストノズルから温水ミストを浴室内へ噴霧する温水ミスト噴霧運転を実行する温水ミスト噴霧制御部と、制御手段とを備え、前記制御手段は、前記換気手段で浴室内を換気しながら、前記送風手段が浴室内の空気を吸い込み、熱源で加熱した空気を浴室内に吹き出して、浴室内を温風乾燥する乾燥運転を所定時間実行する乾燥運転制御部と、前記イオン発生手段を作動させて正イオンと負イオンとを浴室内に供給する第2イオン供給運転を実行するイオン供給制御部と、予め設定された時間間隔毎、又は、予め設定された時刻に、前記第2イオン供給運転を実行させる運転時間制御部とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、温水ミスト噴霧運転によってクラドスポリウム属真菌の繁殖を抑制すると共に、イオン供給制御部が第2イオン供給運転を実行することにより、正イオンと負イオンとがロドトルラの繁殖を抑制し、浴室の黒ずみ汚れ及びピンク汚れの発生を防止することができる。そして、運転時間制御部により、第2イオン供給運転は、予め設定された時間間隔毎、又は、予め設定された時刻に行われるので、ロドトルラの繁殖が抑えられる好適なタイミングで第2イオン供給運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の装置のシステム構成を示す図。
図2】本実施形態の装置のフロントパネル部を示す斜視図。
図3】本実施形態の装置の作動を示すフローチャート。
図4図3に続く作動を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の浴室装置1は、所謂ミストサウナ機能付き浴室暖房装置であり、浴室の天井等に設置される本体ユニット2と、屋外等に設置される熱源機3(熱源)とを備えている。
【0020】
熱源機3は、具体的な構成の図示は省略するが、バーナと熱交換器とを備えて暖房用の熱媒及び給湯用水を夫々加熱する公知の燃焼給湯器である。また、暖房用の熱媒は、本実施形態では温水が使用される。
【0021】
本体ユニット2は、暖房用の熱媒としての温水を熱源機3との間で循環させる温水循環流路4を備えている。また、本体ユニット2は、浴室に噴霧するミスト用の水(加熱してミスト化する水)を通水するミスト用通水路5(給湯路)を備えている。ミスト用通水路5は、熱源機3の給水路6から分岐された通水路である。
【0022】
更に、本体ユニット2は、浴室に送風する送風機7(送風手段)と、ミスト用通水路5から供給される水をミスト化して浴室に噴霧する複数(本実施形態では2つ)のミストノズル8と、送風機7により浴室に送風される空気を温水との熱交換により加熱する暖房用熱交換器9と、ミスト用通水路5でミストノズル8に供給される水を温水との熱交換により加熱する液液式のミスト用熱交換器10と、正イオンと負イオンとを発生させるイオン発生器11(イオン発生手段)とを備えている。
【0023】
符号2aは、浴室の天井裏に設置される本体ユニット2のケーシングであり、ケーシング2aの下面には、図2に示すように、浴室の天井から浴室内に露出するフロントパネル部12が設けられている。
【0024】
フロントパネル部12には、浴室内の空気をケーシング2a内に吸引するための吸込口グリル13と、加熱された空気(温風)を浴室内に吹き出す吹き出し口を形成するルーバー14とが設けられている。
【0025】
ルーバー14は、温風の吹き出し口を開閉可能であると共に、浴室に対する温風の吹き出し方向(送風方向)を変化させることが可能となっている。ルーバー14は、図1に示すように、ケーシング2a内に配置されたルーバー駆動用モータ15により所定の回転角度範囲内で回転駆動される。これにより、ルーバー14の回転角度に応じて、浴室に対する温風の送風方向を変化させることが可能となっている。
【0026】
図2に示すように、ミストノズル8は、ルーバー14の近傍に露出して配置されており、イオン発生器11はルーバー14の上流近傍のケーシング2a内に配置されている。
【0027】
図1に示すように、送風機7は、2つのファン16と両ファン16を同軸で回転駆動するためのファンモータ17とにより構成されている。送風機7はファン16の回転により、吸込口グリル13(図2参照)から浴室内の空気をケーシング2a内に吸引し、その吸引した空気をルーバー14の吹き出し口から浴室内に送風する。
【0028】
ケーシング2a内で吸込口グリル13からルーバー14の吹き出し口に至る風路には、暖房用熱交換器9が配置されている。また、当該風路の入り口寄りの箇所(吸込口グリル13の近傍箇所)には、送風機7が吸引する浴室内の空気から浴室の室温を検出する室温センサ18が配置されている。更に、本体ユニット2には、ケーシング2a内の湿度を検知する湿度センサ19(湿度検知手段)が配設されている。
【0029】
また、イオン発生器11は、図示省略するが、プラスイオン(例えば、H+(H2O)m(mは任意の自然数))を発生させるプラス電極部と、マイナスイオン(O2-(H2O)n(nは任意の自然数))を発生させるマイナス電極部とを備えている。送風機7のファン16を作動させた状態でイオン発生器11からプラスイオンとマイナスイオンとを同時に発生させると、ファン16によって生成された空気の流れに乗ってプラスイオンとマイナスイオンとが浴室内へ拡散される。
【0030】
ケーシング2aには、排気ダクト20(換気手段)が接続されている。そして、浴室の換気時等においては、図示を省略する風路切換ダンパとファン16とを作動させることで、吸込口グリル13から吸引される浴室内の空気の一部又は全部を排気ダクト20に導出することが可能となっている。
【0031】
温水循環流路4には、暖房用熱交換器9に流入する温水の温度を検出する暖房水温センサ21、ミスト用熱交換器10に流入する温水の温度を検出する液液湯温センサ22が設けられている。
【0032】
更に、温水循環流路4におけるミスト用熱交換器10の下流側には、温水循環流路4を流れる温水の流量を制御するための流量制御弁23が装着されている。
【0033】
本体ユニット2のケーシング2a内に導入されたミスト用通水路5は、液液式の熱交換器であるミスト用熱交換器10を経由してミストノズル8に至るように配設されている。ミスト用通水路5におけるミスト用熱交換器10の上流側には、逆止弁24と電磁弁25とが設けられており、電磁弁25と並列に過圧防止用の過圧逃し弁26が設けられている。
【0034】
ミスト用通水路5におけるミスト用熱交換器10の下流側には、ミスト用通水路5を開閉する電磁弁27が介装されている。更に、電磁弁27の上流側から導出された過圧防止用の排水路には過圧逃し弁28が介装されている。
【0035】
そして、ミスト用熱交換器10の下流側のミスト用通水路5には、ミスト用熱交換器10からミストノズル8に供給される水の温度を検出するミスト温度センサ29が設けられている。
【0036】
また、本体ユニット2のケーシング2a内には、運転制御を行う電子回路ユニットにより構成された運転制御装置30(制御手段)が設けられており、本体ユニット2の外部には、リモコン31が設けられている。
【0037】
リモコン31は、浴室内や浴室に隣接する脱衣所等に配置される。リモコン31は、その操作(スイッチ操作等)によって、ミストサウナ運転、暖房運転、換気運転、乾燥運転、繁殖抑制運転(温水ミスト噴霧運転)、イオン供給運転等、浴室装置1で実行可能な各種運転のオンオフ(当該運転の実行及びその停止)の指示、ルーバー14の吹き出し方向の設定、浴室の暖房温度の設定、送風機7の風量設定等が可能となっている。
【0038】
運転制御装置30は、熱源機3の運転制御を行うために熱源機3に搭載された制御装置(図示省略)及びリモコン31との間で、各種設定データ、指令データ等を有線又は無線により通信し得るように構成されている。
【0039】
更に、運転制御装置30には、各部の温度を検出するセンサ18,21,22,29の検出信号が入力されると共に、浴室内の湿度を検出すべく本体ユニット2のケーシング2a内に配置された湿度センサ19の検出信号が入力されるようになっている。
【0040】
そして、運転制御装置30は、入力データを適宜使用しつつ、実装されたプログラムを実行することで、上記の各運転を行う複数の制御部を機能として備えている。
【0041】
即ち、運転制御装置30は、ミストサウナ運転制御部、暖房運転制御部、換気運転制御部、乾燥運転制御部、繁殖抑制運転制御部、及び、イオン供給運転を備えている。また、リモコン31は、各運転制御においてタイマや時計として機能する計時部を備え、運転制御装置30は、計時部のタイマ機能や時計機能による運転時間の制御を行う運転時間制御部を備えている。
【0042】
ここで、運転制御装置30による上記の各運転の制御のうち、本発明の要旨に係る繁殖抑制運転、乾燥運転、及びイオン供給運転について図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
図3に示すように、先ず、電源がONとなっている状態において、STEP1で繁殖抑制運転の開始がリモコン31のスイッチ等で指示(ON)されると、STEP2へ進んで繁殖抑制運転が実行される。
【0044】
繁殖抑制運転は、比較的高温(例えば50℃以上)のミストを予め設定された時間(例えば2時間)にわたり浴室内に噴射させ、STEP3へ進んで繁殖抑制運転が停止される。これにより、浴室に発生する黒ずみ汚れの原因とされるクラドスポリウム属真菌の繁殖が抑えられる。
【0045】
次いで、STEP4で乾燥運転の設定がされていない場合には、繁殖抑制運転の開始指示待ち状態に戻るが、STEP4で乾燥運転の設定(即ち、イオン供給運転の指示)がされていた場合には、STEP5へ進んで乾燥運転が開始される。乾燥運転は、排気ダクト20を開放して浴室内の空気を換気しつつ、ファン16の駆動により浴室内の空気を循環させる。
【0046】
このとき、ファン16の回転により浴室内の空気をケーシング2aの内部に吸い込み、浴室内に吹き出すことで、暖房用熱交換器9によって加熱された空気(温風)が浴室内へ戻される。これにより、温風が浴室内に供給され、湿気が排気されて浴室内の乾燥が行われる。
【0047】
そして、乾燥運転が実行されているときにはSTEP6により湿度の監視が行われる。即ち、STEP6で湿度センサ19の検知湿度が所定値(例えば、絶対湿度28g/m3)より小さくなると、STEP7へ進んでイオン供給運転(第1イオン供給運転)が開始される。イオン供給運転は、乾燥運転中にイオン発生器11を作動させることにより実行される。
【0048】
イオン発生器11によって生成されたプラスイオン及びマイナスイオンは、ファン16の駆動により生成される空気の流れに乗って浴室内へ拡散される。このプラスイオン及びマイナスイオンによって、浴室内におけるピンク汚れの原因となるロドトルラの繁殖を抑制することができる。
【0049】
ところで、イオン発生器11が備える電極は、高湿環境下でイオンを発生させることで腐食が発生するおそれがある。そこで、上述したSTEP6による湿度の監視を設け、湿度センサ19の検知湿度(イオン発生器11が配置されたケーシング2aの内部の湿度)が、イオン発生器11の電極に腐食が生じないと考えられる所定値より小さくなった場合に、イオン供給運転を実行する。なお、所定値は、絶対湿度でなくてもよく、相対湿度であってもよい。
【0050】
STEP7でイオン供給運転が開始されると、予め設定された時間(例えば1~2時間程度)にわたり浴室内にプラスイオン及びマイナスイオンを生成し、STEP8へ進んで乾燥運転とイオン供給運転とが停止される。
【0051】
STEP1~STEP8の各処理は、繁殖抑制運転を行い、続いて、乾燥運転とイオン供給運転とを行うものであり、この一連の運転動作によって、クラドスポリウム属真菌とロドトルラとの両方の繁殖を抑制することができるという利点がある。更に、イオン供給運転は、イオン発生器11の電極に腐食が生じない湿度となったときに実行されるので、イオン発生器11の電極の寿命を延長することができる。
【0052】
そして、STEP8が終了した後には、図中破線で示すように繁殖抑制運転の開始指示待ち状態に戻るように制御してもよい。
【0053】
ところで、クラドスポリウム属真菌と比べてロドトルラの繁殖力が強いことが知られている。このため、イオン供給運転を頻繁に行う(例えば、24時間毎に行う)ことが、ロドトルラの繁殖を抑えるためには有効である。一方、クラドスポリウム属真菌については、例えば一週間に一回程度、繁殖抑制運転を行うことで繁殖を抑えることができる。
【0054】
そこで、クラドスポリウム属真菌とロドトルラとの両方の繁殖を抑制するためには、上述したSTEP1~STEP8の処理を頻繁に行う(例えば、24時間毎に行う)ことが考えられる。
【0055】
しかし、繁殖抑制運転で使用する比較的高温のミストを生成するためには、イオン供給運転で作動させるイオン発生器11よりも、大きなエネルギー消費が必要となる。従って、上述したSTEP1~STEP8の処理を頻繁に行う(例えば、24時間毎に行う)と、繁殖抑制運転によって不要なエネルギー消費が発生することになる。
【0056】
そこで、本実施形態の浴室装置1は、運転制御装置30によって、使用者の設定に応じて所定の時間間隔毎に又は所定の時刻にイオン供給運転(第2イオン供給運転)を行うように構成されている。
【0057】
即ち、STEP8が終了すると、図4に示すように、STEP9へ進み、使用者によりイオン供給運転の自動運転が設定されているか否かを判断し、自動運転が設定されている場合にはSTEP10へ進む。
【0058】
STEP10で使用者によりイオン供給運転の時刻が設定されているときは、STEP11へ進んで設定された時刻になる毎にイオン供給運転を行う。このときのイオン供給運転においては、乾燥運転を同時に行うことが好ましいが、少なくともファン16による送風と換気を行いながらイオン発生器11を作動させる。
【0059】
そして、STEP11によるイオン供給運転が予め設定された時間(例えば1~2時間程度:時間は変更可能)にわたり行われると、STEP13へ進んでイオン供給運転が停止される。
【0060】
STEP10で使用者によるイオン供給運転の時刻が設定されていないときには(リモコン31が時計機能を備えない場合も含む)、STEP12へ進み、運転制御装置30のタイマを使用して設定された時間間隔毎(例えば24時間間隔毎:時間は変更可能)のイオン供給運転を自動で行う。なお、時間間隔は変更可能である。
【0061】
この場合においても、イオン供給運転は、乾燥運転を同時に行うか、少なくともファン16による送風と換気を行いながらイオン発生器11を作動させる。その後、STEP12によるイオン供給運転が予め設定された時間(例えば1~2時間程度:時間は変更可能)にわたり行われると、STEP13へ進んでイオン供給運転が停止される。なお、イオン供給運転時間は変更可能である。
【0062】
また、ロドトルラの繁殖は、季節による増減が見られることが知られている。これを考慮する場合には、浴室内の温度と湿度とが夫々一定値以上(例えば、20℃以上且つ相対湿度65%以上)となったときにSTEP11やSTEP12の運転を実行するようにしてもよい。これによれば、ロドトルラの繁殖が活発となる浴室環境となったときにのみイオン供給運転を実行するように制御されるので、電力消費を一層低減させることができる。
【0063】
この場合、具体的な例として、浴室内の温度と湿度とを1時間ごとにサンプリングした値を平均化し、STEP11の開始直前まで、又はSTEP12の開始直前までの平均値が一定以上(例えば、20℃以上且つ相対湿度65%以上)であった場合にSTEP11やSTEP12の運転を実行することが挙げられる。
【0064】
一方、STEP11の開始直前まで、又はSTEP12の開始直前までの平均値が一定未満(20℃未満あるいは相対湿度65%未満)であった場合は、STEP11やSTEP12の運転を行わない。そして、浴室内の温度と湿度とのサンプリングを継続し、1時間ごとにサンプリングした値の平均値が一定以上(20℃以上且つ相対湿度65%以上)を満たしたときに、STEP11やSTEP12の運転を実行するようにしてもよい。
【0065】
或いは、STEP11の開始直前まで、又はSTEP12の開始直前までの平均値が一定未満(20℃未満あるいは相対湿度65%未満)であった場合は、その日はSTEP11やSTEP12の運転を行わないようにしてもよい。この場合、STEP11やSTEP12の運転を過剰に行わなくてよいので、ランニングコストを抑制することができる。
【0066】
以上のように、STEP9~STEP13の処理を設けることで、電力消費を低減させてロドトルラの繁殖を効率よく抑えることができるだけでなく、使用者がイオン供給運転を行う操作を忘れてロドトルラが繁殖してしまうといったことも防止することができる。
【0067】
また、本実施形態においては、STEP1~STEP8の処理に続いてSTEP9~STEP13の処理が行われる場合を示したが、STEP1~STEP8の処理とSTEP9~STEP13の処理とを切り離して制御してもよい。
【0068】
なお、STEP1~STEP8の処理とSTEP9~STEP13の処理とが重複することもあり得るが、重複した場合には、STEP1~STEP8の処理を優先して行えばよい。
【0069】
また、本実施形態においては、図3におけるSTEP5~STEP8で乾燥運転の実行中にイオン供給運転を行う例を示しているが、乾燥運転の実行中にはイオン供給運転を実行せず、乾燥運転が終了した後にイオン供給運転を行ってもよい。或いは、乾燥運転の実行中にイオン供給運転を開始し、乾燥運転が終了した後であってもイオン供給運転を所望の時間継続させてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…浴室装置、3…熱源機(熱源)、5…ミスト用通水路(給湯路)、7…送風機(送風手段)、8…ミストノズル、11…イオン発生器(イオン発生手段)、19…湿度センサ(湿度検知手段)、20…排気ダクト(換気手段)、30…運転制御装置(制御手段)。
図1
図2
図3
図4