IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沢井製薬株式会社の特許一覧

特開2023-163422デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤
<>
  • 特開-デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤 図1
  • 特開-デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163422
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20231102BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231102BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231102BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231102BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20231102BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P11/02
A61P37/08
A61P17/00
A61P17/04
A61K9/28
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/38
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074337
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】南岡 咲希
(72)【発明者】
【氏名】増井 辰馬
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC18
4C076DD09H
4C076DD29H
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD47
4C076EE23
4C076EE32A
4C076FF26
4C076FF37
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC27
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086NA03
4C086ZA34
4C086ZA89
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】光安定性が向上したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤を提供する。特に、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成を抑制したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、デスロラタジンを含む素錠と、素錠を被覆するフィルムと、を含み、フィルムが、マクロゴールと酸化チタンとの組み合わせを実質的に含まない、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤が提供される。フィルムが、マクロゴール、又は酸化チタンの何れか一方を含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスロラタジンを含む素錠と、
前記素錠を被覆するフィルムと、を含み、
前記フィルムが、マクロゴールと酸化チタンとの組み合わせを実質的に含まない、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤。
【請求項2】
前記フィルムが、前記マクロゴール、又は前記酸化チタンの何れか一方を含む、請求項1に記載のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤。
【請求項3】
前記フィルムが、マクロゴールを除く可塑剤、及び前記酸化チタンを含む、請求項1に記載のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤。
【請求項4】
前記可塑剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光安定性が向上したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に関する。特に、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成を抑制したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デスロラタジン(8-Chloro-11-(piperidin-4-ylidene)-6,11-dihydro-5H-benzo[5,6]cyclohepta[1,2-b]pyridine)は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒の治療薬として知られている。
【0003】
一方、デスロラタジンは、酸性の賦形剤との組み合わせにより、類縁物質としてN-ホルミル体を生成することが知られている。例えば、特許文献1には、塩基性塩及び崩壊剤を含有する薬学的組成物が酸性賦形剤を実質的に含有しないことにより、デスロラタジンの室温、加湿条件下での長期保存後の類縁物質生成を抑制する方法が開示されている。特許文献1の薬学的組成物が含まない酸性の賦形剤として、ステアリン酸、ポビドン、クロスポビドン、ラクトース、ラクトースモノヒドレート、安息香酸ナトリウム及びGlyceryl Behenate NFが例示されている。
【0004】
また、デスロラタジンには苦味があるため、苦味を有する有効成分においてはその苦味を抑制する目的でフィルムコーティング錠剤とすることがある。そして、フィルムコーティング錠剤では光安定化などの副次的な効果もあわせて得られることもあるが、非特許文献1には、フィルムコーティング錠剤を光照射下においた場合、デスロラタジンの類縁物質が増加することが記載されている。しかし、非特許文献1には、光の影響により増加する類縁物質がどのような物質であるのか、その構造を含めて特定されていない。一方、特許文献1にはデスロラタジンの分解物としてN-ホルミル体が記載されており、当該分解物を抑制するために酸性の賦形剤を含まない処方とすることが提案されていた。しかしながら、非特許文献1の類縁物質がN-ホルミル体であるか否かについては現時点でも不明であり、光の影響により増加する類縁物質を抑制する手段を予測することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3224379号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】デザレックス(登録商標)錠5mg 医薬品インタビューフォーム 2021年6月改訂(第7版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施形態は、光安定性が向上したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤を提供することを目的の一つとする。特に、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成を抑制したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、デスロラタジンを含む素錠と、素錠を被覆するフィルムと、を含み、フィルムが、マクロゴールと酸化チタンとの組み合わせを実質的に含まない、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤が提供される。
【0009】
フィルムが、マクロゴール、又は酸化チタンの何れか一方を含んでもよい。
【0010】
フィルムが、マクロゴールを除く可塑剤、及び酸化チタンを含んでもよい。
【0011】
可塑剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びプロピレングリコールからなる群から選択されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施形態によると、光安定性が向上したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤が提供される。特に、本発明の一実施形態によると、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成を抑制したデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1~2及び比較例1のフィルムコーティング錠剤における光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量を示す図である。
図2】実施例3~6のフィルムコーティング錠剤における光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明に係るデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤について説明する。なお、本発明のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本発明に係るデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤は、デスロラタジンを含む素錠と、素錠を被覆するフィルムと、を含む。
【0016】
[素錠]
本発明の一実施形態において、素錠は、例えば、デスロラタジンを1錠あたり5mg含むことができるが、本実施形態に係るデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤におけるデスロラタジンの含有量は、これに限定されず、治療効果を得られる範囲で任意に設定可能である。
【0017】
本発明の一実施形態において、素錠は、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウムの炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩及び硫酸塩等の塩基性塩を含む。塩基性塩として、硫酸カルシウム無水物、硫酸カルシウムの水和物(例えば、硫酸カルシウム二水和物)、硫酸マグネシウム無水物、硫酸マグネシウムの水和物、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム無水物、三塩基性リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウムアルミニウムを例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0018】
本発明の一実施形態において、素錠は、崩壊剤を含む。崩壊剤としては、結晶性セルロース、部分アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、マンニトール、クロスカルメロースナトリウム及び粉糖を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0019】
本発明の一実施形態において、素錠は、結合剤を含む。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、コポビドン(ビニルピロリドンと他のビニル誘導体のコポリマー)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ポリビニルアルコール(PVA)、部分アルファ化デンプン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0020】
本発明の一実施形態において、素錠は、滑沢剤を含む。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、タルク、マクロゴール、ベヘン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム及びステアリン酸を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0021】
[素錠の製造方法]
本発明の一実施形態において、素錠は乾式法又は湿式法により製造することができる。乾式法として、例えば、直接打錠法を好適に用いることができる。具体的には、、デスロラタジンとともに、上記の添加剤から選択した添加剤を均質に混合し、得られた混合物を打錠することにより素錠を製造する。このとき、上記の添加剤以外の添加剤をさらに加えてもよい。素錠は、通常用いられる打錠機で圧縮成形することにより製造することができる。成形に関しては、どのような形状をも採用することができ、例えば、タブレット型、楕円形、球形、又は棒状型の形状に成形することができる。
【0022】
[フィルム]
本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤のフィルムは、マクロゴールと酸化チタンとの組み合わせを実質的に含まない。本明細書において、「マクロゴールと酸化チタンとの組み合わせを実質的に含まない」とは、フィルムが、マクロゴールと酸化チタンとを同時に含まない、即ち、マクロゴールと酸化チタンの何れか一方のみを含むか、マクロゴールと酸化チタンの何れか一方が、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤において、光照射前(製造直後)から総照度として120万lx・hr及び総近紫外放射エネルギーとして200W・h/mの光照射時点でのデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量が0.1%以下となる含有量であることを意味する。本発明の一実施形態に係るフィルムにおいて、マクロゴールと酸化チタンとが接触しないことが好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤のフィルムは、マクロゴールを除く可塑剤、又は酸化チタンを含む。本発明の一実施形態において、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤のフィルムは、マクロゴールを除く可塑剤、及び酸化チタンを含んでもよい。本発明の一実施形態において、マクロゴールを除く可塑剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、クエン酸トリエチル、トリアセチン及びプロピレングリコールからなる群から選択される添加剤を例示することができるが、本実施形態に係る可塑剤はマクロゴール以外の添加剤であって、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、本発明の一実施形態において、フィルムは、フィルム基剤を含む。フィルム基剤としては、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーを例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0025】
本発明の一実施形態において、フィルムは、滑沢剤を含んでもよい。滑沢剤としては、タルク、軽質無水ケイ酸を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0026】
本発明の一実施形態において、フィルムは、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、上述した酸化チタンの他に、酸化アルミニウム、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄等の金属酸化物、食用黄色5号、食用青色2号等の水溶性食用タール色素等を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0027】
[デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤の製造方法]
上述した素錠を、上述したフィルムで被覆することにより、本発明に係るデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤を製造することができる。素錠のフィルムコーティング方法は特には限定されず、公知のフィルムコーティング方法を適用することができる。例えば、上述したフィルム基剤、可塑剤、可塑剤、滑沢剤及び着色剤を含む溶液、又は分散液(以下、コーティング用組成物と称する)を調製し、汎用されるコーティング機や糖衣パンを用いて、コーティング用組成物を素錠の表面に塗布する。コーティング用組成物中の溶媒としては、水、又はエタノールやエチレングリコールなどのアルコール、或いは水とアルコールの混合溶媒などが挙げられる。素錠の表面に形成されたコーティング層中に残存する溶媒を溜去することにより、フィルムが形成される。
【0028】
[光安定性の評価方法]
本明細書において、デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤の光安定性は、光照射前(製造直後)のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に含まれるデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量と、無包装のデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に対して総照度として120万lx・hr及び総近紫外放射エネルギーとして200W・h/mの光照射を行った時点でのデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に含まれるデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量から、デスロラタジンのN-ホルミル体の増加量を算出することにより、評価することができる。デスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤に含まれるデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法により測定することができる。
【0029】
本実施形態においては、光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量が、0.1%以下となることが好ましい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係るデスロラタジン含有フィルムコーティング錠剤は、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成を抑制して、光安定性を向上させることができる。
【実施例0031】
[素錠の製造]
デスロラタジン5g、結晶セルロース(旭化成株式会社、セオラス(登録商標)UF-702) 28g、リン酸水素カルシウム水和物(協和工業株式会社、GSカリカ) 55g、トウモロコシデンプン(日本食品化工株式会社) 9.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社、HPC-L) 1.3g、及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社、植物) 1.2gを均質に混合し、得られた混合物を打錠することにより、1錠あたり100mgの素錠を製造した。
【0032】
[実施例1]
ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社) 23.00g、タルク(富士タルク工業株式会社) 2.4g、酸化チタン(NA61、東邦チタニウム株式会社) 2.6g及び三二酸化鉄(癸巳化成株式会社) 0.02gを、ミキサーを用いて、精製水 382g中に撹拌溶解及び分散させ、フィルムコーティング液を調製した。上述した素錠を、1錠当たりの質量が約7mg増加するまでフィルムコーティング液で被覆し、実施例1のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0033】
[実施例2]
ヒプロメロースを23.17gに変更し、酸化チタンに代えて、マクロゴール6000(日油株式会社) 2.4gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0034】
[比較例1]
ヒプロメロース(TC-5(登録商標)M、信越化学工業株式会社) 23.85g、マクロゴール6000(日油株式会社) 2.48g、タルク(富士タルク工業株式会社) 2.48g、酸化チタン(NA61、東邦チタニウム株式会社) 2.70g及び三二酸化鉄(癸巳化成株式会社) 0.023gを、ミキサーを用いて、精製水 393.75g中に撹拌溶解及び分散させ、フィルムコーティング液を調製した。上述した素錠を、1錠当たりの質量が約7mg増加するまでフィルムコーティング液で被覆し、比較例1のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0035】
[光安定性の評価]
実施例1~2及び比較例1のフィルムコーティング錠剤について、HPLC法により、デスロラタジンのN-ホルミル体の含有量を測定した。なお、HPLC法によるデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量は、以下の条件により測定した。

検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:オクチルシリル化シリカゲル
カラム温度:30℃
移動相A:pH2.0のリン酸緩衝液
移動相B:アセトニトリル/移動相A/テトラヒドロフラン混液(14:6:1)
【0036】
クロマトグラム上に得られたデスロラタジン及びデスロラタジン由来の類縁物質の各成分のピーク面積の総和を100とした面積百分率法により、ピーク面積の比からデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量(%)を算出した。
【0037】
また、実施例1~2及び比較例1のフィルムコーティング錠剤に対して、総照度として120万lx・hr及び総近紫外放射エネルギーとして200W・h/mの光照射を行い、その後、上述したHPLC法によりクロマトグラムを得て、面積百分率法により、デスロラタジンのN-ホルミル体の含有量(%)を算出した。光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量からの光照射前のデスロラタジンのN-ホルミル体の含有量の差からN-ホルミル体の増加量を求めた。
【0038】
図1は、実施例1~2及び比較例1のフィルムコーティング錠剤における光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量を示す図である。フィルムに酸化チタンを含み、マクロゴール6000を含まない実施例1のフィルムコーティング錠剤、フィルムにマクロゴール6000を含み、酸化チタンを含まない実施例2のフィルムコーティング錠剤においては、光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量は0.1%未満であった。一方、フィルムに酸化チタンとマクロゴール6000を含む比較例1のフィルムコーティング錠剤においては、光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体が有意に増加することが示され、フィルムがマクロゴールと酸化チタンとの組み合わせ含むことにより、デスロラタジンのN-ホルミル体の生成量が増加することが明らかとなった。なお、実施例1~2及び比較例1のフィルムコーティング錠剤においてN-ホルミル体以外のデスロラタジン由来の類縁物質は検出されなかった。
【0039】
この結果より、フィルムに含まれるマクロゴールが酸化チタンと光エネルギーにより分解され、この分解物が、デスロラタジンからN-ホルミル体を生成していると推察された。
【0040】
[実施例3]
マクロゴール6000をヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、実施例3のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0041】
[実施例4]
マクロゴール6000をクエン酸トリエチル(CITROFLEX2(SC-60)、森村商事式会社)に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、実施例4のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0042】
[実施例5]
マクロゴール6000をトリアセチン(ナカライテスク株式会社)に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、実施例5のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0043】
[実施例6]
マクロゴール6000をプロピレングリコール(AGC株式会社)に変更したこと以外は、比較例1と同様の方法により、実施例6のフィルムコーティング錠剤を製造した。
【0044】
[光安定性の評価]
上述した方法により、実施例3~6のフィルムコーティング錠剤について、光安定性を評価した。図2は、実施例3~6のフィルムコーティング錠剤における光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量を示す図である。なお、図2に、実施例1及び比較例1のフィルムコーティング錠剤の評価結果を再掲する。実施例3~6のフィルムコーティング錠剤においては、光照射後のデスロラタジンのN-ホルミル体の増加量は0.1%未満であった。なお、実施例3~6のフィルムコーティング錠剤においてN-ホルミル体以外のデスロラタジン由来の類縁物質は検出されなかった。
図1
図2