(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163452
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20231102BHJP
B23K 37/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
B23K37/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074384
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】モハマド ファルハン ビン ハムダン
(72)【発明者】
【氏名】横井 雅浩
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA04
3C016CB06
3C016CC02
3C016CE05
3C016EA01
(57)【要約】
【課題】クランプ装置に設けられた逃がし通路内にスパッタが堆積することを防止することが可能なクランプ装置を提供する。
【解決手段】ピン部20とワーク受け26面とを有し、前記ピン部の周壁に第1の開口21が形成されたロケートピン12と、前記ロケートピンの基端部に接続され、周壁に第2の開口32A,32Bを有するとともに、逃がし通路36A,36Bを有する筒状のハウジング13と、前記ロケートピン及び前記ハウジングの内部空間12a,13aに配置され、クランプ位置とアンクランプ位置とに変位可能なクランプアーム14と、前記逃がし通路に配置された帯板状のガード部材15A,15Bと、を備えたクランプ装置10において、前記逃がし通路の底面37A,37Bは、前記第2の開口側が下方となる下り傾斜面に形成され、前記ガード部材は、前記クランプアームの側面から前記逃がし通路の前記底面まで連なる下り傾斜面状をなす。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル状のワークに形成されたクランプ孔に挿入されるピン部と、該ピン部の基端部から径方向外側に広がるワーク受け面と、を有し、前記ピン部の周壁に内部空間と連通する第1の開口が形成されたロケートピンと、
前記ロケートピンの基端部に接続され、周壁に第2の開口を有するとともに、前記第2の開口と前記ロケートピンの内部空間とを連通する逃がし通路を有する筒状のハウジングと、
前記ロケートピン及び前記ハウジングの内部空間に配置され、先端部が前記第1の開口から外部に突出して前記ワーク受け面に載置された前記ワークをクランプ可能なクランプ位置と、該先端部が前記内部空間内に収容されるアンクランプ位置とに変位可能なクランプアームと、
前記逃がし通路に配置され、前記クランプアームの側面から前記第2の開口に向かって延びる帯板状のガード部材と、
を備えたクランプ装置において、
前記逃がし通路の底面は、前記ロケートピンの先端を上方に向けた状態で、前記第2の開口側が下方となる下り傾斜面に形成されており、
前記ガード部材は、前記クランプアーム又は前記ハウジングに取付けられ、前記クランプアームの側面から前記逃がし通路の前記底面まで連なる下り傾斜面状をなすことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記ガード部材は、第1の端部が前記クランプアームの側面に取付けられており、前記クランプアームの変位に伴って、第2の端部が前記逃がし通路の前記底面上を移動することを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記ガード部材の前記第2の端部は、前記逃がし通路内に収まる範囲で移動することを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第2の開口は、前記ハウジングの周方向において前記第1の開口と同一の方向に開口した第1の逃がし開口と、前記第1の逃がし開口と反対側の周壁に形成された第2の逃がし開口とを有し、
前記逃がし通路は、前記ロケートピンの内部空間と前記第1の逃がし開口とを連通する第1の逃がし通路と、前記ロケートピンの内部空間と前記第2の逃がし開口とを連通する第2の逃がし通路とを有し、
前記ガード部材は、前記クランプアームの前記第1の逃がし開口側の側面から前記第1の逃がし通路の底面まで延びる第1のガード部材と、前記クランプアームの前記第2の逃がし開口側の側面から前記第2の逃がし通路の底面まで延びる第2のガード部材とを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記ガード部材は、板バネで形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関し、特に、パネル状のワークを位置決めした上でクランプするクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体は、複数のパネルを溶接して組み立てられる。各パネルを溶接する際には、パネルをクランプ装置により位置決めして固定している。クランプ装置は、クランプ対象となるワーク(パネル)に形成されたクランプ孔に挿入される位置決め用のロケートピンと、位置決めされたワークをクランプするクランプアームとを有している。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のクランプ装置では、ロケートピンが、ワークのクランプ孔に挿入されるピン部と、パネルのクランプ孔の周縁部を受けるワーク受け面とを有している。このロケートピンは、ピン部の周壁に形成された開口と連通する内部空間を有しており、筒状のハウジングの先端に装着されている。ロケートピンの内部空間とハウジングの内部空間は連通しており、クランプアームは、この内部空間に収容されている。クランプアームは、駆動機構の動力を受けて、クランプアームの先端部がロケートピンの開口から外部に突出してワーク受け面に載置されたワークをクランプ可能なクランプ位置と、クランプアームの先端部がロケートピンの内部空間内に収容されるアンクランプ位置とに移動する。
【0004】
クランプ装置でワークをクランプした状態でワークに溶接を施すと、溶接によって生じたスパッタが、ロケートピンの開口からクランプ装置の内部へ入り込み、クランプアームの動作不良を起こすことがある。
【0005】
動作不良を回避するため、特許文献1に記載のクランプ装置では、ハウジングに、スパッタを外部へ排出するための逃がし通路を設けている。逃がし通路は、ハウジングの内部空間と、ハウジングの周壁に形成された逃がし開口とを連通する水平に延びる通路である。このクランプ装置は、さらに、クランプアームの側面から逃がし通路の水平な底面まで延びる帯板状のガード部材を備えている。
【0006】
特許文献1に記載のクランプ装置では、ロケートピンの開口からクランプ装置の内部に入り込んだスパッタが、ロケートピンの内周面とガード部材の表面との間の通路を通ってハウジングの逃がし通路へ案内される。これにより、ハウジングの内部空間にスパッタが侵入することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のクランプ装置では、ハウジングに形成された逃がし通路の底面が水平面になっているため、この底面にスパッタが堆積していく。堆積したスパッタにより逃がし通路に詰まりが生じた場合、逃がし通路内に圧縮空気を導入してスパッタを除去することができるが、粉塵が舞う要因となり、作業環境上好ましくないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、クランプ装置に設けられたスパッタの逃がし通路内にスパッタが堆積することを防止することが可能なクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、パネル状のワークに形成されたクランプ孔に挿入されるピン部と、該ピン部の基端部から径方向外側に広がるワーク受け面と、を有し、前記ピン部の周壁に内部空間と連通する第1の開口が形成されたロケートピンと、前記ロケートピンの基端部に接続され、周壁に第2の開口を有するとともに、前記第2の開口と前記ロケートピンの内部空間とを連通する逃がし通路を有する筒状のハウジングと、前記ロケートピン及び前記ハウジングの内部空間に配置され、先端部が前記第1の開口から外部に突出して前記ワーク受け面に載置された前記ワークをクランプ可能なクランプ位置と、該先端部が前記内部空間内に収容されるアンクランプ位置とに変位可能なクランプアームと、前記逃がし通路に配置され、前記クランプアームの側面から前記第2の開口に向かって延びる帯板状のガード部材と、を備えたクランプ装置において、前記逃がし通路の底面は、前記ロケートピンの先端を上方に向けた状態で、前記第2の開口側が下方となる下り傾斜面に形成されており、前記ガード部材は、前記クランプアーム又は前記ハウジングに取付けられ、前記クランプアームの側面から前記逃がし通路の前記底面まで連なる下り傾斜面状をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るクランプ装置によれば、クランプ装置に設けられたスパッタの逃がし通路内にスパッタが堆積することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るクランプ装置の側面図である。
【
図2】クランプ装置のアンクランプ状態を示す断面図である。
【
図4】クランプ装置のクランプ状態を示す断面図である。
【
図5】クランプアーム及びガード部材の斜視図である。
【
図6】クランプ状態にあるクランプ装置の要部拡大断面図である。
【
図7】アンクランプ状態にあるクランプ装置の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係るクランプ装置10の側面図であり、
図2は、
図1のA-A線に沿う断面図である。クランプ装置10は、パネル状のワーク80を位置決めした上でクランプする装置である。クランプ装置10は、ロケートピン12と、ハウジング13と、クランプアーム14と、ガード部材15A,15Bと、シリンダ16と、を備える。ワーク80は、ロケートピン12が挿入される位置決め用のクランプ孔82を有する。
図2に示すように、クランプ装置10は、内部に入り込んだスパッタをクランプ装置10の外部に排出するための逃がし通路36A,36Bを有している。以下の説明では、クランプ装置10において、ロケートピン12側を先端側、シリンダ16側と基端側と称する。
【0014】
ロケートピン12は、ワーク80に形成されたクランプ孔82に挿入されるピン部20と、ワーク80が載置されるワーク受け部24と、を備えるとともに、ワーク受け部24からピン部20まで連なる内部空間12aを有している。
【0015】
ピン部20は、先端が閉じた中空の円柱状に形成されており、周壁に、ロケートピン12の内部空間12aと連通する第1の開口を有している。本実施形態では、第1の開口として、ピン部20の周壁に、ピン部20の軸方向に長く延びる第1のスリット開口21が形成されている。クランプアーム14の先端部は、この第1のスリット開口21からロケートピン12の外部へ突出可能に構成される。本実施形態では、ピン部20の周壁において、第1のスリット開口21と反対側の周壁に、ロケートピン12の内部空間12aと連通する第2のスリット開口22が形成されている。なお、クランプ装置10は第2のスリット開口22を有していない構成であってもよい。
【0016】
ワーク受け部24は、ピン部20の基端部に接続されたピン部20よりも大径の筒状の部位である。ワーク受け部24の先端側の表面には、ピン部20の基端部から径方向外側に広がるワーク受け面26が形成されている。ワーク受け面26は、ワーク80のクランプ孔82にピン部20を挿入した状態で、ワーク80のクランプ孔82の周辺部が載置される面である。なお、本実施形態のロケートピン12では、ピン部20が中空の円柱状、ワーク受け部24が四角筒状に形成されているが、断面形状は、円形や四角形に限られず、適宜設定することができる。
【0017】
ハウジング13は、ロケートピン12の基端部に接続され、筒状に形成されている。ハウジング13は、ロケートピン12の内部空間12aを介して第1のスリット開口21と連通する少なくとも1つの第2の開口を周壁に有している。本実施形態では、第2の開口として、2つの逃がし開口、すなわち、第1のスリット開口21と同一方向に開口した第1の逃がし開口32Aと、これと反対側の周壁に形成された第2の逃がし開口32Bとを有している。
図1、
図2及び
図3に示すように、本実施形態のハウジング13は、第1の側面31a、第2の側面31b、第3の側面31c及び第4の側面31dに囲まれた断面略四角形の柱状体に、クランプアーム14及び後述するピストンロッド66が挿入される内部空間13aを形成した筒状に形成されている。ハウジング13において、対向する第1の側面31a及び第3の側面31cのそれぞれには、軸方向に長く延びる長方形の逃がし開口32A,32Bが形成されている。
【0018】
ハウジング13は、クランプアーム14を組付けた状態で、内部に、ロケートピン12の内部空間12aと第1の逃がし開口32Aとを連通する第1の逃がし通路36Aと、ロケートピン12の内部空間12aと第2の逃がし開口32Bとを連通する第2の逃がし通路36Bと、を有している。ハウジング13からクランプアーム14が取り外された状態で、ハウジング13の内部空間13aと第1及び第2の逃がし通路36A,36Bは連通している。
【0019】
ハウジング13の内部には、シリンダ16のピストンロッド66と、これに連結されたクランプアーム14の基端部とが挿通される筒状体38が配置されている。筒状体38の先端側の外表面は、筒状体38の先端から各逃がし開口32A,32Bの下端(ハウジング13の基端側の端)に向かって傾斜する傾斜面に形成されている。この傾斜面は、各逃がし通路36A,36Bの底面37A,37Bを形成している。底面37A,37Bは、クランプ装置10のロケートピン12の先端を上方に向けた状態で、逃がし通路36A,36B側が下方となる下り傾斜面となっている。
【0020】
なお、本実施形態では、ロケートピン12と、ハウジング13とが別体に形成されているが、これらは一体に形成されていてもよい。また、本実施形態では、ハウジング13の内部に配置される筒状体38が、ハウジング13と別体に形成されているが、これらは一体に形成されていてもよい。
【0021】
クランプアーム14は、ハウジング13の内部空間13aからロケートピン12の内部空間12aに亘って配置され、ロケートピン12の軸方向に長く延びる略棒状の部材である。クランプアーム14は、
図2に示すように、先端部がロケートピン12の内部空間12aに収容されたアンクランプ位置と、
図4に示すように、先端部がスリット開口21から外部に突出したクランプ位置とに変位可能に構成されている。クランプアーム14の先端部には、鉤形状をなすクランプ部41が形成されている。クランプアーム14の長さ方向の中間部には、ガイド孔44が形成されている。ガイド孔44は、クランプアーム14の長さ方向に長く延びる屈曲した長孔である。ガイド孔44には、ハウジング13に固定されたガイドピン39が挿通されている。
【0022】
図4及び
図5に示すように、クランプアーム14は、ロケートピン12内に収容される先端部側が、ハウジング13内に収容される基端部よりも細く形成されている。本実施形態のクランプアーム14は、先端部側が断面略四角形の棒状に形成されている。クランプアーム14の4つの側面42a,42b,42c,42d(
図1、
図2及び
図5を参照)は、それぞれ、ハウジング13の4つの側面31a,31b,31c,31dを向くように配置されており、クランプ部41は、クランプアーム14の第1の側面42aに設けられている。
【0023】
ガード部材15A,15Bは、ハウジング13又はクランプアーム14に取付けられ、ハウジング13の内部空間13a(特に、ピストンロッド66とクランプアーム14の基端部とが収容される筒状体38の内部空間38a)への異物の進入を抑制するものである。ガード部材15A,15Bは、
図5に示すように、帯板状に形成されている。ガード部材15A,15Bは、第1の逃がし通路36A内と、第2の逃がし通路36B内とにそれぞれ配置されている。本実施形態のガード部材15は、クランプアーム14の正面である側面42aから、第1の逃がし開口32Aに向かって延びる第1のガード部材15Aと、クランプアーム14の背面である側面42c(側面42aの反対側の側面)から、第2の逃がし開口32Bに向かって延びる第2のガード部材15Bとを有している。
【0024】
本実施形態において、各ガード部材15A,15Bは、クランプアーム14に取付けられている。第1のガード部材15Aは、第1の端部51が、クランプアーム14の側面42aに取付けられ、該側面42aから第1の逃がし通路36Aの底面37Aまで延びている。第2のガード部材15Bは、第1の端部51が、クランプアーム14の側面42cに取付けられ、該側面42cから第2の逃がし通路36Bの底面37Bまで延びている。各ガード部材15A,15Bの第1の端部51は、溶接等によってクランプアーム14に接合されている。本実施形態では、
図2に示すように、各ガード部材15A,15Bの第1の端部51が、クランプアーム14の側面42a,42cに設けられた嵌め込み溝43に嵌め込まれた状態で接合されている。ハウジング13にクランプアーム14及び各ガード部材15A,15Bが組付けられた状態では、各ガード部材15A,15Bによって、ハウジング13においてクランプアーム14の基部が挿入される内部空間13aと各逃がし通路36A,36Bとの連続性が遮断される。
【0025】
各ガード部材15A,15Bの第2の端部52は、クランプアーム14の移動に伴って各逃がし通路36A,36Bの底面37A,37B上を移動する。
図2及び
図4に示すように、各ガード部材15A,15Bは、第2の端部52が、逃がし通路36A,36B内に収まる範囲で移動する(すなわち、逃がし開口32A,32Bから外部へ出ない)ように長さが設定されている。
【0026】
シリンダ16は、クランプアーム14に駆動力を付与する駆動機構を構成している。
図2に示すように、シリンダ16は、シリンダ本体60と、ピストン64と、ピストンロッド66と、を備える。
【0027】
シリンダ本体60は、ハウジング13と同一軸上に配置された有底の筒状に形成されており、本実施形態では、断面が略四角形の筒状に形成されている。シリンダ本体60の内部空間は、シリンダ16を作動させる作動流体が導入されるシリンダ室を構成している。シリンダ本体60の先端部は、ハウジング13の基端部に接合されている。シリンダ本体60の先端部は開口しており、この開口端部は、蓋体61によって閉塞されている。蓋体61の中央部には、ピストンロッド66が貫通する孔が形成されている。シリンダ本体60の側面には、シリンダ室内への作動流体の導入や、導入された作動流体の排出を行うための2つのポート62,63が設けられている。本実施形態では、作動流体として圧縮空気を用いている。
【0028】
ピストン64は、シリンダ室内をシリンダ16の軸方向に移動自在に設けられているとともに、シリンダ室を第1室R1と第2室R2とに分割する。図示例では、シリンダ16の先端側(ハウジング13側)の室を第1室R1とし、基端側を第2室R2としている。シリンダ16の2つのポート62,63のうち、第1のポート62は第1室R1と連通し、第2のポート63は第2室R2と連通している。ピストン64には、ピストンロッド66が固定されている。
【0029】
ピストンロッド66は、ピストン64の往復移動に伴って、軸方向に往復移動する。ピストンロッド66の先端部には、ピン67が固定されており、このピン67を介してクランプアーム14の基端部がピストンロッド66に連結されている。
【0030】
次に、上述したクランプ装置10の動作について説明する。クランプ装置10は、シリンダ16が作動してピストンロッド64が軸方向に往復運動すると、ピストンロッド64に接続されたクランプアーム14がこれに追従して往復運動する。具体的には、シリンダ16の第1のポート62から第1室R1に圧縮空気が導入され、第2室R2内の空気が第2のポート63からが排出されると、ピストン64、ピストンロッド66及びクランプアーム14がロケートピン12側へ移動する。また、第2のポート63から第2室R2に圧縮空気が導入され、第1室R1内の空気が第1のポート62から排出されると、ピストン64、ピストンロッド66及びクランプアーム14がシリンダ16側へ移動する。クランプアーム14は、ガイド孔44及びガイドピン67によって移動方向をガイドされながら移動し、
図2に示すアンクランプ位置と
図4に示すクランプ位置とに変位する。
【0031】
図6に示すように、このクランプ装置10では、ワーク80をクランプしてワーク80にスポット溶接を施した際、溶接によって生じたスパッタSがロケートピン12のスリット開口21,22からクランプ装置10の内部に入り込むことがある。入り込んだスパッタSは、クランプアーム14の背面(側面42c)とロケートピン12の内周面との間の隙間を通ってハウジング13内に入り込むが、第2のガード部材15Bによってハウジング13の奥方への侵入が抑制されるとともに、第2の逃がし通路36Bを通って第2の逃がし開口32Bからクランプ装置10の外部へ排出される。この際、第2のガード部材15Bの表面及び第2の逃がし通路36Bの底面37Bは、下り傾斜面に形成されているため、スパッタSを第2の逃がし通路36B内に堆積させることなく、クランプ装置10の外部へ排出することができる。
【0032】
図7に示すように、クランプ装置10がアンクランプ状態にある場合にも、スパッタSがロケートピン12のスリット開口21,22からクランプ装置10の内部に入り込むことがある。かかる場合、入り込んだスパッタSは、クランプアーム14の正面(側面42a)とロケートピン12の内周面との間の隙間、及び、クランプアーム14の背面(側面42c)とロケートピン12の内周面との間の隙間を通ってハウジング13内に入り込む。入り込んだスパッタSは、ガード部材15A,15Bによってハウジング13の奥方への侵入が抑制されるとともに、第1の逃がし通路開口32A又は第2の逃がし開口32Bからクランプ装置10の外部へ排出される。この際、ガード部材15A,15Bの表面及び第1及び第2の逃がし通路36A,36Bの底面37A,37Bは、下り傾斜面に形成されているため、スパッタSを各逃がし通路36A,36B内に堆積させることなく、クランプ装置10の外部へ排出することができる。
【0033】
上述したように、本実施形態のクランプ装置10は、スパッタSがクランプ装置10の内部に入り込んできた場合に、スパッタSが逃がし通路36A,36B内に堆積することを防止しながらハウジング13の外部へ排出することができる。これにより、クランプ装置10内に堆積したスパッタSを圧縮空気で除去する作業をなくすことができる。
【0034】
また、上述したクランプ装置10では、クランプアーム14の移動に伴って、ガード部材15A,15Bが移動するため、ガード部材15A,15Bの表面に付着したスパッタSを効率よく落とすことができる。また、この際、ガード部材15A,15Bの第2の端部52が、逃がし通路36A,36Bの底面37A,37B上を移動するため、底面37A,37Bに付着したスパッタSを第2の端部52によって擦り落とすことができる。
【0035】
また、ガード部材15A,15Bはバネ性を有しているため、ガード部材15A,15Bをクランプアーム14の動作に追従させて柔軟に変形させることができる。これにより、クランプアーム14のクランプ動作及びアンクランプ動作を良好に保つことができる。また、ガード部材15A,15Bの弾性変形により、ガード部材15A,15BにスパッタSが付着することを抑制することができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、ガード部材15A,15Bは、第2の端部52が、逃がし通路36A,36Bの底面37A,37Bに接合されており、第1の端部51がクランプアーム14と非接合状態で接触している構成であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 クランプ装置
12 ロケートピン
12a ロケートピンの内部空間
13 ハウジング
13a ハウジングの内部空間
14 クランプアーム
15A 第1のガード部材
15B 第2のガード部材
16 シリンダ
20 ピン部
21 第1のスリット開口
22 第2のスリット開口
24 ワーク受け部
26 ワーク受け面
32A 第1の逃がし開口
32B 第2の逃がし開口
36A 第1の逃がし通路
36B 第2の逃がし通路
37A 第1の逃がし通路の底面
37B 第2の逃がし通路の底面
80 ワーク
82 クランプ孔
S スパッタ