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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163458
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】乳入り飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23C 9/156 20060101AFI20231102BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231102BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20231102BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231102BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20231102BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231102BHJP
   A23F 3/16 20060101ALI20231102BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A23C9/156
A23L2/00 B
A23L2/00 J
A23L2/38 P
A23L2/56
A23L2/52 101
A23F3/16
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074393
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】嶋 レイ
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 勇樹
【テーマコード(参考)】
4B001
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
4B001AC06
4B001AC15
4B001AC20
4B001AC43
4B001AC46
4B001BC01
4B001BC07
4B001BC08
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC02
4B027FK01
4B027FK04
4B027FK05
4B027FK06
4B027FK09
4B027FK10
4B027FK18
4B027FK20
4B027FP72
4B027FP85
4B027FP90
4B027FQ06
4B027FQ19
4B027FQ20
4B117LC02
4B117LG17
4B117LK01
4B117LK10
4B117LK12
4B117LK18
4B117LL01
4B117LP01
4B117LP14
4B117LP16
4B117LP20
(57)【要約】
【課題】飲用時に冷涼感及びすっきり感を感じられる乳入り飲料の提供。
【解決手段】香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料であって、前記乳成分が、ホエイ分離物由来の固形分を含み、前記乳入り飲料の無脂乳固形分に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、50質量%以上である、乳入り飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料であって、
前記乳成分が、ホエイ分離物由来の固形分を含み、前記乳入り飲料の無脂乳固形分に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、50質量%以上である、乳入り飲料。
【請求項2】
香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料であって、
前記乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合が1質量%以上であり、
前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比が2.5以上である、乳入り飲料。
【請求項3】
前記ホエイ分離物が、ホエイパウダーである、請求項1に記載の乳入り飲料。
【請求項4】
前記乳入り飲料の総質量に対する前記無脂乳固形分の割合が、1~15質量%である、請求項1又は2に記載の乳入り飲料。
【請求項5】
前記乳入り飲料の総質量に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、2質量%以上である、請求項1又は3に記載の乳入り飲料。
【請求項6】
前記香味成分が、茶抽出物、茶外茶抽出物、抹茶、コーヒー抽出物、果汁、ココア、キャラメル、チョコレート、野菜汁、香辛料、及び香料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の乳入り飲料。
【請求項7】
前記茶抽出物が、紅茶抽出物、緑茶抽出物、ほうじ茶抽出物、烏龍茶抽出物及びジャスミン茶抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載の乳入り飲料。
【請求項8】
前記乳入り飲料の20℃におけるpHが、6.4~7.0である、請求項1又は2に記載の乳入り飲料。
【請求項9】
香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料の製造方法であって、
前記香味成分と、乳成分含有原料とを混合する工程を有し、
前記乳成分含有原料が、ホエイ分離物を含み、
前記混合する工程において、前記乳入り飲料の無脂乳固形分に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、50質量%以上となるように前記乳成分含有原料を混合する、乳入り飲料の製造方法。
【請求項10】
香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料の製造方法であって、
前記香味成分と、乳成分含有原料とを混合する工程を有し、
前記乳成分含有原料が、乳糖及び乳タンパク質を含み、
前記混合する工程において、前記乳入り飲料の総質量に対する前記乳成分含有原料の無脂乳固形分の割合が1質量%以上、かつ前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比が2.5以上となるように前記乳成分含有原料を混合する、乳入り飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳入り飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳入り紅茶飲料、乳入りコーヒー飲料等の、香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料において、乳成分の種類や含有量は、乳入り飲料の風味に影響する。一般に乳脂肪や無脂乳固形分の含有量が増えると、コクが強くなる傾向がある。また、乳成分としてホエイタンパク質を飲料に含有させた場合、ホエイタンパク質独特の臭気(ホエイ臭)による風味の低下や加熱殺菌後の後味の悪さといった問題をもたらすことが報告されている(特許文献1~2)。
ところで、夏場等においては、冷涼感やすっきり感のある飲料が求められる。飲料に冷涼感やすっきり感を付与するためには一般に香料が使用されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/026855号
【特許文献2】特許第6810821号公報
【特許文献3】国際公開第2019/078185号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、冷涼感やすっきり感を付与する香料を乳入り飲料に添加することは、乳入り飲料としてのおいしさを損ね得る風味(過度な刺激や苦み等)の発生、製造ラインにおける残香等の問題があり、望ましくない。
本発明は、飲用時に冷涼感及びすっきり感を感じられる乳入り飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料であって、
前記乳成分が、ホエイ分離物由来の固形分を含み、前記乳入り飲料の無脂乳固形分に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、50質量%以上である、乳入り飲料。
[2]香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料であって、
前記乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合が1質量%以上であり、
前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比が2.5以上である、乳入り飲料。
[3]前記ホエイ分離物が、ホエイパウダーである、[1]に記載の乳入り飲料。
[4]前記乳入り飲料の総質量に対する前記無脂乳固形分の割合が、1~15質量%である、[1]又は[2]に記載の乳入り飲料。
[5]前記乳入り飲料の総質量に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、2質量%以上である、[1]又は[3]に記載の乳入り飲料。
[6]前記香味成分が、茶抽出物、茶外茶抽出物、抹茶、コーヒー抽出物、果汁、ココア、キャラメル、チョコレート、野菜汁、香辛料、及び香料からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の乳入り飲料。
[7]前記茶抽出物が、紅茶抽出物、緑茶抽出物、ほうじ茶抽出物、烏龍茶抽出物及びジャスミン茶抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[6]に記載の乳入り飲料。
[8]前記乳入り飲料の20℃におけるpHが、6.4~7.0である[1]~[7]のいずれかに記載の乳入り飲料。
[9]香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料の製造方法であって、
前記香味成分と、乳成分含有原料とを混合する工程を有し、
前記乳成分含有原料が、ホエイ分離物を含み、
前記混合する工程において、前記乳入り飲料の無脂乳固形分に対する前記ホエイ分離物由来の固形分の割合が、50質量%以上となるように前記乳成分含有原料を混合する、乳入り飲料の製造方法。
[10]香味成分及び乳成分を含む乳入り飲料の製造方法であって、
前記香味成分と、乳成分含有原料とを混合する工程を有し、
前記乳成分含有原料が、乳糖及び乳タンパク質を含み、
前記混合する工程において、前記乳入り飲料の総質量に対する前記乳成分含有原料の無脂乳固形分の割合が1質量%以上、かつ前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比が2.5以上となるように前記乳成分含有原料を混合する、乳入り飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、飲用時に冷涼感及びすっきり感を感じられる乳入り飲料及びその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において、数値範囲に用いられる記号「~」は、その下限値及び上限値を含む。
【0008】
〔乳入り飲料〕
本発明の一実施形態に係る乳入り飲料は、香味成分及び乳成分を含む。
本明細書において「香味成分」とは、乳入り飲料に香り及び味わいを付与する成分である。
香味成分は、茶抽出物、茶外茶抽出物、抹茶、コーヒー抽出物、果汁、ココア、キャラメル、チョコレート、野菜汁、香辛料、及び香料からなる群から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0009】
茶抽出物としては、茶から水(温水を含む)で抽出した抽出液、抽出液を濃縮した濃縮液、抽出液又は濃縮液を乾燥した乾燥物等が挙げられる。茶抽出物としては、紅茶抽出物、緑茶抽出物、ほうじ茶抽出物、烏龍茶抽出物及びジャスミン茶抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、紅茶抽出物が特に好ましい。
茶外茶抽出物としては、茶外茶から水(温水を含む)で抽出した抽出液、抽出液を濃縮した濃縮液、抽出液又は濃縮液を乾燥した乾燥物等が挙げられる。茶外茶抽出物としては、ルイボス茶、ハーブ茶、マテ茶、麦茶等の各種の茶外茶の抽出物が挙げられる。これらの茶外茶抽出物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0010】
コーヒー抽出物としては、焙煎されたコーヒー豆又はその破砕物から水(温水を含む)で抽出した抽出液、抽出液を濃縮した濃縮液、抽出液又は濃縮液を乾燥した乾燥物等が挙げられる。
コーヒー抽出物としては、L値が16~26であるコーヒー焙煎豆を抽出して得られたコーヒー抽出物が好ましい。コーヒー焙煎豆のL値は17~23であることがより好ましい。L値は明度を表し、コーヒー焙煎豆の焙煎度の指標となる。L値は色差計を用いて測定することが可能である。色差計は例えば日本電色工業株式会社製の分光白色度計・色差計PF 7000を用いることが可能である。焙煎コーヒー豆の挽き具合(コーヒー豆を粉末にした時の、粉末の細かさ)は特に制限されず、粗挽き、中挽き、細挽き等、志向する味に合わせて設定することができる。
【0011】
果汁としては、柑橘類(オレンジ、ミカン、レモン、ユズ、ベルガモット等)、ベリー類(イチゴ、ブルーベリー、カシス、ラズベリー、アロニア等)、リンゴ、ブドウ、ナシ、モモ、サクランボ、アセロラ、ウメ、パイナップル、バナナ、メロン、グアバ、マンゴー等の各種の果物の果汁が挙げられる。果汁は濃縮液又は濃縮液を乾燥した乾燥物の形態で用いられてもよい。
野菜汁としては、トマト、ニンジン、カボチャ、イモ、ピーマン、パプリカ、ビート、ケール、ホウレンソウ等の各種の野菜の搾汁が挙げられる。野菜汁は濃縮液又は濃縮液を乾燥した乾燥物の形態で用いられてもよい。
香辛料としては、ニンニク、ショウガ、ごま、唐辛子、ホースラディシュ、胡椒、ナツメグ、シナモン、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ディルシード、クレソン、コリアンダーリーフ、紫蘇、セロリー、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、レモングラス、ワサビ葉、山椒の葉等が挙げられる。香辛料は濃縮液又は濃縮液を乾燥した乾燥物の形態で用いられてもよい。
【0012】
香料としては、ブラックティーフレーバー、ベルガモットフレーバー、抹茶フレーバー、チョコレートフレーバー、ホワイトチョコフレーバー、バニラフレーバー、キャラメルフレーバー、ココアフレーバー、コーヒーフレーバー、ストロベリーフレーバー、ウイスキーフレーバー等が挙げられる。
乳入り飲料は、冷涼感やすっきり感を付与する香料は含まないことが好ましい。冷涼感やすっきり感を付与する香料としては、例えば、国際公開第2019/078185号に開示される2,2,6-トリメチルシクロヘキサンカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0013】
これらの香味成分は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
香味成分としては、冷涼感やすっきり感がおいしさに結びつきやすい観点から、茶抽出物又はコーヒー抽出物が好ましい。すなわち、乳入り飲料は、乳入り茶飲料、又は乳入りコーヒー飲料であることが好ましい。茶抽出物又はコーヒー抽出物と、他の香味成分とを併用してもよい。
【0014】
香味成分の含有量は、香味成分の種類に応じて適宜選定できる。
茶抽出物又は茶外茶抽出物の含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
抹茶の含有量は、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。
コーヒー抽出物の含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
果汁の含有量は、ストレート果汁の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~25質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
ココアの含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
キャラメルの含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
チョコレートの含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
野菜汁の含有量は、ストレート野菜汁の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.01~25質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましい。
香辛料の含有量は、固形分の量に換算して、乳入り飲料の総質量に対し、0.001~10質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましい。
香料の含有量は、所望の香味を乳入り飲料に付与できる量を適宜設定することが可能である。
【0015】
本明細書において、茶抽出物の固形分の量とは、茶抽出液、又はその乾燥物に含まれる可溶性の成分の量を意味する。茶外茶抽出物の固形分の量とは、茶外茶抽出液、又はその乾燥物に含まれる可溶性の成分の量を意味する。コーヒー抽出物の固形分の量とは、コーヒー抽出液、又はその乾燥物に含まれる可溶性の成分の量を意味する。
茶抽出物、茶外茶抽出物及びコーヒー抽出物それぞれの固形分の量は、茶抽出物、茶外茶抽出物及びコーヒー抽出物が液体である場合は、その液体が20℃であるときの屈折計の測定値(Bx値)に、その液体の液量(g)を乗ずることによって算出することができる。茶抽出物、茶外茶抽出物及びコーヒー抽出物が固体である場合は、その固体を水に溶解して得られる水溶液が20℃であるときの屈折計値(Bx値)に、その水溶液の液量(g)を乗ずることによって算出することができる。屈折計としては、例えばATAGO社製のRX-5000i-Plusを用いることが可能である。
【0016】
乳成分は、乳由来の固形分である。
乳入り飲料において、乳成分は少なくとも、ホエイ由来の固形分を含む。
「ホエイ」とは、乳を原料として、チーズ、カゼイン、カゼインナトリウム、ヨーグルト等を製造する過程において、凝固した乳分を取り除いて残る透明な液体部分を言う。ホエイの原料の乳としては、ウシ、ヒツジ、ヤギ等の哺乳動物の乳が好ましく、ウシの乳が特に好ましい。ホエイは、原料の乳よりも酸性であり、そのpHは、使用する乳酸菌等の発酵条件によっても異なるが、4.6~6.3程度である。ホエイの大部分は水分である。ホエイは通常、固形分としてホエイタンパク質、乳糖、灰分、脂肪(乳脂肪)を含む。
ホエイ由来の固形分としては、上述のホエイ由来の固形分、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)由来の固形分、ホエイタンパク質分離物(WPI)由来の固形分、ホエイ分離物由来の固形分等を用いることが可能である。
「ホエイ分離物」とは、ホエイをセパレーター、分離膜、イオン交換樹脂等を用いて脱脂、脱塩等の成分分離処理を施したものである。従って、ホエイ分離物由来の固形分は無脂乳固形分とみなすことができる。成分分離処理後のホエイ分離物は液状である。このホエイ分離物はそのまま液状で用いることが可能であるが、さらに噴霧乾燥や凍結乾燥等の常法により処理した粉末(本明細書において「ホエイパウダー」と記載する)とすることも可能である。製造上の取り扱い易さの観点では、ホエイ分離物としてホエイパウダーを用いることが好ましい。
ホエイ分離物の固形分のなかでは乳糖の占める割合が最も多い。ホエイ分離物の固形分に対する乳糖の割合は、例えば70~90質量%である。ホエイ分離物の固形分に対するホエイタンパク質の割合は、例えば10~15質量%である。
ホエイパウダー等のホエイ分離物は、市販のものを用いてもよく、公知の方法により製造したものを用いてもよい。
【0017】
乳成分は、ホエイ由来の固形分以外の乳成分含有原料由来の固形分をさらに含んでいてもよい。ホエイ由来の固形分以外の乳成分含有原料由来の固形分は、無脂乳固形分であってもよく、乳脂肪であってもよく、それらの両方であってもよい。
ホエイ由来の固形分以外の固形分を含む乳成分含有原料としては、例えば、生乳、脱脂乳、部分脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、乳糖、練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、チーズ、バター等が挙げられる。これらの乳成分含有原料は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0018】
乳入り飲料の無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合は、50質量%以上であり、55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。ホエイ分離物由来の固形分の割合が50質量%以上であれば、香料を含まなくても、飲用時に冷涼感及びすっきり感を感じられる。
乳入り飲料の無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合の上限は、冷涼感やすっきり感の点では特に限定されず、100質量%であってもよい。乳入り飲料のおいしさの点では、乳入り飲料の無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合は、90質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0019】
乳入り飲料の総質量に対するホエイ分離物由来の固形分の割合は、2質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。乳入り飲料の総質量に対するホエイ分離物由来の固形分の割合が上記下限値以上であれば、冷涼感、すっきり感がより優れる。
乳入り飲料の総質量に対するホエイ分離物由来の固形分の割合は、おいしさの点では、10質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましい。
【0020】
乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合は、1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。無脂乳固形分の割合が上記下限値以上であれば、すっきり感、冷涼感、乳の香味が引き立つ傾向があり、上記上限値以下であれば、香味成分の香りや風味が引き立つ傾向がある。
乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合は、乳入り飲料100g中の固形分の質量から乳入り飲料の脂肪分の質量を引き、さらに乳原料以外の原料の固形分の質量を引くことにより求められる。乳入り飲料、乳原料以外の原料それぞれの固形分は、水分含量以外の含量であり、後述する乳入り飲料の固形分含量と同様に、直接加熱乾燥法により測定された水分含量から算出される。
乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合は、乳等省令 別表二(七)乳等の成分規格の試験法の「1 乳及び乳製品の無脂乳固形分の定量法」により測定することが可能である。
【0021】
乳入り飲料の総質量に対する乳脂肪分の割合は、0.1~10質量%が好ましく、0.2~4質量%がより好ましく、1~3質量%がさらに好ましい。乳脂肪分の割合が上記下限値以上であれば、乳の香味が引き立つ傾向があり、上記上限値以下であれば、すっきり感、冷涼感、香味成分の香りや風味が引き立つ傾向がある。
乳脂肪分の割合は、ゲルベル法により求められる。具体的には、硫酸10mLを硫酸用ピペットを用いてゲルベル乳脂計に注入し、次に乳入り飲料11mLを牛乳用ピペットを用いて徐々に硫酸上に層積し、更に純アミルアルコール1mLを加えゴム栓をし、指で栓を圧しつつ振り乳入り飲料を溶解した後、約65℃の温湯中に15分間浸し、次に3分間から5分間遠心器(1分間の回転数700回以上)にかけ、更に約65℃の温湯中に浸して温度を一定にし、析出した脂肪層の度数を乳入り飲料中の脂肪量(質量%)とする。
【0022】
乳入り飲料の総質量に対する乳成分(無脂乳固形分及び乳脂肪分の合計)の割合は、1.1~25質量%が好ましく、1.2~14質量%がより好ましく、3~11質量%がさらに好ましい。
【0023】
乳入り飲料は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、香味成分及び乳成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、水、甘味料、酸味料、苦味料、着色料、酸化防止剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤、精製塩、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、消泡剤等が挙げられる。
【0024】
甘味料としては、例えば、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、異性化糖、マルトース、パラチノース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラフィノース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチュロース等の糖アルコール、グリチルリチン、ステビオサイド、レバウディオサイド、甜茶抽出物、甘茶抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム等が挙げられる。甘味料は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、L-アスコルビン酸ナトリウム等の有機酸のナトリウム又はカリウム塩、その他、食品衛生法上使用可能なpH調整剤が挙げられる。pH調整剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
乳入り飲料の20℃におけるpHは、6.0~7.4が好ましく、6.4~7.2がより好ましく、6.6~7.0がさらに好ましい。pHが上記上限値以下であれば、乳入り飲料のすっきり感、冷涼感、乳の安定性、乳の香味が引き立つ傾向があり、上記下限値以上であれば、乳の安定性がより優れる傾向がある。
【0027】
乳入り飲料の固形分含量は、乳入り飲料の総質量に対し、1.1~50質量%が好ましく、1.2~25質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。乳入り飲料の固形分含量が上記下限値以上であれば、乳の香味や香味成分の香りや風味が引き立つ傾向があり、上記上限値以下であれば、すっきり感、冷涼感がより優れる傾向がある。
固形分含量は、水分含量以外の含量であり、直接加熱乾燥法により測定された水分含量から算出される(算出式:100-水分含量(質量%)=固形分含量)。
【0028】
本発明の他の一実施形態に係る乳入り飲料は、香味成分及び乳成分を含み、前記乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合が1質量%以上であり、前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比(以下、単に「乳糖/乳タンパク質」とも記す。)が2.5以上である。
香味成分及び乳成分はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。ただし、本実施形態に係る乳入り飲料は、ホエイ分離物由来の固形分を含んでいなくてもよい。
【0029】
乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合は1質量%以上であり、1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。無脂乳固形分の割合が上記下限値以上であれば、すっきり感、冷涼感、乳の香味が引き立つ傾向があり、上記上限値以下であれば、香味成分の香りや風味が引き立つ傾向がある。
【0030】
乳糖/乳タンパク質は、乳入り飲料に含まれる乳糖の質量(g)を乳入り飲料に含まれる乳タンパク質の質量(g)にて除した値である。
乳糖/乳タンパク質は2.5以上であり、2.5~10が好ましく、2.8~6.5がより好ましく、3~5がより好ましく、3.2~4がよりさらに好ましい。乳糖/乳タンパク質が上記下限値以上、上限値以下であれば、すっきり感、冷涼感、乳の香味が引き立った乳入り飲料を得ることができる。
【0031】
乳入り飲料に含まれる乳タンパク質の質量は、乳入り飲料100gに含まれる乳成分含有原料由来の乳タンパク質(ホエイ、カゼイン)の質量を合計することで算出することができる。また、乳入り飲料に含まれる乳タンパク質の質量は、例えばケルダール法により測定することが可能である。
【0032】
乳入り飲料に含まれる乳糖の質量は、乳入り飲料100gに用いた乳成分含入原料由来の乳糖の質量を合計することで算出することができる。また、乳入り飲料に含まれる乳糖の質量は、例えば乳等省令 別表二(七)乳等の成分規格の試験法「7乳製品の糖分の定量法 a 乳糖の定量法」により測定することが可能である。
【0033】
〔乳入り飲料の製造方法〕
前記した乳入り飲料は、例えば、香味成分と、乳成分含有原料とを混合する工程(混合工程)を有する製造方法により製造できる。
香味成分は前記したとおりである。
乳成分含有原料は少なくとも、ホエイ由来の固形分を含む。
乳成分含有原料は、ホエイ由来の固形分以外の固形分を含む乳成分含有原料をさらに含んでいてもよい。ホエイ由来の固形分以外の固形分を含む乳成分含有原料としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0034】
混合工程においては、乳入り飲料の無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合が50質量%以上となるように乳成分含有原料を混合するか、又は、乳入り飲料の総質量に対する無脂乳固形分の割合が1質量%以上、かつ前記乳入り飲料中の乳糖/乳タンパク質で表される質量比が2.5以上となるように乳成分含有原料を混合する。
混合工程においては、香味成分及び乳成分含有原料に対し、これら以外の他の成分を混合してもよい。他の成分としては、前記と同様のものが挙げられる。
香味成分、乳成分含有原料、他の成分の混合順序は特に限定されない。それらを一括して混合してもよく、順次混合してもよい。ホエイパウダー等の固体の原料を予め水に溶解又は分散させてもよい。ホエイ分離物等の酸性の原料を予め中和してもよい。
【0035】
混合工程の後、必要に応じて、得られた混合液を加熱殺菌する(加熱殺菌工程)。
「加熱殺菌」とは、乳等省令で規定される牛乳の殺菌方法に準じて、「62~65℃の間の温度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法」で加熱することを意味する。殺菌方法は、バッチ式殺菌、プレート式殺菌等の間接加熱法でもよく、インジェクション式殺菌、インフュージョン式殺菌等の直接加熱法でもよい。
殺菌条件は、混合液の特性、使用する殺菌機(殺菌方式)及び容器等に応じて適宜設定することができる。例えばUHT殺菌の場合、120~150℃で1~120秒間程度、好ましくは130~145℃で2~30秒間程度の条件である。レトルト殺菌法の場合には、110~130℃で10~30分間程度、好ましくは120~125℃で10~20分間程度の条件である。
【0036】
混合工程の後、又は加熱殺菌工程の後、必要に応じて、混合液を均質化する(均質化工程)。均質化は、均質機等を使用して均質化する公知の方法により実施できる。
加熱殺菌工程の後、又は均質化工程の後、混合液を冷却する(冷却工程)。冷却温度は、例えば5~25℃である。
【0037】
上記のように、混合工程、必要に応じて加熱殺菌工程、均質化工程及び冷却工程等を経て、乳入り飲料が得られる。混合工程の後、乳入り飲料を得るまでに、希釈、濃縮等の追加工程を設けてもよい。
得られた乳入り飲料は、典型的には、容器に充填し、容器入り乳入り飲料とする。容器としては、例えば、缶、PETボトル、プラスチックカップ、ガラス瓶又は紙パックが挙げられる。
加熱殺菌工程を経ていない混合液を容器に充填し、レトルト殺菌法で加熱殺菌することにより容器入り乳入り飲料を製造してもよい。
【実施例0038】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
(使用原料)
脱脂粉乳:森永乳業株式会社製(脱脂粉乳の総質量に対し、乳タンパク質34質量%、炭水化物53.3質量%、灰分7.9質量%含有。無脂乳固形分は95.2質量%)。
ホエイパウダー:森永乳業株式会社製(ホエイパウダーの総質量に対し、乳糖77質量%、ホエイタンパク質12.5質量%、灰分5~6質量%含有)。
クリーム:森永乳業株式会社製(脂肪分45質量%)。
液糖:昭和産業株式会社製、砂糖混合果糖ぶどう糖液糖。
香料:ベルガモットフレーバー。
炭酸ナトリウム:高杉製薬株式会社製。
【0040】
(調製例1:紅茶抽出液の調製)
市販の紅茶葉100gを熱水に投入して抽出を行い、濾過により紅茶葉を除去し、冷却して、1500gの紅茶抽出液を得た。
【0041】
(試験例1)
試験例1は、ホエイ分離物が乳入り紅茶飲料の冷涼感、すっきり感、紅茶感、及びおいしさに与える影響を評価するために行った。
【0042】
<アイスアールグレイティーラテの製造>
表1に示す配合に従い、以下に示す手順で、例1~7のアイスアールグレイティーラテを製造した。例1~3は比較例であり、例4~7は実施例である。
調製例1で得た紅茶抽出液、脱脂粉乳、ホエイパウダー、クリーム、液糖、香料及び溶解水を混合した。得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて75℃、15MPaの均質条件で均質化し、バッチ殺菌装置を用いて80℃で10分間加熱殺菌した後、10℃に冷却し、アイスアールグレイティーラテを得た。得られたアイスアールグレイティーラテの無脂乳固形分は4.09質量%であった。
表1の各例の「溶解水」の配合量(残分)は、各例における全ての原料の合計が100質量%となるように適宜設定された量である。本明細書において、以下同じである。
例1~7のアイスアールグレイティーラテのpHは、ホエイパウダーの配合割合が多いほど低くなっており、例1のpHが6.7、例7のpHが6.5であった。
【0043】
【表1】
【0044】
<評価>
得られたアイスアールグレイティーラテについて、よく訓練された専門パネラー7名(パネラーA~G)により官能評価試験を行った。試験品(例1~7)の温度は10℃に調整した。例1のアイスアールグレイティーラテを各パネラーに提供し、これを基準(評点4)とした上で、例2~7のアイスアールグレイティーラテの冷涼感、すっきり感、紅茶感、及びおいしさを相対的に評価することをパネラー間で事前に擦り合わせた。
具体的には、以下の項目について7段階(1:基準より非常に弱い、2:基準より弱い、3:基準より少し弱い、4:基準(例1)、5:基準より少し強い、6:基準より強い、7:基準より非常に強い)で評価を行い、パネラー7名の評点の平均値を算出した。冷涼感、すっきり感、紅茶感、おいしさ各々の評点が高いほど、アイスアールグレイティーラテとして好ましい。
・冷涼感:冷たさを感じる。
・すっきり感:ぐびぐび飲める。
・紅茶感:紅茶の味や香りをミドルノートからラストノートに感じる。
・おいしさ:冷涼感、すっきり感、紅茶感を総合したアイスアールグレイティーラテ全体としてのおいしさ。
算出した平均値を以下の基準で判定した。
A:評点の平均値が5.5以上。
B:評点の平均値が4.5以上5.5未満。
C:評点の平均値が4.5未満。
結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
冷涼感及びすっきり感については、例2~7全て、例1と比べて冷涼感及びすっきり感が強まった。特に、例4~7においては平均が5.5以上となっていた。この結果から、無脂乳固形分としてホエイ分離物由来の固形分を含むことで、乳入り飲料に冷涼感及びすっきり感が付与されることがわかった。特に無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合が50質量%以上であると、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
また、乳入り飲料の総質量に対する乳タンパク質の質量の割合が0.95質量%以下であり、乳入り飲料の総質量に対する乳糖の質量の割合が2.67質量%以上であり、乳糖/乳タンパク質が2.5以上である場合に、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
なお、表1にて乳入り飲料の総質量に対する乳糖の質量の割合を算出する際は、脱脂粉乳の炭水化物含有量53.3質量%を乳糖含有量とみなして算出した。以下の試験例2、3においても同様である。
紅茶感については、例4~7において平均が4.6以上となり、紅茶感が増強されることがわかった。
おいしさについては、例2~4、7では例1との差は小さかったが、例5~6では平均が4.5以上であり、おいしさが高まっていた。この結果から、無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分が60~75質量%であると、乳入り飲料のおいしさが高まることが示された。
【0047】
(試験例2)
試験例2は、ホエイ分離物の酸味が冷涼感及びすっきり感に影響している可能性を考慮し、ホエイ分離物を中和して酸味の影響をなくしたうえで、ホエイ分離物が乳入り紅茶飲料の冷涼感、すっきり感、紅茶感、及びおいしさに与える影響を評価するために行った。
【0048】
<アイスアールグレイティーラテの製造>
表3に示す配合に従い、以下に示す手順で、例8~14のアイスアールグレイティーラテを製造した。例8~10は比較例であり、例11~14は実施例である。
ホエイパウダーを常温の溶解水に溶解し、pHが6.7になるように炭酸ナトリウムを添加して中和し、ホエイパウダー溶解液を得た。
調製例1で得た紅茶抽出液、脱脂粉乳、上記ホエイパウダー溶解液、クリーム、液糖、香料及び溶解水を混合した。得られた混合液を、ホモジナイザーを用いて75℃、15MPaの均質条件で均質化し、バッチ殺菌装置を用いて80℃で10分間加熱殺菌した後、10℃に冷却し、アイスアールグレイティーラテを得た。得られたアイスアールグレイティーラテの無脂乳固形分は4.09質量%であった。
例8~14のアイスアールグレイティーラテのpHはいずれも6.7であった。
【0049】
【表3】
【0050】
<評価>
得られたアイスアールグレイティーラテについて、試験例1と同様の官能評価を行い、パネラー7名の評点の平均値を算出し、平均値を判定した。ただし、試験例2の官能評価においては、例1のアイスアールグレイティーラテではなく、例8のアイスアールグレイティーラテを基準として例9~14のアイスアールグレイティーラテの冷涼感、すっきり感、紅茶感、及びおいしさを相対的に評価した。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
冷涼感については、例9では例8との差は小さかったが、例10~14では例8と比べて冷涼感が強まっていた。
すっきり感については、例9~10では例8との差は小さかったが、例11~14では平均が4.5以上であり、例8と比べてすっきり感が強まっていた。
これらの結果から、ホエイ分離物由来の固形分を含むと、乳入り飲料に冷涼感及びすっきり感が付与されること、特に無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合が50質量%以上であると、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
また、ホエイ分離物由来の酸味の有無に関わらず、ホエイ分離物由来の固形分を含むことで乳入り飲料に冷涼感及びすっきり感が付与されることがわかった。
また、乳入り飲料の総質量に対する乳タンパク質の質量の割合が0.95質量%以下であり、乳入り飲料の総質量に対する乳糖の質量の割合が2.67質量%以上であり、乳糖/乳タンパク質が2.5以上である場合に、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
紅茶感については、例11~13において紅茶感が高まることがわかった。
おいしさについては、例9~10、14では例8との差は小さかったが、例11~13では平均が4.5以上であり、おいしさが高まっていた。
この結果から、無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分が50~75質量%であると、乳入り飲料のおいしさが高まることが示された。
【0053】
(試験例3)
試験例3は、ホエイ分離物が乳入りコーヒー飲料の冷涼感、すっきり感、コーヒー感、及びおいしさに与える影響を評価するために行った。
【0054】
<アイスコーヒーラテの製造>
表5に示す配合に従い、以下に示す手順で、例15~21のアイスコーヒーラテを製造した。例15~17は比較例であり、例18~21は実施例である。
焙煎度(L値)が17である市販の焙煎コーヒー豆をコーヒーミル(株式会社富士珈機、Type R-440)にて粉砕し、コーヒー粉末を調製した。得られたコーヒー粉末30gをペーパーフィルターに充填し、100℃の抽出水を注水してコーヒー粉末を湿潤させた。その後、続けて注水することで可溶性固形分を抽出し、得られた抽出液に、pH6.7となるように炭酸ナトリウムを添加して中和し、10℃以下に冷却し、これをコーヒー抽出液とした。
上記コーヒー抽出液、脱脂粉乳、ホエイパウダー、クリーム、液糖、香料及び溶解水を混合した。得られた混合液を、75℃、15MPaの均質条件でホモジナイザーにて均質化し、バッチ殺菌装置を用い、80℃で10分間加熱殺菌してから、10℃に冷却し、アイスコーヒーラテを得た。例15~21のアイスコーヒーラテのpHは、ホエイパウダーの配合割合が多いほど低くなっており、例15のpHが6.7、例21のpHが6.5であった。
【0055】
【表5】
【0056】
<評価>
得られたアイスコーヒーラテについて、よく訓練された専門パネラー7名(パネラーa~g)により官能評価試験を行った。試験品(例15~21)の温度は10℃に調整した。例15のアイスコーヒーラテを各パネラーに提供し、これを基準(評点4)とした上で、例16~21のアイスコーヒーラテの冷涼感、すっきり感、コーヒー感、及びおいしさを相対的に評価することをパネラー間で事前に擦り合わせた。
具体的には、以下の項目について7段階(1:基準より非常に弱い、2:基準より弱い、3:基準より少し弱い、4:基準(例15)、5:基準より少し強い、6:基準より強い、7:基準より非常に強い)で官能評価を行い、パネラー7名の評点の平均値を算出した。冷涼感、すっきり感、コーヒー感、おいしさ各々の評点が高いほど、アイスコーヒーラテとして好ましい。
・冷涼感:冷たさを感じる。
・すっきり感:ぐびぐび飲める。
・コーヒー感:コーヒーの味や香りをミドルノートからラストノートに感じる。
・おいしさ:冷涼感、すっきり感、コーヒー感を総合したアイスコーヒーラテ全体としてのおいしさ。
結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
冷涼感及びすっきり感については、例16~21全て、例15と比べて冷涼感及びすっきり感が強まった。特に、例18~21においては平均が5.5以上となっていた。この結果から、香味成分がコーヒー抽出物である場合においても、無脂乳固形分としてホエイ分離物由来の固形分を含むことで、乳入り飲料に冷涼感及びすっきり感が付与されることがわかった。特に無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分の割合が50質量%以上であると、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
また、乳入り飲料の総質量に対する乳タンパク質の質量の割合が0.95質量%以下であり、乳入り飲料の総質量に対する乳糖の質量の割合が2.67質量%以上であり、乳糖/乳タンパク質が2.5以上である場合に、冷涼感及びすっきり感の付与効果に優れることが示された。
コーヒー感については、例17~21において平均が4.6以上となり、コーヒー感が増強されることがわかった。
おいしさについては、例16~17、21では例15との差は小さかったが、例18~20では平均が4.5以上であり、おいしさが高まっていた。この結果から、無脂乳固形分に対するホエイ分離物由来の固形分が50~75質量%であると、乳入り飲料のおいしさが高まることが示された。