(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163471
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】電池冷却システム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231102BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231102BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20231102BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231102BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231102BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231102BHJP
H01M 10/6569 20140101ALI20231102BHJP
【FI】
F25B1/00 361A
F25B1/00 371F
H05K7/20 M
F25B5/02 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6569
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074409
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武山 幸浩
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰俊
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
【テーマコード(参考)】
5E322
5H031
【Fターム(参考)】
5E322AA05
5E322DA01
5E322DA02
5E322DA04
5E322DB06
5E322EA11
5E322FA01
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】複数の分岐流路の各々に減圧装置および蒸発器が配置される冷凍サイクルを備える電池冷却システムにおいて、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持し易くする。
【解決手段】電池冷却システムは、冷凍サイクルと、制御回路とを備える。冷凍サイクルは、圧縮機と、凝縮器と、複数の電池にそれぞれ対応して配置される複数の蒸発器と、複数の分岐流路と、複数の分岐流路にそれぞれ配置される複数の減圧装置とを備える。凝縮器は、圧縮機から供給される冷媒と、凝縮器の周囲に存在する外気との間で熱交換を行なう。制御回路は、外気温度と、電池温度と、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な圧縮機の目標回転速度との対応関係を規定したデータを予め記憶する。制御回路は、データを参照して外気温度および電池温度の検出結果に対応する目標回転速度を決定し、圧縮機の回転速度を目標回転速度に制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を冷却する電池冷却システムであって、
冷媒が循環する回路を形成する冷凍サイクルと、
制御回路とを備え、
前記冷凍サイクルは、
圧縮機と、
凝縮器と、
複数の前記電池にそれぞれ対応して配置される複数の蒸発器と、
前記圧縮機の吐出口と前記凝縮器の一方端とに接続される第1流路と、
前記凝縮器の他方端に接続される第2流路と、
前記第2流路と前記複数の蒸発器の一方端とをそれぞれ接続する複数の分岐流路と、
前記複数の分岐流路にそれぞれ配置される複数の減圧装置と、
前記複数の蒸発器の他方端と前記圧縮機の吸入口とを接続する第3流路とを備え、
前記凝縮器は、前記圧縮機から供給される冷媒と、前記凝縮器の周囲に存在する冷却流体との間で熱交換を行ない、
前記電池冷却システムは、
前記冷却流体の温度を検出する第1温度検出部と、
前記電池の温度を検出する第2温度検出部とをさらに備え、
前記制御回路は、
前記冷却流体の温度と、前記電池の温度とに基づいて、前記複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な前記圧縮機の目標回転速度を決定し、前記圧縮機の回転速度を前記目標回転速度に制御する、電池冷却システム。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記冷却流体の温度と、前記電池の温度と、前記複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な前記圧縮機の目標回転速度との対応関係を規定したデータを予め記憶し、
前記データを参照して前記第1、第2温度検出部の検出結果に対応する目標回転速度を決定し、前記圧縮機の回転速度を前記目標回転速度に制御する、請求項1に記載の電池冷却システム。
【請求項3】
前記データ内の目標回転速度は、前記複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な範囲で前記圧縮機の消費電力が小さくなるように規定されている、請求項2に記載の電池冷却システム。
【請求項4】
前記データ内の目標回転速度は、前記冷却流体の温度が低いほど、低くなるように規定されている、請求項3に記載の電池冷却システム。
【請求項5】
前記データ内の目標回転速度は、前記電池の温度が高いほど、低くなるように規定されている、請求項3に記載の電池冷却システム。
【請求項6】
前記データは、前記冷却流体の温度と、前記電池の温度と、前記冷却流体の流量と、前記目標回転速度との対応関係を規定し、
前記制御回路は、記データを参照して、前記第1、第2温度検出部の検出結果、および前記冷却流体の流量に対応する目標回転速度を決定し、前記圧縮機の回転速度を前記目標回転速度に制御する、請求項2~5のいずれかに記載の電池冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の電池を冷却する電池冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-184427号公報(特許文献1)には、複数の電池モジュールを冷却する電池冷却システムが開示されている。この電池冷却システムに搭載される冷凍サイクルは、複数の電池モジュールをそれぞれ冷却するために、凝縮器から供給される冷媒を複数の分岐流路に分岐し、複数の分岐流路の各々に膨張弁および蒸発器を配置し、各蒸発器で各電流モジュールを冷却するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2020-184427号公報に開示された電池冷却システムのように複数の分岐流路の各々に膨張弁および蒸発器が配置される冷凍サイクルの構成において、複数の電池モジュールを均等に冷却するためには、複数の分岐流路にそれぞれ分配される冷媒量を等しくすることが望ましい。そのためには、複数の分岐流路内の冷媒を液状態(サブクール状態)に維持しておくことが望まれる。しかしながら、各電池モジュールの温度、凝縮器の周囲の外気温度の影響によって、複数の分岐流路内の冷媒が必ずしも液状態にならない可能性がある。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の分岐流路の各々に膨張弁等の減圧装置および蒸発器が配置される冷凍サイクルを備える電池冷却システムにおいて、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1項) 本開示による電池冷却システムは、電池を冷却する。この電池冷却システムは、冷媒が循環する回路を形成する冷凍サイクルと、制御回路とを備える。冷凍サイクルは、圧縮機と、凝縮器と、複数の電池にそれぞれ対応して配置される複数の蒸発器と、圧縮機の吐出口と凝縮器の一方端とに接続される第1流路と、凝縮器の他方端に接続される第2流路と、第2流路と複数の蒸発器の一方端とをそれぞれ接続する複数の分岐流路と、複数の分岐流路にそれぞれ配置される複数の減圧装置と、複数の蒸発器の他方端と圧縮機の吸入口とを接続する第3流路とを備える。凝縮器は、圧縮機から供給される冷媒と、凝縮器の周囲に存在する冷却流体との間で熱交換を行なう。電池冷却システムは、冷却流体の温度を検出する第1温度検出部と、電池の温度を検出する第2温度検出部とをさらに備える。制御回路は、冷却流体の温度と、電池の温度とに基づいて、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な圧縮機の目標回転速度を決定し、圧縮機の回転速度を目標回転速度に制御する。
【0007】
上記(1)の構成によれば、圧縮機の回転速度が、冷却流体の温度と複数の電池の温度とに基づいて複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な回転速度に制御される。そのため、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持し易くすることができる。
【0008】
(第2項) 第1項に記載の電池冷却システムにおいて、制御回路は、冷却流体の温度と、電池の温度と、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な圧縮機の目標回転速度との対応関係を規定したデータを予め記憶し、データを参照して第1、第2温度検出部の検出結果に対応する目標回転速度を決定し、圧縮機の回転速度を目標回転速度に制御する。
【0009】
(第3項) 第2項に記載の電池冷却システムにおいて、データ内の目標回転速度は、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持可能な範囲で圧縮機の消費電力が小さくなるように規定されている。
【0010】
(第4項) 第3項に記載の電池冷却システムにおいて、データ内の目標回転速度は、冷却流体の温度が低いほど、低くなるように規定されている。
【0011】
(第5項) 第3項に記載の電池冷却システムにおいて、データ内の目標回転速度は、複数の電池の温度が高いほど、低くなるように規定されている。
【0012】
(第6項) 第2~5項のいずれかに記載の電池冷却システムにおいて、データは、冷却流体の温度と、複数の電池の温度と、冷却流体の流量と、目標回転速度との対応関係を規定する。制御回路は、データを参照して、第1、第2温度検出部の検出結果、および冷却流体の流量に対応する目標回転速度を決定し、圧縮機の回転速度を目標回転速度に制御する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、複数の分岐流路の各々に減圧装置および蒸発器が配置される冷凍サイクルを備える電池冷却システムにおいて、複数の分岐流路内の冷媒を液状態に維持し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電池冷却システムの全体構成を示す図である。
【
図2】複数の分岐流路および複数の減圧装置の配置例を示す図である。
【
図3】外気温Toutと、分岐流路内の冷媒が液状態となるコンプレッサ回転速度Ncompとの対応関係を模式的に示す図である。
【
図4】電池温度Tbatと、分岐流路内の冷媒が液状態となるコンプレッサ回転速度Ncompとの対応関係を模式的に示す図である。
【
図5】電池温度Tbatおよび外気温Toutと、目標回転速度Ntagとの対応関係を示すマップデータを模式的に示す図である。
【
図6】制御回路の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0016】
(電池冷却システム1の全体構成)
図1は、本実施の形態による電池冷却システム1の全体構成を示す図である。電池冷却システム1は、たとえば車両に搭載されている。
【0017】
電池冷却システム1は、複数の電池モジュール2と、冷凍サイクル10と、温度センサ50,60と、制御回路100とを備えている。電池冷却システム1は、冷凍サイクル10を用いて複数の電池モジュール2を冷却する。
【0018】
各電池モジュール2は、図示しない電池セルが複数接続されることにより構成されている。複数の電池モジュール2は、たとえば、図示しないハウジング内に収容されることにより、1つの電池パックとしてパッケージ化されている。
【0019】
(冷凍サイクル10の構成)
冷凍サイクル10は、冷媒が循環する回路を形成する。冷凍サイクル10は、圧縮機(コンプレッサ)11と、凝縮器(コンデンサ)12と、複数の減圧装置14と、複数の蒸発器15と、流路31,32,35と、複数の分岐流路33と、複数の分岐流路34とを備える。
【0020】
圧縮機11は、流路35から吸入される冷媒ガスを圧縮して流路31へ吐出する。圧縮機11の作動量(回転速度など)は、制御回路100からの指令信号に従って制御される。
【0021】
流路31は、圧縮機11の吐出口と凝縮器12の入口とを接続する。
【0022】
凝縮器12は、圧縮機11から供給されて凝縮器12の内部を流れる冷媒(以下「内部冷媒」ともいう)と、凝縮器12の周囲に存在する冷却流体(以下「外部流体」ともいう)との間で熱交換を行なう。
【0023】
流路32は、凝縮器12の出口と接続点N1とを接続する。流路32は、接続点N1において複数の分岐流路33に分岐される。複数の分岐流路33は、接続点N1と複数の蒸発器15の入口とをそれぞれ接続する。
【0024】
複数の減圧装置14は、複数の分岐流路33上にそれぞれ設けられる膨張弁(絞り弁)である。複数の減圧装置14は、たとえば安価な固定オリフィスによって構成される。
【0025】
図2は、複数の分岐流路33および複数の減圧装置14の配置例を示す図である。
図2に示すように、接続点N1と各分岐流路33との間には、接続点N1と各分岐流路33とを接続する主管33mが配置されている。流路32からの冷媒は、接続点N1において主管33mに供給され、主管33mから各分岐流路33に分配される。
【0026】
図1に戻って、複数の蒸発器15は、複数の電池モジュール2にそれぞれ対応して配置され、内部を流れる冷媒と複数の電池モジュール2との間でそれぞれ熱交換を行なう。複数の蒸発器15は同じ形状を有する。したがって、複数の蒸発器15の流路断面積は互いに同じである。
【0027】
複数の分岐流路34は、複数の蒸発器15の出口と接続点N2とをそれぞれ接続する。複数の分岐流路34は、接続点N2において流路35に合流される。流路35は、接続点N2と圧縮機11の吸入口とを接続する。
【0028】
温度センサ50は、凝縮器12において内部冷媒と熱交換を行なう外部流体の温度を検出する。なお、以下では、凝縮器12の外部流体が凝縮器12の周囲に存在する外気であることを想定して、温度センサ50が、凝縮器12の周囲の外気温Toutを検出するものとして説明する。なお、凝縮器12の外部流体は、外気(気体)であることに限定されず、内部冷媒とは別の液冷媒であってもよい。
【0029】
温度センサ60は、複数の電池モジュール2の温度を検出する。なお、温度センサ60は、複数の電池モジュール2の温度をそれぞれ検出するようにしてもよいし、複数の電池モジュール2のうちの一部(たとえば温度が高くなり易い位置に配置されるモジュール)の温度を検出するようにしてもよい。以下では、温度センサ60が、複数の電池モジュール2の代表的な温度(たとえば最も高い温度)を電池温度Tbatを検出するものとして説明する。
【0030】
制御回路100は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ(記憶装置)、入出力バッファ等を含み(いずれも図示せず)、温度センサ50,60の検出結果などに応じて、冷凍サイクル10における圧縮機11の作動を制御する。なお、この制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0031】
(冷却運転)
圧縮機11が作動されると、圧縮機11で圧縮された高温高圧のガス冷媒が、凝縮器12に送られ、凝縮器12によって凝縮される。凝縮器12により凝縮された高温高圧の液冷媒は、流路32に供給され、流路32から複数の分岐流路33にそれぞれ分配される。
【0032】
複数の分岐流路33にそれぞれ分配された冷媒は、複数の減圧装置14によって減圧された後、複数の蒸発器15に送られる。複数の蒸発器15に送られた低圧の冷媒は、複数の蒸発器15において複数の電池モジュール2との間で熱交換を行って蒸発して、低圧のガス冷媒になる。これにより、複数の電池モジュール2が冷却される。複数の蒸発器15で蒸発した低圧のガス冷媒は、接続点N2において流路35に合流され、流路35を通って再び圧縮機11に吸入される。
【0033】
上記のような冷却運転中において、複数の電池モジュール2を均等に冷却するためには、複数の分岐流路34にそれぞれ分配される冷媒量を等しくすることが望ましい。そのためには、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態(サブクール状態)に維持しておくことが望まれる。
【0034】
しかしながら、電池温度Tbat、外気温Toutの影響によって、複数の分岐流路33内の冷媒が必ずしも液状態(サブクール状態)にならない可能性がある。その対策として、圧縮機11の回転速度(以下「コンプレッサ回転速度Ncomp」ともいう)を過剰に高い値にすると、圧縮機11の消費電力が不必要に大きくなってしまうことが懸念される。
【0035】
そこで、本実施の形態においては、外気温Toutおよび電池温度Tbatと、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能なコンプレッサ回転速度Ncompとの対応関係を規定したデータが実験等によって予め求められて、制御回路100のメモリに予め記憶されている。そして、制御回路100は、温度センサ50,60の検出結果(外気温Toutおよび電池温度Tbat)と、メモリに記憶された上記データとを用いて、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しつつ圧縮機11の消費電力が極力小さくなるように、圧縮機11の回転速度(コンプレッサ回転速度Ncomp)を制御する。
【0036】
図3は、外気温Toutと、分岐流路33内の冷媒が液状態となるコンプレッサ回転速度Ncompとの対応関係を模式的に示す図である。
図3において、実線で示される境界よりもコンプレッサ回転速度Ncompが高い領域が、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能な領域である。制御回路100は、コンプレッサ回転速度Ncompを、
図3に示す境界よりも高い領域であって、かつ、極力小さい値となるように制御する。これにより、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しつつ、圧縮機11の消費電力を極力小さい値にすることができる。
【0037】
図4は、電池温度Tbatと、分岐流路33内の冷媒が液状態となるコンプレッサ回転速度Ncompとの対応関係を模式的に示す図である。
図4において、実線で示される境界よりもコンプレッサ回転速度Ncompが高い領域が、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能な領域である。制御回路100は、コンプレッサ回転速度Ncompを、
図4に示す境界よりも高い領域であって、かつ、極力小さい値となるように制御する。これにより、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しつつ、圧縮機11の消費電力を極力小さい値にすることができる。
【0038】
図3および
図4に示すような特性があることに鑑み、電池温度Tbatおよび外気温Toutと、分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能なコンプレッサ回転速度Ncompの最小値(以下「目標回転速度Ntag」ともいう)との対応関係を規定したデータが、マップとして制御回路100のメモリに記憶されている。
【0039】
図5は、電池温度Tbatおよび外気温Toutと、目標回転速度Ntagとの対応関係を示すマップデータを模式的に示す図である。このマップデータにおいては、
図5に示すように、電池温度Tbatおよび外気温Toutをパラメータとして、目標回転速度Ntagが予め設定されている。
【0040】
上述の
図3に示す特性に鑑み、このマップデータ内の目標回転速度Ntagは、外気温Toutが低いほど、低くなるように規定されている。また、上述の
図4に示す特性に鑑み、このマップデータ内の目標回転速度Ntagは、電池温度Tbatが高いほど、低くなるように規定されている。
【0041】
制御回路100は、
図5に示すマップデータを参照して、温度センサ50,60の検出結果(外気温Toutおよび電池温度Tbat)に対応する目標回転速度Ntagを決定し、圧縮機11の回転速度を目標回転速度Ntagに制御する。
【0042】
(フローチャート)
図6は、制御回路100の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、所定周期で繰り返し実行される。
【0043】
制御回路100は、温度センサ50,60によって検出された外気温Toutおよび電池温度Tbatを取得する(ステップS10)。
【0044】
次いで、制御回路100は、メモリに予め記憶されている上述の
図5に示すマップデータを参照して、ステップS10で取得された外気温Toutおよび電池温度Tbatに対応する目標回転速度Ntagを決定する(ステップS20)。
【0045】
次いで、制御回路100は、コンプレッサ回転速度NcompがステップS20で決定された目標回転速度Ntagとなるように、圧縮機11を制御する(ステップS30)。
【0046】
以上のように、本実施の形態による制御回路100は、外気温Toutおよび電池温度Tbatと、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能な圧縮機11の目標回転速度Ntagとの対応関係を規定したマップデータを予め記憶し、このマップデータを参照して温度センサ50,60の検出結果(外気温Toutおよび電池温度Tbat)に対応する目標回転速度Ntagを決定し、圧縮機11の回転速度を目標回転速度Ntagに制御する。これにより、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しておくことができるため、複数の分岐流路33にそれぞれ分配される冷媒量を等しくすることができる。
【0047】
さらに、マップデータ内の目標回転速度Ntagは、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持可能な範囲で、圧縮機11の回転速度が小さくなるように規定されている。より具体的には、マップデータ内の目標回転速度Ntagは、外気温Toutが低いほど、低くなるように規定されている。また、マップデータ内の目標回転速度Ntagは、電池温度Tbatが高いほど、低くなるように規定されている。そのため、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しつつ、圧縮機11の消費電力を極力小さくすることができる。
【0048】
[変形例]
凝縮器12の熱交換効率を上げるための送風ファンが凝縮器12の近傍に設けられている場合、複数の分岐流路33内の冷媒の状態は、外気温Toutおよび電池温度Tbatに加えて、送風ファンの作動量(凝縮器12に当接する外部流体の流量)の影響も受ける。
【0049】
そのため、マップデータにおいて、外気温Toutと、電池温度Tbatと、外部流体の流量と、目標回転速度Ntagとの対応関係を規定しておくようにしてもよい。そして、制御回路100が、マップデータを参照して、外気温Toutと、電池温度Tbatと、外部流体の流量(たとえば送風ファンの作動量)とに対応する目標回転速度Ntagを決定し、圧縮機11の回転速度を目標回転速度Ntagに制御するようにしてもよい。これにより、より適切に、複数の分岐流路33内の冷媒を液状態に維持しつつ、圧縮機11の消費電力を極力小さくすることができる。外部流体の流量は、上記の送風ファンの作動量の他、車速やグリルシャッターの開口状態も加味して導くことができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
1 電池冷却システム、2 電池モジュール、10 冷凍サイクル、11 圧縮機、12 凝縮器、14 減圧装置、15 蒸発器、31,32,35 流路、33,34 分岐流路、33m 主管、50,60 温度センサ、100 制御回路、N1,N2 接続点。