(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163494
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20231102BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20231102BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074442
(22)【出願日】2022-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年6月17日等開催 交通系ICカードのデータ分析サービスの紹介会議
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513186383
【氏名又は名称】株式会社ギックス
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐丞
(72)【発明者】
【氏名】朱山 裕宜
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 洋
【テーマコード(参考)】
5H161
5L049
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB20
5H161DD20
5H161DD50
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】乗客が利用した交通機関の経路を適切に推定する。
【解決手段】情報処理装置を用いた情報処理方法であって、出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得工程(S1)と、移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成工程(S2)と、経路データの優先度に基づいて、乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定工程(S4)と、を含む
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置を用いた情報処理方法であって、
出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得工程と、
前記移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成工程と、
前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定工程と、を含むことを特徴とする、情報処理方法。
【請求項2】
前記データ生成工程において、前記経路データは、交通機関が前記出発地を出発する時刻が、時刻表上、前記出発時刻より所定時間前の時刻以降であって、且つ、交通機関が前記到着地に到着する時刻が、時刻表上、前記到着時刻より所定時間後の時刻以前である経路を含むことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記データ生成工程において、前記経路データは、交通機関が前記出発地を出発する時刻が、実運行上、前記出発時刻以降であって、且つ、交通機関が前記到着地に到着する時刻が、実運行上、前記到着時刻以前である経路を含むことを特徴とする、請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記出発地と前記到着地の間に1以上の中継地が存在し、
前記出発地と前記到着地の間を前記中継地で区切られた区間毎に、前記移動推定工程において推定された交通機関の経路のデータセットを分割する移動分割工程を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記移動分割工程において分割された交通機関の経路のデータセットに基づいて、当該交通機関毎及び前記区間毎の乗客数を集計する区間集計工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記優先度を決定する優先度決定工程を含み、
前記優先度決定工程において、前記優先度を決定する条件は下記(1)~(3)の少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
(1)前記出発時刻又は前記到着時刻の少なくとも一方に基づいて算出される時間の特性
(2)前記交通機関の特性
(3)前記交通機関の乗換回数
【請求項7】
前記データ取得工程において、前記乗客の移動特性データを取得し、
前記優先度決定工程において、前記優先度を決定する条件に前記移動特性データを反映させることを特徴とする、請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記データ取得工程において、前記乗客の購買データを取得し、
前記データ生成工程において、前記出発時刻以降であって前記到着時刻以前の前記購買データに基づいて、前記経路データを前記移動データに紐づけることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記移動推定工程において、前記出発地、前記到着地又は前記出発地と前記到着地の間の中継地の少なくともいずれかにおける前記乗客の滞在時間を推定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
前記移動推定工程の推定結果に基づいて、当該交通機関の混雑状態を推定する混雑推定工程を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記移動推定工程の推定結果に基づいて、前記出発地、前記到着地又は前記出発地と前記到着地の間の中継地の少なくともいずれかにおける混雑状態を推定する混雑推定工程を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記交通機関は鉄道列車であり、
前記移動データは、入場駅、入場時刻、出場駅及び出場時刻を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項13】
情報処理方法を情報処理装置によって実行させるように、当該情報処理装置を制御する、コンピュータ上で動作するプログラムであって、
前記情報処理方法は、
出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得工程と、
前記移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成工程と、
前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定工程と、を含むことを特徴とする、プログラム。
【請求項14】
情報処理装置であって、
出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得部と、
前記移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成部と、
前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定部と、を有することを特徴とする、情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道などの交通機関において列車や駅の混雑状況に関する情報は、事業者及び乗客にとって有用な情報である。例えば事業者は、安全且つ安定的な輸送サービスを実現するため、混雑状況に関する情報に基づき、運行ダイヤや保守のスケジュールを検討することができる。また例えば乗客は、混雑状況に関する情報に基づき、目的地までのルートを検討することができる。
【0003】
混雑状況を把握するためには、乗客が乗車した列車を推定する必要がある。例えば特許文献1には、乗客が乗車する列車を推定する方法が開示されている。具体的には、トリップデータを含む乗客需要情報を読み込み、各トリップデータの経路情報を参照して、利用可能な列車を紐付けることにより、列車待ち時間及び最終的な到着時刻を計算し、乗客が乗車する列車を推定する。また、トリップデータの1つは、移動する乗客の人数と、当該乗客が出発する駅である出発駅と、当該乗客の目的とする駅である到着駅と、出発駅を出発する時刻に関する出発時刻とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、経路情報を設定した上で、その経路情報の中で利用可能な列車を紐づけるので、例えば複数の経路が存在しているなどで経路情報を正しく設定するのが難しい場合、経路情報が誤って設定されてしまうと列車を適切に推定することができない。したがって、従来の列車の推定には改善の余地がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、乗客が利用した交通機関の経路を適切に推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明は、情報処理装置を用いた情報処理方法であって、出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得工程と、前記移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成工程と、前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定工程と、を含むことを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、データ生成工程において所定条件に合致する交通機関の経路データをすべて移動データに紐づけるので、移動推定工程において交通機関を含めて当該交通機関の最適な経路を推定することができる。換言すれば、交通機関と交通機関の経路を同時に推定することができる。したがって、乗客が利用した交通機関の経路を適切に推定することができる。
【0009】
前記情報処理方法では、前記データ生成工程において、前記経路データは、交通機関が前記出発地を出発する時刻が、時刻表上、前記出発時刻より所定時間前の時刻以降であって、且つ、交通機関が前記到着地に到着する時刻が、時刻表上、前記到着時刻より所定時間後の時刻以前である経路を含んでいてもよい。
【0010】
前記情報処理方法では、前記データ生成工程において、前記経路データは、交通機関が前記出発地を出発する時刻が、実運行上、前記出発時刻以降であって、且つ、交通機関が前記到着地に到着する時刻が、実運行上、前記到着時刻以前である経路を含んでいてもよい。
【0011】
前記出発地と前記到着地の間に1以上の中継地が存在し、前記情報処理方法は、前記出発地と前記到着地の間を前記中継地で区切られた区間毎に、前記移動推定工程において推定された交通機関の経路のデータセットを分割する移動分割工程を含んでいてもよい。
【0012】
前記情報処理方法は、前記移動分割工程において分割された交通機関の経路のデータセットに基づいて、当該交通機関毎及び前記区間毎の乗客数を集計する区間集計工程を含んでいてもよい。
【0013】
前記情報処理方法は、前記優先度を決定する優先度決定工程を含み、前記優先度決定工程において、前記優先度を決定する条件は下記(1)~(3)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
(1)前記出発時刻又は前記到着時刻の少なくとも一方に基づいて算出される時間の特性
(2)前記交通機関の特性
(3)前記交通機関の乗換回数
【0014】
前記情報処理方法では、前記データ取得工程において、前記乗客の移動特性データを取得し、前記優先度決定工程において、前記優先度を決定する条件に前記移動特性データを反映させてもよい。
【0015】
前記情報処理方法では、前記データ取得工程において、前記乗客の購買データを取得し、前記データ生成工程において、前記出発時刻以降であって前記到着時刻以前の前記購買データに基づいて、前記経路データを前記移動データに紐づけてもよい。
【0016】
前記情報処理方法では、前記移動推定工程において、前記出発地、前記到着地又は前記出発地と前記到着地の間の中継地の少なくともいずれかにおける前記乗客の滞在時間を推定してもよい。
【0017】
前記情報処理方法は、前記移動推定工程の推定結果に基づいて、当該交通機関の混雑状態を推定する混雑推定工程を含んでいてもよい。
【0018】
前記情報処理方法は、前記移動推定工程の推定結果に基づいて、前記出発地、前記到着地又は前記出発地と前記到着地の間の中継地の少なくともいずれかにおける混雑状態を推定する混雑推定工程を含んでいてもよい。
【0019】
前記情報処理方法において、前記交通機関は鉄道列車であり、前記移動データは、入場駅、入場時刻、出場駅及び出場時刻を含んでいてもよい。
【0020】
別な観点による本発明によれば、情報処理方法を情報処理装置によって実行させるように、当該情報処理装置を制御する、コンピュータ上で動作するプログラムであって、前記情報処理方法は、出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得工程と、前記移動データに関連する交通機関の経路データであって所定条件に合致する経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成工程と、前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定工程と、を含むことを特徴とするプログラムが提供される。
【0021】
別な観点による本発明の情報処理装置は、出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む乗客の移動データを取得するデータ取得部と、前記移動データに関連する交通機関の経路データをすべて、当該移動データに紐づけるデータ生成部と、前記経路データの優先度に基づいて、前記乗客が利用した交通機関の経路を推定する移動推定部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の経路が存在する場合においても乗客が利用した交通機関の経路を適切に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態にかかる情報処理システムの構成の概略を示す説明図である。
【
図2】本実施形態にかかる情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態にかかる情報処理方法の主な工程を示すフロー図である。
【
図4】第1の実施形態における移動データの一例である。
【
図5】第1の実施形態における経路データの一例である。
【
図6】第1の実施形態において移動データに関連経路データを紐づけたデータの一例である。
【
図7】第1の実施形態における関連経路データの優先度の一例である。
【
図8】第1の実施形態において乗客が利用した列車経路の推定結果の一例である。
【
図9】第1の実施形態における移動分割データの一例である。
【
図10】第1の実施形態において列車毎及び区間毎に集計した乗客数の一例である。
【
図11】第2の実施形態における関連経路データの優先度の一例である。
【
図12】第2の実施形態において乗客が利用した列車経路の推定結果の一例である。
【
図13】第2の実施形態における移動分割データの一例である。
【
図14】第2の実施形態において列車毎及び区間毎に集計した乗客数の一例である。
【
図15】第3の実施形態における関連経路データの優先度の一例である。
【
図16】第3の実施形態において乗客が利用した列車経路の推定結果の一例である。
【
図17】第3の実施形態における移動分割データの一例である。
【
図18】第3の実施形態において列車毎及び区間毎に集計した乗客数の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
<情報処理システム1の構成>
図1は、本実施形態にかかる情報処理システム1の構成の概略を示す説明図である。なお、
図1は、後述するデータベース装置10と情報処理装置20の機能的な構成のブロック図を含む。
【0026】
情報処理システム1は、データベース装置10と情報処理装置20を有している。データベース装置10と情報処理装置20は、ネットワーク30を介して接続可能に構成されている。
【0027】
データベース装置10と情報処理装置20はそれぞれ、本開示に記載される機能を実現できる装置であればどのような装置であってもよい。データベース装置10は、例えばサーバであってもよい。情報処理装置20は、例えばコンピュータであってもよいし、例えばスマートフォン、タブレットなどの携帯端末であってもよい。なお、本実施形態においては説明を簡略化するためにデータベース装置10を一台のみ図示しているが、情報処理システム1には複数のデータベース装置10が含まれる。また、情報処理装置20も複数含まれていてもよい。
【0028】
ネットワーク30は、通信を行うことができるものであれば特に限定されるものではない。ネットワーク30には、例えばインターネットや有線LAN(Local Area Network)、無線LAN、公衆回線網、モバイルデータ通信網などが用いられる。
【0029】
(データベース装置10の機能構成)
データベース装置10の機能構成について説明する。データベース装置10は、通信部11、制御部12及び記憶部13を有している。
【0030】
通信部11は、ネットワーク30との間の通信を媒介する通信インタフェースであり、情報処理装置20とデータ通信を行う。
【0031】
制御部12は、記憶部13に格納されたプログラム(ソフトウェア)を読み込んで、当該プログラムに含まれる命令を実行することにより、データベース装置10の制御を行う。
【0032】
記憶部13は、情報処理装置20に出力するデータのデータベース及びデータベース装置10の制御を行うための各種プログラムを記憶する。なお、記憶部13は、データベース装置10に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0033】
データベースのデータには、乗客の移動データ(以下、単に「移動データ」という場合がある。)が含まれる。移動データは、いわゆるOD(Origin:出発地、Destination:目的地(到着地))データである。移動データは、乗客が交通機関を利用して移動した際に当該乗客毎に取得されるデータであって、乗客個人に紐づけられたデータである。また、移動データは、乗客の移動情報に加えて、当該乗客の識別情報も含む。
【0034】
乗客の移動情報は、出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む。例えば交通機関が鉄道列車である場合、移動情報は、入場駅、入場駅への入場時刻、出場駅及び出場駅からの出場時刻を含む。
【0035】
乗客の識別情報は、個人と個人を識別できる識別子であって、例えばユーザIDを含む。識別子は、ユーザIDに加えて、他の因子、例えば日時や場所を組み合わせたものであってもよい。例えば1月1日の甲と1月2日の甲を、別の個人として扱って別の識別子を付与してもよい。また、人の識別情報は、個人に紐づけられた属性情報(例えば年齢、性別など)を含んでいてもよい。
【0036】
移動データには、例えば交通系ICカード又は同等の機能を持つ携帯端末(以下、「交通系ICカード」と総称する。)から取得される情報が含まれる。例えば鉄道の駅の改札機やバスなどで交通系ICカードを利用すると、その利用履歴(移動履歴)がデータベース装置10に送信され、記憶部13に記憶される。また、交通機関以外の例えば駅構内の店舗に設置されているカード読み取り端末、POSレジ端末、自動販売機などで交通系ICカードを利用した場合も同様に、その利用履歴(購買履歴)がデータベース装置10に送信され、記憶部13に記憶される。このように利用履歴が記憶される際、交通系ICカードを識別するユーザIDや、交通系ICカードを利用した場所の位置情報も、利用履歴に紐づけられて記憶される。
【0037】
なお、移動データの取得方法は、交通系ICカードに限定されない。乗客の移動情報(出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻など)と、乗客の識別情報(識別子など)とが取得できればよく、例えば顔認証などであってもよい。
【0038】
また、データベースのデータには、交通機関の経路データ(以下、単に「経路データ」という場合がある。)が含まれる。経路データは、乗客が交通機関を利用する対象エリアにおける、すべての経路データを含む。経路データは、交通機関の経路情報に加えて、当該交通機関の識別情報も含む。
【0039】
交通機関の経路情報は、当該交通機関の出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻を含む。出発時刻と到着時刻はそれぞれ、時刻表上の時刻を含むが、例えば交通機関の遅延や早着などが加味された実運行上の時刻を含んでいてもよい。或いは、時刻表上の時刻と交通機関の遅延時間又は早着時間の組み合わせた時刻を含み、これを実運行上の時刻としてもよい。
【0040】
また、経路情報は、出発地から到着地までを移動可能なすべての交通機関の組み合わせを含む。例えば交通機関が鉄道列車である場合、経路情報は、各列車の出発駅、出発時刻、到着駅及び到着時刻を含み、さらに出発駅から到着駅まで移動可能なすべての列車の組み合わせた経路を含む。
【0041】
交通機関の識別情報は、交通機関を識別できる識別子であって、例えば交通機関番号を含む。また、例えば交通機関が鉄道列車である場合、識別情報は、列車番号に加えて、列車種別(例えば普通列車、特急列車など)を含んでいてもよい。
【0042】
なお、移動データを含むデータベースと、経路データを含むデータベースは異なるものであってもよい。かかる場合、これらデータベースを有するデータベース装置10も異なるものであってもよい。
【0043】
また、データベース装置10のハードウェア構成は任意である。一例として、データベース装置10は、後述する情報処理装置20のハードウェア構成と同様のハードウェア構成を取り得る。
【0044】
(情報処理装置20の機能構成)
情報処理装置20の機能構成について説明する。情報処理装置20は、通信部21、制御部22及び記憶部23を有している。
【0045】
通信部21は、ネットワーク30との間の通信を媒介する通信インタフェースであり、データベース装置10とデータ通信を行う。
【0046】
制御部22は、データ取得部100、データ生成部101、優先度決定部102、移動推定部103、混雑推定部104、移動分割部105及び区間集計部106を有している。制御部22は、記憶部23に記憶されたプログラム(ソフトウェア)を読み込んで、当該プログラムに含まれる命令を実行することにより、情報処理装置20の制御を行う。具体的に制御部22は、プログラムに従って動作することにより、各部100~106としての機能を発揮する。各部100~106の機能については後述する。
【0047】
記憶部23は、情報処理装置20で処理される各種データ及び情報処理装置20の制御を行うための各種プログラムを記憶する。なお、記憶部23は、情報処理装置20に接続された外部記憶装置であってもよい。
【0048】
データ取得部100は、データベース装置10から出力された乗客の移動データと交通機関の経路データを取得する。乗客が交通機関を利用し、移動データがデータベース装置10(記憶部13)に記憶されると、データ取得部100は乗客毎に移動データを取得する。データ取得部100で取得された移動データは、記憶部23に記憶される。
【0049】
また、例えば交通機関の遅延や早着などが加味された実運行上の出発時刻と到着時刻を含む経路データがデータベース装置10に記憶されると、データ取得部100は、当該実運行上の経路データを取得する。或いは、例えば交通機関の遅延時間又は早着時間がデータベース装置10に記憶されると、データ取得部100は、当該遅延時間又は早着時間を含む経路データを取得する。データ取得部100で取得された実運行上の経路データは、記憶部23に記憶される。なお、記憶部23には予め、時刻表上の出発時刻と到着時刻を含む経路データが記憶されている。
【0050】
データ生成部101は、記憶部23に記憶された経路データのうち、移動データに関連する経路データであって、所定条件に合致するすべての経路データを、当該移動データに紐づける。以下、移動データに関連し所定条件に合致する経路データを「関連経路データ」という場合がある。関連経路データは、移動データの出発地、出発時刻、到着地及び到着時刻に関連する経路データであって、以下に説明する所定条件を充足する。
【0051】
関連経路データは、移動データにおける出発地から到着地までのすべての経路を含む。この場所の条件が上記所定条件の一つである。具体的に関連経路データは、例えば出発地から到着地まで1つの交通機関を利用した直通の経路を含み、また例えば出発地と到着地の間の1以上の中継地で交通機関を乗り継ぐ経路も含む。
【0052】
また、関連経路データは、原則、交通機関が出発地を出発する時刻が移動データにおける出発時刻以降であって、且つ、交通機関が到着地に到着する時刻が移動データにおける到着時刻以前である経路を含む。この時刻の条件が上記所定条件の一つである。
【0053】
但し、実運行では、交通機関の遅延や早着などが発生する。そこで、関連経路データは、交通機関が出発地を出発する時刻が、時刻表上、出発時刻より所定時間前の時刻以降であって、且つ、交通機関が到着地に到着する時刻が、時刻表上、到着時刻より所定時間後の時刻以前である経路を含んでいてもよい。所定時間は、交通機関の遅延や早着などを考慮して、任意に設定することができる。
【0054】
例えば交通機関が鉄道列車である場合、乗客がA駅に07:00に入場した場合において、列車が10分遅延した場合、時刻表上の出発時刻が06:55であっても、実運行上の出発時刻が07:05の列車を利用することができる。そこで、列車が出発地を出発する時刻が、時刻表上、出発時刻より所定時間前の時刻以降である経路を含むのが好ましい。
【0055】
また例えば、乗客がB駅から07:30に出場した場合において、列車が10分早着した場合、時刻表上の到着時刻が07:35であっても、実運行上の到着時刻が07:25の列車を利用することができる。そこで、列車が到着地に到着する時刻が、時刻表上、到着時刻より所定時間後の時刻以前である経路を含むのが好ましい。
【0056】
また、データ取得部100において、例えば交通機関の遅延や早着などが加味された実運行上の出発時刻と到着時刻を含む経路データが取得された場合、関連経路データは、交通機関が出発地を出発する時刻が、実運行上、出発時刻以降であって、且つ、交通機関が到着地に到着する時刻が、実運行上、到着時刻以前である経路を含んでいてもよい。例えば、上記例において、実運行上の出発時刻が07:05の列車を利用した経路を含み、また実運行上の到着時刻が07:25の列車を利用した経路を含んでいてもよい。
【0057】
或いは、データ取得部100において、例えば交通機関の遅延時間又は早着時間が取得された場合、時刻表上の時刻と交通機関の遅延時間又は早着時間の組み合わせた時刻を実運行上の時刻として、経路データを作成してもよい。
【0058】
優先度決定部102は、後述するように乗客が利用した交通機関を推定する際に、複数の関連経路データのうち、どの関連経路データを優先するかを決定する。関連経路データの優先度は任意に決定できるが、例えば優先度を決定する条件は、下記(1)~(3)の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0059】
(1)出発時刻又は到着時刻の少なくとも一方に基づいて算出される時間の特性
例えば交通機関が鉄道列車である場合、この時間特性の例として下記(1-1)~(1-3)が挙げられる。
(1-1)入場駅における乗客入場時刻と列車出発時刻との時間差。すなわち、乗客が入場駅に入場してから列車に乗るまでの時間である。
(1-2)出場駅における乗客出場時刻と列車到着時刻との時間差。すなわち、乗客が列車を降りてから出場駅を出場するまでの時間である。
(1-3)入場駅における列車出発時刻と出場駅における列車到着時刻の時間差。すなわち、列車の走行時間(所要時間)である。
【0060】
(2)交通機関の特性
例えば交通機関が鉄道列車である場合、この交通機関の特性の例として、列車種別(例えば普通列車、特急列車など)や、入場駅において列車が始発であるか否かなどが挙げられる。
【0061】
(3)交通機関の乗換回数
例えば交通機関が鉄道列車である場合、列車の乗換回数である。
【0062】
優先度決定部102では、上記(1)~(3)の条件のうち、どの条件を採用するかを決定して、関連経路データの優先度を決定する。例えば、1つの条件を採用してもよいし、複数の条件を採用してもよい。複数の条件を採用する場合、どの条件を優先するかは任意である。
例えば複数の条件の優先順位を設定し、優先順位に従って条件を採用してもよい。さらにこの際、複数の条件をグループ分けして、当該グループにおいて条件の優先順位を設定してもよい。
或いは、複数の条件それぞれにポイントを設定して、ポイントの多い順(又は少ない順)に条件を採用してもよい。例えば上記(1―1)が10ポイント、(1-2)が5ポイント、(3)が3ポイントなどのポイントを設定し、関連経路データのポイントを集計して、最もポイントの大きい関連経路データの優先度を最も高くする。
【0063】
なお、条件を採用する方法は任意である。例えば、優先度決定部102が任意の方法で採用条件を設定してもよいし、後述する入力装置205からユーザが採用条件を入力してもよい。
【0064】
移動推定部103は、関連経路データの優先度に基づいて、乗客が利用した交通機関を推定する。データ生成部101で移動データに紐づけられた関連経路データのうち、優先度決定部102で決定された優先度に基づいて、乗客が利用した交通機関の経路を推定する。
【0065】
また、移動推定部103は、推定された交通機関の経路に基づいて、出発地、到着地又は出発地と到着地の間の中継地の少なくともいずれかにおける乗客の滞在時間を推定する。
【0066】
例えば交通機関が鉄道列車である場合、移動推定部103は、乗客が利用した列車の経路を推定する。そして、入場駅において乗客の入場時刻と推定された列車の発車時刻とに基づいて、当該入場駅における乗客の滞在時間を推定する。同様に、出場駅と乗換駅における乗客の滞在時間も推定する。
【0067】
混雑推定部104は、移動推定部103の推定結果に基づいて、交通機関の混雑状態を推定する。例えば交通機関が鉄道列車である場合、移動推定部103では乗客が利用した列車が推定され、混雑推定部104は、各列車の乗客数を集計して、当該列車の混雑状況を推定する。
【0068】
また、混雑推定部104は、移動推定部103の推定結果に基づいて、出発地、到着地又は中継地の少なくともいずれかにおける混雑状態を推定する。例えば交通機関が鉄道列車である場合、移動推定部103では各駅における乗客の滞在時間が推定され、混雑推定部104は、同時刻における各駅の乗客数を集計して、当該駅の混雑状況を推定する。
【0069】
移動分割部105は、出発地と到着地の間を中継地で区切られた区間毎に、移動推定部103で推定された交通機関の経路のデータセットを分割する。なお、推定された交通機関の経路に中継地が含まれない場合、交通機関のデータセットは分割されない。
【0070】
区間集計部106は、移動分割部105で分割された交通機関のデータに基づいて、当該交通機関毎及び前記区間毎の乗客数を集計する。例えば交通機関が鉄道列車である場合、移動分割部105は区間毎に列車を割り当て、区間集計部106は列車毎及び区間毎の乗客数を集計する。
【0071】
(情報処理装置20のハードウェア構成)
情報処理装置20の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態にかかる情報処理装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0072】
情報処理装置20は、バス200、プロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、通信装置204、入力装置205及び出力装置206を有している。これらプロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、通信装置204、入力装置205及び出力装置206は、バス200を介して互いに接続されている。また、情報処理装置20は、プロセッサ201、メモリ202、ストレージ203、通信装置204、入力装置205及び出力装置206の協働により、上述した制御部22の機能を実現する。メモリ202及びストレージ203は、記憶部23を実現するハードウェアの一例である。通信装置204は、通信部21を実現するハードウェアの一例である。
【0073】
プロセッサ201は、演算処理部として機能し、プログラムに含まれる命令を実行することにより情報処理装置20内の動作全般又はその一部を制御する。プロセッサ201には、例えばCPU(Central Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが用いられる。
【0074】
メモリ202は、プログラム、プログラム等で処理されるデータなどを一時的に記憶する。メモリ202には、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などが用いられる。
【0075】
ストレージ203は、プログラムや各種データを記憶する。ストレージ203には、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)などが用いられる。
【0076】
通信装置204は、ネットワーク30に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インタフェースである。
【0077】
入力装置205は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置である。入力装置205は、例えばキーボード等のハードウェアキー、マウス等のポインティングデバイス、タッチパネル、タッチパッドなどで構成される。
【0078】
出力装置206は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置である。出力装置206は、例えばディスプレイ等の表示装置、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置などで構成される。
【0079】
入力装置205と出力装置206は、それぞれの一部又は全部が一体化されていてもよい。かかる場合、タッチパネルとディスプレイが一体化したタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。
【0080】
なお、本実施形態の情報処理装置20において、その構成要素は上記の例に限定されない。例えば、各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0081】
また、本実施形態のプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供されてもよい。記憶媒体は、例えばHDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)、各種メモリなどである。また、上記プログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0082】
<情報処理方法>
次に、以上のように構成された情報処理システム1を用いて行われる情報処理方法について説明する。
図3は、本実施形態にかかる情報処理方法の主な工程を示すフロー図である。本実施形態では、交通機関が鉄道列車であって、乗客の移動データが駅の改札機で交通系ICカードが利用された際の利用履歴を含むデータである場合について説明する。また、本実施形態では、乗客が利用する対象エリアが、A駅→B駅→C駅→D駅の順で並んで設置されている路線である場合について説明する。なお、以下においては、3つの具体的な事例を含む実施形態を用いて、本発明の情報処理方法について説明する。
【0083】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかる情報処理方法について説明する。
【0084】
[S1:データ取得工程]
先ず、乗客が入場駅から出場駅まで移動した場合において、入場駅と出場駅での改札機で交通系ICカードが利用されると、その移動履歴がデータベース装置10に送信され、記憶部13に記憶される。記憶部13に記憶された移動データは、ネットワーク30を介して情報処理装置20に入力され、データ取得部100で取得される。データ取得部100で取得された移動データは、記憶部23に記憶される。
【0085】
図4は、移動データの一例を示す表である。移動データは、例えば乗客(交通系ICカード)のID、年月日、入場駅、入場時刻、出場駅、出場時刻を含む。移動データは、乗客の1件毎のデータである。
【0086】
[S2:データ生成工程]
次に、データ生成部101において、記憶部23に記憶された経路データのうち、工程S1で取得された移動データに関連するすべての関連経路データを、当該移動データに紐づける。データ生成部101で紐づけられた移動データと関連経路データは、記憶部23に記憶される。
【0087】
図5は、記憶部23に記憶された経路データの一例である。経路データは、経路情報(入場駅、乗換駅、出場駅、出発時刻、到着時刻)と、識別情報(列車番号、列車種別)とを含む。経路データは、A駅~D駅間を移動することが可能な列車を組み合わせた経路である。入場駅から出場駅まで単一の列車で移動する経路に加えて、乗換駅で乗り換えて複数の列車で移動する経路も含まれる。なお、
図5では、すべての経路データのうち、移動データに関連する時刻の経路データのみを表示している。すなわち、各入場駅における列車の出発時刻が乗客の入場時刻以降であって、各出場駅における列車の到着時刻が乗客の出場時刻以前である経路データである。例えば、
図4に示す移動データにおいてA駅の最早の入場時刻が07:00であるので、A駅の列車の出発時刻が07:00以降の経路が含まれるようにする。また、移動データにおいてD駅の最遅の出場時刻が08:36であるので、D駅の列車の到着時刻が08:36以前の経路が含まれるようにする。
【0088】
図6は、移動データに関連経路データを紐づけたデータの一例である。
図5に示した経路データのうち、移動データにおける入場駅を入場時刻以降に出発する列車の経路であって、且つ、移動データにおける出場駅を出場時刻以前に到着する列車の経路を、移動データに関連する関連経路データとする。そして、データ生成部101では、移動データにすべての関連経路データを紐づける。例えば、ID10034の移動データには1つの関連経路データが紐づけられ、ID10004の移動データには3つの関連経路データが紐づけられる。
【0089】
なお、本実施形態は、列車の遅延や早着などが無い場合を例に説明している。しかしながら、実運行では、列車の遅延や早着などが発生する。そこで、関連経路データは、列車が入場駅を出発する時刻が、時刻表上、出発時刻より所定時間前の以降であって、且つ、列車が出場駅に到着する時刻が、時刻表上、到着時刻より所定時間後の時刻以前である経路を含んでいてもよい。例えば、ID10034では入場時刻は07:00であるが、列車が10分遅延することを想定して、時刻表上の列車の出発時刻が06:55の経路データ(実運行状の列車の出発時刻が07:05)を関連経路データに含めるようにしてもよい。また、ID10034では出場時刻は07:28であるが、列車が10分早着することを想定して、時刻表上の列車の出発時刻が07:33の経路データ(実運行状の列車の到着時刻が07:23)を関連経路データに含めるようにしてもよい。
【0090】
また、データ取得部100において、例えば列車の遅延や早着などが加味された実運行上の出発時刻と到着時刻を含む経路データが取得された場合、関連経路データは、列車が入場駅を出発する時刻が、実運行上、出発時刻以降であって、且つ、列車が出場駅に到着する時刻が、実運行上、到着時刻以前である経路を含んでいてもよい。例えば、ID10034において、実運行上の出発時刻が07:05の列車(10分遅延)を利用した経路データを含み、また実運行上の到着時刻が07:23の列車(10分装着)を利用した経路データを含んでいてもよい。
【0091】
[S3:優先度決定工程]
次に、優先度決定部102において、工程S2で移動データに紐づけた関連経路データの優先度を決定する。例えば、上述した下記(1)~(3)の条件のうち、どの条件を採用するかを設定して、関連経路データの優先度を決定する。優先度決定部102で決定された関連経路データの優先度は、記憶部23に記憶される。
(1)出発時刻又は到着時刻の少なくとも一方に基づいて算出される時間の特性
(2)交通機関の特性
(3)交通機関の乗換回数
【0092】
図7は、関連経路データの優先度の一例である。本実施形態では、関連経路データの優先度を決定する際の条件として、下記(a)、(b)を採用し、優先順位をこの順とした。そして、(a)の値が小さい関連経路データを優先し、(a)の値が同じ場合には(b)の値が小さい関連経路データを優先する。例えばID10302の移動データには3つの関連経路データが紐づけられているが、(a)の値が同じであるため、(b)の小さい関連経路データを優先する。また、例えばID10004の移動データには3つの関連経路データが紐づけられているが、(a)の値の小さい順に関連経路データの優先順位を決定する。
(a)出場駅の列車到着時刻と出場時刻との時間差
(b)入場駅の列車出発時刻と出場駅の列車到着時刻の時間差
【0093】
[S4:移動推定工程]
次に、移動推定部103において、工程S3で決定した関連経路データの優先度に基づいて、乗客が利用した列車経路を推定する。具体的には、最も優先度が高い関連経路データを抽出して、乗客が利用した列車経路と推定する。
図8は、乗客が利用した列車経路の推定結果の一例である。移動推定部103で推定された列車経路は、記憶部23に記憶される。
【0094】
なお、移動推定部103では、各駅における乗客の滞在時間を推定する。例えば、ID10034では、A駅における乗客の入場時間が07:00であり、列車の出発時刻が07:05であるため、当該A駅における乗客の滞在時間は5分と推定される。
【0095】
[S5:混雑推定工程]
次に、混雑推定部104において、工程S4での推定結果に基づいて、当該列車の混雑状態を推定する。混雑推定部104は、各列車の乗客数を集計して、当該列車の混雑状況を推定する。
【0096】
また、混雑推定部104において、工程S4での推定結果に基づいて、各駅の混雑状態を推定する。工程S4では、乗客の滞在時間が推定されるため、混雑推定部104は、同時刻における各駅の乗客数を集計して、当該駅の混雑状況を推定する。混雑推定部104で推定されたれ列車の混雑状況と駅の混雑状況は、記憶部23に記憶される。
【0097】
[S6:移動分割工程]
工程S5と並行して、移動分割部105において、入場駅と出場駅の間を中継駅で区切られた区間毎に、工程S4で推定された列車経路のデータセット(関連経路データ)を分割する。移動分割部105で生成された移動分割データは、記憶部23に記憶される。
【0098】
図9は、生成された移動分割データの一例である。移動分割データは、列車番号、列車種別、列車区間を含む。例えばID10034に対して推定される列車経路では、A駅からD駅まで移動するため、A駅~B駅、B駅~C駅、C駅~D駅の区間に列車経路のデータセットを分割する。換言すれば、移動データ1件毎に、工程S4で推定された列車経路のデータセットを列車及び区間断面の細かさで区切る。
【0099】
なお、工程S4で推定された列車経路において、入場駅と出場駅の間に中継駅が含まれない場合、列車経路のデータセットは分割されない。例えばID10034に対して推定される列車経路では、A駅からB駅まで移動し、中継駅はない。かかる場合、列車経路のデータセットは分割されない。
【0100】
[S7:区間集計工程]
次に、区間集計部106において、工程S7で分割された列車経路のデータセットに基づいて、列車毎及び区間毎に乗客数を集計する。
図10は、列車毎及び区間毎に集計した乗客数の一例である。区間集計部106で集計された列車毎及び区間毎の乗客数は、記憶部23に記憶される。
【0101】
以上の実施形態によれば、工程S2において移動データに関連するすべての関連経路データを、当該移動データに紐づけるので、工程S4において列車を含めて当該列車の最適な経路を推定することができる。換言すれば、列車と列車経路を同時に推定することができる。したがって、複数の経路が存在する場合においても乗客が利用した列車の経路を適切に推定することができる。
【0102】
ここで、上述した特許文献1に開示の方法では、トリップデータを用いて乗客が乗車する列車を推定するが、当該トリップデータはトリップID毎の移動する乗客の人数を含み、本実施形態のように乗客毎の移動データを用いていていない。したがって、推定精度が粗い。
【0103】
一方、本実施形態によれば、工程S1において乗客の1件毎、すなわちトランザクション単位の移動データを取得し、工程S4において移動データ毎に列車経路を推定し、さらに工程S5において、列車や駅の混雑状況を推定する。したがって、推定粒度が細かく、過去の列車や駅の混雑状況を精緻に推定することができる。
【0104】
また、本実施形態によれば、工程S6において、工程S4で推定された列車経路のデータセットを区間毎に分割し、工程S7において列車毎及び区間毎に乗客数を集計する。かかる場合、過去の混雑状況をさらに精緻に推定することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、工程S4において各駅における乗客の滞在時間を推定するので、工程S5において駅の混雑状況を推定することができる。
【0106】
以上のように本実施形態によれば、列車の混雑状況と駅の混雑状況を精緻に推定することができる。かかる推定結果は種々に活用することができるが、以下、その活用先の例について説明する。
【0107】
列車の混雑状況の推定結果は、例えば以下のように活用することができる。
・ダイヤ改正や臨時列車の設定など、運行ダイヤの計画業務を遂行する際に列車の混雑状況を活用することができる。
・運賃やポイントなど、営業施策を検討する際に列車の混雑状況を活用することができる。例えば、列車の混雑状況に基づいて、区間や時間帯ごとの運賃を変えることが可能となる。或いは、乗客が乗車した区間や時間帯毎にポイントを与えるという施策を実施する場合、ポイント付与条件を決定するために列車の混雑状況を用いることも可能となる。
・駅や新線を建設する際、当該駅や新線における利用の想定を支援するために列車の混雑状況を用いることも可能となる。
・乗客向けに精緻な列車の混雑状況を情報提供することができる。
・さらに実運行時刻に基づく列車の混雑状況が推定できると、実際の運行管理業務を最適化することができる。
【0108】
駅の混雑状況(駅の乗換流動)の推定結果は、例えば以下のように活用することができる。
・駅の混雑状況に基づいて、駅係員の配置数や駅係員の勤務スケジュールを最適化することができる。
・駅の混雑状況に基づいて、駅を改良する際の設備を最適化することができる。例えば設備には、ホーム柵、エスカレータ、エレベータなどが含まれる。
【0109】
(第2の実施形態)
第2の実施形態にかかる情報処理方法について説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と、工程S3において関連経路データの優先度を決定する方法が異なる。
【0110】
工程S1、S2はそれぞれ、第1の実施形態における工程S1、S2と同様である。すなわち、工程S1において
図4に示した移動データを取得し、工程S2において
図5に示した経路データを用いて
図6に示したように移動データに関連経路データを紐づける。
【0111】
工程S3では、
図11に示すように関連経路データの優先度を決定する際の条件として、下記(a)~(c)を採用し、優先順位をこの順とした。そして、(a)を満たす関連経路データを優先し、(a)を満たすかどうかが同じ関連経路データが複数ある場合には(b)が少ない関連経路データを優先し、(b)の値が同じ場合には(c)が小さい関連経路データを優先する。
(a)入場駅の入場時刻より列車出発時刻は2分以上遅い、出場駅の出場時刻より列車到着時刻は2分以上早い
(b)列車の乗換回数
(c)出場駅の列車到着時刻と出場時刻との時間差
【0112】
工程S4~S7はそれぞれ、第1の実施形態における工程S4~S7と同様である。すなわち、工程S4において、
図12に示すように最も優先度が高い関連経路データを抽出して、乗客が利用した列車経路と推定する。工程S5において、工程S4での推定結果に基づいて、列車の混雑状況と駅の混雑状況を推定する。工程S6において、
図13に示すように入場駅と出場駅の間を中継駅で区切られた区間毎に、工程S4で推定された列車経路のデータセットを分割する。工程S7において、
図14に示すように工程S7で分割された列車経路のデータセットに基づいて、列車毎及び区間毎に乗客数を集計する。
【0113】
以上の第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を享受することができる。但し、工程S3における関連経路データの優先度が異なるため、工程S4において推定される列車経路が異なる。したがって、工程S5で推定される列車又は駅の混雑状況が異なり、工程S7で集計される列車毎及び区間毎に乗客数が異なる。
【0114】
(第3の実施形態)
第3の実施形態にかかる情報処理方法について説明する。第3の実施形態は、第1の実施形態と、工程S3において関連経路データの優先度を決定する方法が異なる。
【0115】
工程S1、S2はそれぞれ、第1の実施形態における工程S1、S2と同様である。すなわち、工程S1において
図4に示した移動データを取得し、工程S2において
図5に示した経路データを用いて
図6に示したように移動データに関連経路データを紐づける。
【0116】
工程S3では、
図15に示すように関連経路データの優先度を決定する際の条件として、下記(a)~(d)を採用し、優先順位をこの順とした。そして、(a)を満たす関連経路データを優先し、(a)を満たすかどうかが同じ関連経路データが複数ある場合には(b)を満たす関連経路データを優先し、(b)を満たすかどうかが同じ関連経路データが複数ある場合には(c)が少ない関連経路データを優先し、(c)の値が同じ場合には(d)が小さい関連経路データを優先する。
(a)特急(有料列車)を含まない経路である
(b)入場駅の入場時刻より列車出発時刻は2分以上遅い、出場駅の出場時刻より列車到着時刻は2分以上早い
(c)列車の乗換回数
(d)出場駅の列車到着時刻と出場時刻との時間差
【0117】
工程S4~S7はそれぞれ、第1の実施形態における工程S4~S7と同様である。すなわち、工程S4において、
図16に示すように最も優先度が高い関連経路データを抽出して、乗客が利用した列車経路と推定する。工程S5において、工程S4での推定結果に基づいて、列車の混雑状況と駅の混雑状況を推定する。工程S7において、
図17に示すように入場駅と出場駅の間を中継駅で区切られた区間毎に、工程S4で推定された列車経路のデータセットを分割する。工程S7において、
図18に示すように工程S7で分割された列車経路のデータセットに基づいて、列車毎及び区間毎に乗客数を集計する。
【0118】
以上の第3の実施形態においても、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を享受することができる。但し、工程S3における関連経路データの優先度が異なるため、工程S4において推定される列車経路が異なる。したがって、工程S5で推定される列車又は駅の混雑状況が異なり、工程S7で集計される列車毎及び区間毎に乗客数が異なる。
【0119】
<他の実施形態>
以上の実施形態の工程S1において、例えば乗客の移動特性データがデータベース装置10に記憶されると、データ取得部100は、当該移動特性データを取得する。移動特性データは、例えば過去の乗客の移動履歴から移動に関する嗜好を判定して、データベース装置10に記憶される。そして、工程S3において関連経路データの優先度を決定する際、当該優先度を決定する条件に移動特性データを反映させる。例えば、乗客の移動特性データとして特急(有料列車)を含まないことを好む場合、この条件の優先順位を高くする。
【0120】
また、以上のように工程S1において移動特性データを取得する場合、工程S3において関連経路データの優先度を決定する際、優先度を決定する条件と当該条件の優先順位は、乗客毎に変更してもよい。
【0121】
<他の実施形態>
以上の実施形態の工程S1において、例えば駅構内の店舗に設置されているカード読み取り端末、POSレジ端末、自動販売機などで交通系ICカードが利用されると、その購買データがデータベース装置10に送信され、記憶部13に記憶される。記憶部13に記憶された移動データは、ネットワーク30を介して情報処理装置20に入力され、データ取得部100で取得される。
【0122】
かかる場合、工程S2において移動データに関連経路データを紐づける際、工程S1で取得された購買データが利用される。例えば、C駅において乗客による購買履歴が確認された場合、乗客はC駅で乗り換えたことになるため、C駅を乗換駅に含む関連経路データが紐づけられる。
【0123】
<他の実施形態>
以上の実施形態において、データベース装置10の記憶部13のデータベースに記憶された交通機関の経路データには、未来(計画上)のデータが含まれていてもよい。例えば、未来(計画上)の時刻表を用いて上記実施形態の工程S1~S7を行えば、列車経路、列車や駅の混雑状況、列車毎及び区間毎の乗客数などの推定結果を未来のシミュレーションを行った結果として取得することができる。
【0124】
<他の実施形態>
以上の実施形態の工程S4における列車経路の推定結果は、商品やサービスのリコメンデーションに用いてもよい。また、工程S5における駅の混雑状況の推定結果は、商品やサービスのマーケティングに用いてもよいし、或いは工程S7における乗客の集計結果も、商品やサービスのマーケティングに用いてもよい。以下、かかるリコメンデーションやマーケティングの例について、乗客(顧客)向けと、マス(セグメントマス)向けと、事業者向けとの3つの場合に分けて説明する。
【0125】
乗客向けには、例えば以下のリコメンデーションを行うことができる。リコメンデーションは、乗客に対して個別に行われ、例えば乗客の携帯端末にインストールされたアプリケーションへの提示を通じて行われる。
・乗客に対して、商品やサービスをリコメンド(推薦)する。例えば、工程S4で推定された乗客の列車経路により、当該乗客がC駅で乗り換える傾向にあると判定し、その傾向に基づいて当該乗客に対してC駅における商品やサービスをリコメンドする。
・乗客に対して、行先をリコメンドする。この行先は任意であるが、例えば場所、駅、店舗などが含まれる。
・上記乗客へのリコメンドのタイミングを決定する。例えば、A駅を朝8時頃に通りかかる傾向のある乗客に対して、朝8時にA駅にある駅ナカ店舗をリコメンドする。
・乗客に対して、列車の運行情報や他の交通機関の利用をリコメンドする。例えば、乗客が通常利用する列車が遅延しそうなときには、当該乗客の携帯端末にアラートを出す。また例えば、金曜日夜に終電を利用する傾向がある乗客に対してタクシー配車をリコメンドする。
・乗客が所有する機器をON/OFFする。機器の種類は特に限定されるものではない。例えば、夜8時頃に列車を降りる傾向のある乗客に対して、夜8時に携帯端末のアラームを鳴らすサービスを提供する。
【0126】
マス(セグメントマス)向けには、例えば以下のリコメンデーションを行うことができる。なお、セグメントマスは、例えば共通の属性や共通の嗜好を有する乗客の集団である。
・列車に乗車していると推定される乗客の属性に応じて、列車内の広告又は電子広告の内容を変更する。例えば、列車毎に乗客の年齢層の傾向を判別し、その傾向に基づいて、列車内の広告の内容を変更する。
・列車に乗車していると推定される乗客の購買の嗜好を列車毎に分析し、その傾向に基づいて、車内販売の内容を変更する。或いは、当該乗客の嗜好に応じて、テストマーケティングを行う。
【0127】
事業者向けには、例えば以下のマーケティングを行うことができる。事業者には、例えば不動産開発業者(ディベロッパー)や、店舗等を運営する事業者、他の交通機関を運営する事業者などが含まれる。
・駅ナカ店舗又は駅前店舗に関して、ディベロッパーへのマーケティングの支援を行う。
・駅ナカ店舗又は駅前店舗における商品の仕入れ業務への支援を行う。
・駅構内における自動販売機の設置場所を決定する際の支援を行う。
・駅ナカ店舗又は駅前店舗における開店時間の判断やスタッフの人数を決定する際の支援を行う。
・駅ナカ店舗又は駅前店舗の出店計画や需要予測を支援する。
・他の交通機関の配車計画を支援する。配車計画としては、タクシーの手配や配置の計画が例示される。例えば終電の際に、どの駅に何台の車を配置しておくかを決定する際の支援を行う。
【0128】
<他の実施形態>
以上の実施形態では、交通機関が鉄道列車である場合について説明したが、本発明が適用される交通機関はこれに限定されない。例えば、交通機関はバス、航空機、船舶などであってもよい。或いは、工程S4において移動推定部103で推定される交通機関の経路は、複数種類の交通機関の組み合わせであってもよい。例えば、A駅からB駅まで列車を利用し、B駅からC駅までバスを利用し、C駅からD駅まで列車を利用してもよい。
【0129】
このように単一ではなく複数の交通機関の利用が推定できると、当該推定結果を交通計画や都市計画に活用することができる。例えば、自治体に向けて、1次交通及び2次交通の適正整備などの計画を提案することができる。また、複数の輸送手段におけるモノの移動推定にも応用することで、当該推定結果を物流ネットワークの最適化検討に活用することができる。
【0130】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明は、乗客が利用した交通機関を推定する際に有用である。
【符号の説明】
【0132】
1 情報処理システム
10 データベース装置
11 通信部
12 制御部
13 記憶部
20 情報処理装置
21 通信部
22 制御部
23 記憶部
30 ネットワーク
100 データ取得部
101 データ生成部
102 優先度決定部
103 移動推定部
104 混雑推定部
105 移動分割部
106 区間集計部
200 バス
201 プロセッサ
202 メモリ
203 ストレージ
204 通信装置
205 入力装置
206 出力装置