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特開2023-163495加飾シート用積層体、加飾シート、加飾用転写シート、および加飾物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163495
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】加飾シート用積層体、加飾シート、加飾用転写シート、および加飾物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231102BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074444
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】小林 良正
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100DC00C
4F100DD01D
4F100DJ01B
4F100DJ04B
4F100HB00D
4F100JG03
4F100JK08A
4F100JL11E
4F100JL12C
4F100JL14A
4F100YY00A
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い意匠性および触感を有する加飾シートまたは加飾物品をオンデマンドで製造することが可能な加飾シート用積層体および加飾用転写シートを提供する。
【解決手段】基材層1と、発泡性樹脂層2と、パターン状の発泡抑制層3と、熱転写画像を有する画像層4と、をこの順に有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート用積層体である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、発泡性樹脂層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、
前記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、前記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート用積層体。
【請求項2】
前記画像層の前記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、請求項1に記載の加飾シート用積層体。
【請求項3】
前記基材層の前記発泡性樹脂層とは反対側の面に、接着層を有する、請求項1または請求項2に記載の加飾シート用積層体。
【請求項4】
前記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、請求項1または請求項2に記載の加飾シート用積層体。
【請求項5】
基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、
前記画像層側の表面に凹凸形状を有し、
前記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、前記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート。
【請求項6】
前記画像層の前記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、請求項5に記載の加飾シート。
【請求項7】
前記基材層の前記発泡性樹脂層とは反対側の面に、接着層を有する、請求項5または請求項6に記載の加飾シート。
【請求項8】
前記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、請求項5または請求項6に記載の加飾シート。
【請求項9】
剥離性支持体と、転写層と、を有する加飾用転写シートであって、
前記転写層が、前記剥離性支持体側から順に、熱転写画像を有する画像層と、パターン状の発泡抑制層とを有し、
前記発泡抑制層が溶融性を有する、加飾用転写シート。
【請求項10】
前記転写層が、前記基材層と前記画像層との間に、保護層を有する、請求項9に記載の加飾用転写シート。
【請求項11】
前記基材層の前記画像層とは反対側の面に、帯電防止層を有する、請求項9または請求項10に記載の加飾用転写シート。
【請求項12】
前記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、請求項9または請求項01に記載の加飾用転写シート。
【請求項13】
加飾対象物と、接着層と、積層シートと、をこの順に有し、前記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、
前記積層シートが、前記接着層側から順に、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、
前記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、前記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾物品。
【請求項14】
加飾対象物と、発泡層と、積層シートと、をこの順に有し、前記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、
前記積層シートが、前記発泡層側から順に、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、
前記発泡抑制層が溶融性を有する、加飾物品。
【請求項15】
前記画像層の前記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、請求項13または請求項14に記載の加飾物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾シート用積層体、加飾シート、加飾用転写シート、および加飾物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加飾対象物の表面を加飾シートで装飾した加飾物品が各種の用途で使用されている。加飾物品の製造方法は、成形と同時に加飾を行う一次加飾、および、成形後に加飾を行う二次加飾の2つに大別される。
【0003】
一次加飾としては、例えば、インモールド成形や、インサート成形等が知られている。また、二次加飾としては、例えば、三次元表面加飾、いわゆるTOM工法(Three dimension Overlay Method)が知られている。
【0004】
また、加飾シートとしては、画像が形成された画像層を有する加飾シートが知られている。画像の形成方法としては、印刷方式が挙げられる。印刷方式は、有版印刷方式、および、無版印刷方式の2つに大別できる。中でも、無版印刷方式は、オンデマンド印刷が可能であるという利点を有する。また、無版印刷方式としては、例えば、インクジェット記録方式や、熱転写記録方式等が挙げられる。中でも、熱転写記録方式は、作像原理が簡単で、小型化および低価格化が実現できることから、様々な分野で使用されている。
【0005】
また、加飾シートには、意匠性だけでなく、触感も要求される。
【0006】
加飾シートに触感を付与する手法として、例えば、加飾シートの表面に凹凸形状を設ける方法等が知られている。
【0007】
凹凸形状の形成方法としては、例えば、機械的に凹凸形状を形成するメカニカルエンボス加工や、発泡性樹脂層の発泡を部分的に抑制することで凹凸形状を形成するケミカルエンボス加工がある。
【0008】
例えば特許文献1には、上記のような一次加飾や二次加飾に用いられる加飾シートではないが、発泡床材等に用いられる発泡タイプの化粧シートにおいて、ケミカルエンボス加工により表面に凹凸形状を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-6565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ケミカルエンボス加工においては、発泡性樹脂層の表面に、発泡抑制剤を含有する発泡抑制インキをパターン状に塗布した後、あるいは、パターン状の発泡抑制層を有する転写シートを用い、発泡性樹脂層の表面に、発泡抑制層を転写した後、発泡性樹脂層を発泡させることで、凹凸形状が形成される。
【0011】
例えば特許文献1に記載されるように、発泡抑制層は、グラビア印刷やオフセット印刷等の有版印刷方式により形成される。しかし、有版印刷方式では、印刷版を作製する必要があるため、時間もコストもかかるという問題がある。
【0012】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高い意匠性および触感を有する加飾シートまたは加飾物品をオンデマンドで製造することが可能な加飾シート用積層体および加飾用転写シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一実施形態は、基材層と、発泡性樹脂層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート用積層体を提供する。
【0014】
本開示の他の実施形態は、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、上記画像層側の表面に凹凸形状を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シートを提供する。
【0015】
本開示の他の実施形態は、剥離性支持体と、転写層と、を有する加飾用転写シートであって、上記転写層が、上記剥離性支持体側から順に、熱転写画像を有する画像層と、パターン状の発泡抑制層とを有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、加飾用転写シートを提供する。
【0016】
本開示の他の実施形態は、加飾対象物と、接着層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、上記積層シートが、上記接着層側から順に、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾物品を提供する。
【0017】
本開示の他の実施形態は、加飾対象物と、発泡層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、上記積層シートが、上記発泡層側から順に、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、加飾物品を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本開示は、高い意匠性および触感を有する加飾シートまたは加飾物品をオンデマンドで製造することが可能な加飾シート用積層体および加飾用転写シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示における加飾シート用積層体を例示する概略断面図である。
図2】本開示における加飾シート用積層体を例示する概略断面図である。
図3】本開示における加飾物品の製造方法を例示する工程図である。
図4】本開示における加飾シート用積層体を例示する概略断面図である。
図5】本開示における加飾シートを例示する概略断面図である。
図6】本開示における加飾用転写シートを例示する概略断面図である。
図7】本開示における加飾物品の製造方法を例示する工程図である。
図8】本開示における加飾物品の製造方法を例示する工程図である。
図9】本開示における加飾用転写シートを例示する概略断面図である。
図10】本開示における加飾物品を例示する概略断面図である。
図11】本開示における加飾物品を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0021】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0022】
また、本明細書において、「シート」には、「フィルム」と呼ばれる部材も含まれる。
【0023】
以下、本開示における加飾シート用積層体、加飾シート、加飾用転写シート、および加飾物品について詳細に説明する。
【0024】
A.加飾シート用積層体
本開示における加飾シート用積層体は、基材層と、発泡性樹脂層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0025】
図1および図2は、本開示における加飾シート用積層体を例示する概略断面図である。図1および図2に例示するように、加飾シート用積層体10は、基材層1と、発泡性樹脂層2と、パターン状の発泡抑制層3と、熱転写画像14を有する画像層4と、をこの順に有する。図1に示す加飾シート用積層体10において、発泡抑制層3は、溶融性を有しており、発泡性樹脂層2の基材層1とは反対側の面に配置されている。また、図2に示す加飾シート用積層体10において、発泡抑制層3は、昇華性を有する発泡抑制剤を含有しており、発泡性樹脂層2の内部に配置されている。
【0026】
本開示における加飾シート用積層体においては、画像層が熱転写画像を有するため、オンデマンド印刷が可能である。また、発泡抑制層が溶融性を有する場合、発泡抑制層を溶融型熱転写方式によりパターン状に形成することができる。また、発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する場合、発泡抑制層を昇華型熱転写方式によりパターン状に形成することができる。よって、画像層だけでなく発泡抑制層もオンデマンド印刷が可能であり、小ロット、多品種、短納期の製造に対応することが可能である。
【0027】
また、本開示における加飾シート用積層体は、貼合方式による加飾に用いられる。
【0028】
図3(a)~(c)は、本開示における加飾シート用積層体を用いた加飾物品の製造方法を例示する工程図である。まず、図3(a)に示すように、加飾シート用積層体10を準備する。加飾シート用積層体10は、図1に示す加飾シート用積層体10と同様である。次いで、図3(a)~(b)に示すように、発泡性樹脂層2を発泡させて、発泡層12を形成する。これにより、表面に凹凸形状を有する加飾シート20が得られる。次に、図3(c)に示すように、加飾シート20と加飾対象物31とを、加飾シート20の基材層1側の面が加飾対象物31に向くように配置して、接着層32を介して一体化させる。これにより、表面に凹凸形状を有する加飾物品30が得られる。
【0029】
発泡抑制層が配置されている領域では、発泡抑制層に含まれる発泡抑制剤によって、発泡性樹脂層の発泡が抑制される。そのため、発泡抑制層が配置されている領域は凹部になり、発泡抑制層が配置されていない領域は凸部になる。これにより、加飾シートおよび加飾物品の表面に凹凸形状が形成される。
【0030】
本実施態様においては、発泡性樹脂層と画像層との間にパターン状の発泡抑制層が配置されており、発泡性樹脂層と発泡抑制層とが近くに配置されているため、発泡抑制効果を高めることができる。
【0031】
以下、本開示における加飾シート用積層体の各構成について説明する。
【0032】
1.発泡抑制層
本開示における発泡抑制層は、パターン状に配置される部材である。発泡抑制層は、2つの態様を有する。以下、各態様について説明する。
【0033】
(1)第1態様の発泡抑制層
本態様の発泡抑制層は、溶融性を有する。発泡抑制層が溶融性を有することにより、発泡性樹脂層の基材層とは反対側の面に、溶融型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成することができる。
【0034】
本態様においては、上述したように、発泡抑制層が溶融性を有しており、発泡性樹脂層の基材層とは反対側の面に、溶融型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成する。溶融型熱転写方式では、基材層と発泡性樹脂層とを有する積層体、ならびに、発泡抑制層を有する溶融型熱転写シートを用い、溶融型熱転写シートに凹凸形状の情報に応じた熱エネルギーを印加して、積層体の発泡性樹脂層側の面に、熱エネルギーの印加により溶融または軟化した発泡抑制層を、層ごと転写して、発泡抑制層をパターン状に形成する。
【0035】
よって、発泡抑制層の熱転写時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、発泡抑制層の溶融開始温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。具体的には、発泡抑制層の溶融開始温度は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0036】
ここで、溶融開始温度とは、示差走査熱量測定(DSC)により得られるDSC曲線において、吸熱ピークがベースラインから立ち上がるときの温度をいう。
【0037】
また、発泡性樹脂層の発泡温度は、発泡性樹脂層に含まれる発泡剤の発泡温度とみなすことができる。発泡剤が熱分解型発泡剤である場合、発泡剤の発泡温度は、熱分解型発泡剤の分解温度をいう。
【0038】
発泡抑制層は、発泡抑制剤と、溶融性を有する樹脂とを含有する。
【0039】
発泡抑制剤としては、一般的な発泡抑制剤を使用でき、発泡性樹脂層に含まれる発泡剤や樹脂の種類等に応じて適宜選択される。
【0040】
中でも、発泡抑制層の熱転写時に、発泡抑制剤の気化を抑制するために、発泡抑制剤の沸点または昇華点は、発泡抑制層の溶融開始温度よりも高いことが好ましい。具体的には、発泡抑制剤の沸点または昇華点は、200℃以上であることが好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、沸点とは、1気圧における沸点を意味する。また、本明細書において、昇華点とは、1気圧における昇華点を意味する。
【0042】
発泡抑制剤としては、例えば、無水トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、アミノトリアゾール系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、トリアゾール系化合物が好ましく、アミノトリアゾール系化合物がより好ましい。
【0043】
発泡抑制層中の発泡抑制剤の含有量は、発泡性樹脂層を発泡させた際に、発泡抑制効果が得られれば特に限定されず、例えば、5質量%以上50質量%以下であり、10質量%以上40質量%以下であってもよい。
【0044】
発泡抑制層に含有される樹脂としては、溶融性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、溶融型熱転写シートの溶融インキに用いられる一般的な熱可塑性樹脂を使用できる。
【0045】
中でも、発泡抑制層の熱転写時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、上記熱可塑性樹脂の溶融開始温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エチレン共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、スチレン系樹脂、メタクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル系樹脂、ビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレングリコール、セルロース誘導体等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。エチレン共重合体としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。塩化ビニリデン系樹脂としては、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、ポリスチレン等が挙げられる。メタクリル酸エステル共重合体としては、ポリメタクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸共重合体等が挙げられる。酢酸ビニル系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン、共重合ナイロン、N-アルコキシメチル化ナイロン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、発泡抑制層は、ワックスを含んでいてもよい。発泡抑制層がワックスを含むことにより、上記熱可塑性樹脂の溶融開始温度が比較的高い場合でも、発泡抑制層の溶融開始温度を低くできる。
【0048】
発泡抑制層中のワックスの含有量は、発泡剤の含有量等に応じて適宜選択される。発泡抑制層中のワックスの含有量は、例えば、0.5質量%以上15質量%以下であってもよい。
【0049】
また、発泡抑制層は、着色剤を含んでいてもよい。この場合、発泡抑制層と画像層とを容易に同調させることができる。
【0050】
発泡抑制層は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。
【0051】
発泡抑制層の厚さは、発泡性樹脂層を発泡させた際に、発泡抑制効果が得られる厚さであれば特に限定されず、例えば、0.1μm以上50.0μm以下であり、0.5μm以上10.0μm以下であってもよく、1.0μm以上5.0μm以下であってもよい。
【0052】
発泡抑制層は、パターン状に配置される。平面視において、発泡抑制層のパターン形状は、特に限定されない。例えば、ライン状、ドット状、格子状が挙げられる。ドット状の場合、ドットの平面形状としては、例えば、円状、楕円状、三角形状、矩形状が挙げられる。
【0053】
発泡抑制層の形成方法は、溶融型熱転写方式であることが好ましい。溶融型熱転写方式により発泡抑制層を熱転写する際、発泡性樹脂層には、サーマルヘッドによる熱と圧力がかかる。サーマルヘッドの加熱温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好まし。これにより、発泡抑制層の熱転写時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制できる。
【0054】
(2)第2態様の発泡抑制層
本態様の発泡抑制層は、昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。発泡抑制層が、昇華性を有する発泡抑制剤を含有することにより、発泡性樹脂層の内部に、昇華型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成することができる。
【0055】
発泡抑制層は、昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0056】
本態様においては、上述したように、発泡抑制層が、昇華性を有する発泡抑制剤を含有することにより、発泡性樹脂層の内部に、昇華型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成する。昇華型熱転写方式では、基材層と発泡性樹脂層とを有する積層体、ならびに、昇華性を有する発泡抑制剤を含有する発泡抑制層を有する昇華型熱転写シートを用い、昇華型熱転写シートに凹凸形状の情報に応じた熱エネルギーを印加し、積層体の発泡性樹脂層に、発泡抑制層に含有される昇華性を有する発泡抑制剤を移行させて、発泡抑制層をパターン状に形成する。
【0057】
よって、発泡抑制層の熱転写時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、発泡抑制剤の昇華点は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。具体的には、発泡抑制剤の昇華点は、130℃以下であってもよく、120℃以下であってもよく、110℃以下であってもよい。
【0058】
発泡抑制剤としては、昇華性を有する発泡抑制剤であればよく、一般的な発泡抑制剤を使用でき、発泡性樹脂層に含まれる発泡剤や樹脂の種類等に応じて適宜選択される。中でも、発泡抑制剤は、上記の昇華点を満たすことが好ましい。
【0059】
発泡抑制剤としては、例えば、トリアゾール系化合物等が挙げられる。発泡抑制剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
発泡抑制層の形成方法は、昇華型熱転写方式であることが好ましい。昇華型熱転写方式により発泡抑制層を熱転写する際、発泡性樹脂層には、サーマルヘッドによる熱と圧力がかかる。サーマルヘッドの加熱温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好まし。これにより、発泡抑制層の熱転写時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制できる。
【0061】
発泡抑制層は、パターン状に配置される。平面視における発泡抑制層のパターン形状は、上記第1態様の発泡抑制層のパターン形状と同様である。
【0062】
2.画像層
本開示における画像層は、熱転写画像を有する。
【0063】
熱転写画像は、昇華型熱転写方式で形成された熱転写画像であってもよく、溶融型熱転写方式で形成された熱転写画像であってもよい。また、画像層は、昇華型熱転写方式によって形成された熱転写画像を有する第1画像層と、溶融型熱転写方式によって形成された熱転写画像を有する第2画像層とを有していてもよい。この場合、第1画像層および第2画像層の積層順は、特に限定されない。画像層は、発泡抑制層側から順に、第1画像層および第2画像層を有していてもよく、第2画像層および第1画像層を有していてもよい。例えば図4において、画像層4は、発泡抑制層3側から順に、昇華型熱転写方式によって形成された熱転写画像14aを有する第1画像層4aと、溶融型熱転写方式によって形成された熱転写画像14bを有する第2画像層4bとを有する。
【0064】
(1)昇華型熱転写方式
昇華型熱転写方式は、基材層と発泡性樹脂層とパターン状の発泡抑制層と受容層とをこの順に有する積層体、ならびに、昇華性染料を含有する色材層を有する昇華型熱転写シートを用い、昇華型熱転写シートに画像情報に応じた熱エネルギーを印加し、積層体の受容層に、色材層に含有される昇華性染料を移行させて、熱転写画像を形成する方法である。
【0065】
よって、昇華型熱転写方式で形成された熱転写画像を有する画像層は、昇華性染料を含有する熱転写画像を有する受容層である。
【0066】
受容層は、昇華性染料を受容可能な層である。受容層は、昇華性染料を受容可能な成分を含有する。昇華性染料を受容可能な成分としては、熱転写受像シートに用いられる一般的な受容層の材料を使用できる。上記成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
昇華性染料としては、熱転写シートに用いられる一般的な昇華性染料を使用できる。
【0068】
受容層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、受容層の材料を含有する塗工液を塗布する方法や、受容層を有する転写シートを用い、受容層を転写する方法が挙げられる。転写法の場合、熱転写であってもよく、非加熱転写であってもよい。
【0069】
画像層の形成に用いられる昇華型熱転写シートとしては、一般的な昇華型熱転写シートを用いることができる。
【0070】
昇華型熱転写シートは、支持層と、支持層の一方の面に配置され、昇華性染料および樹脂を含有する色材層とを有する。
【0071】
熱転写画像の形成時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、昇華型熱転写シートの色材層に含有される樹脂のガラス転移温度(Tg)は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。具体的には、上記ガラス転移温度は、100℃以上130℃以下であることが好ましい。
【0072】
昇華型熱転写シートにおいては、支持層の一方の面に、1種の色材層が配置されていてもよく、色が異なる複数種類の色材層が平面的に配置されていてもよい。
【0073】
(2)溶融型熱転写方式
溶融型熱転写方式は、基材層と発泡性樹脂層とパターン状の発泡抑制層とをこの順に有する積層体、ならびに、溶融インキを含む溶融インキ層を有する溶融型熱転写シートを用い、溶融型熱転写シートに画像情報に応じた熱エネルギーを印加して、積層体の発泡抑制層側の面に、熱エネルギーの印加により溶融または軟化した溶融インキ層を、層ごと転写して、熱転写画像を形成する方法である。
【0074】
よって、溶融型熱転写方式で形成された熱転写画像を有する画像層は、溶融インキ層である。
【0075】
熱転写画像の形成時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、溶融インキ層の溶融開始温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。具体的には、溶融インキ層の溶融開始温度は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0076】
溶融インキ層は、溶融インキを含有する。溶融インキは、着色剤と、溶融性を有する樹脂を含有する。
【0077】
着色剤としては、例えば、顔料、染料等が挙げられる。着色剤の色は、特に限定されない。顔料は、例えば、メタリック顔料や、パール顔料であってもよい。
【0078】
樹脂としては、溶融性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、溶融型熱転写シートの溶融インキに用いられる一般的な熱可塑性樹脂を使用できる。
【0079】
中でも、熱転写画像の形成時に、発泡性樹脂層の発泡が生じるのを抑制するために、上記熱可塑性樹脂の溶融開始温度は、発泡性樹脂層の発泡温度よりも低いことが好ましい。
【0080】
熱可塑性樹脂の具体例は、上記の発泡抑制層に用いられる熱可塑性樹脂と同様である。
【0081】
溶融インキ層は、ワックスを含んでいてもよい。溶融インキ層がワックスを含むことにより、上記熱可塑性樹脂の溶融開始温度が比較的高い場合でも、溶融インキ層の溶融開始温度を低くできる。
【0082】
溶融インキ層中の各成分の含有量は、熱転写画像の濃度や、溶融型熱転写シートの保存性等を考慮して、適宜設定される。
【0083】
画像層の形成に用いられる溶融型熱転写シートとしては、一般的な溶融型熱転写シートを用いることができる。
【0084】
3.発泡性樹脂層
本開示における発泡性樹脂層は、発泡剤と、樹脂とを含有する。
【0085】
発泡剤は、熱分解型発泡剤であることが好ましい。この場合、発泡性樹脂層を加熱すると、熱分解型発泡剤が分解し、ガスを発生することで、発泡層が形成される。このとき、発泡抑制層が配置されている領域では、発泡抑制層に含まれる発泡抑制剤によって、発泡性樹脂層に含まれる熱分解型発泡剤の分解が抑制される。そのため、発泡層の発泡抑制層側の表面に凹凸形状を形成できる。
【0086】
熱分解型発泡剤としては、一般的な熱分解型発泡剤を使用できる。例えば、有機系熱分解型発泡剤、無機系熱分解型発泡剤が挙げられる。有機系熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、ヒドラジン誘導体、ニトロソ化合物等が挙げられる。アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)等が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。無機系熱分解型発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0087】
また、熱分解型発泡剤の場合、加熱により発泡性樹脂層を発泡させるため、基材層の耐熱性を考慮すると、熱分解型発泡剤の分解温度は、基材層の軟化点よりも低いことが好ましい。
【0088】
さらに、画像層が、昇華型熱転写方式で形成された熱転写画像を有する場合には、熱分解型発泡剤の分解温度は、比較的低いことが好ましい。熱分解型発泡剤の分解温度が高すぎると、加熱により発泡性樹脂層を発泡させる際に、熱転写画像に含まれる昇華性染料が拡散するのを抑制できる。これにより、熱転写画像の滲みを抑制できる。
【0089】
具体的には、熱分解型発泡剤の分解温度は、140℃以上230℃以下であることが好ましく、150℃以上200℃以下であることがより好ましく、150℃以上180℃以下であることがさらに好ましい。
【0090】
ここで、熱分解型発泡剤の分解温度は、熱重量測定法(TG)により測定できる。具体的には、熱分解型発泡剤の分解温度は、TG曲線において、重量減少が開始する温度、すなわち分解開始温度をいう。
【0091】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡剤の含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以上、20質量部以下であり、3質量部以上、10質量部以下であってもよい。
【0092】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体)、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。中でも、塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0093】
発泡性樹脂層は、発泡助剤を含んでいてもよい。発泡助剤は、熱分解型発泡剤の分解促進、熱分解型発泡剤の分解温度の低下、発泡生成した気泡の均一化等に作用する。発泡助剤としては、一般的な発泡助剤を使用でき、熱分解型発泡剤の種類に応じて適宜選択される。発泡助剤としては、例えば、金属酸化物、脂肪酸金属塩、尿素系助剤、有機酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0094】
発泡助剤の含有量は、特に限定されず、例えば、樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であり、0.01質量部以上5質量部以下であってもよい。
【0095】
発泡性樹脂層は、難燃性付与、目透き抑制、表面強度向上等を目的として、無機充填剤を含んでいてもよい。無機充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、二酸化チタンが挙げられる。なお、これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
無機充填剤の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して、例えば、0質量部以上100質量部以下であり、20質量部以上70質量部以下であってもよい。
【0097】
また、発泡性樹脂層は、必要に応じて、防カビ剤、顔料、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、希釈剤、消臭剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0098】
発泡性樹脂層の厚さは、特に限定されず、例えば、30μm以上300μm以下であり、50μm以上150μm以下であってもよい。
【0099】
発泡性樹脂層の形成方法としては、例えば、発泡剤および樹脂等を含有する発泡性樹脂組成物を、基材層上に塗布する方法、発泡性樹脂組成物を、基材層上に押出しラミネートする方法、予めフィルム状の発泡性樹脂層を形成し、基材層上にラミネートする方法等が挙げられる。
【0100】
4.基材層
本開示における基材層は、発泡性樹脂層、発泡抑制層および画像層を支持する部材である。
【0101】
加飾シート用積層体を用いて、立体形状を有する加飾対象物に加飾を行う際には、例えば、加飾シート用積層体の発泡性樹脂層を発泡させて加飾シートを得た後、加飾シートを延伸しながら、加飾対象物の表面に貼合できる。よって、基材層は、延伸性を有することが好ましい。具体的には、基材層の130℃における伸び率が、200%以上であることが好ましい。上記伸び率が上記範囲であることにより、加飾シート用積層体および加飾シートの延伸性を良くし、加飾シートの成形性を高めることができる。一方、基材層の130℃における伸び率の上限は、特に限定されないが、例えば、500%以下である。
【0102】
ここで、基材層の130℃における伸び率は、JIS K7127:1999に準拠した試験方法により測定できる。具体的には、JIS K7127:1999に準拠し、引張試験機を用い、温度130℃、速度200mm/minで、試験片を引張り、試験片が切断(破断)したときの試験片の伸び率を、基材層の130℃における伸び率とする。130℃における伸び率は下記式(1)により算出される。引張試験機としては、例えば、テンシロン万能材料試験機を用いることができる。
【0103】
伸び率(%)=100×(L-L)/L (1)
(上記式(1)において、Lは試験前の試験片の長さであり、Lは破断時における試験片の長さである。
【0104】
また、上述したように、発泡性樹脂層に熱分解型発泡剤を用いる場合、加熱により発泡性樹脂層を発泡させるため、基材層の耐熱性を考慮すると、基材層の軟化点は、熱分解型発泡剤の分解温度よりも高いことが好ましい。
【0105】
基材層としては、樹脂フィルムを用いることができる。中でも、基材層は、上記の130℃における伸び率を満たす樹脂フィルムであることが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体)、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET-G)等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0106】
基材層は、必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、安定剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、体質顔料等が挙げられる。
【0107】
基材層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0108】
基材層の厚さは、上記の130℃における伸び率を満たす厚さであることが好ましく、例えば、25μm以上450μm以下であり、30μm以上300μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下あってもよい。基材層の厚さが上記範囲であると、加飾シートと加飾対象物とを一体化した後の、加飾シートの余剰部分のトリミングが容易になる。一方、基材層の厚さが厚すぎると、基材層の材質によっては、上記の130℃における伸び率を満たさなくなる可能性がある。
【0109】
5.保護層
本開示における加飾シート用積層体は、例えば図4に示すように、画像層4の発泡抑制層3とは反対側の面に、保護層5を有していてもよい。加飾シート用積層体を用いた加飾物品において、保護層は、画像層および発泡層を保護する部材である。また、保護層により、耐擦傷性を付与することもできる。さらに、発泡抑制層に含まれる発泡抑制剤が昇華性を有する場合、保護層によって、発泡抑制層において発泡抑制剤が減少するのを抑制できる。これにより、発泡抑制効果の低下を抑制できる。
【0110】
保護層は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。積層構造の場合、機能の異なる層が積層されていてもよい。
【0111】
保護層の材料としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等が挙げられる。
【0112】
保護層が硬化性樹脂を含有する場合には、硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。硬化性樹脂組成物としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物が挙げられる。中でも、電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0113】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、たとえば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤が添加される。
【0114】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂を含む組成物である。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する。電離放射線硬化性官能基としては、例えば、エチレン性不飽和結合基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。エチレン性不飽和結合基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0115】
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も使用可能である。
【0116】
電離放射線硬化性樹脂は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれも用いることができる。
【0117】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。電離放射線硬化性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0118】
また、電離放射線硬化性組成物は、多官能イソシアネートをさらに含んでいてもよい。
【0119】
多官能イソシアネートとは、イソシアネート基を2個以上有する化合物である。多官能イソシアネートは、例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート等が挙げられる。芳香族イソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族イソシアネートとしては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これら各種イソシアネートの付加体または多量体や、ブロック化されたイソシアネート化合物も用いることができる。イソシアネートの付加体および多量体としては、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等が挙げられる。
【0120】
中でも、多官能イソシアネートは、電離放射線硬化性官能基を有することが好ましい。特に、2個以上のイソシアネート基と、1個以上のエチレン性不飽和結合基とを有する多官能イソシアネートが好ましい。ハードコート層の硬度を高めることができる。
【0121】
電離放射線硬化性組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、一般的な光重合開始剤の中から適宜選択して用いることができる。光重合開始剤は、単独で使用してもよく、複数を組み合わせて使用してもよい。
【0122】
光重合開始剤の含有量は、例えば、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であり、1質量部以上8質量部以下であってもよく、3質量部以上8質量部以下であってもよい。
【0123】
電離放射線硬化性組成物は、所望物性に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、酸化防止剤、レベリング剤、チキソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤等が挙げられる。
【0124】
保護層の厚さは、例えば、0.5μm以上30μm以下であり、1μm以上20μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。
【0125】
保護層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂または硬化性樹脂を含む樹脂組成物を塗布する方法や、保護層を有する転写シートを用い、保護層を転写する方法が挙げられる。転写法の場合、熱転写であってもよく、非加熱転写であってもよい。また、保護層が硬化性樹脂組成物を含む場合、加飾シートと加飾対象物とを一体化させた後、保護層を硬化させることが好ましい。加飾シートと加飾対象物とを一体化する際に、保護層が割れるのを抑制できる。
【0126】
6.帯電防止層
本開示における加飾シート用積層体は、例えば図4に示すように、基材層1の発泡性樹脂層2とは反対側の面に、帯電防止層6を有していてもよい。帯電防止層は、加飾シート用積層体への異物の付着を抑制するために設けられる部材である。
【0127】
帯電防止層に用いられる帯電防止剤としては、一般的な帯電防止剤を用いることができる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カーボンや金属等の無機導電性物質、導電性高分子等が挙げられる。
【0128】
帯電防止層の厚さは、例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0129】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、基材層上に、帯電防止剤を含む組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0130】
7.アンカー層
本開示における加飾シート用積層体は、例えば図4に示すように、基材層1と発泡性樹脂層2との間に、アンカー層7を有していてもよい。アンカー層により、基材層と発泡性樹脂層との密着性を高めることができる。
【0131】
アンカー層の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0132】
また、アンカー層は、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0133】
中でも、アンカー層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。画像層の熱転写画像の耐光性を良くすることができる。特に、保護層を紫外線により硬化する場合や、接着層を紫外線により硬化する場合、熱転写画像の紫外線による劣化を抑制できる。紫外線吸収剤としては、一般的な紫外線吸収剤を用いることができる。
【0134】
アンカー層の厚さは、特に限定されず、例えば、0.1μm以上10μm以下である。
【0135】
8.中間層
本開示における加飾シート用積層体は、画像層と保護層との間に、紫外線吸収剤を含有する中間層を有していてもよい。画像層の熱転写画像の耐光性を良くすることができる。特に、保護層を紫外線により硬化する場合、熱転写画像の紫外線による劣化を抑制できる。
【0136】
中間層は、紫外線吸収剤および樹脂を含有する。
【0137】
紫外線吸収剤としては、一般的な紫外線吸収剤を用いることができる。
【0138】
樹脂としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロース樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。上記材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
中間層の厚さは、例えば、0.01μm以上5μm以下である。
【0140】
中間層の形成方法としては、特に限定されず、例えば、中間層の材料を含む塗工液を塗布する方法、中間層を有する転写シートを用い、中間層を転写する方法が挙げられる。転写法の場合、熱転写であってもよく、非加熱転写であってもよい。
【0141】
9.接着層
本開示における加飾シート用積層体は、例えば図4に示すように、基材層1の発泡性樹脂層2とは反対側の面に、接着層32を有していてもよい。接着層は、加飾シートと加飾対象物とを接着させるための部材である。
【0142】
接着層に用いられる接着剤としては、例えば、感圧型接着剤、硬化型接着剤、熱溶融型接着剤等を用いることができる。
【0143】
中でも、接着剤は、初期粘着性を有することが好ましい。加飾シートと加飾対象物とを一体化する際に、加飾シートと加飾対象物との密着性を高めることができる。
【0144】
また、接着層は、粘着付与樹脂を含んでいてもよい。加飾対象物との密着性を高めることができる。なお、粘着付与樹脂は、タッキファイヤーともいう。粘着付与樹脂としては、一般的な粘着付与樹脂の中から適宜選択して用いることができる。粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
接着層の厚さは、加飾対象物の加飾方法に応じて適宜選択されるが、例えば、10μm以上100μm以下であり、30μm以上95μm以下であってもよく、50μm以上85μm以下であってもよい。
【0146】
接着層を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤組成物を塗布する方法、接着層を有する転写シートを用い、接着層を転写する方法、接着フィルムを用い、接着フィルムをラミネートする方法等が挙げられる。転写法の場合、熱転写であってもよく、非加熱転写であってもよい。また、接着層が硬化性を有する場合、加飾シートと加飾対象物とを一体化させた後、接着層を硬化させる。接着層の硬化方法としては、接着剤の種類に応じて適宜選択され、例えば、電離放射線を照射する方法、可視光線を照射する方法、加熱する方法が挙げられる。
【0147】
B.加飾シート
本開示における加飾シートは、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、上記画像層側の表面に凹凸形状を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0148】
図5は、本開示における加飾シートを例示する概略断面図である。図5に例示するように、加飾シート20は、基材層1と、発泡層12と、パターン状の発泡抑制層3と、熱転写画像14を有する画像層4と、をこの順に有しており、画像層4側の表面に凹凸形状を有する。加飾シート10において、発泡抑制層3は、溶融性を有する、あるいは、昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0149】
本開示における加飾シートは、上述の加飾シート用積層体における発泡性樹脂層を発泡させることによって得ることができる。よって、本開示における加飾シートは、上述の加飾シート用積層体と同様の効果を奏する。
【0150】
以下、本開示における加飾シートの各構成について説明する。
【0151】
1.凹凸形状
本開示における加飾シートは、画像層側の表面に凹凸形状を有する。
【0152】
凹凸形状の断面形状は、特に限定されない。
【0153】
また、凹凸形状の平面形状は、特に限定されない。凹凸形状の平面形状は、例えば、ライン状であってもよく、ドット状であってもよい。また、ドットの平面形状としては、例えば、円状、楕円状、三角形状、矩形状が挙げられる。
【0154】
凹凸形状の模様の具体例としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられ、これらの組み合わせであってもよい。
【0155】
2.発泡層
本開示における発泡層は、内部に気泡を有する。気泡は、独立気泡であってもよく、連続気泡であってもよく、独立気泡と連続気泡とが混在していてもよい。また、気泡の数、大きさ、密度、形状等は、特に限定されず、加飾物品の種類、用途等に応じて適宜設計できる。気泡は、上述の加飾シート用積層体における発泡性樹脂層に含まれる発泡剤を発泡して形成することができる。
【0156】
発泡層は、樹脂成分として、樹脂およびその架橋物の少なくとも一方を含有することが好ましい。上記架橋物は、上記樹脂の分子鎖が架橋した架橋物であり、例えば、電子線照射により架橋された架橋物であってもよく、架橋剤により架橋された架橋物であってもよい。
【0157】
樹脂は、上述の加飾シート用積層体における発泡性樹脂層に用いられる樹脂と同様である。
【0158】
発泡層は、無機充填剤を含んでいてもよい。無機充填剤は、上述の加飾シート用積層体における発泡性樹脂層に用いられる無機充填剤と同様である。
【0159】
発泡層は、必要に応じて、防カビ剤、顔料、酸化防止剤、光安定剤、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、防虫剤、防腐剤、抗菌剤、希釈剤、消臭剤、可塑剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、未発泡の発泡剤が含まれていてもよい。
【0160】
発泡層は、発泡抑制層側の面に、凹凸形状を有する。発泡層において、発泡抑制層が配置されている領域は凹部となり、発泡抑制層が配置されていない領域は凸部となる。凹部の深さは、例えば、50μm以上400μm以下であることが好ましい。
【0161】
発泡層において、発泡抑制層が配置されていない領域の厚さは、特に限定されないが、例えば、200μm以上1500μm以下であり、500μm以上1200μm以下であってもよい。
【0162】
発泡層は、上述の加飾シート用積層体における発泡性樹脂層を加熱発泡させることにより、形成することができる。加熱温度および加熱時間は、発泡剤の種類、発泡性樹脂層の厚さに応じて、適宜設定される。
【0163】
3.他の構成
本開示における加飾シートにおいて、発泡層以外の構成については、上述の加飾シート用積層体の構成と同様である。
【0164】
C.加飾用転写シート
本開示における加飾用転写シートは、剥離性支持体と、転写層とを有する加飾用転写シートであって、上記転写層が、上記剥離性支持体側から順に、熱転写画像を有する画像層と、パターン状の発泡抑制層とを有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する。
【0165】
図6は、本開示における加飾用転写シートを例示する概略断面図である。図6に例示するように、加飾用転写シート40は、剥離性支持体41と、転写層42とを有する。転写層42は、剥離性支持体41側から順に、熱転写画像14を有する画像層4と、パターン状の発泡抑制層3とを有する。加飾用転写シート40において、発泡抑制層3は、溶融性を有しており、画像層4の剥離性支持体41とは反対側の面に配置されている。
【0166】
本開示における加飾用転写シートにおいては、画像層が熱転写画像を有するため、オンデマンド印刷が可能である。また、発泡抑制層が溶融性を有するため、発泡抑制層を溶融型熱転写方式によりパターン状に形成することができる。よって、画像層だけでなく発泡抑制層もオンデマンド印刷が可能であり、小ロット、多品種、短納期の製造に対応することが可能である。
【0167】
また、本開示における加飾用転写シートは、転写方式による加飾に用いられる。加飾用転写シートにおいては、剥離性支持体よりも画像層側に位置する部材が転写層となる。
【0168】
図7(a)~(c)および図8は、本開示における加飾用転写シートを用いた加飾物品の製造方法を例示する工程図である。まず、図7(a)に示すように、加飾用転写シート40を準備する。加飾用転写シート40は、図6に示す加飾用転写シート40と同様である。また、加飾対象物31の表面に、発泡性樹脂層2を形成する。次に、図7(b)に示すように、加飾用転写シート40と、表面に発泡性樹脂層2を有する加飾対象物31とを、加飾用転写シート40の発泡抑制層3の面と加飾対象物31の発泡性樹脂層2の面とが向かい合うように配置して、一体化させる。次いで、図7(b)~(c)に示すように、加飾用転写シート40から剥離性支持体41を剥離する。これにより、加飾対象物31の発泡性樹脂層2の面に、加飾用転写シート40の転写層42が転写される。次に、図7(c)~図8に示すように、発泡性樹脂層2を発泡させて、発泡層12を形成する。これにより、表面に凹凸形状を有する加飾物品30が得られる。
【0169】
発泡抑制層が配置されている領域では、発泡抑制層に含まれる発泡抑制剤によって、発泡性樹脂層の発泡が抑制される。そのため、発泡抑制層が配置されている領域は凹部になり、発泡抑制層が配置されていない領域は凸部になる。これにより、加飾物品の表面に凹凸形状が形成される。
【0170】
本開示における加飾用転写シートを用いて加飾物品を製造する際には、発泡性樹脂層と発泡抑制層とが近くに配置されることになるため、発泡抑制効果を高めることができる。
【0171】
以下、本開示における加飾用転写シートの各構成について説明する。
【0172】
1.転写層
本開示における転写層は、剥離性支持体側から順に、熱転写画像を有する画像層と、パターン状の発泡抑制層とを有する。
【0173】
(1)発泡抑制層
本開示における発泡抑制層は、溶融性を有する。発泡抑制層が溶融性を有することにより、画像層の剥離性支持体とは反対側の面に、溶融型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成することができる。
【0174】
本態様においては、上述したように、発泡抑制層が溶融性を有しており、画像層剥離性支持体とは反対側の面に、溶融型熱転写方式により発泡抑制層をパターン状に形成する。溶融型熱転写方式では、剥離性支持体と画像層とを有する積層体、ならびに、発泡抑制層を有する溶融型熱転写シートを用い、溶融型熱転写シートに凹凸形状の情報に応じた熱エネルギーを印加して、積層体の画像層側の面に、熱エネルギーの印加により溶融または軟化した発泡抑制層を、層ごと転写して、発泡抑制層をパターン状に形成する。
【0175】
発泡抑制層は、発泡抑制剤と、溶融性を有する樹脂とを含有する。
【0176】
発泡抑制剤としては、一般的な発泡抑制剤を使用でき、発泡性樹脂層に含まれる発泡剤や樹脂の種類等に応じて適宜選択される。
【0177】
中でも、発泡抑制層の熱転写時に、発泡抑制剤の気化を抑制するために、発泡抑制剤の沸点または昇華点は、発泡抑制層の溶融開始温度よりも高いことが好ましい。発泡抑制剤の沸点または昇華点は、上述の加飾シート用積層体における第1態様の発泡抑制層の項に記載した内容と同様である。
【0178】
発泡抑制剤は、上述の加飾シート用積層体における第1態様の発泡抑制層の項に記載した内容と同様である。
【0179】
発泡抑制層に含有される樹脂としては、溶融性を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、溶融型熱転写シートの溶融インキに用いられる一般的な熱可塑性樹脂を使用できる。熱可塑性樹脂は、上述の加飾シート用積層体における第1態様の発泡抑制層の項に記載した内容と同様である。
【0180】
また、発泡抑制層は、ワックスを含んでいてもよい。
【0181】
また、発泡抑制層は、着色剤を含んでいてもよい。この場合、発泡抑制層と画像層とを容易に同調させることができる。
【0182】
発泡抑制層は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。
【0183】
発泡抑制層の形成方法は、溶融型熱転写方式であることが好ましい。
【0184】
発泡抑制層の厚さは、上述の加飾シート用積層体における第1態様の発泡抑制層の項に記載した内容と同様である。
【0185】
発泡抑制層は、パターン状に配置される。平面視における発泡抑制層のパターン形状は、上述の加飾シート用積層体における第1態様の発泡抑制層の項に記載した内容と同様である。
【0186】
(2)画像層
本開示における画像層は、熱転写画像を有する。画像層は、上述の加飾シート用積層体における画像層と同様である。
【0187】
(3)保護層
本開示における転写層は、例えば図9に示すように、剥離性支持体41と画像層4との間に、保護層5を有することが好ましい。加飾用転写シートを用いた加飾物品において、保護層は、画像層および発泡層を保護する部材である。また、保護層により、耐擦傷性を付与したり、剥離性を付与したりできる。
【0188】
保護層の材料としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等が挙げられる。これらの材料は、目的に応じて適宜選択される。
【0189】
例えば、保護層が熱可塑性樹脂を有する場合には、剥離層として機能することができ、加飾用転写シートから基材層を容易に剥離できる。
【0190】
一方、保護層が硬化性樹脂を含有する場合には、ハードコート前駆体層となり、硬化によりハードコート層を得ることができる。ハードコート層により、耐擦傷性を向上させることができる。
【0191】
保護層は、上述の加飾シート用積層体における保護層と同様である。
【0192】
(4)中間層
本開示における転写層は、画像層と保護層との間に、紫外線吸収剤を含有する中間層を有していてもよい。画像層の熱転写画像の耐光性を良くすることができる。特に、保護層を紫外線により硬化する場合、熱転写画像の紫外線による劣化を抑制できる。
【0193】
中間層は、上述の加飾シート用積層体における中間層と同様である。
【0194】
(5)接着層
本開示における転写層は、発泡抑制層の画像層とは反対側の面、あるいは、画像層と発泡抑制層との間に、接着層を有していてもよい。接着層は、加飾用転写シートと、表面に発泡性樹脂層を有する加飾対象物とを接着させるための部材である。
【0195】
接着層は、上述の加飾シート用積層体における接着層と同様である。
【0196】
2.剥離性支持体
本開示における基材層は、画像層および発泡抑制層を支持する部材である。本実施態様において、加飾用転写シートと、表面に発泡性樹脂層を有する加飾対象物とを一体化させた後、剥離性支持体は加飾用転写シートから剥離される。
【0197】
離型性支持体の物性、材料、構造等は、上述の加飾シート用積層体における基材層と同様である。
【0198】
離型性支持体の厚さは、上述の130℃における伸び率を満たす厚さであれば特に限定されず、例えば、30μm以上300μm以下であり、50μm以上125μm以下あってもよい。離型性支持体の厚さが上記範囲であると、加飾用転写シートの取扱い性を向上させることができる。一方、離型性支持体の厚さが厚すぎると、離型性支持体の材質によっては、上記の130℃における伸び率を満たさなくなる可能性がある。
【0199】
3.帯電防止層
本開示における加飾用転写シートは、例えば図9に示すように、剥離性支持体41の画像層4とは反対側の面に、帯電防止層6を有していてもよい。帯電防止層は、加飾用転写シートへの異物の付着を抑制するために設けられる部材である。
【0200】
帯電防止層に用いられる帯電防止剤としては、一般的な帯電防止剤を用いることができる。帯電防止剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カーボンや金属等の無機導電性物質、導電性高分子等が挙げられる。
【0201】
帯電防止層の厚さは、例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0202】
帯電防止層の形成方法としては、例えば、基材層上に、帯電防止剤および溶剤を含む組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0203】
4.昇華防止層
本開示における加飾用転写シートは、剥離性支持体の画像層とは反対側の面に、昇華防止層を有していてもよい。加飾用転写シートをロール状に巻いた状態としたとき、昇華防止層によって、剥離性支持体と発泡抑制層とが接するのを防ぐことができる。そのため、発泡抑制層に含まれる発泡抑制剤が昇華性を有する場合、昇華防止層によって、発泡抑制層において発泡抑制剤が減少するのを抑制できる。これにより、発泡抑制効果の低下を抑制できる。
【0204】
昇華防止層の材料としては、樹脂が挙げられる。樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0205】
昇華防止層は、帯電防止剤を含んでいてもよい。この場合、昇華防止層が帯電防止層を兼ねることができる。帯電防止剤は、上記帯電防止層に用いられる帯電防止剤と同様である。
【0206】
また、昇華防止層は、必要に応じて、色素、体質顔料、硬化剤、触媒、安定剤、開始剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0207】
昇華防止層の厚さは、剥離性支持体と発泡抑制層とが接するのを防ぐことが可能な厚さであれば特に限定されず、例えば、1μm以上10μm以下である。
【0208】
昇華防止層の形成方法としては、例えば、基材層上に、上記樹脂を含む組成物を塗布する方法が挙げられる。
【0209】
5.離型層
本開示における加飾用転写シートは、例えば図9に示すように、剥離性支持体41と画像層4との間に、離型層9を有していてもよい。離型層により、剥離性支持体と画像層と間の剥離性を高めることができる。本実施態様において、加飾用転写シートと、表面に発泡性樹脂層を有する加飾対象物とを一体化させた後、離型層は、剥離性支持体とともに、加飾用転写シートから剥離される。
【0210】
離型層は、離型層と剥離性支持体との間の密着性が、離型層と画像層との間の密着性に比べて高くなるよう構成される。離型層の材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂と、他の樹脂との混合物も用いることができる。他の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0211】
離型層の厚さは、例えば、0.1μm以上1μm以下である。
【0212】
D.加飾物品
本開示における加飾物品は、2つの実施態様を有する。以下、各実施態様について説明する。
【0213】
I.第1実施態様の加飾物品
本実施態様の加飾物品は、加飾対象物と、接着層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、上記積層シートが、上記接着層側から順に、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0214】
図10は、本実施態様の飾物品を例示する概略断面図である。図10に例示するように、加飾物品30は、加飾対象物31と、接着層32と、積層シート33と、をこの順に有し、積層シート33側の表面に凹凸形状を有する。積層シート33は、接着層32側から順に、基材層1と、発泡層12と、パターン状の発泡抑制層3と、熱転写画像14を有する画像層4と、を有する。発泡抑制層3は、溶融性を有する、あるいは、昇華性を有する発泡抑制剤を含有する。
【0215】
本実施態様の加飾物品は、上述の加飾シート用積層体を用いて製造できる。よって、本実施態様の加飾物品は、上述の加飾シート用積層体と同様の効果を奏する。
【0216】
以下、本実施態様の加飾物品の各構成について説明する。
【0217】
1.凹凸形状
本実施態様の加飾物品は、積層シート側の表面に凹凸形状を有する。
【0218】
凹凸形状の断面形状は、特に限定されない。
【0219】
また、凹凸形状の平面形状は、特に限定されない。凹凸形状の平面形状は、例えば、ライン状であってもよく、ドット状であってもよい。また、ドットの平面形状としては、例えば、円状、楕円状、三角形状、矩形状が挙げられる。
【0220】
凹凸形状の模様の具体例としては、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝が挙げられ、これらの組み合わせであってもよい。
【0221】
2.積層シート
本実施態様における積層シートは、接着層側から順に、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有する。
【0222】
基材層、発泡抑制層、画像層は、上述の加飾シート用積層体における基材層、発泡抑制層、画像層と同様である。
【0223】
発泡層は、上述の加飾シートにおける発泡層と同様である。
【0224】
積層シートは、基材層および発泡層の間に、アンカー層を有していてもよい。アンカー層は、上述の加飾シート用積層体におけるアンカー層と同様である。
【0225】
積層シートは、基材層の発泡層とは反対側の面に、帯電防止層を有していてもよい。帯電防止層は、上述の加飾シート用積層体における帯電防止層と同様である。
【0226】
3.接着層
接着層は、上述の加飾シート用積層体における接着層と同様である。
【0227】
接着層の形成方法としては、加飾物品の製造に用いられる加飾シート用積層体に接着層を設けてもよく、加飾対象物に接着層を設けてもよい。
【0228】
4.加飾対象物
本開示における加飾対象物は、特に限定されない。具体的には、加飾対象物の形状、大きさ、材質等は、特に限定されない。
【0229】
加飾対象物は、立体形状を有することが好ましい。
【0230】
加飾対象物としては、例えば、繊維部材、木質部材、樹脂部材、金属部材、ガラス部材、セラミック部材等が挙げられる。繊維部材としては、普通紙、上質紙、トレーシングペーパー等が挙げられる。樹脂部材を構成する樹脂としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体)、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。金属部材を構成する金属としては、アルミニウム等が挙げられる。
【0231】
加飾対象物は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0232】
5.他の構成
本開示における加飾物品は、画像層の発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有していてもよい。保護層は、上述の加飾シート用積層体における保護層と同様である。
【0233】
保護層の形成方法としては、加飾物品の製造に用いられる加飾シート用積層体に保護層を設けてもよく、加飾対象物と加飾シートとを一体化させた後、保護層を形成してもよい。
【0234】
また、本開示における加飾物品は、画像層と保護層との間に、中間層を有していてもよい。中間層は、上述の加飾シート用積層体における中間層と同様である。
【0235】
中間層の形成方法としては、加飾物品の製造に用いられる加飾シート用積層体に中間層を設けてもよく、加飾対象物と加飾シートとを一体化させた後、中間層を形成してもよい。
【0236】
6.加飾物品の製造方法
本実施態様の加飾物品は、上述の加飾シート用積層体を用いて製造できる。本実施態様の加飾物品の製造方法は、例えば、加飾シート用積層体の発泡性樹脂層を発泡させて、加飾シートを得る発泡工程と、加飾シートおよび加飾対象物を、加飾シートの基材層側の面と加飾対象物とが向かい合うように配置して、接着層を介して一体化させる一体化工程とを有していてもよい。また、本実施態様の加飾物品の製造方法は、例えば、加飾シート用積層体および加飾対象物を、加飾シート用積層体の基材層側の面と加飾対象物とが向かい合うように配置して、接着層を介して一体化させる一体化工程と、一体化工程後に、加飾シート用積層体の発泡性樹脂層を発泡させる発泡工程とを有していてもよい。
【0237】
中でも、発泡工程および一体化工程の順に行うことが好ましい。さらに、発泡工程および一体化工程では、加熱により、加飾シート用積層体の基材層を軟化させると同時に、発泡性樹脂層を発泡させることが好ましい。加飾対象物の耐熱性が低い場合、一体化工程後に発泡工程を行うことが難しい。そのため、加熱により基材層を軟化させる際に、発泡性樹脂層を発泡させることで、耐熱性の低い加飾対象物も用いることができる。
【0238】
よって、発泡性樹脂層を加熱発泡させる際の加熱温度は、熱分解型発泡剤の分解温度以上であり、かつ、基材層の軟化点以上であることが好ましい。
【0239】
加飾シート用積層体または加飾シートと加飾対象物とを一体化する方法としては、加飾シート用積層体または加飾シートを貼合可能な方法であれば特に限定されず、例えば、インモールド成形、インサート成形、TOM成形等のオーバーレイ成形等が挙げられる。オーバーレイ成形は、真空圧空成形とも称される。中でも、オーバーレイ成形が好ましい。オーバーレイ成形は、加飾対象物の材質を選ばない等の利点を有する。
【0240】
また、保護層が硬化性を有する場合、一体化工程後に、保護層を硬化させる硬化工程を行うことができる。一体化工程後に硬化工程を行うことにより、一体化工程時に、保護層が割れるのを抑制できる。
【0241】
保護層の硬化方法としては、保護層に含有される硬化性樹脂組成物に応じて適宜選択され、電離放射線を照射する方法、加熱する方法が挙げられる。
【0242】
接着層が硬化性を有する場合、硬化工程では、接着層も硬化させることができる。接着層の硬化方法は、接着剤の種類に応じて適宜選択され、電離放射線を照射する方法、可視光線を照射する方法、加熱する方法が挙げられる。
【0243】
また、一体化工程後に、加飾シート用積層体または加飾シートの余剰部分をトリミングするトリミング工程を行ってもよい。
【0244】
トリミング方法としては、特に限定されず、例えば、カッターやレーザーを用いる方法が挙げられる。
【0245】
II.第2実施態様の加飾物品
本実施態様の加飾物品は、加飾対象物と、発泡層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、上記積層シートが、上記発泡層側から順に、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、上記発泡抑制層が溶融性を有する。
【0246】
図11は、本実施態様の飾物品を例示する概略断面図である。図11に例示するように、加飾物品30は、加飾対象物31と、接着層32と、積層シート33と、をこの順に有し、積層シート33側の表面に凹凸形状を有する。積層シート33は、発泡層12側から順に、パターン状の発泡抑制層3と、熱転写画像14を有する画像層4と、を有する。発泡抑制層3は、溶融性を有する。
【0247】
本実施態様の加飾物品は、上述の加飾用転写シートを用いて製造できる。よって、本実施態様の加飾物品は、上述の加飾用転写シートと同様の効果を奏する。
【0248】
以下、本実施態様の加飾物品の各構成について説明する。
【0249】
1.凹凸形状
本実施態様の加飾物品は、積層シート側の表面に凹凸形状を有する。凹凸形状は、上記第1実施態様の加飾物品における凹凸形状と同様である。
【0250】
2.積層シート
本開示における積層シートは、発泡層側から順に、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有する。
【0251】
発泡抑制層および画像層は、上述の加飾用転写シートにおける発泡抑制層および画像層と同様である。
【0252】
発泡層は、上記第1実施態様の加飾物品における発泡層と同様である。
【0253】
3.加飾対象物
本開示における加飾対象物は、上記第1実施態様の加飾物品における加飾対象物と同様である。
【0254】
4.他の構成
本開示における加飾物品は、画像層の発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有していてもよい。保護層は、上述の加飾用転写シートにおける保護層と同様である。
【0255】
保護層の形成方法としては、加飾物品の製造に用いられる加飾用転写シートに保護層を設けてもよく、加飾対象物と加飾用転写シートとを一体化させ、剥離性支持体を剥離した後、保護層を形成してもよい。
【0256】
また、本開示における加飾物品は、画像層と保護層との間に、中間層を有していてもよい。中間層は、上述の加飾用転写シートにおける中間層と同様である。
【0257】
中間層の形成方法としては、加飾物品の製造に用いられる加飾用転写シートに中間層を設けてもよく、加飾対象物と加飾用転写シートとを一体化させ、剥離性支持体を剥離した後、中間層を形成してもよい。
【0258】
5.加飾物品の製造方法
本実施態様の加飾物品は、上述の加飾用転写シートを用いて製造できる。本実施態様の加飾物品の製造方法は、例えば、加飾用転写シートと、表面に発泡性樹脂層を有する加飾対象物とを、加飾用転写シートの発泡抑制層側の面と加飾対象物の発泡性樹脂層の面とが向かい合うように配置して、一体化させる一体化工程と、一体化工程後に、加飾用転写シートから剥離性支持体を剥離する剥離工程と、剥離工程後に、発泡性樹脂層を発泡させ、発泡層を形成する発泡工程とを有する。
【0259】
加飾用転写シートと、表面に発泡性樹脂層を有する加飾対象物とを一体化する方法としては、特に限定されず、例えば、インモールド成形、インサート成形、TOM成形等のオーバーレイ成形等が挙げられる。中でも、オーバーレイ成形が好ましい。オーバーレイ成形は、加飾対象物の材質を選ばない等の利点を有する。
【0260】
インモールド成形、インサート成形、オーバーレイ成形の場合、加飾用転写シートを加熱して軟化させる。この際、発泡抑制剤の気化を抑制するために、加熱温度は、発泡抑制剤の沸点または昇華点よりも低いことが好ましい。
【0261】
保護層が硬化性を有する場合は、一体化工程後に、保護層を硬化させる硬化工程を行ってもよい。硬化工程は、上記第1実施態様の加飾物品の項に記載した内容と同様である。
【0262】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【0263】
本開示は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1]基材層と、発泡性樹脂層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、
上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート用積層体。
[2]上記画像層の上記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、[1]に記載の加飾シート用積層体。
[3]上記基材層の上記発泡性樹脂層とは反対側の面に、接着層を有する、[1]または[2]に記載の加飾シート用積層体。
[4]上記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、[1]から[3]までのいずれかに記載の加飾シート用積層体。
[5]基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、をこの順に有し、
上記画像層側の表面に凹凸形状を有し、
上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾シート。
[6]上記画像層の上記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、[5]に記載の加飾シート。
[7]上記基材層の上記発泡性樹脂層とは反対側の面に、接着層を有する、[5]または[6]に記載の加飾シート。
[8]上記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、[5]から[7]までのいずれかに記載の加飾シート。
[9]剥離性支持体と、転写層と、を有する加飾用転写シートであって、
上記転写層が、上記剥離性支持体側から順に、熱転写画像を有する画像層と、パターン状の発泡抑制層とを有し、
[10]上記転写層が、上記基材層と上記画像層との間に、保護層を有する、[9]に記載の加飾用転写シート。
[11]上記基材層の上記画像層とは反対側の面に、帯電防止層を有する、[9]または[10]に記載の加飾用転写シート。
[12]上記基材層の130℃における伸び率が200%以上である、[9]から[11]までのいずれかに記載の加飾用転写シート。
[13]加飾対象物と、接着層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、
上記積層シートが、上記接着層側から順に、基材層と、発泡層と、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、
上記発泡抑制層が溶融性を有する、あるいは、上記発泡抑制層が昇華性を有する発泡抑制剤を含有する、加飾物品。
[14]加飾対象物と、発泡層と、積層シートと、をこの順に有し、上記積層シート側の表面に凹凸形状を有する加飾物品であって、
上記積層シートが、上記発泡層側から順に、パターン状の発泡抑制層と、熱転写画像を有する画像層と、を有し、
上記発泡抑制層が溶融性を有する、加飾物品。
[15]上記画像層の上記発泡抑制層とは反対側の面に、保護層を有する、[13]または[14]に記載の加飾物品。
【符号の説明】
【0264】
1 … 基材層
2 … 発泡性樹脂層
3 … 発泡抑制層
4 … 画像層
10 … 加飾シート用積層体
12 … 発泡層
14 … 熱転写画像
20 … 加飾シート
30 … 加飾物品
31 … 加飾対象物
32 … 接着層
33 … 積層シート
40 … 加飾用転写シート
41 … 剥離性支持体
42 … 転写層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11