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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163555
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】振動抑制装置及び振動抑制方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20231102BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F15/04 A
F16F15/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074524
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】荒木 一成
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048BA01
3J048BC01
3J048BE11
(57)【要約】
【課題】摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる振動抑制装置等を提供すること。
【解決手段】振動抑制装置は、物体が搭載される台座部と、縦に配されるとともに前記台座部の下面に固定された板部と、前記台座部又は前記板部の下面を弾性力により支持する1又は複数の弾性部材と、回転駆動するとともに前記物体が静止状態及び動状態のときに前記板部との間で動摩擦力を発生させるように構成された複数の駆動ローラと、対応する前記駆動ローラを前記板部側に押し付けるように構成された複数のニップ機構と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体が搭載される台座部と、
縦に配されるとともに前記台座部の下面に固定された板部と、
前記台座部又は前記板部の下面を弾性力により支持する1又は複数の弾性部材と、
回転駆動するとともに前記物体が静止状態及び動状態のときに前記板部との間で動摩擦力を発生させるように構成された複数の駆動ローラと、
対応する前記駆動ローラを前記板部側に押し付けるように構成された複数のニップ機構と、
を備える、振動抑制装置。
【請求項2】
前記複数の駆動ローラは、
前記板部を下側に送るように回転駆動する1又は複数の第1駆動ローラと、
前記板部を上側に送るように回転駆動する1又は複数の第2駆動ローラと、
を備える、請求項1記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記第1駆動ローラは、複数あり、かつ、前記板部を挟み込むように配置され、
前記第2駆動ローラは、複数あり、かつ、前記板部を挟み込むように配置されている、
請求項2記載の振動抑制装置。
【請求項4】
前記弾性部材は、下端部が所定の位置に固定された固定部に支持され、かつ、上端部が前記台座部の下面を弾性的に支持するように構成されたコイルスプリングである、
請求項1記載の振動抑制装置。
【請求項5】
対応する前記駆動ローラを回転駆動する複数の駆動部をさらに備える、
請求項1乃至4のいずれか一に記載の振動抑制装置。
【請求項6】
前記複数の駆動部の各回転速度及び各回転トルクを制御する制御部をさらに備える、
請求項5記載の振動抑制装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記物体が静止状態にあるときに前記板部が上側にも下側にも送られることなく一定の位置に維持されるように前記複数の駆動部を制御する、
請求項6記載の振動抑制装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記複数のニップ機構での各押付け力を制御する、
請求項6記載の振動抑制装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数のニップ機構での各押付け力が均等となるように前記複数のニップ機構を制御する、
請求項8記載の振動抑制装置。
【請求項10】
物体が静止状態及び動状態において前記物体と連動する部品に動摩擦力が掛かった状態で前記物体の振動を抑制する、振動抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動抑制装置及び振動抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衝撃、地震、機械的振動等による加速度がかかった物体の振動を抑制する振動抑制装置には、一般的に、ばね、ゴムなどの弾性部材が用いられている。また、振動抑制装置では、弾性部材で振動を抑制しているときの不要な揺れを減衰するために、摩擦力が利用されている。例えば、特許文献1には、スリーブ軸の円筒部の内壁に面荒らし処理による摩擦発生面が形成され、摩擦発生面における静摩擦力により固定軸とスリーブ軸とが初期位置に保持され、その静摩擦力を超える衝撃が加わると、固定軸とスリーブ軸とが相対的に初期位置から移動し、バネの弾力に応じた位置で移動を停止し、この移動中、摩擦発生面では動摩擦力が作用し、その動摩擦力が生じている期間に衝撃のエネルギーが消費され、衝撃は緩衝される衝撃緩衝構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-53878号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の分析は、本願発明者により与えられる。
【0005】
しかしながら、動摩擦係数は静摩擦係数よりも小さいため、特許文献1に記載の衝撃緩衝構造では、静摩擦力を超える衝撃が加わって固定軸とスリーブ軸とが相対的に移動して振動すると、静摩擦力よりも低い動摩擦力によって振動を減衰することになり、減衰力の低下によって固定軸とスリーブ軸との相対的な移動が発生してから停止するまでの時間がかかる可能性がある。また、特許文献1に記載の衝撃緩衝構造では、スリーブ軸の円筒部の内壁と固定軸との接触面の圧力が使用によって低下(接触面が摩耗)して摩擦力が低下するので、振動の減衰力が低下し、固定軸とスリーブ軸との相対的な移動が発生してから停止するまでの時間がさらに長くなる可能性がある。
【0006】
本発明の主な課題は、摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる振動抑制装置及び振動抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の視点に係る振動抑制装置は、物体が搭載される台座部と、縦に配されるとともに前記台座部の下面に固定された板部と、前記台座部又は前記板部の下面を弾性力により支持する1又は複数の弾性部材と、回転駆動するとともに前記物体が静止状態及び動状態のときに前記板部との間で動摩擦力を発生させるように構成された複数の駆動ローラと、対応する前記駆動ローラを前記板部側に押し付けるように構成された複数のニップ機構と、を備える。
【0008】
第2の視点に係る振動抑制方法は、物体が静止状態及び動状態において前記物体と連動する部品に動摩擦力が掛かった状態で前記物体の振動を抑制する。
【発明の効果】
【0009】
前記第1、第2の視点によれば、摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
図2】実施形態1に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した図1の矢視V1から見たときの側面図である。
図3】実施形態1に係る振動抑制装置の回路的構成を模式的に示したブロック図である。
図4】実施形態1に係る振動抑制装置に搭載された搭載物に許容値を超える力が加わったときの搭載物にかかる力の減衰の仕方を模式的に示したグラフである。
図5】比較例に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
図6】比較例に係る振動抑制装置に搭載された搭載物に許容値を超える力が加わったときの搭載物にかかる力の減衰の仕方を模式的に示したグラフである。
図7】実施形態2に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
図8】実施形態3に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。また、以降の説明で参照する図面等のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。さらに、本願開示に示す回路図、ブロック図、内部構成図、接続図などにおいて、明示は省略するが、入力ポート及び出力ポートが各接続線の入力端及び出力端のそれぞれに存在する。入出力インタフェイスも同様である。
【0012】
[実施形態1]
実施形態1に係る振動抑制装置について図面を用いて説明する。図1は、実施形態1に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。図2は、実施形態1に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した図1の矢視V1から見たときの側面図である。図3は、実施形態1に係る振動抑制装置の回路的構成を模式的に示したブロック図である。
【0013】
振動抑制装置1は、静止状態及び動状態の両方の状態において動摩擦力と弾性力(バネ力を含む)を用いて、振動抑制装置1に搭載された物体2にかかる加速度を低減して当該物体2の振動を抑制する装置である。振動抑制装置1は、静止状態において静摩擦力を用いることなく、動摩擦力と弾性力を用いて、振動抑制装置1に搭載された物体2にかかる突発的な加速度を低減し、かつ、不要な振動を抑制することで、物体2の破損を防ぐ。振動抑制装置1は、例えば、走行中の揺れが生じやすい輸送車両、機械的振動が生じやすい工場等に設置することができる。振動抑制装置1は、主な構成部として、台座部10と、板部11と、弾性部材12、13と、駆動ローラ21~24と、駆動軸26~29と、駆動部31~34と、ニップ機構36~39と、制御部41と、を備える(図1図3参照)。
【0014】
ここで、物体2として、例えば、外力が制限されている精密機器のような揺れに弱い物体が挙げられる。また、静止状態は、物体2が振動抑制装置1に搭載された状態で静止している状態である。動状態は、物体2が振動抑制装置1に搭載された状態で動いている状態(揺動状態、振動状態等)である。
【0015】
台座部10は、物体2が搭載される台座となる部材である(図1図2参照)。台座部10の上面は、平坦面(水平面)にすることができ、物体2を搭載することができる。台座部10は、物体2と一体的となるように、ボルト等によって物体2と連結されていてもよい。台座部10の下面には、板部11の上端部が固定されている。台座部10は、板部11と一体になっていてもよい。台座部10の下面には、板部11が固定されている位置以外の位置で、複数(1つでも可)の弾性部材12、13に支持されている。台座部10は、弾性部材12、13と連結されていてもよい。
【0016】
板部11は、駆動ローラ21、23と駆動ローラ22、24との間で上下方向にスライド可能に配された板状の部材(長手部材)である(図1図2参照)。板部11は、振動抑制装置1の本体(例えば、筐体)に上下方向にスライド可能に支持されていてもよい。板部11の上端部は、台座部10の下面に固定されている。板部11は、台座部10を介して物体2と連動する。板部11の板面の両面は、粗面化された摩擦面となる。板部11の材料は、駆動ローラ21~24の材料よりも擦り減りにくい材料であることが好ましい。板部11は、ニップ機構36~39によって駆動ローラ21、23と駆動ローラ22、24とに挟み込まれている。板部11は、回転駆動している駆動ローラ21、22よって下側に送られるように駆動ローラ21、22と接触しつつ駆動ローラ21、22の動摩擦力を受けている。板部11は、回転駆動している駆動ローラ23、24よって上側に送られるように駆動ローラ23、24と接触しつつ駆動ローラ23、24の動摩擦力を受けている。板部11は、物体2が静止状態にあるときに、駆動ローラ21~24の各動摩擦力の合力により上側にも下側にも送られることなく一定の位置に維持される。物体2が動状態にあるときの板部11の上下方向の振動は、駆動ローラ21~24の各動摩擦力の合力によって減衰される。
【0017】
弾性部材12、13は、弾性変形可能な部材である(図1参照)。弾性部材12、13は、図1のように2個に限らず、1個でもよく、3個以上でもよい。弾性部材12、13の下端部は、所定の位置に固定された固定部12a、13a(例えば、振動抑制装置1の筐体に固定された部品)に支持(連結でも可)されている。弾性部材12、13の上端部は、台座部10の下面を支持している。弾性部材12、13として、例えば、コイルスプリング、板バネ、ゴムブロック、衝撃吸収・振動吸収素材、シリコーンを用いたゲル状の素材等やそれらのいずれかの複合体を用いることができる。弾性部材12、13は、台座部10の下面の代わりに、又は、追加して、板部11の下面(下端部)を弾性的に支持するようにしてもよい。
【0018】
駆動ローラ21~24は、それぞれ、所定の方向に回転駆動するローラである(図1図3参照)。駆動ローラ21~24は、物体2が動状態だけでなく静止状態のときでも板部11との間で動摩擦力を発生させるように構成されている。駆動ローラ21、22は板部11を下側に送る方向に回転駆動し、かつ、駆動ローラ23、24は板部11を上側に送る方向に回転駆動し、板部11の送りが相殺されて、駆動ローラ21~24は物体2が静止状態及び動状態のときに板部11に対して滑って空回りしている。
【0019】
駆動ローラ21は、駆動軸26を介して駆動部31によって常時回転駆動されている(図3参照)。駆動ローラ21は、図1では、板部11を下側に送る方向に回転駆動(時計回りに駆動)しており、ニップ機構36によって板部11側に押し付けられている。駆動ローラ21は、物体2が静止状態及び動状態のときに、板部11に対して滑って空回りして動摩擦力を発生する。
【0020】
駆動ローラ22は、駆動軸27を介して駆動部32によって常時回転駆動されている(図3参照)。駆動ローラ22は、図1では、板部11を下側に送る方向に回転駆動(反時計回りに駆動)しており、ニップ機構37によって板部11側に押し付けられている。駆動ローラ22は、物体2が静止状態及び動状態のときに、板部11に対して滑って空回りして動摩擦力を発生する。駆動ローラ22は、図1では、板部11における駆動ローラ21側に対する反対側であって、上下方向の駆動ローラ21と同じ高さに配されている。
【0021】
駆動ローラ23は、駆動軸28を介して駆動部33によって常時回転駆動されている(図3参照)。駆動ローラ23は、図1では、板部11を上側に送る方向に回転駆動(反時計回りに駆動)しており、ニップ機構38によって板部11側に押し付けられている。駆動ローラ23は、物体2が静止状態及び動状態のときに、板部11に対して滑って空回りして動摩擦力を発生する。駆動ローラ23は、図1では、駆動ローラ21の下側(上側でも可)に配されている。
【0022】
駆動ローラ24は、駆動軸29を介して駆動部34によって常時回転駆動されている(図3参照)。駆動ローラ24は、図1では、板部11を上側に送る方向に回転駆動(時計回りに駆動)しており、ニップ機構39によって板部11側に押し付けられている。駆動ローラ24は、物体2が静止状態及び動状態のときに、板部11に対して滑って空回りして動摩擦力を発生する。駆動ローラ24は、図1では、板部11における駆動ローラ23側に対する反対側であって、上下方向の駆動ローラ23と同じ高さに配されている。
【0023】
駆動部31~34は、対応する駆動軸26~29を介して、対応する駆動ローラ21~24を回転駆動する機能部である(図2図3参照)。駆動部31~34の回転速度、回転トルクは、制御部41によって制御され、物体2が静止状態にあるときに、駆動ローラ21~24の各動摩擦力の合力により板部11が上側にも下側にも送られることなく一定の位置に維持されるように制御される。駆動部31~34として、例えば、ブラシレスモータを用いることができ、回転速度や回転位置を検出するセンサを備えたものや、センサ無しでモータ電流、電圧、モータパラメータを用いて回転速度や回転位置を演算推定するものを用いることができる。
【0024】
ニップ機構36~39は、対応する駆動ローラ21~24を板部11に押し付ける機構である(図1図3)。ニップ機構36~39として、例えば、駆動ローラ21~24の軸に対して油圧シリンダやソレノイドなどで押付け力Nを制御することが可能なものを用いることができる。ニップ機構36~39の各押付け力Nは、制御部41によって制御され、いずれも所定の押付け力で均等になるよう制御される。ニップ機構36~39の各押付け力Nは、台座部10に搭載される物体2の質量Mや許容加速度aに応じて変更するようにしてもよい。許容加速度aは、耐衝撃性、耐震性等の要求に応じて任意に設定することができる。ニップ機構36~39による押付け力Nは、許容加速度aを超えないように設定される。なお、ニップ機構36~39は、使用による駆動ローラ21~24の摩耗が生じても、押付け力Nを許容範囲内で維持することができれば、例えば、弾性部材(バネ、スプリング等)を用いて、制御部41によって制御しないようにしてもよい。
【0025】
制御部41は、駆動部31~34及びニップ機構36~39を制御する機能部である(図3参照)。制御部41は、駆動部31~34の各回転速度及び各回転トルクを制御し、物体2が静止状態にあるときに、駆動ローラ21~24の各動摩擦力の合力により板部11が上側にも下側にも送られることなく一定の位置に維持されるように制御する。制御部41は、ニップ機構36~39の各押付け力を所定の押付け力で均等になるよう制御する。
【0026】
以上のような構成の振動抑制装置1では、物体2が許容加速度a以下の加速度a(衝撃、地震、機械的振動等による加速度)を受けても、駆動ローラ21~24に挟み込まれた板部11は摺動せず、物体2は上下方向(垂直方向)に揺れない。すなわち、質量Mの物体2が許容加速度a以下の加速度aを受けたときの慣性力Maは、ニップ機構36~39の押付け力Nがかかった駆動ローラ21~24と板部11との間に生ずる動摩擦力4μ’N(=Ma;μ’は動摩擦係数)を超えないので、物体2は上下方向に位置を変えず静止状態である。
【0027】
一方、物体2が許容加速度aを超える加速度aを受けたときは、駆動ローラ21~24に挟み込まれた板部11は摺動し、物体2は上下方向(垂直方向)に揺れる。すなわち、質量Mの物体2が許容加速度aを超える加速度aを受けたときの慣性力Maは、ニップ機構36~39の押付け力Nがかかった駆動ローラ21~24と板部11との間に生ずる動摩擦力4μ’N(=Ma)を超えるので、物体2は上下方向に位置を変え、動状態であり、その後、動摩擦力4μ’Nによって物体2の加速度が低減され、物体2の振動も抑制される。
【0028】
次に、実施形態1に係る振動抑制装置に搭載された物体に許容値を超える力がかかったときの挙動について、比較例及び図面を用いて説明する。図4は、実施形態1に係る振動抑制装置に搭載された搭載物に許容値を超える力が加わったときの搭載物にかかる力の減衰の仕方を模式的に示したグラフである。図5は、比較例に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。図6は、比較例に係る振動抑制装置に搭載された搭載物に許容値を超える力が加わったときの搭載物にかかる力の減衰の仕方を模式的に示したグラフである。
【0029】
比較例に係る振動抑制装置は、図5のように、実施形態1に係る振動抑制装置(図1の1)の駆動ローラ(図1の21~24)を回転しないようにした非回転ローラ51~54に変更したものである。物体2の質量をMとし、許容加速度をaとし、ニップ機構36~39の各押付け力をNとし、静摩擦係数をμとすると、比較例に係る振動抑制装置では、静止状態において静摩擦力4μN(=Ma)で許容値が設定されている(図6参照)。比較例に係る振動抑制装置では、物体2に許容値を超える力(=静摩擦力4μN)が加わることで物体2が動状態となる。物体2が動状態になると摩擦係数は動摩擦係数μ’となる。摩擦力は減衰力になるが、減衰力は動摩擦力4μ’Nであり静摩擦力4μNより小さい(つまり、動摩擦係数μ’は静摩擦係数μより小さい)ため、減衰力が低下し、動状態が開始してから終了するまでの時間がかかる(図6参照)。
【0030】
一方、実施形態1に係る振動抑制装置(図1の1)では、物体2が静止状態でも駆動ローラ21~24が回転して滑っているため、摩擦力は静止状態でも動状態でも動摩擦力4μ’Nで一定である(図4参照)。そのため、実施形態1に係る振動抑制装置1では、静止状態から動状態になっても減衰力の低下が起きず、動状態が開始してから終了するまでの時間を、比較例に係る振動抑制装置(図)よりも短縮させることができる。
【0031】
実施形態1によれば、物体2が静止状態及び動状態でも物体2と連動する部品(板部11)に動摩擦力が掛かっている状態で物体2の振動を抑制することで、摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる。
【0032】
[実施形態2]
実施形態2に係る振動抑制装置について図面を用いて説明する。図7は、実施形態2に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
【0033】
実施形態2は、実施形態1の変形例であり、駆動ローラ21A~24A、21B~24Bを4組(4組以上でも可)としたものである。駆動ローラ21A~24A、21B~24Bは、対応するニップ機構36A~39A、36B~39Bによって板部11側に押し付けられている。駆動ローラ21A~24A、21B~24Bの各駆動やニップ機構36A~39A、36B~39Bの各押付けは、制御部(図3の41に相当)によって制御することができる。実施形態2でも、物体2が静止状態において板部11に対して駆動ローラ21A~24A、21B~24Bが滑って空回りして動摩擦力が掛かっている状態である。その他の構成及び動作は、実施形態1と同様である。
【0034】
実施形態2によれば、実施形態1と同様に、物体2が静止状態でも動摩擦力が掛かっている状態にすることで、摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる。
【0035】
[実施形態3]
実施形態3に係る振動抑制装置について図面を用いて説明する。図8は、実施形態3に係る振動抑制装置の機械的構成を模式的に示した側面図である。
【0036】
振動抑制装置1は、物体2の振動を抑制する装置である。振動抑制装置1は、台座部10と、板部11と、弾性部材12、13と、駆動ローラ21、24と、ニップ機構36、39と、を備える。台座部10は、物体2が搭載される。板部11は、縦に配されるとともに台座部10の下面に固定されている。弾性部材12、13は、台座部10(板部11でも可)の下面を弾性力により支持し、1又は複数(図8では2個)ある。駆動ローラ21、24は、回転駆動するとともに物体2が静止状態及び動状態のときに板部11との間で動摩擦力を発生させるように構成され、複数(図8では2個)ある。ニップ機構36、39は、対応する駆動ローラ21、24を板部11側に押し付けるように構成され、複数(図8では2個)ある。
【0037】
実施形態3によれば、物体2が静止状態でも動摩擦力が掛かっている状態にすることで、摩擦力を維持して安定した挙動を確保することに貢献することができる。
【0038】
上記実施形態の一部または全部は以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0039】
[付記1]
物体が搭載される台座部と、
縦に配されるとともに前記台座部の下面に固定された板部と、
前記台座部又は前記板部の下面を弾性力により支持する1又は複数の弾性部材と、
回転駆動するとともに前記物体が静止状態及び動状態のときに前記板部との間で動摩擦力を発生させるように構成された複数の駆動ローラと、
対応する前記駆動ローラを前記板部側に押し付けるように構成された複数のニップ機構と、
を備える、振動抑制装置。
[付記2]
前記複数の駆動ローラは、
前記板部を下側に送るように回転駆動する1又は複数の第1駆動ローラと、
前記板部を上側に送るように回転駆動する1又は複数の第2駆動ローラと、
を備える、付記1記載の振動抑制装置。
[付記3]
前記第1駆動ローラは、複数あり、かつ、前記板部を挟み込むように配置され、
前記第2駆動ローラは、複数あり、かつ、前記板部を挟み込むように配置されている、
付記2記載の振動抑制装置。
[付記4]
前記弾性部材は、下端部が所定の位置に固定された固定部に支持され、かつ、上端部が前記台座部の下面を支持するように構成されたコイルスプリングである、
付記1記載の振動抑制装置。
[付記5]
対応する前記駆動ローラを回転駆動する複数の駆動部をさらに備える、
付記1乃至4のいずれか一に記載の振動抑制装置。
[付記6]
前記複数の駆動部の各回転速度及び各回転トルクを制御する制御部をさらに備える、
付記5記載の振動抑制装置。
[付記7]
前記制御部は、前記物体が静止状態にあるときに前記板部が上側にも下側にも送られることなく一定の位置に維持されるように前記複数の駆動部を制御する、
付記6記載の振動抑制装置。
[付記8]
前記制御部は、前記複数のニップ機構での各押付け力を制御する、
付記6記載の振動抑制装置。
[付記9]
前記制御部は、前記複数のニップ機構での各押付け力が均等となるように前記複数のニップ機構を制御する、
付記8記載の振動抑制装置。
[付記10]
物体が静止状態及び動状態において前記物体と連動する部品に動摩擦力が掛かった状態で前記物体の振動を抑制する、振動抑制方法。
【0040】
なお、上記の特許文献の開示は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとし、必要に応じて本発明の基礎ないし一部として用いることが出来るものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。さらに、上記引用した文献の各開示事項は、必要に応じ、本願発明の趣旨に則り、本願発明の開示の一部として、その一部又は全部を、本書の記載事項と組み合わせて用いることも、本願の開示事項に含まれる(属する)ものと、みなされる。
【符号の説明】
【0041】
1 振動抑制装置
2 物体
10 台座部
11 板部
12、13 弾性部材
12a、13a 固定部
21~24、21A~24A、21B~24B 駆動ローラ
26~29 駆動軸
31~34 駆動部
36~39、36A~39A、36B~39B ニップ機構
41 制御部
51~54 非回転ローラ
図1
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図5
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図8