(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163582
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】コンパクトケースに於ける蓋体の係止機構
(51)【国際特許分類】
A45D 33/00 20060101AFI20231102BHJP
B65D 45/02 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A45D33/00 610C
A45D33/00 610K
B65D45/02 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074567
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140915
【氏名又は名称】株式会社カツシカ
(72)【発明者】
【氏名】並木 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】湯下 大樹
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA05
3E084AA14
3E084AB09
3E084BA02
3E084CA03
3E084DA03
3E084DB14
3E084FA06
3E084FC13
3E084FD11
3E084GA06
3E084GB23
3E084JA20
3E084KA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】蝶番により蓋体を開閉自在に蝶着したコンパクトケースの、磁石を利用した蓋体の係止機構に関するものである。
【解決手段】蝶番4により開閉自在に蝶着し、容器本体2若しくは蓋体3のどちらか一方に、スライド部材6を前後摺動自在に配置する。このスライド部材6と、スライド部材6を設けない蓋体3には引掛け部351を、他方には掛合突部622を設ける。この引掛け部351及び掛合突部622は、スライド部材6の前進端の時に引っ掛かり係合して容器本体と蓋体3を閉じた状態で保持し、後退端の時にその掛合が解除される。スライド部材6と、他方のそれぞれには、同極を向き合わせた磁石7,9を配置する。スライド部材6の磁石7は、スライド部材6が前進端から後退端の間のどの位置でも、他方の磁石9よりも前端面方向にずれている。この磁石7,9の反発力がスライド部材6を前端面方向に押圧し、掛合解除した蓋体3を押し上げる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(2)と蓋体(3)を蝶番(4)により開閉自在に蝶着し、容器本体(2)若しくは蓋体(3)のどちらか一方に、押しボタン状のスライド部材(6)を前後摺動自在に配置し、該スライド部材(6)と、スライド部材(6)を設けない蓋体(3)、若しくは容器本体(2)のどちらか一方に引掛け部(351)を、他方に掛合突部(622)を設け、該引掛け部(351)及び掛合突部(622)は、スライド部材(6)の前進端の時にかんぬき状に引っ掛かり係合して容器本体(2)と蓋体(3)を閉じた状態で保持し、後退端の時にその引っ掛かり係合が解除される構成に於いて、
前記スライド部材(6)と、スライド部材(6)を設けない蓋体(3)、若しくは容器本体(2)それぞれに、同極を向き合わせた磁石(7,9)を配置し、該スライド部材(6)の磁石(7)は、スライド部材(6)が前進端から後退端の間のどの位置に於いても、スライド部材(6)を設けない蓋体(3)、若しくは容器本体(2)の磁石(9)よりもスライド部材(6)の前端面(61)方向にずれており、
それぞれの磁石(7,9)のずれた反発力(P)がスライド部材(6)を前端面(61)方向に押す応力(F1)、及び掛合が解除した蓋体(3)を押し上げる応力(F3)となる事を特徴とするコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝶番により蓋体を開閉自在に蝶着したコンパクトケースの、磁石を利用した蓋体の係止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蝶番により蓋体を開閉自在に蝶着したコンパクトケースの本体及び蓋体に磁石を埋設し、蓋体の係止及び開放に磁石を利用した構成は、数多く提案されている。
【0003】
このうち、特許文献1の構成は、本体と蓋体が蝶番によって開閉自在に連結したコンパクト容器の、本体に設けられたスライドタイプの押しボタンの上面に、両面2極着磁した磁石の一方の極部分を上面に向けて止着する。蓋体の下面には、同様に着磁した磁石2個を押しボタンのスライド範囲の前後端で押しボタンの磁石と対向する位置に、一方の極部分を下面に向けて止着する。押しボタンの前進端位置で相対する、本体の手前がわの磁石は、押しボタンの磁石とは異極を、押しボタンの後退端位置で相対する、本体の奥がわの磁石は押しボタンの磁石と同極を対向させている。これにより、押しボタンの前進端時に磁石が異極対向して吸着(蓋体の係止)し、後退端時に同極対向して反発(蓋体の開放)するようになっている。
【0004】
また、特許文献2の構成は、本体と蓋体が蝶番によって開閉自在に連結したコンパクト容器の、蓋体の下面に、両面2極着磁した磁石の一方の極部分を下面に向けて止着する。本体に設けられたスライドタイプの押しボタンの上面の、押しボタンの前進端位置で蓋体の磁石と相対する位置に磁性体を止着し、更に押しボタンの後退端位置で蓋体の磁石と相対する位置に、同様に着磁した磁石を、蓋体の磁石と同極対向させて止着している。これにより、押しボタンの前進端位置で蓋体の磁石が押しボタンの磁性体に吸着(蓋体の係止)し、押しボタンの後退端位置で蓋体の磁石と押しボタンの磁石が同極対向して反発(蓋体の開放)するようになっている。
【0005】
また、特許文献3の構成は、本体と蓋体が蝶番によって開閉自在に連結したコンパクト容器の、本体に設けられたスライドタイプの押しボタンの上面および蓋体の下面に、片面に極が交互に並んだ片面2極着磁された磁石を対向して止着する。それぞれの磁石は、押しボタンのスライド軸線に対して極が直交して配置されている。ただし、この2個の磁石は、押しボタンが前進端の位置で異極対向し、押しボタンが後退端の位置で同極対向するよう配置している。これにより、押しボタンの前進端の位置で押しボタンの磁石と本体の磁石が異極対向して吸着(蓋体の係止)し、押保田案の後退端の位置で押しボタンの磁石と本体の磁石がずれて同極対向して反発(蓋体の開放)するようになっていた。しかも、片面2極の異極同士が対向するため、蓋体と押しボタンの磁石が完全に異極対向した場合の吸着力は、両面2極着磁した磁石の異極対向した場合の吸着力よりもはるかに大きかった。
【0006】
これらの構成の場合、蓋体を閉じた状態で保持しておくフックなどの凹凸を設ける必要がなく、コンパクト容器の外観がシンプルにすっきりしたものにできた。また、蓋体が磁力により吸着係止しているため、アンダーカット係合など変形を伴う係合でなく、係合時の衝撃やゆがみが発生せず、収容した化粧料にダメージを与えることもなかった。また、開蓋時には蓋体の磁石と押しボタンの磁石が反発して蓋体が僅かに浮き上がり、蓋体の再閉蓋を防止し、かつ蓋体を摘まみ易くしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開昭59-34707号
【特許文献2】実開昭55-161909号
【特許文献3】実開昭55-62225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、蓋体の閉蓋維持が磁石の吸着力のみで行われているため、フックなどの閉鎖機構に比べて、閉蓋維持力が弱く、携帯時などに不用意に開いてしまわないよう、ある程度強力な磁力が必要であった。
【0009】
特許文献1の構成は、閉蓋時に磁石の異極同士が相対しているため、磁石の吸着力を最大限利用できた。ただし、この構成を実施するには、磁石が3個必要で、コストアップの要因となっていた。
【0010】
特許文献2の構成は、磁石2個と鉄などの磁性体が1個で構成され、閉蓋時に磁石を磁性体に吸着させたものである。特許文献1の構成と比較して磁石を1個少なくできた。しかし、磁石と吸着する磁性体にもメッキ処理などの防錆処理が必要で、コストダウンの割合は少なかった。
【0011】
また、特許文献3の構成は、片面2極着磁した磁石のずれによって、吸着、反発を切り替えていた。したがって、特許文献1の構成よりも磁石を1個少なく、特許文献2の構成よりも磁性体を必要なくできた。また、この磁石の異極対向は2極同士の吸着であるため、吸着力が大きかった。しかし、磁石が同極対向した場合の反発力は1極同士のため、吸着時に比べ反発力は弱く、同等とは言えなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
容器本体2と蓋体3を蝶番4により開閉自在に蝶着し、容器本体2若しくは蓋体3のどちらか一方に、押しボタン状のスライド部材6を前後摺動自在に配置する。このスライド部材6と、スライド部材6を設けない蓋体3、若しくは容器本体2のどちらか一方には引掛け部351を、他方には掛合突部622を設ける。この引掛け部351及び掛合突部622は、スライド部材6の前進端の時にかんぬき状に引掛かり係合して容器本体2と蓋体3を閉じた状態で保持し、後退端の時にその引っ掛かり係合が解除される。前記スライド部材6と、スライド部材6を設けない蓋体3、若しくは容器本体2それぞれには、同極を向き合わせた磁石7,9を配置する。このスライド部材6の磁石7は、スライド部材6が前進端から後退端の間のどの位置に於いても、スライド部材6を設けない蓋体3、若しくは容器本体2の磁石9よりもスライド部材6の前端面61方向にずれている。このそれぞれの磁石7,9のずれた反発力Pがスライド部材6を前端面61方向に押す応力F1、及び引っ掛かり係合が解除した蓋体3を押し上げる応力F3となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように、引掛け部351と掛合突部622によるかんぬき状の引っ掛かり係合と、スライド部材6と、スライド部材6を設けない蓋体3、若しくは容器本体2のどちらか一方に配置した磁石7,9の反発力を併用する事によって、スライド係合が蓋体3の閉蓋、開放を、磁石7,9の反発力が蓋体3の閉蓋維持(スライド部材6に引っ掛かり係合方向への押圧)、開放維持(蓋体の浮き上がり)をそれぞれ分担して行っている。その結果、特許文献1~3にある様な、磁石による蓋体の係止機構に比べて、蓋体の閉蓋強度、確実性、操作性を向上させながら、磁石の数を最小限の1対(2個)に減らし、磁石コストを削減している。
【0014】
また、この引掛け部351と掛合突部622によるかんぬき状の引っ掛かり係合は、スライド部材6の前後摺動による引掛け部351と掛合突部622の引っ掛かりであるため、アンダーカット係合のような乗り越え係合ではなく、乗り越え係合時の衝撃や歪みが発生せず、容器本体2内の収容物に悪影響を与えない。
【0015】
また、本発明の磁石7,9は、同じ極を対向させ、その反発力Pを利用して蓋体3の閉蓋維持(スライド部材6に対する引掛かり係合方向への押圧)と開放維持(蓋体3の浮き上がり)に利用している。つまり、磁石7,9の反発力は、反力として磁石7,9を押し付ける方向にも働くため、磁石7,9の一方の極部分を露出させて止着したとしても、磁石7,9に抜け方向の力が加わらず、磁石7,9の抜け止めのための特別な構造が必要なく、圧入などの簡単な方法で止着可能で、容器構造を単純化、組み立てコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、蓋体を閉じた状態の側断面図である。
【
図2】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、蓋体の係止を解除した状態の側断面図である。
【
図3】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、開蓋操作時の説明図であり、
図1の時の主要部位の状態説明図である。
【
図4】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、開蓋操作時の説明図であり、
図3の状態よりスライド部材を押圧した時の主要部位の状態説明図である。
【
図5】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、開蓋操作時の説明図であり、
図4の状態よりスライド部材の押圧を止めた時の主要部位の状態説明図である。
【
図6】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、閉蓋操作時の説明図であり、蓋体を閉じた時の主要部位の状態説明図である。
【
図7】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、閉蓋操作時の説明図であり、蓋体を閉じて蓋体のフックをスライド部材に当接させた時の主要部位の状態説明図である。
【
図8】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、蓋体を開いた状態の斜視図である。
【
図9】本発明実施例のコンパクトケースに於ける蓋体の係止機構の、容器本体とスライド部材の分解斜視図である。
【実施例0017】
本発明実施例を図によって説明する。本発明実施例の蓋体の係止機構を備えたコンパクトケースは、
図7に示したように容器本体2と蓋体3が蝶番4により開閉自在に蝶着した構成をしている。
図1及び
図2は本発明実施例の蓋体の係止機構を備えたコンパクトケースの側断面図であり、
図8及び
図9は本発明実施例の蓋体の係止機構を備えたコンパクトケースの斜視図及び分解斜視図である。本発明の実施例として、白粉、ファンデーションなどの粉状や口紅などの練り状の化粧料を収容する化粧用のコンパクトケースについて説明する。明細書中、引っ掛かり係合とは引掛け部351と掛合突部622が、摺動によってかんぬき状に引っ掛かる事で、アンダーカット係合などの変形を伴う係合ではない。
【0018】
容器本体2の上面21には、白粉、ファンデーションなどの粉状や口紅などの練り状の化粧料1を充填した中皿5を収納する収納凹所22を設けている。容器本体2の後端23には、蝶着凹部24を設けている。容器本体2の前端には、前端面25及び上面21に開溝した凹溝部26を設けている。この凹溝部26の両内側壁261には、凸部262を突設している。
【0019】
この凹溝部26には、スライド部材6を前後摺動自在に内装している。このスライド部材6の前端面61及び上面62は凹溝部26より露出している。このスライド部材6の両側壁63には、前記容器本体2の凹溝部26内の凸部262が摺動可能に係合するガイド溝631を刻設している。このガイド溝631内には、容器本体2の凸部262が当接するストッパー部632を突設している。その結果、前記スライド部材6は脱落不能となり、前進端は前記凸部262がストッパー部632に当接するまで、後退端は前記スライド部材6の後端64が凹溝部26の奥内壁263に当接するまでの間で前後摺動規制されている。なお、この凸部262とガイド溝631は、ガイド溝631内のストッパー部632が凸部262を無理やり乗り越え係合させている(
図9参照)。
【0020】
尚、この凹溝部26の凸部262がスライド部材6のストッパー部632に当接した時、つまりスライド部材6の前進端の位置で、前記スライド部材6の前端面61は、容器本体2の前端面25より若干突出して、スライド部材6を押圧操作可能になっている。前記スライド部材6の上面62の中央部分には、係合穴621を穿設している。この係合穴621の後端64がわ上部側壁には、掛合突部622を突設している。更に、スライド部材6の、係合穴621より前端面61がわ上面62には、上下面2極着磁した磁石7を、一方の極を上面62に向け止着している(
図8参照)。
【0021】
蓋体3の下面31後端32には、容器本体2の蝶着凹部24に侵入する蝶番片33を設けている。この容器本体2の蝶着凹部24と蓋体3の蝶番片33を蝶着して、容器本体2と蓋体3を開閉自在に連結する蝶番4を構成している。更に、蓋体3の下面31、容器本体2の収納凹所22と相対した位置には、鏡8を貼着している。
【0022】
蓋体3の下面31先端34がわには、フック35が垂下している。このフック35の後端32がわ下端側壁には、引掛け部351を突設している。このフック35および引掛け部351は、前記スライド部材6が後退端の位置、つまりスライド部材6の後端64が容器本体2の凹溝部26の奥内壁263に当接した時、係合穴621内に侵入可能となる。また、前記スライド部材6が前進端の位置、つまり容器本体2の凹溝部26の凸部262がスライド部材6のストッパー部632に当接した時、前記フック35の引掛け部351が係合穴621の掛合突部622に引っ掛かり係合して、蓋体3が閉じた状態で維持されるようになっている。更にフック35の下面は、傾斜したカム面352となっている。このカム面352は、蓋体3を閉じる際、前記スライド部材6の掛合突部622の縁部に当接して、スライド部材6を後退端の位置付近までスライドさせ、フック35が係合穴621内に突入できるようにしている。
【0023】
更に、蓋体3の下面31、フック35よりも先端34がわには、上下面2極着磁した磁石9を、一方の極を下面31に向け止着している。この磁石9の下面31がわの極性は、スライド部材6の磁石7の上面62がわの極性と同極性であり、蓋体3を閉じたとき、磁石同士7,9(異極同士)が向き合い、反発力が生じるようになっている。この磁石7,9は、前記スライド部材6が前進端の時(
図1参照)、蓋体3の磁石9に対して、スライド部材6の磁石7が蓋体3の先端34方向にずれている。同様に、スライド部材6が後退端の位置の時(
図2参照)、蓋体3の磁石9に対して、スライド部材7の磁石7が蓋体3の先端34方向にずれている。ただし、このずれの量は、スライド部材7が前進端の位置の時の方が大きくなっている。
【0024】
本発明実施例は以上構成である。次に、本発明実施例に記載した蓋体の係止機構を備えたコンパクトケースの、蓋体3の開閉操作について図によって説明する。
図3~
図5は、蓋体3の開蓋操作時の主要部位の状態説明図である。
図6~
図7は、蓋体3の閉蓋操作時の主要部位の状態説明図である。図中、Pは磁石7,9の反発力を示し、F1~F4は、スライド部材6若しくは蓋体3にかかる応力の方向を示す。
【0025】
図3は、蓋体3が閉じた状態を示す。この時、スライド部材6は前進端の位置に係止しており、蓋体3のフック35がスライド部材6の係合穴621に侵入し、フック35の引掛け部351が係合穴621の掛合突部622にかんぬき状に引っ掛かり係合して、閉蓋状態が維持されている。このスライド部材6の前端面61は、容器本体2の前端面25より若干突出している。この時、スライド部材6の磁石7は、蓋体3の磁石9よりも前端面25,61方向にずれて相対しているため、斜め方向の反発力Pが生じる。しかし、蓋体3のフック35の引掛け部351がスライド部材6の掛合突部622にかんぬき状に引っ掛かり係合して反発力P方向に移動できない状態になっているため、反発力Pはスライド部材6をF1方向に移動させる。このF1方向の応力は、スライド部材6を前進端方向に押しており、蓋体3のフック35の引掛け部351とスライド部材6の係合穴621の掛合突部622の引っ掛かり係合をより強固なものとする。
【0026】
図4は、
図3の状態より、スライド部材6の前端面61をF2方向に押圧して、スライド部材6の後退端まで、スライド部材6の後端64が容器本体2の凹溝部26の奥内壁263に当接するまで摺動させた状態を示す。この時、スライド部材6の磁石7は、蓋体3の磁石9よりも前端面25,61方向にずれて相対して斜め方向の反発力Pが生じる。同時に、スライド部材6の後退端の状態では、蓋体4のフック35の引掛け部351とスライド部材6の係合穴621の掛合突部622の引っ掛かり係合が外れている。このスライド部材6が後退端に押圧された状態では、反発力Pは蓋体3をF3方向に押し上げ、蓋体3を若干浮き上げさせる。この浮き上がりにより蓋体3を開放し易くする。
【0027】
図5は、
図4の状態より、スライド部材6の押圧を止めた状態を示す。この時、スライド部材6の磁石7と蓋体3の磁石9のずれによる斜め方向の反発力Pは、蓋体3をF3方向に若干浮き上げさせたまま、スライド部材6をF1方向に移動させる。そして、スライド部材6は、スライド部材6の前進端まで、スライド部材6の前端面61が容器本体2の前端面25と同一面か若干突出している状態まで摺動する。この状態より蓋体3を開くと、スライド部材6と蓋体3の磁石7,9は、お互いの磁力の圏内から外れ反発力が消滅し、スライド部材6に働いていた応力が消え、スライド部材6は自由に摺動できるようになる(
図7参照)。
【0028】
図6は、蓋体3を開放した
図7の状態より再度F4方向に蓋体3を閉じた状態を示す。蓋体3が閉じて、スライド部材6と蓋体3の磁石7,9の磁力圏内に入ると、スライド部材6と蓋体3の磁石7,9に斜め方向の反発力Pが生じ、スライド部材6をF1方向に移動させ、スライド部材6の前進端の位置まで、スライド部材6の前端面61が容器本体2の前端面25より若干突出している状態まで摺動させる。つまり、蓋体3を閉じると、スライド部材6がどの位置にいようとも、スライド部材6と蓋体3の磁石7,9の反発力Pにより、必ずスライド部材6を前進端の位置まで移動させる。
【0029】
図7は、
図6の状態より更に蓋体3を閉蓋方向F4に押し下げた状態を示す。蓋体3のフック35下面のカム面352が、スライド部材6の係合穴621の掛合突部622縁部に当接している。この状態より更に蓋体3を閉蓋方向F4に押し下げると、この応力F4はカム面352により、スライド部材6を磁石7,9の反発力Pに抗して後端64方向F2に摺動させる。同時に、フック35がスライド部材6の係合穴621内に侵入し、蓋体3を閉じることができる(
図3参照)。この時、蓋体3のフック35のカム面352はスライド部材6に当接しなくなり、スライド部材6は、スライド部材6と蓋体3の磁石7,9の反発力PによりF1方向に摺動し、前進端にまで移動すると同時に、フック35の引掛け部351がスライド部材6の掛合突部622にかんぬき状に引っ掛かり係合し、蓋体3を閉蓋状態で維持する。
以上、本発明実施例に於いては、収容物が化粧料1である化粧用コンパクトケースについて説明したが、本発明は化粧品容器に限定されるものではない。つまり、容器本体2と蓋体3が蝶番4により開閉自在に蝶着したコンパクトケースであれば実施可能で、収容物は自由である。
また、実施例に於いて、スライド部材6を容器本体2に設けたが、蓋体3に設ける事もできる。また実施例に於いて、スライド部材6を内装する凹溝部26を容器本体2の前端面25から上面21にかけて設け、スライド部材6の前端面61を容器本体2の前面壁25に突出させたが、凹溝部26を容器本体2の側面から上面21かけて設け、スライド部材6の前端面61を容器本体2の側面に突出させる事もできる。また、スライド部材6が前進端の時、スライド部材6の前端面61が容器本体2の前端面25より若干突出した構成を説明したが、スライド部材6が前進端の時前端面61を押圧操作できれば、スライド部材6の前端面61と容器本体2の前端面25が同一面であっても良く、容器本体2の前端面25のスライド部材6の周囲に窪みを設ければ、スライド部材6の前端面61が容器本体2の前端面25より若干引っ込んでいても良い。
また、実施例に於いては、容器本体2と蓋体3がかんぬき状に引っ掛かり係合して閉蓋する引掛け部351を有したフック35を蓋体3に、掛合突部622を有した係合穴621を容器本体2に設けたが、引掛け部351を有したフック35及び掛合突部622を有した係合穴621の配置を、容器本体2及び蓋体3で逆にすることもできる。同様に、スライド部材6を後端64方向に摺動させるカム面352は、実施例に於いてはフック35に設けていたが、係合穴621の縁部に設ける事もできる。
スライド部材6の磁石7と蓋体3の磁石9は、同極を向かい合わせて設置すればよく、N極同士でも、S極同士でもよい。磁石7,9の着磁方法も実施例で説明した上下面2極着磁ばかりでなく、片面2極着磁などでもスライド部材6の摺動軸に対して直交するように、異極が向かい合うように配置することにより実施できる。また磁石7,9の形状も板状でも柱状でも良い。なお、磁石7,9は、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石など、一般的な磁石を利用可能である。
実施例中で説明したが、磁石7,9の反発力Pの制御は、向かい合う磁石7,9のずれの方向により、反発力Pの向きを設定でき、向かい合う磁石7,9のずれの量により、基準となる磁石の軸線からの傾き(反発力Pの方向)を設定でき、向かい合う磁石7,9の距離により反発力Pの強さを設定できる。そして、摺動する部材に設けられた磁石(本発明実施例に於いてはスライド部材6に設けられた磁石7)が前進端及び後退端の位置で向かい合う磁石(本発明実施例に於いては蓋体3の磁石9)に対するずれの方向が同じであれば、反発力Pを絶えず一方向に効かすことができ、例えば摺動部材を絶えず原点に弾発する戻しスプリングの様な使い方をすることができる。