(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163583
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】電気錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074568
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福永 和之
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA02
2E250AA05
2E250BB08
2E250CC20
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
(57)【要約】
【課題】簡単にドアの解錠を実行できる電気錠装置を提供する。
【解決手段】指向性アンテナ12は、ユーザ利用物2の室外に指向性を有する通信エリアE(指向性通信エリアEa)を形成するとともに、固有のIDが登録された端末3と無線通信する。電気錠装置10は、端末3が指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaに進入した場合に、端末3を認証する。電気錠装置10は、ドア6が施錠状態の場合に、正規の端末3が指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaに進入したことを検知すると、ドア6を自動で解錠に切り替える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが使用するユーザ利用物のドアに設けられた電気錠の作動を制御する電気錠装置であって、
前記ユーザ利用物の室外に指向性を有する通信エリアを形成するとともに、固有のIDが登録された端末と無線通信する指向性アンテナと、
前記端末が前記指向性アンテナの前記通信エリアに進入した場合に、前記端末を認証する認証部と、
前記ドアが施錠状態の場合に、正規の前記端末が前記指向性アンテナの前記通信エリアに進入したことを検知すると、前記ドアを自動で解錠に切り替える錠制御部と
を備える電気錠装置。
【請求項2】
前記ドアによって隔てられた室内外の両方を通信エリアとするとともに、前記端末と無線通信する広域アンテナを備え、
前記錠制御部は、前記指向性アンテナによる前記端末の検知有無と、前記広域アンテナによる前記端末の検知有無とに基づき、前記ドアの解錠を制御する
請求項1に記載の電気錠装置。
【請求項3】
前記錠制御部は、前記指向性アンテナの前記通信エリアと、前記広域アンテナの前記通信エリアと、の両方から前記端末が外れたことを検知した場合、前記ドアを自動で施錠する
請求項2に記載の電気錠装置。
【請求項4】
前記指向性アンテナとしての室外用指向性アンテナと、
前記端末と無線通信するために、前記ユーザ利用物の室内に指向性を有した通信エリアを形成する室内用指向性アンテナとを備え、
前記室内用指向性アンテナは、エリアが室外に漏れない前記通信エリアを形成し、
前記錠制御部は、前記広域アンテナによる前記端末の検知有無と、前記室外用指向性アンテナによる前記端末の検知有無と、前記室内用指向性アンテナによる前記端末の検知有無とに基づき、前記ドアの施解錠を制御する
請求項2に記載の電気錠装置。
【請求項5】
前記指向性アンテナ及び前記広域アンテナは、同一の通信規格の電波を送受信する
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の電気錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、建物のドアを施解錠する施解錠システムが周知である。この施解錠システムは、ドアの屋外側に赤外線センサを備える。そして、電子キーのIDが認証されている状況で、赤外線センサで居住者の動作が検知された場合に、施錠装置が施錠又は解錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の場合、ドアを解錠するときに、赤外線センサの検知範囲に手などの身体を差し出す動きが必要である。よって、身体の一部を赤外線センサの検知範囲に差し出す動きが手間に感じてしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する電気錠装置は、ユーザが使用するユーザ利用物のドアに設けられた電気錠の作動を制御する構成であって、前記ユーザ利用物の室外に指向性を有する通信エリアを形成するとともに、固有のIDが登録された端末と無線通信する指向性アンテナと、前記端末が前記指向性アンテナの前記通信エリアに進入した場合に、前記端末を認証する認証部と、前記ドアが施錠状態の場合に、正規の前記端末が前記指向性アンテナの前記通信エリアに進入したことを検知すると、前記ドアを自動で解錠に切り替える錠制御部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、簡単にドアの解錠を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態のキーシステム及び電気錠装置の構成図である。
【
図2】各アンテナが形成する通信エリアを横から見た説明図である。
【
図3】各アンテナが形成する通信エリアを上から見た説明図である。
【
図7】室内で端末がドアに近づいたときの概略図である。
【
図8】第2実施形態において、各アンテナが形成する通信エリアを上から見た概略図である。
【
図11】他の実施形態の電気錠装置の構成を示す説明図である。
【
図12】他の実施形態の電気錠装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態を説明する。
(キーシステム1の概説)
図1に示すように、ユーザ利用物2は、端末3を無線通信によって認証するキーシステム1を備える。キーシステム1は、端末3の無線による認証結果に基づき、ユーザ利用物2の機器4の作動を制御する。ユーザ利用物2は、例えば、住宅5である。機器4は、例えば、住宅5の室内外を切り分けるドア6である。
【0009】
キーシステム1は、端末3としての電子キーを無線により認証するスマートシステム、又は端末3としてモバイル端末を使用するデジタルキーシステムのいずれでもよい。スマートシステムは、ユーザ利用物2からの通信を契機に電子キーを無線によって認証する。スマートシステムの場合、ユーザ利用物2から電子キーの通信にLF(Low Frequency)帯の電波が使用されるとともに、電子キーからユーザ利用物2の通信にUHF(Ultra High Frequency)帯の電波が使用される。
【0010】
デジタルキーシステムは、モバイル端末にデジタルキーを登録することによって、モバイル端末をユーザ利用物2のキーとして使用する。デジタルキーは、例えば、サーバからのダウンロード、マスターキーからの無線による取得、コード情報の画像読み取りなどの各種方式によって、モバイル端末にダウンロードされる。デジタルキーは、例えば、使用が1度のみ、或いは、一定期間のみ許可されたワンタイムキーである。
【0011】
(電気錠装置10の概説)
キーシステム1は、端末3との間の無線による認証に基づきドア6の施解錠を制御する電気錠装置10を備える。電気錠装置10は、ドア6の施解錠を制御するコントローラ11を備える。コントローラ11は、例えば、ユーザ利用物2に設けられる。電気錠装置10は、特定の方向を通信エリアE(指向性通信エリアEa)とする指向性アンテナ12を備える。指向性アンテナ12は、コントローラ11に接続されている。電気錠装置10は、ドア6によって隔てられた室内外の両方を通信エリアE(広域通信エリアEb)とする広域アンテナ13を備える。広域アンテナ13は、コントローラ11に接続されている。
【0012】
電気錠装置10は、端末3の認証を実行する認証部14を備える。認証部14は、例えば、コントローラ11に設けられている。端末3は、キーシステム1の認証で使用される固有の認証情報Didがメモリ(図示略)に登録されている。認証情報Didは、例えば、各端末3に登録された固有のIDコードや、暗号通信で使用する暗号鍵を含む。認証部14は、ユーザ利用物2に設けられた指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の少なくとも一方を介して端末3と通信することにより、端末3の認証情報Didを認証する。
【0013】
端末3及び電気錠装置10の間の通信は、例えば、近距離無線通信である。近距離無線通信は、例えば、PAN(Personal Area Network:パーソナルエリアネットワーク)通信、又は、短距離無線通信のいずれでもよい。パーソナルエリアネットワーク通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信、UWB(Ultra Wide Band)通信、Wi-Fi(登録商標)通信などがある。また、ブルートゥース通信は、例えば、BLE(Bluetooth Low Energy)である。短距離無線通信は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)などがある。
【0014】
電気錠装置10は、認証部14の認証結果に基づき電気錠15を制御する錠制御部16を備える。錠制御部16は、例えば、コントローラ11に設けられている。錠制御部16は、ドア6が施錠状態の場合に、正規の端末3が指向性アンテナ12の通信エリアE(指向性通信エリアEa)に進入したことを検知すると、ドア6を自動で解錠に切り替える。本例の錠制御部16は、指向性アンテナ12による端末3の検知有無と、広域アンテナ13による端末3の検知有無とに基づき、ドア6の施解錠を制御する。
【0015】
(各アンテナの通信エリアEの概要)
図2に示すように、広域アンテナ13(電気錠装置10)は、例えば、ドア6の室内ノブ19の内部に配置されている。広域アンテナ13は、例えば、室内ノブ19を中心にして、室内外の両方をエリアとする広域通信エリアEbを形成する。このように、広域アンテナ13は、ドア6付近において、相対的に広い通信エリアEを形成する。指向性アンテナ12は、例えば、ドア6の室外上部に配置されている。本例の指向性アンテナ12は、ドア6の上端から地面に向かって広がっていく指向性通信エリアEaを形成する。
【0016】
近距離無線通信(一例は、ブルートゥース)は、例えば、周波数ホッピングが使用されている。周波数ホッピングは、例えば、所定の周波数帯域の中から、通信に使用する帯域を高速で切り替えながら通信する方式である。よって、指向性通信エリアEa及び広域通信エリアEbが重なる重複エリアに端末3が位置していても、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の各々と端末3とは通信が可能である。
【0017】
図3に示すように、指向性アンテナ12は、ドア6の上端から地面に向かって円状(楕円状)に広がる指向性通信エリアEaを形成する。このため、地上のユーザ付近においては、広域アンテナ13の広域通信エリアEbよりも、指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaの方が、エリアが大きくなっている。このように、地上のユーザ付近には、指向性通信エリアEaのみが形成される。
【0018】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(室外においてドア6に近づいた場合)
図5に、近距離無線通信の通信手順を図示する。ステップ101に示すように、認証部14は、自機の通信に係る情報を知らせるアドバタイズを、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13から繰り返し送信する。アドバタイズは、例えば、パケットデータの一種であって、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13から周期的に送信される。
【0019】
図4に示すように、ドア6が施錠状態のとき、端末3を所持したユーザが室外においてドア6に近づいたとする。このとき、端末3は、まず指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaに進入する。すなわち、端末3は、指向性アンテナ12のみ電波の送受信が可能な指向性通信エリアEaに進入する。端末3は、指向性通信エリアEaに進入すると、指向性アンテナ12から送信されるアドバタイズを受信する。
【0020】
図5に示す通り、ステップ102において、端末3は、指向性アンテナ12から送信されるアドバタイズを受信すると、スキャン処理を実行する。なお、端末3は、例えば、アドバタイズを受信したときの受信信号強度が規定値以上となった場合に、スキャン処理を開始する。端末3は、スキャン処理後、近距離無線通信の詳細に係る提供の要求として、接続要求を指向性アンテナ12に送信する。
【0021】
ステップ103において、端末3及び認証部14は、アドバタイズ及び接続要求のやり取りを実行すると、近距離無線通信が接続された状態、すなわち通信接続の状態に移行する。
【0022】
ステップ104において、認証部14は、近距離無線通信が通信接続の状態に移行すると、端末3の認証を実行する。本例の場合、例えば、端末3は、認証部14からの要求に応答して、自身に登録されている認証情報Didを、近距離無線通信によって認証部14に送信する。認証部14は、端末3から認証情報Didを受信すると、認証情報Didを認証する。認証部14は、認証情報Didの認証が成立すれば、ユーザ利用物2の利用を許可する。一方、認証部14は、認証情報Didの認証が不成立であれば、ユーザ利用物2の利用を許可しない。
【0023】
ステップ105において、端末3及び認証部14は、認証情報Didの認証が成立した場合、認証完了状態となる。認証完了状態とは、例えば、端末3及び認証部14の双方が互いに共通のセッション鍵やIDコードを知る状態をいう。これにより、ユーザ利用物2の利用、具体的にはドア6の施解錠操作などが可能となる。
【0024】
ステップ106において、端末3及び認証部14は、認証完了状態に移行後、近距離無線通信の確立が維持されているか否かの確認の通信を実行する。本例の場合、端末3及び認証部14の各々は、所定の周期の間隔(コネクションインターバル)で周期電波Stを送信し、その後、この周期電波Stに対する応答を受信できるか否かを確認することにより、通信確立が維持されているか否かを監視する。すなわち、端末3が所定の周期間隔で周期電波Stを送信し、その後、この周期電波Stに対する応答を受信できれば、通信確立が維持されていると判断する。そして、同様の処理を認証部14も実行する。
【0025】
端末3は、自身が送信する周期電波Stに対する応答を指向性アンテナ12から受信できなくなると、通信を切断する。また、認証部14は、自身が送信する周期電波Stに対する応答を端末3から受信できなくなると、通信を切断する。
【0026】
図4に示す通り、例えば、指向性アンテナ12から送信したアドバタイズで端末3が認証完了状態となった場合、錠制御部16は、指向性アンテナ12で端末3を検知した状態となる。すなわち、錠制御部16は、住宅5の室外において端末3がドア6の近距離に位置したと判断する。なお、このときは、広域アンテナ13による端末3の検知結果は問わない。
【0027】
錠制御部16は、ドア6が施錠状態の場合に、指向性アンテナ12で端末3を検知すると、ドア6の解錠を指示するドア解錠要求を電気錠15に出力する。電気錠15は、ドア解錠要求を入力すると、ドア6を解錠する。これにより、端末3を所持したユーザが施錠状態のドア6に近づいただけで、ドア6を解錠することが可能となる。よって、ドア6の手ぶら解錠が可能となる。
【0028】
なお、端末3が広域アンテナ13の広域通信エリアEbに進入したときは、端末3が指向性通信エリアEaに進入したときと同様の処理(ステップ101~ステップ106の処理)が実行される。具体的には、指向性通信エリアEa及び広域通信エリアEbが重なる重複エリアに端末3が進入したときも、端末3が指向性通信エリアEaに進入したときと同様の処理が実行される。このとき、端末3は、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の両方と通信するが、周波数ホッピングによって、どちらのアンテナとも通信が可能である。
【0029】
(室外においてドア6から離れた場合)
図6に示すように、ドア6が解錠状態のとき、端末3を所持したユーザが室外においてドア6から離れたとする。錠制御部16は、広域アンテナ13のアドバタイズで端末3が認証完了状態になった場合、端末3が広域通信エリアEbに位置すると判断する。このように、端末3がドア6の近くに位置する場合、端末3は、広域通信エリアEb内に位置するため、広域アンテナ13から送信されたアドバタイズで認証完了状態に移行する。なお、これは、端末3が指向性通信エリアEaに位置するときも同様である。
【0030】
端末3がドア6から離れていく場合、端末3をアンテナで検知する状態は、例えば、広域アンテナ13及び指向性アンテナ12の両方で端末3を検知する状態、指向性アンテナ12のみで端末3を検知する状態、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の両方とも端末3を検知しない状態へ順に切り替わる。
【0031】
錠制御部16は、ドア6が解錠状態の場合、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の両方で端末3を検知しない状態となると、ドア6の施錠を指示するドア施錠要求を電気錠15に出力する。すなわち、錠制御部16は、ドア6が解錠状態のとき、指向性通信エリアEaと広域通信エリアEbとの両方から端末3が外れたことを検知すると、住宅5の室外において端末3がドア6の遠距離に位置したと判断する。
【0032】
錠制御部16は、ドア6が解錠状態のとき、指向性通信エリアEa及び広域通信エリアEbの両方から端末3が外れたことを検知すると、電気錠15にドア施錠要求を出力する。電気錠15は、ドア施錠要求を入力すると、ドア6を施錠する。これにより、端末3を所持したユーザがドア6から離れただけで、ドア6を施錠することが可能となる。よって、ドア6の手ぶら施錠が可能となる。
【0033】
(室内においてドア6に近づいた場合)
図7に示すように、ドア6が施錠状態のときに、端末3を所持したユーザが室内においてドア6に近づいたとする。このとき、端末3は、広域アンテナ13で検知されるものの、指向性アンテナ12では検知されない。すなわち、錠制御部16は、広域アンテナ13のアドバタイズで端末3と認証完了状態となるものの、指向性アンテナ12では端末3を検知できないため、指向性アンテナ12を介した端末3の認証が認証完了状態に移行しない。
【0034】
これにより、錠制御部16は、広域アンテナ13で端末3を検知するものの指向性アンテナ12では端末3を検知しないため、電気錠15にドア解錠要求を出力しない。このため、ドア6が施錠状態のとき、端末3を所持したユーザがドア6に近づいたとしても、手ぶら解錠が実行されない。よって、ユーザが意図せずにドア6が解錠されてしまうことがない。
【0035】
(実施形態の効果)
上記実施形態の電気錠装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1―1)電気錠装置10は、ユーザが使用するユーザ利用物2のドア6に設けられた電気錠15の作動を制御する。電気錠装置10は、指向性アンテナ12、認証部14、及び錠制御部16を備える。指向性アンテナ12は、ユーザ利用物2の室外に指向性を有する通信エリアE(指向性通信エリアEa)を形成するとともに、固有のIDが登録された端末3と無線通信する。認証部14は、端末3が指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaに進入した場合に、端末3を認証する。錠制御部16は、ドア6が施錠状態の場合に、正規の端末3が指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaに進入したことを検知すると、ドア6を自動で解錠に切り替える。
【0036】
本構成によれば、指向性アンテナ12は、通信の範囲を限定しつつも、ある程度の大きさをもった指向性通信エリアEaを形成する。これにより、ユーザがドア6に近づく過程で指向性通信エリアEa内に入ったとき、これを指向性アンテナ12で検知する可能となる。このため、ユーザに特別な操作を別途課すことなく、ユーザが指向性通信エリアEa内に単に入るだけで、ドア6を解錠させることが可能となる。よって、簡単にドア6の解錠を実行できる。
【0037】
(1―2)電気錠装置10は、広域アンテナ13を備える。広域アンテナ13は、ドア6によって隔てられた室内外の両方を通信エリアE(広域通信エリアEb)とするとともに、端末3と無線通信する。錠制御部16は、指向性アンテナ12による端末3の検知有無と、広域アンテナ13による端末3の検知有無とに基づき、ドア6の解錠を制御する。この構成によれば、2つのアンテナを用いて端末3の有無を検知するので、端末3の有無を精度よく検知することが可能となる。よって、ドア解錠の精度向上に寄与する。
【0038】
(1―3)錠制御部16は、指向性アンテナ12の指向性通信エリアEaと、広域アンテナ13の広域通信エリアEbと、の両方から端末3が外れたことを検知した場合、ドア6を自動で施錠する。この構成によれば、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の両方の通信エリアEから端末3が外れると、ドア6が施錠に切り替えられる。このため、端末3を所持したユーザがドア6から離れる過程において、ドア6が自動で施錠される。よって、簡単にドア6の施錠を実行できる。
【0039】
(1―4)指向性アンテナ12及び広域アンテナ13は、同一の通信規格(本例は、ブルートゥース)の電波を送受信する。この構成によれば、アンテナ種類を複数用意する必要がないため、装置構成の簡素化に寄与する。
【0040】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態の指向性アンテナ12を室内外に配置した実施例である。よって、第1実施形態と同一部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0041】
(電気錠装置10の概説)
図8に示すように、電気錠装置10は、室外用指向性アンテナ12a及び室内用指向性アンテナ12bを備える。室外用指向性アンテナ12aは、第1実施形態に記載した指向性アンテナ12と同様のアンテナである。よって、室外用指向性アンテナ12aは、第1実施形態に記載した指向性通信エリアEaと同様の室外指向性通信エリアEa1を形成する。
【0042】
室内用指向性アンテナ12bは、端末3と無線通信するために、ユーザ利用物2の室内に指向性を有した通信エリアE(室内指向性通信エリアEa2)を形成する。室内用指向性アンテナ12bは、例えば、ドア6の室内上部に配置されている。室内用指向性アンテナ12bは、ユーザ利用物2が住宅5の場合、室内においてドア6付近をエリアとするものの、壁22から室外に漏れないような室内指向性通信エリアEa2を形成する。室内指向性通信エリアEa2は、例えば、室内用指向性アンテナ12bの電波出力や向きを調整することにより、所望のエリアに設定される。
【0043】
錠制御部16は、広域アンテナ13による端末3の検知有無と、室外用指向性アンテナ12aによる端末3の検知有無と、室内用指向性アンテナ12bによる端末3の検知有無とに基づき、ドア6の施解錠を制御する。すなわち、錠制御部16は、室外用指向性アンテナ12a、室内用指向性アンテナ12b、及び広域アンテナ13の3つのアンテナによって端末3の位置を確認するとともに、その確認結果に基づきドア6の施解錠を制御する。
【0044】
次に、本実施形態の作用について説明する。
(室外においてドア6に近づいた場合)
図9に示すように、錠制御部16は、ドア6が施錠状態のとき、室外用指向性アンテナ12aで端末3を検知し、室内用指向性アンテナ12bで端末3を検知しなければ、ドア6を解錠する。すなわち、ドア6が施錠状態のとき、端末3が室外においてドア6に近づいて近距離となると、ドア6が解錠される。なお、このときは、広域アンテナ13による端末3の検知結果は問わない。よって、ドア6の手ぶら解錠が可能となる。
【0045】
(室内においてドア6に近づいた場合)
図10に示すように、錠制御部16は、ドア6が施錠状態のとき、室外用指向性アンテナ12aで端末3を検知しなければ、ドア6を施錠状態で維持する(状況(i)、状況(ii))。よって、ユーザが室内に位置するときに、端末3がドア6に近づいても、ドア6が解錠されてしまうことがない。なお、このときは、広域アンテナ13及び室内用指向性アンテナ12bによる端末3の検知結果は問わない。
【0046】
(室外においてドア6から離れた場合)
図10に示す通り、ユーザが室内からドア6を解錠して室外に出た場合、広域アンテナ13及び室外用指向性アンテナ12aで端末3が検知されるとともに、室内用指向性アンテナ12bでは端末3が検知されなくなる(状況(iii))。このとき、錠制御部16は、端末3が室外においてドア前に位置すると判断する。よって、錠制御部16は、まだドア6を施錠に切り替えることをしない。
【0047】
端末3を所持したユーザが室外においてドア6から離れたとする。錠制御部16は、ドア6が解錠状態のとき、広域アンテナ13及び室内用指向性アンテナ12bで端末3を検知せず、室外用指向性アンテナ12aで端末3を検知すると、ドア6を解錠から施錠に切り替える(状況(iv))。すなわち、端末3を所持したユーザが、室外においてドア6の近距離まで離れると、ドア6が自動で施錠される。よって、ドア6の手ぶら施錠が可能となる。
【0048】
端末3を所持したユーザが室外においてドア6から更に離れると、広域アンテナ13、室外用指向性アンテナ12a、及び室内用指向性アンテナ12bの全てで端末3が検知されなくなる(状況(v))。このとき、錠制御部16は、端末3が室外において遠距離に位置すると判断する。よって、錠制御部16は、ドア6を施錠状態のまま維持する。
【0049】
ところで、
図8に示す通り、端末3を所持したユーザが室外に出たとき、壁22を介して室外に漏れ出る広域アンテナ13の通信エリアE(誤判定エリアEc)に端末3が位置したとする。このときは、広域アンテナ13で端末3を検知するものの、室外用指向性アンテナ12a及び室内用指向性アンテナ12bでは端末3を検知しない状態となる(状況vi)。このため、検知状態が状況(iv)のようにならないため、ドア6を手ぶら施錠することができない。
【0050】
そこで、本例の場合は、室内用指向性アンテナ12bの通信エリアE(室内指向性通信エリアEa2)を、室外に漏れ出さないエリアに設定する。また、広域アンテナ13で端末3を検知するものの、室外用指向性アンテナ12a及び室内用指向性アンテナ12bで端末3を検知しない判定状態となったとき、端末3が室外に位置すると判定する。これにより、端末3が室外においてドア6付近から壁22の近くに移動しても、ドア6を手ぶら解錠することが可能となる。
【0051】
(実施形態の効果)
上記実施形態の電気錠装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
(2―1)電気錠装置10は、室外用指向性アンテナ12a及び室内用指向性アンテナ12bを備える。室内用指向性アンテナ12bは、端末3と無線通信するために、ユーザ利用物2の室内に指向性を有した通信エリアE(室内指向性通信エリアEa2)を形成する。室内用指向性アンテナ12bは、エリアが室外に漏れない室内指向性通信エリアEa2を形成する。錠制御部16は、広域アンテナ13による端末3の検知有無と、室外用指向性アンテナ12aによる端末3の検知有無と、室内用指向性アンテナ12bによる端末3の検知有無とに基づき、ドア6の施解錠を制御する。
【0052】
この構成によれば、2つのアンテナを用いて端末3の有無を検知するので、端末3の有無を精度よく検知することが可能となる。このため、例えば、端末3が室外に存在するにも関わらず、室外に位置すると判定されてしまうような判定結果を生じ難くすることが可能となる。よって、ドア解錠の精度向上に寄与する。
【0053】
(他の実施形態)
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・第2実施形態において、
図11に示すように、電気錠装置10のアンテナは、例えば、広域アンテナ13を省略して、室外用指向性アンテナ12a及び室内用指向性アンテナ12bのみとしてもよい。この場合、特定の方向を通信エリアEとした室内外アンテナを用いて端末3の位置を検知するので、精度よく端末3の位置を検知することができる。
【0055】
・各実施形態において、
図12に示すように、電気錠装置10のアンテナは、例えば、室外用指向性アンテナ12aのみとしてもよい。この場合、ドア6が施錠状態のとき、室外用指向性アンテナ12aで端末3を検知すれば、ドア6を解錠する。この場合も、手ぶら解錠が可能となる。また、アンテナ本数も少なく済む。
【0056】
・各実施形態において、電気錠装置10は、広域アンテナ13のみ室内ノブ19に収容され、それ以外がノブ外に配置されてもよい。
・各実施形態において、例えば、指向性アンテナ12をブルートゥースとし、広域アンテナ13をWi-Fi通信としてもよい。このように、指向性アンテナ12及び広域アンテナ13の各々は、通信方式が異なってもよい。
【0057】
・各実施形態において、指向性アンテナ12(室外用指向性アンテナ12a、室内用指向性アンテナ12b)は、住宅5の壁22や天井に埋め込まれた構成としてもよい。
・電気錠装置10のコントローラ11や広域アンテナ13は、例えば、ドア6の内部に配置されてもよい。
【0058】
・各実施形態において、広域アンテナ13、指向性アンテナ12の配置位置は、ドア6周辺であれば、どこでもよい。
・各実施形態において、ユーザ利用物2は、住宅5に限定されず、例えば、車両でもよい。
【0059】
・各実施形態において、ドア6は、住宅5や車両の室内外を区画するものに限定されず、例えば、収納部の開口を開閉するものでもよい。
・各実施形態において、認証部14及び錠制御部16は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0060】
・各実施形態において、認証部14及び錠制御部16は、独立したプロセッサから構成されてもよいし、機能の一部分が共用のプロセッサから構築されてもよい。このように、認証部14及び錠制御部16は、独立した機能ブロックに限らず、1つの機能ブロックから構成されてもよいし、一部分が共用された機能ブロックから構成されてもよい。
【0061】
・各実施形態において、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0062】
2…ユーザ利用物、3…端末、6…ドア、10…電気錠装置、12…指向性アンテナ、12a…室外用指向性アンテナ、12b…室内用指向性アンテナ、13…広域アンテナ、14…認証部、15…電気錠、16…錠制御部、E…通信エリア、Ea…指向性通信エリア、Ea1…室外指向性通信エリア、Ea2…室内指向性通信エリア、Eb…広域通信エリア。