(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163585
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20231102BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20231102BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20231102BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231102BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1347
G02F1/133 570
G09F9/00 313
G02F1/1335 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074571
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】加藤 恵介
(72)【発明者】
【氏名】田邉 侑大
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H193
2H291
5G435
【Fターム(参考)】
2H088EA47
2H088HA18
2H088JA04
2H088MA04
2H189AA22
2H189AA35
2H189HA16
2H189JA10
2H189LA17
2H189MA15
2H193ZB30
2H193ZE40
2H193ZP15
2H193ZQ11
2H193ZR20
2H291FA22X
2H291FA22Z
5G435AA01
5G435DD11
5G435FF05
5G435GG08
5G435GG21
(57)【要約】
【課題】鏡状態から透明状態(画像表示状態)へ変化する際の表示むらをなくした鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置を提供する。
【解決手段】鏡状態と画像表示とを切替可能な装置においては、画像表示ユニット1の前方側に液晶ミラーユニット2’を設ける。液晶ミラーユニット2’は、VA型液晶層21’と、VA型液晶層21’を挟む透明電極22、23と、第1の方向の透過軸を有して第1の直線偏光を透過して第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板24と、第2の方向の透過軸を有して第2の直線偏光を透過して第1の直線偏光を反射する反射型偏光板25とを有する。制御回路3は液晶ミラーユニット2’の透明電極間駆動電圧Vを垂直配向型液晶層21’をオフ状態から初期電圧Vsを経て垂直配向型液晶層21’をオン状態にする所定電圧Vmaxへ所定の掃引時間Tsで掃引して上昇させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を出射するための画像表示ユニットと、
前記画像表示ユニットの光出射側に設けられた液晶ミラーユニットと、
前記画像表示ユニット及び前記液晶ミラーユニットを制御する制御回路と
を具備する鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置であって、
前記液晶ミラーユニットは、
垂直配向型液晶層と、
前記垂直配向型液晶層の前記画像表示ユニットと反対側に設けられた第1の透明電極と、
前記垂直配向型液晶層の前記画像表示ユニット側に設けられた第2の透明電極と、
前記第1の透明電極の前記垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸を有し、第1の直線偏光を透過して該第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板と、
前記第2の透明電極の前記垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、前記第1の透過軸に直交する第2の透過軸を有し、前記第2の直線偏光を透過して前記第1の直線偏光を反射する反射型偏光板と
を具備し、
前記制御回路は前記液晶ミラーユニットの前記透明電極間駆動電圧を前記垂直配向型液晶層をオフ状態から初期電圧を経て前記垂直配向型液晶層をオン状態にする所定電圧へ所定の掃引時間で掃引して上昇させる装置。
【請求項2】
前記所定電圧は前記液晶ミラーユニットの光透過率が飽和したときの前記透明電極間駆動電圧の飽和電圧である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引は直線的である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引は2段階以上の多段階的である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引はパルス幅変調的であり、各パルスのオンデューティ比は前記所定電圧の印加に近い程大きくなっている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記初期電圧は前記飽和電圧の40%以下である請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記掃引時間は70ms以上1000ms以下である請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置に関する。鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置は車両用ルームミラーに用いられる(参照:特許文献1)。
【背景技術】
【0002】
図9は従来の鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置を示す図である(参照:特許文献2)。
【0003】
図9の鏡状態と画像表示とを切替可能な装置においては、画像表示ユニット1の前方側に液晶ミラーユニット2を設ける。液晶ミラーユニット2は、ツィストネマティック(TN)型液晶層21と、TN型液晶層21を挟む1対の透明電極22、23と、透明電極22側に設けられた水平方向の透過軸を有して第1の直線偏光を透過して第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板24と、透明電極23側に設けられた垂直方向の透過軸を有して第2の直線偏光を透過して第1の直線偏光を反射する反射型偏光板25とを有する。画像表示ユニット1及び液晶ミラーユニット2の透明電極間駆動電圧Vは制御回路3たとえばマイクロコンピュータによって制御される。
【0004】
図10は
図9の液晶ミラーユニット2の透明電極間駆動電圧Vのタイミング図である。
【0005】
図10に示すように、透明電極間駆動電圧Vがオン状態(V=Vmax)のときに、TN型液晶層21の偏光軸は変化しないので、外光うち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光は液晶層21を透過して反射型偏光板25によって反射され、さらに、反射された第1の直線偏光はTN型液晶層21を透過して吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2は鏡状態となる。尚、この場合、画像表示ユニット1は制御回路3によってオフとされる。
【0006】
他方、透明電極間駆動電圧Vがオフ状態(例えばV=0V)のときに、TN型液晶層21のTN型偏光軸は変化するので、外光うち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光はTN型液晶層21によって第2の直線偏光に変化され、さらに、変化された第2の直線偏光は反射型偏光板25を透過する。同様に、画像表示ユニット1から画像光は反射型偏光板25を透過して第2の直線偏光となり、TN型液晶層21によって第1の直線偏光に変換されて吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2は透明状態となる。尚、この場合、制御回路3によって画像表示ユニット1がオンとされると、画面表示状態たとえば白表示状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-138195号公報
【特許文献2】特開2003-202565号公報(特許第4348061号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9に示す鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置において、次のような課題がある。
【0009】
図11における鏡状態において、透明電極間駆動電圧Vが0Vの場合、
図12の(A)に示すごとく、液晶分子21aは垂直配向層上にラビング処理方向に沿ってほぼ垂直となっているが、液晶分子21aの垂直方向たとえばプレチルト角89.0°はラビング処理で配向膜表面に生じた凹凸であるラビング筋及び図示しないガラス基板の凹凸等に応じてゆらいでいる。このときの装置の状態の例は
図12の(A)に示される。
【0010】
次いで、透明電極間駆動電圧Vが0VからVmaxに急峻に立ち上がると、
図13の(B)に示すごとく、垂直方向の液晶分子21aはゆらいでいるので、強い電場によって一部の液晶分子21aはラビング処理で規定される方向と異なる方向に動くバックフロー現象によってばらばらの方向に不均一に倒れて液晶分子21b(透明状態I)となる領域が生じる。このときの装置の透明状態Iは
図13の(B)に示され、表示むらが生じていることが分かる。表示むらの間隔は30mm程度であり、その持続時間は1sec程度である。さらに、数秒たとえば1sec経過後には、最終的に、液晶分子21cとなり、ラビングで規定される配列方向となる。このときの装置の透明状態IIは
図13の(C)に示される。尚、
図13(B)の透明状態I及び
図13(C)の透明状態IIで表示している画像は、表示むらが確認しやすいよう全面を白色としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、画像光を出射するための画像表示ユニットと、画像表示ユニットの光出射側に設けられた液晶ミラーユニットと、画像表示ユニット及び液晶ミラーユニットを制御する制御回路とを具備する鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置であって、液晶ミラーユニットは、垂直配向型液晶層と、垂直配向型液晶層の画像表示ユニットと反対側に設けられた第1の透明電極と、垂直配向型液晶層の画像表示ユニット側に設けられた第2の透明電極と、第1の透明電極の垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸を有し、第1の直線偏光を透過して該第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板と、第2の透明電極の垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸に直交する第2の透過軸を有し、第2の直線偏光を透過して第1の直線偏光を反射する反射型偏光板とを具備し、制御回路は液晶ミラーユニットの透明電極間駆動電圧を垂直配向型液晶層をオフ状態から初期電圧を経て垂直配向型液晶層をオン状態にする所定電圧へ所定の掃引時間で掃引して上昇させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明電極間駆動電圧を垂直配向型液晶層をオフ状態から初期電圧を経て垂直配向型液晶層をオンとする所定電圧へ所定の掃引時間で掃引して上昇させるので、オフ状態とオン状態との間に過渡状態が生じ、この結果、垂直配光型液晶層の液晶分子は同一方向に均一に倒れ、表示むらがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1の液晶ミラーユニットの詳細な断面図である。
【
図3】
図1の液晶ミラーユニットの透明電極間駆動電圧のタイミング図である。
【
図4】
図3の透明電極間駆動電圧の設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図4の透明電極間飽和駆動電圧設定ステップ401に用いられる透明電極間駆動電圧/光透過率特性を示すグラフである。
【
図6】
図4の透明電極初期駆動電圧設定ステップ402に用いられる表である。
【
図7】
図4の掃引時間設定ステップ403に用いられる表である。
【
図8】
図3の透明電極間駆動電圧の変更例を示すタイミング図である。
【
図9】従来の鏡状態と画像表示状態との切替可能な装置を示す図である。
【
図10】
図9の透明電極間駆動電圧を示すタイミング図である。
【
図11】
図9の液晶層を垂直配向(VA)型とした場合の
図9の電極間駆動電圧を示すタイミング図である。
【
図12】
図9の従来の鏡状態の画像表示状態との切替可能な装置における課題を説明する図であって、(A)は鏡状態での液晶分子を示し、(B)は鏡状態→透明状態の遷移時の液晶分子を示す。
【
図13】
図11における鏡状態、透明状態I及び透明状態IIの表示例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明に係る鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置の実施の形態を示す図である。
【0015】
図1においては、
図9の液晶ミラーユニット2の代りに、液晶ミラーユニット2’を設け、液晶ミラーユニット2’において、ツイストネマティック(TN)型液晶層21の代りに、垂直配向(VA)型液晶層21’を設けてある。
【0016】
図2は
図1の液晶ミラーユニット2’の詳細な断面図である。
【0017】
図2に示すように、上側構造として、上側ガラス基板26、透明電極22、絶縁層27、上側垂直配向層28を設け、下側構造として、下側ガラス基板29、透明電極23、絶縁層30、下側垂直配向層31を設け、垂直配向型液晶層21’は絶縁層27、30及び絶縁層31及びスペーサ32によって支持される。尚、透明電極22、23は絶縁層27、30、31によって電気的に絶縁され、間隔がスペーサ32によって維持される。上側ガラス基板26の外側には、光学補償板33を介して吸収型偏光板24が設けられ、他方、下側ガラス基板29の外側には、反射型偏光板25が設けられる。また、上側垂直配向層28及び下側垂直配向層31の対向する各々の表面には、例えばアンチパラレルの方位にラビング処理が行われている。
【0018】
図3は
図1の液晶ミラーユニット2’の透明電極間駆動電圧のタイミング図である。
【0019】
図3においては、透明電極間駆動電圧Vは鏡状態から初期駆動電圧Vsを経て透明状態の飽和駆動電圧Vmaxへの上昇を掃引時間Tsで直線的に掃引するようにしてある。この場合、後述するように、飽和駆動電圧Vmax、初期駆動電圧Vs、掃引時間Tsは表示むらが発生しない値に設定される。
【0020】
時間t0~t1における透明電極間駆動電圧Vがローレベルのとき、VA型液晶層21’ を透過する偏光の方向は変化しない。従って、外光のうち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光は、VA型液晶層21’を透過して反射型偏光板25によって反射され、さらに反射された第1の直線偏光はVA型液晶層21’を透過して吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2’は鏡状態となる。また、この場合、画像表示ユニット1は制御回路3によってオフとされる。
【0021】
次に、時間t1からt2にかけて、透明電極間駆動電圧VがVsから掃引されてVmaxに上昇する。このとき、VA型液晶層21’の液晶分子長軸は比較的ゆっくり変化する。このとき、液晶層の全体としての液晶分子長軸はラビング処理方向となり、揺らぎにより異なる方位への傾きが生じた液晶分子も周囲の液晶分子の配向に沿った方位に配向する。つまり、VA型液晶層21’の液晶分子は垂直方向からラビング処理方向へ動いて倒れる。従って、装置の鏡状態から透明状態への切り替え時に表示むらが生じない。最終的に時間t2において、透明電極間駆動電圧VがVmaxとなり、VA型液晶層21’の液晶層2’の液晶分子長軸の変化が終わる。この結果、外光のうち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光はVA型液晶層21’によって偏光方向が変化し、さらに、方向が変化された偏光は反射型偏光板25を透過する。同様に、画像表示ユニット1からの画像光は反射型偏光板25を透過して第2の直線偏光となり、VA型液晶層21’によって偏光状態が変化し吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2は透明状態となる。尚、この場合、画像表示ユニット1がオンとされると、画像表示状態たとえば白表示状態となる。ここで液晶層にカイラル材をd/p=0.25程度に添加してある場合、Vmax下の液晶分子は透明電極間で90度程度のカイラルを生じ、TN型液晶層と同様の旋光性を示す。この場合、吸収型偏光板24と反射型偏光板25をクロスニコル配置とすることで、外光は吸収型偏光板24を透過し第1の直線偏光となり、VA型液晶層21’によって第2の直線偏光に変化される。また、画像光は反射型偏光板25を透過して第2の直線偏光となり、VA型液晶層21’によって第1の直線偏光に変換される。
【0022】
次に、
図3における透明電極間飽和駆動電圧Vmax、透明電極間初期駆動電圧Vs及び掃引時間Tsの設定について
図4を参照して説明する。
【0023】
始めに、ステップ401にて、透明電極間飽和駆動電圧Vmaxを設定する。透明電極間飽和駆動電圧Vmaxは液晶ミラーユニット2’の透明電極間駆動電圧/光透過率(V-T)特性を測定することによって設定する。
図1の液晶ミラーユニット2’のV-T特性として
図5に示すV-T特性が得られた。
図5から光透過率Tが飽和する透明電極間飽和駆動電圧Vmaxは10.5Vであり、そのときの飽和光透過率Tmaxは40.1%であった。尚、光透過率T=100%は測定系において液晶ミラーユニット2’を介さず得られる透過率とする。
【0024】
次に、ステップ402にて、透明電極間初期駆動電圧Vsを設定する。表示むらは約30mm間隔で観察されるので、表示エリア260mm×470mmのミニディスプレイ及び表示エリア60mm×260mmのルームミラーを用いてV=VsからV=Vmax=10.5Vへの過渡状態の表示むら外観を目視判定したところ、
図6に示す結果が得られた。この場合、掃引時間Tsは100msと固定した。この結果、表示むらが発生しないためには、透明電極間初期駆動電圧VsはVs=0~4.2V、つまりVs=0~0.4Vmaxであった。以上から、Vsを4.4V以上(0.42・Vmax以上)にすると、液晶分子はバックフローで不均一な方向に傾いた状態が生じるので、表示むらが発生するのに対し、Vsを4.2V以下(0.4・Vmax以下)にすると、液晶分子はバックフローを生じずに同一方向に傾くので、表示むらの発生は抑止される。すなわち、初期駆動電圧Vsは、飽和駆動電圧Vmaxの40%以下であることが好ましい。
【0025】
次に、ステップ403にて、掃引時間Tsを設定する。Vs=4V、Vmax=10.5Vで固定して掃引時間Tsを10~200ms変化させて表示エリア260mm×470mmのミニディスプレイ及び表示エリア60mm×260mmのルームミラーを用いてV=Vs=4VからV=Vmax=10.5Vへの過渡状態の表示むら外観を目視判定したところ、
図7に示す結果が得られた。この結果、表示むらが発生しないためには、掃引時間Tsは70~200msであった。つまり、掃引時間Tsを60ms以下にすると、液晶分子が傾く前にVmaxが印加されるので、液晶分子はバックフローで不均一な方向に倒れて表示むらが発生するのに対し、掃引時間Tsを70ms以上にすると、液晶分子が傾いてからVmaxが印加されるので、液晶分子は同一方向に均一に倒れて表示むらの発生は抑制される。つまり、掃引時間Tsが70ms以上であると、バックフロー現象は生じない。尚、液晶分子の応答速度は温度に依存し、25℃で50ms程度、-30℃で5000ms程度である。従って、温度を考慮して、掃引時間Tsは70~1000msとする。掃引時間Tsは、バックフロー現象を抑制しつつ、鏡状態と、画像表示状態との切り替え動作の実用性を考慮すると70~200msが好ましく、さらに70msであることがより好ましい。
【0026】
画素サイズが大きいほどバックフロー現象による表示むらが視認によって観察されやすい。本発明の実施の形態の場合、表示むらの間隔は30mm程度で視認されるものであるため、本発明は画素サイズが30mm以上の液晶ミラーユニット2’においてムラのない良好な結果を得られる。また、鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置における画素サイズは、表示エリアと等しいサイズを適用することができる。例えば、260mm×470mmの素子で機能することを確認している。本発明においては、鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置に適用する画素サイズが30mm以上である、比較的大きな画素サイズを用いたことによって視認される表示むらを解決するものである。
【0027】
図8は
図3の透明電極間駆動電圧の変更例を示すタイミング図である。
【0028】
図8の(A)に示すように、掃引時間Tsの透明電極間駆動電圧Vは2段階以上の多段階ステップとすることができる。これにより、透明電極間駆動電圧Vをディジタル的に出力するので、制御回路3の構成を簡素化できる。また、液晶分子は入力信号の実効値によって応答することから、
図8の(B)に示すごとく、掃引時間Tsの透明電極間駆動電圧Vはパルス幅変調(PWM)波形とすることができる。このとき、オンデューティ比を時間と共に大きくする。この場合も、制御回路3の構成を簡素化できる。尚、透明電極間駆動電圧Vを直線的に掃引する場合、アナログ処理を必要とするので、制御回路3は複雑化する。
【0029】
尚、上述の実施の形態における画像表示ユニットはたとえば液晶ディスプレイ装置又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ装置である。
【0030】
また、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲内でいかなる変更にも適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係る装置は、車載用スマート・ルームミラー、住設用ミラーディスプレイ、ディジタルサイネージ等に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
1:画像表示ユニット
2、2’:液晶ミラーユニット
21:TN型液晶層
21’:VA型液晶層
22、23:透明電極
24:第1の直線偏光の透過軸を有する吸収型偏光板
25:第2の直線偏光の透過軸を有する反射型偏光板
26:上側ガラス基板
27:絶縁層
28:上側垂直配向層
29:下側ガラス基板
30:絶縁層
31:下側垂直配向層
32:スペーサ
33:光学補償板
【手続補正書】
【提出日】2022-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を出射するための画像表示ユニットと、
前記画像表示ユニットの光出射側に設けられた液晶ミラーユニットと、
前記画像表示ユニット及び前記液晶ミラーユニットを制御する制御回路と
を具備する鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置であって、
前記液晶ミラーユニットは、
垂直配向型液晶層と、
前記垂直配向型液晶層の前記画像表示ユニットと反対側に設けられた第1の透明電極と、
前記垂直配向型液晶層の前記画像表示ユニット側に設けられた第2の透明電極と、
前記第1の透明電極の前記垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸を有し、第1の直線偏光を透過して該第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板と、
前記第2の透明電極の前記垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、前記第1の透過軸に直交する第2の透過軸を有し、前記第2の直線偏光を透過して前記第1の直線偏光を反射する反射型偏光板と
を具備し、
前記制御回路は前記液晶ミラーユニットの前記第1、第2の透明電極間の駆動電圧を前記垂直配向型液晶層をオフ状態から初期電圧を経て前記垂直配向型液晶層をオン状態にする所定電圧へ所定の掃引時間で掃引して上昇させる装置。
【請求項2】
前記所定電圧は前記液晶ミラーユニットの光透過率が飽和したときの前記第1、第2の透明電極間の前記駆動電圧の飽和電圧である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引は直線的である請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引は2段階以上の多段階的である請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記初期電圧から前記所定電圧への掃引はパルス幅変調的であり、各パルスのオンデューティ比は前記所定電圧の印加に近い程大きくなっている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記初期電圧は前記飽和電圧の40%以下である請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記掃引時間は70ms以上1000ms以下である請求項1に記載の装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
図10に示すように、透明電極間駆動電圧Vがオン状態(V=Vmax)のときに、TN型液晶層21の偏光軸は変化しないので、外光
のうち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光は液晶層21を透過して反射型偏光板25によって反射され、さらに、反射された第1の直線偏光はTN型液晶層21を透過して吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2は鏡状態となる。尚、この場合、画像表示ユニット1は制御回路3によってオフとされる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
他方、透明電極間駆動電圧Vがオフ状態(例えばV=0V)のときに、TN型液晶層21のTN型偏光軸は変化するので、外光のうち吸収型偏光板24を透過した第1の直線偏光はTN型液晶層21によって第2の直線偏光に変化され、さらに、変化された第2の直線偏光は反射型偏光板25を透過する。同様に、画像表示ユニット1から画像光は反射型偏光板25を透過して第2の直線偏光となり、TN型液晶層21によって第1の直線偏光に変換されて吸収型偏光板24を出射する。つまり、液晶ミラーユニット2は透明状態となる。尚、この場合、制御回路3によって画像表示ユニット1がオンとされると、画面表示状態たとえば白表示状態となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
図9に示す鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置において、
TN型液晶層21の代りに垂直配向(VA)型液晶層を用いた場合、次のような課題がある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
次いで、透明電極間駆動電圧Vが0VからVmaxに急峻に立ち上がると、図
12の(B)に示すごとく、垂直方向の液晶分子21aはゆらいでいるので、強い電場によって一部の液晶分子21aはラビング処理で規定される方向と異なる方向に動くバックフロー現象によってばらばらの方向に不均一に倒れて液晶分子21b(透明状態I)となる領域が生じる。このときの装置の透明状態Iは
図13の(B)に示され、表示むらが生じていることが分かる。表示むらの間隔は30mm程度であり、その持続時間は1sec程度である。さらに、数秒たとえば1sec経過後には、最終的に、
図12の(B)に示すごとく、液晶分子21c
(透明状態II)となり、ラビングで規定される配列方向となる。このときの装置の透明状態IIは
図13の(C)に示される。尚、
図13の(B)の透明状態I及び
図13の(C)の透明状態IIで表示している画像は、表示むらが確認しやすいよう全面を白色としている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上述の課題を解決するために、画像光を出射するための画像表示ユニットと、画像表示ユニットの光出射側に設けられた液晶ミラーユニットと、画像表示ユニット及び液晶ミラーユニットを制御する制御回路とを具備する鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置であって、液晶ミラーユニットは、垂直配向型液晶層と、垂直配向型液晶層の画像表示ユニットと反対側に設けられた第1の透明電極と、垂直配向型液晶層の画像表示ユニット側に設けられた第2の透明電極と、第1の透明電極の垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸を有し、第1の直線偏光を透過して該第1の直線偏光と交差する第2の直線偏光を吸収する吸収型偏光板と、第2の透明電極の垂直配向型液晶層と反対側に設けられ、第1の透過軸に直交する第2の透過軸を有し、第2の直線偏光を透過して第1の直線偏光を反射する反射型偏光板とを具備し、制御回路は液晶ミラーユニットの第1、第2の透明電極間の駆動電圧を垂直配向型液晶層をオフ状態から初期電圧を経て垂直配向型液晶層をオン状態にする所定電圧へ所定の掃引時間で掃引して上昇させるものである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
【
図1】本発明に係る鏡状態と画像表示状態とを切替可能な装置の実施の形態を示す図である。
【
図2】
図1の液晶ミラーユニットの詳細な断面図である。
【
図3】
図1の液晶ミラーユニットの透明電極間駆動電圧のタイミング図である。
【
図4】
図3の透明電極間駆動電圧の設定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図4の透明電極間飽和駆動電圧設定ステップ401に用いられる透明電極間駆動電圧/光透過率特性を示すグラフである。
【
図6】
図4の透明電極初期駆動電圧設定ステップ402に用いられる表である。
【
図7】
図4の掃引時間設定ステップ403に用いられる表である。
【
図8】
図3の透明電極間駆動電圧の変更例を示すタイミング図である。
【
図9】従来の鏡状態と画像表示状態との切替可能な装置を示す図である。
【
図10】
図9の透明電極間駆動電圧を示すタイミング図である。
【
図11】
図9の液晶層を垂直配向(VA)型とした場合の
図9の電極間駆動電圧を示すタイミング図である。
【
図12】
図9の従来の鏡状態の画像表示状態との切替可能な装置に
おいて垂直配向(V
A)型液晶層を用いた場合の課題を説明する図であって、(A)は鏡状態での液晶分子を示し、(B)は鏡状態→透明状態の遷移時の液晶分子を示す。
【
図13】
図11における鏡状態、透明状態I及び透明状態IIの表示例を示す写真である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】