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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163595
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/30 20210101AFI20231102BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/16 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20231102BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20231102BHJP
【FI】
H01M50/30
H01M50/15
H01M50/16
H01M50/176
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/198
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074588
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
【テーマコード(参考)】
5H011
5H012
【Fターム(参考)】
5H011AA13
5H011CC02
5H012AA07
5H012BB02
5H012DD01
5H012EE01
5H012GG01
5H012JJ00
(57)【要約】
【課題】簡単な構造により、電池内部の圧力上昇を抑制するとともに、外部から電池内部への水蒸気の侵入を抑制することができる二次電池を提供すること。
【解決手段】開口部11aを備えるケース11と、開口部11aを封止する蓋部材12と、電極端子13,14と、を有する二次電池1において、蓋部材12には、貫通穴20と、貫通穴20を閉塞する樹脂部21とが設けられており、樹脂部21の少なくとも一部は、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂で形成された排気部22である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を備えるケースと、
前記開口部を封止する蓋部材と、
電極端子と、を有する二次電池において、
前記蓋部材には、貫通穴と、前記貫通穴を閉塞する樹脂部とが設けられており、
前記樹脂部の少なくとも一部は、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂で形成された排気部である
ことを特徴とする二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載する二次電池において、
前記排気部は、材質が異なる複数の樹脂を備えている
ことを特徴とする二次電池。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する二次電池において、
前記樹脂部の一部に前記排気部が形成されており、
前記貫通穴は、前記電極端子の近傍に配置され、
前記樹脂部は、前記蓋部材と前記電極端子とを一体化させるとともに前記蓋部材と前記電極端子との絶縁を行うものである
ことを特徴とする二次電池。
【請求項4】
請求項3に記載する二次電池において、
前記樹脂部は、電池外側へ向かって開口する有底穴を有し、
前記有底穴に前記排気部が形成されている
ことを特徴とする二次電池。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、充放電の繰り返しや経年劣化により、電池内部で発生する電解液分解物(ガス)が増加して、電池内部の圧力が上昇する。そのため、蓋部材を貫通する取付穴と電極端子を、ガスバリア性能が高い(ガス透過性が低い)樹脂で密閉する形態の電池では気密性が高いため、電池内で発生した電解液分解ガスを外部に排出することができず、電池内部の圧力が上昇しやすい。このような通常使用における電池内部での圧力上昇に対応するには、開放弁の開放圧を高めるほか、ケースの厚肉化や剛性化、封缶・封止溶接の溶け込み長さを増すなど電池外装の耐圧性能を高める対策が必要となる。その結果、材料費や溶接の難易度が上昇してしまい、歩留まりが悪化して電池のコストアップを招くおそれがある。
【0003】
ここで、蓋部材の貫通穴と電極端子を密閉する樹脂を薄肉化することにより、ガス透過性を高めることはできる。しかしながら、樹脂を薄肉化すると、電池内部への水蒸気の侵入量が増加する事に加え、樹脂の強度低下や絶縁距離が短縮されることによって絶縁性が悪化してしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の二次電池では、蓋体(蓋部材)と集電端子(電極端子)との間を封止するガスケットを2種類併用することにより、電池内部で発生する電解液分解ガスを外部へ排出するようにしている。この二次電池では、ガス透過係数が異なる2種類のガスケットを密接するように、電池外側にガス透過性が高い第1ガスケットを配置し、電池内側にガス透過性が低い第2ガスケットを配置している。これにより、電池内外へのガス透過経路が、第1ガスケットと第2ガスケットを透過させる2ルートになり、第2ガスケットのガスが透過しやすい性能を利用して電池内部で発生する電解液分解ガスを外部へ排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-181544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の二次電池では、ガス透過性が高い第2ガスケットは、外部から電池内部に水蒸気を透過しやすいため、電池内部に水蒸気が侵入して電池の劣化を促進させてしまうおそれがある。また、ガスケットを2種類使用するため部品点数が増加し、組付け作業が増えるとともに複雑化するため、歩留まりが悪化するおそれもある。
【0007】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構造により、電池内部の圧力上昇を抑制するとともに、外部から電池内部への水蒸気の侵入を抑制することができる二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
開口部を備えるケースと、
前記開口部を封止する蓋部材と、
電極端子と、を有する二次電池において、
前記蓋部材には、貫通穴と、前記貫通穴を閉塞する樹脂部とが設けられており、
前記樹脂部の少なくとも一部は、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂で形成された排気部であることを特徴とする。
【0009】
これにより、蓋部材の貫通穴を閉塞する樹脂部の一部又は全部が排気部となるので、蓋部材の貫通穴に排気部を配置することができる。そして、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂は、電池内部で発生する電解液分解ガスである水素や二酸化炭素の透過が多い傾向があるとともに、水蒸気の透過が少ない傾向がある。なお、現状において市販されている樹脂で溶解度パラメータ(SP値)が10(Mpa)1/2以下のものは存在しないため、排気部を形成する樹脂は、実質的に溶解度パラメータ(SP値)が10~23(Mpa)1/2の樹脂となる。
【0010】
そのため、排気部を溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下である樹脂によって形成することにより、蓋部材の貫通穴に配置された排気部を介して、エチレンカーボネート等の電解液揮発物は透過させずに電池内に留め、二酸化酸素等の電解液分解ガスのみを外部へ排出する一方、外部から電池内への水蒸気の侵入を抑制することができる。従って、このように複数の部品を組み合わせることなく非常に簡単な構造の排気部により、電池内での圧力上昇を抑制することができ、電池に備わる電流遮断機構およびガス排出弁の誤作動を防止することができる。また、電池内での圧力上昇が抑制されるため、ケースや蓋部材の薄肉化や非剛性材化、封缶・封止溶接における溶け込み長さの緩和などが可能となるので、電池の軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0011】
上記した二次電池において、
前記排気部は、材質が異なる複数の樹脂を備えていることが好ましい。
【0012】
このように排気部を材質が異なる複数の樹脂で構成することにより、排気部を介して外部へ排出するガス種を絞ることができる。そのため、電池内部から外部へ排出したいガス種のみを選択的に排出することができる。これにより、電池の仕様に応じて、電池内部で発生しやすい(多く発生する)電解液分解ガスを、効率良く外部へ排出することができるので、電池内での圧力上昇を効果的に抑制することができる。なお、材質が異なる複数の樹脂は、連続的(お互いが接触して重なるように)配置されてもよいし、材質が異なる樹脂の間に樹脂部が存在してもよい。
【0013】
上記したいずれかの二次電池において、
前記樹脂部の一部に前記排気部が形成されており、
前記貫通穴は、前記電極端子の近傍に配置されており、
前記樹脂部は、前記蓋部材と前記電極端子とを一体化させるとともに前記蓋部材と前記電極端子との絶縁を行うものであることが好ましい。
【0014】
こうすることにより、電極端子を蓋部材に取り付ける際に、樹脂部と排気部を形成することができるため、排気部を形成するための工程を別途設ける必要がなく、排気部を設けることによる生産効率の低下を防ぐことができる。
【0015】
上記したいずれかの二次電池において、
前記樹脂部は、電池外側へ向かって開口する有底穴を有し、
前記有底穴に前記排気部が形成されていることが好ましい。
【0016】
このように樹脂部に電池外側へ向かって開口する有底穴を設け、その有底穴に排気部を配置することにより、排気部が樹脂部に覆われるため、電池内部に排気部が露出しなくなる。従って、排気部を形成する樹脂が電解液に溶融するおそれがある場合に、排気部が電解液に溶融することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、簡単な構造により、電池内部の圧力上昇を抑制するとともに、外部から電池内部への水蒸気の侵入を抑制できる二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の二次電池を示す斜視図である。
図2】電極端子(負極端子と正極端子)が樹脂により一体化された蓋部材を示す斜視図である。
図3図2に示すA-A位置における断面図である。
図4】樹脂部及び排気部に使用する樹脂の溶解度パラメータ(SP値)と透過性能を示す図である。
図5】排気部を含む樹脂部の第1変形例を示す図である。
図6】排気部を含む樹脂部の第2変形例を示す図である。
図7】第2変形例の別形態を示す図である。
図8】第2変形例の別形態を示す図である。
図9】第2変形例の別形態を示す図である。
図10】排気部を含む樹脂部の第3変形例を示す図である。
図11】第3変形例の別形態を示す図である。
図12】排気部を含む樹脂部の第4変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示に係る実施形態である二次電池について図面を参照しながら説明する。まず、本実施形態の二次電池の全体構成について、図1図3を参照しながら詳細に説明する。 図1に示すように、本実施形態の二次電池1は、開口部11aを備えるケース11と、長方形の板状に形成され開口部11aを封止する蓋部材12とを有する。ケース11と蓋部材12は、金属(例えば、アルミニウム)により形成されており溶接されている。なお、蓋部材12で封止されたケース11内には、電極体が収容されているとともに、非水電解液が注液されて収容されている。そして、二次電池1は、電池内部の圧力が上昇した所定値を超えたときに作動する電流遮断機構やガス排出弁などを備えている。
【0020】
図2図3に示すように、蓋部材12と電極端子(すなわち、負極端子13と正極端子14)とは、樹脂部15により一体化されている。つまり、負極端子13と正極端子14とが、蓋部材12に固設されている。そして、樹脂部15により、蓋部材12と負極端子13との間、および蓋部材12と正極端子14との間が絶縁されている。また、負極端子13と正極端子14(より詳細には、後述する内部端子17)は、それぞれ、ケース11内に収容される電極体(不図示)に接続している。
【0021】
負極端子13と正極端子14は、ほぼ同じ形状をなしており、それぞれ、外部端子16と電極体(不図示)に接続される内部端子17とを備えている。外部端子16と内部端子17は、蓋部材12を挟んで、電池外部側に外部端子16が配置され、電池内部側に内部端子17が配置されている。なお、外部端子16と内部端子17とは、蓋部材12に形成された取付穴12aを介して接続され溶接されている。また、外部端子16には、外部電源(不図示)に繋がるバスバ(不図示)が接続されるようになっている。
【0022】
そして、本実施形態の二次電池1では、図3に示すように、蓋部材12に貫通穴20が形成されている。貫通穴20は、正極端子14の近傍に配置されている。なお、本実施形態では、貫通穴20を正極端子14の近傍に配置しているが、貫通穴20の配置位置は特に制限されることはない。すなわち、貫通穴20は、例えば、負極端子13の近傍に配置することもできるし、蓋部材12の中央付近(負極端子13と正極端子14との間)に配置することもできる。
【0023】
この貫通穴20は、樹脂部21により閉塞されている。樹脂部21には、図2図3に示すように、排気部22が設けられている。つまり、貫通穴20を閉塞する樹脂部21の一部に排気部22が設けられている。排気部22は、上面視で(蓋部材12の上面側から見た場合)、貫通穴20と重なる位置に配置されている。そして、排気部22は、図3に示すように、樹脂部21を貫通する形態で形成されており、排気部22の一部(下面側)が貫通穴20(電池内部)に露出している。
【0024】
このような排気部22は、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下ある樹脂で形成されている。なお、溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorsの推定法により算出される値である。溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂は、電池内部で発生する電解液分解ガスである水素や二酸化炭素の透過が多い傾向があるとともに、水蒸気の透過が少ない傾向がある。
【0025】
そのため、排気部22を、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂で形成することにより、エチレンカーボネート等の電解液揮発物は排気部22を透過することなく電池内に留まり、二酸化酸素等の電解液分解ガスのみが排気部22から外部へ排出される一方、排気部22を介して外部から電池内への水蒸気の侵入が抑制される。
【0026】
なお、排気部22を形成する樹脂の溶解度パラメータ(SP値)は、好ましくは20(Mpa)1/2以下であるとよい。電池内の電解液分解ガスの透過がより多くなるとともに水蒸気の透過がより少なくなるからである。
【0027】
そして、本実施形態では、樹脂部21は、樹脂部15のうち蓋部材12の上面側(電池外側)に形成される外側樹脂部15aと一体化されている。つまり、樹脂部21と樹脂部15aは、同じ材質の樹脂であり、正極端子14を蓋部材12に取り付ける際の樹脂モールド時に、一体的に形成される。そのため、排気部22を含む樹脂部21を形成するための工程を別途設ける必要がなく、排気部22を設けることによる二次電池1の生産効率の低下を防ぐことができる。
【0028】
ここで、本実施例では、樹脂部21(樹脂部15)として、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)を使用することができる。このように、樹脂部21にPPSを使用する場合、排気部22として、例えば図4に示すように、PP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PPE(ポリフェニレンエーテル)を使用することができる。これらの樹脂を排気部22として使用することにより、図4から明らかなように、排気部22における電解液分解ガスの大部分を占める水素(H)、炭化水素(CH)、二酸化炭素(CO)の透過度が、樹脂部21より高くなるため、排気部22を介して、電池内部で発生する電解液分解ガスを外部へ効率良く排出できることがわかる。その一方、排気部22における水蒸気透過度は、樹脂部21と同等又は低くなるため、外部から電池内部への水蒸気の侵入を抑制ができることがわかる。
【0029】
このように二次電池1では、複数の部品を組み合わせることなく非常に簡単な構造の排気部22により、電池内部での圧力上昇を抑制することができる。そのため、二次電池1に備わる電流遮断機構やガス排出弁の誤作動を防止することができる。また、電池内部での圧力上昇が抑制されるため、ケース11や蓋部材12の薄肉化や非剛性材化、封缶・封止溶接における溶け込み長さの緩和などが可能となる。そのため、二次電池1の軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0030】
なお、排気部22におけるガスの透過量は、排気部22の厚さや材質を変更することにより調整することができる。そのため、電池の仕様に応じて最適な透過量となるように、排気部22の材質及び厚さを実験等により決定すればよい。
【0031】
排気部22に使用する樹脂としては、上記の樹脂以外に、例えば、ポリ塩化ビニリデンやポリアミド11,12、ポリクロロトリフロロエチレン、ポリテトラフロロエチレン等であってもよい。これらの樹脂は、水分を保持するエステルや水酸基(官能基)構造がポリマーに存在しない、あるいは存在しても分子量に対してこれら官能基の割合が少ないため、疎水性の樹脂であり、その溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下である。
【0032】
また、排気部22には、結晶化度が比較的高めの樹脂を使用することが好ましい。このような樹脂は、樹脂の結晶化度が高いほど水蒸気を透過し難くなるため、排気部22を介して、外部から電池内部への水蒸気の侵入を効果的に抑制することができるからである。
【0033】
なお、樹脂部21(樹脂部15)に使用する樹脂は、電解液に溶融しないことが必要であるが、上記のPPSに限られることはなく、例えばPPなどのポリオレフィンやフッ素系樹脂等のハロゲン化ポリマー等を使用することができる。
【0034】
ここで、排気部22を含む樹脂部21の変形例について、図5図12を参照しながら説明する。なお、図5図12は、排気部付近を示す概略断面図である。
【0035】
まず、第1変形例は、図5に示すように、樹脂部21において排気部22を配置する部分に、電池外部へ開口する有底穴21aを設けている。そして、この有底穴21aに、溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂を充填して、排気部22を形成している。これにより、排気部22が貫通穴20(電池内部)に露出しなくなる。従って、排気部22が電解液に溶融することを確実に防止することができるため、排気部22として、電解液に溶融するおそれがある樹脂を使用することができる。なお、樹脂部21に設ける有底穴21aの底部の厚さは、要求される強度を保つことができる厚さで可能な限り薄くすることが好ましい。これにより、樹脂部21が排気部22の透過性能をできる限り阻害しないようにすることができるからである。
【0036】
次に、第2変形例は、図6に示すように、樹脂部21を、樹脂部15のうち樹脂部15aだけではなく、蓋部材12の下面側に形成される内側樹脂部15bとも一体化している。これにより、樹脂部21の厚さが増すため、樹脂部15に設ける排気部22を、複数の排気部22a,22bで構成することができる。そして、排気部22aと排気部22bとは、異なる材質の樹脂で形成されている。そのため、 排気部22(22a,22b)を介して外部へ排出するガス種を絞ることができるため、電池内部から外部へ排出したいガス種のみを選択的に排出することができる。従って、電池の仕様に応じて、電池内部で発生しやすい(多く発生する)電解液分解ガスを効率良く外部へ排出することができるので、電池内での圧力上昇を効果的に抑制することができる。
【0037】
なお、上記実施形態のように、樹脂部21を、樹脂部15のうち蓋部材12の上面側に形成される樹脂部15aと一体形成する場合でも、樹脂部21の厚みを大きくして複数の排気部22a,22bを設けることはできる。しかながら、この場合には、排気部22の高さが、電極端子の高さより高くなって、バスバの取付時などに邪魔になるおそれがある。また、排気部22が突出する形状になるため、排気部22が損傷するおそれも生じる。そのため、排気部22を複数の排気部22a,22bで構成する場合には、第2変形例のように樹脂部21を、樹脂部15のうち外側樹脂部15aだけではなく内側樹脂部15bとも一体化することが好ましい。
【0038】
また、排気部22bが電解液に溶融するおそれがある場合には、図7に示すように、第1変形例として例示した、樹脂部21において排気部22a,22bを配置する部分に、電池外部へ開口する有底穴21aを設け、その有底穴21aに排気部22a,22bを重ねて配置すればよい。
【0039】
さらに、第2変形例において、図8に示すように、上記実施形態のように排気部22が樹脂部21を貫通する形態としてもよいし、図9に示すように、第1変形例のように樹脂部21に有底穴21aを設けて、その有底穴21aに1つの樹脂で形成される排気部22を配置してもよい。
【0040】
次に、第3変形例は、図10に示すように、樹脂部21の全体が排気部22となっている。つまり、排気部22により貫通穴20を閉塞している。そのため、第3変形例では、排気部22が電池内部に露出するので、排気部22は電解液に溶融しない樹脂で形成する必要がある。この第3変形例は、例えば、樹脂部21を設けることが困難である場合等に適用される。なお、第3変形例において、図11に示すように、第2変形例と同様、排気部22を複数の排気部22a,22bで構成することもできる。
【0041】
最後に、第4変形例は、図12に示すように、樹脂部21が、樹脂部15と一体で形成されておらず別体で形成されている。この第4変形例は、例えば、貫通穴20が負極端子13又は正極端子14から離れた位置(例えば蓋部材12の中央付近など)に形成されており、樹脂部21を樹脂部15と一体成形することが困難である場合等に適用される。なお、第4変形例は、図12に例示した上記実施形態と同様の態様に限られることはなく、例えば、第1変形例の態様や、第3変形例の態様を組み合わせて適用することもできる。
【0042】
以上のように、本実施形態の二次電池1によれば、蓋部材12の貫通穴20を閉塞する樹脂部21(15)の少なくとも一部を排気部22として、蓋部材12の貫通穴20に排気部22を配置している。そして、排気部22を溶解度パラメータ(SP値)が23(Mpa)1/2以下の樹脂で形成しているため、排気部22を介して、電解液揮発物は透過させずに電池内に留め、電解液分解ガスのみを外部へ排出する一方、外部から電池内への水蒸気の侵入を抑制することができる。従って、二次電池1では、このような非常に簡単な構造の排気部22により、電池内での圧力上昇を抑制することができ、二次電池1に備わる電流遮断機構およびガス排出弁の誤作動を防止することができる。また、二次電池1では、電池内での圧力上昇が抑制されるため、ケース11や蓋部材12の薄肉化や非剛性材化、封缶・封止溶接における溶け込み長さの緩和などが可能となるので、軽量化や低コスト化を図ることができる。
【0043】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0044】
1 二次電池
11 ケース
11a 開口部
12 蓋部材
13 負極端子
14 正極端子
15 樹脂部
20 貫通穴
21 樹脂部
21a 有底穴
22 排気部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12