(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163604
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】荷役システム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074614
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柿田 頼輝
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333DB01
3F333FA25
3F333FD15
3F333FE04
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】制御装置が荷役動作方向を決定できるようにすること。
【解決手段】荷役車両は、荷役装置と、外界センサと、制御装置と、を備える。外界センサは、3次元座標系の座標で物体の位置を検出する。制御装置は、物体の位置を表した点の集合である点群データから、荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定する。制御装置は、荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって荷役動作方向を決定する。荷役動作方向は、荷役装置を動作させる方向であって荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって異なる方向である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元座標系の座標で物体の位置を検出する外界センサ、及び荷役装置を備える荷役車両と、
制御装置と、を備える荷役システムであって、
前記制御装置は、
前記物体の位置を表した点の集合である点群データから、前記荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定し、
前記荷役装置を動作させる方向であって前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって異なる方向である荷役動作方向を、前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって決定する、荷役システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記点群データから前記搬送車両の側面図を作成し、
前記側面図から画像認識によって運転席を抽出し、
前記側面図での前記運転席の位置から前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定する、請求項1に記載の荷役システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記荷役車両の自己位置を推定し、
前記自己位置と前記搬送車両の停車位置との位置関係から、前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定する、請求項1に記載の荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の荷役車両は、荷役装置を備える。荷役車両は、荷役作業を行う。荷役作業は、荷積み、及び荷取りを含む。荷積みでは、搬送車両に荷が積載される。荷取りでは、搬送車両に積載された荷が荷役車両によって取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって荷役装置を動作させる方向が異なる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する荷役システムは、3次元座標系の座標で物体の位置を検出する外界センサ、及び荷役装置を備える荷役車両と、制御装置と、を備える荷役システムであって、前記制御装置は、前記物体の位置を表した点の集合である点群データから、前記荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定し、前記荷役装置を動作させる方向であって前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって異なる方向である荷役動作方向を、前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって決定する。
【0006】
制御装置は、点群データから荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定する。荷役動作方向は、荷役車両が搬送車両の左右のいずれに位置しているかによって異なる。搬送車両の左右のいずれに荷役車両が位置しているかを判定することで、制御装置は、荷役動作方向を決定することができる。
【0007】
上記荷役システムについて、前記制御装置は、前記点群データから前記搬送車両の側面図を作成し、前記側面図から画像認識によって運転席を抽出し、前記側面図での前記運転席の位置から前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定してもよい。
【0008】
上記荷役システムについて、前記制御装置は、前記荷役車両の自己位置を推定し、前記自己位置と前記搬送車両の停車位置との位置関係から、前記荷役車両が前記搬送車両の左右のいずれに位置しているかを判定してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御装置が荷役動作方向を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】荷役動作方向決定制御を示すフローチャートである。
【
図9】変更例の荷役動作方向決定制御を示すフローチャートである。
【
図10】停車位置の面積が広い場合における搬送車両と荷役車両との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、荷役システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、区域A1には、停車位置PS1が設定されている。停車位置PS1は、複数設定されている。停車位置PS1同士は、互いに間隔を空けて並んでいる。停車位置PS1には、搬送車両10が停車する。停車位置PS1の面積は、停車位置PS1に停車する搬送車両10を平面視した場合の搬送車両10の面積よりも広い。停車位置PS1には、柱などの構造物が存在していない。区域A1は、例えば、工場、港湾、空港、商業施設、及び公共施設等の場所の全体、あるいは、一部である。区域A1では、荷役車両20が運用されている。荷役車両20は、荷積み及び荷取りを行う。荷積みは、パレットPA1に置かれた荷C1を搬送車両10に積載する作業である。荷取りは、搬送車両10に積載された荷C1を搬送車両10から取る作業である。以下の説明において、搬送車両10の前後左右上下とは、搬送車両10を基準とした場合の前後左右上下である。荷役車両20の左右上下とは、荷役車両20を基準とした場合の左右上下である。
【0012】
図2に示すように、搬送車両10は、ウィングトラックである。搬送車両10としては、平ボディのトラック等、どのような種類のトラックであってもよい。搬送車両10は、運転席11と、フロントパネル12と、リヤドア13と、荷台14と、ウィングサイドパネル16と、あおり17と、を備える。
【0013】
運転席11は、搬送車両10の運転者が搭乗する位置である。フロントパネル12は、運転席11よりも搬送車両10の後方に設けられている。フロントパネル12は、運転席11に隣り合って設けられている。リヤドア13は、フロントパネル12よりも搬送車両10の後方に設けられている。フロントパネル12とリヤドア13は、搬送車両10の前後方向に互いに間隔を空けて設けられている。荷台14は、フロントパネル12とリヤドア13との間で、搬送車両10の前後方向に延びている。荷台14は、積載面15を備える。積載面15は、荷台14の上面である。積載面15には、パレットPA1に置かれた荷C1が積載される。ウィングサイドパネル16は、フロントパネル12とリヤドア13との間に設けられている。ウィングサイドパネル16は、搬送車両10の車幅方向の中心位置を中心として、搬送車両10の上下方向に回転可能に設けられている。ウィングサイドパネル16は、搬送車両10の車幅方向の両側に1つずつ設けられている。あおり17は、搬送車両10の前後方向に延びるように設けられている。あおり17は、荷台14の縁であって搬送車両10の前後方向に延びる縁に沿って設けられている。あおり17は、搬送車両10の車幅方向の両側に1つずつ設けられている。
【0014】
<荷役車両>
荷役車両20は、車体21と、駆動輪22と、操舵輪23と、荷役装置24と、を備える。荷役装置24は、車体21の前部に設けられている。荷役装置24は、マスト25と、リフトシリンダ28と、リフトブラケット29と、2つのフォーク30と、サイドシフト装置40と、を備える。
【0015】
マスト25は、アウタマスト26と、インナマスト27と、を備える。インナマスト27は、アウタマスト26に対して昇降可能に設けられている。リフトブラケット29及びフォーク30は、インナマスト27とともに昇降する。リフトシリンダ28は、インナマスト27を昇降動作させる。リフトシリンダ28は、油圧シリンダである。
【0016】
サイドシフト装置40は、フォーク30を荷役車両20の左右方向に移動させるものである。サイドシフト装置40は、2つのフォーク30同士の間隔を維持した状態で、2つのフォーク30を荷役車両20の左右方向に移動させる。
【0017】
図3に示すように、サイドシフト装置40は、リフトブラケット29に取り付けられている。リフトブラケット29は、2つのフィンガーバー31,32を備える。2つのフィンガーバー31,32は、荷役車両20の上下方向に間隔を空けて設けられている。
【0018】
サイドシフト装置40は、シフター41と、シフトシリンダ46と、を備える。
シフター41は、2つのフィンガーバー31,32に対して荷役車両20の左右に移動可能に設けられている。シフター41は、2つのシフターバー42,43と、2つのシフターバー42,43を連結する2つの連結部材44,45と、を備える。2つのシフターバー42,43は、荷役車両20の上下方向に間隔を空けて設けられている。2つの連結部材44,45は、荷役車両20の左右方向に間隔を空けて設けられている。連結部材44,45は、シフターバー42,43の端部同士を連結している。シフターバー42,43には、フォーク30が連結されている。
【0019】
シフトシリンダ46は、油圧シリンダである。シフトシリンダ46への作動油の給排によってシフター41は荷役車両20の左右方向に移動する。シフター41とともにフォーク30も荷役車両20の左右方向に移動する。
【0020】
図4に示すように、荷役車両20は、外界センサ51と、制御装置52と、補助記憶装置55と、車両制御装置56と、走行アクチュエータ59と、荷役アクチュエータ60と、通信装置61と、を備える。荷役車両20は、荷役システムである。
【0021】
外界センサ51は、3次元座標系の座標で物体の位置を検出する。外界センサ51は、荷役車両20の上部に設けられている。例えば、外界センサ51は、荷役車両20のヘッドガードに設けられている。
【0022】
外界センサ51としては、例えば、ミリ波レーダー、ステレオカメラ、ToF(Time of Flight)カメラ、及びLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を挙げることができる。本実施形態では、外界センサ51としてLIDARを用いている。外界センサ51は、周囲にレーザーを照射し、レーザーが当たった点から反射された反射光を受光することで点までの距離を導出する。レーザーが当たった点は、物体の表面の一部を表す。点の位置は、極座標系の座標で表すことができる。極座標系における点の座標は、直交座標系の座標に変換される。極座標系から直交座標系への変換は、外界センサ51によって行われてもよいし、制御装置52で行われてもよい。本実施形態では、外界センサ51により極座標系から直交座標系への変換が行われているとする。外界センサ51は、センサ座標系での点の座標を導出する。センサ座標系は、外界センサ51を原点とする3軸直交座標系である。外界センサ51は、レーザーを照射することにより得られた複数の点の座標を点群データとして制御装置52に出力する。
【0023】
制御装置52は、プロセッサ53と、記憶部54と、を備える。記憶部54は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部54は、処理をプロセッサ53に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部54、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置52は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置52は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0024】
補助記憶装置55は、制御装置52が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置55としては、例えば、ハードディスクドライブ、及びソリッドステートドライブを挙げることができる。補助記憶装置55は、環境地
図D1を記憶している。補助記憶装置55は、画像認識モデルD2を記憶している。
【0025】
環境地
図D1とは、区域A1に存在する物体の形状、区域A1の広さ等、区域A1の物理的構造に関する情報である。本実施形態において環境地
図D1は、区域A1の構造を地図座標系の座標で表したデータである。地図座標系は、3軸直交座標系である。地図座標系は、区域A1の任意の一点を原点とする座標系である。地図座標系において水平方向は互いに直交するX軸及びY軸で規定される。X軸及びY軸で規定されるXY平面は、水平面を表しているといえる。地図座標系において上下方向は、X軸及びY軸に直交するZ軸で規定される。適宜、地図座標系の座標を地図座標と称する。地図座標系は、3次元の位置を表す3次元座標系である。
【0026】
制御装置52は、荷役車両20の自己位置を推定する。制御装置52は、荷役車両20の自己位置を車両制御装置56に出力する。自己位置とは、環境地
図D1上での荷役車両20の位置である。自己位置とは、地図座標系での荷役車両20の一点を示す座標である。荷役車両20の一点は任意であるが、例えば、荷役車両20の水平方向での中心位置を挙げることができる。
【0027】
自己位置の推定は、外界センサ51の検出結果と環境地
図D1とを照合することで行われる。制御装置52は、点群データから得られたランドマークと同一形状のランドマークを環境地
図D1から抽出する。制御装置52は、環境地
図D1からランドマークの位置を認識する。ランドマークの位置と荷役車両20との位置関係は、外界センサ51の検出結果から把握できる。従って、制御装置52は、ランドマークの位置を認識することで、自己位置を推定することができる。ランドマークとは外界センサ51により識別可能な特徴を有する物体である。ランドマークは、位置の変化しにくい物理的構造物である。ランドマークとしては、例えば、壁、及び柱を挙げることができる。自己位置の推定は、外界センサ51を用いた自己位置の推定に、内界センサを用いたデッドレコニングを組み合わせて行われてもよい。自己位置の推定は、外界センサ51を用いた自己位置の推定に、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から送信される衛星信号を用いた自己位置推定を組み合わせて行われてもよい。
【0028】
車両制御装置56は、例えば、制御装置52と同様のハードウェア構成を備える。車両制御装置56は、プロセッサ57と、記憶部58と、を備える。
走行アクチュエータ59は、荷役車両20を走行させるアクチュエータである。走行アクチュエータ59は、例えば、駆動輪22を回転させるモータ、及び操舵機構を含む。車両制御装置56は、自己位置を把握しながら走行アクチュエータ59を制御して荷役車両20を走行させる。
【0029】
荷役アクチュエータ60は、荷役車両20に荷役を行わせるアクチュエータである。荷役アクチュエータ60は、例えば、油圧機器に作動油を供給するポンプを駆動するモータ、及び作動油の供給を制御する制御弁を含む。油圧機器は、リフトシリンダ28及びシフトシリンダ46を含む。車両制御装置56は、荷役アクチュエータ60を制御することによってフォーク30の昇降、及びフォーク30のサイドシフトを行う。
【0030】
荷役車両20は、車両制御装置56によって走行アクチュエータ59が制御されることによって自動で走行する。荷役車両20は、車両制御装置56によって荷役アクチュエータ60が制御されることによって自動で荷役を行う。荷役車両20は、自動運転フォークリフトである。
【0031】
通信装置61は、無線LAN、Zigbee(登録商標)、LPWA(Low Power Wide Area)、又は移動通信システム等、任意の無線通信方式で通信を行うことが可能な通信機器である。通信装置61は、無線信号を送受信可能である。通信装置61は、受信した無線信号を復調したデータを車両制御装置56に出力する。
【0032】
通信装置61は、上位制御装置71からの指令を受信する。上位制御装置71は、例えば、区域A1に設けられる。上位制御装置71は、人によって入力された運行データを通信装置61に送信する。運行データは、荷役車両20に対する指令を含む。指令としては、例えば、荷役車両20を進行させる指令、荷役車両20に荷積みを開始させる指令、及び荷役車両20に荷取りを開始させる指令を挙げることができる。車両制御装置56は、上位制御装置71からの指令に従って荷役車両20の制御を行う。
【0033】
制御装置52が行う荷役動作方向決定制御について説明する。荷役動作方向決定制御は、荷役動作方向を決定する制御である。荷役動作方向は、荷役装置24を動作させる方向であって荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかによって異なる方向である。荷役動作方向の一例としては、フォーク30のサイドシフト方向を挙げることができる。荷役車両20が荷積みを行う際には、搬送車両10の前方から後方に向けて搬送車両10の荷台14に順次、荷C1を積載していく。荷C1は、運転席11に近い位置から積載される。この際、荷台14に積載される荷C1同士の間の隙間を小さくするために、サイドシフト装置40によってフォーク30のサイドシフトを行う。荷積みを行う場合であって荷役車両20が搬送車両10の右側に位置している場合、サイドシフト方向は荷役車両20の右方向になる。荷積みを行う場合であって荷役車両20が搬送車両10の左側に位置している場合、サイドシフト方向は荷役車両20の左方向になる。荷役車両20が荷取りを行う際には、搬送車両10の後方から前方に向けて搬送車両10の荷台14に積載された荷C1を順次、取っていく。荷C1同士の間の隙間が小さいと、隣り合う荷C1が干渉するおそれがあるため、荷C1同士の間の隙間を大きくするために、サイドシフト装置40によってフォーク30のサイドシフトを行う。荷取りを行う場合であって荷役車両20が搬送車両10の右側に位置している場合、サイドシフト方向は荷役車両20の左方向になる。荷取りを行う場合であって荷役車両20が搬送車両10の左側に位置している場合、サイドシフト方向は荷役車両20の右方向になる。
【0034】
荷役車両20は、例えば、上位制御装置71の指令に基づき、搬送車両10に近付く。そして、荷役車両20と搬送車両10との離間距離が所定離間未満になると、荷役動作方向決定制御が開始される。所定離間距離は、例えば、外界センサ51によって搬送車両10が検出できる距離である。
【0035】
<荷役動作方向決定制御>
図5及び
図6に示すように、ステップS1において、制御装置52は、点群マップPM1を作成する。点群マップPM1は、外界センサ51の検出結果から得られた点群データを重ね合わせることで得られる。制御装置52は、荷役車両20が移動しているときに外界センサ51から複数回点群データを取得する。制御装置52は、自己位置から点群データの各点P1の座標をセンサ座標系の座標から地図座標に変換する。制御装置52によって推定された自己位置から、地図座標系におけるセンサ座標系の原点を認識できる。制御装置52によって推定された自己位置から、地図座標系の座標軸とセンサ座標系の座標軸とのずれを認識できる。制御装置52は、地図座標系におけるセンサ座標系の原点と、地図座標系の座標軸とセンサ座標系の座標軸とのずれと、に基づき点群データの各点P1をセンサ座標系の座標から地図座標に変換する。制御装置52は、点群データを取得する度に、地図座標に変換された各点P1を重ね合わせることで点群マップPM1を作成する。点群マップPM1は、点群データの集合である。点群データの点P1に比べて、点群マップPM1の点P1は密である。
【0036】
図6には、ステップS1の処理によって得られた点群マップPM1を示す。点群マップPM1に含まれる各点P1は、物体の地図座標を表している。説明の便宜上、点群マップPM1に含まれる各点P1を第1点P11、第2点P12、第3点P13及び第4点P14に分類して説明を行う。第1点P11は、あおり17にレーザーが照射されることで得られた点P1である。第2点P12は、運転席11にレーザーが照射されることで得られた点P1である。第3点P13は、積載面15に積載されているパレットPA1及び荷C1にレーザーが照射されることで得られた点P1である。第4点P14は、第1点P11、第2点P12及び第3点P13のいずれにも該当しない点P1である。
【0037】
図5及び
図7に示すように、ステップS2において、制御装置52は、点群マップPM1から側面
図IM1を作成する。点群マップPM1は、点群データの集合であるため、側面
図IM1は、点群データから作成されているといえる。側面
図IM1は、点P1を搬送車両10の車幅方向に投影した図である。これにより、点群マップPM1を2次元にすることができるため、側面
図IM1を画像データとして扱うことができる。側面
図IM1を作成する際に制御装置52が行う処理の一例を説明する。
【0038】
制御装置52は、各点P1の法線ベクトルを算出する。法線ベクトルは、複数の点P1に囲まれる平面に対して垂直な方向に向けたベクトルである。法線ベクトルを導出する手法としては各点P1から曲面を求め、曲面から各点P1の法線ベクトルを導出する手法や、ベクトルの外積を用いる手法を挙げることができる。例えば、制御装置52が、1つの点P1の法線ベクトルを求める場合、この点P1から所定範囲内に位置する2つの点P1のそれぞれに向かうベクトルの外積を求める。この外積が法線ベクトルである。
【0039】
制御装置52は、法線ベクトルの向きが水平方向である点P1を抽出する。例えば、制御装置52は、地図座標系のXY平面に対する法線ベクトルの角度が予め定められた範囲となるか否かを判定する。法線ベクトルの向きが水平方向の場合、法線ベクトルは地図座標系のXY平面に平行である。搬送車両10の傾きや測定誤差を考慮した上で、法線ベクトルの向きが水平方向とみなせる点P1を抽出できるように、予め定められた範囲を設定している。
【0040】
制御装置52は、法線ベクトルの向きが水平方向である点P1から平面方程式を導出する。平面方程式は、例えば、RANSAC(Random Sample Consensus)等のロバスト推定法や、最小二乗法を用いることで導出することができる。平面方程式で表される平面は、鉛直方向に拡がる面である。本実施形態の搬送車両10であれば、あおり17による第1点P11によって平面を得ることができる。また、荷取りを行う際には、搬送車両10にパレットPA1及び荷C1が積載されているため、パレットPA1や荷C1による第3点P13によって平面を得ることができる。制御装置52は、平面方程式で表される平面に垂直な方向に点P1を投影することで側面
図IM1を作成する。
【0041】
次に、ステップS3において、制御装置52は、側面
図IM1から運転席11を抽出することによって側面
図IM1での運転席11の位置を判定する。側面
図IM1での運転席11の位置は、画像座標系によって表すことができる。画像座標系は、側面
図IM1の横方向をX軸、縦方向をY軸とする座標系である。運転席11の位置の判定は、画像認識を用いて行われる。本実施形態では、画像認識モデルD2を用いて画像認識を行う場合について説明を行うが、画像認識は、パターンマッチングによって行われてもよい。
【0042】
画像認識モデルD2は、機械学習によって生成された学習済みモデルである。画像認識モデルD2は、領域単位で物体のクラスを判定することができるアルゴリズムを用いている。クラスとしては、「運転席」が設定されている。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、SSD(Single Shot Multibox Detector)、R-CNN(Regional Convolutional Neural Network)、fast R-CNN、faster R-CNN、及びYOLO(You Only Look Once)を挙げることができる。画像認識モデルD2は、教師データを用いた教師有り学習、あるいは、半教師有り学習によって生成されている。教師データとしては、クラスに該当する物体が含まれる画像データと、画像データ中の物体の位置と、ラベルと、を含むデータが用いられる。教師データは、例えば、画像データ中の物体を枠で囲み、画像データにラベルを付すことで生成することができる。本実施形態では、画像データ中の運転席11を枠で囲み、当該画像データに「運転席」のラベルを付したものを教師データとすればよい。教師データとして用いる画像データは、側面
図IM1と同様に点群マップPM1から得られたものであってもよいし、撮像装置による撮像によって得られたものであってもよい。
【0043】
画像認識モデルD2は、入力された側面
図IM1から運転席11が含まれる領域を特定する。運転席11が含まれる領域は、バウンディングボックスB1で表される。
図7に示す例では、第2点P12で表される運転席11がバウンディングボックスB1で囲まれている。
【0044】
図5及び
図8に示すように、ステップS4において、制御装置52は、作業エリアA11,A12を決定する。詳細にいえば、制御装置52は、地図座標系において搬送車両10を搬送車両10の前後方向に通過する境界直線BL1を生成する。制御装置52は、境界直線BL1を挟んだ両側を作業エリアA11,A12と決定する。作業エリアA11,A12は、例えば、予め定められた大きさのエリアである。作業エリアA11,A12は、右作業エリアと、左作業エリアと、を含む。右作業エリアは、搬送車両10の右の作業エリアA11,A12である。左作業エリアは、搬送車両10の左の作業エリアA11,A12である。
【0045】
荷役車両20が搬送車両10の右に位置している場合、運転席11は側面
図IM1の右側に位置する。制御装置52は、側面
図IM1において画像座標系のX軸方向の中心位置よりも右に運転席11が位置している場合、荷役車両20が搬送車両10の右に位置していると判定する。この場合、制御装置52は、荷役車両20の位置している作業エリアA11,A12が右作業エリアであると判定できる。制御装置52は、荷役車両20の位置していない作業エリアA11,A12が左作業エリアであると判定できる。
【0046】
荷役車両20が搬送車両10の左に位置している場合、運転席11は側面
図IM1の左側に位置する。制御装置52は、側面
図IM1において画像座標系のX軸方向の中心位置よりも左に運転席11が位置している場合、荷役車両20が搬送車両10の左に位置していると判定する。この場合、制御装置52は、荷役車両20の位置している作業エリアA11,A12が左作業エリアであると判定できる。制御装置52は、荷役車両20の位置していない作業エリアA11,A12が右作業エリアであると判定できる。
【0047】
次に、ステップS5において、制御装置52は、荷役動作方向を決定する。荷役動作方向として、サイドシフト方向を決定する場合を例に挙げて説明する。前述したように、荷役動作方向は、荷役車両20が荷積みを行うか、荷取りを行うかによって異なる。荷役車両20が右作業エリアで荷積みを行う場合、制御装置52は、荷役動作方向を荷役車両20の右方向と決定する。荷役車両20が左作業エリアで荷積みを行う場合、制御装置52は、荷役動作方向を荷役車両20の左方向と決定する。荷役車両20が右作業エリアで荷取りを行う場合、制御装置52は、荷役動作方向を荷役車両20の左方向と決定する。荷役車両20が左作業エリアで荷取りを行う場合、制御装置52は、荷役動作方向を荷役車両20の右方向と決定する。
【0048】
ステップS5の処理を終えると、制御装置52は、荷役動作方向決定制御を終了する。制御装置52は、荷役動作方向決定制御で決定した荷役動作方向を車両制御装置56に出力する。車両制御装置56では、荷役動作方向に応じた制御が行われる。
【0049】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置52は、点群データから荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定する。制御装置52は、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかによって荷役動作方向を決定することができる。
【0050】
(2)制御装置52は、側面
図IM1から画像認識によって運転席11を抽出している。運転席11の位置は、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかによって異なる。側面
図IM1から運転席11を抽出することによって、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定することができる。
【0051】
(3)搬送車両10の停車位置PS1が定まっており、かつ、搬送車両10の停車向きが定まっている場合、制御装置52は、自己位置から荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定できる。しかしながら、
図1に示すように、2つの停車位置PS1同士の間に荷役車両20が位置している場合、2つの搬送車両10の一方を基準にした場合には右、他方を基準にした場合には左に荷役車両20が位置する。このため、2つの停車位置PS1同士の間に荷役車両20が位置している場合、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定できない。これに対し、側面
図IM1から画像認識によって運転席11を抽出する場合、荷役車両20が2つの停車位置PS1同士の間に位置している場合であっても、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定できる。
【0052】
(4)車両制御装置56は、上位制御装置71からの指令に従って荷役車両20の制御を行う。指令は、人によって入力された運行データに含まれる。仮に、荷役動作方向を制御装置52によって決定しない場合、人が運行データを入力する際に、荷役動作方向を指定する必要がある。この際、人が荷役動作方向を誤って入力するおそれがある。これに対し、制御装置52が荷役動作方向を決定することで、人が荷役動作方向を誤って入力することが防止される。人が荷役動作方向を誤って入力することによる荷役車両20の誤動作を防止できる。また、運行データの作成工数を減らすことができる。
【0053】
(5)自己位置の推定に用いている外界センサ51を用いて荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定することができる。荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定するための専用のセンサを用いる場合に比べて、部品点数を削減できる。
【0054】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
○荷役動作方向決定制御は、自己位置と停車位置PS1との位置関係から荷役動作方向を決定する制御であってもよい。
図9に示すように、ステップS11において、制御装置52は、自己位置を推定する。自己位置の推定は、実施形態と同様の処理である。
【0056】
次に、ステップS12において、制御装置52は、自己位置と停車位置PS1との位置関係から、荷役動作方向を決定する。自己位置と停車位置PS1との位置関係から荷役動作方向を決定する場合、搬送車両10の停車向きを定める必要がある。これにより、停車位置PS1に搬送車両10が停車している場合に、自己位置が搬送車両10の左右のいずれに該当するかを判定できる。制御装置52は、自己位置から荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定できるといえる。そして、制御装置52は、荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかによって荷役動作方向を決定することができる。
【0057】
自己位置と停車位置PS1との位置関係から荷役動作方向を決定する場合、停車位置PS1の面積は狭くすることが好ましい。停車位置PS1の面積が広い場合、荷役車両20の位置が同一の場合であっても、搬送車両10の位置によって荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置するかが異なる場合がある。例えば、
図10に示すように、停車位置PS1のうち第1位置A2に搬送車両10が停車しており、当該搬送車両10の右に荷役車両20が位置しているとする。荷役車両20の位置が同一の場合であって、停車位置PS1のうち第2位置A3に搬送車両10が停車したとする。第1位置A2と第2位置A3とは、荷役車両20を挟んだ位置とする。この場合、第2位置A3に停車している搬送車両10の左に荷役車両20が位置する。搬送車両10の位置によって荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置するかが異ならないように、停車位置PS1の面積を設定することが好ましい。
【0058】
○画像認識モデルD2として、側面
図IM1単位で物体のクラスを判定することができるアルゴリズムを用いてもよい。この場合、クラスとして「右向き」及び「左向き」を設定すればよい。機械学習のアルゴリズムとしては、例えば、CNN(Convolution Neural Network)を挙げることができる。教師データとしては、右向きの搬送車両10が写る画像データに「右向き」のラベルを付したデータと、左向きの搬送車両10が写る画像データに「左向き」のラベルを付したデータとを用いればよい。
【0059】
制御装置52は、画像認識モデルD2に側面
図IM1を入力することによって、側面
図IM1に写る搬送車両10が右向きか左向きかを判定する。荷役車両20が搬送車両10の右に位置している場合、側面
図IM1の搬送車両10は右向きに写る。荷役車両20が搬送車両10の左に位置している場合、側面
図IM1の搬送車両10は左向きに写る。従って、制御装置52は、画像認識モデルD2の出力から、荷役車両20が搬送車両10の右に位置しているか、左に位置しているかを判定できる。
【0060】
○制御装置52は、点群マップPM1を作成しなくてもよい。この場合、制御装置52は、外界センサ51から取得した点群データを地図座標に変換して、ステップS2以降の処理を行う。即ち、制御装置52は、複数の点群データを集合させた点群マップPM1を作成せずに、単一の点群データから荷役車両20が搬送車両10の左右のいずれに位置しているかを判定してもよい。
【0061】
○荷役装置24は、例えば、ロボットアームを備えているものであってもよい。この場合の荷役動作方向は、ロボットアームを動作させる方向であってもよい。例えば、ロボットアームによって荷C1を荷積みする方向を荷役動作方向としてもよい。
【0062】
○搬送車両10は、搬送を行える車両であればよく、例えば、AGV(Automatic Guided Vehicle)やAMR(Autonomous Mobile Robot)であってもよい。この場合、制御装置52は、画像認識モデルD2を用いて、搬送車両10が右向きか左向きかを判定することによって、荷役車両20が搬送車両10の右に位置しているか、左に位置しているかを判定してもよい。制御装置52は、自己位置から荷役車両20が搬送車両10の右に位置しているか、左に位置しているかを判定してもよい。
【0063】
○荷役動作方向決定制御の一部の処理を車両制御装置56が行ってもよい。この場合、車両制御装置56も制御装置といえる。
○荷役動作方向決定制御の一部の処理を上位制御装置71が行ってもよい。この場合、上位制御装置71も制御装置といえる。荷役動作方向決定制御の全部の処理を上位制御装置71が行ってもよい。この場合、上位制御装置71が制御装置である。このように、荷役動作方向決定制御の少なくとも一部の処理を上位制御装置71に行わせる場合、荷役車両20及び上位制御装置71が荷役システムである。
【符号の説明】
【0064】
P1…点、10…搬送車両、11…運転席、20…荷役システムである荷役車両、24…荷役装置、51…外界センサ、52…制御装置。