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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163618
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】横型ロータリコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F04C29/02 361A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074632
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】517403558
【氏名又は名称】瀋陽中航機電三洋制冷設備有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 正純
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 隆泰
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA09
3H129AA15
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB05
3H129BB35
3H129CC06
3H129CC09
3H129CC25
3H129CC44
(57)【要約】
【課題】横型のロータリコンプレッサにおいて、密閉容器外へオイルを含んだ冷媒ガスが吐出される度合いを極力下げて、密閉容器内のオイル量の低下による不具合を解消する。
【解決手段】横型の密閉容器2内に、電動要素4と回転圧縮要素8と密閉容器2のオイル溜め3に収納された潤滑用のオイルfとオイルfを回転圧縮要素に供給するオイルポンプ13と回転圧縮要素8の電動要素4側に形成された略環状の流体通過部39と密閉容器2でのオイルポンプ13側となる上部に位置する冷媒吐出管40とを備えていて、冷媒吐出管40は、延長管部46を有していて、その延長管部46は、複数個の透孔48を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型の密閉容器内に、
電動要素と、
前記電動要素で駆動される回転圧縮要素と、
前記密閉容器の内底部のオイル溜めに収納された潤滑用のオイルと、
前記回転圧縮要素の電動要素とは反対側に設けられ、オイルを前記回転圧縮要素に供給するためのオイルポンプと、
前記密閉容器内の上部を、回転圧縮要素の電動要素側となる部分に配した環状の圧力制御板で電動要素側と回転圧縮要素側とに一部区画して、この圧力制御板の外側に沿って形成された略環状の流体通過部と、
前記密閉容器でのオイルポンプ側となる上部に位置する冷媒吐出管と、
を備えていて、
前記冷媒吐出管は、密閉容器内で密閉容器の長手方向に沿って延設されて端部が閉じている延長管部を有していて、
前記延長管部は、密閉容器の胴周り方向に沿った方向に貫通して開口している複数個の透孔を備えていることを特徴とする横型ロータリコンプレッサ。
【請求項2】
密閉容器のオイルポンプ側の端部を密閉容器の長手方向に延長して、オイルポンプ側のオイル溜めの空間が、回転圧縮要素の電動要素側とは反対側に拡大されている請求項1に記載の横型ロータリコンプレッサ。
【請求項3】
密閉容器を通る冷媒ガスの循環量と冷媒吐出管の透孔の合算した開口面積との比率が500以下である請求項1または2に記載の横型ロータリコンプレッサ。
【請求項4】
密閉容器内のオイル溜め上の空間容積と密閉容器を通る冷媒ガスの循環量との比率が0.03以上である請求項1から3の何れか一項に記載の横型ロータリコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内の回転圧縮要素で圧縮された冷媒ガスを潤滑用のオイルと共に、密閉容器内の電動要素側に一旦に吐出してから、密閉容器外に吐出するようにした横型ロータリコンプレッサに関するものである。
【0002】
従来、この種の横型ロータリコンプレッサは、回転圧縮要素の吸込ポートから冷媒ガスがシリンダの低圧室側に吸入され、ローラとベーンの動作により圧縮されてシリンダの高圧室側より吐出ポート、吐出消音室を経て密閉容器内に吐出される。その後、外部の放熱器などに流入する構成とされている。
【0003】
また、密閉容器内の底部はオイル溜めとされており、回転圧縮要素の電動要素とは反対側に取り付けられたオイルポンプ(給油手段)によりオイル溜めから潤滑用のオイルが吸い上げられ、回転圧縮要素に供給されて回転圧縮要素の摩耗を防いでいる。
【0004】
このような横型ロータリコンプレッサにおいて、回転圧縮要素で圧縮された冷媒ガス中には前記オイルが混入し、冷媒ガスと共に当該オイルも密閉容器内に吐出される。
【0005】
冷媒ガス中のオイル分離を促進するため、冷媒ガスは回転圧縮要素から一旦シリンダの電動要素側に吐出され、さらに、この電動要素側から回転圧縮要素側へと密閉容器内で回すようにしている。
そして、冷媒ガスの外部への吐出は、密閉容器の上部でのオイルポンプ側となる部分に設けた冷媒吐出管から行われていた。
【0006】
そのため、オイルはオイルポンプ側だけでなく、電動要素側にも溜まるようになるので、オイルポンプ部分の油面が低下するとオイルの吸引が円滑に行えなくなる不具合が生じる。
【0007】
上述したようにオイルポンプ側と電動要素側との両方で油面の高さが揃うことでオイルポンプ側のオイル溜めの液面が低下すると、オイルの吸引が円滑に行なえなくなるので、この不具合を生じないようにするために、密閉容器内の電動要素側の冷媒ガスの圧力を高くし、オイルポンプ側の冷媒ガスの圧力が低くなるように、圧力差を生じさせる工夫が提案されている。
【0008】
その技術が特許文献1に示されている。特許文献1は横型ロータリコンプレッサに関するものであり、図10で表したように横型ロータリコンプレッサaは、横型の密閉容器b内に電動要素cと、この電動要素cで駆動される回転圧縮要素dと、密閉容器bの内底部のオイル溜めeに収容される潤滑用のオイルfと、オイルfを回転圧縮要素dに供給するための給油手段(オイルポンプg)とを備えている。
【0009】
そして、電動要素c側とオイルポンプg側とで圧力差が形成されるようにするために、回転圧縮要素dの電動要素c側となる部分に、オイルfを含んだ冷媒ガスhの流れを規制する邪魔板となる環状の圧力制御板iを設けるとともに、回転圧縮要素dのオイルポンプg側となる部分に同じく邪魔板となる略弧状の圧力制御板jを設けている。
【0010】
特許文献1での回転圧縮要素dの電動要素c側に設けた環状の圧力制御板iは、密閉容器bの上部を電動要素c側と回転圧縮要素d側とに一部区画する。具体的には、環状の圧力制御板iは、その外周が密閉容器bの内面に近接していて、環状の圧力制御板iと密閉容器bとの隙間を、オイルfを含んだ状態で冷媒ガスhが電動要素c側から回転圧縮要素d側に向けて通るときに差圧が形成される間隔としている。
【0011】
また、回転圧縮要素dのオイルポンプg側に設けた略弧状の圧力制御板jは、前記環状の圧力制御板iで仕切られた密閉容器bの上部の回転圧縮要素d側から密閉容器bの端部側に亘る部分を、回転圧縮要素d側とオイルポンプg側とに一部区画するものとしている。具体的には、この圧力制御板jの密閉容器b側の外縁が密閉容器bの内面に近接していて、略弧状の圧力制御板jと密閉容器bとの隙間を、オイルfを含んだ状態で冷媒ガスhが回転圧縮要素d側からオイルポンプg側に向けて通るときに差圧が形成される間隔としている。
【0012】
このように回転圧縮要素dの電動要素c側に環状の圧力制御板iを設けるとともに、オイルポンプg側に略弧状の圧力制御板jを設けて、オイルfを含んだ冷媒ガスhが両圧力制御板i、jの外縁に沿う隙間を順に通ることで、電動要素c側の圧力を高くするとともに、オイルポンプg側の圧力が低くなるようにしている。
【0013】
圧力制御板iや圧力制御板jを備えた横型ロータリコンプレッサaにおいて、回転圧縮要素dから電動要素c側に吐出されたオイルfを含む冷媒ガスhは、電動要素cの上方へと導かれる。
【0014】
電動要素cの上部へと導かれた冷媒ガスhは環状の圧力制御板iの周囲の隙間を通り、更に略弧状の圧力制御板jの側方の開放部分や密閉容器bとの間の隙間を通るようになり、これらの隙間を通過するときにオイルfと冷媒ガスhとが分離される。図10で、オイルfの移動と冷媒ガスhの移動を矢印で示した。
【0015】
そして、分離されてオイル溜めeに降りたオイルfは、電動要素c側とオイルポンプg側とに圧力差を形成されていることで、密閉容器bの内底部でのオイルポンプg側に移動するとともに、オイルポンプg側で溜まるオイルfの油面lを高めて、オイルポンプgが円滑にオイルfを吸引できる。
【0016】
また、オイルポンプg側となる密閉容器bの上部に弧状に曲がった冷媒吐出管mを配置している。冷媒吐出管mは、この冷媒吐出管mの下端をこの密閉容器bの胴位置から密閉容器b内に臨むようにして取り付けている。そして、冷媒ガスhは、オイルポンプg側となる密閉容器bの上部に取り付けられている冷媒吐出管mから密閉容器b外へと吐出されるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2003-269356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
横型ロータリコンプレッサaでは、上述したように回転圧縮要素d側から電動要素c側に向けて送り出されたオイルfを含む冷媒ガスhが、密閉容器b内での電動要素cの上方の部分を通った後、圧力制御板i、jで形成された隙間を通りながらオイルポンプgがある空間の下方に向けて導かれる。
そして、オイルfを含む冷媒ガスhは、圧力制御板i、jで形成された隙間を通ることで、オイルfと冷媒ガスhとに分離されるようにはしているが、しかし、幾分かのオイルfを含んだ状態で冷媒ガスhが冷媒吐出管mから密閉容器b外に吐出されている。
【0019】
特に、高出力、高回転時では、冷媒ガスに溶け込んだオイルは分離されず、オイルを含んだ冷媒ガスが冷媒吐出管を介して密閉容器外へ吐出され、密閉容器内のオイルの量が低下してしまうという不具合がある。
【0020】
具体的には低温用の横型ロータリコンプレッサのインバータ機種では高回転時においても冷媒循環量が少ないので、オイルの吐出量も少量で不具合とされることはなかった。
しかし、高温用の横型ロータリコンプレッサのインバータ機種では、高回転時の冷媒ガスの循環量が多くなる。また、その高回転時に差圧が急上昇してオイルポンプ側でのオイル溜めの油面も上昇し過ぎてしまい、この点からもオイルの吐出量が増加していた。そのため、密閉容器内のオイル量が低下してしまうという不具合があった。
【0021】
そこで本発明は上述した事情に鑑み、横型のロータリコンプレッサにおいて、密閉容器外へオイルを含んだ冷媒ガスが吐出される度合いを極力下げるようにすることを課題とし、密閉容器内のオイル量の低下による不具合を解消することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、
横型の密閉容器内に、
電動要素と、
前記電動要素で駆動される回転圧縮要素と、
前記密閉容器の内底部のオイル溜めに収納された潤滑用のオイルと、
前記回転圧縮要素の電動要素とは反対側に設けられ、オイルを前記回転圧縮要素に供給するためのオイルポンプと、
前記密閉容器内の上部を、回転圧縮要素の電動要素側となる部分に配した環状の圧力制御板で電動要素側と回転圧縮要素側とに一部区画して、この圧力制御板の外側に沿って形成された略環状の流体通過部と、
前記密閉容器でのオイルポンプ側となる上部に位置する冷媒吐出管と、
を備えていて、
前記冷媒吐出管は、密閉容器内で密閉容器の長手方向に沿って延設されて先端が閉じている延長管部を有していて、
前記延長管部は、密閉容器の胴周り方向に沿った方向に貫通して開口している複数個の透孔を備えていることを特徴とする横型ロータリコンプレッサを提供して、上記課題を解消するものである。
【0023】
そして、本発明は、密閉容器のオイルポンプ側の端部を密閉容器の長手方向に延長して、オイルポンプ側のオイル溜めの空間が、回転圧縮要素の電動要素側とは反対側に拡大されていることが良好である。
【0024】
また、本発明は、密閉容器を通る冷媒ガスの循環量と冷媒吐出管の透孔の合算した開口面積との比率が500以下であることが良好である。
【0025】
また、本発明は、密閉容器内のオイル溜め上の空間容積と密閉容器を通る冷媒ガスの循環量との比率が0.03以上であることが良好である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、冷媒吐出管は、密閉容器内で密閉容器の長手方向に沿って延設された延長管部を有していて、前記延長管部は、密閉容器の胴部の周方向に沿った方向に貫通して開口している複数個の透孔を備えているので、オイルを含んだ冷媒ガスが、冷媒吐出管の延長管部に開口された透孔に入り込むときにオイルと冷媒ガスとに分離され、延長管部内に溜まってからオイルポンプ側のオイル溜めの部分に流れ落ちるようになる。そのため、オイルが密閉容器外に吐出される量が抑えられる。
【0027】
また、密閉容器のオイルポンプ側のオイル溜めの空間が、回転圧縮要素の電動要素側とは反対側に拡大されることで、横型ロータリコンプレッサの稼働時におけるオイルポンプ側のオイル溜めの油面が上昇するのを抑えられるようになる。
稼動時に、オイルポンプ側のオイル溜めの油面が過度に上昇することが無くなるので、オイルポンプ側のオイル溜めの上方の空間が十分に広く形成される。よって、オイルを含んだ冷媒ガスがこのオイル溜めの上方の空間内で流動する内にオイルと冷媒ガスとに分離され易くなり、よって、オイルが密閉容器外に吐出される量が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態の横型ロータリコンプレッサにおけるオイルと冷媒ガスの動きを図2のa-a線及び冷媒吐出管を通るb-b線に沿う径方向位置であって密閉容器長手方向断面位置で概略的に示す説明図である。
図2】実施の形態をオイルポンプ側から見た状態で示す説明図である。
図3】回転圧縮要素を示すものであり、(a)はオイル吸い上げパイプ側から第二の圧力制御板を見た状態を示す説明図、(b)は回転軸方向に交差する方向から回転圧縮要素を見た状態を示す説明図、(c)は第一の圧力制御板を正面にして見た状態を示す説明図である。
図4】第一の圧力制御板を示すもので、(a)は片面側から見た状態を示す説明図、(b)は断面を示す説明図である。
図5】第二の圧力制御板と吐出消音板とを示すもので、(a)は片面側から見た状態を示す説明図、(b)は(a)のa-a線に沿った断面を示す説明図である。
図6図2のa-a線及び冷媒吐出管を通るb-b線に沿う径方向断面位置での一部を拡大して示す説明図である。
図7】冷媒吐出管を側方から見た状態で示す説明図である。
図8】「オイル吐出量」と「冷媒循環量と吐出配管断面積比率」の相関をグラフで示す説明図である。
図9】「オイル吐出量」と「ケース内オイル分離空間容積と冷媒循環量比率」の相関をグラフで示す説明図である。
図10】従来の横型ロータリコンプレッサにおけるオイルと冷媒ガスの動きを密閉容器長手方向断面位置で概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は横型ロータリコンプレッサで、図1に示すように前記横型ロータリコンプレッサ1は、両端が密閉された横長円筒状の密閉容器2を備え、この密閉容器2の内底部をオイル溜め3としている。
前記密閉容器2の内側には、電動要素4と、この電動要素4の回転軸5により駆動される第一の回転圧縮要素6と第二の回転圧縮要素7とからなる回転圧縮要素(回転圧縮機構部)8が収納されている。
なお、図1図2のa-a線に沿った位置で実施の形態の構成を概略的に示していて、説明を容易にするために、図2に示すように表示位置を部分的に変えて図示している。
【0030】
(電動要素)
密閉容器2の電動要素4側の端部には円形の取付孔9が形成されている。前記取付孔9には、電動要素4に電力を供給するためのターミナル10が取り付けられている。
【0031】
電動要素4は、密閉容器2の内周面に沿って環状に取り付けられたステータ11と、このステータ11の内側に僅かな隙間を設けて回転自在に挿入されたロータ12とからなるものである。そして、ロータ12を、このロータ12の中心を通って密閉容器2の長手方向に伸びる回転軸5に固定している。
【0032】
ステータ11は、ドーナッツ状の電磁鋼板を積層した積層体と、この積層体の歯部に直巻き(集中巻き)方式により巻装されたステータコイルを有している。そして、ロータ12もステータ11と同様に電磁鋼板の積層体で形成されている。
【0033】
(オイルポンプ)
第一の回転圧縮要素6と第二の回転圧縮要素7とからなる回転圧縮要素8の電動要素4とは反対側、即ち、回転軸5の回転圧縮要素8側の端部に、給油手段であるオイルポンプ13が形成されている。
【0034】
オイルポンプ13は、密閉容器2の内底部を利用して構成されたオイル溜め3から潤滑用のオイル14を吸い上げて、回転圧縮要素8における第一の回転圧縮要素6及び第二の回転圧縮要素7の各摺動部分に供給し、摩耗を防止するために設けられている。
オイルポンプ13からは密閉容器2の内底部に向けてオイル吸い上げパイプ15が延びていて、オイル吸い上げパイプ15の下端が、オイル溜め3(オイルポンプ13側のオイル溜め3)内で開口している。
【0035】
(回転圧縮要素)
第一の回転圧縮要素6は第一のシリンダ16を有し、第二の回転圧縮要素7は第二のシリンダ17を有している。第一のシリンダ16と第二のシリンダ17との間には中間仕切板18が位置していて、中間仕切板18は第一のシリンダ16と第二のシリンダ17とで狭持されている。即ち、回転圧縮要素(回転圧縮機構部)8は、第一の回転圧縮要素6及び第二の回転圧縮要素7と、中間仕切板18とを備えている。
【0036】
第一及び第二の回転圧縮要素6、7は、それぞれ中間仕切板18の両側(図1では左右)に配置された第一及び第二のシリンダ16、17と、180度の位相差を有して回転軸5に設けられた第一及び第二の偏心部19、20に嵌合され、第一及び第二のシリンダ16、17内を偏心回転する第一及び第二のローラ21、22と、これらローラ21、22にそれぞれ当接して第一及び第二のシリンダ16、17内をそれぞれ低圧室側と高圧室側に区画する図示しないベーンと、第一のシリンダ16の電動要素4側の開口面と第二のシリンダ17の電動要素4とは反対側(オイルポンプ13側)の開口面をそれぞれ閉塞して回転軸5の軸受けを兼用する主軸受け23、副軸受け24とから構成されている。
【0037】
第一のシリンダ16には、吸込ポートにてこの第一のシリンダ16内部の低圧室側と連通する吸込通路25が形成されている。また、第二のシリンダ17及び中間仕切板18にも吸込ポートにて第二のシリンダ17の内部の低圧室側と連通する吸込通路26が形成されている。
【0038】
これら吸込通路25、26は後述する冷媒導入管27の一端と連通するものとしており、冷媒導入管27からそれぞれの吸込通路25、26及び吸込ポートを経て第一、第二のシリンダ16、17に冷媒ガスが供給される。
【0039】
(吐出消音室)
第一及び第二のシリンダ16、17の内部で圧縮された冷媒ガスは、主軸受け23、副軸受け24にそれぞれ形成された吐出ポートにて主軸受け23の電動要素4側及び副軸受け24の電動要素4とは反対側に形成された吐出消音室28、29にそれぞれ吐出される。
【0040】
電動要素4側の吐出消音室28は、主軸受け23の回転軸5の軸受け部分を貫通させる部分を中心に開口した吐出消音板30を前記軸受け部分周りに被せ付けるようにして主軸受け23に取り付けることで形成されている。そして、前記吐出消音室28には、第一のシリンダ16の高圧側が主軸受け23に開口の通孔を介して連通している。
【0041】
また、オイルポンプ13側の吐出消音室29は、副軸受け24の軸受け部分を含めてこの副軸受け24をオイルポンプ13側からカップ状の吐出消音板31を被せ付けるように副軸受け24に取り付けることで形成されている。
図示されているように吐出消音板31の中心には、オイルポンプ13のオイル吸い上げパイプ15が取り付けられた取付孔が設けられている。そして、前記吐出消音室29には、第二のシリンダ17の高圧側が副軸受け24に開口の通孔を介して連通している。
【0042】
吐出消音室28と吐出消音室29は、第一、第二のシリンダ16、17(シリンダの板材部分)と中間仕切板18を貫通して前記吐出消音室28内に達して開口する連通路(不図示)にて連通されている。図1において符号32は、前記連通路の吐出消音室28側の末端であって、主軸受け23のシリンダ対応部分に形成された通孔である。
【0043】
回転圧縮要素8が稼動しているとき、第二の回転圧縮要素7で圧縮された高圧の冷媒ガスが、吐出消音室29と上記連通路とを経て吐出消音室28に吐出される。また、第一の回転圧縮要素6で圧縮された高圧の冷媒ガスが吐出消音室28に吐出され、前記第二の回転圧縮要素7で圧縮された高圧の冷媒ガスと合流し、吐出消音板30の主軸受け23の軸受け部分を貫通させる開口部分とその軸受け部分との間を通して、電動要素4側に吐出される。
なお、説明を容易にするために、図1では連通路の吐出消音室28側の末端の通孔と第一のシリンダ16内の空間とが相対した状態で描かれている。
【0044】
このとき、冷媒ガスh中には第一及び第二の回転圧縮要素6、7に供給されたオイルfが混入しているが、このオイルfも密閉容器2内の電動要素4側に吐出されることになる。ここで、冷媒ガスh中に混入したオイルfは、その後冷媒ガスhから分離して密閉容器2の内底部のオイル溜め3に溜まる。このように密閉容器2内において、オイル溜め3の上の空間は、オイル分離空間となる。
【0045】
(回転軸)
回転軸5には、回転中心線上にしてこの回転軸5の副軸受け24で軸受けされている端部側から電動要素4側に向けて不図示のオイル通路が設けられている。そして、オイルポンプ13は、オイル通路の副軸受け24で軸受けされている端部側において、電動要素4側に向けてオイルを導くとともに、オイル吸い上げパイプ15側からオイルを吸引する公知の構成を有してなるものである。
【0046】
さらに回転軸5には、第一の回転圧縮要素6と第二の回転圧縮要素7、また、主軸受け23、副軸受け24の軸受け部分にオイルを案内する小孔が設けられ、この小孔が前記オイル通路に連通している。回転軸5のオイル通路と前記小孔を介してオイルは、第一の回転圧縮要素6と第二の回転圧縮要素7、また、主軸受け23、副軸受け24の軸受け部分に供給されて潤滑が行なわれる。
【0047】
そのため、上述したように冷媒ガスh中には第一及び第二の回転圧縮要素6、7に供給されたオイルfが混入し、オイルfを含んだ冷媒ガスhからなる流体が、密閉容器2内の電動要素4側に吐出される。横型ロータリコンプレッサ1では、電動要素4側に吐出された流体からオイル分離をし、分離されたオイルfはオイル溜め3に集まり、また、オイル分離を経た流体、即ち、圧縮されている冷媒ガスhは、密閉容器2の外へと吐出されるようにしている。
【0048】
(圧力制御板)
さらに本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1は、オイル分離が行なわれるときに差圧を形成して、密閉容器2の電動要素4側の空間の圧力を高くするとともに、オイルポンプ13側の空間の圧力を低くし、これによってオイルポンプ13側のオイル溜め3の油面49の高さを高めて、オイルポンプ13のオイル吸い上げが適切に行なわれるようにしている。さらに、オイル分離を効率よく行なって冷媒ガスが密閉容器2の外へ吐出されるようにしている。
【0049】
オイル分離を行なう際に上記差圧を形成するために、横型ロータリコンプレッサ1は、回転圧縮要素8の電動要素4側とオイルポンプ13側とに圧力制御板を備えている。
【0050】
(第一の圧力制御板)
本実施の形態において、第一の回転圧縮要素6の電動要素4側に第一の圧力制御板33が配置されている。第一の圧力制御板33は、吐出消音室28の外周に沿って形成されていて、図4に示すように環状を呈した鋼板により構成されている。そして、吐出消音室28を形成する上記吐出消音板30を嵌め込む中央の開口部分に、この開口部分の中心に向けて張り出る二片の取付片34を有し、この取付片34を吐出消音板30に重ねて、吐出消音板30と共に主軸受け23にビス止めしている。
【0051】
なお、上記吐出消音板30は第一の圧力制御板33と同種の鋼材である。
【0052】
環状の第一の圧力制御板33の外縁35は、図4に示すようにほぼ全周において円形状としている。図3(c)と図4(a)においては外縁の一部分が、コンプレッサ組立時の他部品との干渉を避けるためなどの理由により直線の縁としている。この直線の縁とした箇所は、オイル溜め3のオイルに没する部分に含まれる。
【0053】
吐出消音板30と第一の圧力制御板33とは、主軸受け23の電動要素4側から取り付けられていて、第一の圧力制御板33の外縁35が密閉容器2の内周面42に隙間を介して近接している。
【0054】
第一の圧力制御板33の円形状となっている外縁35が密閉容器2の内周面42に隙間を介して近接していることから、前記第一の圧力制御板33は、回転圧縮要素8の電動要素4側となる部分に配した状態で、密閉容器2内の上部を、電動要素4側と回転圧縮要素8側とに一部区画している。区画をしていない部分は、第一の圧力制御板33の外縁35と密閉容器2の内周面42との間となる。
【0055】
そして、区画していない第一の圧力制御板33の外縁35と密閉容器2の内周面42との間は、オイルを含む冷媒ガスからなる流体が、電動要素4側から回転圧縮要素8側に向けて通ることができる部分となる。よって、本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1において、第一の圧力制御板33は、密閉容器2内の上部を電動要素4側と回転圧縮要素8側とに一部区画し、この第一の圧力制御板33の外縁35に沿って前記隙間からなる略環状の第一の流体通過部39を形成している。
【0056】
略環状の第一の流体通過部39は、オイルfを含む冷媒ガスhからなる流体が通ることで電動要素4側と回転圧縮要素8側との間に僅かな差圧が構成される程度の十分な間隔に形成されている。
【0057】
第一、第二の回転圧縮要素6、7で圧縮され、吐出消音室28から電動要素4が位置する空間側に吐出された冷媒ガスh(オイルfを含む流体)が、上記第一の流体通過部39を通ることにより、上述したように僅かながら差圧が構成されるが、電動要素4側の空間を経た流体は、支承なく回転圧縮要素8側に流れる。
【0058】
(第二の圧力制御板)
上記横型ロータリコンプレッサ1は、図2に示すように密閉容器2の容器頂部位置から胴周り方向での容器側面側となる部分に冷媒吐出管40が設けられている。そして、上述したように横型ロータリコンプレッサ1は、回転圧縮要素8のオイルポンプ13側にも圧力制御板を備えている。
【0059】
図2に示すように回転圧縮要素8のオイルポンプ13側であって、密閉容器2の胴周り方向での位置を冷媒吐出管40にほぼ重ならない位置にした圧力制御板を、上記吐出消音室29の外周の一部分に配された第二の圧力制御板41として備えている。
【0060】
図5に示されているように第二の圧力制御板41は、吐出消音室29を形成する吐出消音板31に一体にした鋼板から形成されている。この第二の圧力制御板41は略円弧状の形状にして第二の回転圧縮要素7側から密閉容器2に向けて延設された形態であり、この密閉容器2側の外縁43が密閉容器2の内周面42に隙間を介して近接している。
【0061】
第二の圧力制御板41における密閉容器2の内周面42側に臨む外縁43が、その密閉容器2に隙間を介して近接していることから、第二の圧力制御板41は、回転圧縮要素8のオイルポンプ13側となる部分に配した状態で、密閉容器2内の上部を、回転圧縮要素8側とオイルポンプ13側に一部区画している。区画をしていない部分は、第二の圧力制御板41の外縁43と密閉容器2の内周面42との間、そして、第二の圧力制御板41を通る胴周り方向においてこの第二の圧力制御板41自体が存在していない部分である。
【0062】
第二の圧力制御板41と一体となっている吐出消音板31自体の密閉容器2下部側には、オイルの移動を損なうまで張り出している部分は存在せず、吐出消音板31の下部が直接オイル溜め3のオイルfに没する。
【0063】
上記区画されていない第二の圧力制御板41の外縁43と密閉容器2の内周面42との間は、オイルfを含む冷媒ガスhからなる流体が、回転圧縮要素8側の空間からオイルポンプ13側の空間に向けて通ることができる部分となる。
【0064】
よって、本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1において、第二の圧力制御板41は、密閉容器2内の上部を回転圧縮要素8側とオイルポンプ13側とに一部区画し、第二の圧力制御板41の外縁43に沿った部分に、隙間からなる略弧状の第二の流体通過部44を形成している。
【0065】
(冷媒吐出管)
上記冷媒吐出管40は、上述したように密閉容器2の容器頂部位置から胴周り方向での容器側面側に偏倚した部分に設けられている(図2)。そして、この冷媒吐出管40の下端は図10に示す従来の横型ロータリコンプレッサaの場合とは異なっていて、本実施の形態では、冷媒吐出管40が密閉容器2の内部に延長されていて、密閉容器2の胴壁45の位置から密閉容器2の長手方向であって、ターミナル10とは反対の端部側に向けて延設された延長管部46を有している。
【0066】
密閉容器2の外部側に位置する部分の冷媒吐出管40は従来と同じように円弧状に曲がった部分を経て不図示の機器への接続部分が連続しているとともに、密閉容器2の胴壁45に対して直交するようにしてこの密閉容器2の内部に進み、そして、延長管部46は、曲がり部分を経て密閉容器2の端部(ターミナル10とは反対の端部)に向けて延びていて、直線管部分47が斜め下方に傾斜している。よって、冷媒吐出管40全体は、図7に示すように密閉容器2に取り付けた状態を側方から見たときの形状で略S字状となる。
【0067】
延長管部46の直線管部分47には、密閉容器2の胴周り方向に沿った方向に貫通して開口している八個の透孔48を備えていて、管中心軸位置を間にして四個ずつ線対称となる配置としている。
【0068】
図2では、密閉容器2でのオイルポンプ13側の空間(オイル溜め3の上方空間)でのオイルfと冷媒ガスhの流れを概略的に示していて、この空間では密閉容器2の胴周り方向に沿った方向でオイルfと冷媒ガスhが流れている。
【0069】
そして、冷媒吐出管40の延長管部46はオイルfと冷媒ガスhの流れに直交する配置となり、この流れの上流側(混合した流体が延長管部46に当たる側)と下流側(混合した流体が延長管部46内から出る側)とに四個ずつにして透孔48が位置している。この延長管部46の部分では、オイルfを含んだ冷媒ガスhが透孔48を通るときに、オイルfと冷媒ガスhとに分離され、冷媒ガスhが延長管部46の内部を通って密閉容器2の外へと吐出される一方、オイルfは延長管部46の下端に溜まり、さらに透孔48からオイル溜め3へあふれ落ちるようにしている。
【0070】
このように、冷媒ガスhがオイルポンプ13の空間から冷媒吐出管40を介して密閉容器2の外へ送り出されるとき、延長管部46の部分でもオイルfと冷媒ガスhとが分離されるため、密閉容器2の外へのオイル吐出量が低減する。
【0071】
図7は冷媒吐出管40を単独で示している。この実施の形態における冷媒吐出管40では、延長管部46が胴壁45の位置から曲げ角度50を110°にして緩やかに曲げられている。そして、曲がった管部分に連続して下り傾斜する直線管部分47に上記透孔48が、冷媒ガスの流れ方向での上流側となる側面と下流側となる側面とに四個ずつにして開口している点が示されている。
さらに透孔48は孔径を3mmとしており、直線管部分47の長さ方向に沿ってピッチ51を10mmの間隔にして配置されている。
なお、直線管部分47の端部は閉じている。
【0072】
このように孔径3mmの透孔48を四個ずつにして八個備えることで、透孔48すべての断面積(透孔48の面積の合算値)が、従来例での冷媒吐出管mの内部の縦断面積に対する割合が高くなる。
即ち、実施の形態では、冷媒吐出管40の管材料と従来例での冷媒吐出管mの管材料とは同じ管材料で内径が同一である。よって、以下の表1で示すように孔径3mmの透孔48を八個備えた冷媒吐出管40では、その管内部(冷媒ガスを送り出す部分)の断面積に対する透孔48の総断面積の割合が大きくなるので、効率良くオイルfと冷媒ガスhとの分離を行なうことができて良好である。
【0073】
(冷媒吐出管の透孔個数の検討)
密閉容器2のオイルポンプ13側に空間を拡大して上述のように拡大した空間に向けて延長管部46を設けた冷媒吐出管40について、上記実施の形態では孔径3mmとした八個の透孔48を設けたが、この透孔48について現状の管材料を使用して各種のサンプルとして制作した冷媒吐出管に基づいて良好な範囲を検討し、その結果を以下の表1に示した。
【0074】
なお、従来例でのL型の冷媒吐出管mでは下端で開いている孔が、本実施の形態での冷媒吐出管40に設けられている透孔48に相当する。そして、従来例での下端開口の孔の面積は管内部の横断面積であり、従来例と同一の管部材を用いて制作したサンプルについて、従来例での孔の断面積(各サンプルの管内部の断面積と同一)に対する透孔48の総面積の割合が大きくなることが望ましいと判断した。
【0075】
【表1】
【0076】
○サンプル番号16番は従来例のL字型の冷媒吐出管mである。
○従来例のサンプル番号16の冷媒吐出管mは密閉容器2の胴壁45の取付孔に、開口された端部が位置し、冷媒吐出管mの下端が開口され、密閉容器2内に臨んでいる。
○従来例のサンプル番号16の冷媒吐出管mは下端を開口させていて、透孔となる部分は下端の開口部分の一個である。
○従来例のサンプル番号16の冷媒吐出管mでの孔径6.34mmは管の内径であり、断面積31.56955mmは、管内部の横断面での面積となる。
○表中、「断面積」は、サンプルごとに開口しているすべての透孔の面積を合算した値である。
○表中、「割合」は、上記従来例の冷媒吐出管の下端開口部分の横断面積、即ち、管内部の横断面積に対する、各サンプルでの透孔の開口面積の合算値の割合である。
【0077】
表1の○を付したサンプル番号12に示されているように、冷媒吐出管40において孔径3mmの透孔48を四個ずつにして八個備えることで、この透孔48の総断面積は管部材の内部断面積に対して割合が179.1%となっており、より多くのオイルfと冷媒ガスhとの分離を行ないながら冷媒ガスhを吐出すると判断できる。
【0078】
(オイル溜めの拡大)
図1に示されているように本実施の形態において密閉容器2の回転圧縮要素8側となる端部は、密閉容器2の長さ方向に沿った方向に延長されている。そして、この実施の形態の例において延長の量は従来機種での密閉容器に比して40mmとしている。そのため、冷媒吐出管40の延長管部46の長さが確保し易くなるように、密閉容器2の内部の回転圧縮要素8側の空間が拡大されている。
【0079】
さらに、密閉容器2の上記端部を密閉容器2の長さ方向に沿った方向に延長しているので、密閉容器2の底部が前記延長方向に向けて広がり、オイルポンプ13側のオイル溜め3の空間も、回転圧縮要素8の電動要素4側とは反対側に拡大されている。
本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1を仮にインバータ機種とした場合に高回転時に差圧が急上昇する可能性はあるが、オイルポンプ13側のオイル溜め3の空間が拡大されている(オイルポンプ13側のオイル溜め3のオイル収容容量が増大している)ので、このオイルポンプ13側でのオイル溜め3の油面49の上昇を抑える。
【0080】
オイル溜め3の油面49の上昇を抑えて、このオイル溜め3の上方の空間を広く維持するので、オイルfを含んだ冷媒ガスhが冷媒吐出管40内に送り込みされ難くなり、オイルfの密閉容器2外への吐出量を低減できる。
【0081】
また、オイルポンプ13側のオイル溜め3の油面49が急激に上昇することが無いので、必要量より多くのオイルfが回転圧縮要素8での回転軸5の部分に送り込まれてから電動要素4側の空間に移動してしまうということはない。そして、電動要素4側の空間から、過剰な量のオイルfを含んだ冷媒ガスhがオイルポンプ13側の空間に戻ることが無くなる。
よって、この点からもオイルfを含んだ冷媒ガスhが冷媒吐出管40内に送り込みされ難くなり、オイルfの密閉容器2外への吐出量を低減できる。
【0082】
(第二の流体通過部の位置)
上述した略弧状の第二の流体通過部44は、第二の圧力制御板41の上記外縁43と密閉容器2の内周面42との隙間からなるものであり、この略弧状の第二の流体通過部44では、オイルfを含む冷媒ガスhからなる流体が通ることで回転圧縮要素8側とオイルポンプ13側との間に僅かな差圧が構成される程度の十分な間隔に形成するようにしてもよい。
【0083】
第一、第二の回転圧縮要素6、7で圧縮されて電動要素4側の空間、上記第一の流体通過部39を経て回転圧縮要素8の上部側の空間側に吐出された冷媒ガスhを、第二の流体通過部44を通ってオイルポンプ13側の空間に吐出させることにより、僅かながら差圧を構成できる。勿論、オイルfを含んだ冷媒ガスhからなる流体はこの第二の流体通過部44を通過するに際しても支承なくオイルポンプ13側の空間に流れるものである。
【0084】
さらに、第二の流体通過部44をオイルfを含んだ冷媒ガスhが通過するときにオイル分離を効率よく行なって、上記冷媒吐出管40が取り付けられている部分に向けてオイル分離された冷媒ガスhが移動し、そして、第二の流体通過部44が、密閉容器2の長さ方向での冷媒吐出管40が通る線位置に近い位置にして配置されているので、オイル分離された冷媒ガスhが冷媒吐出管40に入り易くなり、このオイル分離された冷媒ガスhが吐出されるようにしている。
【0085】
これにより、オイルポンプ13側のオイルレベルを確保して給油を確実に行いながら、電動要素4を、熱伝導の良いオイルfで冷却できる。よって、電動要素4の運転性能及び冷媒ガスの流通性を向上させて、冷媒ガスの吸込・圧縮・吐出というコンプレッサとしての各性能を確保することができる。
【0086】
また、密閉容器2内に吐出された冷媒ガスhは、第一の流体通過部39と第二の流体通過部44とを経てから冷媒吐出管40が取り付けられている部分に達し易く、冷媒ガスh中に混入したオイルfを効果的に分離しながら冷媒吐出管40側へと流し、その冷媒吐出管40を経て密閉容器2の外に吐出されるオイル量を著しく減らすことができる。
【0087】
(「オイル吐出量」の「冷媒循環量と吐出配管断面積比率」の相関)
横型ロータリコンプレッサ1の密閉容器2外へのオイル吐出に関し、冷媒ガスhの循環量(単位時間当たりに横型ロータリコンプレッサを通っていく冷媒ガスの量)が増加するときに、冷媒吐出管40での上記透孔48の総面積(孔の開口面積を合算した値)が小さいと、冷媒吐出管40でオイルと冷媒ガスとが分離される度合いが下がる。そして、前記透孔48の総面積がさらに小さくなると、オイルと冷媒ガスとが分離される度合いが低下して、密閉容器2外へのオイル吐出が増加することを確認した。
【0088】
そこで、単位時間当たりに横型ロータリコンプレッサを通っていく冷媒ガスの量を「冷媒循環量」とするとともに、冷媒吐出管40での透孔48の総面積を「吐出配管断面積」として、図8に示すように「オイル吐出量」と「冷媒循環量と吐出配管断面積比率」とを関連させて得られた良好な5点の実測値(A、B、C、D、E)から、オイル吐出量の冷媒循環量と吐出配管断面積比率の相関をグラフ上に表現にした。
なお、相関を検討するに際して利用した5点の測定サンプルにおける測定値を以下の表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
上記「冷媒循環量と吐出配管断面積比率」の値が500を超えると、横型ロータリコンプレッサから吐出されるオイルが多くなるので、油面が低下し、この油面低下により横型ロータリコンプレッサの能力が低下し、耐久性への影響がある。
本発明での上記実施の形態における横型ロータリコンプレッサにおいて、「冷媒循環量と吐出配管断面積比率」が上限を500以下として下限を200以上とする範囲であることが好ましい。
【0091】
(「オイル吐出量」の「ケース内オイル分離空間容積と冷媒循環量比率」の相関)
また、横型ロータリコンプレッサ1の密閉容器2外へのオイル吐出に関し、密閉容器2内のオイル溜め3上の空間の広さ(ケース内オイル分離空間容積)が減少すると、オイルfと冷媒ガスhとの分離の度合いが低下して、オイルfの密閉容器2外へのオイル吐出量が増加することを確認した。
【0092】
そこで、図9に示すように「オイル吐出量」と「ケース内オイル分離空間容積と冷媒循環量比率」とを関連させて得た良好な5点の実測値(F、G、H、I、J)から、オイル吐出量のケース内オイル分離空間容積と冷媒循環量比率の相関をグラフ上に表現した。
なお、相関を検討するに際して利用した5点の測定サンプルにおける測定値を以下の表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
横型ロータリコンプレッサの密閉容器からのオイル吐出量から判断して、本発明の実施の形態において「ケース内オイル分離空間容積と冷媒循環量比率」の値で0.03以上とすることが好ましい。
なお、この値(0.03)を下回ると、やはりオイル吐出量が増加してしまい、油面低下により横型ロータリコンプレッサの能力が不足し、耐久性への影響がある。
【符号の説明】
【0095】
1…横型ロータリコンプレッサ
2…密閉容器
3…オイル溜め
4…電動要素
8…回転圧縮要素
13…オイルポンプ
14…オイル
23…主軸受け
24…副軸受け
33…第一の圧力制御板
40…冷媒吐出管
41…第二の圧力制御板
45…胴壁
46…延長管部
47…直線管部分
48…透孔
49…油面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10