(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163638
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ブロー成形装置、及び、ブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/78 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
B29C49/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074670
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】石井 玲太
(72)【発明者】
【氏名】竹下 慎也
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AG07
4F208AH55
4F208AM02
4F208AM14
4F208AM19
4F208LA07
4F208LA09
4F208LB01
4F208LD16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】不良品の後工程への排出を防止しつつ、生産効率の低下を抑制することを可能とする、ブロー成形装置を提供する。
【解決手段】ブロー成形装置2は、複数の金型を使用して、金型に挟持される被成形体内にブロー流体を供給し、中空状の成形体を成形するブロー成形処理を金型毎に繰り返し行う。ブロー成形装置2は、ブロー成形処理において成形体のバーストが発生したか否かを金型毎に監視し、複数の金型のうちバーストの発生を検出した金型をバースト発生金型として特定するバースト監視部2301と、バースト発生金型が特定されたとき、当該バースト発生金型を含む複数の金型を使用して、ブロー成形処理を金型毎に繰り返し行うとともに、成形体を排出する排出ラインから、当該バースト発生金型にて成形された成形体を排斥する排斥処理を繰り返し行う排斥制御部2302とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金型を使用して、前記金型に挟持される被成形体内にブロー流体を供給し、中空
状の成形体を成形するブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うブロー成形装置であっ
て、
前記ブロー成形処理において前記成形体のバーストが発生したか否かを前記金型毎に監
視し、複数の前記金型のうち前記バーストの発生を検出した前記金型をバースト発生金型
として特定するバースト監視部と、
前記バースト発生金型が特定されたとき、当該バースト発生金型を含む複数の前記金型
を使用して、前記ブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うとともに、前記成形体を排
出する排出ラインから、当該バースト発生金型にて成形された前記成形体を排斥する排斥
処理を繰り返し行う排斥制御部とを備える、
ブロー成形装置。
【請求項2】
前記排斥制御部は、
前記排斥処理の実行を開始したことを報知する報知情報を出力する、
請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記排斥制御部は、
前記排斥処理の実行中に前記排斥処理の終了条件が成立したか否かを監視し、
前記終了条件の成立を検出したとき、当該バースト発生金型の特定を解除するととも
に、前記排斥処理の実行を終了する、
請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
複数の金型を使用して、挟持される被成形体内にブロー流体を供給し、中空状の成形体
を成形するブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うブロー成形方法であって、
前記ブロー成形処理において前記成形体のバーストが発生したか否かを前記金型毎に監
視し、複数の前記金型のうち前記バーストの発生を検出した前記金型をバースト発生金型
として特定するバースト監視ステップと、
前記バースト発生金型が特定されたとき、当該バースト発生金型を含む複数の前記金型
を使用して、前記ブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うとともに、前記成形体を排
出する排出ラインから、当該バースト発生金型にて成形された前記成形体を排斥する排斥
処理を繰り返し行う排斥制御ステップとを備える、
ブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形装置、及び、ブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型を使用して被成形体(プリフォームやパリソン等)から成形体を成形するブ
ロー成形処理を行うブロー成形装置において、被成形体内に供給されるブロー流体の圧力
を監視することが行われている。例えば、特許文献1には、吹き込み圧力検出センサを備
えるブロー成形装置において、被成形体内の吹き込み圧力が設定値に到達するのに十分な
時間が経過しても、被成形体内の吹き込み圧力が上記設定値に到達しない場合、吹き込み
側に何らかの異常が発生したとみなして、その旨の警告を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロー成形装置では、生産効率を向上させるために、複数の金型を使用してブロー成形
処理を金型毎に繰り返し行うことで成形体の生産を行う。しかしながら、上記のように、
ブロー流体の圧力監視により圧力異常が発生し、その圧力異常が成形体のバースト(破裂
)を原因とするような場合には、バーストによる成形体の破片が飛散して金型の内側に付
着する。そして、その付着した成形体の破片は、次のブロー成形処理にて成形される成形
体に転写されることで不良品が発生するため、その不良品が後工程に排出される可能性が
あった。そのため、成形体のバーストが発生した場合には、装置ユーザが成形体の破片を
金型から除去する除去作業のために、ブロー成形装置の停止が必要になり、生産効率の低
下を招いていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、不良品の後工程への排出を防止しつつ、生産効率の低下
を抑制することを可能とするブロー成形装置、及び、ブロー成形方法を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るブロー成形装置は、
複数の金型を使用して、前記金型に挟持される被成形体内にブロー流体を供給し、中空
状の成形体を成形するブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うブロー成形装置であっ
て、
前記ブロー成形処理において前記成形体のバーストが発生したか否かを前記金型毎に監
視し、複数の前記金型のうち前記バーストの発生を検出した前記金型をバースト発生金型
として特定するバースト監視部と、
前記バースト発生金型が特定されたとき、当該バースト発生金型を含む複数の前記金型
を使用して、前記ブロー成形処理を前記金型毎に繰り返し行うとともに、前記成形体を排
出する排出ラインから、当該バースト発生金型にて成形された前記成形体を排斥する排斥
処理を繰り返し行う排斥制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係るブロー成形装置によれば、複数の金型のうちバーストの発生を検
出した金型がバースト発生金型として特定されたとき、当該バースト発生金型を含む複数
の金型を使用したブロー成形処理が金型毎に繰り返し行われるとともに、当該バースト発
生金型にて成形された成形体だけが、排出ラインから繰り返し排斥される。そのため、ブ
ロー成形装置が停止されることなく、複数の金型を使用して成形体が繰り返し成形される
ため、バースト発生金型以外の金型にて成形体を継続して生産することができる。一方、
バースト発生金型にて成形された成形体は、バーストによる成形体の破片が転写されるこ
とで不良品となるが、排出ラインから排斥されるため、不良品の後工程への排出を防止す
ることができる。そして、バースト発生金型にてブロー成形処理が行われると、バースト
による成形体の破片が、排出ラインから排斥される成形体に転写されることで、金型に飛
散した成形体の破片が除去されるので、装置ユーザによる成形体の破片の除去作業を省略
又は簡略化することができる。したがって、不良品の後工程への排出を防止しつつ、生産
効率の低下を抑制することができる。
【0008】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】容器成形システム1の一例を示す全体構成図である。
【
図2】ブロー成形装置2の一例を示す概略平面図である。
【
図3】成形ユニット22の一例を示す概略構成図である。
【
図4】ブロー成形装置2の一例を示すブロック図である。
【
図5】ブロー成形処理における圧力測定値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、
本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説
明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術による
ものとする。
【0011】
(容器成形システム1の構成)
図1は、容器成形システム1の一例を示す概略図である。容器成形システム1は、金型
20を使用して、ブロー成形により中空状の成形体4を生産する生産システムとして機能
する。本実施形態では、二軸延伸ブロー成形法により、ポリエチレンテレフタレート(P
ET)を原材料とする被成形体の一形態であるプリフォーム3から、中空状の成形体4の
一形態としての容器(PETボトル)を生産する場合を中心に説明する。
【0012】
容器成形システム1は、その主要な構成要素として、射出成形装置10と、プリフォー
ム取出装置11と、プリフォーム搬送コンベア12と、プリフォーム供給装置13と、ブ
ロー成形装置2と、成形体取出装置14と、成形体搬送コンベア15と、排斥コンベア1
6とを備える。
【0013】
容器成形システム1において、原材料である合成樹脂が射出成形装置10に投入される
と、射出成形装置10によりプリフォーム3が成形される。プリフォーム3は、プリフォ
ーム取出装置11により射出成形装置10から取り出されてプリフォーム搬送コンベア1
2に移送され、プリフォーム搬送コンベア12を流れながら、所定の温度に加熱される。
そして、プリフォーム供給装置13によりプリフォーム3がブロー成形装置2に順次供給
されると、そのプリフォーム3は、ブロー成形装置2により成形体4(PETボトル)に
成形される。成形体4は、成形体取出装置14によりブロー成形装置2から取り出されて
成形体搬送コンベア15に移送され、成形体搬送コンベア15を流れることで、例えば、
成形体4にシュリンクフィルムやラベルを装着する装着装置、成形体4に飲料を充填する
充填装置、成形体4に蓋体を巻き締めする巻締装置等の後工程に搬出される。
【0014】
ブロー成形装置2によりプリフォーム3から成形体4が成形される際に、例えば、バー
スト(破裂)等の圧力異常の発生が検出されたとき、当該圧力異常の発生が検出された成
形体4は、正常な成形体4を後工程に搬出する搬出ライン(
図1の例では、成形体搬送コ
ンベア15)に移送されるのではなく、成形体取出装置14により排斥コンベア16に移
送される。
【0015】
図2は、ブロー成形装置2の一例を示す概略平面図である。
図3は、成形ユニット22
の一例を示す概略構成図である。ブロー成形装置2は、複数(本実施形態では、12個)
の金型20を使用して、金型20に挟持されるプリフォーム3内にブロー流体を供給し、
中空状の成形体4を成形するブロー成形処理を金型20毎に繰り返し行う。なお、本実施
形態では、ブロー流体は、空気(エア)であるものとして説明するが、空気以外の任意の
気体でもよいし、液体でもよい。
【0016】
ブロー成形装置2は、その主要な構成要素として、ロータリユニット21と、ロータリ
ユニット21の円周軌道上に所定の間隔で配置された複数(本実施形態では、12個)の
成形ユニット22と、ブロー成形装置2の各部を制御する制御ユニット23とを備える。
【0017】
ロータリユニット21は、例えば、円盤状に形成され、複数の成形ユニット22を支持
するロータリ支持部210と、ロータリ支持部210を所定の回転速度(回転周期)で回
転させる回転機構部211とを備える。
【0018】
複数の成形ユニット22の各々は、金型20を開閉可能に支持する金型支持機構部22
0と、金型20に挟持されるプリフォーム3を密閉状態で支持するシール支持部221と
、シール支持部221により支持されたプリフォーム3に挿入されるストレッチロッド2
22と、ストレッチロッド222を進退移動可能に支持するストレッチロッド支持機構部
223と、ストレッチロッド222に対するブロー流体(エア)の供給又は排出を行うブ
ロー流体給排部224と、金型20の温度を調節する温調機構部225とを備える。
【0019】
ブロー流体給排部224は、シール支持部221を介してストレッチロッド222に接
続された主配管2240と、主配管2240から分岐された3つの分岐配管2241A~
2241Cと、低圧のプレブローエア供給源に接続された分岐配管2241Aに設けられ
たプレブローバルブ2242と、高圧のメインブローエア供給源に接続された分岐配管2
241Bに設けられたメインブローバルブ2243と、排気系統に接続された分岐配管2
241Cに設けられた排気バルブ2244と、主配管2240又はシール支持部221に
設けられた圧力センサ2245とを備える。圧力センサ2245は、プリフォーム3内に
供給されるブロー流体(プレブローエア、メインブローエア、ブローエア排気)の圧力を
所定の測定時間間隔で測定可能な圧力測定部として機能し、その測定結果として、各時点
の圧力測定値を出力する。
【0020】
なお、
図2及び
図3では、回転機構部211、金型支持機構部220、シール支持部2
21及びストレッチロッド支持機構部223の具体的な構成を省略しているが、例えば、
サーボモータ、シリンダ等の駆動力発生用のモジュールと、リニアガイド、ボールスクリ
ュ、ギヤ、カム、ベルト、カップリング、軸受等の駆動力伝達機構と、リニアセンサ、エ
ンコーダセンサ、リミットセンサ等のセンサとを適宜組み合わせて構成される。また、図
2及び
図3では、温調機構部225の具体的な構成を省略しているが、例えば、電熱ヒー
タ等の温度調節用のモジュールと、温度センサ等のセンサとを適宜組み合わせて構成され
る。
【0021】
図4は、ブロー成形装置2の一例を示すブロック図である。制御ユニット23は、ロー
タリユニット21及び複数の成形ユニット22が備えるモジュール群及びセンサ群と電気
的に接続されて、ロータリユニット21及び複数の成形ユニット22を統括的に制御する
制御部として機能する。なお、
図4には、モジュール群の一部としてのプレブローバルブ
2242、メインブローバルブ2243及び排気バルブ2244と、センサ群の一部とし
ての圧力センサ2245とを図示したが、その他のモジュール群及びセンサ群の図示は省
略している。
【0022】
制御ユニット23は、例えば、汎用又は専用のコンピュータで構成される。制御ユニッ
ト23は、その主要な構成要素として、制御部230と、通信部231と、入力部232
と、出力部233と、記憶部234とを備える。
【0023】
制御部230は、例えば、演算処理装置(CPU、MPU、GPU等のプロセッサ)や
シーケンサで構成される。制御部230は、例えば、記憶部234に記憶されたブロー成
形プログラム2340を実行することにより、ブロー成形制御部2300、バースト監視
部2301、及び、排斥制御部2302として機能する。各部2300~2302の詳細
は後述する。
【0024】
通信部231は、通信ネットワークに接続され、例えば、ブロー成形装置2の装置ユー
ザ(オペレータや管理者等)が使用する端末装置(不図示)や容器成形システム1の生産
管理を行う生産管理装置(不図示)との間で各種のデータを送受信する通信インターフェ
ースとして機能する。入力部232は、ブロー成形装置2のユーザによる各種の入力操作
を受け付けるとともに、出力部233は、表示画面、シグナルタワー点灯、ブザー音を介
して各種の情報を装置ユーザに出力することで、ユーザインターフェースとして機能する
。
【0025】
記憶部234は、ブロー成形装置2の動作で使用される各種のプログラム(オペレーテ
ィングシステム(OS)、ブロー成形プログラム2340等)やデータ(装置設定情報2
341等)を記憶する。装置設定情報2341は、ブロー成形装置2がブロー成形処理を
実行するときの各種の動作条件を登録可能な情報であり、例えば、表示画面(設定インタ
ーフェース)を介して装置ユーザにより編集可能に構成される。
【0026】
(ブロー成形制御部2300によるブロー成形制御ステップについて)
ブロー成形制御部2300は、ロータリユニット21及び複数の成形ユニット22が備
えるセンサ群の測定値や検出値を取得し、ロータリユニット21及び複数の成形ユニット
22が備えるモジュール群を動作させるとともに、プリフォーム供給装置13によるプリ
フォーム3の供給動作と、成形体取出装置14による成形体4の取出動作と連携すること
で、ブロー成形処理を金型20毎に繰り返し行う。
【0027】
ブロー成形処理は、ロータリユニット21のロータリ支持部210に支持された複数の
金型20(成形ユニット22)の各々が、回転機構部211により円周軌道上を360°
(1周)回転するブロー成形サイクル(1サイクル)の間に、
図2に示すように、(S1
)プリフォーム3のセット、(S2)金型20の閉動作、(S3)ストレッチ、(S4)
プレブローエア供給開始、(S5)メインブローエア供給開始、(S6)メインブロー圧
力維持、(S7)ブローエア排気開始、(S8)金型20の開動作、(S9)成形体4の
取出の順に実行される。
【0028】
ブロー成形処理において、ブロー成形制御部2300は、(S1)にて、ブロー成形装
置2から供給されたプリフォーム3をシール支持部221により固定した状態で支持し、
(S2)にて、金型支持機構部220により金型20の閉動作を行い、(S3)にて、ス
トレッチロッド222を進出移動させることでプリフォーム3を延伸する。(S4)にて
、プレブローバルブ2242の開動作によりプレブローエアの供給を開始し、(S5)に
て、ストレッチロッド222を進出させながら、プレブローバルブ2242の閉動作及び
メインブローバルブ2243の開動作によりメインブローエアの供給を開始することでブ
ロー圧力を圧力目標値まで上昇させて、(S6)にて、メインブローエアの供給を継続す
ることでブロー圧力を圧力目標値に維持し、(S7)にて、メインブローバルブ2243
の閉動作及び排気バルブ2244の開動作によりブロー流体を排出することでブロー圧力
を下降させる。(S8)にて、ストレッチロッド222を退出移動させながら、金型支持
機構部220により金型20の開動作を行い、(S9)にて、シール支持部221により
成形体4を固定した状態を解除し、成形体4がシール支持部221から取り出される。な
お、上記のブロー成形処理において、各動作(S1~S9)の開始タイミング(開始角度
)や終了タイミング(終了角度)は適宜変更されてもよいし、他の動作が追加されてもよ
い。
【0029】
また、ブロー成形制御部2300は、バースト監視部2301により圧力上昇期間(詳
細は後述)に成形体4(実際には成形途中の成形体4)のバーストの発生が検出されたと
き、その成形体4に対してブロー流体の供給を停止する。これにより、バーストによる成
形体4の飛散の程度を低減することができる。
【0030】
(バースト監視部2301によるバースト監視ステップについて)
バースト監視部2301は、上記のようなブロー成形処理において、成形体4のバース
トが発生したか否かを金型20毎に監視し、複数の金型20のうちバーストの発生を検出
した金型20をバースト発生金型20aとして特定する。
【0031】
図5は、ブロー成形処理における圧力測定値の変化を示すグラフである。
図5は、横軸
にロータリ支持部210の回転角度(時間)、縦軸に圧力を示すグラフ上に、正常時の圧
力カーブP1(実線)、バースト発生時の圧力カーブP2(破線)、バースト監視用の許
容下限カーブP3(一点鎖線)、バースト監視用の各監視時点における圧力下限値(上向
きの三角形)及び圧力上限値(下向きの三角形)を図示したものである。
【0032】
圧力カーブP1、P2は、ブロー成形制御部2300がブロー成形処理を実行したとき
、すなわち、ブロー流体(プレブローエア、メインブローエア)の供給を開始することで
ブロー圧力を圧力目標値まで上昇させる圧力上昇期間(S4)~(S5)と、ブロー流体
の供給を継続することでブロー圧力を圧力目標値に維持する圧力維持期間(S6)と、ブ
ロー流体の供給を停止してブロー流体を排出することで圧力を下降させる圧力下降期間(
S7)とを順に進行させたときに取得される。なお、圧力上昇期間は、プレブローエアの
供給による第1の圧力上昇期間、及び、メインブローエアの供給による第2の圧力上昇期
間のうち、少なくとも第2の圧力上昇期間を含むものである。
【0033】
その際、バースト監視部2301は、例えば、圧力上昇期間において、圧力センサ22
45により監視時間間隔で測定された各監視時点の圧力測定値の少なくとも1つが圧力許
容範囲を外れた否かを監視し、圧力測定値が圧力許容範囲を外れる場合に、バーストの発
生を検出する。監視時間間隔は、例えば、一定の時間間隔(周期)で設定されたものでも
よいし、異なる時間間隔で設定されたものでもよいし、複数の時点が任意に設定されたも
のでもよい。圧力許容範囲は、圧力測定値の許容下限値及び許容上限値の少なくとも一方
を定めるものであり、圧力上昇期間では少なくとも許容下限値が定められる。
【0034】
また、バースト監視部2301は、バーストの発生を監視する際の動作条件として、監
視時間間隔及び監視時点の少なくとも一方と、圧力許容範囲とを、表示画面(設定インタ
ーフェース)を介して設定可能に構成され、例えば、装置設定情報2341の一部として
記憶部234に記憶される。なお、バースト監視部2301は、過去にブロー成形処理が
正常に実行されたときの理想的な圧力カーブ(例えば、記憶部234に履歴データとして
記憶済み)に応じて、バーストの発生を監視する際の動作条件を設定してもよい。例えば
、各監視時点の圧力許容範囲は、理想的な圧力カーブにおける各監視時点のブロー圧力に
対して所定の許容値を減じたり許容割合値を乗算したりすることで生成される許容下限カ
ーブP3(
図5参照)に基づいて、設定されるようにすればよい。
【0035】
(排斥制御部2302による排斥制御ステップについて)
排斥制御部2302は、バースト監視部2301によりバースト発生金型20aが特定
されたとき、当該バースト発生金型20aを含む複数の金型20を使用して、ブロー成形
処理を金型20毎に繰り返し行うとともに、成形体4を排出する排出ラインから、当該バ
ースト発生金型20aにて成形された成形体4(以下、「排斥成形体4a」という)を排
斥する排斥処理を繰り返し行う。
【0036】
図6は、排斥処理の動作の一例を示す図である。
図6では、バースト監視部2301に
より、12個の金型20のうち「5」番目の金型20がバースト発生金型20aとして特
定される場合について説明する。
【0037】
排斥成形体4aの排斥処理を実行する場合、排斥制御部2302は、例えば、排斥成形
体4aが成形体取出装置14によりバースト発生金型20aから取り出されるときに、成
形体取出装置14に対して排斥指示を送る。排斥指示を受けた成形体取出装置14により
、排斥成形体4aは、成形体搬送コンベア15(搬出ライン)ではなく、排斥コンベア1
6(排斥ライン)に移送される。
【0038】
また、排斥制御部2302は、排斥処理の実行を開始したことを報知する報知情報を出
力する。報知情報には、例えば、バースト発生金型20aを示す金型の番号(
図6の例で
は、「5」番)が含まれる。報知情報の出力先は、例えば、出力部233(表示画面、シ
グナルタワー点灯、ブザー音)でもよいし、通信部231を介して通信可能な端末装置(
不図示)でもよい。端末装置は、例えば、装置ユーザが使用する携帯型又は据置型のコン
ピュータで構成される。
【0039】
さらに、排斥制御部2302は、排斥処理の実行中に排斥処理の終了条件が成立したか
否かを監視し、終了条件の成立を検出したとき、当該バースト発生金型の特定を解除する
とともに、排斥処理の実行を終了する。排斥制御部2302は、例えば、入力部232や
端末装置を介して排斥処理の終了を指示する入力操作を装置ユーザから受け付けた場合に
、排斥処理の終了条件の成立を検出する。なお、排斥コンベア16に成形体検査装置(不
図示)が設置されている場合には、排斥制御部2302は、成形体検査装置により成形体
4を検査したときの結果として、正常の検査結果を受け付けた場合に、排斥処理の終了条
件の成立を検出してもよい。また、排斥制御部2302は、所定の回数だけ排斥処理を行
った場合に、排斥処理の終了条件の成立を検出してもよい。所定の回数は、表示画面(設
定インターフェース)を介して装置ユーザにより設定された回数でもよいし、過去に装置
ユーザから排斥処理の終了を指示する入力操作を受け付けたときの回数を用いてもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態に係るブロー成形装置2及びブロー成形方法によれば、複数
の金型20のうちバーストの発生を検出した金型20がバースト発生金型20aとして特
定されたとき、当該バースト発生金型20aを含む複数の金型20を使用したブロー成形
処理が金型20毎に繰り返し行われるとともに、当該バースト発生金型20aにて成形さ
れた成形体4aだけが、排出ラインから繰り返し排斥される。そのため、ブロー成形装置
2が停止されることなく、複数の金型20を使用して成形体4が繰り返し成形されるため
、バースト発生金型20a以外の金型20にて成形体4を継続して生産することができる
。一方、バースト発生金型20aにて成形された排斥成形体4aは、バーストによる成形
体4の破片が転写されることで不良品となるが、排出ラインから排斥されるため、不良品
の後工程への排出を防止することができる。そして、バースト発生金型20aにてブロー
成形処理が行われると、バーストによる成形体4の破片が排斥成形体4aに転写されるこ
とで、金型に飛散した成形体4の破片が除去されるので、装置ユーザによる成形体4の破
片の除去作業を省略又は簡略化することができる。したがって、不良品の後工程への排出
を防止しつつ、生産効率の低下を抑制することができる。
【0041】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に制約されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲
内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思
想に含まれるものである。
【0042】
上記実施形態では、ブロー成形装置2は、ロータリ方式の複数の成形ユニット22を備
える場合について説明したが、複数の金型20を使用してブロー成形処理を金型20毎に
繰り返し行うものあれば、他の方式で構成されたブロー成形装置に適用されてもよい。
【0043】
上記実施形態では、バースト監視部2301は、圧力センサ2245の圧力測定値に基
づいてバーストの発生を監視する場合について説明したが、圧力センサ2245に代えて
又は加えて、他のセンサの測定値や検出値に基づいてバーストの発生を監視するようにし
てもよい。
【0044】
上記実施形態では、ブロー成形装置2は、ブロー成形処理として、被成形体の一形態で
あるプリフォーム3に対して二軸延伸ブロー成形法を行う場合について説明したが、被成
形体の他の形態である中空状のパリソンに対してダイレクトブロー成形を行うものでもよ
いし、他のブロー成形法を行うものでもよい。また、ブロー成形装置2は、ホットパリソ
ン法(1ステージ法ともいう)及びコールドパリソン法(2ステージ式ともいう)のいず
れを採用するものでもよい。
【0045】
上記実施形態では、被成形体(プリフォーム3)の材質は、ポリエチレンテレフタレー
ト(PET)である場合について説明したが、それ以外に、ポリプロピレン(PP)、ポ
リエチレンナフタレート(PEN)等の他の熱可塑性樹脂を用いてもよいし、リサイクル
材を用いてもよい。さらに、被成形体(プリフォーム3)は、射出成形の他に、例えば、
PCM成形等の任意の成形方法で成形された任意の形状を有するものでもよいし、単層構
造及び多層構造のいずれを採用したものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…容器成形システム、2…ブロー成形装置、3…プリフォーム(被成形体)、
4…成形体、4a…排斥成形体、
10……射出成形装置、11…プリフォーム取出装置、
12…プリフォーム搬送コンベア、13…成形体搬送コンベア、
14…成形体取出装置、15…成形体搬送コンベア、16…排斥コンベア、
20…金型、20a…バースト発生金型、
21…ロータリユニット、22…成形ユニット、23…制御ユニット、
210…ロータリ支持部、211…回転機構部、213…ストレッチロッド、
220…金型支持機構部、221…シール支持部、222…ストレッチロッド、
223…ストレッチロッド支持機構部、224…ブロー流体給排部、
225…温調機構部、
230…制御部、231…通信部、232…入力部、233…出力部、234…記憶部、
2240…主配管、2241A~2241C…分岐配管、
2242…プレブローバルブ、2243…メインブローバルブ、
2244…排気バルブ、2245…圧力センサ、
2300…ブロー成形制御部、2301…バースト監視部、2302…排斥制御部、
2340…ブロー成形プログラム、2341…装置設定情報