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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163639
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】化粧料容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
A45D33/00 615C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074673
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】君島 美津志
(57)【要約】
【課題】中皿着脱タイプの化粧料容器でありながら、中皿の周壁と容器本体の凹部周壁を薄肉にすることができ、仕切り壁等の高さも均一に揃えることができる化粧料容器を提供する。
【解決手段】中皿20の下面20aに、特定形状の係合部材50と、中皿固定用の係合片55とが設けられており、容器本体10の中皿収容凹部12の底面12aに、上記係合部材50の内側に差し込まれる差し込み片40と、上記係合片55と係合するための被係合片42とが設けられており、上記差し込み片40を上記係合部材50内に差し込むことにより、上記係合片55と被係合片42とが係合して、上記中皿20が容器本体10の中皿収容凹部12内に固定されるようになっている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に化粧料充填用凹部が形成された中皿と、上面に上記中皿を着脱自在に収容する中皿収容凹部が形成された容器本体と、上記容器本体を蓋する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
上記中皿および容器本体は、ともに樹脂の一体成形品からなり、
上記中皿の下面には、上記容器本体の中皿収容凹部と係合するための係合部材が下向きに突出形成されており、
上記係合部材は、上記中皿の下面に沿って延びる空間部と底面部とを有する略筒体、もしくは上記中皿の下面に沿って延びる片持ちの差し込み片であり、
上記容器本体の中皿収容凹部の底面には、上記中皿の下面に突出形成された係合部材と係合するための被係合部材と、中皿収容時に上記係合部材の一部を容器本体の下面から露出するための開口部とが形成されており、
上記被係合部材は、上記中皿収容凹部の底面に沿って延びる片持ちの差し込み片、もしくは上記中皿収容凹部の底面に沿って延びる空間部と天面部とを有する略筒体であり、
上記中皿の下面もしくは係合部材の下面の一部に、中皿を中皿収容凹部内に固定するための係合片が設けられ、上記中皿収容凹部の底面もしくは被係合部材の上面の一部に、上記係合片と係合しうる被係合片が設けられており、
上記係合部材もしくは被係合部材の差し込み片を、上記係合部材もしくは被係合部材の略筒体の内側に差し込むことにより、上記係合片と被係合片とが係合して、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっていることを特徴とする化粧料容器。
【請求項2】
上記係合部材が、上記中皿の下面の一部と、上記中皿の下面から垂下する一対の側面部と、上記中皿の下面に対し所定隙間を保った状態で平行に延びる底面部とで囲われた空間部を有する略筒体であり、その一端が開口部になっているとともに、上記底面部の、上記開口部とは反対側の他端部に、中皿を中皿収容凹部内に固定するための係合片が設けられており、
上記被係合部材が、上記中皿収容凹部の底面に設けられた切欠き開口の一端縁から他端縁に向かって延びる差し込み片であり、上記切欠き開口の他端縁に、上記係合片と係合するための被係合片が形成されており、
上記差し込み片の先端付近に、上記中皿の係合部材の開口部を対峙させ、上記差し込み片を上記係合部材内に差し込むことにより、上記係合片と被係合片とが係合して、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっている請求項1記載の化粧料容器。
【請求項3】
上記係合部材が中皿の下面に突出形成される差し込み片であり、上記中皿の下面に対して、根元部から先端に向かって0.5~3°の下り傾斜となるように角度が付けられている請求項1記載の化粧料容器。
【請求項4】
上記被係合部材が中皿収容凹部の底面に形成される差し込み片であり、上記中皿収容凹部の底面に対して、根元部から先端に向かって0.5~3°の上り傾斜となるように角度が付けられている請求項1または2記載の化粧料容器。
【請求項5】
上記容器本体の中皿収容凹部内の、上記被係合片が形成された切欠き開口の開口縁近傍に、上記開口縁に沿って延びる平面視帯状の、容器本体の下面に至るスリットが形成されている請求項2記載の化粧料容器。
【請求項6】
上記係合部材の底面部のうち、上記係合片が設けられている部分の近傍の所定領域が、他の部分よりも凹んで薄肉になっている請求項2記載の化粧料容器。
【請求項7】
上記中皿の下面のうち、上記係合部材の開口部の開口縁から、係合部材が設けられた側とは反対側の中皿端縁に到る部分が、他の部分よりも凹んで薄肉になっている請求項2記載の化粧料容器。
【請求項8】
上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmである請求項1または2記載の化粧料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に中皿を着脱自在に収容することができ、その着脱動作が簡単で、しかも全体がコンパクトで見栄えのよい化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション等の化粧料が充填された中皿を、容器本体に対して着脱自在に収容し、使い切った際には新しい中皿に交換したり、種類の異なる化粧料ごとに用意された複数の中皿を、目的に応じて組み合わせて収容したりすることのできる化粧料容器が多用されている。
【0003】
このような、中皿交換タイプの化粧料容器において、中皿が金属製の金皿の場合は、容器本体の中皿収容用の凹部底面に粘着剤層を設けて金皿を凹部内に粘着固定し、交換時には、凹部底面に設けた貫通孔から細いピンを使って金皿を取り外すことが一般的である。
【0004】
一方、中皿が樹脂皿の場合は、樹脂の可撓性を利用して、中皿の外周面に係合用の凹部を設け、容器本体の中皿収容用の凹部壁面に係合爪等を設けて、両者の係合によって中皿を容器本体に着脱自在に取り付けるようになっているものが多い(特許文献1、2等)。
【0005】
例えば、特許文献1の化粧料容器では、図10(a)に示すように、容器本体1の中皿収容用の凹部2内の、向かって左側壁に、中皿3との係合用の爪4を設けるとともに、その向かい側の右側壁に、抜け止め用の凸部5を設けて、中皿3の外周面に設けられた溝3aと、上記爪4、凸部5とを係合させることにより、容器本体1の凹部2内に、中皿3を着脱自在に保持できるようになっている。そして、上記中皿3を取り出すには、図10(a)のX-X'断面図である図10(b)に示すように、上記容器本体1側に設けられた仕切り壁6の切欠き部7を利用して、矢印で示すように中皿3を、向かって左側に押し付けて、中皿3と凸部5の係合を外して斜め上に引き出すようにする。特許文献2のものも概ね同様の構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3561560号公報
【特許文献2】特開2002-177045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のような中皿3の着脱構造では、中皿3を係合させるための凹凸を水平方向に凹ませたり突出させたりしているため、中皿3の周壁と容器本体1の凹部2の周囲の厚みを厚くせざるを得ないことや、凹凸を設けるスペースを確保するために、垂直方向にもある程度厚みが必要であることから、容器全体が嵩高いものとなって、薄型でシャープな外観の容器になりにくいという問題がある。特に、複数の中皿3を同時に収容する場合、とりわけ余分なスペースをとりたくないという問題がある。
【0008】
さらに、従来の構成では、収容された中皿3を取り出すために、中皿3に指をかける切欠部7[図10(b)を参照]やこれに代わる段差部を設ける必要があることから、容器本体1の上面と中皿3の高さを均一の高さに揃えることができず、見栄えが悪いという問題もある。
【0009】
そこで、容器本体の凹部周囲や中皿の周壁を薄肉にするとともに、容器本体の上面に表れる中皿の輪郭部や仕切り壁の高さを全て均一に揃えて見栄えをよくすることが検討されているが、そうすると、中皿を着脱自在に取り付ける構造を確保することが難しいため、そのような化粧料容器は実現されていないのが実情である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、中皿着脱タイプの化粧料容器でありながら、中皿の周壁と容器本体の凹部周壁を薄肉にすることができ、しかも容器本体の上面の中皿と周囲の仕切り壁等の高さも均一に揃えることができる、優れた化粧料容器の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1] 上面に化粧料充填用凹部が形成された中皿と、上面に上記中皿を着脱自在に収容する中皿収容凹部が形成された容器本体と、上記容器本体を蓋する蓋体とを備えた化粧料容器であって、
上記中皿および容器本体は、ともに樹脂の一体成形品からなり、
上記中皿の下面には、上記容器本体の中皿収容凹部と係合するための係合部材が下向きに突出形成されており、
上記係合部材は、上記中皿の下面に沿って延びる空間部と底面部とを有する略筒体、もしくは上記中皿の下面に沿って延びる片持ちの差し込み片であり、
上記容器本体の中皿収容凹部の底面には、上記中皿の下面に突出形成された係合部材と係合するための被係合部材と、中皿収容時に上記係合部材の一部を容器本体の下面から露出するための開口部とが形成されており、
上記被係合部材は、上記中皿収容凹部の底面に沿って延びる片持ちの差し込み片、もしくは上記中皿収容凹部の底面に沿って延びる空間部と天面部とを有する略筒体であり、
上記中皿の下面もしくは係合部材の下面の一部に、中皿を中皿収容凹部内に固定するための係合片が設けられ、上記中皿収容凹部の底面もしくは被係合部材の上面の一部に、上記係合片と係合しうる被係合片が設けられており、
上記係合部材もしくは被係合部材の差し込み片を、上記係合部材もしくは被係合部材の略筒体の内側に差し込むことにより、上記係合片と被係合片とが係合して、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっている化粧料容器。
[2] 上記係合部材が、上記中皿の下面の一部と、上記中皿の下面から垂下する一対の側面部と、上記中皿の下面に対し所定隙間を保った状態で平行に延びる底面部とで囲われた空間部を有する略筒体であり、その一端が開口部になっているとともに、上記底面部の、上記開口部とは反対側の他端部に、中皿を中皿収容凹部内に固定するための係合片が設けられており、
上記被係合部材が、上記中皿収容凹部の底面に設けられた切欠き開口の一端縁から他端縁に向かって延びる差し込み片であり、上記切欠き開口の他端縁に、上記係合片と係合するための被係合片が形成されており、
上記差し込み片の先端付近に、上記中皿の係合部材の開口部を対峙させ、上記差し込み片を上記係合部材内に差し込むことにより、上記係合片と被係合片とが係合して、上記中皿が容器本体の中皿収容凹部内に固定されるようになっている、[1]記載の化粧料容器。
[3] 上記係合部材が中皿の下面に突出形成される差し込み片であり、上記中皿の下面に対して、根元部から先端に向かって0.5~3°の下り傾斜となるように角度が付けられている、[1]記載の化粧料容器。
[4] 上記被係合部材が中皿収容凹部の底面に形成される差し込み片であり、上記中皿収容凹部の底面に対して、根元部から先端に向かって0.5~3°の上り傾斜となるように角度が付けられている、[1]または[2]記載の化粧料容器。
[5] 上記容器本体の中皿収容凹部内の、上記被係合片が形成された切欠き開口の開口縁近傍に、上記開口縁に沿って延びる平面視帯状の、容器本体の下面に至るスリットが形成されている、[2]記載の化粧料容器。
[6] 上記係合部材の底面部のうち、上記係合片が設けられている部分の近傍の所定領域が、他の部分よりも凹んで薄肉になっている、[2]記載の化粧料容器。
[7] 上記中皿の下面のうち、上記係合部材の開口部の開口縁から、係合部材が設けられた側とは反対側の中皿端縁に到る部分が、他の部分よりも凹んで薄肉になっている、[2]記載の化粧料容器。
[8] 上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmである、[1]または[2]記載の化粧料容器。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の化粧料容器は、従来、中皿の外周面と容器本体の凹部の内壁面を利用して係合させていたのに対し、中皿の下面と、容器本体の中皿収容凹部内の底面とを利用して、中皿を上下方向に簡単に着脱できるようにしたものである。
【0013】
この構成によれば、水平方向に余分なスペースがいらず、また容器全体の厚みも薄くすることができるため、全体をコンパクトに構成することができる。
【0014】
そして、上記構成において、中皿を容器本体から外す場合は、容器本体の下面の開口内に露出する中皿の係合部材の一部を上向きに押し上げるだけで、中皿が簡単に外せるようになっている。したがって、中皿の着脱方法がわかりやすく、消費者が自分で、中皿の着脱を簡単に行うことができる。しかも、従来のように、中皿と、容器本体側の中皿収容凹部の周囲や仕切り壁等に、段差や切欠きを設ける必要がなく、中皿の上面と容器本体の上面とを全て同じ高さに揃えることができるため、蓋体を開けたときに端正な印象となって見栄えがよい。
【0015】
なお、本発明のなかでも、特に、中皿の下面に、特定の略筒体からなる係合部材を設け、容器本体の中皿収容凹部の底面に、特定の差し込み片からなる被係合部材を設けたものは、とりわけ化粧料容器全体の厚みを薄くすることができ、また中皿の着脱も容易に行うことができて好適である。
【0016】
また、本発明のなかでも、特に、係合部材として中皿側に差し込み片を設ける場合は、上記差し込み片が根元部から先端に向かって0.5~3°の下り傾斜となるように角度を付けることが好ましく、逆に、被係合部材として中皿収容凹部側に差し込み片を設ける場合は、上記差し込み片が根元部から先端に向かって0.5~3°の上り傾斜となるように角度を付けることが好ましい。すなわち、このように角度を付けると、上記差し込み片を略筒体である相手側に差し込んで中皿を固定した場合に、上記差し込み片の先端が中皿収容凹部の底面もしくは中皿の下面を押し付け付勢した状態になる。したがって、上記容器本体の下面に露出する係合部材の部分を押し上げて中皿を外す際、両者の係合が外れると、中皿が勢いよく上方に押し出されて、中皿が外れやすいという利点を有する。
【0017】
さらに、本発明のなかでも、特に、中皿の下面に、特定の略筒体からなる係合部材を設け、容器本体の中皿収容凹部の底面に、特定の差し込み片からなる被係合部材を設けたものであって、特定の被係合片とともに、特定のスリットが形成されているものは、上記スリットにより、上記被係合片の自由度が大きくなるため、上記中皿の着脱動作をよりスムーズに行うことができる。
【0018】
また、同じく、特に、中皿の下面に、特定の略筒体からなる係合部材を設け、容器本体の中皿収容凹部の底面に、特定の差し込み片からなる被係合部材を設けたものであって、上記中皿側の係合部材に特定の係合片が設けられ、その近傍の所定領域が他の部分よりも凹んで薄肉になっているものは、上記係合片の自由度が大きくなるため、中皿の着脱動作をよりスムーズに行うことができる。
【0019】
また、同じく、特に、中皿の下面に、特定の略筒体からなる係合部材を設け、容器本体の中皿収容凹部の底面に、特定の差し込み片からなる被係合部材を設けたものであって、上記中皿の下面のうち、特定の部分が他の部分よりも凹んで薄肉になっているものは、この凹んだ部分に、被係合部材である差し込み片の先端を添わせながら係合部材内に案内することができるため、差し込み片の差し込み動作をスムーズに行うことができる。
【0020】
そして、本発明のなかでも、特に、上記蓋体を閉じた状態における化粧料容器全体の厚みが9~13mmであるものは、化粧料容器全体が薄型になっており、携帯や保管に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態を示す一部分解斜視図である。
図2】上記実施の形態に用いられる容器本体の斜視図である。
図3図2のA-A’断面図である。
図4】(a)は上記実施の形態に用いられる中皿の側面図、(b)はそのB-B’断面図である。
図5】は上記中皿を裏返して示す斜視図である。
図6】上記実施の形態において、中皿を容器本体の中皿収容凹部内に取り付ける動作の説明図である。
図7】上記実施の形態において、中皿を容器本体の中皿収容凹部内に取り付けて蓋体を閉じた状態を示す断面図である。
図8図7において仮想円Pで囲った部分を拡大して示す説明図である。
図9図7のC-C’断面図である。
図10】(a)は従来の化粧料容器の一例を示す説明図、(b)はそのX-X'断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の化粧料容器の一実施の形態を示す斜視図である。
この化粧料容器は、容器本体10と、この容器本体10の後端部にヒンジ連結される蓋体11とを備えており、上記容器本体10の上面には、中皿収容凹部12が形成されている。また、上記蓋体11の内側には、化粧用の鏡13が貼着されている。
【0024】
上記容器本体10の中皿収容凹部12内には、前後に2つの化粧料充填用凹部21が設けられた中皿20が2個、左右に並んだ状態で嵌入されるようになっている(1つの中皿20は取り出した状態を示している)。
【0025】
なお、上記容器本体10、蓋体11、中皿20はいずれも、樹脂の一体成形品で構成されている。材料となる樹脂の種類、成形方法は、適宜選択されるが、この例では、いずれも、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)の射出成形品が用いられている。
【0026】
まず、上記容器本体10について説明する。この容器本体10の中皿収容凹部12には、図2に示すように、その底面12aに、中皿20を着脱自在に取り付けるための切欠き開口30と、片持ちの差し込み片40(被係合部材)とが、中皿20の取り付け位置に合わせて、左右2個所に設けられている。
【0027】
より詳しく説明すると、上記切欠き開口30は、平面視が、容器本体10の前後方向に長く延びる長方形状をしており、その前端側の開口縁30aから後端側の開口縁30bに向かって、平面視逆U字状の差し込み片40が延設されている。
【0028】
上記差し込み片40の厚みは、図2のA-A’断面図である図3に示すように、上記中皿収容凹部12の底面12aの、他の部分よりも薄くなっている。また、上記差し込み片40が上記切欠き開口30の開口縁30aとつながる境界部41では、さらにその厚みが薄くなっている。これは、上記差し込み片40が、図において矢印で示すように、上下に撓みやすくなるよう考慮したものである。
【0029】
そして、上記差し込み片40の、左右一対の各辺の先端部分の裏面側は、先端にいくほど薄肉になるよう緩やかなテーパが付けられている。このテーパは、後述する中皿20の係合部材50内に差し込み片40を差し込むときの入り勝手を考慮したものである。上記テーパの角度θ1は、差し込み片40の下面に対して5~20°であることが好ましく、なかでも、3~10°であることがより好ましい。
【0030】
また、上記差し込み片40は、その根元部から先端に向かってやや上り傾斜に角度が付けられており、その先端が、切欠き開口30内において、上記中皿収容凹部12の底面12aよりも上に浮き上がった状態になっている。これは、この部分に中皿20を固定したときに上記差し込み片40の先端で中皿20の下面を押し上げ付勢して、中皿20を取り外す際に、中皿20が上に押し出されるよう考慮したものである。上記上り傾斜にするための角度θ2は、中皿収容凹部12の底面12aに対して、0.5~3°程度に設定することが好ましく、なかでも、1~2°であることがより好ましい。
【0031】
さらに、上記差し込み片40の根元側に設けられた薄肉の境界部41のうち、上記差し込み片40の、互いに向かい合う二辺に挟まれた部分が、切欠き開口30の内側にわずかに突出して、段差部45が形成されている。この段差部45は、後述する係合部材50の段差部57と係合するようになっている(図8を参照)。
【0032】
そして、上記中皿収容凹部12の底面12aにおいて、上記切欠き開口30の、上記差し込み片40の先端と対峙する側の開口縁30bに、後述する中皿20の係合部材50に設けられている係合片55と係合するための被係合片42が、開口内側に向かって突出形成されている。また、上記被係合片42が形成された開口縁30bの下端部が、容器本体10の下端面よりも下にわずかに突出して、突出片42bが形成されている(図9を参照)。上記突出片42bの左右方向の幅は、上記開口縁30bの左右方向の幅よりも一回り小さい幅である。そして、この突出片42bの突出厚み(上下方向の厚み)は、容器本体10の下面の四隅に設けられている、容器支受用の突起80の上下方向の厚みの範囲内であり、容器の安定性を妨げるものではない。
【0033】
また、上記被係合片42が形成された切欠き開口30の開口縁30bの後方(近傍)に、上記開口縁30bとわずかに距離をあけて、上記開口縁30bに沿って左右方向に延びる平面視略帯状のスリット43が形成されている(図3を参照)。このスリット43は、容器本体10の下面まで貫通しており、上記被係合片42が前後に動きやすいよう考慮したものである。なお、上記スリット43の下部開口43aは、後方に向かってその幅が拡げられており、容器本体10の下面において、上記被係合片42に、ヒンジ連結されている側から指をかけやすいようになっている。
【0034】
一方、上記容器本体10に取り付けられる中皿20は、これを長手方向の側面からみた側面図である図4(a)と、そのB-B’断面図である図4(b)と、これを裏返して示す斜視図である図5に示すように、その下面20aから下向きに、前記容器本体10側に設けられた差し込み片40と係合するための係合部材50が突出形成されている。
【0035】
上記係合部材50は、上記中皿20の下面20aの一部と、上記中皿20の下面20aから垂下する一対の側面部51と、上記中皿20の下面20aに対して所定隙間を保った状態で平行に延びる底面部52とで囲われた空間部を有する略筒体である。そして、上記係合部材50の一端は開口部53になっており、他端は奥面部54によって閉じている。
【0036】
上記底面部52の、上記奥面部54側の端部には、上記容器本体10側に設けられる被係合片42と係合するための係合片55が、奥側に向かって突出形成されている。
【0037】
また、上記底面部52のうち、上記係合片55が設けられている部分の近傍に、左右方向に延びる帯状凹部56が設けられており、この部分が他の部分より薄肉になっている。この帯状凹部56があることにより、上記係合片55が根元部(底面部52の奥端部分)において動きやすくなっている。したがって、上記係合片55と、前記容器本体10側の被係合片42との係脱がスムーズに行われるようになっている。
【0038】
さらに、上記底面部52の前端縁には、その下面の一部が凹状に切りかかれて段差部57が設けられている(図8を参照)。この段差部57は、すでに述べたとおり、前記容器本体10側の差し込み片40の根元部に設けられた段差部45と係合して、係合部材50が前後にずれたり、がたついたりしないようにガイドするためのものである。
【0039】
そして、上記中皿20の下面20aのうち、上記係合部材50の開口部53の開口縁から、係合部材50が設けられた側とは反対側の、中皿20の端縁に到る部分(図5において斜線で示す部分)が、他の部分よりもごく薄く凹んで浅い凹領域Sが形成されている。
【0040】
上記中皿20を、容器本体10の中皿収容凹部12(図1を参照)内に収容するには、図6に示すように、中皿20の下面20aに設けられた係合部材50の開口部53を、上記中皿収容凹部12の底面12aに設けられた差し込み片40の先端付近に対峙させ、上記差し込み片40を係合部材50の内側に差し込む。
【0041】
なお、上記差し込み片40の先端付近に係合部材50の開口部53を対峙させる際、まず上記差し込み片40の根元部に、上記中皿20の下面20aに設けられた凹領域Sが当たるように中皿20を傾け、この凹領域Sの凹面に沿って差し込み片40を案内するようにして係合部材50内に差し込むと、一連の動作をよりスムーズに行うことができる。
【0042】
上記差し込み片40を係合部材50内に完全に差し込むことにより、図7に示すように、上記係合部材50の係合片55と中皿収容凹部12側の被係合片42とが係合し、同じく上記係合部材50の底面部52に設けられた段差部57と中皿収容凹部12側の段差部45とが係合して、上記係合部材50を、中皿収容凹部12の底面12aに安定した状態で固定することができる(図7において仮想円Pで囲った部分の拡大図である図8を参照)。これにより、中皿20を、中皿収容凹部12内に安定した状態で収容することができる。このとき、上記係合部材50内で、上り傾斜の角度が付けられた差し込み片40の先端が、中皿20の下面20aを押し付け付勢している。
【0043】
そして、上記中皿収容凹部12内に収容された中皿20を取り出す場合は、上記容器本体10の下面側において、上記切欠き開口30内に露出する係合部材50の底面部52の、係合片55が設けられた側を上に押し上げて、上記係合片55と中皿収容凹部12側の被係合片42との係合を外すことにより、中皿収容凹部20を簡単に取り外すことができる。
【0044】
なお、上記係合部材50の底面部52を押し上げる際、容器本体10の下面から下向きにわずかに突出する突出片42bを、図7において太矢印で示すように、切欠き開口30の内側に押し出すようにしながら、上記底面部52を押し上げると、両者の係合がより外れやすく、好適である。
【0045】
このように、上記化粧料容器によれば、容器本体10の下面側に露出している係合部材50の底面部52を上方に押し上げるだけで、簡単に中皿20を取り外すことができるため、従来のように、中皿と容器本体の側面同士を利用した係合とは異なり、消費者にとっても中皿20の着脱がしやすく、使い勝手のよいものとなる。
【0046】
しかも、中皿20と容器本体10との係合を互いの側面に凹凸を付けることなく行っているため、容器の水平方向に余分なスペースが要らず、容器本体10および中皿20の周壁の厚みも薄くできるため、全体をコンパクトに構成することができるという利点を有する。ちなみに、この例では、中皿20の高さ方向の全体の厚みが3mm、係合部材50の高さ方向の厚みが2mm、化粧料容器全体の厚みが11mmであり、全体として薄型でコンパクトにすることができる。
【0047】
そして、従来のように、容器本体10の中皿収容凹部12の周囲や仕切り壁等に、中皿20を取り出すための段差や切欠きを設ける必要がないため、中皿20の上面と容器本体10の上面とを全て同じ高さに揃えることができ、蓋体11を開けたときに端正な印象となって見栄えがよいという利点を有する。
【0048】
なお、上記の例では、容器本体10の中皿収容凹部12の底面12aにおいて、被係合片42の自由度を高めるためにスリット43を設けたが、被係合片42の形状や容器本体10の材料である樹脂の可撓性によっては、上記スリット43は必ずしも必要ではない。ただし、スリット43を設ける場合、その効果を考慮すると、スリット43の幅(図3においてWで示す)は、1~2mmであることが好ましく、なかでも1~1.3mmであることがより好ましい。そして、上記スリット43の左右方向の長さ(図2においてLで示す)は、切欠き開口30の切欠き幅よりもやや長くなるようにすることが好適である。また、上記スリット43と、上記切欠き開口30の開口縁30bとの間の距離(図3においてYで示す)は、1~2mmであることが好ましく、なかでも1~1.3mmであることがより好ましい。
【0049】
また、上記の例では、中皿20側の係合部材50において、底面部52の、係合片55が設けられている部分の近傍に、左右方向に延びる帯状凹部56を設けたが、係合片55の形状やこの中皿20の材質によっては、必ずしも必要ではない。ただし、帯状凹部56を設ける場合は、その凹部の深さを、帯状凹部56の配置にもよるが、通常、底面部52の全体厚みに対して1/2~1/8に設定することが好ましい(この例では、底面部52の厚みが2mm、帯状凹部56の凹部深さが0.3mm)。
【0050】
さらに、同じく上記底面部52において、その前端縁に段差部57を設けるとともに、容器本体10側の差し込み片40に段差部45を設けて、両者を係合するようにしたが、このような係合は必ずしも必要ではない。しかし、中皿20をより安定した状態で取り付けるには、段差部57、45を設けて両者を係合させることが好適である。
【0051】
また、上記の例では、中皿20の下面20aのうち、上記係合部材50の開口部53から中皿20の端縁に到る部分に、他の部分よりもごく薄く凹んだ凹領域Sを設けたが、この凹領域Sも、必ずしも必要ではない。しかし、前述のとおり、この凹領域Sに、容器本体10側の差し込み片40を沿わせながら係合部材50内に差し込むようにすると、一連の動作をスムーズに行うことができる。しかも、上記凹領域Sがあると、中皿収容凹部12内に傾斜姿勢で入り込ませる中皿20の下面20aに、上記凹領域Sの凹んだ分だけ上下方向の隙間が広くなるため、差し込み片40が係合部材50の開口部53内に入りやすくなるという利点を有する(図6を参照)。
【0052】
そして、上記の例では、上記中皿20を水平面に置く際や化粧料を充填する際に、上記中皿20を安定した状態で載置できるように、係合部材50の底面部52が、中皿20の下面20aにおいて占める割合を、比較的大きくしている。ちなみに、中皿20の下面20aの面積(凹凸を除く水平面への投影面積)を1とすると、上記底面部52の下面の面積(凹凸を除く水平面への投影面積)は、1/10~1/6程度に設定することが好適である。上記の割合が小さすぎると、中皿20内への化粧料充填時に底がぐらぐらして不安定になり好ましくない。逆に大きすぎると、容器の全体重量が重くなり、材料コストもかかるため、好ましくない。
【0053】
また、上記一連の例は、中皿20側に略筒体である係合部材50を設け、容器本体10の中皿収容凹部12の底面に、被係合部材として差し込み片40を設けたが、中皿20の下面から片持ちで面方向に延びて突出する差し込み片を設け、容器本体10の中皿収容凹部12の底面に、上記差し込み片を差し込むための略筒体(被係合部材)を設けるようにしても差し支えない。
【0054】
その場合は、中皿20の下面20aの、差し込み片の周囲に、中皿20を安定に載置するための枠体を設けることが望ましい。すなわち、この枠体の内側が、上記の例における切欠き開口30に相当するものとなる(図2を参照)。
【0055】
そして、上記中皿収容凹部12の底面12aに、その厚みを利用して、差し込み片保持用の空間部を形成するとともに、上記底面12aの一部を容器本体10の下面まで貫通して、その開口から、中皿20側の差し込み片を露出させることが好ましい。
【0056】
なお、本発明は、中皿20と容器本体10との着脱構造に特徴を有するものであり、その特徴的な構成があれば、中皿20の形状も、化粧料容器全体の形状も、特に限定されるものではない。ただし、本発明の化粧料容器は、全体を薄型にすることができることが一つの特徴であり、例えば化粧料容器全体の厚みが9~13mmの容器に適用することが好適である。
【0057】
そして、中皿20に充填する化粧料の種類も、どのような種類のものであってもよいが、中皿20が樹脂の一体成形品であることから、樹脂皿に適した化粧料を充填することが望ましい。
【実施例0058】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
〔実施例1〕
上記実施の形態として図1図9に示す構成の化粧料容器を、上記の記載に準じて用意した。
【0060】
<評価>
上記実施例1品について、モニター5名に、容器本体の中皿収容凹部内に、中皿を収容し、再度取り外す作業を5回繰り返して行わせた。そして、その着脱作業の容易性について評価させたところ、中皿の下面に設けた係合部材を傷めたりすることなく、スムーズに着脱することができた、との評価を得た。また、中皿収容凹部内に中皿を収容した容器本体の上面は、中皿の周囲と中皿収容凹部周壁との間に隙間がなく、また中皿収容凹部周壁の厚みも薄く設定されているため、非常に端正で美麗な外観である、との評価を得た。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、中皿着脱タイプの化粧料容器でありながら、中皿の周壁と容器本体の凹部周壁を薄肉にすることができ、しかも容器本体の上面の中皿と周囲の仕切り壁等の高さも均一に揃えることができる、優れた化粧料容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
10 容器本体
12 中皿収容凹部
12a 底面
20 中皿
20a 下面
40 差し込み片
42 被係合片
50 係合部材
55 係合片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10