(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016364
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230126BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230126BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20230126BHJP
H02G 3/16 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
H05K9/00 R
H05K5/02 J
H05K5/02 Q
H01Q9/16
H02G3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120625
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】藤野 新九郎
(72)【発明者】
【氏名】竹下 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】管 英春
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 正実
【テーマコード(参考)】
4E360
5E321
5G361
【Fターム(参考)】
4E360AB02
4E360AB12
4E360BB22
4E360BC05
4E360BD03
4E360BD05
4E360CA02
4E360EA03
4E360EA12
4E360ED02
4E360GA34
4E360GB97
4E360GB99
4E360GC02
4E360GC08
5E321AA01
5E321BB53
5E321GG05
5G361BA01
5G361BA07
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】ノイズ発生源を収容するハウジングを有する電子機器において、ハウジングの共振周波数をノイズ発生源の電磁ノイズの周波数と異ならせる。
【解決手段】電子機器10は、電磁ノイズを発生するノイズ発生源12と、ハウジング1とを有する。ハウジングが、ノイズ発生源12を収容する収容空間Rを画定する第1および第2のハウジング部品16,18を備える。第1のハウジング部品16が、第1の固定部16dと、第1の固定部16dに対してそれぞれ離れる方向に延在する2つの第1の内壁部16fとを含む。第2のハウジング部品18が、第1の固定部16dに固定される第2の固定部18cと、第2の固定部18cに対してそれぞれ離れる方向に延在しつつ、且つ、2つの第1の内壁部16fそれぞれに対して外側に並んで配置される2つの第2の内壁部18eとを含む。2つの第1の内壁部16fの少なくとも1つの頂面に切り欠き部16gが形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、
導電材料から作製され、前記ノイズ発生源を収容するハウジングと、を有し、
前記ハウジングが、前記ノイズ発生源を収容する収容空間を画定する第1および第2のハウジング部品を備え、
前記第1のハウジング部品が、前記第2のハウジング部品に固定される第1の固定部と、前記第2のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第1の固定部に対して離れる方向に延在する第1の内壁部とを含み、
前記第2のハウジング部品が、前記第1のハウジング部品の前記第1の固定部に固定される第2の固定部と、前記第1のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第2の固定部に対して離れる方向に延在しつつ、且つ、前記第1の内壁部に対して外側に並んで配置される第2の内壁部とを含み、
前記第1の内壁部の頂面に切り欠き部が形成されている、電子機器。
【請求項2】
前記内壁部および外壁部の延在方向長さが、前記電磁ノイズの周波数の波長の1/4である、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の固定部は、前記第1のハウジング部品に対角に2つ配置され、
前記第2の固定部が、前記第2のハウジング部品に対角に2つ配置されている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記切り欠き部が、前記第1の内壁部の延在方向中央に形成されている、請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記切り欠き部が、2つの前記第1の内壁部が接続して形成された角部近くに形成されている、請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1のハウジング部品の前記第1の固定部および前記第2のハウジング部品の前記第2の固定部の一方に貫通穴が形成されるとともに、他方にめねじ穴が形成され、
導電材料から作製され、前記貫通穴を通過して前記めねじ穴に螺合する固定ねじをさらに有する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ノイズ発生源が回路基板である、請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、回路基板と、その回路基板を収容する収容空間を備える金属製のハウジングとを有する電子機器が開示されている。ハウジングは、開口を備えて回路基板を収容するハウジング本体と、ハウジング本体の開口を塞ぐ蓋体とを備える。蓋体の外周縁には、ハウジング本体に向かって突出する環状の突条部が形成されている。ハウジング本体の開口縁には、蓋体の突条部が圧入される環状の圧入溝が形成されている。蓋体の突条部がハウジング本体の圧入溝に圧入されることにより収容空間が閉じられ、プリント基板から筺体外部への電磁ノイズの放射(EMI)が抑制されるとともに、外部からの電磁ノイズによるプリント基板の誤動作耐性(EMS)が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された電子機器のハウジングは、プリント基板から発生する電磁ノイズによって共振する可能性がある。ハウジングの共振周波数が電磁ノイズの周波数と実質的に一致すると、共振によって電磁ノイズが増幅される可能性がある。その結果、電子機器は、外部に電磁ノイズを放射する可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、そのノイズ発生源を収容するハウジングとを有する電子機器において、ハウジングの共振周波数をノイズ発生源から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、
導電材料から作製され、前記ノイズ発生源を収容するハウジングと、を有し、
前記ハウジングが、前記ノイズ発生源を収容する収容空間を画定する第1および第2のハウジング部品を備え、
前記第1のハウジング部品が、前記第2のハウジング部品に固定される第1の固定部と、前記第2のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第1の固定部に対して離れる方向に延在する第1の内壁部とを含み、
前記第2のハウジング部品が、前記第1のハウジング部品の前記第1の固定部に固定される第2の固定部と、前記第1のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第2の固定部に対して離れる方向に延在しつつ、且つ、前記第1の内壁部に対して外側に並んで配置される第2の内壁部とを含み、
前記2つの第1の内壁部の少なくとも1つの頂面に切り欠き部が形成されている、電子機器が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、そのノイズ発生源を収容するハウジングとを有する電子機器において、ハウジングの共振周波数をノイズ発生源から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る電子機器の上方斜視図
【
図6】比較例の電子機器における第1のハウジング部品の下方斜視図
【
図7】比較例の電子機器における第2のハウジング部品の上方斜視図
【
図9】比較例の電子機器における電界分布を示す上面図
【
図10】ハウジングの共振周波数のシフトを示す周波数-EMI特性図
【
図11】本開示の実施の形態2に係る電子機器の上方斜視図
【
図16】ハウジングの共振周波数の別のシフトを示す周波数-EMI特性図
【
図17】ハウジングの共振周波数のさらに別のシフトを示す周波数-EMI特性図
【
図18】本開示の別の実施の形態に係る電子機器における第1のハウジング部品の下方斜視図
【
図19】ハウジングの共振周波数のさらに異なるシフトを示す周波数-EMI特性図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0010】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するものであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る電子機器の上方斜視図である。また、
図2は、電子機器の分解斜視図である。なお、図に示すX-Y-Z直交座標系は、本開示の実施の形態の理解を容易にするためのものであって、本開示の実施の形態を限定するためのものではない。
【0012】
図1および
図2に示すように、本開示の実施の形態1に係る電子機器10は、例えば車両に搭載される車載用の小型カメラである。電子機器10は、電磁ノイズを発生する発生源である回路基板12と、金属材料などの導電材料から作製され、回路基板12を収容するハウジング14とを有する。ハウジング14は、直方体形状であって、第1のハウジング部品16と第2のハウジング部品18とを備える。
【0013】
図3は、第1のハウジング部品の下方斜視図である。また、
図4は、
図1のA-A線に沿った電子機器の断面図である。そして、
図5は、
図1のB-B線の沿った電子機器の断面図である。
【0014】
図4および
図5に示すように、第1のハウジング部品16と第2のハウジング部品18は、互いに係合することにより、回路基板12を収容する収容空間Rを画定する。具体的には、本実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16は、概略有底筒状であって、矩形板状のベース部16aと、ベース部16aの外周縁から第2のハウジング部品18に向かって突出する側壁16bとを含んでいる。第2のハウジング部品18は、概略有底筒状であって、矩形板状のベース部18aと、ベース部18bの外周縁から第1のハウジング部品16に向かって突出する側壁18bとを含んでいる。第1のハウジング部品16の側壁16bと第2のハウジング部品18の側壁18bは、それぞれの頂面で互いに対向する。第1のハウジング部品16と第2のハウジング部品18とが互いに係合することにより、第1のハウジング部品16のベース部16a、側壁16b、第2のハウジング部品18のベース部18a、側壁18bに囲まれた収容空間Rが画定される。
【0015】
なお、本実施の形態1の場合、回路基板12は、複数の固定ねじ20を介して、第2のハウジング部品18のベース部18aに固定される。これにより、回路基板12が第2のハウジング部品18に電気的にグランド接続されている(第2のハウジング部品18の電位が、回路基板12のグランド電位と同一になる)。また、電子機器10が小型カメラである場合、レンズなどの光学要素が第2のハウジング部品18に取り付けられている。回路基板12と外部装置(図示せず)とを接続する接続ケーブル22(電力ケーブル、信号ケーブルを含むケーブル)は、第1のハウジング部品16のベース部16aに形成された貫通穴16cを通過する。
【0016】
第1および第2のハウジング部品16、18は、金属材料などの導電材料から作製されている。本実施の形態1の場合、第1および第2のハウジング部品16、18は、アルミダイカスト(ADC12)から作製されている。これにより、回路基板12から発生する電磁ノイズの電子機器10の外部への放射(EMI:Electromagnetic Interference)が抑制されるとともに、外部からの電磁ノイズによる回路基板12の誤動作耐性(EMS:Electromagnetic Susceptibility)が向上する。
【0017】
また、本実施の形態1の場合、第1および第2のハウジング部品16、18は、複数の固定ねじ24を介して互いに固定されている。
【0018】
具体的には、第1のハウジング部品16の側壁16bは、第2のハウジング部品18に固定される第1の固定部16dを含んでいる。また、第2のハウジング部品18の側壁18bは、第1のハウジング部品16の第1の固定部16dに固定される第2の固定部18cを含んでいる。
【0019】
本実施の形態1の場合、第1の固定部16dは、第1のハウジング部品16の矩形状の側壁16bにおいて、第1および第2のハウジング部品16、18の係合方向視(Z軸方向視)で、対角に2つ配置されている。同様に、第2の固定部18cは、第2のハウジング部品18の矩形状の側壁18bにおいて、対角に2つ配置されている。
【0020】
また、本実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16の第1の固定部16dには、固定ねじ24が通過する貫通穴16eが形成されている。第2のハウジング部品18の第2の固定部18cには、固定ねじ24が螺合するめねじ穴18dが形成されている。固定ねじ24が第1の固定部16dの貫通穴16eを通過して第2の固定部18cのめねじ穴18dに螺合することにより、第1の固定部16dと第2の固定部18cとが固定されるとともに、直流的に接続される。なお、これに代わって、第1の固定部16dにめねじ穴を形成し、第2の固定部18cに貫通穴が形成されてもよい。
【0021】
なお、本実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16と第2のハウジング部品18は、アルミダイカストから作製され、アルマイト処理されている。そのため、第1の固定部16dと第2の固定部18cそれぞれの接触面は、酸化膜によって覆われているので、直流的に接続されていない。しかしながら、第1の固定部16dと第2の固定部18cは、金属材料などの導電材料から作製された固定ねじ24を介して直流的に接続されている。すなわち、固定ねじ24の頭部24aが第1の固定部16dに対して接触するとともに直流的に接続し、おねじが形成された固定ねじ24の軸部24bが第2の固定部18cのめねじ穴18dに螺合するとともに直流的に接続する。固定ねじ24の頭部24aと接触する第1の固定部16dの部分は、固定ねじ24を締めるときの頭部24aの回転によってその酸化膜が削り取られているので、固定ねじ24の頭部24aと直流的に接続することができる。また、めねじ穴18dは、アルマイト処理後のタップ加工によって作成されているので、固定ねじ24の軸部24bと直流的に接続することができる。
【0022】
本実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16の側壁16bは、第2のハウジング部品18に向かって突出しつつ、複数の第1の固定部16dそれぞれに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する第1の内壁部16fを備える。具体的には、1つの第1の固定部16dに対して2つの第1の内壁部16fが離れる方向に延在している。本実施の形態1の場合、複数(4つ)の第1の内壁部16fは、互いに接続されて1つの環状の内壁部を構成している。
【0023】
また、本実施の形態1の場合、第2のハウジング部品18の側壁18bは、第1のハウジング部品16に向かって突出しつつ、複数の第2の固定部18cに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する複数の第2の内壁部18eを備える。具体的には、1つの第1の固定部18cに対して2つの第2の内壁部18eが離れる方向に延在している。本実施の形態1の場合、複数(4つ)の第2の内壁部18eは、互いに接続されて1つの環状の内壁部を構成している。また、内壁部18eは、第1のハウジング部品16の第1の内壁部16fに対して外側に並んで且つ隙間をあけて配置されている。なお、第1および第2のハウジング部品16、18の表面が酸化膜(絶縁層)で覆われている場合には、第2の内壁部18eが第1の内壁部16fに接触していてもよい。
【0024】
さらに、本実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16の側壁16bの複数の第1の内壁部16fの少なくとも1つの頂面に切り欠き部16gが形成されている、本実施の形態1の場合、複数の第1の内壁部16fそれぞれに切り欠き部16gは形成されている。
【0025】
切り欠き部16gは、ハウジング14の内部から外部に向かって延在する溝状であって、第1の内壁部16fの頂面を分断している。また、本実施の形態1の場合、切り欠き部16bは、第1の内壁部16fの延在方向(X軸方向またはY軸方向)の中央に形成されている。
【0026】
このような切り欠き部16gの存在により、ハウジング14の共振周波数を電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。このことについて、比較例を挙げながら具体的に説明する。
【0027】
図6は、比較例の電子機器における第1のハウジング部品の下方斜視図である。また、
図7は、比較例の電子機器における第2のハウジング部品の上方斜視図である。さらに、
図8は、比較例の電子機器の断面図である。さらにまた、
図9は、比較例の電子機器における電界分布を示す上面図である。そして、
図10は、ハウジングの共振周波数のシフトを示す周波数-EMI特性図である。
【0028】
図6~
図9に示すように、比較例の電子機器110において、第1のハウジング部品116は、矩形板状のベース部116aと、ベース部116aの外周縁から第2のハウジング部品118に向かって突出する側壁116bとを含んでいる。第2のハウジング部品118は、矩形板状のベース部118aと、ベース部118aの外周縁から第1のハウジング部品116に向かって突出する側壁118bとを含んでいる。第1のハウジング部品116の側壁116bと第2のハウジング部品118の側壁118bは、それぞれの頂面で互いに対向する。第1のハウジング部品116と第2のハウジング部品118とが互いに係合することにより、第1のハウジング部品116のベース部116a、側壁116b、第2のハウジング部品118のベース部118a、側壁118bに囲まれ、回路基板12を収容する収容空間Rが画定される。
【0029】
また、比較例の電子機器110において、第1のハウジング部品116の側壁116bは、第2のハウジング部品118に固定される第1の固定部116dを含んでいる。また、第2のハウジング部品118の側壁118bは、第1のハウジング部品116の第1の固定部116dに固定される第2の固定部118cを含んでいる。第1の固定部116dと第2の固定部118cは、固定ねじ24を介して互いに固定されている。
【0030】
さらに、比較例の電子機器110において、第1の固定部116dは、第1のハウジング部品116の矩形状の側壁116bにおいて、第1および第2のハウジング部品116、118の係合方向視(Z軸方向視)で、対角に2つ配置されている。同様に、第2の固定部118cは、第2のハウジング部品118の矩形状の側壁118bにおいて、対角に2つ配置されている。
【0031】
比較例の電子機器110の場合、第1のハウジング部品116の側壁116bにおいて、第1の固定部116d以外の部分には、すなわち第2のハウジング部品118に固定されていない部分には、第2のハウジング部品116に向かって突出しつつ、複数の第1の固定部116dに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する複数の第1の内壁部116fが設けられている。具体的には、1つの第1の固定部116dに対して2つの第1の内壁部116fが離れる方向に延在している。複数(4つ)の第1の内壁部116fは、互いに接続されて1つの環状の内壁部を構成している。
【0032】
なお、比較例の電子機器110においては、本実施の形態1の電子機器10と異なり、第1のハウジング部品116の側壁116bにおける第1の内壁部116fには切り欠き部が形成されていない。
【0033】
また、比較例の電子機器110の場合、第2のハウジング部品118の側壁118bにおいて、第2の固定部118c以外の部分には、すなわち第1のハウジング116に固定されていない部分には、第1のハウジング部品116に向かって突出しつつ、複数の第2の固定部118cに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する複数の第2の内壁部118eが設けられている。具体的には、1つの第1の固定部118cに対して2つの第2の内壁部118eが離れる方向に延在している。複数(4つ)の第2の内壁部118eは、互いに接続されて1つの環状の内壁部を構成している。また、第2の内壁部118eは、第1のハウジング部品116の第1の内壁部116fに対して外側に並んで且つ隙間をあけて配置されている。なお、第1および第2のハウジング部品16、18の表面が酸化膜(絶縁層)で覆われている場合には、第2の内壁部18eが第1の内壁部16fに接触していてもよい。
【0034】
このような比較例の電子機器110によれば、その内部の回路基板12から発生する電磁ノイズによってハウジング114が共振しうる。具体的に説明すると、
図9に示すように、第1のハウジング部品116の側壁116bと第2のハウジング部品118の側壁118bとの間に、他の部分に比べて高い強度の電界(クロスハッチング部分)が発生する。第1の固定部116d(第2の固定部118c)から離れるほど電界の強度が高い。すなわち、第1の固定部116d(第2の固定部118c)が設けられていない側壁116b(118b)の角部が最も電界の強度が高い。
【0035】
このような電界分布が生じると、電界の強度が高い第1および第2のハウジング部品116、118の部分が、あたかも「ダイポールアンテナ」のように機能する。具体的には、固定ねじ24を介して互いに固定された第1の固定部116dと第2の固定部118cが「ダイポールアンテナ」の「給電点」として機能する。また、その「給電点」として機能する第1の固定部116dから離れる方向に延在する2つの第1の内壁部116fと第2の固定部118cから離れる方向に延在する2つの第2の内壁部118eが電磁ノイズを受信する「ダイポールアンテナ」の「エレメント」として機能する。回路基板12から発生した電磁ノイズをこの「ダイポールアンテナ」が受信することにより、ハウジング114が共振する。
【0036】
特に、
図9に示すように、第1のハウジング部品116と第2のハウジング部品118の係合方向視(Z軸方向視)で、矩形状のハウジング114の一辺(すなわち側壁114b)が実質的に電磁ノイズの周波数の波長λの1/4の長さである場合、ハウジング114は大きく共振する。すなわち、第1の固定部116dに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する2つの第1の内壁部116fと第2の固定部118cに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する2つの第2の内壁部118eの延在方向長さが電磁ノイズの周波数の波長λの1/4の長さである場合、ハウジング114は、電磁ノイズの周波数と実質的に同一の共振周波数を持つ。言い換えると、ハウジング114は、「半波長ダイポールアンテナ」を備える。
【0037】
このようなハウジングの共振を抑制できるように、本実施の形態1に係る電気機器10においては、第1のハウジング部品16の側壁16bにおける第2の内壁部16fに切り欠き部16gが形成されている。
【0038】
図10の周波数-EMI特性図は、シミュレーションによって得られた結果であって、回路基板12から放射される電磁ノイズの周波数を変化させ、それによって変化するハウジングから放射される電磁ノイズ(EMI)の強度を示している。また、
図10において、実線は、比較例の電子機器110のハウジング114から放射される電磁ノイズの強度を示している。また、破線は、本実施の形態1に係る電子機器10のハウジング14から放射される電磁ノイズの強度であって、第1のハウジング部品16の第1の内壁部16fに形成された切り欠き部16gの幅w(内壁部16fの延在方向のサイズ)が3mmであるときの強度を示している。さらに、一点鎖線は、実施の形態1に係る電子機器10のハウジング14から放射される電磁ノイズの強度であって、切り欠き部16gの幅wが5mmであるときの強度を示している。
【0039】
図10の破線および一点鎖線に示すように、本実施の形態1に係る電子機器10のハウジング14において、第1のハウジング部品16の第1の内壁部16fに形成された切り欠き部16gの幅wが大きくなると、ハウジング14から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジング14の共振周波数が低周波数側にシフトする。また、切り欠き部16gが形成されていない比較例の電子機器110のハウジング114から放射されるEMIの強度のピーク値に比べて、本実施の形態1のピーク値は、低周波数側にシフトする。
【0040】
このようなEMIの強度のピーク値のシフトは、切り欠き部16gによって、「ダイポールアンテナ」の「エレメント」の長さが変化することによって生じると考えられる。本実施の形態1では、
図3に示すように、切り欠き部16gの立ち上り部分16hおよび立ち下り部分16iの長さだけ、第2のハウジング部品18に対して絶縁物を介して対向する部分(クロスハッチングで示す部分)の全長が増大する。なお、ここで言う「絶縁物」は、空気、酸化膜、シール部材などを言う。よって、「ダイポールアンテナ」の「エレメント」として機能する長さが増大する。その結果、ハウジング14から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジング14の共振周波数が低周波数側にシフトする。このような切り欠き部によるハウジング14の周波数特性の変化を、発明者らはシミュレーションによって見出した。
【0041】
また、本実施の形態のように切り欠き部を設けると、ハウジングから放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトするのみならず、ハウジングから放射されるEMIの強度自体が下がる可能性があるという利点がある。これは、切り欠き部が有する隅においては、電磁波の放射効率が下がることも期待できる為である。
【0042】
したがって、第1のハウジング部品16の側壁16bにおける第1の内壁部16fの延在方向の中央に適当な幅wの切り欠き部16gを設ければ、ハウジング14の共振周波数を回路基板12から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0043】
また、
図9に示す比較例の電子機器110のように、第1のハウジング部品16と第2のハウジング部品18の係合方向視(Z軸方向視)で、本実施の形態1の電子機器10における矩形状のハウジング14の一辺(すなわち側壁16b、18bの延在方向の長さ)が実質的に電磁ノイズの周波数の波長λの1/4の長さであっても、ハウジング14のサイズを変更することなく、ハウジング14の共振周波数を回路基板12から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0044】
このような本実施の形態1によれば、電磁ノイズを発生する回路基板と、回路基板を収容するハウジングとを有する電子機器において、ハウジングの共振周波数を回路基板から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0045】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、実施の形態1の改良形態である。したがって、実施の形態1と異なる点を中心に、本実施の形態2について説明する。
【0046】
図11は、本開示の実施の形態2に係る電子機器の上方斜視図である。また、
図12は、電子機器の分解斜視図である。
図13は、第1のハウジング部品の下方斜視図である。また、
図14は、
図11のC-C線に沿った電子機器の断面図である。そして、
図15は、
図11のD-D線の沿った電子機器の断面図である。
【0047】
図11および
図12に示すように、本開示の実施の形態2に係る電子機器210は、電磁ノイズを発生する発生源である回路基板212と、金属材料などの導電材料から作製され、回路基板212を収容するハウジング214とを有する。ハウジング214は、直方体形状であって、第1のハウジング部品216と第2のハウジング部品218とを備える。
【0048】
本実施の形態2の場合、第1のハウジング部品216は、概略有底筒状であって、矩形板状のベース部216aと、ベース部216aの外周縁から第2のハウジング部品218に向かって突出する側壁216bとを含んでいる。第2のハウジング部品218は、概略有底筒状であって、矩形板状のベース部218aと、ベース部218aの外周縁から第1のハウジング部品216に向かって突出する側壁218bとを含んでいる。回路基板212は、複数の固定ねじ220を介して、第2のハウジング部品218のベース部218aに固定される。
【0049】
本実施の形態2の場合、第1および第2のハウジング部品216、218は、複数の固定ねじ224を介して互いに固定されている。具体的には、第1のハウジング部品216の側壁216bは、第2のハウジング部品218に固定される第1の固定部216dを含んでいる。また、第2のハウジング部品218の側壁218bは、第1のハウジング部品216の第1の固定部218dに固定される第2の固定部218cを含んでいる。
【0050】
第1のハウジング部品216の側壁216bにおいて、第1の固定部216d以外の部分は、第2のハウジング部品218に固定されていない。同様に、第2のハウジング部品218の側壁218bにおいて、第2の固定部218以外の部分は、第1のハウジング部品216に固定されていない。
【0051】
本実施の形態2の場合、第1のハウジング部品216の側壁216bは、第2のハウジング部品218に向かって突出しつつ、複数の第1の固定部216dそれぞれに対して離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在する複数の突条部216fを備える。具体的には、1つの第1の固定部216dに対して2つの突条部216fが離れる方向に延在している。
【0052】
また、本実施の形態2の場合、第2のハウジング部品218の側壁218bは、第2の固定部218cから離れる方向(X軸方向またはY軸方向)に延在しつつ、第1のハウジング部品216の複数の突条部216fが進入する複数の溝218eを備える。具体的には、1つの第2の固定部218cに対して2つの溝218eが離れる方向に延在している。
【0053】
さらに、本実施の形態2の場合、第1のハウジング部品216の側壁216bの複数の突条部216fの少なくとも1つの頂面に切り欠き部216gが形成されている、本実施の形態2の場合、複数の突条部216fそれぞれに切り欠き部16gは形成されている。
【0054】
切り欠き部216gは、ハウジング214の内部から外部に向かって延在する溝状であって、突条部216fの頂面を分断している。また、本実施の形態2の場合、切り欠き部216bは、突条部216fの延在方向(X軸方向またはY軸方向)の中央に形成されている。
【0055】
さらにまた、本実施の形態2の場合、第1のハウジング部品216の第1の固定部216dと第2のハウジング部品218の第2の固定部218cは、直接的に接触しておらず、誘電体226を介して接触している。誘電体226は、例えば樹脂材料から作製された部材であって、固定ねじ224の軸部224bが通過する貫通穴226aを備える。
【0056】
第1のハウジング部品216の側壁216bにおける突条部216fの突出量pおよび切り欠き部216gの幅wと、第2のハウジング部品218の側壁218bにおける溝218eの深さdと、誘電体226の高さhとを適当に設定することにより、ハウジング214の共振周波数をシフトさせることができ、それにより回路基板212から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0057】
具体的には、まず、1つ目の共振周波数のシフトを実現するために、第1のハウジング部品216の側壁216bにおける突条部216fの突出量pと第2のハウジング部品218の側壁218bにおける溝218eの深さdが適当に設定される。
【0058】
また、別の共振周波数のシフトを実現するために、第1のハウジング部品216の側壁216bの突条部216fにおける切り欠き部216gの幅wが適当に設定される。
【0059】
そして、さらに別の共振周波数のシフトを実現するために、第1のハウジング部品216の第1の固定部216dと第2のハウジング部品218の第2の固定部218cとの間の誘電体226の高さhが適当に設定される。
【0060】
これらの3つの共振周波数のシフトを組み合わせて実現することにより、ハウジング214の共振周波数を回路基板212から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0061】
まず、第1のハウジング部品216の側壁216bにおける突条部216fの突出量pと第2のハウジング部品218の側壁218bにおける溝218eの深さdによるハウジング214の共振周波数のシフトについて説明する。
【0062】
図16は、ハウジングの共振周波数の別のシフトを示す周波数-EMI特性図である。
【0063】
図16の周波数-EMI特性図は、シミュレーションによって得られた結果であって、回路基板から放射される電磁ノイズの周波数を変化させ、それによって変化するハウジングから放射される電磁ノイズ(EMI)の強度を示している。また、
図16において、実線は、比較例の電子機器110のハウジング114から放射される電磁ノイズの強度を示している。また、破線は、切り欠き部216gと誘電体226が取り除かれた本実施の形態2に係る電子機器210から放射される電磁ノイズの強度であって、第2のハウジング部品218の側壁218bにおける溝218eの深さdが2mmであるときの強度を示している。さらに、一点鎖線は、切り欠き部216gと誘電体226が取り除かれた本実施の形態2に係る電子機器210のハウジング214から放射される電磁ノイズの強度であって、溝218eの深さdが3mmであるときの強度を示している。
【0064】
図16の破線および一点鎖線に示すように、切り欠き部216gと誘電体226が取り除かれた本実施の形態2に係る電子機器210のハウジング214において、第2のハウジング部品218の溝218eの深さdが大きくなると、ハウジング214から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジング214の共振周波数が低周波数側にシフトする。また、そのハウジング214から放射されるEMIの強度のピーク値は、比較例の電子機器110におけるピーク値に比べて低い。
【0065】
このようなEMIの強度のピーク値のシフトは、
図8と
図14に示すように、第1のハウジング部品と第2のハウジング部品とが係合し合う領域における、絶縁物を介して対向する部分の表面積S1、S2、S3、S4(拡大して太線で示す部分)の大きさの違いによって生じている。なお、ここで言う「絶縁物」は、空気、酸化膜、シール部材などを言う。すなわち、本実施の形態2に係る電子機器210と比較例の電子機器110とを比較した場合、
図8と
図14に示すように、本実施の形態2に係る電子機器210における近距離で対向し合う部分の表面積S1、S2は、比較例の電子機器110における近距離で対向し合う部分の表面積S3、s4に比べて大きい。また、第2のハウジング部品218の側壁218bの溝218eの深さdが大きくなるほど、近距離で対向し合う部分の表面積が大きくなる。このような表面積が大きくなるほど、第1のハウジング部品と第2のハウジング部品との間の容量結合が大きくなり、それにより、第1のハウジング部品と第2のハウジング部品との間に発生する電界全体の強度が低下する。その結果、ハウジング214から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジングの共振周波数が低周波数側にシフトする。このような第1および第2のハウジング部品216、218の表面積に対する周波数特性を、発明者らはシミュレーションによって見出した。
【0066】
したがって、第1のハウジング部品216の突条部216fの突出量pと第2のハウジング部品218の溝218eの深さd(Z軸方向のサイズ)を適当に設定すれば、すなわち近距離で対向し合う部分の表面積を適当に設定すれば、ハウジング214の共振周波数を回路基板212から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0067】
次に、第1のハウジング部品216の側壁216bの突条部216fにおける切り欠き部216gの幅wによるハウジング214の共振周波数のシフトは、上述の実施の形態1において、
図10を参照しながら説明したどおりである。
【0068】
続いて、第1のハウジング部品216の第1の固定部216dと第2のハウジング部品218の第2の固定部218cとの間に配置された誘電体226の高さhによるハウジング214の共振周波数のシフトについて説明する。
【0069】
図17は、ハウジングの共振周波数の別のシフトを示す周波数-EMI特性図である。
【0070】
図17の周波数-EMI特性図は、シミュレーションによって得られた結果であって、回路基板から放射される電磁ノイズの周波数を変化させ、それによって変化するハウジングから放射される電磁ノイズ(EMI)の強度を示している。また、
図17において、実線は、比較例の電子機器110のハウジング114から放射される電磁ノイズの強度を示している。また、破線は、誘電体が設けられた比較例の電子機器110のハウジング114から放射される電磁ノイズの強度であって、誘電体の高さh(すなわち第1の固定部116dと第2の固定部118cとの間の距離)が2.5mmであるときの強度を示している。さらに、一点鎖線は、誘電体が設けられた比較例の電子機器110のハウジング114から放射される電磁ノイズの強度であって、誘電体の高さhが4.5mmであるときの強度を示している。
【0071】
図17の破線および一点鎖線に示すように、誘電体が設けられた比較例の電子機器110のハウジング114において、誘電体の高さhが大きくなると、ハウジング114から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジング114の共振周波数が低周波数側にシフトする。それとともに、ピーク値も減少する。また、誘電体が設けられていない比較例の電子機器110のハウジング114から放射されるEMIの強度のピーク値に比べて、そのピーク値は、低周波数側にシフトするとともに低下する。
【0072】
このようなEMIの強度のピーク値のシフトは、誘電体を貫通する固定ねじの軸部の部分が「インダクタンス」として機能することによって生じると考えられる。すなわち、第1のハウジング部品116の第1の固定部116dと第2のハウジング部品118の第2の固定部118cとが「インダクタンス」を介して電気的に接続されている。第1のハウジング部品116と第2のハウジング部品118とが「インダクタンス」を介して電気的に接続されていると、当該接続によって形成される「ダイポールアンテナ」の「エレメント」の長さが長くなる。その結果、ハウジング114から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトする、すなわちハウジングの共振周波数が低周波数側にシフトする。このような第1および第2のハウジング部品116、118間のインダクタンスに対する周波数特性を、発明者らはシミュレーションによって見出した。
【0073】
また、本実施の形態2のように誘電体を設けると、ハウジング114から放射されるEMIの強度のピーク値が低周波数側にシフトするのみならず、ハウジング114から放射されるEMIの強度自体が下がるという利点がある。これは、第1の固定部116dまたは第2の固定部118cと誘電体が接する箇所においては、電磁波の放射効率が下がる為である。
【0074】
なお、
図17は、
図6~
図9に示す比較例の電子機器110に誘電体を設けた場合の共振周波数のシフトを示している。本実施の形態2のように、第1のハウジング部品216の第1の固定部216cと第2のハウジング部品218の第2の固定部218dとの間に誘電体226を設けた場合にも、同様の共振周波数のシフトが起こると推察される。
【0075】
したがって、第1のハウジング部品216の第1の固定部216dと第2のハウジング部品218の第2の固定部218cとを適当な高さhの誘電体26を介して接触させれば、ハウジング214の共振周波数を回路基板212から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0076】
本実施の形態2も、上述の実施の形態と同様に、電磁ノイズを発生する回路基板と、回路基板を収容するハウジングとを有する電子機器において、ハウジングの共振周波数を回路基板から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0077】
以上、上述の実施の形態1および2を挙げて本開示を説明したが、本開示の実施の形態はこれらに限らない。
【0078】
例えば、上述の実施の形態1および2の場合、ハウジング14内に収容され、ハウジング14を共振させうる電磁ノイズを発生するノイズ発生源は、回路基板12である。しかしながら、本開示の実施の形態において、ノイズ発生源は回路基板に限らない。ノイズ発生源は、例えばセンサであってもよい。
【0079】
また、上述の実施の形態2の場合、第1のハウジング部品216の第1の固定部216dと第2のハウジング部品218の第2の固定部218cとの間に配置される誘電体226は、樹脂材料から作製された部材である。しかしながら、本開示の実施の形態はこれに限らない。誘電体は、例えば空気であってもよい。この場合、第1の固定部216dと第2の固定部218cは、間隔をあけて互いに対向する。また誘電体の内部に金属粒体を分散させると、電磁波の放射効率が低下する為、ハウジング214から放射されるEMIの強度がより下がるという利点がある。
【0080】
さらに、上述の実施の形態1の場合、第1のハウジング部品16の側壁16bにおける第1の内壁部16fにおいて、切り欠き部16gは、第1の内壁部16fの延在方向の中央に配置されている。しかしながら、切り欠き部が配置される第1の内壁部上の位置は中央に限らない。
【0081】
図18は、本開示の別の実施の形態に係る電子機器における第1の第1のハウジング部品の下方斜視図である。また、
図19は、ハウジングの共振周波数のさらに異なるシフトを示す周波数-EMI特性図である。
【0082】
図18には、別の実施の形態に係る電子機器における第1のハウジング部品316が示されている。この別の実施の形態に係る電子機器は、
図6~
図9に示す比較例の電子機器110に、切り欠き部316gを形成したものに相当する。切り欠き部316gは、第1のハウジング部品316の側壁316bの第1の内壁部316fにおいて、その延在方向中央ではなく、その中央からずれた位置に形成されている。具体的には、2つの第1の内壁部316fが接続して形成された角部近くに、切り欠き部316gが形成されている。
【0083】
このように角部近くに切り欠き部316gが第1の内壁部316fに形成されると、
図19に示すように、ハウジングから放射されるEMIの強度のピーク値(二点鎖線)は、切り欠き部が形成されていない比較例の電子機器110のピーク値(実線)に比べて高周波数側にシフトする。
【0084】
このようなEMIの強度のピーク値のシフトは、切り欠き部によって、「ダイポールアンテナ」の「エレメント」の長さが変化することによって生じると考えられる。上述したように角部から離れて、切り欠き部を形成すると、切り欠き部の立ち上げ部分、立下り部分の長さだけ絶縁物を介して対向する部分の全長が増大する。これに対して、角部近くに切り欠き部を形成すると、「ダイポールアンテナ」の給電部である第1および第2の固定部から離れた箇所に切り欠き部が存在することになる。給電部から離れた箇所に切り欠き部が存在すると、当該箇所の「エレメント」としての機能が低下する。この低下の影響は、切り欠き部の立ち上げ部分、立下り部分の長さだけ絶縁物を介して対向する部分の全長が増大する影響よりも大きい。よって、角部近くに、切り欠き部を形成すると、「エレメント」の長さが短くなる。結果として角部近くに、切り欠き部を形成すると、ハウジングから放射されるEMIの強度のピーク値が高周波数側にシフトする。
【0085】
したがって、上述の実施の形態1において、切り欠き部16gの位置がハウジングの角部近くに配置されても、ハウジングの共振周波数を回路基板から発生する電磁ノイズの周波数と異ならせることができる。
【0086】
すなわち、本開示の一実施の形態に係る電子機器は、広義には、電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、導電材料から作製され、前記ノイズ発生源を収容するハウジングと、を有し、前記ハウジングが、前記ノイズ発生源を収容する収容空間を画定する第1および第2のハウジング部品を備え、前記第1のハウジング部品が、前記第2のハウジング部品に固定される第1の固定部と、前記第2のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第1の固定部に対して離れる方向に延在する第1の内壁部とを含み、前記第2のハウジング部品が、前記第1のハウジング部品の前記第1の固定部に固定される第2の固定部と、前記第1のハウジング部品に向かって突出しつつ、前記第2の固定部に対して離れる方向に延在しつつ、且つ、前記第1の内壁部に対して外側に並んで配置される第2の内壁部とを含み、前記2つの第1の内壁部の少なくとも1つの頂面に切り欠き部が形成されている。
【0087】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施形態を説明した。そのために、添付図面及び詳細な説明を提供した。したがって、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0088】
また、前述の実施形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本開示は、電磁ノイズを発生するノイズ発生源と、そのノイズ発生源を収容するハウジングとを有する電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 電子機器
12 ノイズ発生源(回路基板)
16 第1のハウジング部品
16d 第1の固定部
16f 第1の内壁部
18 第2のハウジング部品
18c 第2の固定部
18e 第2の内壁部
R 収容空間