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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163646
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】パッシブイメージング装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G01S13/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074682
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真起
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AA02
5J070AC12
5J070AE09
5J070AF01
5J070AK04
5J070BE01
(57)【要約】
【課題】外乱や環境変化などの影響を抑制し、例えば所持品検査装置に用いられた場合に安定した所持品検査を行うことを可能とするパッシブイメージング装置を提供する。
【解決手段】パッシブイメージング装置は、移動する対象者から放射されて筐体31の電磁波透過部32を透過した電磁波EWと、筐体31内に固定された電磁波発信器35から放射された基準電磁波EWrとを可動ミラー41を介して受信し、基準電磁波EWrの受信信号強度を用いて前記対象者から放射された電磁波EWの受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成し、生成された補正受信信号強度に基づいて前記対象者についての画像を生成するように構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する対象者から放射された電磁波と、固定された電磁波放射源から放射された基準電磁波とを可動ミラーを介して受信し、前記基準電磁波の受信信号強度を用いて前記対象者から放射された電磁波の受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成し、生成された補正受信信号強度に基づいて前記対象者についての画像を生成する、パッシブイメージング装置。
【請求項2】
前記対象者から放射された電磁波の受信信号強度から前記基準電磁波の受信信号強度を減算して前記補正受信信号強度を算出し、算出された補正受信信号強度に基づいて前記対象者についての画像を生成する、請求項1に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項3】
前記補正受信信号強度を増幅し、増幅された補正受信信号強度に基づいて前記対象者についての画像を生成する、請求項2に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項4】
前記可動ミラーは、前記対象者から放射された電磁波を透過させる電磁波透過部を有する筐体内に配置され、
前記電磁波放射源は、前記基準電磁波を前記可動ミラーに向けて放射するように、前記筐体内における前記電磁波透過部以外の位置に配置されている、
請求項1に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項5】
前記電磁波放射源は、一定の電磁波を発信する電磁波発信器又は電磁波を吸収する電磁波吸収体である、請求項4に記載のパッシブイメージング装置。
【請求項6】
生成された前記対象者についての画像に基づいて前記対象者が不審物を所持しているか否かを判定する、請求項1~5のいずれか一つに記載のパッシブイメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体から放射された電磁波を受信して物体についての画像を生成するパッシブイメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のパッシブイメージング装置の一例として、特許文献1には、物体から放射されたミリ波帯の熱雑音(電磁波)を受信して画像を得るミリ波パッシブイメージング装置が記載されている。パッシブイメージング装置は、低侵襲性であること、及び隠れた物品の検知能力が高いことなどから、セキュリティ向けのボディスキャナ(所持品検査装置)などにも応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-36867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対象者が物品を隠して所持している場合、物品のある部分は、対象者の人体から放射された電磁波が物品によって遮られて低下する。このため、物品のある部分は、物品がない部分に比べて、パッシブイメージング装置に受信される電磁波の信号強度が低くなる。よって、所持品検査装置に応用されたパッシブイメージング装置によれば、対象者の人体に対応する画像中に物品が暗いシルエットとして現れることとなり、対象者が物品を所持しているか否かを判定すること、及び現れたシルエットの形状から物品(つまり、対象者の所持品)の種別を推定することも可能である。
【0005】
しかし、パッシブ方式では、受信される電磁波が外乱や環境変化などの影響によって不安定になるおそれがある。受信される電磁波が不安定になると、例えば、本来一様であるはずの画像が斑のある画像として形成されてしまい、所持品検査等の精度低下を招く。
【0006】
そこで、本発明は、外乱や環境変化などの影響を抑制し、例えば所持品検査装置に用いられた場合に安定した所持品検査を行うことを可能とするパッシブイメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、パッシブイメージング装置が提供される。このパッシブイメージング装置は、移動する対象者から放射された電磁波と固定された電磁波放射源から放射された基準電磁波とを可動ミラーを介して受信し、前記基準電磁波の受信信号強度を用いて前記対象者から放射された電磁波の受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成し、生成された補正受信信号強度に基づき前記対象者についての画像を生成するように構成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外乱や環境変化などの影響を抑制し、例えば所持品検査装置に用いられた場合に安定した所持品検査を行うことを可能とするパッシブイメージング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るパッシブイメージング装置の概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係るパッシブイメージング装置の要部斜視図である。
図3】実施形態に係るパッシブイメージング装置の要部平面図である。
図4】第1及び第4センサユニットの正面図である。
図5】第2及び第3センサユニットの正面図である。
図6】第1~第4センサユニットの構成を模式的に示す図である。
図7】第1~第4センサユニットの筐体の内部を示す要部断面図である。
図8】実施形態に係るパッシブイメージング装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】実施形態に係るパッシブイメージング装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図10】生成(算出)される補正受信信号強度の例を示す図である。
図11】画像(画素)配列に保存される補正受信信号強度の例を示す図である。
図12】実施形態に係るパッシブイメージング装置の変形例を示す、図7に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1図3は、本発明の一実施形態に係るパッシブイメージング装置1を示している。図1は、パッシブイメージング装置1の概略構成を示すブロック図であり、図2は、パッシブイメージング装置1の要部斜視図であり、図3は、パッシブイメージング装置1の要部平面図である。
【0012】
実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、物体から放射された電磁波を受信して画像化することが可能な装置である。本実施形態において、パッシブイメージング装置1は、ウォークスルー型の所持品検査装置として構成されている。具体的には、パッシブイメージング装置1は、通路Pに設置され、通路Pを矢印方向に歩行で移動する対象者Sの人体HBから放射された電磁波EWを受信し、その信号強度(受信信号強度)に基づいて対象者Sについての画像(以下「対象者画像という)を生成し、生成された対象者画像を表示するように構成されている。
【0013】
また、実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、生成された対象者画像に基づいて対象者Sが特定の物品(主に、刃物、銃、爆発物などの危険物)を所持しているか否かを判定するように構成されている。
【0014】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、及び「右」は、主に対象者Sを基準とした(対象者Sから見た)方向のことをいう。
【0015】
図1図3を参照すると、パッシブイメージング装置1は、4つのセンサユニット(第1~第4センサユニット3A~3D)と、処理部5と、表示部7とを有する(図2及び図3では、第1~第4センサユニット3A~3D以外の構成要素が省略されている)。
【0016】
第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれは、対象者Sの人体HBから放射された電磁波EWを受信してその信号強度を検出するように構成されている。本実施形態において、第1~第4センサユニット3A~3Dは、平面視矩形状に配置されている(図3参照)。換言すれば、第1~第4センサユニット3A~3Dは、平面視で矩形状の領域(図3において二点鎖線で示す)の四隅に位置するように配置されている。
【0017】
具体的には、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bは、通路Pを挟んでその両側に配置され、第3センサユニット3C及び第4センサユニット3Dは、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bよりも対象者Sの移動方向における後方側の位置で通路Pを挟んでその両側に設置されている。つまり、平面視において、第1センサユニット3Aと第4センサユニット3Dとは互いに対角に位置し、第2センサユニット3Bと第3センサユニット3Cとは互いに対角に位置している。したがって、通路Pを移動する対象者Sは、第1~第4センサユニット3A~3Dの内側を移動することになる。
【0018】
図4は、第1センサユニット3Aとその対角に位置する第4センサユニット3Dの正面図であり、図5は、第2センサユニット3Bとその対角に位置する第3センサユニット3Cの正面図である。
【0019】
本実施形態において、第1センサユニット3Aと第4センサユニット3Dとは同じ形状を有し、第2センサユニット3Bと第3センサユニット3Cとは同じ形状を有している。また、第2センサユニット3B及び第3センサユニット3Cは、第1センサユニット3A(第4センサユニット3D)を左右反転させた形状を有している。但し、それ以外について、第1~第4センサユニット3A~3Dは、基本的に同じ構成要素を有しているので、以下では、第1~第4センサユニット3A~3Dをまとめて説明する。
【0020】
第1~第4センサユニット3A~3Dは、それぞれ筐体(ハウジング)31を有する。筐体31の正面には、電磁波を透過させる電磁波透過部32が設けられている。電磁波透過部32は、筐体31の幅方向Wの略中央部に設けられ、上下方向Vに延びる矩形状に形成されている。そして、第1~第4センサユニット3A~3Dは、それぞれの電磁波透過部32が対角にあるセンサユニットを向くように配置されている。
【0021】
図6は、第1~第4センサユニット3A~3Dの構成を模式的に示す図である。本実施形態において、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれは、主にポリゴンミラーで構成される可動ミラー41と、集光ミラー42と、受信アンテナ43と、信号強度検出部44とを有する。これらは、筐体31内に収容されている。
【0022】
可動ミラー41は、電磁波透過部32の内側に配置されている。可動ミラー41は、図示省略の電動モータにより、例えば上下方向に回転駆動され、電磁波透過部32側から入射される電磁波EWを集光ミラー42に向けて反射(走査)するように構成されている。
【0023】
集光ミラー42は、例えば可動ミラー41の下方に配置される。集光ミラー42は、可動ミラー41によって反射(走査)された電磁波EWを受信アンテナ43に集光させるように構成されている。
【0024】
受信アンテナ43は、集光ミラー42によって集光された電磁波EWを受信する。信号強度検出部44は、受信アンテナ43によって受信された電磁波EWの信号強度を検出する。そして、信号強度検出部44によって検出された信号強度、すなわち、可動ミラー41を介して受信された電磁波EWの信号強度が、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれの検出結果として処理部5に出力される。
【0025】
第1~第4センサユニット3A~3Dについてさらに説明する。図7は、第1~第4センサユニット3A~3Dの筐体31の内部を模式的に示す要部断面図である。本実施形態において、可動ミラー41は、電磁波透過部32側から、鉛直方向に対して第1角度α1(例えば、20°)以上且つ第2角度α2(例えば、150°)以下の角度を有して入射される電磁波EWを集光ミラー42に向けて反射(走査)可能に構成されている。なお、図7中の符号Oは、可動ミラー41の回転中心を示している。
【0026】
また、筐体31の外部からの電磁波EWに関し、可動ミラー41は、電磁波透過部32を透過した電磁波EWであって、鉛直方向に対して第3角度α3(例えば、40°)以上且つ第4角度α4(例えば、130°)以下の角度を有して入射される電磁波EWを集光ミラー42に向けて反射(走査)可能に構成されている。
【0027】
本実施形態において、筐体31内には、信号強度が一定(厳密に一定である必要はなく、概ね一定であればよい)の基準電磁波EWrを発信する(放射する)電磁波発信器35が設けられている。電磁波発信器35は、筐体31内における電磁波透過部32以外の場所に固定され、可動ミラー41が集光ミラー42に向けて反射(走査)することのできる基準電磁波EWrを可動ミラー41に向けて発信するように構成されている。例えば、電磁波発信器35は、筐体31内における電磁波透過部32の上部近傍に配置され、電磁波透過部32側から、鉛直方向に対して第1角度α1以上且つ第3角度α3未満の角度(例えば、30°)を有して可動ミラー41に入射する基準電磁波EWrを発信(放射)するように構成されている。
【0028】
図3に戻り、第1センサユニット3Aは、主に通路Pを矢印方向に移動する対象者Sの人体HBの正面左半分から放射された電磁波EWを、可動ミラー41を介して受信してその信号強度を検出するように構成され、第2センサユニット3Bは、主に通路Pを矢印方向に移動する対象者Sの人体HBの正面右半分から放射された電磁波EWを、可動ミラー41を介して受信してその信号強度を検出するように構成されている。
【0029】
第3センサユニット3Cは、主に通路Pを矢印方向に移動する対象者Sの人体HBの背面左半分から放射された電磁波EWを、可動ミラー41を介して受信してその信号強度を検出するように構成され、第4センサユニット3Dは、主に通路Pを矢印方向に移動する対象者Sの人体HBの背面右半分から放射された電磁波EWを、可動ミラー41を介して受信してその信号強度を検出するように構成されている。
【0030】
また、第3センサユニット3C及び第4センサユニット3Dには、対象者Sが第1~第4センサユニット3A~3Dに囲まれた検査領域に進入したことを検知する進入検知センサ51が設けられ、第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bには、対象者Sが前記検査領域から進出したことを検知する進出検知センサ52が設けられている。進入検知センサ51は、例えば透過型光学センサからなり、第3センサユニット3C側の投光素子51Aと、第4センサユニット3D側の受光素子51Bとを含む。同様に、進出検知センサ52は、例えば透過型光学センサからなり、第1センサユニット3A側の投光素子52Aと、第2センサユニット3B側の受光素子52Bとを含む。
【0031】
さらに、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれには、可動ミラー41のミラー角度を検出するミラー角度検出センサ53が設けられている(図6参照)。
【0032】
図1に戻り、処理部5は、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれから出力された検出結果を入力する。処理部5に入力される検出結果は、上述のように、信号強度検出部44によって検出された信号強度であり、電磁波発信器35から発信(放射)されて可動ミラー41を介して受信された基準電磁波EWrの信号強度、つまり、基準電磁波EWrの受信信号強度(以下「基準受信信号強度」という)と、通路Pを移動する対象者Sの人体HBから放射されて可動ミラー41を介して受信された電磁波EWの信号強度、つまり、通路Pを移動する対象者Sの人体HBから放射された電磁波EWの受信信号強度(以下「検査用受信信号強度」という)とを含む。
【0033】
そして、処理部5は、通路Pを移動する対象者Sの斜め前方に位置することになる第1センサユニット3A及び第2センサユニット3Bの検出結果に基づいて、対象者Sの人体HBの正面側画像を対象者画像として生成し、通路Pを移動する対象者Sの斜め後方に位置することになる第3センサユニット3C及び第4センサユニット3Dの検出結果に基づいて、対象者Sの人体HBの背面側画像を対象者画像として生成する。
【0034】
本実施形態において、処理部5は、前記基準受信信号強度を用いて前記検査用受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成し、生成された補正受信信号強度に基づいて対象者画像(すなわち、対象者Sの人体HBの正面側画像及び背面側画像)を生成する。具体的には、処理部5は、前記検査用受信信号強度から前記基準受信信号強度を減算して補正受信信号強度を算出し、算出された補正受信信号強度に基づいて対象者画像を生成するように構成されている。換言すれば、処理部5は、前記基準受信信号強度に対する前記検査用受信信号強度の相対値に基づいて対象者画像を生成するように構成されている。好ましくは、処理部5は、算出された補正受信信号強度(すなわち、前記相対値)を増幅し、増幅された補正受信信号強度(相対値)に基づいて対象者画像を生成するように構成されている。
【0035】
処理部5で生成された対象者画像(対象者Sの人体HBの正面側画像及び背面側画像)は、表示部7に出力されて表示される。
【0036】
また、処理部5は、生成された対象者画像に基づいて対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かを判定する。既述のように、対象者Sが物品を隠して所持している場合、前記物品のある部分では対象者Sの人体から放射された電磁波EWが前記物品によって遮られる。このため、前記物品のある部分は、前記物品のない部分に比べて、電磁波EWの受信信号強度が低下する。その結果、処理部5で生成された対象者画像には、対象者Sが所持する物品(所持品)が暗いシルエットとして現れる。処理部5は、画像処理などを用い、対象者画像中に現れた暗いシルエット(の形状)に基づいて、対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かを判定する。そして、処理部5は、対象者Sが前記特定の物品を所持していると判定すると、その旨を図示省略の上位装置に通知し、及び/又は、図示省略の報知部を介して検査員に報知する。
【0037】
つまり、本実施形態において、処理部5は、対象者Sについての画像である対象者画像を生成する画像生成部としての機能と、対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かを判定する判定部としての機能とを有している。
【0038】
但し、これに限られるものではない。処理部5は、対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かの判定を行わなくてもよい。この場合、処理部5は、画像生成部としてのみ機能し、検査員等が表示部7に表示された対象者画像(対象者画像中に現れた暗いシルエットの形状)に基づいて、対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かを判定することになる。
【0039】
次に、図8及び図9を参照してパッシブイメージング装置1の動作の一例を説明する。
【0040】
パッシブイメージング装置1は、進入検知センサ51によって対象者Sの進入を検知すると(ステップS1;YES)、第1~第4センサユニット3A~3Dを動作させる(ステップS2)。具体的には、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、可動ミラー41を回転させると共に、電磁波発信器35及び信号強度検出部44を動作(起動)させる。
【0041】
次に、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dにより、基準受信信号強度、すなわち、電磁波発信器35から発信(放射)されて可動ミラー41を介して受信される基準電磁波EWrの信号強度を検出する(ステップS3)。具体的には、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、信号強度検出部44は、可動ミラー41のミラー角度が基準電磁波受信角であるときに可動ミラー41を介して受信された電磁波の信号強度を検出する。前記基準電磁波受信角は、電磁波発信器35から発信(放射)された基準電磁波EWrを集光ミラー42に向けて反射(走査)することができる可動ミラー41のミラー角度としてあらかじめ設定される。なお、複数の基準電磁波受信角が設定されてもよく、その場合、信号強度検出部44は、複数の基準電磁波受信角のそれぞれで基準受信信号強度を検出する。検出された基準受信信号強度は、処理部5に出力される。
【0042】
次に、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dにより、検査用受信信号強度、すなわち、通路Pを移動する対象者Sの人体HBから放射されて可動ミラー41を介して受信された電磁波の信号強度を検出する。具体的には、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、信号強度検出部44は、可動ミラー41のミラー角度が所定の設定範囲の下限から上限まで変化する間、所定角度毎に受信された電磁波の信号強度を検出する。換言すれば、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれの信号強度検出部44は、前記所定の設定範囲における前記所定角度毎の各ミラー角度(下限、下限+1、下限+2、・・・、上限-1、上限)で受信された電磁波の信号強度を検出する(ステップS4~S9)。検出された検査用受信信号強度は、処理部5に出力される。
【0043】
ここで、本実施形態において、前記所定の設定範囲は、鉛直方向に対して第3角度α3(図7参照)を有して入射される電磁波EWを集光ミラー42に向けて反射(走査)することができる可動ミラー41のミラー角度から、鉛直方向に対して第4角度α4(図7参照)を有して入射される電磁波EWを集光ミラー42に向けて反射(走査)することができる可動ミラー41のミラー角度までの任意の範囲に設定され得る。また、前記所定角度は、パッシブイメージング装置1(の処理部5)が生成する画像の画素数などに応じて適宜設定され得る。
【0044】
次に、パッシブイメージング装置1は、処理部5により、ステップS3で検出された基準受信信号強度を用いてステップS4~S9で検出された検査用受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成する(ステップS10)。具体的には、パッシブイメージング装置1の処理部5は、ステップS4~S9で検出された検査用受信信号強度のそれぞれからステップS3で検出された基準受信信号強度を減算することによって補正受信信号強度を算出する。この補正受信信号強度の生成(算出)は、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれについて行われる。なお、ステップS3で複数の基準電磁波受信角が検出された場合、処理部5は、それらの平均値を用いてステップS4~S9で検出された検査用受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成する。図10(a)、(b)は、ステップS10で生成(算出)される補正受信信号強度の例を示している。
【0045】
次に、パッシブイメージング装置1は、ステップS10で生成(算出)された第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれについての補正受信信号強度を対応する画像(画素)配列(図11を参照)の現在時刻の列に保存する(ステップS11)。
【0046】
次に、パッシブイメージング装置1は、進出検知センサ52によって対象者Sの進出が検知されたか否かを判定する(ステップS12)。そして、対象者Sの進出が検知されない場合(ステップS12;NO)、パッシブイメージング装置1は、ステップS3に戻ってステップS3~ステップS10の処理(基準受信信号強度の検出及び検査用受信信号強度の検出)を繰り返す。
【0047】
これにより、第1~第4センサユニット3A~3Dのそれぞれにおいて、基準受信信号強度の検出、検査用受信信号強度の検出、及び補正受信信号強度の生成(算出)が継続され、生成(算出)された補正受信信号強度が画像(画素)配列の異なる時刻に保存されることになる。例えば、図11に示される例においては、現在時刻の補正受信信号強度が保存される際、現在時刻に対して所定時間前の時刻「t-1」の列と、さらに所定時間前の時刻「t-2」の列に、それらの時刻に生成(算出)された補正受信信号強度がすでに保存されており、また、現在時刻に対して所定時間後の時刻「t+1」の列、さらにその所定時間後の「t+2」の列、・・・「t+n」の列には、それらの時刻に生成(算出)される補正受信信号強度は保存され得る。なお、前記画像(画素)配列の異なる時刻に保存される補正受信信号強度は、対象者Sの移動に伴い、対象者Sの人体HBの左右方向における異なる部位から放射される電磁波EWに基づくものとなる。
【0048】
他方、対象者Sの進出が検知された場合(ステップS12;YES)、パッシブイメージング装置1は、処理部5により、保存された補正受信信号強度に基づいて対象者画像を生成する(ステップS13)。
【0049】
具体的には、本実施形態において、処理部5は、第1センサユニット3Aに関する補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの正面左半分の画像を生成し、第2センサユニット3Bに関する補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの正面右半分の画像を生成する。好ましくは、処理部5は、第1センサユニット3Aに関する補正受信信号強度を増幅し、増幅された補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの正面左半分の画像を生成し、第2センサユニット3Bに関する補正受信信号強度を増幅し、増幅された補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの正面右半分の画像を生成する。そして、処理部5は、生成された正面左半分の画像と正面右半分の画像とを合成(合体)して対象者の人体HBの正面側画像を生成する。
【0050】
また、処理部5は、第3センサユニット3Cに関する補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの背面左半分の画像を生成し、第4センサユニット3Dに関する補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの背面右半分の画像を生成する。好ましくは、処理部5は、第3センサユニット3Cに関する補正受信信号強度を増幅し、増幅された補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの背面左半分の画像を生成し、第4センサユニット3Dに関する補正受信信号強度を増幅し、増幅された補正受信信号強度に基づいて対象者Sの人体HBの背面右半分の画像を生成する。そして、処理部5は、生成された背面左半分の画像と背面右半分の画像とを合成(合体)して対象者の人体HBの背面側画像を生成する。
【0051】
パッシブイメージング装置1は、対象者画像を生成すると、生成された対象者画像にエッジ強調処理を施してエッジ強調画像を生成し(ステップS14)、生成されたエッジ強調画像を表示部7に表示する(ステップS15)。そして、パッシブイメージング装置1は、生成されたエッジ強調画像に基づいて対象者Sが前記特定の物品を所持しているか否かを判定し(所持品判定)、対象者Sが前記特定の物品を所持している場合にはその旨を上位装置に通知し、又はその旨を検査員に報知する(ステップS16)。その後、パッシブイメージング装置1は、第1~第4センサユニット3A~3Dを停止させて(ステップS17)、本フローを終了する。
【0052】
実施形態に係るパッシブイメージング装置1によれば、以下のような効果が得られる。
【0053】
パッシブイメージング装置1は、対象者Sの進入を検知すると、まず、固定された電磁波発信器35から発信(放射)された信号強度が一定の基準電磁波EWrを、可動ミラー41を介して受信し、受信された基準電磁波EWrの信号強度(つまり、基準電磁波EWrの受信信号強度)を基準受信信号強度として検出する。次いで、パッシブイメージング装置1は、通路Pを移動する対象者Sの人体HBから放射された電磁波EWを、可動ミラー41を介して受信し、受信された電磁波EWの信号強度(つまり、対象者Sの人体HBから放出された電磁波EWの受信信号強度)を検査用受信信号強度として検出する。そして、パッシブイメージング装置は、前記基準受信信号強度を用いて前記検査用受信信号強度を補正して補正受信信号強度を生成し、生成された補正受信信号強度に基づいて対象者Sについての画像(対象者画像)を生成する。
【0054】
具体的には、実施形態に係るパッシブイメージング装置1は、前記検査用受信信号強度から前記基準受信信号強度を減算して補正受信信号強度を算出し、算出された補正受信信号強度に基づいて対象者画像を生成するように構成されている。
【0055】
このため、実施形態に係るパッシブイメージング装置1によれば、外乱や環境変化などによって生じる前記検査用受信信号強度の変動分を除外した上で対象者画像を生成することができる。したがって、生成された対象者画像に基づいて行われる所持品検査の精度低下を抑制し、安定した所持品検査を行うことが可能になる。
【0056】
なお、上述の実施形態においては、筐体31内に基準電磁波EWrを発信(放射)する電磁波発信器35が固定されている。しかし、これに限られるものではない。電磁波発信器35に代えて電磁波吸収体が設けられてもよい。電磁波吸収体は、外部からの電磁波を反射せずに吸収するが、自らは安定したミリ波帯の電磁波を放射するからである。この場合、図7に対応する図12に示されるように、電磁波吸収体36は、電磁波透過部32を除く筐体31の内壁に取り付けられ得る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
1…パッシブイメージング装置、3A~3D…第1~第4センサユニット、5…処理部、7…表示部、31…筐体、32…電磁波透過部、35…電磁波発信器、36…電磁波吸収体、41…可動ミラー、42…集光ミラー、43…受信アンテナ、44…信号強度検出部、51…進入検知センサ、52…進出検知センサ、53…ミラー角度検出センサ、P…通路、S…対象者、HB…対象者の人体
図1
図2
図3
図4
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図10
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図12