(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163658
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】船外機
(51)【国際特許分類】
B63H 20/28 20060101AFI20231102BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20231102BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20231102BHJP
F01P 5/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B63H20/28 100
B63H21/38 A
F01P11/04 F
F01P5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074703
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】尾上 純弥
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】門林 義幸
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 公隆
(72)【発明者】
【氏名】野間 暁裕
(57)【要約】 (修正有)
【課題】船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給する。
【解決手段】アッパケース6は、エンジンの下方に配置される。ロアケース7は、アッパケースの下方に配置される。ドライブ軸8は、エンジンから下方に延びている。ドライブ軸は、アッパケース及びロアケース内に配置される。プロペラ軸9は、ドライブ軸に接続される。プロペラ軸は、前後方向に延びている。プロペラ軸は、ロアケース内に配置される。冷却水通路は、エンジンに接続される。冷却水通路は、アッパケース及びロアケース内に配置される。ウォータポンプ21は、ブラケットの下端よりも下方に配置される。ウォータポンプは、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。電動モータ22は、ウォータポンプを駆動する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機を船舶に取り付けるためのブラケットと、
エンジンと、
前記エンジンの下方に配置されたアッパケースと、
前記アッパケースの下方に配置されたロアケースと、
前記エンジンから下方に延び、前記アッパケース及び前記ロアケース内に配置されたドライブ軸と、
前記ドライブ軸に接続され、前後方向に延び、前記ロアケース内に配置されたプロペラ軸と、
前記エンジンに接続され、前記アッパケース及び前記ロアケース内に配置された冷却水通路と、
前記ブラケットの下端よりも下方に配置され、前記冷却水通路を介して前記エンジンに冷却水を送るウォータポンプと、
前記ウォータポンプを駆動する電動モータと、
を備える船外機。
【請求項2】
前記ウォータポンプは、非容積式のポンプである、
請求項1に記載の船外機。
【請求項3】
前記ウォータポンプは、遠心ポンプである、
請求項2に記載の船外機。
【請求項4】
前記ウォータポンプは、軸流ポンプである、
請求項2に記載の船外機。
【請求項5】
前記ロアケースは、外側に向かって膨出した形状を有するトーピード部を含み、
前記プロペラ軸は、前記トーピード部内に配置され、
前記ウォータポンプの少なくとも一部は、前記トーピード部内に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項6】
前記ロアケースに接続されたキャビテーションプレートをさらに備え、
前記ウォータポンプの少なくとも一部は、前記キャビテーションプレートと前記ブラケットの下端との間に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項7】
前記ウォータポンプの少なくとも一部は、前記ドライブ軸よりも前方に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項8】
前記電動モータの少なくとも一部は、前記ブラケットの下端よりも下方に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項9】
前記ロアケースに接続されたキャビテーションプレートをさらに備え、
前記電動モータの少なくとも一部は、前記キャビテーションプレートと前記ブラケットの下端との間に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項10】
前記電動モータの少なくとも一部は、前記ドライブ軸よりも前方に配置される、
請求項1に記載の船外機。
【請求項11】
前記電動モータと前記ウォータポンプとを接続する伝達部材をさらに備える、
請求項1に記載の船外機。
【請求項12】
前記伝達部材は、ベルト、シャフト、或いはチェーンを含む、
請求項11に記載の船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
船外機は、エンジンに冷却水を供給するための冷却水通路とポンプとを備えている。船外機の下部には取水口が設けられており、冷却水通路はエンジンと取水口とに接続されている。ポンプは、冷却水通路を介して冷却水をエンジンに送る。
【0003】
例えば、特許文献1の船外機は、第1ポンプと第2ポンプとを備えている。第1ポンプと第2ポンプとは、ドライブ軸に接続されている。ドライブ軸は、エンジンのクランク軸に接続されている。エンジンからの駆動力によってドライブ軸が回転することで、第1ポンプと第2ポンプとが駆動される。それにより、第1ポンプと第2ポンプとは、冷却水通路を介して冷却水をエンジンに送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ウォータポンプがエンジンからの駆動力によって駆動される場合、エンジンが回転している場合には常にウォータポンプが駆動されるため、冷却が必要ではない場合でも、エンジンに冷却水が供給されてしまう。また、エンジンの回転速度に応じて冷却水の供給量が変化するため、エンジンの冷却に適した量の冷却水をエンジンに供給することは容易ではない。本発明の目的は、船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る船外機は、ブラケットと、アッパケースと、ロアケースと、ドライブ軸と、プロペラ軸と、冷却水通路と、ウォータポンプと、電動モータとを備える。船外機は、ブラケットを介して、船舶に取り付けられる。アッパケースは、エンジンの下方に配置される。ロアケースは、アッパケースの下方に配置される。ドライブ軸は、エンジンから下方に延びている。ドライブ軸は、アッパケース及びロアケース内に配置される。プロペラ軸は、ドライブ軸に接続される。プロペラ軸は、前後方向に延びている。プロペラ軸は、ロアケース内に配置される。冷却水通路は、エンジンに接続される。冷却水通路は、アッパケース及びロアケース内に配置される。ウォータポンプは、ブラケットの下端よりも下方に配置される。ウォータポンプは、冷却水通路を介してエンジンに冷却水を送る。電動モータは、ウォータポンプを駆動する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る船外機では、ウォータポンプは、電動モータによって駆動される。そのため、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図10】第8実施形態に係る船外機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る船外機1の側面図である。船外機1は、ブラケット2と、エンジン3と、伝達機構4と、エンジンカウル5と、アッパケース6と、ロアケース7とを備えている。船外機1は、ブラケット2を介して、船舶に取り付けられる。
【0010】
エンジン3は、船舶を推進させるスラストを発生させる。エンジン3は、クランク軸11を含む。クランク軸11は、船外機1の上下方向に延びている。伝達機構4は、エンジン3の駆動力をプロペラ12に伝達する。伝達機構4は、ドライブ軸8と、プロペラ軸9と、シフト機構10とを含む。ドライブ軸8は、クランク軸11に接続されている。ドライブ軸8は、船外機1の上下方向に延びている。ドライブ軸8は、エンジン3から下方に延びている。
【0011】
プロペラ軸9は、船外機1の前後方向に延びている。プロペラ軸9は、シフト機構10を介して、ドライブ軸8に接続されている。プロペラ軸9にはプロペラ12が取り付けられる。シフト機構10は、複数のギア及びクラッチを含む。シフト機構10は、ドライブ軸8からプロペラ軸9への回転の伝達方向を切り換える。それにより、船舶の前進と後進とが切り換えられる。
【0012】
エンジン3は、エンジンカウル5内に配置される。アッパケース6は、エンジン3の下方に配置されている。ロアケース7は、アッパケース6の下方に配置されている。ドライブ軸8は、アッパケース6及びロアケース7内に配置されている。プロペラ軸9とシフト機構10とは、ロアケース7内に配置されている。詳細には、ロアケース7は、トーピード部13を含む。トーピード部13は、外側に膨出した形状を有する。プロペラ軸9とシフト機構10とは、トーピード部13内に配置される。ロアケース7には、キャビテーションプレート14が接続されている。キャビテーションプレート14は、ロアケース7から後方へ突出している。
【0013】
図2は、船外機1の冷却系を示すブロック図である。
図2に示すように、エンジン3は、ウォータジャケット15を含む。ウォータジャケット15を流れる冷却水により、エンジン3が冷却される。船外機1は、冷却水通路16と排水通路17とを含む。冷却水通路16と排水通路17とは、エンジン3のウォータジャケット15に接続されている。冷却水通路16と排水通路17とは、アッパケース6及びロアケース7内に配置される。
【0014】
冷却水は、船外機1の外部から、冷却水通路16を通って、エンジン3のウォータジャケット15に供給される。冷却水は、ウォータジャケット15から排水通路17を通って、排水口18から船外機1の外部に排出される。排水口18は、例えばロアケース7に設けられる。或いは、排水口18は、アッパケース6に設けられてもよい。
【0015】
冷却水通路16は、取水口19を含む。船外機1は、ウォータポンプ21と電動モータ22とを含む。取水口19は、ロアケース7に設けられている。取水口19は、船外機1の外部と連通している。取水口19を通って、冷却水が船外機1の外部から冷却水通路16に取り込まれる。ウォータポンプ21は、冷却水通路16に設けられている。電動モータ22は、ウォータポンプ21を駆動する。ウォータポンプ21は、冷却水通路16を介してエンジン3に冷却水を送る。
【0016】
図3は、船外機1の拡大側面図である。
図3に示すように、ウォータポンプ21は、ブラケット2の下端201よりも下方に配置されている。ウォータポンプ21は、ロアケース7内に配置されている。ウォータポンプ21は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置されている。ウォータポンプ21は、船舶が停止中の喫水線L1よりも下方に配置されている。ウォータポンプ21は、トーピード部13内に配置されている。ウォータポンプ21は、ドライブ軸8よりも前方に配置されている。ウォータポンプ21は、非容積式のポンプである。例えば、ウォータポンプ21は、遠心ポンプである。
【0017】
電動モータ22は、図示しないバッテリに接続されており、バッテリからの電力によって駆動される。電動モータ22は、ブラケット2の下端201よりも下方に配置されている。電動モータ22は、キャビテーションプレート14の上方に配置されている。電動モータ22は、キャビテーションプレート14とブラケット2の下端201との間に配置されている。電動モータ22は、ロアケース7の上端90とキャビテーションプレート14との間に配置されている。電動モータ22の少なくとも一部は、喫水線L1よりも下方に配置されている。電動モータ22は、ドライブ軸8よりも前方に配置されている。
【0018】
電動モータ22は、出力軸23を含む。ウォータポンプ21は、入力軸24を含む。電動モータ22の出力軸23は、船外機1の前後方向に延びている。ウォータポンプ21の入力軸24は、船外機1の前後方向に延びている。船外機1は、伝達部材25を含む。伝達部材25は、電動モータ22とウォータポンプ21とに接続されている。伝達部材25は、電動モータ22の駆動力をウォータポンプ21に伝達する。詳細には、伝達部材25は、電動モータ22の出力軸23とウォータポンプ21の入力軸24とに接続されている。伝達部材25は、出力軸23の回転を入力軸24に伝達する。伝達部材25は、例えばベルトである。或いは、伝達部材25は、シャフト、或いはチェーンなどの他の部材であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る船外機1では、電動モータ22によって、ウォータポンプ21が駆動される。ウォータポンプ21は、取水口19から、冷却水通路16を通って、エンジン3のウォータジャケット15へ冷却水を送る。ウォータジャケット15を流れる冷却水によって、エンジンが冷却される。冷却水は、ウォータジャケット15から、排水通路17を通って流れ、排水口18から船外機1の外部へ排出される。
【0020】
本実施形態に係る船外機1では、電動モータ22によって、ウォータポンプ21が駆動される。そのため、エンジン3の回転速度によらず、エンジン3の冷却水の要求流量に応じて、ウォータポンプ21を駆動することができる。それにより、エンジン3の冷却に適した量の冷却水をエンジン3に供給することができる。例えば、エンジン3の回転速度が低速である場合に、エンジン3が過冷却にならないように、電動モータ22を制御して、冷却水の流量を調節することができる。
【0021】
ウォータポンプ21は、トーピード部13内に配置される。そのため、ウォータポンプ21は、水面よりも下方に配置される。それにより、ウォータポンプ21への呼び水が確保される。また、ウォータポンプ21として非容積型のポンプが用いられることで、容積型のポンプが用いられる場合と比べて、エンジン3の駆動力の損失が低減される。
【0022】
ウォータポンプ21がトーピード部13内に配置されることで、ウォータポンプ21を配置するために、ロアケース7が船外機1の左右方向に拡大することが抑えられる。それにより、船外機1への水の抵抗の増大が抑えられる。
【0023】
電動モータ22の少なくとも一部は、喫水線L1よりも下方に位置する。そのため、電動モータ22の少なくとも一部は、水面よりも下方に配置される。すなわち、電動モータ22の少なくとも一部は、水に浸かる位置に配置される。それにより、電動モータ22が冷却される。
【0024】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0025】
ウォータポンプ21と電動モータ22との配置は、上記の第1実施形態ものに限らず、変更されてもよい。例えば、
図4は、第2実施形態に係る船外機1の拡大側面図である。
図4に示すように、電動モータ22は、出力軸23が船外機1の上下方向に延びるように配置されてもよい。
【0026】
図5は、第3実施形態に係る船外機1の拡大側面図である。
図5に示すように、ウォータポンプ21は、入力軸24が船外機1の上下方向に延びるように配置されてもよい。ウォータポンプ21の入力軸24は、電動モータ22の出力軸23に、直接的に接続されてもよい。すなわち、伝達部材25は省略されてもよい。電動モータ22の少なくとも一部は、キャビテーションプレート14よりも下方に配置されてもよい。ウォータポンプ21の少なくとも一部は、トーピード部13よりも上方に配置されてもよい。ウォータポンプ21の少なくとも一部は、トーピード部13とキャビテーションプレート14との間に配置されてもよい。
【0027】
図6は、第4実施形態に係る船外機1の拡大側面図である。
図6に示すように、ウォータポンプ21の少なくとも一部は、キャビテーションプレート14とブラケット2の下端201との間に配置されてもよい。
【0028】
伝達機構4の構成は上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、
図7は、第5実施形態に係る船外機1の側面図である。
図7に示すように、第5実施形態に係る船外機1は、オフセット型のドライブ軸8を備える。オフセット型のドライブ軸8は、第1ドライブ軸8Aと第2ドライブ軸8Bとを含む。第1ドライブ軸8Aは、クランク軸11に接続されている。第2ドライブ軸8Bは、シフト機構10を介して、プロペラ軸9に接続されている。第1ドライブ軸8Aと第2ドライブ軸8Bとは、互いに偏心して配置されている。
【0029】
伝達機構4は、リンク機構30を含む。第2ドライブ軸8Bは、ギア、或いはベルトなどのリンク機構30を介して、第1ドライブ軸8Aに接続されている。第5実施形態では、ウォータポンプ21と電動モータ22とは、それぞれ第1実施形態に係るウォータポンプ21と電動モータ22と同様に配置される。
【0030】
図8は、第6実施形態に係る船外機1の側面図である。
図8に示すように、第6実施形態に係る船外機1は、第5実施形態に係る船外機1と同様に、オフセット型のドライブ軸8を備える。また、第6実施形態では、ウォータポンプ21と電動モータ22とは、それぞれ第2実施形態に係るウォータポンプ21と電動モータ22と同様に配置される。
【0031】
図9は、第7実施形態に係る船外機1の側面図である。
図9に示すように、第7実施形態に係る船外機1は、第5実施形態に係る船外機1と同様に、オフセット型のドライブ軸8を備える。また、第7実施形態では、ウォータポンプ21と電動モータ22とは、それぞれ第3実施形態に係るウォータポンプ21と電動モータ22と同様に配置される。
【0032】
図10は、第8実施形態に係る船外機1の側面図である。
図10に示すように、第8実施形態に係る船外機1は、第5実施形態に係る船外機1と同様に、オフセット型のドライブ軸8を備える。また、第8実施形態では、ウォータポンプ21と電動モータ22とは、それぞれ第4実施形態に係るウォータポンプ21と電動モータ22と同様に配置される。
【0033】
上述した実施形態では、ウォータポンプ21は、遠心ポンプである。しかし、ウォータポンプ21は、遠心ポンプに限らず、軸流ポンプなどの他の非容積型ポンプであってもよい。或いは、ウォータポンプ21は、ギアポンプ、或いはベーンポンプなどの容積式のポンプであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、船外機において、エンジンの冷却のために適切な量の冷却水をエンジンに供給することができる。
【符号の説明】
【0035】
2:ブラケット、 3:エンジン、 6:アッパケース、 7:ロアケース、 8:ドライブ軸、 9:プロペラ軸、 13:トーピード部、 14:キャビテーションプレート、 16:冷却水通路、 21:ウォータポンプ、 22:電動モータ、 25:伝達部材