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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163662
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】スクリーン競技場
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/14 20060101AFI20231102BHJP
   A63K 1/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
E04H3/14 Z
E04H3/14 D
E04H3/14 A
E04H3/14 E
A63K1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074708
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】517064843
【氏名又は名称】河野 久米彦
(71)【出願人】
【識別番号】502410196
【氏名又は名称】株式会社 横河システム建築
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 久米彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智夫
(72)【発明者】
【氏名】朱 大立
(72)【発明者】
【氏名】村岡 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓司
(72)【発明者】
【氏名】大関 信彦
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち移動可能なスクリーンを備えたスクリーン競技場を提供することである。
【解決手段】本願発明のスクリーン競技場は、客席と、競技が行われる競技エリア、そして競技エリア内を移動可能な移動スクリーンを備えたものである。映写機を利用することによって、この移動スクリーンに映像(あるいは画像)を表示することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
客席と、
競技が行われる競技エリアと、
前記競技エリア内を移動可能な移動スクリーンと、を備え、
映写機を利用して、前記移動スクリーンに映像又は画像を表示することができる、
ことを特徴とするスクリーン競技場。
【請求項2】
前記移動スクリーンを水平移動させるスクリーンスライド装置を、さらに備え、
前記スクリーンスライド装置によって所定位置まで移動した前記移動スクリーンに、映像又は画像を表示することができる、
ことを特徴とする請求項1記載のスクリーン競技場。
【請求項3】
前記競技エリアの上面に敷設可能な客席用レールと、
前記客席の一部であって、前記客席用レール上を移動可能なスライド客席と、をさらに備え、
前記競技エリアに2種類以上の個別競技用コートが敷設されるとともに、該個別競技用コートが該競技エリアに設定される第1軸方向に並べられ、
前記客席用レールは、前記第1軸方向となるように敷設され、
前記スライド客席は、前記客席用レールの一端側に設けられる左側スライド客席と、該客席用レールの他端側に設けられる右側スライド客席と、を含み、
選択された1の前記個別競技用コートまで前記左側スライド客席と前記右側スライド客席が前記客席用レール上を移動することによって、該個別競技用コートの周囲に前記客席の一部が配置される、
ことを特徴とする請求項2記載のスクリーン競技場。
【請求項4】
前記移動スクリーンを吊上げかつ吊降ろすスクリーン昇降装置を、さらに備え、
前記スクリーン昇降装置によって所定高さまで移動した前記移動スクリーンに、映像又は画像を表示することができる、
ことを特徴とする請求項2記載のスクリーン競技場。
【請求項5】
異なる場所に配置される2以上の撮影手段と、
2以上の前記撮影手段のうちいずれかの該撮影手段を選択する制御手段と、をさらに備え、
前記映写機は、前記制御手段によって選択された前記撮影手段に係る映像又は画像を、前記移動スクリーンに表示し、
前記移動スクリーンは、前記制御手段によって選択された前記撮影手段の位置に応じて移動する、
ことを特徴とする請求項2記載のスクリーン競技場。
【請求項6】
前記客席の上方に固定された固定スクリーンを、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスクリーン競技場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、野球やサッカー、バスケットボール、バレーボール、テニスなどを行う競技場に関するものであり、より具体的には、移動するスクリーンを備えた競技場に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
競技場は、ある特定の競技を行うため、あるいはその競技を観戦させることを目的とする施設であり、野球場やサッカー場などはその代表的な例である。ところが、競技場で行われる競技の回数(例えば試合数)は、一般的に年間を通じて数十回程度であり、すなわち年間を通じて収益を上げている競技場は多くない。
【0003】
一方、スポーツ庁は、官民連携によるスタジアムやアリーナの整備計画策定に対して財政支援を行っており、「稼げる」視点を重視したうえで、スポーツ以外のイベントも常時開催できる多機能型・複合型の施設の整備を推し進めているところである。さらに政府でも、「稼げる」視点を重視した多機能型・複合型のスタジアムやアリーナを2025年までに全国的に整備する目標を掲げている。
【0004】
野球やサッカー、そしてコンサートなどに使用することができる多目的競技場は、定常的に集客機会を設けることができることから収益面にとっては極めて好適であり、これまでも多目的競技場に関する種々の提案が行われてきた。今後は、野球やサッカー、コンサートに加え、バスケットボール、バレーボール、テニスなどを行うことも考えられ、しかもこれら競技を同時に開催することなども考えられる。
【0005】
野球やサッカーを対象とする競技場は一般的にその占有面積が広大であるため、後方の観客席からではプレーの細部まで観戦することが難しく、オペラグラスなどを持ち込む観客もいる。あるいは、オーロラビジョンなどの大型ディスプレイを配備した競技場なども珍しくない。しかしながら大型ディスプレイは、設置はもちろん運用やメンテナンスに相当な費用が掛かるという問題を指摘することができる。
【0006】
そこで、大型ディスプレイを配備することなく競技の映像を観客に提供する競技場がこれまでにも提案されている。例えば特許文献1では、競技フィールドとホールを有するスタジアム建造物であって、競技フィールドとホールを仕切る端壁を大型の映写スクリーンとして利用することができるスタジアム建造物について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-89287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるスタジアム建造物は、大型ディスプレイを配備することなく大型映写スクリーンを利用することから、比較的低予算で競技映像を観客に提供することができる。しかしながら特許文献1の大型映写スクリーンは、同じ位置から移動することがないいわば固定式である。そのため、観客席の位置によってはプレーが行われた場所と大型映写スクリーンが異なる方向となり、この場合は同時に見ることが極めて難しい。例えば、野球場のいわゆるバックスクリーンを背にした観客が競技映像を確認する場合、現実のプレーを見た後に速やかに振り返る必要があり、その観客にとっては著しく観戦し難い状況となる。
【0009】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち移動可能なスクリーンを備えたスクリーン競技場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、固定式のスクリーンに代えて(あるいは、加えて)移動可能なスクリーンを備えることによって、適切な観客にしかも適時に競技映像を提供する、という点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0011】
本願発明のスクリーン競技場は、客席と、競技が行われる競技エリア、そして競技エリア内を移動可能な移動スクリーンを備えたものである。映写機を利用することによって、この移動スクリーンに映像(あるいは画像)を表示することができる。
【0012】
本願発明のスクリーン競技場は、移動スクリーンを水平移動させるスクリーンスライド装置をさらに備えたものとすることもできる。この場合の映写機は、スクリーンスライド装置によって所定位置まで移動した移動スクリーンに、映像(あるいは画像)を表示する。
【0013】
本願発明のスクリーン競技場は、競技エリアの上面に敷設可能な客席用レールと、客席の一部であって客席用レール上を移動可能なスライド客席をさらに備えたものとすることもできる。なお、競技エリアには2種類以上の個別競技用コートが敷設されるとともに、これら個別競技用コートが第1軸(競技エリアに設定される軸)方向に並べられる。また、客席用レールは、第1軸方向となるように敷設され、スライド客席は、客席用レールの一端側に設けられる左側スライド客席と他端側に設けられる右側スライド客席を含んで構成される。そして、選択された1の個別競技用コートまで左側スライド客席と右側スライド客席が客席用レール上を移動することによって、その選択された個別競技用コートの周囲に客席の一部が配置されるとともに、移動スクリーンも選択された個別競技用コートの周囲に配置される。
【0014】
本願発明のスクリーン競技場は、移動スクリーンを吊上げかつ吊降ろすスクリーン昇降装置をさらに備えたものとすることもできる。この場合の映写機は、スクリーン昇降装置によって所定高さまで移動した前記移動スクリーンに、映像(あるいは画像)を表示する。
【0015】
本願発明のスクリーン競技場は、異なる場所に配置される2以上の撮影手段と、これら撮影手段のうちいずれかの撮影手段を選択する制御手段をさらに備えたものとすることもできる。この場合の映写機は、制御手段によって選択された撮影手段に係る映像(あるいは画像)を移動スクリーンに表示し、また移動スクリーンは、制御手段によって選択された撮影手段の位置に応じて移動する。
【0016】
本願発明のスクリーン競技場は、客席の上方に固定された固定スクリーンをさらに備えたものとすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本願発明のスクリーン競技場には、次のような効果がある。
(1)大型ディスプレイに比して安価なスクリーンを使用することから、比較的低予算で競技映像を観客に提供することができる。
(2)移動スクリーンが移動することによって、適切な観客にしかも適時に競技映像を提供することができ、現実のプレーと移動スクリーンを同時に見ることができる。
(3)野球やサッカー用の競技場で、バスケットボールやバレーボール、テニスなど比較的占有面積が小さい競技を行う場合であっても、その競技の周辺に移動スクリーンを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願発明のスクリーン競技場を模式的に示す平面図。
図2】第1軸方向の鉛直面で切断した本願発明のスクリーン競技場を模式的に示す断面図。
図3】固定スクリーンを備えたスクリーン競技場を模式的に示す斜視図。
図4】5種類の個別競技用コートが敷設されたスクリーン競技場を模式的に示す平面図。
図5】左側スライド客席と右側スライド客席が中央の個別競技用コートの周辺まで移動した状態を模式的に示す平面図。
図6】(a)は移動スクリーンとスライド客席が移動する前のスクリーン競技場を模式的に示す断面図、(b)は移動スクリーンとスライド客席がテニス用の個別競技用コートまで移動したスクリーン競技場を模式的に示す断面図。
図7】左側スライド客席のみが右端の個別競技用コートの周辺まで移動した状態を模式的に示す平面図。
図8】制御手段と複数の撮影手段を備えたスクリーン競技場を模式的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明のスクリーン競技場の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本願発明のスクリーン競技場100を模式的に示す平面図である。この図に示すように本願発明のスクリーン競技場100は、中央に競技エリア120が形成されるとともに、競技エリア120の周囲に客席130が設置されるものであって、移動スクリーン110を含んで構成され、さらに後述する固定スクリーンやスクリーン昇降装置、スクリーンスライド装置、スクリーン回転装置、客席用レール、スライド客席、撮影手段、制御手段などを含んで構成することもできる。以下、本願発明のスクリーン競技場100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0021】
(競技エリアと客席)
競技エリア120は、文字どおり競技が行われる空間であり、その表面には競技用のコート(以下、「個別競技用コート121」という。)を敷設することができる。例えば図1では、個別競技用コート121として陸上競技用トラックが敷設されている。そして、競技エリア120を取り囲むように客席130が配置される。なお便宜上ここでは、競技エリア120に設定される水平面上の方向(特に、長手方向)のことを「第1軸方向(図では左右方向)」、この第1軸方向に直交する水平面上の方向のことを「第2軸方向(図では上下方向)」ということとする。
【0022】
(移動スクリーンと固定スクリーン)
移動スクリーン110は、映写機(例えば、プロジェクタなど)によって映写される映像を表示するスクリーンであって、例えば競技のライブ映像を観客に見せるものである。そしてこの移動スクリーン110は、競技エリア120内や客席130の上方を移動する。具体的には、図2に示すように移動スクリーン110が水平方向(図では左右方向)に移動したり、上下に移動したり、あるいは鉛直軸周りに回転したりすることができる。なお、図1の例では3つの移動スクリーン110が配置されているが、これに限らず1つの移動スクリーン110を配置することもできるし、2以上の任意の数で配置することもできる。また映写機は、移動スクリーン110の配置数と同数だけ配置することもできるし、移動スクリーン110の配置数とは異なる数で配置することもできる。映写機と移動スクリーン110の配置数と同数とする場合は、あらかじめ映写機と移動スクリーン110を関連付けておき、映写機は特定の移動スクリーン110のみに映写する仕様とすることもできる。
【0023】
移動スクリーン110を水平方向に移動させるにあたっては、スクリーンスライド装置を利用するとよい。このスクリーンスライド装置は、ウィンチやジャッキ、ローラーチェーンといった牽引装置や、あるいはモーターやエンジンといった自走手段など、従来用いられている種々技術を活用することができる。例えば図2では、天井支持体152によって支持される天井屋根151に天井レール140が設置されており、この天井レール140に沿って移動スクリーン110を移動させる構成としている。このとき、例えばウィンチ(スクリーンスライド装置)がワイヤーロープを牽引することによって、そのワイヤーロープに連結された移動スクリーン110を移動させることができる。なお図2では、第1軸方向に天井レール140を配置しているが、これに加えて(あるいは代えて)第2軸方向に天井レール140を配置することもできるし、天井レール140を第1軸方向や第2軸方向に傾斜する方向に天井レール140を配置することもできる。ただし、いずれの方向であっても略水平(水平を含む)となるように天井レール140を配置することが望ましい。
【0024】
移動スクリーン110を上下方向に移動させるにあたっては、スクリーン昇降装置を利用するとよい。このスクリーン昇降装置は、ウィンチやジャッキ、ローラーチェーンといった牽引装置など、従来用いられている種々技術を活用することができる。また移動スクリーン110を鉛直軸周りに回転させるにあたっては、スクリーン回転装置を利用するとよい。このスクリーン回転装置は、マシンローラーやターンテーブルといった動力付き回転盤など、従来用いられている種々技術を活用することができる。
【0025】
本願発明のスクリーン競技場100は、移動スクリーン110に加えて(あるいは代えて)固定スクリーン160を備えたものとすることもできる。この固定スクリーン160も、移動スクリーン110と同様、映写機によって映写される映像を表示するスクリーンであって、例えば競技映像や宣伝広告などを観客に見せるものである。ただし、移動スクリーン110が移動するのに対して、固定スクリーン160はスクリーン競技場100内に固定される。例えば図3では、客席130と天井屋根151との間であって、競技エリア120を取り囲むように全周にわたって、固定スクリーン160が設置されている。
【0026】
(スライド客席)
本願発明のスクリーン競技場100は、客席130がスライド客席131と固定客席132を含んで構成されたものとすることもできる。この場合、競技エリア120には、第1軸方向に並ぶように2以上の種類の個別競技用コート121を敷設するとよい。例えば図4では、左からハンドボール用コート、バレーボール用コート、人工芝テニス用コート、フットサル用コート、バスケットボール用コートの順で配置されている。さらに競技エリア120には、個別競技用コート121に加え、客席用レール170が敷設される。この客席用レール170は第1軸方向となるように敷設され、例えば図4では個別競技用コート121を挟むように2条の客席用レール170がそれぞれ第1軸方向となるように敷設されている。ただし客席用レール170は、敷設後にも撤去可能な構成とされ、しかも複数の分割体(分割レール)を連結することで1条の客席用レール170が完成する構造にするとよい。
【0027】
スライド客席131は、左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rを含んで構成される。例えば図4では、第1軸方向に離れて向かい合うように左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rが配置され、換言すれば、左側スライド客席131Lが客席用レール170の一端側(図では左側)に配置されるとともに、右側スライド客席131Rが客席用レール170の他端側(図では右側)に配置されている。一方、固定客席132は、第2軸方向に離れて向かい合うように(図では上下に)2個所に配置されている。
【0028】
客席130を構成する固定客席132は、その位置を動くことがなく固定されている。これに対してスライド客席131(つまり、左側スライド客席131Lと右側スライド客席131R)は、客席用レール170上を第1軸方向に移動可能な構造とされる。スライド客席131を移動させるにあたっては、ウィンチやジャッキ、ローラーチェーンといった牽引装置や、あるいはモーターやエンジンといった自走手段など、従来用いられている種々技術を活用することができる。なお便宜上ここでは、図4に示すようにスライド客席131が固定客席132と一連となる配置のことを「定位置」ということとし、さらにスライド客席131が定位置から離れる方向に移動する(つまり、競技エリア120の中央側に移動する)ことを「前進移動」、スライド客席131が定位置に戻る方向に移動することを「後退移動」ということとする。すなわち図4の例では、左側スライド客席131Lが右方向に移動するのが前進移動であって、左方向に移動するのが後退移動であり、同様に、右側スライド客席131Rが左方向に移動するのが前進移動であって、右方向に移動するのが後退移動である。
【0029】
競技エリア120に複数種類の個別競技用コート121を敷設するためには、自ずとその占有面積が大きくなり、一部の客席130から目的の個別競技用コート121が遠方に位置することになる。例えば図4の場合、中央の個別競技用コート121(つまり、人工芝テニス用コート)で競技が行われているときは、左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rからは観戦し難い。そこで図5に示すように、左側スライド客席131Lをテニス用の個別競技用コート121付近まで前進移動させるとともに、右側スライド客席131Rをテニス用の個別競技用コート121付近まで前進移動させる。
【0030】
スライド客席131を特定の個別競技用コート121まで移動させる場合、図6に示すように、スクリーンスライド装置によって移動スクリーン110もその個別競技用コート121付近まで移動させるとよい。図6(a)は、移動スクリーン110とスライド客席131が移動する前の状態を示す断面図であり、(b)は移動スクリーン110とスライド客席131がテニス用の個別競技用コート121まで移動した状態を示す断面図である。これにより、左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rともにテニス用の個別競技用コート121に接近することとなり、しかも移動スクリーン110が近くに配置されることとなることから、その競技(この場合、テニス)を現実と映像の両方で観戦することができるわけである。もちろん競技が終了すれば、左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rは後退移動させて定位置に戻しておくとよい。
【0031】
図5に示すように左側スライド客席131Lと右側スライド客席131Rの両方を移動させるケースに限らず、どちらか一方のみ移動させて観戦することもできる。例えば図7では、最も右側に配置された個別競技用コート121(つまり、バスケットボール用コート)で競技が行われるケースであり、左側スライド客席131Lはバスケットボール用の個別競技用コート121付近まで前進移動させているが、右側スライド客席131Rはバスケットボール用の個別競技用コート121に十分接近していることから定位置のまま移動していない。ただしこのケースでも、スクリーンスライド装置によって移動スクリーン110もテニス用の個別競技用コート121付近まで移動させるとよい。
【0032】
(制御手段と撮影手段)
本願発明のスクリーン競技場100は、図8に示すように制御手段181と撮影手段182を備えたものとすることもできる。この撮影手段182は、ビデオカメラなど動画や静止画を取得することができるものであって、例えば競技のライブ映像を撮影するものである。ただし、スクリーン競技場100のうち異なる場所に、複数(図8では4つ)の撮影手段182が配置され、それぞれ撮影手段182によって異なる映像が撮影される。
【0033】
映写機は、撮影手段182が撮影した映像を移動スクリーン110に映写する。そして制御手段181が、複数の撮影手段182から特定の撮影手段182を選択するともに、その撮影手段182に係る映像を映写機に映写させる。また制御手段181は、選択した撮影手段182の設置位置に応じて、移動スクリーン110を所定の位置まで移動させる。制御手段181は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリ、マウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを具備するものであって所定のプログラムによって演算処理を実行するものであり、パーソナルコンピュータ(PC)やサーバー、iPad(登録商標)といったタブレット型PC、スマートフォンを含む携帯端末などによって構成される。
【0034】
観客は、主に現実のプレーを観戦しており、プレーが確認しづらいときに移動スクリーン110に目を移すことが考えられる。つまり、移動スクリーン110に表示される映像は目視観戦を補助する手段であり、したがって撮影手段182が撮影した映像を必要とする観客はその撮影手段182から遠方で観戦している者といえる。そこで制御手段181が、選択した撮影手段182の設置位置に応じて、移動スクリーン110を所定の位置まで移動させるわけである。具体的には、オペレータが制御手段181を操作することによって撮影手段182を選定すると、その撮影手段182の位置に対応する位置(以下、「目的移動位置」という。)まで移動スクリーン110が移動するように、撮影手段182がスクリーンスライド装置やスクリーン昇降装置、スクリーン回転装置を制御する。なお、この目的移動位置は、撮影手段182の位置に応じてあらかじめ定めておくこともできるし、所定のプログラムがコンピュータに演算処理を実行させることによってその都度算出することもできる。
【0035】
図8のケースでは、4つの撮影手段182が配置されるとともに、1の移動スクリーン110が配置されている。なお、図8に示す移動スクリーン110a~移動スクリーン110dは、いずれも同一の移動スクリーン110であるが、その位置が異なることを説明するため添字a~dを付している。例えば、撮影手段182aで決定的なシーンが撮影されると、オペレータは制御手段181によってその撮影手段182aを選択し、そして制御手段181がスクリーンスライド装置を制御して移動スクリーン110を目的移動位置まで移動させ、図8に示す「移動スクリーン110a」とする。次いで、撮影手段182bがヒーローインタビューを撮影すると、オペレータはその撮影手段182bを選択し、目的移動位置まで移動した移動スクリーン110は「移動スクリーン110b」となる。同様に、オペレータが撮影手段182cを選択すると移動スクリーン110は「移動スクリーン110c」となり、オペレータが撮影手段182dを選択すると移動スクリーン110は「移動スクリーン110d」となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明のスクリーン競技場は、サッカーや野球、陸上競技のほかバスケットボールやバレーボール、バドミントン、フットサル、テニスといった種々のスポーツの競技施設として利用できるうえ、コンサートをはじめとする種々のイベントを行う興行施設として利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
100 本願発明のスクリーン競技場
110 (スクリーン競技場の)移動スクリーン
120 (スクリーン競技場の)競技エリア
121 (競技エリアの)個別競技用コート
130 (スクリーン競技場の)客席
131 (客席の)スライド客席
131L (スライド客席の)左側スライド客席
131R (スライド客席の)右側スライド客席
132 (客席の)固定客席
140 (スクリーン競技場の)天井レール
151 (スクリーン競技場の)天井屋根
152 (スクリーン競技場の)天井支持体
160 (スクリーン競技場の)固定スクリーン
170 (スクリーン競技場の)客席用レール
181 (スクリーン競技場の)制御手段
182 (スクリーン競技場の)撮影手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8