(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163663
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半田フラックスおよび電子部品実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20231102BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B23K35/363 C
H05K3/34 503A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074709
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】境 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲
(72)【発明者】
【氏名】岡村 進吾
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC02
5E319AC04
5E319CC33
5E319CD21
5E319GG15
(57)【要約】
【課題】小型の電子部品を実装機で実装する場合でも電子部品の破損を防止できる半田フラックスを提供する。
【解決手段】開示される半田フラックスは、基板に電子部品を実装するために用いられる半田フラックスである。当該半田フラックスのちょう度は、220~395の範囲にある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を実装するために用いられる半田フラックスであって、
ちょう度が220~395の範囲にある、半田フラックス。
【請求項2】
前記電子部品は、JIS規格で定められた0402サイズ以下の電子部品である、請求項1に記載の半田フラックス。
【請求項3】
電子部品実装基板の製造方法であって、
基板の接続部上に半田フラックスを配置する工程(i)と、
前記半田フラックス上に電子部品を配置する工程(ii)と、
リフロー工程によって前記電子部品を前記接続部に半田付けする工程(iii)とを含み、
前記半田フラックスのちょう度は220~395の範囲にある、電子部品実装基板の製造方法。
【請求項4】
前記電子部品は、JIS規格で定められた0402サイズ以下である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記接続部は、ランドと前記ランド上に形成された半田プリコートとを含み、
前記工程(i)において、前記半田プリコート上に前記半田フラックスを配置し、
前記工程(iii)において、前記電子部品を前記ランドに半田付けする、請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記電子部品は、半田が付与された端子を含む、請求項3または4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田フラックスおよび電子部品実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多数の電子部品が基板に実装された電子部品実装基板が、様々な電子機器に用いられている。従来から、電子部品を基板に実装する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1(国際公開第2014/155535号)は、「電子回路部品を供給する部品供給装置と、電子回路部品を実装すべき実装対象材を保持する対象材保持装置と、電子回路部品を保持する部品保持具およびその部品保持具を昇降させる昇降装置を備え、前記部品保持具により前記部品供給装置から電子回路部品を受け取り、前記対象材保持装置に保持された実装対象材に実装する実装装置とを含む電子回路部品実装システムであって、前記昇降装置により前記部品保持具が下降させられることにより、その部品保持具が電子回路部品に当接させられる際と、その部品保持具に保持された電子回路部品が前記実装対象材に当接させられる際との少なくとも一方において、電子回路部品が破損したことを検知する破損検知装置を含むことを特徴とする電子回路部品実装システム。」を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品の小型化に伴い、電子部品を実装する際の限界荷重が低くなっている。そのため、小型の電子部品を実装する際に電子部品の破損を回避するためには、電子部品を基板に配置する際の移動速度を、通常の部品を配置する際の移動速度よりも低減する必要がある。その結果、小型の電子部品を実装する場合には、生産性の低下が避けられなかった。このような状況において、本開示の目的の1つは、小型の電子部品を実装機で実装する場合でも電子部品の破損を防止できる半田フラックスおよび電子部品実装基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、半田フラックスに関する。当該半田フラックスは、基板に電子部品を実装するために用いられる半田フラックスであって、ちょう度が220~395の範囲にある。
【0007】
本発明の別の側面は、電子部品実装基板の製造方法に関する。当該製造方法は、電子部品実装基板の製造方法であって、基板の接続部上に半田フラックスを配置する工程(i)と、前記半田フラックス上に電子部品を配置する工程(ii)と、リフロー工程によって前記電子部品を前記接続部に半田付けする工程(iii)とを含み、前記半田フラックスのちょう度は220~395の範囲にある。
【0008】
組み合わせが可能である限り、添付の特許請求の範囲に記載の複数の請求項から任意に選択される2つ以上の請求項に記載の事項を組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電子部品を基板に実装する際の電子部品の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
【
図2】実施例における試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0012】
(半田フラックス)
本実施形態に係る半田フラックスは、基板(具体的には基板の接続部)に電子部品を実装するために用いられる半田フラックスである。本実施形態に係る半田フラックスを以下では、「半田フラックス(F)」と証する場合がある。半田フラックス(F)のちょう度は、220~395の範囲にある。
【0013】
電子部品が小さくなると、限界荷重(電子部品が耐えられる荷重)もそれに伴って小さくなる。そのため、電子部品の小型化が進む現在では、電子部品を基板に実装する際に、電子部品に加わる力を弱めることが必要になる。そのための1つの方法として、電子部品を実装する際の実装速度を遅くすることが考えられる。しかし、実装速度を遅くすると生産性が低下し、電子部品実装基板の製造コストが高くなる。
【0014】
検討の結果、本願発明者らは、特殊な半田フラックスを用いることによって、電子部品の破損を抑制できることを新たに見出した。本開示は、この新たな知見に基づく。
【0015】
この明細書において、半田フラックスのちょう度とは、JIS K2220:2013に定める混和ちょう度試験の手順に従って測定される値(混和ちょう度)である。なお、測定は1/2円すいを用いて行い、測定されたちょう度を、上記JIS規格に従って標準円錐を用いた場合のちょう度に換算した。そして、換算されたちょう度を、半田フラックスのちょう度とした。
【0016】
半田フラックス(F)のちょう度は、220以上であり、240以上、285以上、または320以上であってもよい。当該ちょう度は、395以下であり、375以下、320以下、または285以下であってもよい。当該ちょう度は、220~395の範囲、240~395の範囲、285~395の範囲、または320~395の範囲にあってもよい。これらの範囲において、下限が上限以上とならない限り、上限を、375、320、または285としてもよい。ちょう度を395以下とすることによって、実装の際の電子部品の破損を抑制できる。一方、ちょう度が大きいほど、半田フラックス(F)を塗布することが容易になる。ちょう度が220以下の場合、半田フラックス(F)を印刷法で塗布しにくくなるため、塗布の観点では、ちょう度は240以上であることが好ましい。ちょう度を285以上とすることによって、半田フラックス(F)の塗布が特に容易になる。これらの点から、ちょう度は240~395の範囲(例えば285~395の範囲)にあることが好ましい。
【0017】
電子部品は、様々なサイズの電子部品を含んでもよい。例えば、電子部品は、JIS規格(日本工業規格)で定められた0402サイズ以下の電子部品(例えば、0402、0201、03015、01005などの電子部品)を含んでもよい。電子部品は、JIS規格で定められた0201サイズ以下の電子部品を含んでもよい。電子部品が小さくなるほど、限界荷重は小さくなる。なお、0402サイズは、0.4mm×0.2mm(長さ×幅)である。0201サイズは、0.25mm×0.125mm(長さ×幅)である。
【0018】
半田フラックス(F)のちょう度は、構成成分の種類や比率によって調整できる。一般的に、チキソ剤の含有率が高いとちょう度が高くなりやすい。また、一般的に、溶剤の含有率が低いとちょう度が低くなりやすい。なお、従来用いられてきた半田フラックスのちょう度は、通常、415以上である。半田フラックス(F)は、従来の半田フラックスよりもちょう度が低くなるように調製される。そのようなちょう度は、チキソ剤の含有率を高めること、および/または、溶剤の含有率を低下させること、によって実現できる。
【0019】
半田フラックス(F)は、典型的には、主剤樹脂、チキソ剤、活性剤、および溶剤を含む。主剤樹脂としては、ロジン系樹脂が好ましく用いられる。半田フラックス(F)は、これらの成分を混合することによって調製できる。
【0020】
半田フラックス(F)は、以下の条件(1)および/または(2)を満たしてもよい。以下の条件(1)および(2)を満たすことによって、ちょう度を上記範囲に設定しやすくなる。
(1)半田フラックス(F)におけるチキソ剤の含有率は、1~20質量%の範囲(例えば3~15質量%の範囲や3~14質量%の範囲)にある。
(2)半田フラックス(F)における溶剤の含有率は、10~45質量%の範囲(例えば15~40質量%の範囲や18~31質量%の範囲)にある。
【0021】
半田フラックス(F)は、以下の条件(3)および/または(4)を満たしてもよい。例えば上記の条件(1)および(2)を満たし、且つ、以下の条件(3)および/または(4)を満たしてもよい。
(3)半田フラックス(F)における主剤樹脂(例えばロジン系樹脂)の含有率は、50~80質量%の範囲(例えば55~80質量%の範囲や56~76質量%の範囲)にある。
(4)半田フラックス(F)における活性剤の含有率は、1~10質量%の範囲(例えば1~5質量%の範囲)にある。
【0022】
(電子部品実装基板の製造方法)
本実施形態に係る製造方法は、電子部品実装基板の製造方法である。当該製造方法を以下では、「製造方法(M)」と称する場合がある。製造方法(M)では、半田フラックス(F)を用いる。そのため、半田フラックス(F)について説明した事項は、製造方法(M)に適用できる。また、製造方法(M)について説明した事項を半田フラックス(F)に適用してもよい。
【0023】
製造方法(M)は、工程(i)、工程(ii)、および工程(iii)をこの順に含む。それらについて、以下に説明する。
【0024】
工程(i)は、基板の接続部上に半田フラックス(F)を配置する工程である。半田フラックス(F)を配置する方法に特に限定はなく、公知の塗布方法を用いてもよい。例えば、スクリーン印刷法、ディスペンス法、スプレー法などを用いてもよい。スクリーン印刷法は、厚さが一定の半田フラックス(F)の層を一度に形成できる点で好ましい。
【0025】
工程(ii)は、工程(i)で配置された半田フラックス(F)上に電子部品を配置する工程である。工程(ii)では通常、複数の電子部品が半田フラックス(F)上に配置される。その場合、基板は、複数の電子部品に対応する接続部を含む。電子部品に限定はなく、上述したサイズの電子部品であってもよい。例えば、上述したように、電子部品は、JIS規格で定められた0402サイズ以下の電子部品を含んでもよい。すなわち、少なくも1つの電子部品は、0402サイズ以下であってもよい。
【0026】
電子部品を配置する方法に特に限定はなく、公知の実装装置を用いてもよい。通常、限界荷重が低い部品を配置する場合は、限界荷重が比較的大きい部品を配置する場合と比較して、部品を配置するノズルの動作速度を遅くする。しかし、製造方法(M)では、電子部品に与えられる衝撃を半田フラックス(F)の層によって大きく緩和できるため、ノズルの動作速度を大きく低下させなくてもよい。あるいは、通常の部品を配置する場合と同じ速度でノズルを移動させて部品を配置してもよい。
【0027】
工程(iii)は、リフロー工程によって電子部品を接続部に半田付けする工程である。リフロー工程に特に限定はなく、公知のリフロー工程を用いてもよい。具体的には、工程(ii)で電子部品が配置された基板を、半田が溶融する温度以上の温度に昇温することによって半田を溶融させた後、基板を冷却して半田を固化させればよい。溶融および固化する半田は、基板の接続部に含まれている半田、および/または、電子部品の端子に付与されている半田である。これらの半田には、リフロー半田付けに用いられている公知の半田を用いることができる。基板の接続部に含まれている半田の例には、半田プリコートが含まれる。例えば、基板の接続部に含まれている半田は、基板のランド上に形成された半田プリコートであってもよい。
【0028】
製造方法(M)において、接続部は、ランドとランド上に形成された半田プリコートとを含んでもよい。その場合、工程(i)において、半田プリコート上に半田フラックス(F)を配置してもよく、工程(iii)において、電子部品をランドに半田付けしてもよい。
【0029】
上述したように、電子部品は、半田が付与された端子を含んでもよい。電子部品に予め付与された半田を用いて半田付けを行うことによって、微小な電子部品を正確に半田付けしやすくなる場合がある。
【0030】
なお、半田フラックス(F)はちょう度が高いため、半田フラックス(F)上に配置された電子部品の位置がリフロー工程が完了するまでの間にずれることを抑制できる。すなわち、半田フラックス(F)は、電子部品の仮止め剤としても機能する。
【0031】
一般的に、電子部品を配置する工程では、静電気などが原因で、電子部品を運ぶ移動手段(搭載ヘッドなど)から電子部品が離れず、実装不良が生じることがある。半田フラックス(F)を用いることによって、そのような実装不良を低減することが可能である。
【0032】
半田フラックス(F)および電子部品実装基板の例について、以下に説明する。上述したように、典型的な半田フラックス(F)は、主剤樹脂、チキソ剤、活性剤、および溶剤を含む。主剤樹脂の例には、ロジン系樹脂が含まれる。
【0033】
(主剤樹脂)
主剤樹脂としては、例えば、それ自体が還元性を有するロジン系樹脂が好ましく用いられるが、ロジン系樹脂以外の樹脂も用いられる。主剤樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合もしくは組み合わせて用いてもよい。なお、以下に挙げる材料の中では、例えば、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレングリコールなどが望ましいが、特に限定されない。
【0034】
ロジン系樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン等の天然ロジンや、その誘導体(重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル等)が挙げられる。
【0035】
ロジン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、有機脂肪酸エステル、ポリアルキレンオキサイド系樹脂、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アセチレングリコール類を用い得る。具体的には、ラウリン酸ポリグリセロールエステル、ステアリン酸ポリグリセロールエステル、イソステアリン酸ポリグリセロールエステル、セスキステアリン酸ポリグリセロールエステル、ジイソステアリン酸ポリグリセロールエステル、ミリスチン酸ポリグリセロールエステル、パルミチン酸ポリグリセロールエステル、オレイン酸ポリグリセロールエステル及びベヘニン酸ポリグリセロールエステル、カプリル酸ポリグリセロールエステルなどの有機脂肪酸ポリグリセロールエステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレン牛脂エステル、ポリグリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール-エチレンオキサイド付加体等のアセチレングリコール類などが挙げられる。
【0036】
ロジン系樹脂以外の樹脂として、他には、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド、ポリアミン、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂等を用い得る。テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。スチレン樹脂としては、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。アクリル系樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の各種エステル、メタクリル酸の各種エステル、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のエステル、無水マレイン酸のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、塩化ビニルおよび酢酸ビニルの少なくとも1種のモノマーを共重合してなるアクリル樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
(チキソ剤)
チキソ剤(チキソトロピー付与剤)としては、ワックス系チキソ剤、アマイド系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。ワックス系チキソ剤としては、例えばヒマシ硬化油等が挙げられる。アマイド系チキソ剤としては、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、不飽和脂肪酸アマイド、p-トルエンメタンアマイド、芳香族アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイド、m-キシリレンビスステアリン酸アマイド、芳香族ビスアマイド、飽和脂肪酸ポリアマイド、不飽和脂肪酸ポリアマイド、芳香族ポリアマイド、置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチロールアマイド、脂肪酸エステルアマイド等が挙げられる。ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール等が挙げられる。チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(活性剤)
活性剤には、電子部品の半田付けに用いられる半田の表面を覆う酸化被膜を還元する化合物が用いられる。当該半田の例には、上述したように、半田プリコートや電子部品の端子に付与されている半田が含まれる。なお、ロジン系樹脂などの主剤樹脂もある程度の活性作用を有する場合がある、ここに記載する活性剤は、ロジン系樹脂などの主剤樹脂以外の化合物を意味する。
【0039】
活性剤は、酸化被膜を還元し、良好な接合部の形成を補助する。還元作用を有する活性剤としては、例えば、有機酸、アミン、ハロゲン化物等が挙げられる。活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
活性剤として用いられる有機酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、プロピオン酸、2,2-ビスヒドロキシメチルプロピオン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、ジグリコール酸、チオグリコール酸、ジチオグリコール酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等が挙げられる。
【0041】
活性剤として用いられるアミンとしては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン、エポキシ-イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-フェニルテトラゾール等が挙げられる。
【0042】
活性剤として用いられるハロゲン化物としては、アミンハロゲン化水素酸塩、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。アミンハロゲン化水素酸塩を構成するアミンとしては、例えば、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン、メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等が挙げられ、ハロゲン化水素としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素等が挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、trans-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、1-ブロモ-2-ブタノール、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、2,3-ジブロモ-1,4-ブタンジオール、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等が挙げられる。
【0043】
(溶剤)
溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、1,2-ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2’-オキシビス(メチレン)ビス(2-エチル-1,3-プロパンジオール)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、ビス[2,2,2-トリス(ヒドロキシメチル)エチル]エーテル、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エリトリトール、トレイトール、グアヤコールグリセロールエーテル、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール等が挙げられる。
【0045】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(295℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0046】
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0047】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、リモネン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-エチル-2-ブテン、2,3-ジメチル-2-ブテン、2,4,4-トリメチル-1-ペンテン、2,4,4-トリメチル-2-ペンテン等が挙げられる。
【0048】
エステル系溶剤としては、例えば、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等が挙げられる。
【0049】
半田フラックス(F)は、上述した成分以外の他の成分を含んでもよい。他の成分の例には、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤などが含まれる。
【0050】
(基板)
基板の例には、積層基板、樹脂基板、セラミック基板、シリコン基板などの基板、半導体素子、半導体パッケージなどが含まれる。基板は、各種の基板と当該基板上に搭載された半導体パッケージとを含む構造体であってもよい。そのような構造体の例には、チップ・オン・ボード、チップ・オン・フィルム、チップ・オン・グラス、チップ・オン・チップ、チップ・オン・パッケージ、パッケージ・オン・パッケージなどが含まれる。
【0051】
基板に特に限定はなく、積層基板、樹脂基板、セラミック基板、シリコン基板などの基板であってもよい。接続部が形成された基板(接続部を含む基板)の一例は、プリント基板である。基板に実装される電子部品に特に限定はなく、抵抗素子、半導体素子、コンデンサ、コイル、チップ部品、コネクタ、半導体パッケージ、モジュール部品などの表面実装部品が含まれる。
【0052】
基板の接続部は、電子部品が半田付けされる部分である。接続部の例には、配線が含まれ、例えば、プリント基板のプリント配線が含まれる。接続部が半田プリコートを含む場合、半田プリコートの形成方法に特に限定はなく、公知の方法で半田プリコートを形成してもよい。あるいは、半田プリコートが形成された市販の基板を用いてもよい。
【0053】
以下では、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する実施形態は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示に係る発明に必須ではない事項は省略してもよい。なお、以下の図は模式的な図であり、一部の部材のハッチングを省略する場合がある。
【0054】
(実施形態1)
実施形態1では、電子部品実装基板の製造方法(M)の一例について説明する。まず、
図1(a)の断面図に示すように、接続部2が形成された基板1を準備する。実施形態1で説明する一例では、接続部2は、ランド2aと、ランド2a上に形成された半田プリコート2bとを含む。接続部2が形成された基板1を基板10とする。
【0055】
次に、
図1(b)の断面図に示すように、マスクパターン101を基板1上に配置する。マスクパターン101は、半田フラックスを配置する領域に開口101aを有する。
【0056】
次に、
図1(c)の断面図に示すように、スクリーン印刷によって半田フラックス3を接続部2上に配置する。半田フラックス3は、上述した半田フラックス(F)である。実施形態1で説明する一例では、半田フラックス3は、半田プリコート2b上に配置される。
【0057】
次に、
図1(d)の断面図に示すように、半田フラックス3上に複数の電子部品4を配置する。図示する一例の電子部品4は、2つの端子4aと、それらの間に配置された素子部4bとを含む。なお、電子部品の端子の数は、電子部品の種類に応じて変化する。実施形態1の製造方法では上述した半田フラックス(F)を用いているため、電子部品を配置する際に、電子部品が破損することを抑制できる。
【0058】
次に、リフロー工程を行う。リフロー工程によって、
図1(e)に示すように、半田5によって電子部品4が接続部2(ランド2a)に半田付けされる。このようにして、複数の電子部品4が実装された電子部品実装基板1xが得られる。
【実施例0059】
以下、本開示について実施例によってさらに詳細に説明する。この実施例では、ちょう度が異なる複数の半田フラックスを調製して評価した。
【0060】
まず、半田フラックスを構成する成分を準備した。具体的には、ロジン系樹脂、チキソ剤、溶剤、および必要に応じて添加剤を準備した。ロジン系樹脂には、重合ロジンを用いた。チキソ剤には、ヒマシ硬化油を用いた。溶剤には、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルを用いた。
【0061】
上記の成分を、表1に示す含有率となるように混合することによって、半田フラックスA1~A5およびC1~C2を調製した。得られた半田フラックスおよび半田フラックスC3について、上記の方法でちょう度を測定した。また、以下の方法で粘度を測定した。
【0062】
(粘度の測定)
粘度は、アントンパール社製のレオメーター(MCRシリーズ、MCR501)を用いて測定した。測定は以下の条件で行った
測定温度:25℃
コーン:CP25-2(直径:24.977mm、角度:1.993°)
【0063】
調製された半田フラックスを用いて、電子部品を実装する状態を再現した試験を行った。具体的には、まず、
図2に示すように、ガラス板200上に半田フラックス3を塗布した。そして、電子部品4を半田フラックス3上に配置した。次に、押圧部材210を用いて、電子部品4に対してその上方から所定の荷重(表1に示す実装荷重)を約2秒間印加した。そして、電子部品4が破損したかどうかを確認した。それぞれの半田フラックス3に関して10個の電子部品4の試験を行った。この試験は、表1に示すサイズが異なる4種類の電子部品のそれぞれについて行った。
【0064】
なお、実装荷重は、試験を行う電子部品のサイズに応じて変化させた。具体的には、表1のカッコ書きに示す実装荷重を約2秒間印加した。例えば、0201サイズの電子部品の試験では、5Nの荷重を約2秒間印加した。なお、加えた実装荷重は、試験したそれぞれのサイズの電子部品の限界荷重(破損が生じる可能性がある荷重)である。
【0065】
半田フラックスの調製条件と評価結果とを表1に示す。表1において、「良」とは、10個の電子部品を試験したときに破損した電子部品がゼロであったことを示す。「不良」とは、10個の電子部品を試験したときに、1つ以上の電子部品が破損したことを示す。
【0066】
【0067】
半田フラックスC1およびA1~A5は、本開示に係るフラックス(F)である。半田フラックスC2およびC3は、比較例のフラックスである。半田フラックスA1~A5およびC1~C2は、表1に示す成分比で成分を混合することによって調製された。半田フラックスC3は市販品である。半田フラックスC3のちょう度は475以上であり、正確な数値は測定できなかった。
【0068】
表1に示すように、ちょう度を220以上で395以下とすることによって、限界荷重を加えても電子部品の破損はなかった。一方、ちょう度が410以上では、電子部品の破損が生じた。