(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163665
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
A01F 12/32 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
A01F12/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074714
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】渡部 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】二神 伸
(72)【発明者】
【氏名】上加 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】内山 龍介
(72)【発明者】
【氏名】黒木 慎
【テーマコード(参考)】
2B095
【Fターム(参考)】
2B095AA01
2B095AA07
2B095AA12
2B095AA28
2B095BA03
2B095BB01
2B095CA02
(57)【要約】
【課題】脱穀装置は、穀稈を脱穀する扱室の下部に揺動選別装置を設け、上部の扱胴で扱がれて扱網を通過して落下する脱穀処理物から揺動選別装置で穀稈切れや藁屑を排除しながら穀粒を取り出す。揺動選別装置は、扱胴を囲む受網下部に唐箕からの吹き上げ風を受けて揺動する揺動選別棚に設けた選別網にて穀粒を下部に濾過させて回収している。然しながら、揺動選別棚に設けた選別網のみにて穀粒を下部に濾過させて選別して回収する構成であるために、選別効率が低下する課題があった。そこで、選別効率の良い脱穀装置を提供する。
【解決手段】扱室15下方に唐箕22からの送風を受ける風選室24を設け、該風選室24に揺動選別棚25を設けた脱穀装置において、揺動選別棚25に脱穀処理物の移送方向上手側から順番に移送棚26、前ネット27、シーブ28及び後ネット29を設ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(15)下方に唐箕(22)からの送風を受ける風選室(24)を設け、該風選室(24)に揺動選別棚(25)を設けた脱穀装置において、該揺動選別棚(25)に脱穀処理物の移送方向上手側から順番に移送棚(26)、前ネット(27)、シーブ(28)及び後ネット(29)を設けたことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前ネット(27)、シーブ(28)及び後ネット(29)を後端が上がった前傾としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項3】
シーブ(28)を前ネット(27)よりも大きな角度の前傾としたことを特徴とする請求項2に記載の脱穀装置。
【請求項4】
後ネット(29)をシーブ(28)よりも大きな角度の前傾としたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の脱穀装置。
【請求項5】
シーブ(28)の前端を前ネット(27)後端よりも低い位置にしたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項6】
後ネット(29)の前端をシーブ(28)後端よりも低い位置にしたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前ネット(27)と後ネット(29)を交換可能に取り付け、片方が細かい網目で他方が粗い網目としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【請求項8】
後ネット(29)後端の二番棚先(29a)を上下位置調節自在としたことを特徴とする請求項1に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を丸ごと脱穀装置に取り込み穀粒を脱穀する汎用コンバイン等に装備する脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインの脱穀装置は、穀稈を脱穀する扱室の下部に揺動選別装置を設け、上部の扱胴で扱がれて扱網を通過して落下する脱穀処理物から揺動選別装置で穀稈切れや藁屑を排除しながら穀粒を取り出す。
【0003】
この揺動選別装置は、扱胴を囲む受網下部に唐箕からの吹き上げ風を受けて揺動する揺動選別棚に設けた選別網にて穀粒を下部に濾過させて一番コンベアでグレンタンクに回収している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、揺動選別棚に設けた選別網のみにて穀粒を下部に濾過させて選別して一番コンベアで回収する構成であるために、選別効率が低下する課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、選別効率の良い脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、扱室15下方に唐箕22からの送風を受ける風選室24を設け、該風選室24に揺動選別棚25を設けた脱穀装置において、該揺動選別棚25に脱穀処理物の移送方向上手側から順番に移送棚26、前ネット27、シーブ28及び後ネット29を設けた脱穀装置である。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、揺動選別棚25に脱穀処理物の移送方向上手側から順番に移送棚26、前ネット27、シーブ28及び後ネット29を設けたので、移送棚26で脱穀処理物を移送方向下手側に移送し、前ネット27で藁屑等の異物を落下させないようにして穀粒を回収し、ロスになる藁屑等の異物と混ざった穀粒はシーブ28で回収し、移送方向下手側最後を後ネット29にすることにより藁屑等の異物を落下させないようにして穀粒を回収しながら藁屑等の異物を移送方向下手側に排出できる。また、揺動選別棚25の重量も軽減して耐久性が向上する。
【0009】
請求項2記載の発明は、前ネット27、シーブ28及び後ネット29を後端が上がった前傾とした請求項1に記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の作用効果に加えて、前ネット27、シーブ28及び後ネット29を後端が上がった前傾としたので、前ネット27、シーブ28及び後ネット29で脱穀処理物の後方への送りに対して少し抵抗になることで濾過を促してロスを防ぐことができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、シーブ28を前ネット27よりも大きな角度の前傾とした請求項2に記載の脱穀装置である。
【0012】
請求項4記載の発明は、後ネット29をシーブ28よりも大きな角度の前傾とした請求項2または請求項3に記載の脱穀装置である。
【0013】
請求項5記載の発明は、シーブ28の前端を前ネット27後端よりも低い位置にした請求項1に記載の脱穀装置である。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、シーブ28の前端を前ネット27後端よりも低い位置にしたので、前ネット27後端から脱穀処理物がシーブ28の前端に落下する時に唐箕22からの風力で選別が行える。
【0015】
請求項6記載の発明は、後ネット29の前端をシーブ28後端よりも低い位置にした請求項1に記載の脱穀装置である。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、後ネット29の前端をシーブ28後端よりも低い位置にしたので、シーブ28後端から脱穀処理物が後ネット29の前端に落下する時に唐箕22からの風力で選別が行える。
【0017】
請求項7記載の発明は、前ネット27と後ネット29を交換可能に取り付け、片方が細かい網目で他方が粗い網目とした請求項1に記載の脱穀装置である。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、前ネット27と後ネット29を交換可能に取り付け、片方が細かい網目で他方が粗い網目としたので、圃場条件(収穫作物の条件)に応じて前ネット27と後ネット29の網目を変更できて条件適応性が向上する。
【0019】
請求項8記載の発明は、後ネット29後端の二番棚先29aを上下位置調節自在とした請求項1に記載の脱穀装置である。
【0020】
請求項8記載の発明によれば、後ネット29後端の二番棚先29aを上下位置調節自在としたので、圃場条件(収穫作物の条件)に応じて後ネット29後端の二番棚先29aを上下位置調節して条件適応性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態にかかる脱穀装置を備えた汎用コンバインの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を全稈投入型の汎用コンバインに適用した一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は汎用コンバインの全体図で、1はコンバインの機体フレーム、2は機体フレーム1の下方に設けた走行装置、3は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、4は脱穀装置3の前側に設けた刈取装置、5は脱穀装置3の側部に設けたグレンタンク、6はグレンタンク5の前側に設けた操縦部である。
【0024】
刈取装置4は、オーガー(図示省略)を軸装したオーガーフレーム(オーガーテーブル)11に、リール12と、刈刃13を設けて構成し、オーガーフレーム11には搬送エレベーター14の先端を取付け、搬送エレベーター14の基部は脱穀装置3の扱室15に接続する。刈取装置4は、搬送エレベーター14と共に、刈取上下シリンダ(図示省略)により搬送エレベーター14の基部側を回動中心にして上下するように構成している。
【0025】
図2の如く、前記脱穀装置3の扱室15には前板19a、中板19b及び後板19cにより扱胴20を軸装し、扱胴20の主として下方側は扱網21により包囲している。扱室15の下方には唐箕22の唐箕ケーシング23を設ける。
【0026】
図2及び
図3の如く、前記扱室15の下方には前記唐箕22の送風により穀粒と藁屑等の異物とを風選する風選室24を形成し、風選室24内には、唐箕22の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚25を設ける。
【0027】
揺動選別棚25の始端部(前端部)を唐箕ケーシング23の上方に位置させて移送棚26に形成する。移送棚26の構成は任意であるが、移送棚26の上面には、突起や凹凸を設けて揺動選別棚25の移送方向下手側に扱室15からの脱穀処理物を移送するように構成する。
【0028】
移送棚26の上面側には、寄せ板26aを右側が前方に位置し左側が後方に位置するように傾斜状に設け、移送棚26上の脱穀処理物(穀粒と藁屑等の異物)を左右均分化する。なお、寄せ板26a後部は、前ネット27前部の上面までのびている。
【0029】
移送棚26の移送方向下手側には、クリンプ金網、一般的な金網またはパンチングメタル等にて構成される前ネット27を設けている。
【0030】
前ネット27部は唐箕22からの風力が弱いので、脱穀処理物の穀粒を下方に落とすが藁屑等の異物は受け止めて移送方向下手側に移送するようにネットにしている。
【0031】
前ネット27の移送方向下手側には、薄い板状体を揺動方向に所定の間隔を空けて複数並設したシーブ28を設けている。
【0032】
シーブ28部は唐箕22からの風力が強いので、脱穀処理物の穀粒を下方に落とし藁屑等の異物を風力にて吹き飛ばして選別して移送方向下手側に移送する。
【0033】
シーブ28の移送方向下手側には、クリンプ金網、一般的な金網またはパンチングメタル等にて構成される後ネット29を設けている。
【0034】
後ネット29部は唐箕22からの風力が弱いので、脱穀処理物の穀粒を下方に落とすが藁屑等の異物は受け止めて移送方向下手側に移送するようにネットにしている。そして、後ネット29にて移送方向下手側に移送した藁屑等の異物は、機外へ排出される。
【0035】
前ネット27及びシーブ28の下方には、選別網30が設けられており、前ネット27及びシーブ28から選別されて落下した穀粒や細かな藁屑を受けて選別し、藁屑は後ネット29に向けて上方後方に吹き上げ、穀粒は一番コンベア31に落下させ、枝梗付き穀粒は移送方向下手側に移送して二番コンベア32に落下させる。
【0036】
従って、前ネット27で藁屑等の異物を落下させないようにして穀粒を回収し、ロスになる藁屑等の異物と混ざった穀粒はシーブ28で回収し、移送方向下手側最後を後ネット29にすることにより藁屑等の異物を落下させないようにして穀粒を回収しながら藁屑等の異物を移送方向下手側に排出して二番のオーバーフローを防ぐことができる。また、揺動選別棚25の重量も軽減して耐久性が向上する。
【0037】
そして、上記の移送棚26、前ネット27、シーブ28及び後ネット29は、適切な選別作用が行われるように下記の構成としている。
【0038】
移送棚26、前ネット27、シーブ28及び後ネット29は、前後長を同じまたは略同じにしている。
【0039】
移送棚26は水平、前ネット27、シーブ28及び後ネット29は後端が少し上がった前傾とする。前ネット27、シーブ28及び後ネット29で脱穀処理物の後方への送りに対して少し抵抗になることで濾過を促してロスを防げる。なお、移送棚26も後端が少し上がった前傾にしても良い。
【0040】
シーブ28は前ネット27よりも大きな角度の前傾とし、更に、後ネット29はシーブ28よりも大きな角度の前傾とし、後方への移送抵抗を増して穀粒の濾過を促してロスを防ぐことができる。
【0041】
シーブ28の前端は、前ネット27後端よりも低い位置にしている。従って、前ネット27後端から脱穀処理物がシーブ28の前端に落下する時に唐箕22からの強い風力で選別が行える。
【0042】
後ネット29の前端は、シーブ28後端よりも低い位置にしている。従って、シーブ28後端から脱穀処理物が後ネット29の前端に落下する時に唐箕22からの風力で選別が行える。
【0043】
前ネット27、シーブ28及び後ネット29上方には、ピアノ線よりなる篩線を設けている。従って、篩線で脱穀処理物を捌いてから前ネット27、シーブ28及び後ネット29で濾過するので、選別性能が向上する。
【0044】
前ネット27と後ネット29は、交換可能に取り付けられており、片方が細かい網目で他方が粗い網目となっている。従って、脱穀処理物が乾いている場合には、前ネット27を細かい網目とし後ネット29を粗い網目とする。脱穀処理物が湿っている場合には、両者を入れ換えて前ネット27を粗い網目とし後ネット29を細かい網目とする。このように圃場条件(収穫作物の条件)に応じた対応ができて、条件適応性が向上する。
【0045】
また、圃場条件(収穫作物の条件)に応じて、前ネット27とシーブ28を前後入れ換えても良い。
【0046】
後ネット29後端の二番棚先29aは、上下位置を調節自在としている。従って、脱穀処理物が乾いている場合には、二番棚先29aを上方位置とし、脱穀処理物が湿っている場合には、二番棚先29aを下方位置とする。このように圃場条件(収穫作物の条件)に応じた対応ができて、条件適応性が向上する。
【0047】
移送棚26と前ネット27の境目は、選別網30前端よりも前側である。
【0048】
前ネット27とシーブ28の境目は、中板19bの下方近傍である。本実施形態では、前ネット27とシーブ28の境目は、中板19bの下方の少し後方位置としている。
【0049】
また、前ネット27とシーブ28の境目は、一番コンベア31の上方の少し後方位置としている。
【0050】
また、前ネット27とシーブ28の境目は、選別網30前端よりも後側である。
【0051】
シーブ28と後ネット29の境目は、二番コンベア32上方近傍である。
【0052】
後ネット29後端(揺動選別棚25後端)の二番棚先29aは、移送棚26と同じまたは略同じ高さである。
【0053】
なお、後ネット29後端(揺動選別棚25後端)の二番棚先29aは、移送棚26よりも高くしても良い。
【0054】
後ネット29後端(揺動選別棚25後端)の二番棚先29aは、チョッパの駆動軸よりも高い位置である。
【0055】
二番出口は、移送棚26と前ネット27の境目よりも前方位置としている。
【0056】
揺動選別棚25の下方に設けた唐箕22からの選別風が通る風路33を移送棚26の下部ガイド34と選別網30の前ガイド35との間に設け、唐箕22からの選別風が選別網30の下方から吹き上がる中間風路36と下側風路37を設ける。
【0057】
そのため、前ネット27、シーブ28及び後ネット29から濾過する塵埃を除去しながら穀粒の選別精度を向上させることができる。
【0058】
前記風路33の構成は、任意であるが、本例では、移送棚26の底板に開口部38を設け、開口部38は上側風路39の上方に臨ませる。上側風路39は唐箕ケーシング23の送風口40に設けた上側導風体41と唐箕ケーシング23の送風口40の上部の選別網フレームの前ガイド35との間に形成している。42は上側導風体41の下方に設けた下側導風体、36は中間風路、37は下側風路であり、中間風路36と下側風路37が合流して選別風路となる。
【0059】
風路33は、移送棚26の底板の開口部38を上側風路39の上方に臨ませているので、唐箕ケーシング23の上側風路39からの選別風が開口部38から揺動選別棚25の底板上に吹き抜けて、移送棚26底部から前ネット27の始端部に吹き上がるように吹き抜け、前ネット27上の選別処理を促進させる。
【0060】
(実施形態の作用)
走行装置2により走行し、刈取装置4で刈り取った穀稈は扱室15に供給され、扱室15の扱胴20で脱穀される。
【0061】
脱穀された脱穀物(脱穀処理物)は、扱網21より前ネット27及びシーブ28を通して選別網30上に落下し、揺動選別棚25の揺動と唐箕22からの送風により選別され、穀粒は一番コンベア31で回収され、一番コンベア31により回収された穀粒はグレンタンク5に貯留される。
【符号の説明】
【0062】
15 扱室
22 唐箕
24 風選室
25 揺動選別棚
26 移送棚
27 前ネット
28 シーブ
29 後ネット
29a 二番棚先