(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163667
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20231102BHJP
A01B 63/112 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L15/20 K
A01B63/112
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074716
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】河端 真一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】井ノ上 雄大
(72)【発明者】
【氏名】尾畠 法夫
【テーマコード(参考)】
2B304
5H125
【Fターム(参考)】
2B304KA14
2B304LA02
2B304LA04
2B304LB05
2B304LB15
2B304MA14
2B304MB02
2B304QA16
2B304QB19
2B304RA04
2B304RA06
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA00
5H125BE05
5H125CA01
5H125CD02
5H125EE08
5H125EE41
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】モータの回転数が0rpmまたは微小回転の状態においても、適切に走行または作業を開始することを目的とする。
【解決手段】走行装置(10,11)および作業装置の少なくともいずれかを駆動するモータMと、走行装置(10,11)または作業装置を駆動する回転動力を変速操作する変速操作具(38,39)と、モータMのモータ回転数を昇降操作するアクセル操作具37と、アクセル操作具37に対する操作に応じてモータ回転数を制御するモータ制御部54とを備え、モータMが稼働中には所定の報知が行われる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置および作業装置の少なくともいずれかを駆動するモータと、
前記走行装置または前記作業装置を駆動する回転動力を変速操作する変速操作具と、
前記モータのモータ回転数を昇降操作するアクセル操作具と、
前記アクセル操作具に対する操作に応じて前記モータ回転数を制御するモータ制御部とを備え、
前記モータが稼働中には所定の報知が行われる電動作業車。
【請求項2】
前記報知は、前記変速操作具が操作された後に、前記モータ回転数が0回転または所定の第1回転数以下である状態である場合に行われる請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記モータ制御部は、前記第1回転数以下である状態で前記変速操作具が操作された場合に、前記モータ回転数を前記第1回転数より大きな所定の第2回転数以下に設定し、
前記報知は前記モータの回転音により行われる請求項2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記モータ制御部は、前記モータが稼働中には、前記モータ回転数を0回転より大きな所定の回転数であるアイドリング回転数より上げないように制御し、
前記報知は前記モータの回転音により行われる請求項1に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記報知を行う報知部をさらに備える請求項1に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記報知部は警告音を発するスピーカであり、前記報知は前記警告音により行われる請求項5に記載の電動作業車。
【請求項7】
前記報知部は警告灯であり、前記報知は前記警告灯を点灯または点滅させることにより行われる請求項5に記載の電動作業車。
【請求項8】
前記モータから前記走行装置に伝達される前記回転動力を変速する静油圧式無段変速機をさらに備え、
前記変速操作具として、前記静油圧式無段変速機の斜板の角度を操作するHST操作具が含まれる請求項1に記載の電動作業車。
【請求項9】
前記変速操作具として、前記モータから前記作業装置に伝達される前記回転動力を変速操作するPTO操作具が含まれる請求項1に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより走行装置が駆動される電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、電動トラクタ(電動作業車)は、モータにより走行装置を駆動すると共に作業装置を駆動する。電動トラクタ等の電動作業車は各種操作具を備え、各種操作具に対する操作に基づいてモータ等が制御されて、走行および作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータは回転数が0rpmの状態で待機することができ、モータの回転数が0rpmの状態から誤った手順で操作が行われると、機体が急発進したりし、適切に走行または作業を開始することができない場合がある。
【0005】
本発明は、モータの回転数が0rpmまたは微小回転の状態においても、適切に走行または作業を開始することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を発生するために、本発明の一実施形態に係る電動作業車は、走行装置および作業装置の少なくともいずれかを駆動するモータと、前記走行装置または前記作業装置を駆動する回転動力を変速操作する変速操作具と、前記モータのモータ回転数を昇降操作するアクセル操作具と、前記アクセル操作具に対する操作に応じて前記モータ回転数を制御するモータ制御部とを備え、前記モータが稼働中には所定の報知が行われる。
【0007】
機体を発進させる際に、モータが低回転で稼働しているにもかかわらずモータが停止していると誤認し、不適切な手順で変速操作具およびアクセル操作具を操作すると、モータ回転数の上昇に伴い意図せずに機体が急発進するおそれがある。また、作業装置を操作する際に、モータが低回転で稼働しているにもかかわらずモータが停止していると誤認し、不適切な手順で変速操作具およびアクセル操作具を操作すると、モータ回転数の上昇に伴い意図せずに作業装置が急激に作動するおそれがある。
【0008】
上記構成によると、モータが稼働中には所定の報知が行われるため、オペレータ(作業車・運転者)はモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、モータが低回転で稼働しているにもかかわらずモータが停止していると誤認することが抑制され、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができる。その結果、適切に走行または作業を開始することができる。
【0009】
また、前記報知は、前記変速操作具が操作された後に、前記モータ回転数が0回転または所定の第1回転数以下である状態である場合に行われてもよい。
【0010】
変速操作具は、アクセル操作具でモータ回転数を適度に上昇させてから操作することにより、モータから走行装置または作業装置に動力を伝達する動力伝達機構によって回転動力の上昇速度が適度に緩和される。
【0011】
そのため、変速操作具が操作された後に、モータ回転数が0回転またはほとんど回転していない場合に報知を行うことにより、オペレータは、モータMが稼働中であることを認識することができる。その結果、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0012】
また、前記モータ制御部は、前記第1回転数以下である状態で前記変速操作具が操作された場合に、前記モータ回転数を前記第1回転数より大きな所定の第2回転数以下に設定し、前記報知は前記モータの回転音により行われてもよい。
【0013】
このような構成により、モータ回転数が第2回転数に設定されてモータからモータ音が発生する。そして、モータ音により、オペレータはモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0014】
また、前記モータ制御部は、前記モータが稼働中には、前記モータ回転数を0回転より大きな所定の回転数であるアイドリング回転数より上げないように制御し、前記報知は前記モータの回転音により行われてもよい。
【0015】
このような構成により、モータ回転数が走行装置および作業装置がほぼ動作しないアイドリング回転数以下に設定されてモータからモータ音が発生する。そして、モータ音により、オペレータはモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0016】
また、前記報知を行う報知部をさらに備えてもよい。
【0017】
このような構成により、オペレータはモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0018】
また、前記報知部は警告音を発するスピーカであり、前記報知は前記警告音により行われてもよい。
【0019】
このような構成により、オペレータは警告音によりモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0020】
また、前記報知部は警告灯であり、前記報知は前記警告灯を点灯または点滅させることにより行われてもよい。
【0021】
このような構成により、オペレータは警告灯の点灯または点滅によりモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具およびアクセル操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0022】
また、前記モータから前記走行装置に伝達される前記回転動力を変速する静油圧式無段変速機をさらに備え、前記変速操作具として、前記静油圧式無段変速機の斜板の角度を操作するHST操作具が含まれてもよい。
【0023】
このような構成により、静油圧式無段変速機の斜板の角度を操作するHST操作具が適切な手順で操作されない場合に、オペレータはモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に走行を開始することができる。
【0024】
また、前記変速操作具として、前記モータから前記作業装置に伝達される前記回転動力を変速操作するPTO操作具が含まれてもよい。
【0025】
このような構成により、回転動力の変速操作を行うPTO操作具が適切な手順で行われない場合に、オペレータはモータが稼働中であることを認識することができる。そのため、オペレータは、変速操作具を適切な手順で操作するように意識することができ、適切に作業を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】運転部における操作具の構成を例示する図である。
【
図5】モータを制御する機能構成を例示する図である。
【
図6】実施形態1におけるモータ抑制制御の処理フローを例示する図である。
【
図7】アクセルレバーの操作量に対するモータ回転数の変化である回転数遷移を例示する図である。
【
図8】実施形態2における報知を行うフローを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0028】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態に係る電動作業車として、電動トラクタ(以下、単に「トラクタ」と称す)について説明する。
図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0029】
また、トラクタは、機体フレーム2および運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10(「走行装置」に相当)および左右の後車輪11(「走行装置」に相当)に支持されている。
【0030】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0031】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータ(作業者・運転者)は、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0032】
トラクタは、走行用バッテリ4を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。
【0033】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14およびモータM(電動機)を備えている。走行用バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0034】
図2および
図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15およびトランスミッション16を備えている。
図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aおよび油圧モータ15bを有している。
【0035】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。なお、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0036】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10および左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10および左右の後車輪11が駆動する。
【0037】
また、
図2および
図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17およびリヤPTO軸18(以下、これらを合わせて、単に「PTO軸」と称する場合がある)を備えている。モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17およびリヤPTO軸18が回転する。
【0038】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。例えば、
図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0039】
〔走行および作業の操作〕
図1,
図4に示すように、運転部3には、走行または作業を行うための各種の操作具が設けられる。例えば、操作具として、主変速レバー34、副変速レバー35、アクセルレバー37(「アクセル操作具」に相当)、HSTペダル38(「変速操作具」・「HST操作具」に相当)、PTOレバー39(「変速操作具」・「PTO操作具」に相当)が設けられる。なお、これらの操作具はレバーやペダルとして説明されるが、それぞれ任意の形態の操作具であってもよい。
【0040】
主変速レバー34および副変速レバー35は運転座席31の左横側方に設けられ、前進および後進における走行車速の設定操作に用いられる。アクセルレバー37はステアリングホイール32の右横側方に設けられ、モータMの回転数の昇降を操作する際に用いられる。PTOレバー39は運転座席31の左横側方に設けられ、PTO軸の回転動力を変速操作する際に用いられる。
【0041】
HSTペダル38は運転部3の床における運転座席31の右前方に設けられる。HSTペダル38は運転座席31に着座したオペレータによって右足で操作され、前進および後進の開始と走行車速の調整とを行う際に用いられる。この場合の走行車速は、主変速レバー34および副変速レバー35で設定操作された走行車速の範囲内に限定される。HSTペダル38は、車輪(前車輪10・後車輪11)を駆動する回転動力の変速操作を受け付けて、中立位置(ニュートラル位置)から前方に倒されることにより静油圧式無段変速機15の斜板の角度を変化させて機体を前進させる。また、HSTペダル38は、中立位置(ニュートラル位置)から後方に倒されることにより静油圧式無段変速機15の斜板の角度を変化させて機体を後進させる。そして、HSTペダル38は、前方あるいは後方に倒される量により、走行車速を操作することができる。
【0042】
機体を走行させる際には、モータMが稼働している状態で、まず、主変速レバー34および副変速レバー35が操作されて、前進または後進における最高車速が設定される。次に、アクセルレバー37が操作されて、モータMの回転数を走行および作業に適した回転数に調整される。そして、HSTペダル38が操作されて、機体の走行が開始される。このような手順で操作されることにより、モータMの回転動力が車輪(前車輪10・後車輪11)に急激に伝達されることを静油圧式無段変速機15が緩和し、機体が急発進することが抑制される。
【0043】
この際に、PTO軸の動力を調整する場合、アクセルレバー37が操作されてモータMの回転数が調整された後に、PTOレバー39が操作されて、作業に適した回転動力がPTO軸に出力されるように調整される。このような手順で操作されることにより、モータMの回転動力が作業装置に急激に伝達されることを静油圧式無段変速機15が緩和し、作業装置が急激に稼働することが抑制される。
【0044】
ここで、モータMが稼働していることに気付かず、上記のような適切な手順で操作具の操作が行われないと、適切に走行が開始されることができない場合があり、適切に作業が行われことができない場合がある。例えば、HSTペダル38が操作された後にアクセルレバー37が操作されると、モータMの回転動力が車輪(前車輪10・後車輪11)に急激(直接的)に伝達され、機体が意図せずに急発進するおそれがある。また、PTOレバー39が操作された後にアクセルレバー37が操作されると、モータMの回転動力が作業装置に急激(直接的)に伝達され、作業装置が意図せずに急激に稼働するおそれがある。
【0045】
以下、このような不適切な走行および作業を抑制するための実施形態について説明する。
【0046】
〔実施形態1〕
まず、実施形態1として、モータMの出力を制御することにより不適切な走行および作業を抑制する構成について、
図3,
図4を参照しながら、
図5~
図7を用いて説明する。
【0047】
実施形態1に係るトラクタは、不適切な走行および作業を抑制するために、所定のモータ抑制制御を行う。モータ抑制制御は制御部50により制御される。制御部50は、CPUやECU等のプロセッサを搭載し、プロセッサの制御により動作する。
【0048】
制御部50は、主変速レバー34、副変速レバー35、アクセルレバー37、HSTペダル38、PTOレバー39等の操作具と接続され、これらの操作具の操作状態に応じてモータMおよび静油圧式無段変速機15・トランスミッション16を制御する。モータMは、上述のように、車輪(前車輪10・後車輪11)およびPTO軸(ミッドPTO軸17・リヤPTO軸18)を駆動する。また、制御部50には報知部26が接続されてもよく、この場合、制御部50は報知部26に所定の報知を行わせる。
【0049】
制御部50は、操作取得部52と、モータ制御部54と、報知部26が設けられる場合は報知制御部55とを備える。
【0050】
操作取得部52は、主変速レバー34、副変速レバー35、アクセルレバー37、HSTペダル38、PTOレバー39等の操作具に対して行われた操作に関する情報を取得する。具体的には、操作取得部52は、操作具の操作位置等の情報を取得する。
【0051】
モータ制御部54は、操作取得部52が取得した、操作具に対して行われた操作に関する情報に基づいてモータMのモータ回転数やトルク等のモータMの出力を制御する。また、モータ制御部54は、不適切な手順でアクセル操作具、HSTペダル38、およびPTOレバー39が操作された場合、所定のモータ抑制制御としてモータMの出力の上昇を規制する制御を実行(実施)する。報知制御部55は、報知部26に所定の報知を行わせ、例えば、モータ抑制制御が実行されていることを報知する。
【0052】
このような構成において、モータMが稼働している状態で作業走行を開始する際には、まず、主変速レバー34および副変速レバー35が操作される。次に、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されて、モータMのモータ回転数が調整される。適切な手順としては、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作され後に、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が作業走行に適した位置に操作される。
【0053】
以下の説明においては操作具が適切に操作されなかった場合に、モータ抑制制御が行われる工程について説明する。すなわち、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されることなく、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が作業走行に適した位置に操作される(
図6のステップ#1)。
【0054】
次に、モータ制御部54は、モータ回転数が0回転(0回転/分 rpm)であるか否かを判定する(
図6のステップ#2)。つまり、適切な手順によると、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作され後に、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作されるが、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されていない状態で、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかが操作されていないか否かが確認される。モータ回転数が0回転である場合(
図6のステップ#2 Yes)、さらに、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されたか否かが確認される(
図6のステップ#3)。これにより、モータ制御部54は、モータ回転数が0回転である状態から、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作された後に、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作された(不適切な手順で操作された)か否かを確認する。
【0055】
HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作された後に、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作された場合(
図6のステップ#3 Yes)、モータ制御部54は、モータ抑制制御として、モータMのモータ回転数を0回転から上昇させないように、モータ回転数の上昇を規制する(
図6のステップ#4)。
【0056】
図7は、アクセルレバー37の操作量に対するモータ回転数の変化である回転数遷移を例示する図である。アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作された後にHSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作されて、適切に操作具の操作が行われた場合、回転数遷移LR0に示すように、主変速レバー34および副変速レバー35の操作量に応じた上限の範囲で、アクセルレバー37の操作量に応じてモータ回転数が変化する。
【0057】
これに対して、モータ抑制制御が実行されていると、回転数遷移LC1に示すように、アクセルレバー37が操作されても、モータ回転数は0回転で維持されて変化しない。
【0058】
このように、本実施形態におけるモータ抑制制御によると、アクセルレバー37が操作されても、モータ回転数が上昇せず、機体が発進しないと共に作業装置も稼働しない。その結果、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切な手順で操作具を操作することが促される。そして、適切な手順で操作をやり直すことにより、適切に走行または作業を開始することができる。
【0059】
モータ抑制制御が実行されている間に所定の解除条件が満たされると(
図6のステップ#5)、モータ制御部54は、モータ抑制制御を終了する(
図6のステップ#6)。解除条件は、HSTペダル38およびPTOレバー39がOFFにされる(中立位置に戻される)ことである。なお、解除条件は、HSTペダル38およびPTOレバー39がOFFにされると共に、アクセルレバー37を0回転の位置に戻すこととされてもよい。
【0060】
モータ抑制制御を終了させる解除条件が設けられることにより、機体を走行させたり、作業装置を稼働させたりする操作を受け付けることができる状態に戻り、その後、適切な手順で操作を行うことにより、適切に走行または作業を開始することができる。
【0061】
そして、モータ抑制制御が終了された後や、モータ回転数が0回転(0回転/分 rpm)でなかった場合(
図6のステップ#2 No)、およびHSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作された後に、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されなかった場合(
図6のステップ#3 No)、モータ制御部54は、アクセルレバー37、HSTペダル38、およびPTOレバー39等に対する操作に応じてモータMを制御して、作業走行を開始させる(
図6のステップ#7)。
【0062】
〔実施形態1の別実施形態〕
(1)0回転のときに限らず、モータMの回転数が所定の第1回転数以下である状態で、所定の(不適切な)手順で操作具の操作が行われた場合にモータ抑制制御が行われてもよい。さらに、モータMの回転数が所定の第1回転数以下または0回転であるか否かが確認されず、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作された後にアクセルレバー37(アクセル操作具)が操作された際にモータ抑制制御が実行されてもよい。
【0063】
これにより、モータ抑制制御が必要な状況において適切にモータ抑制制御が実行されるため、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0064】
(2)モータ抑制制御はモータ回転数を上昇させない構成に限らず、モータMのトルクを上昇させない構成であってもよい。さらに、モータ抑制制御は、モータ回転数やモータMのトルクに限らず、モータMの出力の上昇を任意の手法で規制する出力規制制御であってもよい。
【0065】
このような構成により、状況に応じて適切に、車輪(前車輪10・後車輪11)や作業装置に伝達されるモータMの回転動力の上昇を規制(抑制)することができる。その結果、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0066】
(3)モータ抑制制御はモータ回転数を上昇させない構成に限らず、アクセルレバー37が操作されても、モータ回転数を0回転より大きな所定のアイドリング回転数より上昇しないように制御されてもよい。つまり、
図7の回転数遷移LC2に示すように、モータ制御部54は、モータ回転数が0回転または微小回転(所定の第1回転数以下)である状態において、HSTペダル38またはPTOレバー39(変速操作具)が操作されても、モータ回転数をアイドリング回転数より大きくは上昇しないように制御する。アイドリング回転数は、機体が発進せず作業装置も作業を行うことができないモータ回転数、あるいは機体が極低速でしか走行せず作業装置もほとんど動作しないモータ回転数である。具体的には、アイドリング回転数は、300回転/分(rpm)以上900回転/分(rpm)であり、例えば、実質的に機体が走行を開始するモータ回転数よりやや低い600回転/分(600rpm)である。
【0067】
これにより、アクセルレバー37が操作されてもモータ回転数がアイドリング回転数よりも上昇することがない。その結果、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。また、モータMがアイドリング回転数となることにより、オペレータはモータMの回転音によりモータMが稼働中であることに気付くことができる。そのため、オペレータはモータMが稼働中であることを認識し、適切な手順で、機体を発進させたり作業装置を操作したりするように意識することができる。その結果、適切な手順で操作が行われて、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0068】
(4)モータ抑制制御はモータ回転数を上昇させない構成に限らず、モータ回転数を、アクセルレバー37が操作されていない際には、機体が急発進しないモータ回転数や作業装置が急激に稼働しないモータ回転数の範囲である所定の回転数に制御する構成としてもよい。例えば、モータ抑制制御として、アクセルレバー37が操作されていない際に、モータ回転数が第1回転数より大きな所定の第2回転数に設定され、アクセルレバー37が操作されると操作量に応じて第2回転数からモータ回転数が上昇されてもよい。第2回転数は機体が発進せず作業装置も作業を行うことができないモータ回転数、あるいは機体が極低速でしか走行せず作業装置もほとんど動作しないモータ回転数である。具体的には、第2回転数は、300回転/分(rpm)以上900回転/分(rpm)であり、例えば、実質的に機体が走行を開始するモータ回転数よりやや低い600回転/分(600rpm)である。つまり、
図7の回転数遷移LC3に示すように、モータ制御部54は、モータ回転数が0回転または微小回転(所定の第1回転数以下)である状態において、HSTペダル38またはPTOレバー39(変速操作具)が操作されると、アクセルレバー37の操作位置にかかわらずモータ回転数を第2回転数に上昇させる。その後、アクセルレバー37が操作されると、第2回転数からアクセルレバー37の操作に応じてモータ回転数を変更する。
【0069】
これにより、HSTペダル38またはPTOレバー39(変速操作具)が操作された状態においてモータ回転数があらかじめ上昇されているため、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されてもモータ回転数が急激に上昇することが抑制される。その結果、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。また、モータMが第2回転数を維持することにより、オペレータはモータMの回転音によりモータMが稼働中であることに気付くことができる。そのため、オペレータはモータMが稼働中であることを認識し、適切な手順で、機体を発進させたり作業装置を操作したりするように意識することができる。その結果、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0070】
(5)モータ抑制制御として、所定の加速度以下でモータ回転数を上昇させるように制御が行われてもよい。つまり、HSTペダル38またはPTOレバー39(変速操作具)が操作された後にアクセルレバー37(アクセル操作具)が操作された場合、モータ抑制制御として、モータ回転数が所定の加速度以下で緩やかに上昇するように制御される。その結果、モータ回転数が急激に上昇することが抑制されて、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0071】
(6)報知部26が設けられない構成とされてもよい。これにより、より簡易な構成でトラクタを構成することができる。
【0072】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2として、モータMが稼働している場合にその旨を報知することにより不適切な走行および作業を抑制する構成について、
図3,
図4を参照しながら、
図5,
図7,
図8を用いて説明する。
【0073】
実施形態2に係るトラクタは、不適切な走行および作業を抑制するために、モータMの稼働中に、モータMが稼働している旨の報知を行う。オペレータ(作業者・運転者)は、この報知により、モータMが稼働していることを認識し、適切な手順で機体を走行させたり作業装置を稼働させたりするように意識することができる。その結果、適切な手順で操作が行われて、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0074】
実施形態2に係るトラクタは、モータMが稼働している状態で作業走行を開始する際には、まず、主変速レバー34および副変速レバー35が操作される。次に、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されて、モータMのモータ回転数が調整される。適切な手順としては、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作され後に、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかが作業走行に適した位置に操作される。
【0075】
以下の説明においては、不適切な手順で操作が行われた場合にトラクタが行う制御について説明する。すなわち、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されることなく、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が作業走行に適した位置に操作される(
図8のステップ#1)。
【0076】
次に、モータ制御部54は、モータ回転数が0回転(0回転/分 rpm)であるか否かを判定する(
図8のステップ#2)。つまり、適切な手順によると、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作され後に、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)が操作されるが、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されていない状態で、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかが操作されていないか否かが確認される。
【0077】
モータ回転数が0回転である場合(
図8のステップ#2 Yes)、報知制御部55は、モータMが稼働中である旨の報知を報知部26に行わせる(
図8のステップ#3)。
【0078】
その後、モータMが稼働していることを認識したオペレータは、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)をOFF状態(中立状態)にし、アクセルレバー37(アクセル操作具)を操作した後にHSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかを操作する(
図8のステップ#4)。これにより、その後、操作具に対する操作に応じて作業走行が開始される(
図8のステップ#5)。なお、適切な作業走行は、モータ回転数が0回転(0回転/分 rpm)でない(モータ回転数が上昇している)場合(
図8のステップ#2 No)にも行われる。
【0079】
このような構成により、オペレータ(作業者・運転者)は、モータMが稼働していることを認識し、適切な手順で機体を走行させたり作業装置を稼働させたりするように意識することができる。その結果、適切な手順で操作が行われて、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0080】
〔実施形態2の別実施形態〕
(1)HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかが操作された後に、0回転のときに限らず、モータMの回転数が所定の第1回転数以下である場合に、モータMが稼働中である旨の報知が行われてもよい。
【0081】
これにより、モータMが稼働中であることをオペレータが認識すべき状況において適切に報知が行われるため、オペレータは精度良くモータMが稼働中であることを認識することができる。その結果、オペレータが適切な手順で操作を行うことにより、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0082】
(2)HSTペダル38およびPTOレバー39の少なくともいずれかが操作された際にモータ回転数が0回転(第1回転数以下)である場合に報知が行われる構成に限らず、モータMの起動後、モータ回転数が0回転または第1回転数以下である間には、報知制御部55は、モータMが稼働中である旨の報知を報知部26に行わせてもよい。この際、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されると、報知制御部55は、報知を終了させてもよい。
【0083】
これにより、より精度良くに、アクセルレバー37(アクセル操作具)が操作されていない状態で、HSTペダル38およびPTOレバー39(変速操作具)の少なくともいずれかが操作されることが抑制される。その結果、オペレータが適切な手順で操作を行うことにより、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0084】
(3)上記各実施形態と共に、あるいは上記各実施とは別に、トラクタは、モータMが稼働中である際には、モータ回転数を、少なくとも0回転より大きな所定の回転数であるアイドリング回転数以上に維持してもよい。アイドリング回転数で稼働するモータMのモータ音により、オペレータはモータMが稼働中であることを認識することができる。その結果、オペレータが適切な手順で操作を行うことにより、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0085】
(4)実施形態1におけるモータ抑制制御が実行される際に、報知制御部55は、報知部26に、モータ抑制制御が行われる旨、および、モータMが稼働している旨の少なくともいずれかを報知させてもよい。これにより、オペレータはモータMが稼働中であることをより精度良く認識することができる。その結果、オペレータが適切な手順で操作を行うことにより、機体の急発進や作業装置が急激に稼働することが抑制され、適切に走行または作業を開始することができる。
【0086】
〔別実施形態〕
(1)上記各実施形態において、変速操作具は、HSTペダル38およびPTOレバー39に限らず、回転動力を変速操作するための任意の操作具、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。また、アクセル操作具は、アクセルレバー37に限らず、モータMのモータ回転数を昇降操作する任意の操作具、またはこれらの任意の組み合わせであってもよい。そして、変速操作具のうちの少なくとも1つとアクセル操作具の少なくとも1つが不適切な手順で操作された際に、モータ抑制制御または所定の報知の少なくともいずれかが実行される。
【0087】
これにより、トラクタの構成に応じて、モータ抑制制御または所定の報知の少なくともいずれかを行うことができ、適切に走行または作業を開始することができる。
【0088】
(2)上記各実施形態において、報知部26は、オペレータに報知を行う構成であれば任意のものが用いられてもよい。例えば、報知部26は、音声または警告音を発報することのできるスピーカやボイスアラーム発生装置、点灯・点滅パターンにより報知を行うことができるLEDやランプ・警告灯、文字や画像を表示することのできるモニターや情報端末等、またはこれらの組み合わせとすることができる。これにより、状況に応じて、オペレータが確認しやすい報知を行うことができる。
【0089】
(3)上記各実施において、走行装置は車輪に限らずクローラであってもよい。
【0090】
(4)上記各実施形態において、制御部50は上記のような機能ブロックから構成されるものに限定されず、任意の機能ブロックから構成されてもよい。例えば、制御部50の各機能ブロックはさらに細分化されても良く、逆に、各機能ブロックの一部または全部がまとめられてもよい。また、制御部50の機能は、上記機能ブロックに限らず、任意の機能ブロックが実行する方法により実現されてもよい。また、制御部50の機能の一部または全部は、ソフトウエアで構成されてもよい。ソフトウエアに係るプログラムは、任意の記憶装置に記憶され、制御部50が備えるCPU等のプロセッサ、あるいは別に設けられたプロセッサにより実行される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、トラクタをはじめとする収穫機や田植機等の電動式の農作業車、さらには電動で走行しながら各種の作業を行う各種の電動作業車に適用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 前車輪(走行装置)
11 後車輪(走行装置)
15 静油圧式無段変速機
26 報知部
37 アクセルレバー(アクセル操作具)
38 HSTペダル(HST操作具・変速操作具)
39 PTOレバー(PTO操作具・変速操作具)
54 モータ制御部
M モータ