(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163674
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】インレットボックスユニット
(51)【国際特許分類】
B60K 15/05 20060101AFI20231102BHJP
E05B 83/34 20140101ALI20231102BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074731
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亨
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH02
2E250JJ09
2E250LL13
3D038CA01
3D038CA19
3D038CA32
3D038CC16
3D038CD03
3D038CD04
(57)【要約】
【課題】インレットボックスユニットにおいてリッドを閉じる際の衝撃音を抑制する。
【解決手段】インレットボックスユニット(1)は、開口(11)を有するインレットボックス(10)と、インレットボックスに回転可能に取り付けられたアーム(50)と、アームの回転動作により全開位置と全閉位置とに変位するリッド(60)とを備える。インレットボックスの開口の周縁部分は、アームの外側に対応するアーム対応部(12a)を有する。アーム対応部には、摺動部(80)が設けられる。アームには、リッドの全閉位置寄りの位置で摺動部と摺動する閉用突起(84B)が設けられる。摺動部は、閉用突起の摺動によりかかる圧力に応じて弾性変形する弾性体(23)からなる。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(S)にアクセス可能な開口(11)を有するインレットボックス(10)と、
前記インレットボックス(10)に対して回転可能に取り付けられたアーム(50)と、
前記アーム(50)の回転動作により、前記インレットボックス(10)の開口(11)を開放する全開位置と当該開口(11)を閉塞する全閉位置とに変位するリッド(60)と、を備えるインレットボックスユニットであって、
前記インレットボックス(10)の開口(11)の周縁部分は、当該開口(11)から出没する前記アーム(50)の外側に対応するアーム対応部(12a)を有し、
前記アーム(50)および前記アーム対応部(12a)のうち、一方には、摺動部(80)が設けられ、他方には、前記リッド(60)の全閉位置寄りの位置で前記摺動部(80)と摺動する閉用突起(84B)が設けられ、
前記摺動部(80)および前記閉用突起(84B)のうち少なくとも一方は、他方と摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する弾性体(23)からなる
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記リッド(60)が全閉位置にあるときの前記弾性体(23)の変形量は、前記リッド(60)が開閉途中にあるときの前記閉用突起(84B)と前記摺動部(80)との摺動に伴う前記弾性体(23)の変形量よりも小さいか、またはゼロである
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記摺動部(80)には、前記閉用突起(84B)が嵌め入れられる閉用スリット(82B)が形成され、
前記閉用突起(84B)は、前記閉用スリット(82B)に嵌め入れられると、当該閉用スリット(82B)の内側面と摺動する
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項4】
請求項3に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記閉用突起(84B)は、前記閉用スリット(82B)の両側面の間に対応する幅が相対的に狭い幅狭部(86)と、前記閉用スリット(82B)の両側面の間に対応する幅が相対的に広い幅広部(88)とを有し、
前記幅広部(88)は、前記リッド(60)が開閉途中にあるときに前記閉用スリット(82B)内に位置し、前記リッド(60)が全閉位置にあるときに前記閉用スリット(82B)外に位置する
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項5】
請求項1に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記アーム(50)または前記アーム対応部(12a)には、前記リッド(60)の全開位置寄りの位置で前記摺動部(80)に摺動する開用突起(84A)が設けられ、
前記摺動部(80)および前記開用突起(84A)のうち少なくとも一方は、他方が摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する弾性体(23)からなる
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記摺動部(80)には、前記開用突起(84A)が嵌め入れられる開用スリット(82A)と、前記閉用突起(84B)が嵌め入れられる閉用スリット(82B)とが別々に形成され、
前記開用突起(84A)は、前記開用スリット(82A)に嵌め入れられると、当該開用スリット(82A)の内側面と摺動し、
前記閉用突起(84B)は、前記閉用スリット(82B)に嵌め入れられると、当該閉用スリット(82B)の内側面と摺動する
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項7】
請求項1に記載のインレットボックスユニットにおいて、
前記リッド(60)を半開き状態から全閉位置に向けて付勢することで、前記リッド(60)の閉じ動作を補助する補助機構(70)を備える
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【請求項8】
内部空間(S)にアクセス可能な開口(11)を有するインレットボックス(10)と、
前記インレットボックス(10)に対して回転可能に取り付けられたアーム(50)と、
前記アーム(50)の回転動作により、前記インレットボックス(10)の開口(11)を開放する全開位置と当該開口(11)を閉塞する全閉位置とに変位するリッド(60)と、を備えるインレットボックスユニットであって、
前記インレットボックス(10)および前記アーム(50)は、前記リッド(60)が全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動する過程において、前記リッド(60)の全閉位置寄りの位置で互いに摺動することにより、前記リッド(60)の全閉位置への移動に抵抗を生じる
ことを特徴とするインレットボックスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インレットボックスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の給油口などを収容するインレットボックスユニットが知られている。インレットボックスユニットは、インレットボックスと、リッドとを備える。インレットボックスは、車両ボディに組み付けられて車外に臨む開口を有する。リッドは、インレットボックスの開口を開閉する。インレットボックスユニットでは、燃料を補給する際にリッドを開くことで、インレットボックス内の給油口にアクセス可能となる。
【0003】
インレットボックスユニットにおいて、リッドは、インレットボックスにアームを介して取り付けられる。アームは、インレットボックスの外周側に張り出したアーム収容部の内部に設けられた支軸体に回転可能に取り付けられる。リッドは、アームの回転動作によりインレッドボックスの開口を開閉する。アームは、リッドの開閉に伴い、インレットボックスの開口から出没する。
【0004】
このようなインレットボックスユニットは、例えば特許文献1に開示される。特許文献1に開示のインレットボックスユニットでは、干渉部が、インレットボックス(固定ユニット)の開口の周縁部分に設けられる。アームには、半球状突起が設けられる。半球状突起は、リッドの閉鎖状態から全開状態に移行する過程で、一時的に干渉部と干渉し、全開状態において干渉部と干渉しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、インレットボックスユニットでは、リッドが勢いよく閉じられると、インレットボックスの開口の周縁部分や、リッドを開けるときにリッドを持ち上げるプッシュリフターに衝突し、衝撃音が鳴る。このようにリッドの閉じ動作に伴い衝撃音が鳴ると、ユーザに対して、インレットボックスユニットの造りが貧相であるかのような印象を与えてしまう。
【0007】
特許文献1に開示のインレットボックスユニットは、リッドの全開状態を容易に維持すると共に所望の開閉フィーリングを得られる、といったリッドの全開位置側での課題に対処するものである。そうしたインレットボックスユニットが持つ構造では、リッドを閉じる際の衝撃音を抑制できない。特許文献1には、リッドを閉じる際の衝撃音について何ら言及されていない。
【0008】
本発明の目的は、インレットボックスユニットにおいてリッドを閉じる際の衝撃音を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明では、リッドが閉じ動作を行っているときに全閉位置寄りの位置でリッドの移動に抵抗を生じるように構造を工夫した。
【0010】
具体的には、第1の発明は、インレットボックスユニットを対象とする。第1の発明のインレットボックスユニットは、内部空間にアクセス可能な開口を有するインレットボックスと、前記インレットボックスに対して回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの回転動作により、前記インレットボックスの開口を開放する全開位置と当該開口を閉塞する全閉位置とに変位するリッドとを備える。前記インレットボックスの開口の周縁部分は、当該開口から出没する前記アームの外側に対応するアーム対応部を有する。前記アームおよび前記アーム対応部のうち一方には、摺動部が設けられ、他方には、前記リッドの全閉位置寄りの位置で前記摺動部と摺動する閉用突起が設けられる。前記摺動部および前記閉用突起のうち少なくとも一方は、他方と摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する弾性体からなる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記リッドが全閉位置にあるときの前記弾性体の変形量が、前記リッドが開閉途中にあるときの前記閉用突起と前記摺動部との摺動に伴う前記弾性体の変形量よりも小さいか、またはゼロである、インレットボックスユニットである。
【0012】
第3の発明は、第1の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記摺動部に、前記閉用突起が嵌め入れられる閉用スリットが形成される、インレットボックスユニットである。第3の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記閉用突起は、前記閉用スリットに嵌め入れられると、当該閉用スリットの内側面と摺動する。
【0013】
第4の発明は、第3の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記閉用突起が、前記閉用スリットの両側面の間に対応する幅が相対的に狭い幅狭部と、前記閉用スリットの両側面の間に対応する幅が相対的に広い幅広部とを有する、インレットボックスユニットである。第4の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記幅広部は、前記リッドが開閉途中にあるときに前記閉用スリット内に位置し、前記リッドが全閉位置にあるときに前記閉用スリット外に位置する。
【0014】
第5の発明は、第1の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記アームまたは前記アーム対応部に、前記リッドの全開位置寄りの位置で前記摺動部に摺動する開用突起が設けられる。第5の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記摺動部および前記開用突起のうち少なくとも一方は、他方が摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する弾性体からなる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記摺動部に、前記開用突起が嵌め入れられる開用スリットと、前記閉用突起が嵌め入れられる閉用スリットとが別々に形成される、インレットボックスユニットである。第6の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記開用突起は、前記開用スリットに嵌め入れられると、当該開用スリットの内側面と摺動する。また、前記閉用突起は、前記閉用スリットに嵌め入れられると、当該閉用スリットの内側面と摺動する。
【0016】
第7の発明は、第1の発明のインレットボックスユニットにおいて、前記リッドを半開き状態から全閉位置に向けて付勢することで、前記リッドの閉じ動作を補助する補助機構を備える、インレットボックスユニットである。
【0017】
第8の発明は、インレットボックスユニットを対象とする。第8の発明のインレットボックスユニットは、内部空間にアクセス可能な開口を有するインレットボックスと、前記インレットボックスに対して回転可能に取り付けられたアームと、前記アームの回転動作により、前記インレットボックスの開口を開放する全開位置と当該開口を閉塞する全閉位置とに変位するリッドとを備える。そして、前記インレットボックスおよび前記アームは、前記リッドが全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動する過程において、前記リッドの全閉位置寄りの位置で互いに摺動することにより、前記リッドの全閉位置への移動に抵抗を生じる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明では、インレットボックスの開口の周縁部分のうちアームの外側に対応するアーム対応部とアームとのうち、一方に摺動部が設けられ、他方に閉用突起が設けられる。閉用突起は、リッドの全閉位置寄りの位置で摺動部と摺動する。そして、摺動部および閉用突起の一方または両方が弾性体からなる。よって、リッドを開いた状態から全閉位置に向けて回転させると、リッドが全閉位置寄りの位置にきたときに、閉用突起が摺動部と摺動する。このとき、弾性体は、閉用突起が摺動部に摺動したときにかかる圧力に応じて弾性変形する。そのことで、閉用突起と摺動部との間に適度な摺動抵抗を付与できる。この摺動抵抗は、リッドの全閉位置への移動における抵抗となる。そのため、リッドの閉じ動作が減速する。これにより、リッドを閉じる際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【0019】
第2の発明では、リッドが全閉位置にあるときの弾性体の変形量が相対的に小さいか、またはゼロである。リッドが全閉位置にあるときの弾性体の変形量が比較的大きい場合、弾性体の温度が高くなったときに、当該弾性体において比較的大きな塑性変形を生じるおそれがある。弾性体が比較的大きく塑性変形すると、閉用突起と摺動部との接触具合が損なわれ、閉用突起と摺動部との間に適度な摺動抵抗を付与できなくなる。これに対して、本発明によれば、弾性体に生じる塑性変形を小さくするか、または弾性体に塑性変形が生じるのを防止できる。このことは、リッドを閉じる際の衝撃音の抑制効果を持続させるのに有利である。
【0020】
第3の発明では、閉用突起が、摺動部に設けられた閉用スリットに嵌め入れられ、閉用スリットの内側面と摺動する。閉用突起が閉用スリットの内側面と摺動すると、閉用突起が突出端面のみで摺動部と摺動する場合に比べて、閉用突起と摺動部との摺動にかかる面積を大きくできる。それにより、閉用突起と摺動部との摺動において弾性体にかかる圧力を低減しても、閉用突起と摺動部との間に適度な摺動抵抗を得られる。このことは、閉用突起および摺動部の摺動に伴う摩耗などの損傷を抑制するのに有利である。
【0021】
第4の発明では、閉用突起が幅狭部および幅広部を有する。そして、幅広部は、リッドが開閉途中にあるときに閉用スリット内に位置する。そのことで、閉用突起と摺動部との間の摺動抵抗は、リッドの開閉途中で最大となる。また、幅広部は、リッドが全閉位置にあるときに閉用スリット外に位置する。これにより、リッドが全閉位置にあるときの弾性体の変形量が相対的に小さくなるか、またはゼロになる。その結果、弾性体に生じる塑性変形を小さくするか、または弾性体に塑性変形が生じるのを防止できる。このことは、リッドを閉じる際の衝撃音の抑制効果を持続させるのに有利である。
【0022】
第5の発明では、インレットボックスの開口の周縁部分におけるアーム対応部とアームとのうち、一方に摺動部が設けられ、他方に開用突起が設けられる。開用突起は、リッドの全開位置寄りの位置で摺動部と摺動する。そして、摺動部および開用突起の一方または両方が弾性体からなる。よって、リッドを全閉位置または半開き状態から全開位置に向けて回転させると、リッドが全開位置寄りの位置にきたときに、開用突起が摺動部と摺動する。このとき、弾性体は、開用突起が摺動部に摺動したときにかかる圧力に応じて弾性変形する。そのことで、開用突起と摺動部との間に適度な摺動抵抗を付与できる。この摺動抵抗は、リッドの全開位置への移動における抵抗となる。そのため、リッドの開き動作が減速する。これにより、リッドを開く際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【0023】
第6の発明では、開用突起が、摺動部に設けられた開用スリットに嵌め入れられ、開用スリットの内側面と摺動する。また、閉用突起が、摺動部に設けられた閉用スリットに嵌め入れられ、閉用スリットの内側面と摺動する。そして、開用スリットと閉用スリットとは、別々に形成される。これによれば、開用突起および閉用突起が共通のスリットに嵌め入れられる態様を採る場合に比べて、開用突起および閉用突起と摺動部との摺動に伴う摩耗などの損傷を抑制できる。
【0024】
第7の発明では、リッドの閉じ動作を補助する補助機構を備える。補助機構は、リッドを半開き状態から全閉位置に向けて付勢する。補助機構により付勢されたリッドは、閉用突起と摺動部との摺動によるリッドの閉じ動作における抵抗増大がないと、勢いよく閉じられ得る。リッドが勢いよく閉じられると、リッドを閉じる際の衝撃によって衝撃音が生じる。そうした補助機構を備えるインレットボックスユニットにおいて、本発明は、特に有効である。
【0025】
第8の発明では、インレットボックスおよびアームが、リッドを全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動させる過程において、リッドの全閉位置寄りの位置で互いに摺動する。そのことにより、リッドの全閉位置への移動に抵抗を生じる。これにより、リッドの閉じ動作が減速する。したがって、リッドを閉じる際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、インレットボックスユニットが設けられた車両の斜視図である。
【
図2】
図2は、インレットボックスユニットを表側から例示する斜視図である。
図2では、リッドが全閉位置にある状態を例示する。
【
図3】
図3は、インレットボックスユニットを裏側から例示する斜視図である。
図3では、リッドが全閉位置にある状態を例示する。
【
図4】
図4は、インレットボックスユニットの概略構成を例示する平面図である。
図4では、リッドを構成するアウタ部材の図示を二点鎖線で表した外縁形状のみとして省略する。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線におけるインレットボックスユニットの断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線におけるインレットボックスユニットの断面図である。
【
図7】
図7は、プッシュリフターのロック状態を例示する斜視図である。
【
図8】
図8は、プッシュリフターの解除状態を例示する斜視図である。
【
図9】
図9は、インレットボックスユニットのアームおよびその連結部品を例示する斜視図である。
【
図10】
図10は、インレットボックスユニットの突起物を例示する上面図である。
【
図11】
図11は、インレットボックスユニットのリッドの開閉動作を示す断面図である。
【
図12】
図12は、インレットボックスユニットのリッドが開き動作で全開位置手前にきたときの状態を例示する断面図である。
図12は、
図6に相当する位置での断面図である。
【
図13】
図13は、インレットボックスユニットのリッドが全開位置にあるときの状態を例示する断面図である。
図13では、
図6に相当する位置での断面を例示する。
【
図14】
図14は、インレットボックスユニットのリッドが閉じ動作で全閉位置手前にきたときの状態を例示する断面図である。
図14では、
図5に相当する位置での断面を例示する。
【
図15】
図15は、インレットボックスユニットのリッドが全閉位置手前にきたときの要部を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0028】
《実施形態》
この実施形態のインレットボックスユニット1は、エネルギー源の供給口を収容する部品である。供給口は、自動車を走行させるためのエネルギー源を供給するのに用いられる。供給口は、例えば給油口または給電口である。
図1に示すように、インレットボックスユニット1は、車両100のボディパネル(
図1に示す例では左側のサイドパネル)102におけるリヤフェンダー104の上方部分に設けられた取付口106に取り付けて使用される。
【0029】
-インレットボックスユニットの構成-
図2~
図6に示すように、インレットボックスユニット1は、インレットボックス10と、アーム50と、リッド60と、開閉補助機構70とを備える。インレットボックスユニット1は、それらの構成部品を予め組み立てて構成される。このため、インレットボックスユニット1の車体への組み付け作業は、比較的容易である。インレットボックスユニット1は、プッシュリフター40と組み合わせて使用される。
【0030】
〈インレットボックス〉
インレットボックス10は、供給口を収容するケース体である。インレットボックス10は、樹脂成形品であって、射出成形などで成形される。インレットボックス10は、硬質樹脂材からなる。硬質樹脂材とは、後述するシール部22を構成する材料よりも硬く、車体に取り付けた状態で容易に変形しない剛性を持った樹脂材である。インレットボックス10は、内部空間にアクセス可能な開口(以下、ボックス開口とも称する)11を有する。
【0031】
インレットボックス10は、ボックス開口11を車外側に向ける姿勢で車体に取り付けられる。インレットボックス10は、ボックス本体12と、アーム収容部14と、ロック対応部16とを有する。ボックス本体12は、概略円形のカップ状に形成される。ボックス本体12の底部には、設置孔18が形成される。設置孔18には、供給口を含む供給部品(不図示)が挿通される。給電部品は、給油パイプや充電コネクタである。
【0032】
ボックス本体12は、ボックス開口11を有する。ボックス開口11は、メイン開口11aと、拡大開口11bとを含む。メイン開口11aは、ボックス開口11のうち設置孔18に対応する開口部分である。例えば、メイン開口11aは、概ね矩形状または長円状に形成される。拡大開口11bは、メイン開口11aからアーム収容部14とは反対側に突出するように形成された開口部分である。ボックス本体12の開口11の周縁には、フランジ20が全周に亘って設けられる。
【0033】
フランジ20は、ボックス本体12の開口11の周縁から外周側へ突出する。フランジ20の外周部分には、シール部22が一体に設けられる。シール部22は、フランジ20を全周に亘って囲むように環状に形成され、フランジ20の先端部から径方向における外側へ延びる。シール部22は、エラストマーまたはゴムなどの弾性体23からなる。例えば、シール部22は、インレットボックス10の成形時にニ色成形により成形される。
【0034】
ボックス本体12におけるフランジ20の裏側には、複数の係合爪24が周方向に互いに間隔をあけて設けられる。係合爪24は、ボディパネル102の取付口106の周縁部分に対して、車幅方向における内方から引っ掛かるようにして係合する。そのことで、インレットボックス10は、ボディパネル102に固定される。シール部22は、取付口106の段落ちした部分に弾性変形しつつ密着する。これにより、フランジ20とボディパネル102との間が全周に亘ってシールされる。
【0035】
アーム収容部14は、インレットボックス10においてアーム50を収容する部分である。アーム収容部14は、ボックス本体12の周壁から外方(
図2に示す例では前方)に向かって張り出す。アーム収容部14は、中空状に形成される。ボックス本体12とアーム収容部14との間には隔壁などが無く、ボックス本体12内の空間とアーム収容部14内の空間とは、互いに繋がり、一つの内部空間Sを形成する。
【0036】
アーム収容部14の上側壁には、上側ボス部26が設けられる。上側ボス部26は、上側壁の車幅方向における外側で且つ前側部分に形成され、上方に突出する。アーム収容部14の下側壁には、下側ボス部28が設けられる。下側ボス部28は、当該下側壁において上側ボス部26の下方に対応する部分に形成され、下方に突出する。上側ボス部26および下側ボス部28はそれぞれ、アーム50の基端部分に取り付けられた支持ピン30を支持する部分である。
【0037】
アーム収容部14の内部における奥側の壁面には、複数の支持リブ32が設けられる。複数の支持リブ32は、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。各支持リブ32は、車幅方向における中程が前方に凹んだ概ねブーメラン状に形成される。各支持リブ32は、開閉補助機構70に含まれる付勢ばね72を支持する部分である。複数の支持リブ32は、上側ボス部26および下側ボス部28と共に、インレットボックス10に一体に設けられる。
【0038】
ロック対応部16は、インレットボックス10においてリッド60をロックする位置に対応する部分である。ロック対応部16は、インレットボックス10のアーム収容部14とは反対側に設けられる。ロック対応部16は、インレットボックス10の拡大開口11bを含む部分によって構成される。ロック対応部16には、凹部34が形成される。凹部34の開口は、ボックス開口11のうち拡大開口11bを構成する。凹部34の底壁には、挿通孔36が形成される。
【0039】
〈プッシュリフター〉
プッシュリフター40は、ロック対応部16の裏側に配置される。プッシュリフター40は、インレットボックス10に取り付けられる。プッシュリフター40は、ハウジング42と、プッシュロッド44と、カム機構(不図示)とを備える。ハウジング42は、プッシュロッド44を往復動可能に保持する。プッシュロッド44は、ロック対応部16の挿通孔36に挿通される。プッシュロッド44の外端部分には、係止片46が設けられる。係止片46は、平面視で概ね長円状に形成される。
【0040】
カム機構は、プッシュロッド44に対してプッシュ操作が行われるたびに、プッシュロッド44を突出位置(
図7参照)と没入位置(
図8参照)との間で交互に変位させる。
図7に示すように、突出位置にあるプッシュロッド44は、ハウジング42から大きく突出する。
図8に示すように、没入位置にあるプッシュロッド44は、突出位置にある場合よりもハウジング42内に没入する。プッシュリフター40は、プッシュロッド44を、係止片46の向きが突出位置と没入位置とで90°異なるように回転させる。
【0041】
本例の係止片46の向きは、係止姿勢と、係止解除姿勢との間で切り換えられる。係止姿勢は、プッシュロッド44が没入位置にあるときに採る姿勢である。係止姿勢にある係止片46は、リッド60の内部で係止孔67の周縁に係止される。本例の係止姿勢は、係止片46の長手方向が上下方向に向く姿勢である(
図7参照)。係止解除姿勢は、プッシュロッド44が突出位置にあるときに採る姿勢である。係止解除姿勢にある係止片46は、リッド60の係止孔67に対して挿抜可能になる。本例の係止解除姿勢は、係止片46の長手方向が前後方向に向く姿勢である(
図8参照)。
【0042】
プッシュリフター40は、プッシュロッド44の没入位置から突出位置への進出移動、および突出位置から没入位置への後退移動に応じて、係止片46を回転させる。また、プッシュリフター40は、プッシュロッド44を没入位置から突出位置に変位させるときに、突出位置に向けて付勢するばねを内蔵する。プッシュリフター40は、プッシュロッド44の突出位置への付勢を以て、リッド60の開き動作をアシストする。
【0043】
〈アーム〉
アーム50は、インレットボックス10に対して回転可能に取り付けられる。
図5および
図6に示すように、アーム50は、リッド60を構成するインナ部材62と一体に設けられる。アーム50は、インレットボックス10のアーム収容部14に収容される。アーム50の形状は、リッド60の前方傍らで裏側に向かって突出するように湾曲した概ねU字状やスワンネック状である。アーム50のリッド60から離れた基端部分は、アーム収容部14内の奥側に位置する。
【0044】
図9に示すように、アーム50の基端部分の上部には、上側ボス部52が設けられる。上側ボス部52は、アーム50の湾曲形状の内側寄りに形成され、上方に開口する。アーム50の基端部分の下部には、下側ボス部54が設けられる。下側ボス部54は、アーム50の基端部分において上側ボス部52の下方に対応する部分に形成され、下方に開口する。上側ボス部52および下側ボス部54にはそれぞれ、支持ピン30が挿入される。アーム50は、それら両方の支持ピン30を介してアーム収容部14の上側ボス部26および下側ボス部28に回転自在に支持される。
【0045】
アーム50の基端部分には、複数のブラケットリブ56が設けられる。ブラケットリブ56は、アーム50の湾曲形状の外側寄りに形成される。複数のブラケットリブ56は、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。各ブラケットリブ56には、取付孔58が形成される。各ブラケットリブ56の取付孔58は、上下方向において互いに対応する。各ブラケットリブ56は、付勢ばね72を支持し、付勢ばね72からの反発力を受ける部分である。
【0046】
〈リッド〉
リッド60は、アーム50に支持され、アーム50の回転動作により、全開位置と全閉位置とに変位する。全開位置にあるリッド60は、ボックス開口11を開放する(
図13参照)。全閉位置にあるリッド60は、ボックス開口11を閉塞する(
図5および
図6参照)。リッド60は、全閉位置にあるときに、ボディパネル102の取付口106内に位置し、インレットボックス10内への外部からの異物の侵入などを阻止する。リッド60は、インナ部材62と、アウタ部材64とを組み合わせて構成される。
【0047】
インナ部材62は、リッド60の車内側に位置する部材である。アウタ部材64は、リッド60の車外側に位置する部材である。インナ部材62およびアウタ部材64はそれぞれ、射出成形などで成形される樹脂成形品であって、インレットボックス10と同様な硬質樹脂材からなる。インナ部材62とアウタ部材64とは、図示しない係止爪による係合構造などにより互いに固定される。アウタ部材64の外面は、リッド60が全閉位置にあるときに、ボディパネル102の外面と略面一となる。
【0048】
図4に示すように、インナ部材62のアーム50とは反対側の部分は、延出部65を構成する。延出部65は、インナ部材62のメイン開口11aを閉塞する部分から外方に延出する。リッド60が全閉位置にあるときには、延出部65は、拡大開口11bの内側に位置し、インレットボックス10のロック対応部16に対向する。延出部65には、凹部66が設けられる。凹部66は、アウタ部材64側に開口し、インナ部材62の他部と比べてリッド60の裏側へ張り出す。凹部66の底壁には、係止孔67が形成される。
【0049】
係止孔67は、長孔である。係止孔67は、プッシュロッド44が突出位置にあるときの係止片46の向き(本例では前後方向)に長手方向を沿わせて形成される。係止孔67の幅は係止片46の幅よりも広く、係止孔67の長さは係止片46の長さよりも長い。係止孔67には、プッシュロッド44の外端部分が突出位置にあるときに挿入される。凹部66の底壁における係止孔67の周縁部分には、プッシュロッド44が没入位置に変位すると、係止片46が引っ掛かり係止される。
【0050】
凹部66の底壁には、押圧片68が設けられる。押圧片68は、リッド60の閉じ動作に応じて、係止孔67に挿通されたプッシュロッド44の外端部分(係止片46)をハウジング42側に押圧する部分である。押圧片68は、係止孔67を跨ぐような門型に形成される。本例の押圧片68は、係止孔67の長手方向における一端から他端に亘りコ字状をなすように延びる。押圧片68は、係止孔67との間に係止片46を収容する空間を形成する。
【0051】
〈開閉補助機構〉
開閉補助機構70は、
図9に示す付勢ばね72と、上述した複数の支持リブ32および複数のブラケットリブ56とを含んで構成される。
図5および
図6に示すように、付勢ばね72は、アーム収容部14内の奥側に収容される。付勢ばね72は、概ねS字状に形成される。付勢ばね72の一側部分は、アーム収容部14に設けられた複数の支持リブ32に支持される。付勢ばね72の他側部分は、アーム50に設けられた複数のブラケットリブ56に対して、取付孔58に挿入されることで取り付けられる。
【0052】
開閉補助機構70は、付勢ばね72の付勢力により、リッド60の開き動作と閉じ動作との両方を補助する。
図11に示すように、開閉補助機構70が補助する動作は、半開き状態にあるリッド60の位置に応じて開き動作と閉じ動作との間で切り換わる。リッド60が全閉位置と全開位置との間の所定の中間位置にあるときには、ブラケットリブ56の取付孔58が、支持リブ32の付勢ばね72を支持する部分に最も接近する。
【0053】
リッド60が所定の中間位置よりも開き側にあるときには、付勢ばね72が各ブラケットリブ56に対して後方へ押すような反発力を及ぼす。そうした反発力が付勢ばね72から各ブラケットリブ56に作用すると、アーム50がリッド60を開く方向D1に向けて付勢される。こうして、開閉補助機構70は、リッド60を半開き状態から全開位置に向けて付勢する。そのことで、リッド60の開き動作が補助される。
【0054】
リッド60が所定の中間位置よりも閉じ側にあるときには、付勢ばね72が各ブラケットリブ56に対して車外側へ押すような反発力を及ぼす。そうした反発力が付勢ばね72から各ブラケットリブ56に作用すると、アーム50がリッド60を閉じる方向D2に向けて付勢される。こうして、開閉補助機構70は、リッド60を半開き状態から全閉位置に向けて付勢する。そのことで、リッド60の閉じ動作が補助される。
【0055】
〈衝撃緩衝構造〉
インレットボックスユニット1は、衝撃緩衝構造を有する。衝撃緩衝構造は、インレットボックスユニット1におけるリッド60の開閉動作に伴う衝撃を緩衝するための構造である。衝撃緩衝構造は、インレットボックス10およびアーム50の構成により実現される。
【0056】
インレットボックス10およびアーム50は、衝撃緩衝構造により、リッド60が全閉位置または半開き状態から全開位置に向けて移動する過程において、リッド60の全開位置寄りの位置で互いに摺動する。そのことで、リッド60の全開位置への移動に抵抗を生じる。また、インレットボックス10およびアーム50は、リッド60が全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動する過程において、リッド60の全閉位置寄りの位置で互いに摺動する。そのことにより、リッド60の全閉位置への移動に抵抗を生じる。
【0057】
図4に示すように、ボックス本体12の開口11の周縁部分は、アーム対応部12aを有する。アーム対応部12aは、ボックス開口11から出没するアーム50の外側に対応する部分である。アーム対応部12aは、アーム収容部14のボックス開口11側に対応する部分で構成される。アーム対応部12aには、摺動部80が設けられる。摺動部80は、上述したシール部22と一体に設けられ、弾性体23からなる。摺動部80は、シール部22からボックス開口11に向けて延出し、ボックス開口11の周縁を部分的に覆う。摺動部80は、インレットボックス10の一部を構成する。
【0058】
摺動部80には、開用スリット82Aと、閉用スリット82Bとが別々に設けられる。開用スリット82Aは、後述する開用突起84Aが嵌め入れられるスリットである。閉用スリット82Bは、後述する閉用突起84Bが嵌め入れられるスリットである。開用スリット82Aおよび閉用スリット82Bは、上下方向に互いに間隔をあけて配置される。
図5および
図13に示すように、開用スリット82Aおよび閉用スリット82Bはそれぞれ、摺動部80におけるボックス開口11の周縁を覆う部分に平面視でコ字形の溝状に形成され、左右方向において摺動部80を突き抜ける。
【0059】
図9に示すように、アーム50には、開用突起84Aと、閉用突起84Bとが設けられる。開用突起84Aは、リッド60の全開位置寄りの位置で摺動部80と摺動する突出物である。閉用突起84Bは、リッド60の全閉位置寄りの位置で摺動部80と摺動する突出物である。開用突起84Aおよび閉用突起84Bはそれぞれ、アーム50の湾曲形状の内側面において、上下方向に互いにずれた位置に形成される。開用突起84Aの形成位置は、アーム50の中程の位置である。閉用突起84Bの形成位置は、アーム50のリッド60寄りの位置である。
【0060】
本例の開用突起84Aおよび閉用突起84Bは、同様な形状の突出物84によって構成される。
図10に示すように、突出物84は、長手方向を有する板状突片である。突出物84は、長手方向における片側で幅広に形成される。突出物84は、幅狭部86と、幅広部88とを有する。幅狭部86は、開用スリット82Aまたは閉用スリット82Bの両側面の間に対応する幅(上下方向における幅)が相対的に狭い部分である。幅広部88は、開用スリット82Aまたは閉用スリット82Bの両側面の間に対応する幅(上下方向における幅)が相対的に広い部分である。
【0061】
幅狭部86および幅広部88は、突出物84の長手方向における概ね片側半分ずつを構成する。開用突起84Aの幅狭部86の幅は、開用スリット82Aの上下方向における隙間幅と同程度とされる。閉用突起84Bの幅狭部86の幅は、閉用スリット82Bの上下方向における隙間幅と同程度とされる。開用突起84Aの幅広部88は、開用スリット82Aの上下方向における隙間幅よりも大きく設計される。閉用突起84Bの幅広部88は、閉用スリット82Bの上下方向における隙間幅よりも大きく設計される。幅広部88の幅は、長手方向における中間位置で最大になり、両側に向かうに従い次第に狭まる。
【0062】
開用突起84Aの長手方向は、アーム50の長さ方向に対応する。開用突起84Aは、幅狭部86がアーム50のリッド60側に向き、且つ幅広部88がアーム50の基端側に向く姿勢に設けられる。開用突起84Aは、リッド60が開き動作において全開位置の手前にきたときに、開用スリット82Aに嵌め入れられる。開用突起84Aは、リッド60の全開位置を基準として、例えば閉じ側に5°以上且つ30°以下の範囲で開用スリット82Aに嵌め入れられる位置および長さに形成される。
【0063】
開用突起84Aの幅広部88は、
図12に示すように、リッド60が開閉途中にあるときに開用スリット82A内に位置し、
図13に示すように、リッド60が全開位置にあるときに開用スリット82A外に位置する。開用突起84Aの幅狭部86は、リッド60が全開位置にあるときに、開用スリット82A内に部分的に位置してもよく、全体に亘り開用スリット82A外に位置してもよい。リッド60が全開位置にあるときの摺動部80の変形量は、リッド60が開閉途中にあるときの開用突起84Aと摺動部80との摺動に伴う摺動部80の変形量よりも小さいか、またはゼロである。
【0064】
閉用突起84Bの長手方向は、アーム50の長さ方向に対応する。閉用突起84Bは、幅狭部86がアーム50の基端側に向き、且つ幅広部88がアーム50のリッド60側に向く姿勢に設けられる。閉用突起84Bは、リッド60が閉じ動作において全閉位置の手前にきたときに、閉用スリット82Bに嵌め入れられる。閉用突起84Bは、リッド60の全閉位置を基準として、例えば開き側に5°以上且つ30°以下の範囲で閉用スリット82Bに嵌め入れられる位置および長さに形成される。
【0065】
閉用突起84Bの幅広部88は、
図14に示すように、リッド60が開閉途中にあるときに閉用スリット82B内に位置し、
図5に示すように、リッド60が全閉位置にあるときに閉用スリット82B外に位置する。閉用突起84Bの幅狭部86は、リッド60が全閉位置にあるときに、閉用スリット82B内に部分的に位置してもよく、全体に亘り閉用スリット82B外に位置してもよい。リッド60が全閉位置にあるときの摺動部80の変形量は、リッド60が開閉途中にあるときの閉用突起84Bと摺動部80との摺動に伴う摺動部80の変形量よりも小さいか、またはゼロである。
【0066】
-インレットボックスユニットの動作-
上記構成のインレットボックスユニット1では、ユーザーが全閉状態のリッド60を押すことで、リッド60が開かれる。全閉位置にあるリッド60を押すと、リッド60がインレットボックス10の内方に変位することで、プッシュリフター40にプッシュ操作が行われる。ここでのプッシュ操作では、没入位置にあるプッシュロッド44が押圧片68によりハウジング42内に押し込まれる。そうすると、プッシュロッド44は、回転しつつ突出位置に向けてハウジング42から突き出る。これにより、リッド60は、全閉位置に対して所定の角度(例えば5°程度)だけ持ち上げられる。また、係止片46が係止解除姿勢になり、係止孔67に対して挿抜可能な状態になる。
【0067】
リッド60が持ち上げられた状態になると、リッド60とボディパネル102との間に隙間ができる。ユーザーがボディパネル102との間の隙間に手指を入れてボディパネル102から離れる方向へ回転させると、プッシュロッド44が係止孔67から抜けて、リッド60が全開位置に向けて開かれる。そうしたリッド60の開き動作において、リッド60が所定の中間位置に至るまでは、リッド60に対して、開閉補助機構70により閉じ側への付勢力が作用する。また、リッド60が所定の中間位置を通過した後は、リッド60に対して、開閉補助機構70により開き側への付勢力が作用する。
【0068】
リッド60は、開閉補助機構70による付勢力で回転を補助され、全閉位置に向けて勢いよく開かれる。このとき、
図12に示すように、リッド60が全開位置に至る前に、開用突起84Aが摺動部80の開用スリット82Aに嵌め入れられる。開用スリット82Aには、開用突起84Aの幅狭部86が突入した後に幅広部88が進入する。摺動部80は、開用突起84Aが摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する。開用突起84Aは、主に幅広部88で開用スリット82Aを押し広げながら移動し、開用スリット82Aの内側面と摺動する。そのことで、リッド60の全開位置への移動に抵抗を生じる。
【0069】
リッド60の全開位置に向けた移動が開閉補助機構70の付勢力によるものである場合、リッド60の移動は、開用突起84Aと摺動部80との間の摺動抵抗により全開位置の手前で止まる。このとき、リッド60が止まる位置は、リッド60の全開位置に対して例えば10°以上且つ20°以下の位置である。リッド60は、ユーザーが手動でさらに開き側に引き出すことで、
図13に示す全開位置に変位させられる。そうして、リッド60が全開状態になると、開用突起84Aが開用スリット82A外に抜け出るか、または開用スリット82Aの内側面に軽く接した状態になる。これにより、リッド60の全開状態において、摺動部80にかかるストレスが小さくなる。
【0070】
また、全開位置にあるかまたは半開き状態のリッド60は、ユーザーが手動でリッド60をボディパネル102に近づく方向へ回転させることで、全閉位置に向けて閉じられる。そうしたリッド60の閉じ動作において、リッド60が所定の中間位置に至るまでは、リッド60に対して、開閉補助機構70により開き側への付勢力が作用する。また、リッド60が所定の中間位置を通過した後は、リッド60に対して、開閉補助機構70により閉じ側への付勢力が作用する。
【0071】
リッド60は、開閉補助機構70による付勢力で回転を補助され、全閉位置に向けて勢いよく閉じられる。このとき、
図14に示すように、リッド60が全閉位置に至る前に、閉用突起84Bが摺動部80の閉用スリット82Bに嵌め入れられる。閉用スリット82Bには、閉用突起84Bの幅狭部86が突入した後に幅広部88が進入する。摺動部80は、閉用突起84Bが摺動するときにかかる圧力に応じて弾性変形する。閉用突起84Bは、主に幅広部88で閉用スリット82Bを押し広げながら移動し、閉用スリット82Bの内側面と摺動する。そのことで、リッド60の全閉位置への移動に抵抗を生じる。
【0072】
リッド60の全閉位置に向けた移動が開閉補助機構70の付勢力によるものである場合、リッド60の移動は、閉用突起84Bと摺動部80との間の摺動抵抗により全閉位置の手前で止まる。このとき、
図15に示すように、リッド60の止まる位置は、押圧片68がプッシュロッド44に当接する前における、リッド60の全閉位置に対して例えば10°以上且つ20°以下の位置である。リッド60は、ユーザーが手動でさらに閉じ側に押し込むことで、
図5および
図6に示す全閉位置に変位させられる。その過程で、プッシュロッド44の外端部分(係止片46)が係止孔67に挿入され、プッシュリフター40にプッシュ操作が行われる。ここでのプッシュ操作では、突出位置にあるプッシュロッド44が押圧片68によりハウジング42内に押し込まれる。そうすると、プッシュロッド44は、回転しつつ没入位置に没入される。また、係止片46が係止姿勢になり、リッド60の内部で係止孔67の周縁部分に引っ掛かる状態とされる。これにより、リッド60が全閉位置に保持される。
【0073】
そうして、リッド60が全閉状態になると、閉用突起84Bが閉用スリット82Bの外に抜け出るか、または閉用スリット82Bの内側面に軽く接した状態になる。これにより、リッド60の全閉状態において、摺動部80にかかるストレスが小さくなる。リッド60は、通常、エネルギー源を供給するとき以外は、全閉状態とされる。よって、摺動部80にかかるストレスがリッド60の全閉状態で小さいことは、摺動部80の塑性変形を抑制するのに有利である。
【0074】
-実施形態の特徴-
この実施形態のインレットボックスユニット1では、インレットボックス10の開口11の周縁部分のうちアーム対応部12aに摺動部80が設けられ、アーム50に閉用突起84Bが設けられる。閉用突起84Bは、リッド60の全閉位置寄りの位置で摺動部80と摺動する。そして、摺動部80は、弾性体からなる。よって、リッド60を開いた状態から全閉位置に向けて回転させると、リッド60が全閉位置寄りの位置にきたときに、閉用突起84Bが閉用スリット82B内で摺動部80と摺動する。このとき、摺動部80は、閉用突起84Bの摺動によりかかる圧力に応じて弾性変形する。そのことで、閉用突起84Bと摺動部80との間に適度な摺動抵抗を付与できる。この摺動抵抗は、リッド60の全閉位置への移動における抵抗となる。そのため、リッド60の閉じ動作が減速する。これにより、リッド60を閉じる際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【0075】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、リッド60が全閉位置にあるときの摺動部80の変形量が相対的に小さいか、またはゼロである。リッド60が全閉位置にあるときの摺動部80の変形量が比較的大きい場合、摺動部80の温度が高くなったときに、当該摺動部80において比較的大きな塑性変形を生じるおそれがある。摺動部80が比較的大きく塑性変形すると、閉用突起84Bと摺動部80との接触具合が損なわれ、閉用突起84Bと摺動部80との間に適度な摺動抵抗を付与できなくなる。これに対して、この実施形態のインレットボックスユニット1によれば、摺動部80に生じる塑性変形を小さくするか、または摺動部80に塑性変形が生じるのを防止できる。このことは、リッド60を閉じる際の衝撃音の抑制効果を持続させるのに有利である。
【0076】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、閉用突起84Bが、摺動部80に設けられた閉用スリット82Bに嵌め入れられ、閉用スリット82Bの両側面と摺動する。閉用突起84Bが閉用スリット82Bの両側面と摺動すると、閉用突起84Bが突出端面のみで摺動部80と摺動する場合に比べて、閉用突起84Bと摺動部80との摺動にかかる面積を大きくできる。それにより、閉用突起84Bと摺動部80との摺動において摺動部80にかかる圧力を低減しても、閉用突起84Bと摺動部80との間に適度な摺動抵抗を得られる。このことは、閉用突起84Bおよび摺動部80の摺動に伴う摩耗などの損傷を抑制するのに有利である。
【0077】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、閉用突起84Bが幅狭部86および幅広部88を有する。そして、閉用突起84Bの幅広部88は、リッド60が開閉途中にあるときに閉用スリット82B内に位置する。そのことで、閉用突起84Bと摺動部80との間の摺動抵抗は、リッド60の開閉途中で最大となる。また、閉用突起84Bの幅広部88は、リッド60が全閉位置にあるときに閉用スリット82B外に位置する。これにより、リッド60が全閉位置にあるときの摺動部80の変形量が相対的に小さくなるか、またはゼロになる。その結果、摺動部80に生じる塑性変形を小さくするか、または摺動部80に塑性変形が生じるのを防止できる。このことは、リッド60を閉じる際の衝撃音の抑制効果を持続させるのに有利である。
【0078】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、インレットボックス10の開口11の周縁部分におけるアーム対応部12aに摺動部80が設けられ、アーム50に開用突起84Aが設けられる。開用突起84Aは、リッド60の全開位置寄りの位置で摺動部80と摺動する。そして、摺動部80は、弾性体からなる。よって、リッド60を全閉位置または半開き状態から全開位置に向けて回転させると、リッド60が全開位置寄りの位置にきたときに、開用突起84Aが摺動部80と摺動する。このとき、摺動部80は、開用突起84Aの摺動によりかかる圧力に応じて弾性変形する。そのことで、開用突起84Aと摺動部80との間に適度な摺動抵抗を付与できる。この摺動抵抗は、リッド60の全開位置への移動における抵抗となる。そのため、リッド60の開き動作が減速する。これにより、リッド60を開く際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【0079】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、開用突起84Aが、摺動部80に設けられた開用スリット82Aに嵌め入れられ、開用スリット82Aの内側面と摺動する。また、閉用突起84Bが、摺動部80に設けられた閉用スリット82Bに嵌め入れられ、閉用スリット82Bの内側面と摺動する。そして、開用スリット82Aと閉用スリット82Bとは、別々に形成される。これによれば、閉用突起84Aおよび開用突起84Bが共通のスリットに嵌め入れられる態様を採る場合に比べて、閉用突起84Aおよび開用突起84Bと摺動部80との摺動に伴う摩耗などの損傷を抑制できる。
【0080】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、リッド60の閉じ動作を補助する開閉補助機構70を備える。開閉補助機構70は、リッド60を半開き状態から全閉位置に向けて付勢する。開閉補助機構70により付勢されたリッド60は、閉用突起84Bと摺動部80との摺動によるリッド60の閉じ動作における抵抗増大がないと、勢いよく閉じられ得る。リッド60が勢いよく閉じられると、リッド60を閉じる際の衝撃によって衝撃音が生じる。そうした開閉補助機構70を備えるインレットボックスユニット1において、本発明は、特に有効である。
【0081】
この実施形態のインレットボックスユニット1では、インレットボックス10およびアーム50が、リッド60を全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動させる過程において、リッド60の全閉位置寄りの位置で互いに摺動する。そのことにより、リッド60の全閉位置への移動に抵抗を生じる。これにより、リッド60の閉じ動作が減速する。したがって、リッド60を閉じる際の衝撃を緩和して衝撃音を抑制できる。
【0082】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、弾性体23からなる摺動部80がボックス本体12のアーム対応部12aに設けられ、硬質樹脂材からなる開用突起84Aおよび閉用突起84Bがアーム50に設けられるとしたが、これに限らない。摺動部80が硬質樹脂材からなり、開用突起84Aおよび閉用突起84Bが弾性体によって構成されてもよい。また、摺動部80および閉用突起84Bの両方が弾性体で構成されてもよい。また、摺動部80がアーム50に設けられ、開用突起84Aおよび閉用突起84Bがボックス本体12のアーム対応部12aに設けられてもよい。
【0083】
上記実施形態では、開用スリット82Aおよび閉用スリット82Bが別々に摺動部80に設けられるとしたが、これに限らない。摺動部80には、開用突起84Aおよび閉用突起84Bが共通に嵌め入れられるスリットが設けられてもよい。この場合、開用突起84Aおよび閉用突起84Bは、アーム50の長さ方向において互いに対応する位置に設けられる。
【0084】
上記実施形態では、開用スリット82Aおよび閉用スリット82Bがそれぞれ平面視でコ字形であるとしたが、これに限らない。閉用スリット82Bは、平面視で楕円形などの曲線を呈する形状やV字状などに形成されてもよく、閉用突起84Bとの摺動面を確保できれば、任意の形状を採用することが可能である。このことは、開用スリット82Aについても同様であり、開用スリット82Aでは、開用突起84Aとの摺動面を確保できればよい。
【0085】
また、摺動部80には、開用スリット84Aおよび閉用スリット84Bのいずれも設けられなくてもよい。例えば、開用突起84Aは、アーム50の長さ方向において突出高さが変化する隆起形状や半球状の突出物からなり、リッド60の全開位置寄りの位置で突出端面が摺動部80と摺動するように設けられてもよい。また、閉用突起84Bは、アーム50の長さ方向において突出高さが変化する隆起形状や半球状の突出物からなり、リッド60の全閉位置寄りの位置で突出端面が摺動部80と摺動するように設けられてもよい。
【0086】
上記実施形態では、閉用突起84Bと共に開用突起84Aがアーム50に設けられるとしたが、これに限らない。開用突起84Aは、設けられなくてもよい。この場合、摺動部80には、開用スリット82Aが形成されなくてよい。
【0087】
要は、アーム50およびアーム対応部12aのうち、一方に摺動部80が、他方に閉用突起84bがそれぞれ設けられ、摺動部80および閉用突起84Bのうち一方が弾性体からなっていればよい。また、そうした構成に限らず、インレットボックス10およびアーム50は、リッド60が全開位置または半開き状態から全閉位置に向けて移動する過程において、リッド60の全閉位置寄りの位置で互いに摺動することにより、リッド60の全閉位置への移動に抵抗を生じるようになっていればよい。
【0088】
以上のように、本発明の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。上記実施形態について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてさらに色々な変形が可能なこと、またそうした変形も本発明の範囲に属することは、当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上説明したように、本発明は、インレットボックスユニットについて有用である。
【符号の説明】
【0090】
S 内部空間
1 インレットボックスユニット
10 インレットボックス
11 ボックス開口(開口)
12 アーム対応部
23 弾性体
50 アーム
60 リッド
70 開閉補助機構(補助機構)
80 摺動部
82A 開用スリット
82B 閉用スリット
84A 開用突起
84B 閉用突起