(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163679
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ドレッシングの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20231102BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20231102BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/60 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074736
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000125912
【氏名又は名称】株式会社あじかん
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 凌
【テーマコード(参考)】
4B047
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LE02
4B047LG10
4B047LG26
4B047LG30
4B047LG40
4B047LG62
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】動物性成分を必須としないドレッシングであって、耐熱性と耐冷凍性が向上したドレッシングの製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るドレッシングの製造方法は、油を45~65質量%含有するとともに、豆乳類を25~50質量%含有する原料を、20℃における粘度が60~800Pa・sとなるまで攪拌する第1攪拌工程と、前記第1攪拌工程の後の原料に酢を添加する酢添加工程と、前記酢添加工程の後の原料を、20℃における粘度が150Pa・s以上となるまで攪拌する第2攪拌工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を45~65質量%含有するとともに、豆乳類を25~50質量%含有する原料を、20℃における粘度が60~800Pa・sとなるまで攪拌する第1攪拌工程と、
前記第1攪拌工程の後の原料に酢を添加する酢添加工程と、
前記酢添加工程の後の原料を、20℃における粘度が150Pa・s以上となるまで攪拌する第2攪拌工程と、を含むドレッシングの製造方法。
【請求項2】
前記第1攪拌工程の原料は、増粘剤を0.01~0.4質量%含有する請求項1に記載のドレッシングの製造方法。
【請求項3】
前記酢添加工程で添加する酢は、原料において2~15質量%となるように添加する請求項1又は請求項2に記載のドレッシングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレッシングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズ等のドレッシングについては、輸送、保管、調理、加工といった様々な状況下において一定の品質を維持する必要(分離等の状態変化を回避する必要)があるため、「耐熱性」や「耐冷凍性」という特性が非常に重要視されている。
したがって、「耐熱性」や「耐冷凍性」に優れたドレッシングについて、研究開発が進められ、多くの技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、食用植物油脂、食酢、卵、水を主成分とする耐熱耐冷凍性マヨネーズ類において、上記食用植物油脂は所定の式で示されるECN(ECN=CN-2n 式中の「CN」はトリグリセリド中における脂肪酸残基の炭素の数、「n」はトリグリセリド中における脂肪酸残基中の二重結合の数を示す)が、42以下であるトリグリセリドを30重量%以上含む油脂を使用し、上記卵は、トリプシンで酵素処理を行った卵黄を使用し、安定剤としてラクトアルブミンを添加することを特徴とする耐熱耐冷凍性マヨネーズ類が記載されている。
また、特許文献2では、カゼインまたは/およびアラビアガムとポリグリセリン脂肪酸エステルとを併用し、かつ-20℃にて固体脂含量が50%以下の油脂、食酢または酢酸、全卵または卵黄を水中油型に乳化してなるマヨネーズ様乳化食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-322505号公報
【特許文献2】特開平7-194336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の技術は、卵を使用したドレッシングに関する技術であって、耐熱性や体冷凍性に優れていると説明されている。
一方、本発明者は、動物性食品の摂取を制限しているヴィーガン(ビーガン)やベジタリアンも使用できるような、卵等の動物性成分を必須としないドレッシングの開発に着手した。
【0006】
本発明者が、動物性成分を必須としないドレッシングについて検討を行ったところ、このようなドレッシングについて、耐熱性や耐冷凍性が十分には検討されていないことを確認した。そして、動物性成分を必須としないとともに耐熱性や耐冷凍性に優れたドレッシングを創出できれば、多様な消費者が使用できるだけでなく、様々な食品(各種冷凍食品、ベーカリー、焼き菓子等)に適用できる極めて汎用性の高いドレッシングを提供できるのではないかと本発明者は考えた。
【0007】
そこで、本発明は、動物性成分を必須としないドレッシングであって、耐熱性と耐冷凍性が向上したドレッシングの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)油を45~65質量%含有するとともに、豆乳類を25~50質量%含有する原料を、20℃における粘度が60~800Pa・sとなるまで攪拌する第1攪拌工程と、前記第1攪拌工程の後の原料に酢を添加する酢添加工程と、前記酢添加工程の後の原料を、20℃における粘度が150Pa・s以上となるまで攪拌する第2攪拌工程と、を含むドレッシングの製造方法。
(2)前記第1攪拌工程の原料は、増粘剤を0.01~0.4質量%含有する前記1に記載のドレッシングの製造方法。
(3)前記酢添加工程で添加する酢は、原料において2~15質量%となるように添加する前記1又は前記2に記載のドレッシングの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るドレッシングの製造方法は、卵等の動物性成分を必須とすることなく、耐熱性と耐冷凍性とが向上したドレッシングを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サンプル1~3の耐熱性試験の試験結果である。
【
図2】サンプル4~6の耐熱性試験の試験結果である。
【
図3】サンプル7~9の耐熱性試験の試験結果である。
【
図4】サンプル1~3の耐冷凍性試験の試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るドレッシングの製造方法を実施するための形態について説明する。
【0012】
≪ドレッシングの製造方法≫
本実施形態に係るドレッシングの製造方法は、第1攪拌工程と、酸添加工程と、第2攪拌工程とを含む。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0013】
(第1攪拌工程)
第1攪拌工程では、粘度が所定値となるまで原料を攪拌する工程である。
第1攪拌工程における攪拌は、20℃における原料の粘度が、60Pa・s以上となるように実施するのが好ましく、150Pa・s以上、200Pa・s以上、300Pa・s以上がより好ましい。
また、第1攪拌工程における攪拌は、20℃における原料の粘度が、800Pa・s以下となるように実施すればよく、750Pa・s以下、700Pa・s以下、650Pa・s以下がより好ましい。
このように、第1攪拌工程において、酢を添加する前の原料を所定の粘度とすることによって、所望の効果(耐熱性、耐冷凍性の向上効果)を発揮するドレッシングを確実に製造することができる。
なお、粘度の測定は、測定対象を20℃とした後、例えば、B型粘度計(BROOK FIELD DVII+ VISCOMETER)によって、測定すればよい。
【0014】
(第1攪拌工程:原料)
第1攪拌工程で攪拌する原料は、油と豆乳類を含有し、さらに、増粘剤を含有してもよい。
油は、食用油であれば特に限定されないが、動物性成分を含まないという観点から、植物油が好ましく、例えば、パーム油、菜種油、大豆油、サフラワー油、コーン油、ヤシ油、オリーブ油、米油、落花生油、ヒマワリ油、ひまし油、アマニ油、キャノーラ油、サラダ油等が挙げられる。そして、これらの油は、1種で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
原料における油の含有量は、45質量%以上が好ましく、49質量%以上、52質量%以上がより好ましい。
また、原料における油の含有量は、65質量%以下が好ましく、61質量%以下、58質量%以下がより好ましい。
原料における油の含有量を所定値とすることによって、後記する豆乳類や酢と組み合わさって、マヨネーズ様の香味とすることができる。
なお、本明細書において、各原料(油、豆乳類、増粘剤、酢など)の含有量は、詳細には、全ての原料(第1攪拌工程の後に添加する酢も含めた全原料、言い換えると、第1攪拌工程で使用する原料+酢添加工程で使用する酢)を100質量%とした場合の含有量である。
【0016】
豆乳類とは、豆乳(いわゆる無調整豆乳)、調製豆乳、豆乳飲料を挙げることができ、豆乳、又は、調製豆乳が好ましい。
なお、豆乳とは、「豆乳類の日本農林規格」(改正平成30年3月29日農林水産省告示第683号)の第2条に規定されているとおり、大豆(粉末状のもの及び脱脂したものを除く)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られた乳状の飲料(大豆豆乳飲料)であって大豆固形分が8%以上のものであり、同「豆乳類の日本農林規格」の第3条の規格に沿うものである。
また、調製豆乳とは、同「豆乳類の日本農林規格」の第2条に規定されているとおり、大豆豆乳液に大豆油その他の食用植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料であって大豆固形分が6%以上のもの、又は、脱脂加工大豆(大豆を加えたものを含む。)から熱水等によりたん白質その他の成分を溶出させ、繊維質を除去して得られたものに大豆油その他の食用植物油脂及び砂糖類、食塩等の調味料を加えた乳状の飲料であって大豆固形分が6%以上のもの、であり、同「豆乳類の日本農林規格」の第4条の規格に沿うものである。
また、豆乳飲料も、同「豆乳類の日本農林規格」の第2条に規定されているとおりであり、第5条の規格に沿うものである。
【0017】
原料における豆乳類の含有量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上、35質量%以上がより好ましい。
また、原料における豆乳類の含有量は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下、40質量%以下がより好ましい。
原料における豆乳類の含有量を所定値とすることによって、前記した油や後記する酢と組み合わさって、マヨネーズ様の香味とすることができる。
【0018】
増粘剤は、液体の粘性を高めるための添加剤であり、例えば、キサンタンガム、カラギナン、ローカストビーン、ペクチン、トラガントガム、カプロビーンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル等が挙げられる。
【0019】
原料における増粘剤の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上、0.1質量%以上がより好ましい。
また、原料における増粘剤の含有量は、0.4質量%以下が好ましく、0.3質量%以下、0.2質量%以下がより好ましい。
原料に増粘剤を含有させるとともに原料における増粘剤の含有量を所定値とすることによって、耐熱性の向上効果の増強を確実なものとすることができる。
【0020】
原料には、香味を調整するために、例えば、食塩、砂糖類、蜂蜜、調味料、香辛料、酵母エキス、たんぱく加水分解物、水あめ、還元水あめ等を含有させてもよい。
【0021】
(酢添加工程)
酢添加工程では、第1攪拌工程後の原料に酢を添加する。
酢とは、酸味のある調味料(食酢)であり、例えば、醸造酢(穀類や果実を発酵させて製造される食酢)の中でも、穀物酢、米酢、リンゴ酢が好ましい。
酢の酸度は特に制限されないが、例えば、4~15%であり、好ましくは4~10%、7~10%である。なお、酢の酸度は「醸造酢の日本農林規格」(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)の第4条の酸度の測定方法によって測定することができる。
【0022】
酢添加工程における酢の添加量は特に限定されないものの、原料において酢の含有量が2質量%以上となるように添加するのが好ましく、5質量%以上、8質量%以上がより好ましい。
また、酢添加工程での原料において酢の含有量が15質量%以下となるように添加するのが好ましく、13質量%以下、11質量%以下がより好ましい。
原料における酢の含有量を所定値とすることによって、前記した油や豆乳類と組み合わさって、マヨネーズ様の香味とすることができる。
【0023】
(第2攪拌工程)
第2攪拌工程では、粘度が所定値となるまで酢を添加した後の原料を攪拌する工程である。
第2攪拌工程における攪拌は、20℃における原料の粘度が、150Pa・s以上となるように実施するのが好ましく、300Pa・s以上、400Pa・s以上、500Pa・s以上がより好ましい。
また、第2攪拌工程における攪拌は、20℃における原料の粘度が、990Pa・s以下となるように実施すればよく、850Pa・s以下、800Pa・s以下、750Pa・s以下がより好ましい。
このように、第2攪拌工程において、酢を添加した後の原料を所定の粘度とすることによって、所望の効果(耐熱性、耐冷凍性の向上効果)を発揮するドレッシングを確実に製造することができる。
【0024】
(その他の工程)
本実施形態に係るドレッシングの製造方法は、第2攪拌工程の後に、一般的なドレッシング(マヨネーズ)の製造方法において用いられる工程、例えば、各種容器への充填工程や、パッケージング工程等を設けてもよい。
【0025】
本実施形態に係るドレッシングの製造方法によると、2つの攪拌工程(第1攪拌工程、第2攪拌工程)で攪拌するとともに、第1攪拌工程と第2工程との間で酢を原料に添加することで、製造されるドレッシングの耐熱性と耐冷凍性の両方を向上させることができる。
また、本実施形態に係るドレッシングの製造方法によると、増粘剤を添加することによって、耐熱性と耐冷凍性を大幅に向上させることができる。
【0026】
≪ドレッシング≫
本実施形態に係るドレッシングの製造方法によって製造されるドレッシングとは、マヨネーズ様(マヨネーズ風味)の半固体状のドレッシングであって、動物性成分(動物由来の原料)を含まない場合は、いわゆるヴィーガン用ドレッシング(ヴィーガン用マヨネーズ)ということもできる。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0028】
まずは、試験で用いた各サンプルについて説明する。
(各サンプルの準備)
サンプル1は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(無調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 毎日おいしい無調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)を含む原料に対して、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、20℃における粘度が315Pa・sとなるように攪拌して製造した。
サンプル2は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(無調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 毎日おいしい無調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)を含む原料に対して、20℃における粘度が292Pa・sとなるように攪拌(第1攪拌)し、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、その後、20℃における粘度が420Pa・sとなるように攪拌(第2攪拌)して製造した。
サンプル3は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(無調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 毎日おいしい無調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)、0.1質量%の増粘剤(富士化学工業株式会社製 スノーロイドLV)を含む原料に対して、20℃における粘度が680Pa・sとなるように攪拌(第1攪拌)し、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、その後、20℃における粘度が880Pa・sとなるように攪拌(第2攪拌)して製造した。
なお、サンプル1~3の攪拌にはBROWN社製 ハンドブレンダーMQ778を使用した。
【0029】
サンプル4は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)を含む原料に対して、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、20℃における粘度が153Pa・sとなるように攪拌して製造した。
サンプル5は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)を含む原料に対して、20℃における粘度が190Pa・sとなるように攪拌(第1攪拌)し、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、その後、20℃における粘度が250Pa・sとなるように攪拌(第2攪拌)して製造した。
サンプル6は、56質量%の油(日華油脂株式会社製 ニッカサラダ油(ヴァイオレット))、32質量%の豆乳(調整豆乳、マルサンアイ株式会社製 調整豆乳)、3質量%の塩(ダイヤソルト株式会社製 並塩)、4質量%の砂糖(日本甜菜製糖株会社製 スズラン印上白糖)、0.1質量%の増粘剤(富士化学工業株式会社製 スノーロイドLV)を含む原料に対して、20℃における粘度が561Pa・sとなるように攪拌(第1攪拌)し、酢(酸度10%、マルカン酢株式会社製 高酸度酢HA-100)を原料において4質量%となるように添加し、20℃における粘度が826Pa・sとなるように攪拌(第2攪拌)して製造した。
なお、サンプル4~6の攪拌にはBROWN社製 ハンドブレンダーMQ778を使用した。
そして、サンプル7~9は、市販のヴィーガン対応のマヨネーズであり、詳細には、サンプル7は、オーサワの豆乳マヨ(オーサワジャパン)、サンプル8は、ヴィーガンマヨ(NOHEA)、サンプル9は、有機ヴィーガンマヨネーズ(Emils)であった。
【0030】
なお、実施例のサンプルにおける各原料の含有量については、前記のとおりであり、全原料(酢も含めた全原料)を100質量%とした場合の含有量である。
また、実施例のサンプルの20℃における粘度の測定方法も、前記のとおりであり、測定対象を20℃とした後、B型粘度計(BROOK FIELD DVII+ VISCOMETER)とスピンドル(No6)によって測定するという方法であって、詳細には、測定対象を100mlビーカー(PP計量カップ、ニッコー・ハンセン株式会社製)に約130g入れた後、ビーカー内の測定対象に前記スピンドルを差し込み、約1rpmで30秒攪拌した際の数値(攪拌開始から30秒経過時の数値)を粘度とした。
【0031】
≪耐熱性試験≫
ろ紙(ADVANTEC社製、No.5A)の中央に、各サンプルを約2g載置し、200℃で10分間オーブンで加熱を行った。そして、ろ紙上の油による「にじみ(油シミ)」の面積などを画像処理ソフトウェア「Imagej」を用いて測定した。
耐熱性試験において、油が分離せずに「にじみ」の面積が小さいものは、耐熱性が高いと評価でき、油が分離し「にじみ」の面積が大きいものは、耐熱性が低いと評価できる。
そして、耐熱性試験では、サンプル1~9を対象とし、耐熱性試験の結果を
図1~3に示す。
図1~3において「ドレッシング」とは、ろ紙上における半固体状のドレッシングが占める面積(mm
2)であり、「全体範囲」とは、ろ紙上における油シミの外縁までの全面積(mm
2)であり、「油の浸透面積」とは、「全体面積」-「ドレッシング」で算出される面積(mm
2)であって、ろ紙上において油が浸透した部分の面積を示す。
なお、
図1~3の「ドレッシング」の周りの濃い色の部分は、油がろ紙に浸透した後、焼成時に焦げた部分であり、当該部分も油が浸透した部分であると判断できる。
【0032】
≪耐冷凍性試験≫
ナイロンポリLタイプ(構成:ONy15//L=LDPE60)の密閉袋に各サンプルを約200g封入し、-28℃の冷凍庫に保管した。そして、30日ごとに、冷凍されている各サンプルの状態を目視で確認し、油の分離の有無をチェックした。
耐冷凍性試験において、冷凍状態で油が分離するまでの期間が長ければ長いほど、耐冷凍性が高いと評価できる。
なお、耐冷凍試験では、サンプル1~3を対象とし、耐冷凍性試験の結果を、
図4に示す。
【0033】
≪結果の検討≫
(耐熱性試験について)
サンプル1~3の結果から、サンプル1よりもサンプル2の方が油の「にじみ」の面積が小さく、さらに、サンプル2よりもサンプル3の方が油の「にじみ」の面積が小さくなることが確認できた。
つまり、酢の添加前後で2回の攪拌を実施することによって(サンプル2)、耐熱性を向上させることができ、さらに、増粘剤を使用することによって(サンプル3)、耐熱性の向上効果を大幅に増強できることが確認できた。
また、豆乳(無調整豆乳)を使用したサンプル1~3と異なり、サンプル4~6の結果は調製豆乳を使用した結果であるが、サンプル1~3と同様の傾向(酢の添加前後で2回の攪拌を実施→耐熱性の向上、増粘剤を使用→耐熱性の向上効果を大幅に増強)が確認できた。
よって、サンプル1~6の結果によると、豆乳類として豆乳(無調整豆乳)を使用しても、調製豆乳を使用しても、所望の効果が得られることが確認できた。ただ、調製豆乳を使用したサンプル4~6よりも、豆乳(無調整豆乳)を使用したサンプル1~3の方が、耐熱性の向上度合いが大きいことも確認できた。
【0034】
市販のヴィーガン対応のドレッシング(マヨネーズ)であるサンプル7~9と、本発明に係るサンプル2~3、5~6の結果を比較すると、本発明に係るサンプルの方は、市販品と比べて大幅に耐熱性が向上できていることが確認できた。
【0035】
(耐冷凍性試験について)
サンプル1は、40日で油の分離が確認できたものの、サンプル2は、130日で油の分離が確認でき、サンプル3は、190日で油の分離が確認できた。
この結果から、酢の添加前後で2回の攪拌を実施して得られたサンプル2は、冷凍状態で油が分離までの期間がサンプル1の3倍以上にも延び、耐冷凍性が向上することが確認できた。
また、増粘剤を使用して得られたサンプル3は、冷凍状態で油が分離までの期間がサンプル1の4.7倍以上にも延び、耐冷凍性の向上効果を増強できることが確認できた。