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特開2023-163683車両制御システム及び車両データ収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163683
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】車両制御システム及び車両データ収集方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20231102BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20231102BHJP
   G16Y 20/40 20200101ALI20231102BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20231102BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20231102BHJP
【FI】
G08G1/00 D
A61B5/0245 C
G16Y20/40
G16Y40/30
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074745
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笠原 のぞみ
(72)【発明者】
【氏名】植松 裕
(72)【発明者】
【氏名】上薗 巧
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 忠信
(72)【発明者】
【氏名】新保 健一
【テーマコード(参考)】
4C017
5H181
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA08
4C017AB04
4C017AB06
4C017BC23
4C017DD14
4C017DD17
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
5H181MC19
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】自動運転車の認知を担うAIのトレーニングに有効なデータの効率的な収集を可能にする。
【解決手段】車両制御システムを、車両に装着したセンサから取得したデータを用いて車両を制御する制御信号を作成する車両制御判定部と、車両に乗車している乗車者の生体変化又は車両の制御信号の少なくとも何れか一方から乗車者が感じるヒヤリハットを検出し、ヒヤリハット検出信号を出力するヒヤリハット検出部と、センサから取得したデータと車両制御判定部で作成した制御信号とヒヤリハット検出部で検出したヒヤリハット検出信号とからこのヒヤリハットを検出したタイミングにおける制御信号とヒヤリハット検出信号とのミスマッチを検出する判定ミスマッチ検出部と、この判定ミスマッチ検出部でミスマッチを検出したタイミングに対応する車両に装着したセンサから取得したデータと車両制御判定部で作成した制御信号とを記憶するデータ保存部とを備えて構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に装着したセンサから取得したデータを用いて前記車両を制御する制御信号を作成する車両制御判定部と、
前記車両を運転しているときの前記車両に乗車している乗車者の生体変化、または前記車両の制御信号の少なくとも何れか一方から前記乗車者が感じるヒヤリハットを検出し、ヒヤリハット検出信号を出力するヒヤリハット検出部と、
前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号と前記ヒヤリハット検出部で検出した前記ヒヤリハット検出信号とから前記ヒヤリハットを検出したタイミングにおける前記制御信号と前記ヒヤリハットとのミスマッチを検出する判定ミスマッチ検出部と、
前記判定ミスマッチ検出部で前記ミスマッチを検出した前記タイミングに対応する前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを記憶するデータ保存部と
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両制御システムであって、
遅延時間設定部を更に備え、
前記判定ミスマッチ検出部は、前記ヒヤリハット検出部で前記ヒヤリハットを検出したときに、前記遅延時間設定部で設定された時間遡った時刻の前後を含む時間において前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを用いて前記制御信号と前記ヒヤリハットを検出した前記タイミングとの前記ミスマッチを検出することを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを記憶するバッファ部と、前記バッファ部に記憶した前記データと前記制御信号のうち前記判定ミスマッチ検出部で前記ミスマッチを検出した前記タイミングに対応する前記データと前記制御信号を前記バッファ部から取得する情報取得部とを更に備え、前記情報取得部で取得した、前記ミスマッチを検出した前記タイミングに対応する前記データと前記制御信号を前記データ保存部に記憶することを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記データ保存部に保存した前記ミスマッチに関する情報を外部へ送信する送信部を更に備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御判定部は、外部で作成された学習データを受信して、前記受信した前記学習データを用いて前記制御信号を作成することを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記ヒヤリハット検出部と前記判定ミスマッチ検出部と前記データ保存部とは、前記車両に対して後付けデバイスで構成されていることを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
車両制御判定部と、ヒヤリハット検出部と、ミスマッチ検出部と、データ保存部とを備えた車両制御システムにおいて車両データを収集する方法であって、
車両に装着したセンサから取得したデータを用いて前記車両制御判定部で前記車両を制御する制御信号を作成し、
前記車両を運転しているときの前記車両に乗車している乗車者の生体変化又は前記車両の制御信号の少なくとも何れか一方から前記ヒヤリハット検出部で前記乗車者が感じるヒヤリハットを検出し、
前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号と前記ヒヤリハット検出部で検出した前記ヒヤリハットとから前記ミスマッチ検出部で前記ヒヤリハットを検出したタイミングにおける前記制御信号と前記ヒヤリハットとのミスマッチを検出し、
前記ミスマッチ検出部で前記ミスマッチを検出した前記タイミングに対応する前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを前記データ保存部に記憶する
ことを特徴とする車両データ収集方法。
【請求項8】
請求項7記載の車両データ収集方法であって、
前記車両制御システムは遅延時間設定部を更に備え、
前記ミスマッチ検出部で前記ヒヤリハット検出部で前記ヒヤリハットを検出したときに、前記遅延時間設定部で設定された時間遡った時刻における前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを用いて前記制御信号と前記ヒヤリハットを検出した前記タイミングとの前記ミスマッチを検出することを特徴とする車両データ収集方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の車両データ収集方法であって、
前記車両制御システムはバッファ部と情報取得部とを更に備え、
前記バッファ部で前記車両に装着した前記センサから取得した前記データと前記車両制御判定部で作成した前記制御信号とを記憶し、前記情報取得部で前記バッファ部に記憶した前記データと前記制御信号のうち前記ミスマッチ検出部で検出した前記ミスマッチに対応する前記データと前記制御信号を前記バッファ部から取得し、前記情報取得部で取得した前記ミスマッチを検出した前記タイミングに対応する前記データと前記制御信号とを前記データ保存部に記憶することを特徴とする車両データ収集方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の車両データ収集方法であって、
前記車両制御システムは送信部を更に備え、
前記データ保存部に保存した前記ミスマッチに関する情報を前記送信部から外部へ送信することを特徴とする車両データ収集方法。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の車両データ収集方法であって、
前記車両制御判定部は外部で作成された学習データを受信し、前記受信した前記学習データを用いて前記制御信号を作成することを特徴とする車両データ収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び車両データ収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転車の事故を未然に防ぐため、車両から走行データを収集し、自動運転AI(Artificial Intelligence)のトレーニングデータとして活用する取り組みが行われている。トレーニングされたAIをOTA(Over The Air)で配信することで、車両制御システムを常に最新の状態にアップデートすることが可能となる。
【0003】
走行データの収集方式として、特許文献1には、「記録装置において取得部と、設定部と、選別部とを備える。取得部は、車両の運転者の生体情報を取得する。設定部は、前記取得部によって取得された前記生体情報に基づき、前記車両の走行情報の重要度を設定する。選別部は、前記設定部によって設定された前記重要度に基づいて記憶部に残す前記走行情報を選別する。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-195193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動運転AIのトレーニングデータとして車両から取得すべき情報は、人間とAIで走行状況の認知・判断にずれがある場合の走行情報である。人間とAIでずれがない場合は、既にAIが人間と同様の認知、判断ができており、必ずしも新たにトレーニングする必要はない。
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法では、運転者が危険を感じた場合に、走行情報を記録するため、人間とAIに認知・判断ずれがあったかどうかを判断できなかった。その結果、収集する情報にトレーニングデータとして不要な情報を含む可能性があった。また、人間とAIの認知・判断ずれは自動運転レベルが上がるにつれ、少なくなることが見込まれるため、特に高度自動運転環境において特許文献1の手法で走行情報を取得した場合、トレーニング不要な情報の比率は高くなる可能性があった。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、自動運転車の認知を担うAIのトレーニングに有効なデータを効率的に収集することを可能にする車両制御システム及び車両データ収集方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、車両制御システムを、車両に装着したセンサから取得したデータを用いて車両を制御する制御信号を作成する車両制御判定部と、車両を運転しているときの車両に乗車している乗車者の生体変化、または車両の制御信号から乗車者が感じるヒヤリハットを検出し、ヒヤリハット検出信号を出力するヒヤリハット検出部と、車両に装着したセンサから取得したデータと車両制御判定部で作成した制御信号とヒヤリハット検出部で検出したヒヤリハット検出信号とからこのヒヤリハットを検出したタイミングにおける車両制御判定部で作成した制御信号とヒヤリハット検出信号とのミスマッチを検出する判定ミスマッチ検出部と、この判定ミスマッチ検出部でミスマッチを検出したタイミングに対応する車両に装着したセンサから取得したデータと車両制御判定部で作成した制御信号とを記憶するデータ保存部とを備えて構成した。
【0009】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、車両制御判定部と、ヒヤリハット検出部と、判定ミスマッチ検出部と、データ保存部とを備えた車両制御システムにおいて車両データを収集する車両データ収集方法を、車両に装着したセンサから取得したデータを用いて車両制御判定部で車両を制御する制御信号を作成し、車両を運転しているときの車両に乗車している乗車者の生体変化または車両の制御信号からヒヤリハット検出部で乗車者が感じるヒヤリハットを検出し、車両に装着したセンサから取得したデータと車両制御判定部で作成した前記制御信号とヒヤリハット検出部で検出したヒヤリハット検出信号とから判定ミスマッチ検出部でヒヤリハットを検出したタイミングにおける制御信号とヒヤリハット検出信号とのミスマッチを検出し、ミスマッチ検出部でミスマッチを検出したタイミングに対応する車両に装着したセンサから取得したデータと制御部で作成した制御信号とをデータ保存部に記憶するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、自動運転車の認知を担うAIのトレーニングに有効なデータを効率的に収集可能とする。さらに、収集したデータを活用してAIの機能を向上させることで車両制御システムの安全性を向上させる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1に係る車両制御システムの概略の構成を示すブロック図である。
図2】本発明に実施例1に係る,生体変化検出部の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例1に係る車両制御システムにおける処理の流れを示すフロー図である。
図4】本発明の実施例1の変形例に係る車両制御システムの概略の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例1の変形例に係る車両制御システムにおけるデータ出力部の表示画面の正面図である。
図6】本発明の実施例2に係る車両制御システムからクラウドにデータを送信して処理する場合の概略の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の実施例2に係る車両制御システムから発信される走行データを管理して学習データを作成し更新データを送信する場合のデータの流れを示すブロック図である。
図8】本発明の実施例2に係る車両制御システムからの情報を受けるクラウドの内部構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施例2に係る車両制御システムからの情報を受けたクラウドにおける処理の流れを示すフロー図である。
図10】本発明の実施例2に係る車両制御システムにおける処理の流れを示すフロー図である。
図11】本発明の実施例2に係る学習データ生成部で作成される学習用データの一例を示す表である。
図12】本発明の実施例2における車両制御システムを後付けデバイスで実現する場合の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の実施例3における車両制御システムの概略の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の実施例3において生体変化検出部をバスで実現する場合の構成を示すブロック図である。
図15】本発明の実施例4における車両制御システムの概略の構成を示すブロック図である。
図16】本発明の実施例5における車両制御システムの概略の構成を示すブロック図である。
図17】本発明の実施例6における車両制御システムを隊列で走行するトラックに適用した例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は生体情報の変化または車両制御の変化からヒヤリハット(車両に乗車している乗車者が危険を感じたこと)を検出し、ヒヤリハット要因発生のタイミングで車両制御システムがヒヤリハットに対応する車両制御信号を検出できていない場合を乗車者と車両制御システムの判定ミスマッチと判定し、判定ミスマッチが発生した場合に車両制御信号と走行データを記録するとともに、学習データを作成して車両制御システムの精度を向上させるようにしたものである。
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0014】
本実施例では、本発明の判定ミスマッチの検出タイミングで走行データを保存する車両制御システムについて説明する。図1は本実施形態の構成図であり、図2は本実施形態を乗用車で実現する場合の生体変化検出部の構成例、図3は本実施例におけるデータ保存の処理フロー図である。
【0015】
まず図1について説明する。本実施例に係る車両制御システム1は、センサ群2と、車両制御判定部3,バッファ部5,車両制御検出部6,生体変化検出部7,ヒヤリハット検出部8,判定ミスマッチ検出部9,遅延時間設定部10,情報取得部11,データ保存部12を備えている。
【0016】
センサ群2は車両制御に必要な情報を収集するためのセンサであり、GPS(Global Positioning System)等のGNSS(Global Navigation Satellite System)やLiDAR(Light Detection And Ranging)、 レーダー、カメラなどを含む。各センサのセンシング結果(カメラのRAW(生)データを含む)は車両制御判定部3、およびバッファ部5の入力データとなる。
【0017】
車両制御判定部3は、センサ群2からの入力データを基に、車両の状況を判断して車両の制御量を演算により決定し、車両駆動部4およびバッファ部5に制御データ(車両制御値)を送信する。制御データとは、ブレーキやアクセルの踏み込む量などに加え、物体の認知結果、物体との距離など車両制御の判定に利用した情報、車両に緊急回避などの対応(運転者への注意喚起や警告、緊急ブレーキ等)が必要か否かという判断の結果などを含む。ここで、車両制御判定部3は、学習済みのAI(人工知能)を備えて構成されている。
【0018】
車両駆動部4はブレーキ、アクセル、ステアリングなどで構成され、車両制御判定部3から出力された制御データに基づいて車両を駆動する。
【0019】
バッファ部5はセンサ群2および車両制御判定部3からの情報を一時的に保存する。記録の際、データは時間に紐づけられ、車両制御判定部3が参照したセンサ群2の情報(入力)と、その結果車両制御判定部3により導出された制御データ(出力)を合わせて走行データとして記録する。
【0020】
車両制御検出部6は、車両が通常とは大きく異なって制御されたことを検出し、この検出した信号を車両制御検出信号として出力する。例えば、ブレーキやアクセル、ステアリング等の操作を対象に、時系列分析を利用することで通常とは異なる動作であったこと(急ブレーキ、 急ハンドルなど)が検出可能である。
【0021】
生体変化検出部7は車両の乗車者の生体情報を取得し、この取得した生体情報が通常の生体情報とは大きく異なって変化した場合にこの変化を検出し、生体変化検出信号として出力する。乗車者には、車両の運転者、助手席や後部座席の人、もしくはバスなどの場合は乗客などが含まれる。例えば生体情報には、心拍や血圧、表情等が含まれ、時系列分析を利用することで通常とは異なる動作であったことが検出可能である。表情の場合、人間の表情をあらかじめ学習させ、カメラを設置して乗車者の表情を取得、分析することで検出が可能である。
【0022】
ヒヤリハット検出部8は、車両制御検出部6からの車両制御検出信号、または/かつ生体変化検出部7からの生体変化検出信号を検出した場合に、乗車者が危険を検出した、つまりヒヤリハットがあったと判断し、ヒヤリハット検出信号を出力する。なお、ヒヤリハット検出部8は、車両制御検出信号または生体変化検出信号の一方に基づいて、広い範囲のヒヤリハットを検出し、ヒヤリハット検出信号を出力してもよい。
【0023】
判定ミスマッチ検出部9は、ヒヤリハット検出部8からのヒヤリハット検出信号を検出した場合、バッファ部5に記憶された制御データから、ヒヤリハット検出信号を検出したタイミングに対して遅延時間設定部10に設定された時間分遡った時刻とその前後の時間(例えば数秒間)における制御データ(ヒヤリハット要因発生時の判定結果)を参照する。
【0024】
判定ミスマッチ検出部9においてヒヤリハットを検出したタイミングからバッファ部5に記憶された所定の時間遡った時刻とその前後における制御データを参照した結果、車両制御判定部3が危険を検知できていなかった場合(車両制御判定部3から運転者への注意喚起や警告信号の出力や、車両駆動部4への緊急ブレーキ等の制御データの出力等の対応をしていなかった場合)、人間と車両制御システムの判定ミスマッチと判断し、情報取得部11にデータ取得トリガ信号とバッファ部5内で参照したデータの紐づけ時刻(参照データ時刻)の情報を出力する。
【0025】
情報取得部11は、判定ミスマッチ検出部9からのデータ取得トリガ信号を受けて、バッファ部5に記憶されたデータの中から参照データ時刻に対応する制御データと入力データをデータ保存部12に保存する。このデータ保存部12に保存するデータは、参照データ時刻のみに対応するデータでもよいし、参照データ時刻から所定の範囲の時間幅に対応するデータでもよい。
【0026】
本実施例の各構成要素の機能は、車両のセントラルゲートウェイに組みこんで実現してもよいし、ECU(Electronic Control Unit)に組み込んで実現してもよい。また、本実施例の各構成要素の機能は後付けするデバイスによって実現してもよい。
【0027】
次に図2を用いて本実施例を乗用車で実現する場合について説明する。車両13には乗車者130が乗車する。乗車者130の生体情報は、スマートフォン7-11やスマートウォッチ7-12、カメラ7-13、心拍測定機能付きの座席7-14などによって実現される生体変化検出部7から取得される。取得した情報は無線通信、もしくは有線通信などの手段によりヒヤリハット検出部8に送信される。ヒヤリハット検出部8でヒヤリハット検出信号が検出された場合の動作については図1で説明した通りである。
【0028】
本実施例に係る車両制御システム1におけるデータ処理の流れを、図3を用いて説明する。
【0029】
まず、車両13を運転中にセンサ群2で検出した各センサからのデータを取得し(S301)、この取得したデータを車両制御判定部3に入力して車両の状況を判断して車両の制御データを作成する(S302)と共に、バッファ部5に記憶する。
【0030】
車両制御判定部3では、S302において、入力した各センサからのデータを学習済みのAI(人工知能)を用いて処理することにより車両の状況を判断して、車両の制御データを作成する。車両制御判定部3において作成した制御データは、車両駆動部4に送られて車両を制御する(S303)と共に、バッファ部5に記憶される(S304)。
【0031】
一方、車両13を運転中に車両が通常とは大きく異なって制御されたことを車両制御検出部6で検出した場合に、車両制御検出部6から出力された信号をヒヤリハット検出部8で車両制御検出信号として受信し(S305)、生体変化検出部7で検出される車両13の乗車者130の生体情報が通常の生体情報とは大きく異なって変化した場合に、生体変化検出部7から出力された信号をヒヤリハット検出部8で生体変化検出信号として受信し(S306)、ヒヤリハット検出部8で受信した車両制御検出信号と生体変化検出信号とからヒヤリハットがあったと判断し、ヒヤリハット検出信号を出力する(S307)。また、S307において、S305、S306のいずれか一方を検出した場合にヒヤリハット検出としてもよい。
【0032】
次に、判定ミスマッチ検出部9において、ヒヤリハット検出部8から出力されたヒヤリハット検出信号を受けて、S304でバッファ部5に記憶された信号の中から、ヒヤリハット検出信号を受信した時刻よりも遅延時間設定部10に記憶された所定遅延時間だけ遡った時刻とその前後におけるセンサ群2からのセンサデータと車両制御判定部3からの制御データとを抽出する。この抽出したセンサデータと制御データにおいて、車両制御判定部3が危険を検知できていなかった場合(車両制御判定部3から運転者への注意喚起や警告信号の出力や、車両駆動部4への緊急ブレーキ等の制御データの出力等の対応をしていなかった場合)、人間と車両制御システムの判定ミスマッチとして検出し(S308)、情報取得部11でこの検出した判定ミスマッチ検出時の走行データを収集する(S309)。次に、この収集した判定ミスマッチ検出時の走行データをデータ保存部12に保存する(S310)。
【0033】
本実施例によれば、人間と車両制御システムの判定ミスマッチがあった場合のみ走行データを取得することにより、自動運転車の認知を担うAIのトレーニングに有効なデータを効率的に収集可能とする。
【0034】
[変形例]
実施例1の変形例に係る車両制御システム1-1の構成を図4に示す。実施例1に係る車両制御システム1と同じ構成部分については、同じ部品番号を付してある。
【0035】
本変形例に係る車両制御システム1-1は、図4に示すように、情報取得部11とデータ保存部12との間にデータ出力部14を設けて、情報取得部11で取得した情報をデータ出力部14に出力してデータ保存部12に保存するデータを選択できるようにした点が実施例1と異なる。
【0036】
すなわち、本変形例においては、図5に示すような、情報取得部11で取得した情報を画面上に表示する表示部141と、表示されたデータの保存を選択する保存ボタン142と消去を選択する消去ボタン143を備えたデータ出力部14を追加した点が実施例1と異なる。
【0037】
本変形例によれば、実施例1で述べた効果に加えて、情報取得部11で取得した情報をデータ出力部14に表示させてデータ保存部12に保存するデータを選択することにより、ヒヤリハット以外の要因でヒヤリハット信号が検出された場合のデータを削除することができる。すなわち、データ保存部12に保存するデータの量を削減し、保存する情報の精度(保存されるデータがヒヤリハット発生時のデータである確率)も向上させることができる。
【実施例0038】
本発明に係る第2の実施例では、実施例1で説明した車両制御システム1を活用した車両データ収集および収集データの活用方法について説明する。図6は本実施例の構成を示すブロック図であり、図7は本実施例のデータの流れを示すブロック図、図8は本実施例におけるクラウドの内部構成を示すブロック図、図9は本実施例におけるクラウドにおける処理の流れを示すフロー図、図10は車両制御システムにおける処理の流れを示すフロー図を示す。
【0039】
まず、図6を用いて本実施例に係る車両制御システム1を活用した車両データ収集システム全体の構成について説明する。
【0040】
車両13には、実施例1で説明した構成と機能を有する車両制御システム1が搭載されており、乗車者130(図2参照)が乗車する。図6においては簡略化して示しているが、車両制御システム1の構成とその動作は実施例1で説明したとおりである。
【0041】
送信部15は、車両制御システム1のデータ保存部12に保存されている判定ミスマッチ検出時の走行データを情報収集部16(クラウドサーバーなど)に送信する。
【0042】
情報収集部16は、送信部15から送信されるデータ保存部12に保存された判定ミスマッチ検出時の走行データ、および判定ミスマッチ検出タイミングでの周辺情報17を収集、整理する。周辺情報17を収集する目的は、人間(ヒヤリハット検出信号)とAI(制御データ)の判定ミスマッチの発生要因が、走行データ以外に存在する可能性があるためである。判定ミスマッチ検出部9で人間とAIの判定ミスマッチがあったと判定した場合でも、実際には判定ミスマッチではない可能性もあるため、情報収集部16ではデータ保存部12から受信したデータから、人間とAIの判定ミスマッチではなかったデータを取り除く処理を行う。この処理の詳細については図9を用いて後述する。
【0043】
前記処理により、人間とAIの判定ミスマッチが確認されたデータは、学習データ生成部18に送信する。車両制御システム1のデータ保存部12には、乗車者130と車両制御システム1の判定ミスマッチ時の時刻情報や車両位置情報が含まれるため、当該時刻、位置での周辺情報17をインターネット等を利用して入手、保存することが可能である。周辺情報17には、天気や気温、交通状況などが含まれる。
【0044】
学習データ生成部18は、不具合データベース(不具合DB)19を備え、情報収集部16で収集、整理された情報のうち実際に不具合があったものを格納する。不具合データベース19は、他の車両21からも同様に情報を収集しており、不具合情報を統合することが可能である。不具合データベース19の情報を利用し、学習データ生成部18は車両制御判定部3に格納されているAIをトレーニングするための学習用データ20を作成する。作成された学習用データ20は、システム設計部門22へ提供される。
【0045】
システム設計部門22は、学習データ生成部18から受領した学習用データ20を活用し、車両制御システム1の車両制御判定部3に格納されているAIをトレーニングし、更新データを作成する。作成された更新データは、OTA等を活用して各車両に配信されて車両制御判定部3に格納される。
【0046】
本実施例によれば、車両制御システム1で収集した人間とAIの判定ミスマッチに関するデータを活用してAIをトレーニングし、更新データを配信して車両制御判定部3に格納されているAIを更新することで、車両制御システム1の安全性と信頼性を向上させることができる。
【0047】
なお、図6に示した構成では、送信部15は、車両制御システム1の外部に配置された構成となっているが、送信部15を車両制御システム1の内部に組み込んで車両制御システム1を構成する1つのユニットとしてもよい。
【0048】
次に図7を用いて本発明を活用したサービスの概要について説明する。ここでは、サービスのプレイヤーとして個人車両購入者23、車両提供サービス業者24、車両提供サービス業者24の車両提供サービスを受ける、車両利用者25、車両運用事業者26、データ管理部門27、システム設計部門28(図6のシステム設計部門22に相当)が登場する。図7では、各プレイヤーの提供する情報を矢印で記載し、本サービスにより各プレイヤーが享受する価値を記載している。
【0049】
まず、情報の流れから説明する。個人車両購入者23および車両運用事業者26は、データ管理部門27に対して走行データを提供する。車両提供サービス業者24は、車両利用者25が利用した車両から走行データを入手し、データ管理部門27に提供する。データ管理部門27は、各プレイヤーから提供された走行データを集約、分析、加工し、学習用データ20を作成する。作成した学習用データ20はシステム設計部門28に提供される。システム設計部門28は、提供された学習用データ20を利用し、各車両に搭載される車両制御システム1の更新データを作成する。作成した更新データは、OTAなどの手段を用いて個人車両購入者23、車両提供サービス業者24、車両運用事業者26に提供される。
【0050】
次に、サービスによって各プレイヤーが享受する価値について説明する。システム設計部門28から更新データを受け取ることにより、個人車両購入者23は、所有する車両の安全性向上の価値を享受することができる。また、車両提供サービス業者24および車両運用事業者26は、車両の安全性向上に加え、車両で発生する不具合事象の減少により所有する車両の稼働率向上という価値も享受することができる。車両利用者25は車両の安全性向上に加え、車両で発生する不具合事象が減少し、品質の向上した車両提供サービスを受けることができる。システム設計部門28は学習用データ20を活用して製品を改良することによって、市場競争力を向上させることができる。また更新データの提供により、安全な車両の提供が可能となり、顧客からの信頼性も向上させることができる。
【0051】
次に、情報収集を行う情報収集部16の構成について、図8を用いて説明する。情報収集部16は、図6で説明した送信部15から送信された情報を受信する受信部161,走行データ取得部162,ミスマッチチェック部163,ミスマッチ検出除外条件記憶部164,ミスマッチ特徴量抽出部165,周辺環境情報取得部166,保存頻度指定部167,送信部168を備え、それらの間がデータ線169で繋がれている。
【0052】
このような構成を有するクラウド側でのデータ整理フローについて、図9を用いて説明する。
まず、送信部15から送信された、車両制御システム1のデータ保存部12に保存されている、判定ミスマッチ検出部9がミスマッチを検出した際の走行データを受信部161で受信して走行データ取得部162に格納する(S901)。
【0053】
次に、走行データ取得部162に格納した走行データに対して、ミスマッチチェック部163において、人間とAIの判定ミスマッチが実際にあったか否かをチェックす(S902)。
【0054】
このミスマッチチェック部163では、ミスマッチ検出除外条件記憶部164に予め設定されているミスマッチ検出除外条件、もしくは学習データ生成部18の不具合データベース19に集約された情報からミスマッチ特徴量抽出部165で人間とAIのミスマッチ検出時に共通する特徴量を抽出する、などの手法を用いて自動的に行う。
【0055】
ミスマッチ検出除外条件記憶部164に予め設定されているミスマッチ検出除外条件の例としては、カメラのRAWデータや、認知結果にヒヤリハット要因となりやすい車両や人間、動物などのオブジェクトが何も映っていない場合に、ヒヤリハットはなかったものとする、などがある。
【0056】
ミスマッチ特徴量抽出部165で抽出する特徴量の例として、ミスマッチ時の時刻や、認識しているオブジェクト、天候などがある。
【0057】
S902でミスマッチ有と判定した場合(S902でYESの場合)は、人間とAIの判定ミスマッチ検出時刻に対応する天気や気温、交通状況などの周辺環境情報を収集する(S903)。
【0058】
次に、S902でミスマッチ有と判定した情報を不具合データベース19格納する前に、人間によってミスマッチ有無の最終確認を行い(S904)、ミスマッチが有ると判定した場合(S904でYESの場合)には、そのデータを不具合データベース19に格納して(S905)終了する。このS904ステップは、S902におけるミスマッチチェック部163の精度が高い場合などには省略して、S903から直接S905に進んでもよい。
【0059】
学習データ生成部18においては、不具合データベース19に格納されたミスマッチに関するデータに基づいて、学習用データ20が作成される。
【0060】
学習用データ20の一例として、図11に示す表形式で表した学習用データ1100の例を示す。学習用データ1100には、車種1101にはヒヤリハットを検出した車両の種類に関する情報,ミスマッチ発生日時1102にはヒヤリハットデータのミスマッチが発生した日時の情報,車両制御情報1103にはヒヤリハット検出部8で検出したヒヤリハットの認知結果、車両制御判定部3から出力された車両制御値、図示していないECUなどから得られる車両状況判断結果など,周辺情報1104には天気や気温、交通状況などのインターネットを介して得られる周辺の情報,ミスマッチチェック部163で判定したミスマッチの有無に関する情報1105が互いに関連付けられて記憶されている。
【0061】
ここで、S901で車両から受信する走行データには、位置情報や時刻情報などのデータ量の小さいものと、カメラのRAWデータなどのデータ量の大きいものが混在しており、データの受信頻度次第では、車両13と情報収集部16との間での通信を圧迫する恐れがある。そのため、通常はデータ量の小さいものだけを受信し、S902やS904で本当のミスマッチである可能性が高まった場合には、より詳細な情報取得のため、残りのデータ量の大きいものを追加で車両側に要求するようにしてもよい。
【0062】
S902でミスマッチが無いと判定した場合(S902でNOの場合)は、追加データの要否を判断し(S906)、追加データが必要と判断した場合(S906でYESの場合)、データ保存部12に保存されているデータの中から追加データを取得し(S907)、再度S902に進んでミスマッチ有無の判定を行う。
【0063】
一方、追加データは必要なしと判断した場合(S906でNOの場合)、S901で取得したデータを消去して(S910)終了する。
【0064】
また、S904においてミスマッチが無いと判定した場合(S904でNOの場合)には、追加データの要否を判断し(S908)、追加データが必要と判断した場合(S908でYESの場合)、データ保存部12に保存されているデータの中から追加データを取得し(S909)、再度S904に進んでミスマッチ有無の判定を行う。
【0065】
一方、追加データは必要なしと判断した場合(S908でNOの場合)、S901で取得したデータを消去して(S910)終了する。
【0066】
次に、図10を用いて本実施例における車両制御システム1の側でのデータ処理フローについて説明する。S1001からS1009までの処理は、実施例1で図3を用いて説明した処理フローのS301~S309までの処理と同じであるので、説明を省略する。
【0067】
図10のS1009において収集された情報について、データ保存部12に保存する頻度が予め設定された頻度に達しているかを判定し(S1010)、まだ設定された頻度に達していない(S1010でNO)と判定された場合には、S1009において収集された情報をデータ保存部12に保存し(S1011)、この保存したデータを情報収集部16に送信する(S1012)。
【0068】
また、図6に示したシステム設計部門22に更新データが有る場合には、車両制御判定部3で更新データを受信し(S1014)、この更新データを用いてS1002において車両制御判定を行う。このように更新データを取得して車両制御判定を行うことにより、ヒヤリハットの判定の精度を高く維持して、判定の信頼性を高く維持することができる。
【0069】
S1012でデータをクラウドで構成される情報収集部16に送信する際、バッファ部5に保存していた走行データに加え、車両の種類、走行距離、利用年数などの基本的な車両情報を一緒に送信してもよい。
【0070】
また、S1010での判定に用いる保存する頻度は、情報収集部16の保存頻度指定部167に記憶された保存頻度のデータを用いるが、ミスマッチ発生状況に合わせたデータの保存回数として設定するようにしてもよい。例えば、情報収集部16でのデータ処理の結果、当該車種でのミスマッチ検出が少ないことが判明した場合、保存頻度を低く設定する(10回に1回保存する等)。また、保存頻度指定部167に記憶される保存頻度のデータは、OTAなどにより更新可能としてもよい。
【0071】
一方、S1010において設定された頻度に達している(YES)と判定された場合には、S1009において収集された情報を廃棄(消去)して(S1013)、処理を終了する。
【0072】
次に図12を用いて、本発明を車両120に後付けデバイスで実現する場合のハードウェア構成について説明する。本実施例に関連してヒヤリハットのミスマッチを検出するために車両120に装着されるハードウェアは、運転支援システム1210、テレマティクスデータ収集デバイス1201、ヒヤリハット検出デバイス1202,テレマティクスコントロールシステム1203で構成される。
【0073】
本構成で取得されたデータは無線などを通じてクラウドサーバー1220に送信される。このうち、テレマティクスデータ収集デバイス1201、およびヒヤリハット検出デバイス1202,及びテレマティクスコントロールシステム1203が後付けのデバイス1200である。テレマティクスデータ収集デバイス1201は、車両に関する情報を収集可能なデバイスであり、CANから直接情報が収集可能なものや、OBDポートから情報収集可能なものなどがあるが、いずれの方式のものを用いてもよい。
【0074】
ヒヤリハット検出デバイス1202は、スマートウォッチやスマートフォン等から生体情報を収集し、テレマティクスデータ収集デバイス1201との間でミスマッチが検出された場合のデータをテレマティクスコントロールシステム1203から無線等を用いてクラウドサーバー1220に送信する。このような構成とすることで、既存の車両からヒヤリハット検出時の情報を収集することが可能となる。
【0075】
本実施例によれば、個々の車両で検出された人間と車両制御との判断ミスマッチに関するデータをクラウドで収集して学習し、その学習したデータを個々の車両に送付して車両制御判定部に反映させることにより、車両制御判定部の信頼性を向上させることができ、人間と車両制御との判断ミスマッチをより少なくすることが可能になる。
【実施例0076】
本発明の第3の実施例として、車両制御システムにおいて、複数の生体情報を利用してミスマッチを検出する場合について説明する。図13は本実施例に係る車両制御システム101の構成図である。以下の説明では、実施例1で説明した車両制御システム1と同じ構成要素には同じ符号を付してあり、相違点を主に説明する。特に説明しない点については、実施例1の場合と同じである。
【0077】
本実施例では、実施例1の生体変化検出部7に替えて、複数の生体変化検出部7-1、・・・7-nで構成し、更に複数の生体変化検出部7-1、・・・7-nからの情報を受ける生体変化集約部35を設け、生体変化集約部35が複数の生体変化検出部7-1、・・・7-nのうちの複数又は過半数で生体変化が検出された場合に、生体変化検出信号をヒヤリハット検出部8に出力するように構成した。
【0078】
このような構成とすることにより、本実施例によれば、複数の生体変化検出部7-1、・・・7-nのうちの複数で生体変化を検出した場合に限って生体変化検出信号をヒヤリハット検出部8に出力することで、単一の生体情報を利用する場合よりもミスマッチ検出タイミングがヒヤリハットである確率を高めることができる。
【0079】
図14にバス131での表情検出の例を示す。本実施形態の具体例として、バス131に生体変化検出部7として乗車者130の表情7-24を読み取るカメラ7-21を設置する。カメラ7-21で乗車者130の表情7-24を検出した結果を生体変化集約部35で集約し、一定数以上の乗車者130が危険を感じていると推定される場合にクラウドで構成される情報収集部16に生体変化検出信号を出力する。また、カメラ7-21からだけでなく、乗車者130の所有するスマートフォン7-22やスマートウォッチ7-23といったデバイスを生体変化検出部7として利用してもよい。本実施例のように、自動運転バスのような運転者の存在しない車両であっても、ミスマッチの検出が可能である。
【実施例0080】
本発明の実施例4として、実施例1で説明した車両制御システム1の遅延時間設定部10に替えて、図15に示すように、所定遅延時間に幅を設けることが可能に所定遅延時
間幅設定部36を設けた車両制御システム102について説明する。
【0081】
以下の説明では、実施例1で説明した車両制御システム1と同じ構成要素には同じ符号を付してあり、相違点を主に説明する。特に説明しない点については、実施例1の場合と同じである。
【0082】
本実施形態では、実施例1で説明した車両制御システム1の遅延時間設定部10に替えて、所定遅延時間幅設定部36と、推定部37を設たことを特徴とする。所定遅延時間幅設定部36は、ヒヤリハット検出部8がヒヤリハット検出信号を出力後、判定ミスマッチ検出部9がバッファ部5を参照する際に用いる所定遅延時間に一定の幅を設けるようにしたものである。
【0083】
推定部37は、ヒヤリハット検出部8がヒヤリハット検出信号を出力後、所定遅延時間幅内で、バッファ部5内の制御データについて時系列分析を行い、車両制御判定部3から出力された制御データが他と比較して大きく変化するタイミング(データ時刻)を推定し、 判定ミスマッチ検出部9に参照データ時刻として出力する。
【0084】
本実施例によれば、ヒヤリハット検出後、固定遅延時間遡る場合と比較して、一定範囲内からタイミングを探索することで、より確実にヒヤリハット発生タイミングに同期する走行データを保存可能とする。
【実施例0085】
実施例5では、実施例4で説明した車両制御システム102において、所定遅延時間幅設定部36で設定する遅延時間をキャリブレーションする遅延調整部を設ける場合の動作ついて説明する。
【0086】
図16は本実施例における車両制御システム103の構成図である。以下の説明では、第4の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付してあり、相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第4の実施の形態と同じである。
【0087】
本実施例に係る車両制御システム103では、実施例4で説明した車両制御システム103に加え、遅延調整部38を設けた点が異なる。推定部37は、実施例4で説明した動作に加え、ヒヤリハット検出部8の出力するヒヤリハット検出信号のタイミングと、推定したタイミングから、生体情報提供者の反応速度を推定し、遅延調整部38に出力する。遅延調整部38は、推定した反応速度に基づき、調整遅延時間を所定遅延時間幅設定部36にフィードバックする。所定遅延時間幅設定部36は、調整遅延時間に基づき、遅延時間幅の値を変更する。
【0088】
本実施例によれば、生体反応時間を推定し、所定遅延時間幅にフィードバックすることで、保存回数を重ねるごとにより確実にヒヤリハット発生タイミングに同期する走行データを保存可能とする
【実施例0089】
実施例6では、実施例1から5で説明した車両制御システム1又は101,または102または103の何れかを搭載したトラックが隊列走行を行う場合の動作について説明する。
【0090】
図17は本実施例に係るトラック39a、39b、39cが隊列走行している場合の構成図である。本実施形態は先頭トラック39aが後方カメラ40bを備え、中央トラック39bが前方カメラ40aを備え、後尾トラック39cにはカメラを装備していない場合を示している。また周辺には、有人車両41a、41b、41cが存在し、監視カメラ42が設置されている。
【0091】
このような状況でトラック39a、39b、39cは隊列走行を行う。隊列走行とは、複数のトラックが、車-車間通信によって制御されて走行することである。トラック39a、39b、39cには、人間が乗っている場合と、乗っていない場合があるが、本実施形態では先頭トラックaは有人、中央トラック39bおよび後尾トラック39cは無人として説明する。
【0092】
まず、先頭トラック39aは、有人であるため、車両制御システム1は実施例1で説明したような動作が可能である。一方、中央トラック39bおよび後尾トラック39cは無人であり、車両制御システム1における生体変化検出部7で生体変化情報を取得できないため、代わりに周辺有人車両41a、41b、41cの生体情報を利用する。
【0093】
具体的には、トラック39a、39b、39cの隣のレーンを走行している有人車両41a、41b、41cの乗車者が、無人である中央トラック39bもしくは後尾トラック39cの危険な状況に気が付き、生体変化があったという情報を車-車間通信でヒヤリハット検出信号として受け取る、などの手法がある。
【0094】
車-車間通信で周辺有人車両41からのヒヤリハット検出信号を受け取ったとき、無人の中央トラック39bまたは後尾トラック39cが危険を検知できていなかった場合、データを保存する。
【0095】
また、別の手法として、有人である先頭トラック39aの乗車者が、バックミラー等で後ろを走行する無人の中央トラック39bや後尾トラック39cの危険な状態に気が付き、生体情報が変化した場合をヒヤリハット検出信号としてもよい。
【0096】
さらに、中央トラック39bが備える前方カメラ40aを利用してヒヤリハット検出信号を検出してもよい。具体的には、先頭トラック39aの後方カメラ40bの認知結果は危険を検出しているにもかかわらず、中央トラック39bの前方カメラ40aの画像認知結果は危険を検出していない、など同じ位置を撮影するカメラ画像の認知結果に差がある場合にヒヤリハット検出信号として検出してもよい。加えて、同様のカメラ画像の認知結果の差分をとる手法について、トラック39が走行する道路周辺を撮影する監視カメラ42の画像を利用してもよい。
【0097】
本実施例によれば、隊列走行を行う複数の車両において複数の車両を無人運転する場合であっても、それぞれの車両に対応するヒヤリハット検出信号を検出することができるので、ヒヤリハット発生タイミングに同期する走行データを保存可能とする。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1、1-1,101,102、103・・・車両制御システム 2・・・センサ群 3・・・車両制御判定部 4・・・車両駆動部 5・・・バッファ部 6・・・車両制御検出部 7・・・生体変化検出部 8・・・ヒヤリハット検出部 9・・・判定ミスマッチ検出部 10・・・遅延時間設定部 11・・・情報取得部 12・・・データ保存部 13、120・・・車両 14・・・データ出力部 15・・・送信部 16・・・情報収集部 17・・・周辺情報 18・・・学習データ生成部 19・・・不具合データベース 20・・・学習用データ 22、28・・・システム設計部門 23・・・個人車両購入者 24・・・車両提供サービス業者 25・・・車両利用者 26・・・車両運用事業者 27・・・データ管理部門 35・・・生体変化集約部 36・・・所定遅延時間幅設定部 37・・・推定部 38・・・遅延調整部 39a・・・先頭トラック 39b・・・中央トラック 39c・・・後尾トラック 40a・・・前方カメラ 40b・・・後方カメラ 41・・・周辺有人車両 42・・・監視カメラ 161・・・受信部 162走行データ取得部 163・・・ミスマッチチェック部 164・・・ミスマッチ検出除外条件記憶部 165・・・ミスマッチ特徴量抽出部 166・・・周辺環境情報取得部 167・・・保存頻度指定部 168・・・送信部 1200・・・後付けのデバイス 1201・・・テレマティクスデータ収集デバイス 1202・・・ヒヤリハット検出デバイス 1203・・・テレマティクスコントロールシステム 1210・・・運転支援システム 1220・・・クラウドサーバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17