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  • 特開-定着装置および画像形成装置 図1
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  • 特開-定着装置および画像形成装置 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163689
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074753
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】高塚 和樹
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033BA11
2H033BA12
2H033BB12
2H033BB33
2H033BB38
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】ニップ部近傍に潤滑剤を留めることができる定着装置を提供する。
【解決手段】定着装置は、定着ベルトの内側に当接し、加圧部材と伴に用紙を加圧するニップ部NPを形成する定着パッド60を備える。定着パッド60は、基部61と、基部61に固定されて定着ベルトの内側と摺動する摺動シート62とを有する。摺動シート62は、潤滑剤が含浸されており、密度が低い第1摺動領域(非接着部SEに対応)と、第1摺動領域よりも密度が高い第2摺動領域とを有する。第1摺動領域は、ニップ部NPを内包する位置に設けられ、第2摺動領域は、第1摺動領域の外周を取り囲む位置に設けられている。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の無端ベルトと加圧部材とによって挟持した用紙を加熱および加圧し、用紙に画像を定着させる定着装置であって、
前記無端ベルトの内側に当接し、前記加圧部材と伴に用紙を加圧するニップ部を形成する定着パッドを備え、
前記定着パッドは、基部と、前記基部に固定されて前記無端ベルトの内側と摺動する摺動シートとを有し、
前記摺動シートは、潤滑剤が含浸されており、密度が低い第1摺動領域と、前記第1摺動領域よりも密度が高い第2摺動領域とを有し、
前記第1摺動領域は、前記ニップ部を内包する位置に設けられ、
前記第2摺動領域は、前記第1摺動領域の外周を取り囲む位置に設けられていること
を特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記摺動シートは、前記第2摺動領域に含浸させた接着剤で前記基部に固定されること
を特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2に記載の定着装置であって、
前記摺動シートは、前記接着剤と伴に焼成されて前記基部に固定されること
を特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記定着パッドは、前記基部と前記摺動シートとを固定する固定部を有し、
前記第2摺動領域は、焼成されていること
を特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1に記載の定着装置であって、
前記基部は、前記定着ベルトの内側に対向する基部押圧面と、前記基部押圧面の外縁から延びた基部側面とを有し、
前記摺動シートは、前記基部押圧面に固定される押圧面固定部と、前記基部側面に固定される側面固定部とが、前記第2摺動領域に設けられていること
を特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、用紙に画像を定着させる定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置では、未定着のトナー像が形成された用紙を加圧および加熱することで、トナー像の定着が行われる。近年では、無端状の定着ベルトを用いた定着装置が提案されている。このような定着装置では、無端状の定着ベルトの内側にニップ形成部材を配置し、定着ベルトを介して加圧ローラをニップ形成部材に押し付けてニップ部を形成している。ニップ部では、定着ベルトの内周面とニップ形成部材との間の摩擦抵抗を低減するために、潤滑剤を含浸させた摺動シートが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-167349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の定着装置は、無端ベルト状の回転可能な定着部材と、定着部材を加熱する加熱源と、定着部材の内側に配置されたニップ形成部材と、定着部材を介してニップ形成部材に対向し、定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材と、潤滑剤が含浸され、ニップ形成部材と定着部材との間に設置された第1摺動部材とを備える。定着装置は、さらに、ニップ部以外の一部の領域で定着部材の内面に接触される第2摺動部材を有し、第2摺動部材は、第1摺動部材の織り目方向とは、異なる織り目を有している。
【0005】
ところで、摺動シート(摺動部材)は、繊維を織り込んでシート状に形成されているので、摺動シートの織り目によって、含浸されている潤滑剤の流れ方向が決定され、摺動シートの端部から潤滑剤が漏れる虞があった。上述した定着装置では、織り目の方向が異なる第2摺動部材をニップ部の上流側に設けて、第1摺動部材から潤滑剤が漏れるのを防ぐようにしているが、第1摺動部材のうち、第2摺動部材に面していない部分から、潤滑剤が漏れてしまう虞がある。
【0006】
本開示は、例えば、上記の課題を解決するためになされたものであり、ニップ部近傍に潤滑剤を留めることができる定着装置および画像形成装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る定着装置は、円筒状の無端ベルトと加圧部材とによって挟持した用紙を加熱および加圧し、用紙に画像を定着させる定着装置であって、前記無端ベルトの内側に当接し、前記加圧部材と伴に用紙を加圧するニップ部を形成する定着パッドを備え、前記定着パッドは、基部と、前記基部に固定されて前記無端ベルトの内側と摺動する摺動シートとを有し、前記摺動シートは、潤滑剤が含浸されており、密度が低い第1摺動領域と、前記第1摺動領域よりも密度が高い第2摺動領域とを有し、前記第1摺動領域は、前記ニップ部を内包する位置に設けられ、前記第2摺動領域は、前記第1摺動領域の外周を取り囲む位置に設けられていることを特徴とする。
【0008】
本開示に係る定着装置では、前記摺動シートは、前記第2摺動領域に含浸させた接着剤で前記基部に固定される構成としてもよい。
【0009】
本開示に係る定着装置では、前記摺動シートは、前記接着剤と伴に焼成されて前記基部に固定される構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る定着装置では、前記定着パッドは、前記基部と前記摺動シートとを固定する固定部を有し、前記第2摺動領域は、焼成されている構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る定着装置では、前記基部は、前記定着ベルトの内側に対向する基部押圧面と、前記基部押圧面の外縁から延びた基部側面とを有し、前記摺動シートは、前記基部押圧面に固定される押圧面固定部と、前記基部側面に固定される側面固定部とが、前記第2摺動領域に設けられている構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る画像形成装置は、本開示に係る定着装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によると、摺動シートの密度に差が設けられているので、ニップ部近傍に潤滑剤を多く含浸させて囲い込み、ニップ部近傍に潤滑剤を留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
図2図1の定着装置近傍を拡大して示す概略側面図である。
図3】定着パッドにおけるニップ部を示す模式説明図である。
図4A】従来の定着パッドを示す模式断面図である。
図4B】従来の定着パッドにおけるニップ部の位置を示す模式平面図である。
図5A】本開示の第1実施形態の定着パッドを示す模式断面図である。
図5B】本開示の第1実施形態の定着パッドにおけるニップ部の位置を示す模式平面図である。
図6】本開示の第2実施形態の定着パッドを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本開示の第1実施形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0017】
本開示の第1実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成を行う本体部と、上部に設けられた原稿読取部44および原稿搬送部45と、下部に設けられた給紙装置50とを備える。給紙装置50は、装置本体52と、装置本体52に挿入される給紙カセット51とで構成されている。
【0018】
原稿読取部44は、原稿が載置される原稿載置台43が上面に設けられており、原稿載置台43上の原稿の画像を読み取り、画像データを作成して画像形成装置1に伝達する。原稿搬送部45は、原稿載置台43の上に自動で原稿を搬送する。また、原稿搬送部45は、画像形成装置1に対して回動自在に取り付けられており、回動させて原稿載置台43の上を開放することで、原稿を手置きで載置することができる。
【0019】
画像形成装置1の本体部には、露光装置11、現像装置12、感光体ドラム13、クリーニング装置14、帯電器15、転写ユニット20、定着装置17、排紙トレイ39、および用紙搬送経路R1が設けられており、外部や原稿読取部44から伝達された画像データに応じて、所定の用紙に対して多色および単色の画像を形成する。
【0020】
画像形成装置1において扱われる画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、現像装置12、感光体ドラム13、帯電器15、クリーニング装置14は、各色に応じた4種類の潜像を形成するようにそれぞれ4個ずつ設けられ、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、これらによって4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0021】
感光体ドラム13は、画像形成装置1の略中央に配置されている。帯電器15は、感光体ドラム13の表面(周面)を所定の電位に均一に帯電させる。露光装置11は、感光体ドラム13の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置12は、感光体ドラム13の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム13の表面に各色のトナー像が形成される。クリーニング装置14は、現像および画像転写の後に感光体ドラム13の表面の残留トナーを除去および回収する。
【0022】
転写ユニット20は、転写駆動ローラ22、転写従動ローラ23、および中間転写ベルト21(転写ベルトの一例)を備える。中間転写ベルト21は、接続された駆動源によって回転する転写駆動ローラ22と、転写従動ローラ23とに懸架され、転写駆動ローラ22の回転に応じて、転写従動ローラ23と伴に従動する。中間転写ベルト21は、矢符Cの方向へ周回移動し、中間転写ベルトクリーニング装置25によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム13の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト21の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0023】
画像形成装置1は、転写ローラ26aを含む2次転写装置26をさらに備えている。転写ローラ26aは、中間転写ベルト21との間に転写ニップ域が形成されており、用紙搬送経路Sを通じて搬送されて来た用紙を転写ニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、転写ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト21の表面のトナー像が転写される。
【0024】
画像形成装置1は、給紙カセット51に蓄積された用紙を用いて画像形成を行う。給紙装置50は、露光装置11の下側に設けられている。また、排紙トレイ39は、原稿読取部44の下方に設けられており、画像形成済みの用紙を載置するためのトレイである。
【0025】
用紙は、給紙ローラ33により給紙カセット51から引き出されて、S字状の用紙搬送経路R1に供給される。用紙搬送経路R1に沿って、さらに、搬送ローラ35、レジストローラ34、2次転写装置26、定着装置17、および排紙ローラ36が配置されている。
【0026】
レジストローラ34は、給紙カセット51から搬送されている用紙を一旦保持し、感光体ドラム13上のトナー像の先端と用紙の先端とを合わせるタイミングで用紙を転写ローラ26aに搬送する。搬送ローラ35は、用紙の搬送を促進補助するための小型のローラである。
【0027】
定着装置17は、未定着のトナー像が形成された用紙を受け取り、定着ベルト31と加圧ローラ32(加圧部材の一例)との間に、用紙を挟み込んで加熱および加圧し、用紙上のトナー像を定着させる。定着後の用紙は、排紙ローラ36によって排紙トレイ39上に排出される。本実施の形態において、定着装置17は、ベルト定着方式とされており、円筒状の無端ベルトである定着ベルト31の内側に、定着パッド60を配置した構成とされている。定着パッド60は、定着ベルト31の内側に当接し、加圧ローラ32と伴に用紙を加圧するニップ部NP(図3参照)を形成する。なお、定着装置については、後述する図2を参照して、詳細に説明する。
【0028】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ36から反転経路Rrへと逆方向に搬送して、用紙の表裏を反転させ、用紙をレジストローラ34へと再度導き、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を排紙トレイ39へと搬出する。
【0029】
図2は、図1の定着装置近傍を拡大して示す概略側面図である。
【0030】
上述したように、定着装置17は、定着ベルト31、加圧ローラ32、および定着パッド60を備える。なお、図2では、定着装置17の要部を抜き出して示しているが、これに限定されず、定着ベルト31を加熱する熱源や、定着パッド60を支持する固定具などが設けられていてもよい。用紙搬送経路R1に沿った搬送方向Hへ送られた用紙は、定着ベルト31と加圧ローラ32とのニップ部NPを通過する際にトナー像が定着される。
【0031】
図3は、定着パッドにおけるニップ部を示す模式説明図である。
【0032】
図3では、定着パッド60と加圧ローラ32とを抜き出して示しており、定着ベルト31を介して両者を押し当てることで形成されるニップ部NPを模式的に示している。定着パッド60は、加圧ローラ32に対向する平坦な面を有しており、この面の中央部が加圧ローラ32に押し当てられる。つまり、定着パッド60のうち、加圧ローラ32に対向する平坦な面の一部がニップ部NPに対応する。
【0033】
次に、従来の定着パッド(比較パッド160)と本実施の形態における定着パッド60との比較について、図4Aないし図5Bを参照して説明する。
【0034】
図4Aは、従来の定着パッドを示す模式断面図であって、図4Bは、従来の定着パッドにおけるニップ部の位置を示す模式平面図である。
【0035】
従来の定着パッド(比較パッド160)は、直方体状の基部(比較基部161)と、基部に固定された摺動シート(比較シート162)とで構成されている。比較基部161は、用紙の幅方向Wに沿う方向が、長手方向とされている。比較シート162は、比較基部161に対し、接着剤(比較接着剤163)を用いて固定されている。具体的に、比較基部161は、定着ベルト31の内側であって、加圧ローラ32に対向する面と、その面の外縁から延びた側面とを有している。比較シート162は、比較基部161のうち、加圧ローラ32に対向する面と側面とを覆っている。比較接着剤163は、比較シート162の全体に含浸されており、比較基部161と比較シート162とが面する部分を全て接着している。
【0036】
図4Aでは、図面の見易さを考慮して、比較基部161および比較シート162のハッチングを省略している。比較接着剤163については、本実施の形態との位置の違いを強調するためにハッチングしている。
【0037】
比較パッド160に対し、搬送方向Hおよび幅方向Wでの略中央に押し当てられるように、加圧ローラ32が配置されている。その結果、比較パッド160のうち、加圧ローラ32に対向する面の略中央にニップ部NPが形成される。
【0038】
図4Bは、比較パッド160から比較シート162を取り外し、加圧ローラ32に対向する面を見た状態を示している。図4Bに示すように、比較基部161の全体を比較接着剤163が覆っており、ニップ部NPに対応する部分にも比較接着剤163が存在する。
【0039】
従来、定着パッドでは、定着ベルト31との摩擦を軽減するために、摺動シートに潤滑剤を含浸させているが、摺動シートに接着剤が浸透(含浸)していると、潤滑剤の保持力が悪くなる。これに対し、潤滑剤の塗布量を増やすことが考えられるが、それに伴って、摺動シートから潤滑剤が漏れてしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、部位によって潤滑剤の浸透力に差を付けることで、潤滑剤の塗布量を増やすことなく、ニップ部NP近傍に潤滑剤を留めるようにしている。
【0040】
図5Aは、本開示の第1実施形態の定着パッドを示す模式断面図であって、図5Bは、本開示の第1実施形態の定着パッドにおけるニップ部の位置を示す模式平面図である。 図5Aでは、図4Aと同様に、図面の見易さを考慮して、基部61および摺動シート62のハッチングを省略し、接着剤63をハッチングしている。なお、図5Aでは、接着剤63の存在を目立たせるために、接着剤63の厚みを増して、基部61と摺動シート62との間に隙間が空いているように示しているが、これに限定されず、接着剤63の厚みを減らして、基部61と摺動シート62とが接するようにしてもよい。
【0041】
本実施の形態の定着パッド60は、略直方体状の基部61と、基部61に固定された摺動シート62とで構成されている。基部61は、用紙の幅方向Wに沿う方向が、長手方向とされている。摺動シート62は、基部61に対し、接着剤63を用いて固定されている。
【0042】
基部61は、定着ベルト31の内側であって、加圧ローラ32に対向する基部押圧面61aと、基部押圧面61aの外縁から延びた基部側面61bとを有している。
【0043】
摺動シート62は、基部61のうち、基部押圧面61aと基部側面61bとを覆っている。摺動シート62は、潤滑剤が含浸されており、密度が低い第1摺動領域と、第1摺動領域よりも密度が高い第2摺動領域とを有する。第2摺動領域には、基部押圧面61aに固定される押圧面固定部62aと、基部側面61bに固定される側面固定部62bとが設けられている。接着剤63は、摺動シート62の一部に含浸されており、基部61と摺動シート62とが面する部分の一部を接着している。
【0044】
定着パッド60に対し、搬送方向Hおよび幅方向Wでの略中央に押し当てられるように、加圧ローラ32が配置されている。その結果、定着パッド60のうち、基部押圧面61aの略中央に対応する部分にニップ部NPが形成される。上述した第1摺動領域は、ニップ部NPを内包する位置に設けられ、第2摺動領域は、第1摺動領域の外周を取り囲む位置に設けられている。
【0045】
本実施の形態では、摺動シート62のうち、接着剤63によって基部61に固定されていない部分が第1摺動領域に対応し、接着剤63によって基部61に固定されている部分が第2摺動領域に対応する。摺動シート62は、基部押圧面61aに対し、搬送方向Hおよび幅方向Wでの略中央が、基部61に接着されない第1摺動領域(非接着部SEに対応)とされており、搬送方向Hおよび幅方向Wでの端部が、基部61に接着された第2摺動領域(押圧面固定部62a)とされている。また、摺動シート62は、基部側面61bを覆う部分(側面固定部62b)の全体が、基部61に接着されている。
【0046】
図5Bは、図4Bと同様に、定着パッド60から摺動シート62を取り外し、基部押圧面61aを見た状態を示している。図5Bに示すように、基部押圧面61aの外周部を接着剤63が覆っており、ニップ部NPに対応する部分は、接着剤63が存在しない非接着部SEとされている。非接着部SEは、ニップ部NPを内包しており、ニップ部NPよりも少し広い範囲となるように設定されている。このように、接着剤63を用いることで、摺動シート62と基部61とで接着する部分を自在に設定することができ、適切な箇所を固定することができる。
【0047】
摺動シート62は、接着剤63によって基部61に接着した後、焼成されている。このように、基部61と摺動シート62とを接着する接着剤63を焼成することで、より強固に摺動シート62を固定することができる。上述したように、摺動シート62は、繊維を織り込んでシート状に形成されており、焼成されると繊維が引き締まって、密度が高くなる。また、摺動シート62のうち、接着剤63を含浸した部分では、焼成された接着剤63によって隙間が埋められるので、第2摺動領域の密度を高くすることができ、第1摺動領域の密度と差を付けることができる。このように、摺動シート62の密度に差が設けられているので、ニップ部NP近傍に潤滑剤を多く含浸させて囲い込み、ニップ部NP近傍に潤滑剤を留めることができる。
【0048】
本実施の形態では、基部押圧面61aだけでなく、基部側面61bに対しても摺動シート62を固定しているので、定着ベルト31との摩擦力が、基部押圧面61aに沿った方向(搬送方向H)に加わっても、基部側面61bに抑えられ、摺動シート62がずれることを防止できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態に対し、定着パッド60の構造が異なっている。なお、第2実施形態は、図1ないし図5Aに示す第1実施形態と略同様の構成とされているので、説明を省略し、異なる点のみ説明する。
【0051】
図6は、本開示の第2実施形態の定着パッドを示す模式断面図である。
【0052】
第2実施形態では、接着剤63を用いず、固定部64によって、基部61と摺動シート62とが固定されている。本実施の形態において、摺動シート62は、基部61のうち、基部押圧面61aと基部側面61bとに加えて、基部押圧面61aの反対側の面まで回り込むように覆っている。固定部64は、例えば、ビス、鋲、巻込具や、基部61に設けられた引掛部などであって、基部押圧面61aの反対側の面において、基部61と摺動シート62を固定している。なお、これに限定されず、基部側面61bにおいて、基部61と摺動シート62を固定するようにしてもよい。図6では、基部61とは別に設けた固定部64を有する構造を示したが、これに限定されず、基部61自体に固定部64を設けた構造としてもよい。
【0053】
定着パッド60は、基部61と摺動シート62とを固定した後、摺動シート62の一部を加熱して焼成されている。具体的に、摺動シート62のうち、ニップ部NPを内包し、搬送方向Hおよび幅方向Wでニップ部NPよりも少し広い範囲が焼成されない非焼成部M1(第1摺動領域に対応)とされており、非焼成部M1以外の部分が、焼成された焼成部M2(第2摺動領域に対応)とされている。このように、固定部64を用いることで、基部61と摺動シート62とを強固に固定することができる。また、摺動シート62自体を焼成することで、第2摺動領域の密度を高くすることができ、第1摺動領域の密度と差を付けることができる。
【0054】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
17 定着装置
31 定着ベルト
32 加圧ローラ(加圧部材の一例)
60 定着パッド
61 基部
61a 基部押圧面
61b 基部側面
62 摺動シート
62a 押圧面固定部
62b 側面固定部
63 接着剤
64 固定部
M1 非焼成部
M2 焼成部
NP ニップ部
SE 非接着部
H 搬送方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6