(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163691
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】フロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 21/30 20060101AFI20231102BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20231102BHJP
C02F 11/147 20190101ALI20231102BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20231102BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D21/01 C ZAB
C02F11/147
G01B11/02 H
G01N21/17 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074758
(22)【出願日】2022-04-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日 令和3年12月15日 刊行物 TSK技報 No.24 P.16~23
(71)【出願人】
【識別番号】523183714
【氏名又は名称】月島JFEアクアソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】深澤 淳基
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真也
【テーマコード(参考)】
2F065
2G059
4D059
【Fターム(参考)】
2F065AA21
2F065AA26
2F065AA58
2F065FF04
2F065JJ26
2F065QQ04
2F065QQ08
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ26
2F065QQ31
2F065QQ42
2F065QQ43
2F065TT08
2G059AA01
2G059BB06
2G059DD04
2G059EE02
2G059FF01
2G059FF04
2G059KK04
2G059MM02
2G059MM05
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE26
4D059BE27
4D059BE55
4D059BE56
4D059BF02
4D059BH02
4D059DA24
4D059DB11
4D059EA01
4D059EA20
4D059EB06
4D059EB11
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】フロックの重なりを減らすために汚泥の濃度を希釈したり新たな装置を追加したりすることなく、後段の配管中より撮影が容易かつ、より凝集剤の調整を早期に行うことが可能な場所でフロックの状態を適切に制御することが可能なフロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析部と、前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、を備えるフロック状態制御装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析部と、
前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、
を備えるフロック状態制御装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記間隙の度合に対する数値解析によって得られる前記間隙の特徴量を示す特徴量情報に基づき、前記間隙の度合の適正を判定し、判定結果を前記分析結果として出力する、
請求項1に記載のフロック状態制御装置。
【請求項3】
前記分析部は、前記特徴量情報に基づき前記間隙の度合の適正を分類する分類モデルを用いて、前記分類モデルに対して前記特徴量情報を入力することで出力される分類結果に基づき、前記間隙の度合が適正であるか否かを判定する、
請求項2に記載のフロック状態制御装置。
【請求項4】
前記分析部は、前記数値解析によって前記間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率とを示す分類情報を取得し、前記分類情報を前記特徴量情報として前記分類モデルへ入力する、
請求項3に記載のフロック状態制御装置。
【請求項5】
前記分析部は、前記数値解析によって前記間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係を示すヒストグラムの画像を取得し、前記画像を前記特徴量情報として前記分類モデルへ入力する、
請求項3に記載のフロック状態制御装置。
【請求項6】
前記分析部は、前記間隙の度合として前記間隙の径の大きさを検出して分析する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項7】
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域とを判定する領域判定部、
をさらに備え、
前記分析部は、前記間隙の領域と判定された領域における前記間隙の度合を分析する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項8】
前記領域判定部は、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域との関係を機械学習した学習済みモデルを用いて、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域とを判定する、
請求項7に記載のフロック状態制御装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、セマンティックセグメンテーションを用いて、入力された凝集汚泥画像の各画素が間隙の領域又は間隙以外の領域のいずれであるかを判定するように機械学習を行ったモデルである、
請求項8に記載のフロック状態制御装置。
【請求項10】
前記凝集汚泥画像に基づき、オプティカルフローを用いて前記フロックの速度ベクトルを検出し、前記検出した速度ベクトルのベクトル値が所定の閾値未満となった際の凝集汚泥画像を取得する画像選定部、
をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項11】
前記薬注率制御部は、前記間隙の度合が目標の度合となるように前記凝集剤の薬注率を制御し、
前記目標の度合は、前記凝集混和槽の後段にある設備における運転効率が最大となるように設定される、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置。
【請求項12】
前記目標の度合は、前記汚泥の濃度に応じて設定される、
請求項11に記載のフロック状態制御装置。
【請求項13】
前記間隙の度合が前記目標の度合となるように、前記凝集混和槽へ送る前記汚泥を撹拌するミキサの回転数又は前記凝集混和槽にて前記凝集汚泥を撹拌する撹拌機の回転数のうち少なくとも一方の前記回転数を制御する回転数制御部、
をさらに備える請求項11に記載のフロック状態制御装置。
【請求項14】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥処理設備。
【請求項15】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥凝集設備。
【請求項16】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフロック状態制御装置を備える汚泥濃縮設備。
【請求項17】
凝集汚泥画像取得部が、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得過程と、
分析部が、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析過程と、
薬注率制御部が、前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御過程と、
を含むフロック状態制御方法。
【請求項18】
コンピュータを、
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得手段と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析手段と、
前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥等の被処理物の濃縮あるいは脱水を目的として固液分離装置が水処理場等の施設において用いられている。このような固液分離装置としては、例えば、汚泥に凝集剤が添加された被処理物を円筒状の濾過スクリーン内に供給し、濾過スクリーン内に配置されたスクリューを回転駆動させ被処理物を濾過して濾液を排出する濃縮装置がある。一般に、凝集剤を添加する量を増やすと、被処理物の固液分離が促進される傾向がある。
このような凝集剤の注入量を制御するにあたり、例えば、凝集混和槽等における汚泥を撮像し、その凝集された汚泥(例えばフロック)の形成状況(例えばフロックの面積)に応じて、凝集剤の注入量を制御する方法がある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、凝集混和槽から出た配管ラインで懸濁物質のフロックを撮影し、凝集汚泥の評価を行う技術が開示されている。当該技術では、例えば、脱水機の原液供給管に含まれる懸濁物質を撮像し、撮像した画像に写るフロックの2値画像から数回分のフロックの平均面積、あるいはフロック1個当たりの平均面積を算出し、当該平均面積とあらかじめ設定したフロックの基準面積とを比較することで凝集剤の注入量の適正値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、撮影した画像に写るフロックが他のフロックと重なっている場合には、各フロックの面積を正確に算出することができない。この場合、凝集剤の注入量が適切に算出されず、フロックの状態を適切に制御することができない。フロックの重なりを減らすために、汚泥の濃度を希釈することが考えられるが、希釈用の装置を別途設ける必要がある。あるいは、撮影した画像に写るフロックの重なりを減らすため、原液の配管ラインにテレビカメラを配設し、フロックの重なりが少なく、脈動のない適度な流速に下がる配管中でフロックの大きさを撮影する必要がある。
【0006】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、フロックの重なりを減らすために汚泥の濃度を希釈したり新たな装置を追加したりすることなく、後段の配管中より撮影が容易かつ、より凝集剤の調整を早期に行うことが可能な場所でフロックの状態を適切に制御することが可能なフロック状態制御装置、汚泥処理設備、汚泥凝集設備、汚泥濃縮設備、フロック状態制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフロック状態制御装置は、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析部と、前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る汚泥処理設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る汚泥凝集設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る汚泥濃縮設備は、フロック状態制御装置を備える。
【0011】
本発明の一態様に係るフロック状態制御方法は、凝集汚泥画像取得部が、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得過程と、分析部が、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析過程と、薬注率制御部が、前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御過程と、を含む。
【0012】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得手段と、前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析手段と、前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、汚泥の濃度を希釈したり新たな装置を追加したりすることなく、フロックの状態を適切に、かつ、より早期に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る汚泥処理設備の構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るPCの機能構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る凝集汚泥画像の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るヒストグラムの一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るヒストグラムの一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るヒストグラムの一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る凝集剤の薬注率と間隙面積の関係の一例を示す図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る間隙面積と加温効率の関係の一例を示す図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るPCにおける処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係る具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0016】
<1.汚泥処理設備の構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る汚泥処理設備の構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る汚泥処理設備の構成の一例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の汚泥処理設備は、例えば、凝集混和槽1、濃縮機2、脱水機3、カメラ10、PC(Personal Computer)20、及びPLC(Programmable Logic Controller)30を備える。汚泥処理設備には、汚泥凝集設備と汚泥濃縮設備が含まれている。汚泥凝集設備は、例えば、凝集混和槽1、カメラ10、PC20、及びPLC30を備える。汚泥濃縮設備は、例えば、凝集混和槽1、濃縮機2、カメラ10、PC20、及びPLC30を備える。
【0018】
(1)凝集混和槽1
凝集混和槽1は、例えば下水処理場から発生して供給された混合生汚泥等の下水汚泥のような汚泥Aに凝集剤Bを添加して凝集する設備である。
図1に示すように、凝集混和槽1には、高速ミキサ1Aから汚泥Aが供給される。高速ミキサ1Aには、凝集剤B(例えば高分子凝集剤)がポンプ1Bによって供給されて汚泥Aに添加、混合される。高速ミキサ1Aには、高速ミキサ1Aの中心軸に沿った回転軸1aに撹拌羽根1bが取り付けられ、上部にモーター1cが設けられている。高速ミキサ1Aでは、モーター1cによって回転軸1a及び撹拌羽根1bが回転することにより汚泥Aと凝集剤Bが撹拌され、混合される。
凝集混和槽1は、凝集剤Bと混合された汚泥Aが底部から供給されて保持される縦方向に延びる中心軸を有する有底円筒状の凝集槽1Cを備えている。この凝集槽1Cには、凝集槽1Cの中心軸に沿った回転軸1dに撹拌羽根1eが取り付けられて、凝集槽1Cの上部に設けられたモーター1fによって回転軸1d及び撹拌羽根1eが回転することにより汚泥Aと凝集剤Bを撹拌、混合する撹拌手段1Dが設けられている。この撹拌手段1Dによって凝集剤Bと撹拌、混合されて凝集したフロックを含む凝集汚泥Cは、凝集槽1Cの上部から抜き出されて濃縮機2に供給される。
【0019】
(2)濃縮機2
濃縮機2は、凝集混和槽1によって固形分がある程度凝集した凝集汚泥Cを濃縮する設備である。本実施形態における濃縮機2は縦型濾過濃縮機であって、凝集混和槽1から供給された凝集汚泥Cが保持される、凝集槽1Cと同様の縦方向に延びる中心軸を有する有底円筒状の濃縮槽2Aを備えており、凝集汚泥Cは濃縮槽2Aの上部から濃縮槽2A内に供給される。ただし、この濃縮槽2Aの胴部はウェッジワイヤーやパンチングメタル等によって形成された濃縮濾過スクリーン2aとされるとともに、この濃縮濾過スクリーン2aの外周はジャケット状の濾液室2bとされている。
【0020】
また、この濃縮槽2Aには、濃縮槽2Aの中心軸に沿った回転軸2cにスクリュー2dが取り付けられて、濃縮槽2Aの上部に設けられたモーター2eによって回転軸2c及びスクリュー2dが回転することにより凝集汚泥Cを搬送する搬送手段2Bが設けられている。濃縮槽2Aの上部から供給された凝集汚泥Cは、この搬送手段2Bによって下方に搬送されつつ、濃縮濾過スクリーン2aによって水分が分離されて濃縮され、濃縮槽2Aの底部から抜き出されて濃縮汚泥Dとして濃縮汚泥供給路4に供給される。
【0021】
なお、この濃縮槽2Aと上記凝集槽1Cの底部は、下方に向かうに従い縮径する円錐台状に形成されている。また、濃縮濾過スクリーン2aによって凝集汚泥Cから分離された水分は濾液室2bに収容され、返流水Eとして処理される。
【0022】
さらに、本実施形態では、上記濃縮機2に、50℃以上100℃未満の範囲の温度、望ましくは60℃以上90℃以下の範囲の温度の濃縮温水Fがポンプ2Cによって供給されて、凝集混和槽1から供給された凝集汚泥Cと混合される。濃縮機2には、例えば、図示されない濃縮温水供給手段によって濃縮温水Fが供給されてもよいし、脱水機3の排水管3Hから排出される排水Jが濃縮温水Fとして供給されてもよい。
【0023】
ここで、濃縮機2の搬送手段2Bの回転軸2cは中空の円筒状とされるとともに、この回転軸2cの円筒壁部には多数(複数)の貫通孔が形成されている。そして、濃縮温水Fは、回転軸2cの下端から回転軸2c内に供給されて上記貫通孔から噴出させられ、凝集混和槽1から濃縮槽2A内に供給されて保持された凝集汚泥Cに供給されて混合される。これにより、本実施形態では、この濃縮機2において凝集汚泥Cが加熱されて蛋白質が熱変性し、保水されていた水分が分離して濃縮温水Fとともに返流水Eとして排出され、濃縮汚泥Dが所定の濃度に濃縮される。
【0024】
こうして濃縮された濃縮汚泥Dが供給される濃縮汚泥供給路4には、濃縮汚泥Dを脱水機3に送り出すポンプ4Aが設けられているとともに、このポンプ4Aと脱水機3との間には高速ミキサ4Bが設けられている。この高速ミキサ4Bには、ポリ硫酸第二鉄(PFS)等の無機凝集剤や高分子凝集剤のような凝集剤Gがポンプ4Cによって供給されて濃縮汚泥Dに添加、混合される。
【0025】
(3)脱水機3
脱水機3は、濃縮機2によって濃縮され、凝集剤Gが添加、混合された濃縮汚泥Dを脱水する設備である。脱水機3においては、ケーシング3A内に濃縮汚泥Dを濾過する濾過スクリーン3Bが配置されており、この濾過スクリーン3Bによって分けられたケーシング3A内の複数の空間のうち、第1の空間3A1に濃縮汚泥Dが供給される。本実施形態における脱水機3は、縦型のスクリュープレスであって、しかもケーシング3Aと同軸の縦方向に延びる軸線を中心とした円筒状又は円錐状をなしてケーシング3A内に配設される第2の上記濾過スクリーン3Bとしての内濾過スクリーン3aを備えている。また、脱水機3は、内濾過スクリーン3aと同軸の円筒状又は円錐状をなして内濾過スクリーン3aの外側に間隔をあけてケーシング3A内に配設される外濾過スクリーン3bを備えている。また、脱水機3は、上記軸線回りに捩れる螺旋状をなして内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bとの間に収容され、モーター3cによって上記軸線を中心に内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bに対して相対的に回転させられるリボンスクリュー3dを備えている。
【0026】
そして、これら内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bとの間の空間が上記第1の空間3A1とされて濃縮汚泥Dが供給されるとともに、内濾過スクリーン3aの内側の空間と外濾過スクリーン3bの外側のケーシング3A内の空間とが第2の空間3A2とされている。この第2の空間3A2には、図示されない脱水温水供給手段から、50℃以上100℃未満の範囲、望ましくは60℃以上90℃以下の範囲の温度の脱水温水Hがポンプ3Pにより供給される。なお、これら内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bも、ウェッジワイヤーやパンチングメタル等によって形成される。
【0027】
ケーシング3Aは上記軸線を中心とした有底円筒状である。濃縮汚泥Dは、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bの底部を連結する円環板状の連結板3eに接続された供給管3fを介して、上記第1の空間3A1にケーシング3Aの底部から供給される。供給された濃縮汚泥Dは、リボンスクリュー3dの相対的な回転によって上方に搬送されながら、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bによって水分が分離される。
【0028】
また、ケーシング3A内の上部には、円環板状の基板3Cが配設されて、外濾過スクリーン3bは、この基板3Cの内周部に取り付けられて固定される。さらに、この基板3Cよりも上方のケーシング3Aの上部開口部には蓋体3Dが配設され、内濾過スクリーン3aは、この蓋体3Dに取り付けられて固定されるとともに、上記モーター3cは、この蓋体3D上に配置され、内濾過スクリーン3aの上部を覆う円筒状のスクリュー支持体を介してリボンスクリュー3dを回転させる。なお、本実施形態では、このように内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bがケーシングに固定されて、リボンスクリュー3dがモーター3cにより回転されるが、逆にリボンスクリュー3dを固定して内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bを回転させてもよく、リボンスクリュー3dと内濾過スクリーン3a及び外濾過スクリーン3bとを互いに逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0029】
さらに、これら基板3Cと蓋体3Dの間のケーシング3A内における上部の空間は排出室3Eとされるとともに、この排出室3Eにおける第1の空間3A1の円環状の上部開口部は排出口3Fとされる。この排出口3Fには、外周側に向かうに従い上方に向かう上記軸線を中心とした円錐台状の外周面を有する圧搾リング3Gが配設されている。リボンスクリュー3dによって第1の空間3A1を上方に搬送されつつ水分が分離して濃縮汚泥Dから脱水された脱水汚泥Iは、排出口3Fから圧搾リング3Gにより圧搾されながら排出室3Eに流出して排出される。
【0030】
また、脱水温水Hも、本実施形態ではケーシング3A底部からケーシング3A内の第2の空間3A2に供給される。こうして第2の空間3A2に供給された脱水温水Hは、第1の空間3A1内の濃縮汚泥Dを加熱し、これによって濃縮汚泥Dの蛋白質が熱変性することにより保水されていた水分が分離し、内濾過スクリーン3aと外濾過スクリーン3bによって濾過されて、濃縮汚泥Dを加熱することにより冷却された脱水温水Hとともに、第2の空間3A2から立ち上げられた排水管3Hから排水Jとして排出される。
【0031】
(4)カメラ10
カメラ10は、凝集槽1Cにて凝集剤Bによって汚泥Aが凝集されたフロックを含む凝集汚泥Cを撮像した画像(静止画像又は動画像)を取得する。カメラ10は、PC20と通信可能に接続されており、撮像した凝集汚泥Cの画像(以下、「凝集汚泥画像」とも称される)をPC20へ送信する。
カメラ10が設けられる位置は、凝集汚泥Cを撮像可能であれば任意の位置であってよい。例えば、カメラ10は、
図1に示すように凝集槽1Cの上部に凝集槽1Cの内部を撮像可能に設けられる。なお、カメラ10が設けられる位置は凝集槽1Cの上部に限定されない。また、カメラ10は、凝集槽1Cの内部を撮像可能であれば、凝集槽1Cの内側に設けられてもよいし、凝集槽1Cの外側に設けられてもよい。さらに、カメラ10は、凝集槽1Cに設けられた撹拌手段1Dの撹拌羽根1eが定点の位置にあるときを撮影タイミングとして凝集汚泥Cを撮像するようにしてもよい。この場合には、例えば、凝集槽1Cに設けられた撹拌手段1Dの撹拌羽根1eがカメラ10の撮影位置を通過した直後に撮影することにより、フロックが静止、あるいは、フロックの動きが緩慢である状態の画像を撮影しやすくなる。
【0032】
(5)PC20
PC20は、凝集混和槽1にて形成される凝集汚泥Cにおけるフロックの状態を制御する装置であり、フロック状態制御装置の一例である。フロック状態制御装置は、例えばサーバ装置であってもよい。
PC20は、カメラ10が撮像した凝集汚泥画像をカメラ10から受信する。本実施形態に係るPC20は、一例として、カメラ10から受信した凝集汚泥画像に基づき、フロックの状態を判定し、制御する。例えば、PC20は、凝集汚泥画像から評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合を分析することで、フロックの状態を判定する。評価対象領域は、凝集汚泥画像において評価の対象となる領域であって、凝集汚泥画像が示す領域の全体であってもよいし、凝集汚泥画像が示す領域の一部であってもよい。間隙の度合は、評価対象領域に生じている間隙の程度を示す情報である。例えば、間隙の度合は、間隙の面積、間隙の径(直径又は半径)、間隙の大きさ(幅、最大長)、間隙の数などである。
【0033】
PC20は、得られた凝集汚泥画像から間隙の度合を検出し、この間隙の度合に対して数値解析を行うことで、間隙の特徴量を示す情報(以下、「特徴量情報」とも称される)を取得する。特徴量情報は、例えば、間隙の平均面積、間隙の径分布、間隙の数に基づく算出値、間隙の度合を階級ごとに分類した情報(以下、「分類情報」とも称される)、分類情報をヒストグラムで示した画像(以下、「ヒストグラム画像」とも称される)などを示す。
間隙の平均面積は、検出された間隙の面積の平均を示す面積である。
間隙の径分布は、例えば、最頻径(モード径)、中央径(メディアン径)、平均径などである。最頻径は、検出された間隙の径(直径又は半径)のうち、一番出現頻度の高い径である。中央径は、検出された間隙の径(直径又は半径)の累積頻度が50%となる径である。平均径は、検出された間隙の径(直径又は半径)の平均を示す径である。
間隙の数に基づく算出値は、例えば、検出された間隙の数によって算出される値である。
分類情報は、数値解析によって間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率とを示す情報である。各階級に対応する度数は、例えば、各階級に分けられた特徴量の数である。また、各階級に対応する比率は、各階級に分けられた特徴量の数の比率である。
ヒストグラム画像は、数値解析によって間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係を示すヒストグラムの画像である。
PC20は、算出した間隙の特徴量に基づき、間隙の度合の適正を判定し、フロックの状態を判定する。
【0034】
PC20は、PLC30と通信可能に接続されている。PC20は、フロックの状態を制御するための制御信号をPLC30へ送信する。本実施形態に係るPC20は、一例として、ポンプ1Bの回転数を制御する信号、又は、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する信号をPLC30へ送信する。
ポンプ1Bの回転数を制御することで、ポンプ1Bから高速ミキサ1Aへ供給される凝集剤Bの量を制御することができる。これにより、汚泥Aに添加される凝集剤Bの薬注率を制御することができる。なお、薬注率は、凝集剤の添加割合であり、汚泥の固形物重量に対する凝集剤の固形物重量である。
高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御することで、高速ミキサ1Aの回転軸1a及び撹拌羽根1bの回転を制御することができる。これにより、高速ミキサ1Aにおける汚泥Aと凝集剤Bの混合具合を制御することができる。
【0035】
なお、別の実施形態として、PC20は、撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御する信号をPLC30へ送信するようにしてもよい。撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御することで、撹拌手段1Dの回転軸1d及び撹拌羽根1eの回転を制御することができる。これにより撹拌手段1Dにおける汚泥Aと凝集剤Bの混合具合を制御することができる。
【0036】
(6)PLC30
PLC30は、制御対象の動作を制御する装置である。PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、制御対象の動作を制御する。制御信号には、例えば、各制御対象の制御量を示す制御値が含まれる。制御対象は、例えば、ポンプ1Bと高速ミキサ1Aのモーター1cである。制御対象がポンプ1Bの場合、PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、ポンプ1Bの回転数を制御する。また、制御対象が高速ミキサ1Aのモーター1cである場合、PLC30は、PC20から受信する制御信号に基づき、高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する。
【0037】
<2.PCの機能構成>
以上、
図1を参照して、汚泥処理設備の構成について説明した。続いて、
図2から
図10を参照して、PC20の機能構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係るPC20の機能構成の一例を示す図である。
図2に示すように、PC20は、入力部210、通信部220、記憶部230、出力部
240、及び制御部250を備える。
【0038】
(1)入力部210
入力部210は、ユーザによる入力を受け付ける機能を有する。入力部210は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置によって実現される。当該入力装置は、PC20がハードウェアとして予め備える装置であってもよいし、PC20に外部接続される装置であってもよい。
【0039】
(2)通信部220
通信部220は、各種情報の送受信を行う機能を有する。例えば、通信部220は、カメラ10から凝集汚泥画像を受信する。また、通信部220は、制御信号をPLC30へ送信する。
【0040】
(3)記憶部230
記憶部230は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部230は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、NAS(Network Attached Storage)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0041】
(4)出力部240
出力部240は、各種情報を出力する機能を有する。出力部240は、例えば、ディスプレイ等の表示装置などによって実現される。当該表示装置は、PC20がハードウェアとして予め備える装置であってもよいし、PC20に外部接続される装置であってもよい。
【0042】
(5)制御部250
制御部250は、PC20全般の動作を制御する機能を有する。制御部250は、例えば、PC20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部250は、凝集汚泥画像取得部251、画像選定部252、領域判定部253、分析部254、薬注率制御部255、及び回転数制御部256を備える。
【0043】
(5-1)凝集汚泥画像取得部251
凝集汚泥画像取得部251は、凝集汚泥画像を取得する機能を有する。例えば、凝集汚泥画像取得部251は、カメラ10が撮像してPC20へ送信し、PC20の通信部220が受信した凝集汚泥画像を取得する。
【0044】
ここで、
図3から
図5を参照して、フロックの状態と、フロック間に生じる間隙の度合との関係について説明する。
図3から
図5は、凝集汚泥画像の一例を示す図である。
図3から
図5には、一例として、間隙の度合が間隙の面積であり、特徴量が間隙の平均面積である例が示されている。
【0045】
図3には、各間隙の面積の平均値が150である凝集汚泥画像40が示されている。凝集汚泥画像40に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙41である。
図4には、各間隙の面積の平均値が600である凝集汚泥画像50が示されている。凝集汚泥画像50に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙51である。
図5には、各間隙の面積の平均値が1000である凝集汚泥画像60が示されている。凝集汚泥画像60に写る凝集汚泥に生じている間隙は、例えば、間隙61である。
【0046】
図3から
図5では、凝集汚泥画像40、凝集汚泥画像50、凝集汚泥画像60の順に、凝集剤の注入量が多くなっている。凝集汚泥画像40、凝集汚泥画像50、及び凝集汚泥画像60をそれぞれ比較すると、凝集剤の注入量を上げると、各間隙の面積の平均値が大きくなり、凝集剤の注入量を下げると各間隙の面積の平均値が小さくなっていることが分かる。これより、フロックの面積ではなく間隙の面積(以下、「間隙面積」とも称される)に基づき、フロックの状態の良し悪しを判定することができる。
また、
図3から
図5では、間隙の径については、凝集剤の注入量を上げると各間隙の径が大きくなり、凝集剤の注入量を下げると各間隙の径が小さくなっていることが分かる。間隙の数については、凝集剤の注入量を上げると間隙の数が少なくなり、凝集剤の注入量を下げると間隙の数が多くなっていることが分かる。これより、フロックの径や数ではなく間隙の径(以下、「間隙径」とも称される)又は間隙の数(以下、「間隙数」とも称される)に基づき、フロックの状態の良し悪しを判定することもできる。
フロックが他のフロックと重なっている場合には、フロックの度合(面積、径、数など)を正確に算出することができない。不正確なフロックの度合を用いると、フロックの状態を正確に把握することもできない。一方、間隙の度合はフロックの重なり等の影響を受けることがないため、1つ1つの間隙の度合を精度高く算出することができる。よって、フロックの度合ではなく間隙の度合を用いることで、フロックの状態の把握や制御をより精度高く行うことができる。
【0047】
(5-2)画像選定部252
画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像から、フロックの状態の制御により適した画像を選定する機能を有する。例えば、画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像に対して、オプティカルフロー(OF)を使用し、フロックの速度ベクトルを検出するための画像処理を行う。そして、画像選定部252は、オプティカルフローによるフロックの速度ベクトルの検出結果に応じて、凝集汚泥画像を選定する。
【0048】
具体的に、画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集混和槽1内の凝集汚泥画像(複数の静止画像あるいは動画像)からオプティカルフローを使用しフロックの速度ベクトル(即ちフロックの動き)を検出し、検出したフロックの速度ベクトルのベクトル値が所定の閾値未満となった際の凝集汚泥画像を取得する。ベクトル値は、例えば、検出した複数の速度ベクトルのx成分又はy成分の合計値である。他にも、速度ベクトルの大きさ(絶対値)であってよく、また、速度ベクトルのx成分又はy成分の合計値だけでなく、平均値であってもよい。所定の閾値は、例えば、凝集混和槽1内におけるフロックが静止していると判定できる値、あるいは、フロックの動きが緩慢であると判定できる値であることが好ましい。
【0049】
かかる構成により、画像選定部252は、フロックが静止している時の凝集汚泥画像あるいはフロックの動きが緩慢である時の凝集汚泥画像を選定して取得することができる。即ち、画像選定部252は、凝集混和槽1における撹拌の影響により汚泥が流動的であり鮮明でない凝集汚泥画像を排除することができる。
これにより、PC20は、フロックの状態を制御するにあたり、フロックがより鮮明である凝集汚泥画像を用いることができるため、フロックが鮮明でない凝集汚泥画像を用いる場合と比較してフロックの状態の制御の精度を高めることができる。
【0050】
(5-3)領域判定部253
領域判定部253は、凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域とを判定する機能を有する。例えば、領域判定部253は、機械学習モデルを用いて、画像選定部252によって取得された凝集汚泥画像の評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域とを判定する。当該機械学習モデルは、凝集汚泥画像の評価対象領域における間隙の領域と間隙以外の領域との関係を機械学習した学習済みモデルである。
【0051】
領域判定部253が用いる機械学習モデルは、例えば、セマンティックセグメンテーション(SS)を用いて、入力された凝集汚泥画像の各画素が間隙の領域又は間隙以外の領域のいずれであるかを判定するように機械学習を行った学習済みモデルである。当該学習済みモデルは、例えば、予め人が「間隙の領域」と「間隙以外の領域」を別々の色で塗った画像を教師データとして用いる。当該モデルは、原画像から教師データと同じように「間隙の領域」と「間隙以外の領域」を分類できるニューラルネットワークモデルを機械学習の手法によって学習し、分類するための特徴量を自動抽出して作成する。
【0052】
領域判定部253は、セマンティックセグメンテーションを用いて機械学習を行った学習済みモデルに対して画像選定部252が取得した凝集汚泥画像を入力する。学習済みモデルは、入力された凝集汚泥画像の各画素を「間隙の領域」又は「間隙以外の領域」のいずれかに分類した結果を出力する。領域判定部253は、学習済みモデルが出力した結果を判定結果として取得する。
【0053】
なお、領域判定部253は、上述の学習済みモデルを用いず、2値化などの画像処理によって凝集汚泥画像の各画素を「間隙の領域」又は「間隙以外の領域」のいずれかに分類してもよい。また、領域判定部253は、凝集汚泥画像に対して、ガウシアンフィルタによる前処理を行ってもよい。
【0054】
(5-4)分析部254
分析部254は、凝集汚泥画像に基づき、間隙の度合を分析する機能を有する。例えば、分析部254は、画像選定部252によって取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合を分析する。具体的に、分析部254は、領域判定部253が取得した判定結果に基づき、凝集汚泥画像において間隙の領域と判定された領域における間隙の度合を分析する。一例として、分析部254は、間隙面積の大きさ、間隙径(直径又は半径)の大きさ、間隙数などを検出して分析する。
なお、分析部254は、複数の間隙が連続している場合、複数の間隙を1つの間隙とみなして、間隙の度合を検出する。
【0055】
分析部254は、検出した間隙の度合に対する数値解析によって得られる間隙の特徴量情報に基づき、間隙の度合の適正を判定し、判定結果を分析結果として出力する。例えば、分析部254は、間隙の特徴量情報に基づき間隙の度合の適正を分類する分類モデルを用いて、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。当該分類モデルは、例えば、間隙の特徴量情報と間隙の度合の適正との関係を機械学習によって学習した学習済みモデルである。分析部254が用いる分類モデルは、例えば、サポートベクターマシン(SVM)やランダムフォレストなどによって機械学習を行ったモデルである。
分析部254は、当該分類モデルに対して特徴量情報を入力することで出力される分類結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
【0056】
例えば、分析部254が間隙の平均面積を特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力された間隙の平均面積に基づき、間隙の度合(この場合は面積)が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、分析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
また、分析部254が分類情報を特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力された分類情報に基づき、間隙の度合の各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、分析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
また、分析部254がヒストグラム画像を特徴量情報として分類モデルへ入力したとする。この場合、分類モデルは、入力されたヒストグラム画像が示すヒストグラムの形に基づき、間隙の度合の各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係が適正であるか否かを示す判定結果を出力する。そして、分析部254は、分類モデルから出力された判定結果に基づき、間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
【0057】
なお、分析部254は、間隙の度合のうち、度合の大きい順に少なくとも1つの度合(例えば最大値)又は度合の小さい順に少なくとも1つの度合(例えば最小値)を除いてから、間隙の度合に対する数値解析を行ってもよい。複数の間隙が連続している場合、分析部254は、複数の間隙を1つの間隙とみなした上で、間隙の度合の大きさに順位付けを行う。そして、分析部254は、順位付けした間隙の度合のうち上位にあるものと下位にあるものを除外して、間隙の度合に対する数値解析を行う。例えば、間隙の度合が間隙面積である場合、分析部254は、複数の間隙の各々の面積のうち、最大の面積と最小の面積を除外してから、間隙の平均面積を特徴量として算出する。
これにより、分析部254は、凝集汚泥を撮像した際のノイズ(例えば汚泥中のごみや泡など)や揺らぎ(例えば撹拌の影響など)に起因する判定の誤差を減らすことができる。
【0058】
また、分析部254は、分類モデルを用いずに、間隙の度合が適正であるか否かを判定してもよい。例えば、分析部254は、間隙の度合が適正であるか否かを判定する基準となる閾値と特徴量情報が示す値との比較によって、間隙の度合が適正であるか否かを判定してもよい。
当該閾値は、例えば、汚泥処理設備の過去の運転実績に基づきユーザによって適正な値が設定される。特徴量情報が示す値は撹拌速度や汚泥の濃度などにより変化する。これにより、適正な薬注量(薬注率)と各値との関係も変化する。そのため、ユーザは、各装置(槽の大きさ、撹拌装置の形状など)にて実際に運転(試運転など)を行うことで、薬注量が適正となる、適正な閾値の検討を行う。
【0059】
ここで、
図6から
図8を参照して、分類情報とヒストグラムの関係について説明する。
図6から
図8は、本発明の実施形態に係るヒストグラムの一例を示す図である。
図6から
図8に示すグラフ(ヒストグラム)の横軸は階級を示し、縦軸は度数を示している。
図6から
図8では、一例として、間隙の度合が間隙の半径であり、横軸の階級は間隙の半径の大きさによる階級を示し、縦軸の度数は各階級に分けられた半径の数(即ち間隙数)を示しているものとする。
【0060】
図6には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が165個であり、平均半径が9.9であり、半径の大きさの上位3個が42.6、33.7、33.1である場合のヒストグラムが示されている。
図7には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が71個であり、平均半径が10.3であり、半径の大きさの上位3個が37.0、34.5、33.6である場合のヒストグラムが示されている。
図8には、凝集汚泥画像の評価対象領域にて検出された間隙数が179個であり、平均半径が7.9であり、半径の大きさの上位3個が30.4、25.6、21.9である場合のヒストグラムが示されている。
【0061】
図6から
図8に示すヒストグラムと分類モデルを用いて、間隙の度合が適正であるか否かの判定を実際に行った結果、
図6のヒストグラムに関する間隙の度合は適正であり、
図7及び
図8のヒストグラムに関する間隙の度合は適正でないと判定された。
図7のヒストグラムでは間隙数が71個であり、間隙の度合が適正であると判定された
図6のヒストグラムの間隙数165個と比較して明らかに少ない。
図8のヒストグラムでは平均半径が7.9であり、間隙の度合が適正であると判定された
図6のヒストグラムの平均半径9.9と比較して明らかに小さい。上位3個の半径の大きさについても同様である。
以上より、分類モデルは、
図6のヒストグラムに関する間隙の度合が適正であることを正とした場合、
図7と
図8のヒストグラムに関する間隙の度合の適正判定を正しく行えている。
【0062】
(5-5)薬注率制御部255
薬注率制御部255は、間隙の度合の分析結果に基づき、凝集剤の薬注率を制御する機能を有する。例えば、薬注率制御部255は、分析部254によって間隙の度合が適正でないと判定された場合、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率と間隙の度合の関係から、間隙の度合を目標の度合に近づけるためのポンプ1Bの回転数を決定する。そして、薬注率制御部255は、決定したポンプ1Bの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0063】
ここで、
図9を参照して、凝集剤の薬注率と間隙の度合の関係について説明する。
図9は、本発明の実施形態に係る凝集剤の薬注率と間隙面積の関係の一例を示す図である。
図9では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。
図9に示すグラフの横軸は凝集剤の薬注率(%)を示し、縦軸は間隙面積を示している。
図9に示すグラフより、薬注率が上昇するにつれて間隙面積も大きくなっていることが分かる。しかしながら、凝集剤の薬注率がある程度上昇すると、それ以上凝集剤の薬注率が上昇した場合には間隙面積が小さくなっていることが分かる。これは、過薬注によりフロックが分散してフロック径が小さくなったものと推測される。
【0064】
薬注率制御部255は、
図9に示したような凝集剤の薬注率と間隙面積の関係に基づき、間隙面積が目標面積となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、
図9に示すように、目標面積が1300に設定されているとする。間隙面積が1300よりも小さい場合、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を上昇させることで間隙面積を目標面積に近づけることができる。一方、間隙面積が1300よりも大きい場合、薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を上昇させることで間隙面積を目標面積に近づけてもよいし、凝集剤の薬注率を低下させることで間隙面積を目標面積に近づけてもよい。
【0065】
ここで、目標の度合の設定について説明する。例えば、目標の度合は、凝集混和槽1の後段にある設備における運転効率を考慮して設定される。一例として、目標の度合は、運転効率が最大となるように設定される。
凝集混和槽1の後段の設備は、例えば
図1に示す濃縮機2である。濃縮機2が一般的な濃縮機である場合、運転効率は濃縮機2における濃縮効率である。濃縮機2が加温濃縮機である場合、運転効率は濃縮機2における加温効率である。加温効率は、例えば、以下の(1)式によって算出される。
加温効率(%)=ΔTact/ΔTide×100 …(1)
上記(1)式において、
ΔTact=濃縮汚泥温度-原汚泥温度 …(2)
ΔTide=(T1×Q1+T2×Q2)/(Q1+Q2) …(3)
であり、上記(3)式において、T1は原汚泥温度(凝集汚泥温度)、T2は温水温度、Q1は濃縮汚泥流量、Q2は温水流量である。
【0066】
ここで、
図10を参照して、間隙の度合と加温効率の関係について説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る間隙面積と加温効率の関係の一例を示す図である。
図10では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。
図10に示すグラフの横軸は間隙面積を示し、縦軸は加温効率(%)を示している。
図10に示す各グラフの傾向より、間隙面積が大きくなるにつれて加温効率が上昇する傾向にあることが分かる。しかしながら、間隙面積がある程度大きくなると、それ以上間隙面積が大きくなった場合には加温効率が低下する傾向にあることが分かる。これは即ち、フロックが大きすぎても加温効率が低下することがあるといえる。
【0067】
薬注率制御部255は、
図10に示したような間隙の度合と加温効率の関係に基づき、間隙の度合が加温効率の最大となる度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。例えば、
図10に示すグラフの例では、間隙面積が1250前後で加温効率が最大となる。即ち、目標面積が1250前後に設定される。そして、薬注率制御部255は、間隙面積が目標面積である1250前後に近づくように、
図9の例の場合と同様にして凝集剤の薬注率を制御する。
【0068】
また、目標の度合は、汚泥の濃度に応じて設定されてもよい。例えば、薬注率制御部255は、汚泥の濃度に応じた目標の度合を設定し、間隙の度合が当該目標の度合に近づくように凝集剤の薬注率を制御する。これにより、フロックの状態を制御するために、汚泥の濃度を調整する必要がなくなる。即ち、汚泥を希釈したり新たな装置を追加したりして汚泥の濃度を調整することなく、フロックの状態を制御することができる。
【0069】
(5-6)回転数制御部256
回転数制御部256は、回転数を制御する機能を有する。例えば、回転数制御部256は、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集混和槽1へ送る汚泥を撹拌するミキサの回転数又は凝集混和槽1にて凝集汚泥を撹拌する撹拌機の回転数のうち少なくとも一方の回転数を制御する。
【0070】
例えば、回転数制御部256は、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集混和槽1へ送る汚泥を撹拌する高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する。例えば、回転数制御部256は、モーター1cの回転数と間隙の度合との関係から、間隙の度合を目標の度合に近づけるためのモーター1cの回転数を決定する。そして、回転数制御部256は、決定したモーター1cの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0071】
また、回転数制御部256は、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集混和槽内の汚泥を撹拌する撹拌手段1Dのモーター1fの回転数を制御してもよい。この場合、例えば、回転数制御部256は、モーター1fの回転数と間隙の度合との関係から、間隙の度合を目標の度合に近づけるためのモーター1fの回転数を決定する。そして、回転数制御部256は、決定したモーター1fの回転数を示す制御信号を、通信部220からPLC30へ送信する。
【0072】
なお、本実施形態では、間隙の度合を目標の度合に近づけるために、回転数制御部256による制御よりも薬注率制御部255による制御を優先的に行う。これは、薬注率を先に制御する方が時間的な効率が良く、フロック状態を変化させやすいためである。薬注率制御部255による制御のみで間隙の度合を目標の度合に近づけることができた場合、回転数制御部256は、制御を行わなくてもよい。一方、薬注率制御部255による制御のみで間隙の度合を目標の度合に近づけることができない場合、回転数制御部256は、制御を行う。
【0073】
<3.処理の流れ>
以上、
図2から
図10を参照して、PC20の機能構成について説明した。続いて、
図11を参照して、PC20における処理の流れについて説明する。
図11は、本発明の実施形態に係るPC20における処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図11には、一例として、回転数制御部256が高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する例が示されている。
【0074】
図11に示すように、まず、PC20の凝集汚泥画像取得部251は、カメラ10が撮像してPC20へ送信し、PC20の通信部220が受信した凝集汚泥画像を取得する(ステップS101)。
【0075】
次いで、PC20の画像選定部252は、凝集汚泥画像取得部251が取得した凝集汚泥画像に対して、オプティカルフローを使用しフロックの速度ベクトルを検出するための画像処理を行う(ステップS102)。
フロックの速度ベクトルの検出後、画像選定部252は、フロックの速度ベクトルの検出結果に応じて、凝集汚泥画像を選定する(ステップS103)。
【0076】
次いで、PC20の領域判定部253は、機械学習モデルを用いて、画像選定部252が取得した凝集汚泥画像における間隙の領域と間隙以外の領域を判定する(ステップS104)。
【0077】
次いで、PC20の分析部254は、間隙の度合の分析を行う(ステップS105)。具体的に、分析部254は、領域判定部253による判定結果に基づき、凝集汚泥画像において間隙の領域と判定された領域における間隙の度合を検出する。
【0078】
次いで、分析部254は、間隙の特徴量の解析を行う(ステップS106)。具体的に、分析部254は、分析によって検出した間隙の度合に対する数値解析によって、間隙の特徴量を示す特徴量情報を取得する。
【0079】
次いで、分析部254は、間隙の度合の適正判定を行う(ステップS107)。具体的に分析部254は、解析によって得られた間隙の特徴量情報を分類モデルへ入力し、分類モデルから出力される判定結果から間隙の度合が適正であるか否かを判定する。
【0080】
次いで、分析部254は、間隙の度合の適正の判定結果を確認する(ステップS108)。間隙の度合が適正である場合(ステップS108/YES)、薬注率を制御する必要はない。そのため、PC20は、処理をステップS101へ戻し、次に取得される凝集汚泥画像について処理を繰り返す。一方、間隙の度合が適正でない場合(ステップS108/NO)、PC20は、処理をステップS109へ進める。
【0081】
処理がステップS109へ進んだ場合、PC20の薬注率制御部255は、凝集剤の薬注率を制御する(ステップS109)。具体的に、薬注率制御部255は、間隙の度合が目標の度合となるように、凝集剤の薬注率を制御する。
【0082】
薬注率の制御後、PC20は、間隙の度合が目標の度合に近づいて適正となったか否かを確認する(ステップS110)。間隙の度合が適正となった場合(ステップS110/YES)、高速ミキサ1Aを制御する必要はない。そのため、PC20は、処理をステップS101へ戻し、次に取得される凝集汚泥画像について処理を繰り返す。一方、間隙の度合が適正とならなかった場合(ステップS110/NO)、PC20は、処理をステップS111へ進める。
【0083】
処理がステップS111へ進んだ場合、回転数制御部256は、高速ミキサ1Aを制御する(ステップS111)。具体的に、回転数制御部256は、間隙の度合が目標の度合となるように高速ミキサ1Aのモーター1cの回転数を制御する。
高速ミキサ1Aの制御後、PC20は、処理をステップ101へ戻し、次に取得される凝集汚泥画像について処理を繰り返す。
【0084】
<4.具体例>
以上、
図11を参照して、PC20における処理の流れについて説明した。続いて、
図12を参照して、具体例について説明する。
図12は、本発明の実施形態に係る具体例を示す図である。
図12では、一例として、間隙の度合が間隙面積である例が示されている。
【0085】
図12には、間隙面積が目標面積となるように薬注率を制御した際の、間隙面積と薬注率の時系列変化と、当該時系列変化に対応する加温効率の時系列変化の実測値が示されている。目標面積は、1250±100と設定されている。
図12に示すように、間隙面積が1250±100となるように薬注率を制御した結果、14:50~15:50までの結果が示すように、薬注率は0.40%~0.41%の範囲となり、加温効率は平均113%と高い水準を維持した。
また、薬注率の制御を行わず濃度変動により薬注率が0.37%まで低下したことを想定した実験も行った結果、15:55~16:20までの結果が示すように、間隙面積は800程度まで落ち込み、加温効率は100%を下回った。
以上より、薬注率の制御によって間隙面積を適正に保つことで、加温効率を高く保つことができるといえる。また、間隙面積を適正に保つことで、薬注量を最適化することが可能となり、濃縮機2の安全運転を行うことができ、かつ、薬注量の低減(コストの低減)を図ることもできる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態に係るPC20(フロック状態制御装置)は、凝集汚泥画像取得部251と、分析部254と、薬注率制御部255とを備える。
凝集汚泥画像取得部251は、凝集混和槽1にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する。
分析部254は、取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数のフロック間に生じている間隙の度合を分析する。
薬注率制御部255は、間隙の度合の分析結果に基づき、凝集剤の薬注率を制御する。
【0087】
かかる構成により、本実施形態に係るPC20は、フロックの重なり等の影響を受けない間隙面積を用いてフロックの状態の制御をより精度高く行うことができる。フロックの重なり等の影響を受けないため、汚泥を希釈したり新たな装置を追加したりして汚泥の濃度を調整することなく、フロックの状態を制御することができる。
【0088】
よって、本実施形態に係るPC20は、フロックの重なりを減らすために汚泥の濃度を希釈したり新たな装置を追加したりすることなく、後段の配管中より撮影が容易かつ、より凝集剤の調整を早期に行うことが可能な場所でフロックの状態を適切に制御することを可能とする。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、上述した実施形態におけるPC20の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0090】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0091】
(付記1)
凝集混和槽にて凝集剤によって汚泥が凝集されたフロックを含む凝集汚泥を撮像した凝集汚泥画像を取得する凝集汚泥画像取得部と、
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、評価対象領域に存在する複数の前記フロック間に生じている間隙の度合を分析する分析部と、
前記間隙の度合の分析結果に基づき、前記凝集剤の薬注率を制御する薬注率制御部と、
を備えるフロック状態制御装置。
【0092】
(付記2)
前記分析部は、前記間隙の度合に対する数値解析によって得られる前記間隙の特徴量を示す特徴量情報に基づき、前記間隙の度合の適正を判定し、判定結果を前記分析結果として出力する、
付記1に記載のフロック状態制御装置。
【0093】
(付記3)
前記分析部は、前記特徴量情報に基づき前記間隙の度合の適正を分類する分類モデルを用いて、前記分類モデルに対して前記特徴量情報を入力することで出力される分類結果に基づき、前記間隙の度合が適正であるか否かを判定する、
付記2に記載のフロック状態制御装置。
【0094】
(付記4)
前記分析部は、前記数値解析によって前記間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率とを示す分類情報を取得し、前記分類情報を前記特徴量情報として前記分類モデルへ入力する、
付記3に記載のフロック状態制御装置。
【0095】
(付記5)
前記分析部は、前記数値解析によって前記間隙の度合を複数の階級に分け、各階級と各階級に対応する度数又は比率との関係を示すヒストグラムの画像を取得し、前記画像を前記特徴量情報として前記分類モデルへ入力する、
付記3に記載のフロック状態制御装置。
【0096】
(付記6)
前記分析部は、前記間隙の度合として前記間隙の径の大きさを検出して分析する、
付記1から付記5のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0097】
(付記7)
前記取得された凝集汚泥画像に基づき、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域とを判定する領域判定部、
をさらに備え、
前記分析部は、前記間隙の領域と判定された領域における前記間隙の度合を分析する、
付記1から付記6のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0098】
(付記8)
前記領域判定部は、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域との関係を機械学習した学習済みモデルを用いて、前記評価対象領域における前記間隙の領域と前記間隙以外の領域とを判定する、
付記7に記載のフロック状態制御装置。
【0099】
(付記9)
前記学習済みモデルは、セマンティックセグメンテーションを用いて、入力された凝集汚泥画像の各画素が間隙の領域又は間隙以外の領域のいずれであるかを判定するように機械学習を行ったモデルである、
付記8に記載のフロック状態制御装置。
【0100】
(付記10)
前記凝集汚泥画像に基づき、オプティカルフローを用いて前記フロックの速度ベクトルを検出し、前記検出した速度ベクトルのベクトル値が所定の閾値未満となった際の凝集汚泥画像を取得する画像選定部、
をさらに備える付記1から付記9のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0101】
(付記11)
前記薬注率制御部は、前記間隙の度合が目標の度合となるように前記凝集剤の薬注率を制御し、
前記目標の度合は、前記凝集混和槽の後段にある設備における運転効率が最大となるように設定される、
付記1から付記10のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置。
【0102】
(付記12)
前記目標の度合は、前記汚泥の濃度に応じて設定される、
付記11に記載のフロック状態制御装置。
【0103】
(付記13)
前記間隙の度合が前記目標の度合となるように、前記凝集混和槽へ送る前記汚泥を撹拌するミキサの回転数又は前記凝集混和槽にて前記凝集汚泥を撹拌する撹拌機の回転数のうち少なくとも一方の前記回転数を制御する回転数制御部、
をさらに備える付記11又は付記12に記載のフロック状態制御装置。
【0104】
(付記14)
付記1から付記13のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥処理設備。
【0105】
(付記15)
付記1から付記13のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥凝集設備。
【0106】
(付記16)
付記1から付記13のいずれか1つに記載のフロック状態制御装置を備える汚泥濃縮設備。
【符号の説明】
【0107】
1…凝集混和槽、1a…回転軸、1A…高速ミキサ、1b…撹拌羽根、1B…ポンプ、1c…モーター、1C…凝集槽、1d…回転軸、1D…撹拌手段、1e…撹拌羽根、1f…モーター、2…濃縮機、2a…濃縮濾過スクリーン、2A…濃縮槽、2b…濾液室、2B…搬送手段、2c…回転軸、2C…ポンプ、2d…スクリュー、2e…モーター、3…脱水機、3a…内濾過スクリーン、3A…ケーシング、3A1…第1の空間、3A2…第2の空間、3b…外濾過スクリーン、3B…濾過スクリーン、3c…モーター、3C…基板、3d…リボンスクリュー、3D…蓋体、3e…連結板、3E…排出室、3f…供給管、3F…排出口、3G…圧搾リング、3H…排水管、3P…ポンプ、4…濃縮汚泥供給路、4A…ポンプ、4B…高速ミキサ、4C…ポンプ、10…カメラ、40…凝集汚泥画像、41…間隙、50…凝集汚泥画像、51…間隙、60…凝集汚泥画像、61…間隙、210…入力部、220…通信部、230…記憶部、240…出力部、250…制御部、251…凝集汚泥画像取得部、252…画像選定部、253…領域判定部、254…分析部、255…薬注率制御部、256…回転数制御部