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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163705
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】家具用キャスタ及び家具
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20231102BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20231102BHJP
   A47B 91/06 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60B33/00 503C
A47C7/00 A
A47B91/06
B60B33/00 F
B60B33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074777
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】管 智士
【テーマコード(参考)】
3B069
3B084
【Fターム(参考)】
3B069CA03
3B084AA00
(57)【要約】
【課題】全体が1つの色に統一化された椅子を様々なカラーバリエーションで品揃えするにおいて、キャスタの色の統一を簡易に実現できる技術を提供する。
【解決手段】キャスタ5は、左右のコロ10と、これらが回転自在に取り付いた本体ブロック11と、本体ブロック11を上から覆うカバー18とを備えている。カバー18はジョイントピン14に被嵌しており、係合溝21と係合片22との嵌まり合いによって左右動不能に保持されている。本体ブロック11とコロ10とは、1つの色のものが1種類製造されており、カバー18は様々な色のものが多種類用意されている。椅子の本体部の色に対応した色のカバー18を選択して、本体ブロック11に装着する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家具の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着したコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えている、
家具用キャスタ。
【請求項2】
前記本体ブロックを挟んだ左右両側に前記コロが一対配置されて、前記本体ブロックは左右のコロの間に配置されており、前記カバーも前記左右コロの間に配置されている、
請求項1に記載した家具用キャスタ。
【請求項3】
前記本体ブロックには、家具における脚装置の下端部に設けた下向き開口の下ボス部に嵌入するジョイントピンを保持する上向きボス部が突設されている一方、
前記カバーは、前後両端を自由端と成した側面視略C形に形成されていて弾性に抗して広げ変形させることによって前記本体ブロックを抱持するようになっており、かつ、前記カバーに、前記本体ブロックの上向きボス部に被嵌する上向き筒部が形成されている、
請求項2に記載した家具用キャスタ。
【請求項4】
前記カバーには、当該カバーを前記本体ブロックに上から嵌め込むといったん弾性変形してから戻り変形して前記本体ブロックに係合して左右動不能に保持する係合部が形成されている、
請求項3に記載した家具用キャスタ。
【請求項5】
家具の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着したコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えており、
前記本体ブロックは同一色の1種類が用意されて、前記カバーは色が異なるものが複数種類用意されており、任意の色のカバーを前記本体ブロックに装着可能である、
家具用キャスタ。
【請求項6】
家具本体とキャスタとを有しており、
前記キャスタは、前記家具本体の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着されたコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えており、
前記本体ブロックとコロは前記家具本体及びカバーとは異なる色であり、前記家具本体と前記カバーとは同じ色に統一されている、
家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、家具用キャスタ及びこのキャスタを備えた家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子を代表として、家具にキャスタを設けることは広く行われている。キャスタは、例えば特許文献1に開示されているように、家具の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着したコロ(車輪)とを備えており、本体ブロックに鉛直姿勢のジョイントピンを回転自在に装着し、ジョイントピンを家具における中空の脚に圧入又はねじ込むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3126131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、椅子等の家具のデザインとして、キャスタを含めて家具全体を単一色に揃えることが行われているが、ユーザーの希望に応えるために様々な色のものを品揃えしており、従って、キャスタについては、コロと本体ブロックを家具本体の色に合わせて複数種類製造している。
【0005】
従って、各色のキャスタについて需要の予想を立てて製造することになるが、予想どおりの注文があるとは限らず、在庫が無くなって注文に応えられない状況や、在庫が多く残ったりする状況が生じることは不可避であり、注文に的確に対応できない問題があった。
【0006】
本願発明は、このような状況を改善すべくなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は様々な局面を有しており、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は家具用キャスタに関するものであり、
「家具の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着したコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えている」
という構成になっている。
【0008】
つまり、本体ブロックは、家具の使用状態を人が視認できないようにカバーで覆われている。なお、本体ブロックの下面もカバーで覆うことは可能である。また、本願発明において、本体ブロックが外部から全く視認できないことまでは必要ないのであり、部材間のクリアランスの存在等により、家具本体との統一性を阻害しない範囲で少し露出することは差し支えない。コロは、支軸(車軸)を有する車輪のタイプの他に、ボール状のものも含んでいる。
【0009】
請求項2の発明は請求項1の展開例であり、
「前記本体ブロックを挟んだ左右両側に前記コロが一対配置されて、前記本体ブロックは左右のコロの間に配置されており、前記カバーも前記左右コロの間に配置されている」
という構成になっている。
【0010】
請求項3の発明は請求項2を具体化したもので、
「前記本体ブロックには、家具における脚装置の下端部に設けた下向き開口の下ボス部に嵌入するジョイントピンを保持する上向きボス部が突設されている一方、
前記カバーは、前後両端を自由端と成した側面視略C形に形成されていて弾性に抗して広げ変形させることによって前記本体ブロックを抱持するようになっており、かつ、前記カバーに、前記本体ブロックの上向きボス部に被嵌する上向き筒部が形成されている」
という構成になっている。
【0011】
請求項4の発明は請求項3の展開例であり、
「前記カバーには、当該カバーを前記本体ブロックに上から嵌め込むといったん弾性変形してから戻り変形して前記本体ブロックに係合して左右動不能に保持する係合部が形成されている」
という構成になっている。
【0012】
請求項5の発明は請求項1と同様に家具用キャスタの上位概念を成すものであり、
「家具の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着したコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えており、
前記本体ブロックは同一色の1種類が用意されて、前記カバーは色が異なるものが複数種類用意されており、任意の色のカバーを前記本体ブロックに装着可能である」
という構成になっている。
【0013】
請求項6の発明は家具を対象にしており、
「家具本体とキャスタとを有しており、
前記キャスタは、前記家具本体の脚に取り付く本体ブロックと、前記本体ブロックに回転自在に装着されたコロと、前記本体ブロックのうち少なくとも下面を除いた部分を覆うカバーと、を備えており、
前記本体ブロックとコロは前記家具本体及びカバーとは異なる色であり、前記家具本体と前記カバーとは同じ色に統一されている」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、本体ブロックはカバーで覆われているため、請求項5,6のように、本体ブロックは1種類だけ用意して、カバーは色が異なる複数種類を製造しておくことにより、1種類の本体ブロックとコロを共用して多種類の色のキャスタを品揃えできる。また、脚とカバーとの形態を統一させることにより、デザイン性を高めて商品価値を向上することも可能となる。
【0015】
この場合、カバーはキャスタの全体に比べて製造コストは低いため、カバーを他種類用意しても、コストを抑制できる。従って、多数の色彩のキャスタを安価に品揃えして、顧客の要望にタイムリーに応えることができる。
【0016】
キャスタは様々な形態があるが、請求項2の構成では、脚の下端と本体ブロックとが上下に一体に連続した外観を対するため、脚を地面に向けて延長したような外観を呈して、シャープな美観を呈して商品価値を向上できる。また、脚装置の下ボス部の幅とカバーの幅とを同じ程度の寸法に設定することにより、脚とカバーとの一体性を高めることを容易に実現して、デザインを高めて商品性の向上に貢献できる。
【0017】
請求項3の構成を採用すると、カバーは、自身の弾性変形を利用して本体ブロックに対して上向き動しない状態に保持されると共に、本体ブロックの上向きボス部を利用して横ずれしない状態に保持できる。従って、ビス類を使用することなくカバーを本体ブロックにワンタッチ的に取り付けることができる。特に、請求項4のようにカバーに左右動不能に保持する係合部を設けると、カバーをコロに近接できるため美観を向上できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態を示す図で、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は側方から見た斜視図、(C)は(A)の部分拡大図である。
図2】同じく実施形態を示す図で、(A)はパイプ椅子の斜視図、(B)は(A)の部分拡大図、(C)はオフィス用回転椅子の斜視図、(D)は(C)の部分拡大図である。
図3】キャスタを示す図であり、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は後ろ上方から見た斜視図、(C)は後ろ下方から見た斜視図である。
図4】キャスタの縦断側面図である。
図5図3に統一的な色彩を付した状態の模式図である。
図6】他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下でキャスタに関して方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はコロの軸心と直交した水平方向であり、左右方向はコロの軸心方向である。まず、図1~5に示す第1実施形態を説明する。
【0020】
(1).椅子の概略
本実施形態は、家具の一例としての椅子に適用している。図1に示す椅子は座1と背もたれ2とが一体化したラウンジチェアであり、脚装置3は、上端の収束部から傾斜姿勢で四方に延びる4本の脚杆4を備えて、各脚杆4の下端にキャスタ5を下方から圧入している。脚装置3は例えばアルミダイキャスト製であり、各脚杆4は中実で、下端部は下向きに開口して鉛直姿勢の下ボス部4aになっている。
【0021】
図2(A)に示す椅子はパイプ椅子であり、脚装置3は、互いに独立した4本の脚杆4を備えている。各脚杆4の下端部は鉛直姿勢の下ボス部4aになっていて、この下ボス部4aにキャスタ5を取り付けている。なお、各脚杆4は、基本的には鉛直線に対して少し傾斜しているが、キャスタ5が取り付く下ボス部4aは、キャスタ5の水平旋回を許容するため鉛直姿勢になっている。この点は図1の椅子も同様である。
【0022】
図2(A)の脚杆4はパイプ製であるので下ボス部4aは全長にわたって同径であるが、図1の下ボス部4aは、僅かながら下膨れ状態になっている。また、図1では、下ボス部4aとカバー18とは密接している。
【0023】
図2(C)に示す椅子はオフィス用として多用されている回転椅子である。図2(C)の椅子の脚装置3は、ガスシリンダより成る鉛直姿勢の脚支柱6とこれが装着された脚台7とを有して、脚台7には放射状に延びる5本の枝杆(脚羽根)8が形成されており、各枝杆8の先端に、下向きに開口した鉛直姿勢で下向きに開口した下ボス部9を形成し下ボス部9にキャスタ5を下方からの圧入によって取付けている。
【0024】
(2).キャスタ5の構造
各椅子のキャスタ5は同じ構造になっており、詳細を図3に示している。図3(特に(D)参照)に示すように、キャスタ5は、機能部材として、左右一対のコロ(車輪)10と、左右のコロ10の間に配置された本体ブロック11とを備えており、本体ブロック11に、水平姿勢で金属製の支軸12を介してコロ10が回転自在に保持されている。図示は省略するが、コロ10は、軸受けを介して支軸12に回転自在で抜け不能に保持されている。
【0025】
本体ブロック11のうち外周の一部に寄った部位(支軸12からその軸心と直交した水平方向にずれた部位)に、上向きに開口した上向きボス部13が上向きに突設されており、この上向きボス部13の箇所に、椅子の脚装置1の下ボス部4a,9に取り付く金属製のジョイントピン14が回転自在で抜け不能に装着されている。
【0026】
ジョイントピン14の略上半部は椅子における脚装置3の下ボス部4a,9に挿入されており、キャスタ5から露出した部位の下端には、脚杆4や下向きボス部9を受けるフランジ15が形成されている。また、ジョイントピン14のうち下ボス部4a,9に挿入される部位に形成した上環状溝16に、Oリングのようなリング体17が装着されている。リング体17が弾性変形する(或いは下ボス部4a,9の内面に食い込む)ことにより、ジョイントピン14は、脚杆4や下向きボス部9に対して簡単には抜けない状態に保持されている。また、ジョイントピン14の下端部には下環状溝14aが形成されており、下環状溝14aに、本体ブロック11の内面に食い込む抜け止め部材(図示せず)が装着されている。
【0027】
図3(D)に明示するように、本体ブロック11は、その下部が切除されて側面視D形の形態を成しており、外周面のうち円弧状の部分が、ポリプロピレン等の合成樹脂より成るカバー18によって上から覆われている。また、カバー18には、本体ブロック11の上向きボス部13に外側から密嵌する上向き筒部18aが一体に形成されている。
【0028】
図3(A)(B)から理解できるように、カバー18の外周面と左右コロ10の外周面とがほぼ同一面を成すように設定されている。換言すると、カバー18の外周面の曲率半径はコロ10の外径と略同じ寸法に設定されている。従って、カバー18とコロ10とに連続性が現れて、体裁がよい。
【0029】
図3(D)及び図3に示すように、カバー18の前後両端の下端縁に、本体ブロック11における平坦な下面19に重なるストッパー片20を形成している。かつ、本体ブロック11の下端部のうち下面19を挟んだ両側の部位に切欠き状の係合溝21を形成している一方、カバー18の前後両端の下端に、係合溝21に嵌入する係合片22がストッパー片20と一体に連続した状態に形成されている。係合片22は請求項に記載した係合部の一例であり、係合溝21と対になって係合手段を構成している。
【0030】
カバー18の前後両端は自由端になっているので、カバー18は、弾性に抗して前後方向に広げることができる。従って、カバー18を本体ブロック11に対して上から押し込むと、カバー18はいったん前後方向に広がり変形してから本体ブロック11に嵌着すると共に、筒部28が本体ブロック11の上向きボス部13に密嵌し、かつ、ストッパー片20が本体ブロック11の下面に重なると共に、係合片22が本体ブロック11の係合溝21に嵌入する。従って、カバー18は、本体ブロック11に対して、前後左右に移動不能でかつ上下移動不能に保持される。
【0031】
このように、カバー18は、本体ブロック11に対する押し込むワンタッチ的な作業により、本体ブロック11に対してガタ付きがない状態に装着される。この場合、自由状態でのカバー18の内径を本体ブロック11の外径よりも僅かに小径に設定しておくと、装着した状態でカバー18は本体ブロック11を弾性的に抱持するため、ガタ付き防止の点で有利である。
【0032】
(3).まとめ
図1では、同一色が施されている部分を平行斜線で表示している。他方、図5図3と同じ形態であるが、製品の状態として、同一色が施されている部分に平行斜線を付している。すなわち、各椅子とも、椅子のうちキャスタ5を除いた本体部分の外観を構成する部材の全部又は大部分と、キャスタ5のうちカバー18とが、同じ色に設定されて全体が1つの色に統一されている。
【0033】
色彩について正確に述べると、椅子は、少なくとも、人が立って普通の状態で視認される部分(上方や斜め上方から見える部分)が同一色に統一されていたらよい。従って、通常の状態で人が視認できない下面は、必ずしも同一色に設定する必要はない。但し、椅子を構成する部材は上方や側方や下方に露出しているものもあり、これらの部材は全体を同色に形成するのが普通であるため、座の下方に露出した部材が同一色になっていることは有り得る。カラーバリエーションとしては、ホワイト系、グレー系、ブルー系、ブラウン系、グリーン系、シルバー系、イエロー系、ブラック系などの様々な色彩を選択できる。
【0034】
椅子の全体がモノトーン化されて独特の美観を呈しているが、キャスタ5のカバー18も同じ色に設定して、全体としての色の統一性を保持している。従って、カバー18も、椅子の本体部分と同じカラーバリエーションで多数種類の色のものが用意されている。他方、本体ブロック11とコロ10は1種類であり、任意の色のカバー18を取り付けて製品化される。
【0035】
さて、キャスタ5に関して、カバー18が存在せずに本体ブロック11を露出させている場合は、色が異なる多数の種類の完成品を販売するに当たっては、多数色の本体ブロック11とコロ10とを別々に製造して組み立てることになる。この場合、メーカーとしては、需要を予測して各色のキャスタ5を相当量製造しておく対応と、注文後に製造する対応とがあるが、本体ブロック11やコロ10は金型を使用して製造されるため、一度に相当の数を製造するのが通常であり、すると、注文に応じてその都度製造するのは一般的ではなく、相当量を予め製造してストックしておくのが普通である。
【0036】
しかし、製造量と注文量とは乖離することが普通であり、完成品に在庫が発生したり、逆に欠品が生じたりすることが多いが、既述のとおり、金型を使用した製造に当たっては一度に相当量を製造するのが普通であるため、注文があってもこれにタイムリーに対応できない事態も生じやすい。このため、在庫が存在する無駄と売れ筋商品の販売機会喪失とが発生しやすい。
【0037】
これに対して本実施形態では、1種類の本体ブロック11に1種類のコロ10を取付けた1種類のものを中間品となして、この中間品に特定色のカバー18を選択して取付けることによって任意の色のキャスタ5を製品化できるため、注文に応じて特定の色のキャスタ5をタイムリーに提供できる。従って、ユーザーフレンドリーである。また、本体ブロック11は全種類のキャスタ5に共用されるため、長期に亙って眠り続ける不良在庫は発生しない。従って、他種類のキャスタ5を用意するに当たって、製造コストと管理コストを低減できる。
【0038】
本実施形態でも、カバー18については多数種類の色のものを用意しておく必要がある一方、各色のものは一度に相当量を製造することなるため、場合によっては、長期に亙って在庫品として眠り続ける色のものが存在し得るが、カバー18の製造は本体ブロック11に比べて簡易でコストは低いため、他種類のキャスタ5を用意しておくことに比べると、製造コストと管理コストを大幅に抑制できる。
【0039】
本願発明では、コロ10はカバー18と異なる色になっており、左右のコロ10の間に位置したカバー18が脚杆4又は下向きボス部9と同じ色になっているため、脚杆4や下向きボス部9を地面に向けて下方に突出させたような外観を呈する。すなわち、脚杆4又は下向きボス部9とカバー18とが一体化したような外観を呈する。このため、モノトーンによる統一性を際立たせて、デザイン性を向上できる。勿論、デザインの流行に合わせて、敢えて色を統一しないことも可能である。
【0040】
また、カバー18は左右のコロ10の間で上下に細長い形態を成している一方、脚装置3の下ボス部4a,9はカバー18と同じ程度の外径になっているため、下ボス部4a9とカバー18との連続性が高まって、デザイン的な統一性を向上できる。特に、図1のように、下ボス部4aとカバー18とを密接又は密着させると、両者の一体感は更に高くなるため、脚杆4の下端にコロ10を取り付けたかのような外観を呈して、従来にない美観を醸し出すに至っている。
【0041】
多種類の家具を製造する業者として、従来は、多種類の家具に対して共通のキャスターを流用することが多い為、家具とキャスタとの形態的な一体性を持たせることは難しく、唯一の手段が、特定の家具専用のキャスタを製作することであったが、本願発明のように、本体ブロック11とカバー18を別体で構成することにより、共通の本体ブロック11を流用しながら、比較的安価に製造できるカバーだけ専用化することにより、家具とキャスタの形態的な一体性(連続性)をもたらすことが容易となる。この点は、色の統一性とは別の効果として作用する。色の統一性を持たせつつ、さらに形態的な一体性も持たせられれば、家具全体としてのデザイン性は格段に向上する。
【0042】
カバー18とコロ10との配色は任意に設定できるが、コロ10を例えばグレー系の淡い色に設定しておくと、コロ10が目立ち過ぎることを防止して、カバー18の色を際立たせることができる。これにより、下ボス部4a,9とカバー18との統一性・一体性を更に向上できる。
【0043】
実施形態のように、係合溝21と係合片22とによってカバー18を左右動不能に保持すると、カバー18とコロ10とをできるだけ近接させつつ互いに接触することを防止できるため、美観を向上させつつ椅子の移動時の擦れ音の発生を防止できて好適である。
【0044】
(4).他の実施形態
図6では、他の実施形態を示している。図6のうち(A)(B)に示す第2実施形態では、キャスタ5は1輪方式になっていて、本体ブロック11は、1つのコロ10を囲うように下向きに開口した袋状の形態(左右側板を有する形態)を成している。本体ブロック11には、第1実施形態と同様にジョイントピン14を回転自在に装着している。
【0045】
そして、第2実施形態では、本体ブロック11は、これと相似形のカバー18によって全体が囲われている。カバー18には、本体ブロック11の上向きボス部13とジョイントピン14のフランジ15とに外側から被嵌する上向き筒部28が一体に形成されている。また、本体ブロック11における左右側板の下端には切欠き状の係合溝21が形成されて、カバー18の左右側板の下端には、係合溝21に嵌合する係止片(図示せず)を形成している。
【0046】
第2実施形態でも、カバー18は、本体ブロック11に対して上から弾性に抗して押し込むだけでワッタッチ的に取付けられる。また、第2実施形態では、コロ10の露出面積は小さいため、キャスタ5と椅子本体との色彩的な統一性は第1実施形態よりも高くなる。
【0047】
図6のうち(C)に示す第3実施形態は、第1実施形態のように左右のコロ10を有するキャスタ5において、カバー18は左右の車輪を覆う態様に形成されている。すなわち、第1実施形態のカバー18を左右に延長させた形態になっている。従って、コロ10の露出度は第1実施形態よりも低くなっていて、椅子全体としての色彩の統一性は高い。
【0048】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象である家具は椅子には限らず、テーブルやワゴンのような他の家具にも適用できる。ジョイントピンは、脚杆や下向きボス部に対してねじ込みによって取り付けることも可能である。コロはボール状(球状)であってもよい。カバーに各種の色を施す方法としては、異なる色の合成樹脂で製造するには限らず、塗装によって様々な色を施すこともできる。
【0049】
椅子等の家具の全体をデザイン的に統一する手段としては、色による統一の他にも、模様による統一も可能である。すなわち、チェック柄や水玉模様、横縞又は縦縞のような縞模様などで統一することも可能である。カバーを本体ブロックに対して左右動不能に保持する係合部として、カバーに左右の内向きフランジを形成して、左右の内向きフランジで本体ブロックを左右から挟むことも可能である。
【0050】
また、本願発明は、球状のコロをポケット状の本体ブロック(ハウジング)で抱持したボールキャスタにも適用できる。本体ブロックは板金製やダイキャスト品であってもよい。更に、本体ブロックは複数の部材で構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本願発明は、椅子等の家具のキャスタに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 座
2 背もたれ
3 脚装置
4 脚杆
4a 下ボス部
5 キャスタ
8 枝杆(脚羽根)
9 下ボス部
10 コロ
11 本体ブロック
12 支軸
13 上向きボス部
14 ジョイントピン
15 ジョイントピンのフランジ
18 カバー
18a 上向き筒部
21 係合溝
22 係合部の一例としての係合片
図1
図2
図3
図4
図5
図6