(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163713
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20231102BHJP
G06T 15/04 20110101ALI20231102BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20231102BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20231102BHJP
H04N 13/279 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06T15/04
G09G5/36 510V
G09G5/36 520D
G09G5/00 550X
G06T19/00 300B
H04N13/279
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074793
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】眞野 勇人
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 拓真
【テーマコード(参考)】
5B050
5B080
5C061
5C182
【Fターム(参考)】
5B050AA00
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA13
5B050CA01
5B050DA01
5B050EA07
5B050EA26
5B050FA02
5B080AA13
5B080BA07
5B080CA00
5B080FA00
5B080GA22
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5C061AB08
5C061AB14
5C061AB18
5C182AB13
5C182AB33
5C182AC03
5C182AC46
5C182BA03
5C182BA04
5C182BA14
5C182BA29
5C182BA46
5C182BA66
5C182BC45
5C182CB11
(57)【要約】
【課題】全天球画像を用いて3次元仮想空間における没入感の高い背景画像を生成できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置3は、3次元仮想空間の基準点を中心Cとする球体型モデルMsを生成するとともに、該球体型モデルMsの中心Cまでの距離Dhが地面距離情報に基づいて設定される横平面型モデルMhを形成するモデル形成部33と、球体型モデルMs上の各頂点の座標値および横平面型モデルMh上の各頂点の座標値と全天球画像Iの座標値とを対応付け、横平面型モデルMh上の各頂点Phの座標値に対応する全天球画像Iの座標値を、球体型モデルMsの中心Cから各頂点Phに向かう方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点Psに設定されている全天球画像Iの座標値に置き換え、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhに全天球画像Iをマッピングして3次元仮想空間の背景画像Imapを形成する描画部34と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全天球カメラによって地面および立体物を含む現実空間を撮像した全天球画像を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記全天球画像の特徴を基に、複数のメッシュを組み合わせて構成される3次元モデルを形成するモデル形成部と、
3次元仮想空間に設定した基準点の座標値を基に、前記モデル形成部で形成された前記3次元モデルに対して前記記憶部に記憶された前記全天球画像をマッピングして前記3次元仮想空間の背景画像を形成する描画部と、を備えた画像処理装置において、
前記記憶部は、前記全天球カメラの撮像位置から前記地面までの距離を示す地面距離情報を記憶するように構成され、
前記モデル形成部は、前記3次元仮想空間における前記基準点を中心とする球体型モデルを形成するとともに、該球体型モデルの中心から見て下方向に配置され、かつ、該中心までの距離が前記記憶部に記憶された前記地面距離情報に基づいて設定される、前記地面に対応した横平面型モデルを形成するように構成され、
前記描画部は、前記3次元仮想空間における前記基準点の座標値を基に、前記モデル形成部で形成された前記球体型モデル上の各頂点の座標値と前記記憶部に記憶された前記全天球画像の座標値とを対応付けるとともに、前記モデル形成部で形成された前記横平面型モデル上の各頂点の座標値と前記記憶部に記憶された前記全天球画像の座標値とを対応付け、前記横平面型モデル上の各頂点の座標値に対応する前記全天球画像の座標値を、前記球体型モデルの中心から前記横平面型モデル上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと前記球体型モデルとの各交点に設定されている前記全天球画像の座標値に置き換えることで、前記球体型モデルおよび前記横平面型モデルに前記全天球画像をマッピングして前記3次元仮想空間の背景画像を形成するように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記全天球画像の各画素には、UV座標系におけるUV座標値がそれぞれ設定されており、
前記描画部は、前記3次元仮想空間における前記基準点と、前記球体型モデル上の各頂点および前記横平面型モデル上の各頂点との位置関係に応じて、各々の頂点の座標値に対応する前記全天球画像のUV座標値を設定するとともに、前記球体型モデルの中心と前記横平面型モデル上の各頂点とをそれぞれ結ぶ直線を径方向外側に延長し、該各直線と前記球体型モデルとの各交点に設定されているUV座標値を取得して、前記横平面型モデル上の各頂点の座標値に対応する前記全天球画像のUV座標値を、該取得した各UV座標値に置き換えるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記全天球カメラの撮像位置から前記立体物までの距離を示す立体物距離情報を記憶するように構成され、
前記モデル形成部は、前記球体型モデルの中心から見て横方向に配置され、かつ、該中心までの距離が前記記憶部に記憶された前記立体物距離情報に基づいて設定される、前記立体物に対応した縦平面型モデルを形成するように構成され、
前記描画部は、前記3次元仮想空間における前記基準点の座標値を基に、前記モデル形成部で形成された前記縦平面型モデルの各頂点の座標値と前記記憶部に記憶された前記全天球画像の座標値とを対応付け、前記縦平面型モデル上の各頂点の座標値に対応する前記全天球画像の座標値を、前記球体型モデルの中心から前記縦平面型モデル上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと前記球体型モデルとの各交点に設定されている前記全天球画像の座標値に置き換えることで、前記球体型モデル、前記横平面型モデルおよび前記縦平面型モデルに前記全天球画像をマッピングして前記3次元仮想空間の背景画像を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記全天球画像の各画素には、UV座標系におけるUV座標値がそれぞれ設定されており、
前記描画部は、前記3次元仮想空間における前記基準点と、前記球体型モデル上の各頂点、前記横平面型モデル上の各頂点および前記縦平面型モデルの各頂点との位置関係に応じて、各々の頂点の座標値に対応する前記全天球画像のUV座標値を設定するとともに、前記球体型モデルの中心と前記横平面型モデル上の各頂点および前記縦平面型モデル上の各頂点とをそれぞれ結ぶ直線を径方向外側に延長し、該各直線と前記球体型モデルとの各交点に設定されているUV座標値を取得して、前記横平面型モデル上の各頂点および前記縦平面型モデル上の各頂点それぞれの座標値に対応する前記全天球画像のUV座標値を、該取得した各UV座標値に置き換えるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記モデル形成部は、前記描画部により形成される前記背景画像における前記立体物に対応する画像の少なくとも一部が前記横平面型モデルにマッピングされている場合に、前記記憶部に記憶された前記立体物距離情報に基づいて前記球体型モデルの半径を調整することで、前記立体物に対応する画像の全体が前記球体型モデルにマッピングされるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記モデル形成部は、車両が走行する道路の道幅に基づいて、前記球体型モデルの半径を調整するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記全天球画像に複数の立体物の画像が含まれている場合に、前記全天球カメラの撮像位置から前記複数の立体物のうちで前記全天球カメラに最も近い立体物までの距離を示す立体物最短距離情報を記憶するように構成され、
前記モデル形成部は、前記記憶部に記憶されている前記立体物最短距離情報に基づいて、前記球体型モデルの半径を調整するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元仮想空間の背景画像を形成する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実(VR:Virtual Reality)空間の背景を簡易に作成する技術として、全天球カメラ等により撮像した全天球画像を球体型の3次元モデルに貼り付ける方法が知られている。この方法で作成された背景画像をヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)に表示した場合、該HMDを装着するユーザからは周囲に全天球画像が投影されているような3次元仮想空間が観測される。
【0003】
例えば、特許文献1には、全天球画像の特徴に対応させた複数のメッシュ形状を組み合わせて3次元メッシュ形状モデルを形成するモデル形成手段と、3次元空間に設定した仮想基準点の座標値と、3次元メッシュ形状モデルの各画素の座標値とに基づいて、各画素の座標値を全天球画像の座標系に変換し、3次元メッシュ形状モデルに全天球画像をマッピングして全天球立体画像を形成する描画手段と、を備えた画像処理装置が開示されている。この画像処理装置によれば、仮想的な環境に立体感のある全天球画像を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全天球画像を球体型の3次元モデルにだけ貼り付けた背景画像をHMDに投影した場合、HMDを装着するユーザが観測する3次元仮想空間内には、地面に相当する位置に画像の情報が存在しないため、該ユーザに浮遊感が生じる。前述した特許文献1では、全天球画像中の水平面(地面)に対応させて平面メッシュ形状モデルが形成され、該平面メッシュ形状モデルと球体メッシュ形状モデルとを組み合わせた3次元メッシュ形状モデルに全天球画像がマッピングされているので、ユーザの浮遊感は軽減される。
【0006】
しかし、特許文献1の平面メッシュ形状モデルは、全天球画像の実際の撮像時における撮像位置と地面の間の距離に関係なく、全天球画像中の水平面の位置に対応させて形成されている。このため、該平面メッシュ形状モデルにマッピングされた地面の画像を見たユーザが3次元仮想空間内での地面までの距離に違和感を覚える可能性があり、3次元仮想空間の臨場感が低下して没入感が削がれてしまう虞があった。
【0007】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、全天球画像を用いて3次元仮想空間における没入感の高い背景画像を生成できる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明の一態様は、全天球カメラによって地面および立体物を含む現実空間を撮像した全天球画像を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記全天球画像の特徴を基に、複数のメッシュを組み合わせて構成される3次元モデルを形成するモデル形成部と、3次元仮想空間に設定した基準点の座標値を基に、前記モデル形成部で形成された前記3次元モデル上の各頂点の座標値を、前記記憶部に記憶された前記全天球画像の座標系に変換し、前記3次元モデルに前記全天球画像をマッピングして全天球立体画像を形成する描画部と、を備えた画像処理装置を提供する。この画像処理装置において、前記記憶部は、前記全天球カメラの撮像位置から前記地面までの距離を示す地面距離情報を記憶するように構成されている。前記モデル形成部は、前記3次元仮想空間における前記基準点を中心とする球体型モデルを形成するとともに、該球体型モデルの中心から見て下方向に配置され、かつ、該中心までの距離が前記記憶部に記憶された前記地面距離情報に基づいて設定される、前記地面に対応した横平面型モデルを形成するように構成されている。前記描画部は、前記3次元仮想空間における前記基準点の座標値を基に、前記モデル形成部で形成された前記球体型モデル上の各頂点の座標値を、前記記憶部に記憶された前記全天球画像の座標系に変換するとともに、前記モデル形成部で形成された前記横平面型モデル上の各頂点の座標値を、前記球体型モデルの中心から前記横平面型モデル上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと前記球体型モデルとの各交点に設定されている座標系変換後の座標値に置き換え、前記球体型モデルおよび前記横平面型モデルに前記全天球画像をマッピングして前記全天球立体画像を形成するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る画像処理装置によれば、3次元仮想空間内での地面までの距離に関するユーザの違和感が抑制されるようになるので、全天球画像を用いて3次元仮想空間における没入感の高い背景画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る画像処理装置が適用された運転シミュレータシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態におけるモデル形成部で形成される3次元モデル(球体型モデルおよび横平面型モデル)を示す概念図である。
【
図3】第1実施形態における描画部で実行される球体型モデル上の各頂点の座標値を全天球画像の座標値に対応付ける処理を説明するための概念図である。
【
図4】第1実施形態における描画部で実行される横平面型モデル上の各頂点の座標値に対応するUV座標値を球体型モデルに設定されているUV座標値に置き換える処理を説明するための概念図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る画像処理装置のモデル形成部で形成される3次元モデル(球体型モデル、横平面型モデルおよび縦平面型モデル)を示す概念図である。
【
図6】第2実施形態における描画部で実行される縦平面型モデル上の各頂点の座標値に対応するUV座標値を球体型モデルに設定されているUV座標値に置き換える処理を説明するための概念図である。
【
図7】第2実施形態による効果を説明するための概念図である。
【
図8】第3実施形態において全天球画像が貼り付けられる3次元モデルの断面を示す概念図である。
【
図9】第2実施形態に関連した変形例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像処理装置が適用された運転シミュレータシステムの概略構成を示すブロック図である。
図1において、運転シミュレータシステム1は、現実空間を撮像する全天球カメラ2と、該全天球カメラ2によって撮像された全天球画像Iを用いて3次元仮想空間の背景画像Imapを生成する、第1実施形態による画像処理装置3と、該画像処理装置3で生成された背景画像Imapを表示するヘッドマウントディスプレイ(HMD)4と、を含んでいる。この運転シミュレータシステム1は、例えば、自動車等の車両開発や販売促進活動における車両運転の模擬体験などに利用することが可能である。
【0012】
画像処理装置3は、その機能ブロックとして、例えば、入力部31、記憶部32、モデル形成部33、描画部34、および出力部35を備えている。画像処理装置3のハードウェア構成は、ここでは図示を省略するが、例えば、プロセッサ、メモリ、ユーザ入力インターフェースおよび通信インターフェースを含むコンピュータシステムを備える。つまり、画像処理装置3では、コンピュータシステムのプロセッサがメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することによって各ブロックの機能が実現されている。
【0013】
入力部31は、コンピュータシステムのユーザ入力インターフェースにより実現されており、例えば、キーボード、マウス、操作用コントローラ等を有している。また、入力部31は、外部から有線または無線で情報を受信する受信部を有し、外部コンピュータ等との間で情報を受信する外部情報入力インターフェースとしても機能する。入力部31には、全天球カメラ2によって現実空間を撮像した全天球画像Iが与えられ、該全天球画像Iが記憶部32に記憶される。なお、全天球カメラ2は、全方位カメラ、或いは360度カメラなどとも呼ばれる。
【0014】
全天球カメラ2によって撮像される現実空間には、車両が走行する道路やその脇の歩道などの地面と、該道路周辺に設けられている建築物や信号機、道路標識、森林などの立体物とが含まれている。全天球画像Iの撮像時には、全天球カメラ2の撮像位置から地面までの距離D1と、全天球カメラ2の撮像位置から立体物までの距離D2とが測定され、その測定結果を示す情報が全天球画像Iとともに入力部31を介して記憶部32に記憶される。つまり、画像処理装置3の記憶部32は、全天球カメラ2によって地面および立体物を含む現実空間を撮像した全天球画像Iと、該全天球画像Iの撮像時に測定された地面までの距離D1を示す情報(以下、「地面距離情報」とする)および立体物までの距離D2を示す情報(以下、「立体物距離情報」とする)とを記憶可能に構成されている。
【0015】
モデル形成部33は、記憶部32に記憶された全天球画像Iの特徴を基に、複数のメッシュを組み合わせて構成される3次元モデルを形成する。該3次元モデルを構成する複数のメッシュのそれぞれは、3つ以上の頂点と、頂点間を接続する辺と、辺によって閉じられた面とを有している。複数のメッシュの密度は、3次元モデルに要求される精度等に応じて設定可能である。第1実施形態におけるモデル形成部33では、上記複数のメッシュからなる3次元モデルとして、例えば、球体型モデルMsと、地面に対応した横平面型モデルMhとが形成される。
【0016】
図2は、モデル形成部33で形成される球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhを示す概念図である。
図2に示すように、球体型モデルMsは、3次元仮想空間に設定した基準点を中心Cにして半径rの球面を複数のメッシュ(図示せず)を組み合わせて構成した3次元のモデルデータである。3次元仮想空間は、HMD4を装着するユーザUに提供される仮想的な空間である。3次元仮想空間の基準点は、3次元仮想空間におけるユーザUの眼の位置に対応させて設定されている。3次元仮想空間の基準点に中心Cが設定された球体型モデルMsに全天球画像IをマッピングしてHMD4に投影することで、ユーザUは、全天球カメラ2の撮像位置に相当する視点で3次元仮想空間を観測することになる。なお、球体型モデルMsの半径rの設定については後述する。
【0017】
横平面型モデルMhは、
図2の斜線部に示すように、球体型モデルMsの中心C(3次元仮想空間の基準点)から見て下方向に配置され、概ね水平方向に広がる平面を複数のメッシュの組合せにより構成した2次元のモデルデータである。球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMhまでの距離Dh、すなわち、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMhへ下した垂線の長さは、記憶部32に記憶された地面距離情報に基づいて設定されている。
【0018】
具体的に、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMhまでの距離Dhは、地面距離情報によって示される全天球カメラ2の撮像位置から地面までの距離D1に対応するように設定されている。つまり、全天球画像Iの撮像時における全天球カメラ2の地面からの設置高さが高くなる(または低くなる)に従って、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMhまでの距離Dhが長くなる(または短くなる)。このような横平面型モデルMhが球体型モデルMsと組み合わされることで全体として3次元のモデルデータが生成される。モデル形成部33により形成された3次元モデル(球体型モデルMsおよび横平面型モデルMh)は、描画部34に伝えられる。
【0019】
描画部34は、3次元仮想空間における基準点の座標値を基に、モデル形成部33で形成された球体型モデルMs上の各頂点の座標値と記憶部32に記憶された全天球画像Iの座標値とを対応付けるとともに、モデル形成部33で形成された横平面型モデルMh上の各頂点の座標値と記憶部32に記憶された全天球画像Iの座標値とを対応付ける処理を実行する。また、描画部34は、横平面型モデルMh上の各頂点の座標値に対応する全天球画像Iの座標値を、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMh上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点に設定されている全天球画像Iの座標値に置き換える処理を実行する。これにより、描画部34は、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhに全天球画像Iをマッピングして3次元仮想空間の背景画像Imapを形成し、その背景画像Imapを出力部35経由でHMD4に出力する。
【0020】
図3は、描画部34で実行される球体型モデルMs上の各頂点の座標値を全天球画像Iの座標値に対応付ける処理を説明するための概念図である。
図3の右側に示すように、3次元仮想空間の基準点を中心Cとする半径rの球面上には、球体型モデルMsを構成する複数のメッシュの各頂点(図示せず)が存在している。互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸の3軸から構成される直交座標系(以下、「XYZ座標系」とする)において、3次元仮想空間の基準点の座標値を(a,b,c)とすると、球体型モデルMs上の各頂点の座標値(x,y,z)は、球面の方程式:(x-a)
2+(y-b)
2+(z-c)
2=r
2を用いて表すことができる。
【0021】
一方、全天球画像Iの座標系については、
図3の左側に示すように、3次元モデルにテクスチャ(画像)をマッピングするときに、貼り付ける位置や方向、大きさなどを指定するために使用されるUV座標系が設定されている。このようなUV座標系の全天球画像Iが、モデル形成部33により形成された3次元モデル(球体型モデルMsおよび横平面型モデルMh)にマッピングされる。つまり、3次元モデルにマッピングされる画像には、該3次元モデル上の各頂点におけるXYZ座標系の座標値に対して一意的に設定されるUV座標系の座標値が設定される。第1実施形態において、球体型モデルMsにマッピングされる画像は、上記のような球体型モデルMs上の各頂点のXYZ座標値に一対一の関係で設定されるUV座標値を有している。また、横平面型モデルMhにマッピングされる画像は、後述するような横平面型モデルMh上の各頂点のXYZ座標値に一対一の関係で設定されるUV座標値を有している。
【0022】
具体的に、球体型モデルMsにマッピングされる画像(全天球画像I)には、2次元の直交座標系であって、横方向の軸がU、縦方向の軸がVとなるUV座標系が設定されている(
図3の左側)。全天球画像I上には等間隔の格子状に頂点が設定されており、該各頂点のUV座標値が、球体型モデルMs上の各頂点のXYZ座標値にそれぞれ対応付けられている。UV座標値は、U軸およびV軸の各方向について0~1の範囲内で設定されている。このように全天球画像I上において等間隔の格子状に頂点を設定することで、球体型モデルMsに貼り付けられる全天球画像Iの歪みが軽減される。ただし、球体型モデルMs上でのメッシュ作成の都合上、端点となる極点の付近(
図3の右側において破線で囲んだ範囲)については、全天球画像Iの対応する領域に格子状ではなく三角波状の頂点を設定している。このため、球体型モデルMsの極点付近では、全天球画像Iのうちで球体型モデルMsに貼り付けられない領域が僅かではあるが生じる。
図3の左側における斜線領域は、球体型モデルMsに貼り付けられる全天球画像Iの領域を表している。
【0023】
図4は、描画部34で実行される横平面型モデルMh上の各頂点の座標値に対応するUV座標値を球体型モデルMsに設定されているUV座標値に置き換える処理を説明するための概念図である。なお、
図4は、
図2の球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhをX-Z平面で切断した断面を表している。
【0024】
図4の上段に示すように、横平面型モデルMhは、球体型モデルMsの中心Cから下方に距離Dhだけ離れた位置に設けられている。横平面型モデルMh上には、横平面型モデルMhを構成するメッシュの各頂点Ph(細線白丸印)が配置されている。横平面型モデルMhの各頂点Phには、3次元仮想空間におけるXYZ座標系の座標値(x,y,z)が設定されている。前述したように3次元仮想空間の基準点の座標値を(a,b,c)とした場合、各頂点PhのZ軸方向の座標値はz=c-Dhで表わされる。
【0025】
上記のような横平面型モデルMhにマッピングされる画像は、前述したように横平面型モデルMh上の各頂点のXYZ座標値に一対一の関係で設定されるUV座標値を有している。第1実施形態では、描画部34が、横平面型モデルMh上の各頂点のXYZ座標値に対応するUV座標値を、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMh上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点に設定されているUV座標値に置き換える処理を実行する。この処理では、まず、
図4の中段に示すように、描画部34が、球体型モデルMsの中心Cと横平面型モデルMh上の各頂点Phとをそれぞれ結ぶ直線を設定し、該各直線を径方向外側に延長する(
図4の点線)。これらの直線は、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMh上の各頂点Phに向かう方向ベクトルに対応している。
【0026】
そして、描画部34は、各々の直線(方向ベクトル)と球体型モデルMsとの各交点Ps(太線白丸印)を特定する。各交点Psには、球体型モデルMsにマッピングされた全天球画像IのUV座標値がそれぞれ設定されている。そこで、描画部34は、各交点Psに設定されているUV座標値を取得して、
図4の下段に示すように、横平面型モデル上の各頂点PhのXYZ座標値に対応するUV座標値を該取得した各UV座標値に置き換える。なお、横平面型モデルMh上の各頂点Phのうち、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhが重なる部分に配置されている頂点PhのXYZ座標値に対応するUV座標値については、該頂点Phに一致する球体型モデルMs上の点に設定されているUV座標値に置き換えられる。このような一連の処理により、全天球画像Iのうちの地面に対応する画像が横平面型モデルMhに貼り付けられるようになる。
【0027】
上記のようにして描画部34により球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhに全天球画像Iをマッピングして形成された3次元仮想空間の背景画像Imapは、画像処理装置3の出力部35(
図1)に伝えられる。出力部35は、描画部34からの背景画像Imapを、コンピュータシステムの通信インターフェースを利用してHMD4に出力する。
【0028】
HMD4は、画像処理装置3からの背景画像Imapを3次元仮想空間の背景として投影することにより、ユーザUに立体的な仮想空間を知覚させることが可能な周知の表示装置である。また、HMD4に関しては、HMD4に内蔵されたセンサ等によって、ユーザUの頭部の動きを検出するヘッドトラッキングの機能や、ユーザUの身体の動きを検出するポジショントラッキングの機能が実現されていてもよい。当該機能により検出されたユーザUの動きに関する情報は、画像処理装置3の入力部31を介して描画部34に伝達され、ユーザUの動きに連動した背景画像Imapの更新処理などに利用される。
【0029】
上記のような第1実施形態による画像処理装置3が適用された運転シミュレータシステム1では、全天球カメラ2によって現実空間を撮像した全天球画像Iが画像処理装置3により球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhにマッピングされて3次元仮想空間の背景画像Imapが形成され、該背景画像ImapがHMD4に投影される。これにより、HMD4を装着したユーザUは、HMD4に投影される3次元仮想空間の背景画像Imapを全天球カメラ2の撮像位置に相当する視点で観測することができる。
【0030】
このとき、地面に対応した横平面型モデルMhから球体型モデルMsの中心C(3次元仮想空間の基準点)までの距離Dhが、全天球画像Iの撮像時における全天球カメラ2の撮像位置から地面までの距離D1に対応させて設定されているため、横平面型モデルMhにマッピングされた地面の画像を見たユーザUが、3次元仮想空間内での地面までの距離に違和感を覚えるのを抑制することが可能である。したがって、第1実施形態の画像処理装置3によれば、全天球カメラ2で撮像した全天球画像Iを用いて3次元仮想空間における没入感の高い背景画像を生成することができる。特に、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhの各頂点のXYZ座標値と全天球画像IのUV座標値とが対応付けられるようにすれば、汎用性の高いマッピング処理を実現することが可能になる。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態に係る画像処理装置について説明する。
上述した第1実施形態による画像処理装置3では、モデル形成部33により、球体型モデルMsと、地面に対応する横平面型モデルMhとを組み合わせた3次元モデルが形成される場合を説明した。第2実施形態による画像処理装置3では、モデル形成部33が、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhに加えて、立体物に対応した縦平面型モデルMvを形成する場合について説明する。
【0032】
図5は、第2実施形態におけるモデル形成部33で形成される3次元モデル(球体型モデルMs、横平面型モデルMhおよび縦平面型モデルMv)を示す概念図である。なお、第2実施形態による画像処理装置3の機能ブロック、および第2実施形態による画像処理装置3を適用した運転シミュレータシステム1の構成は、上述の
図1に示した第1実施形態の構成と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、第2実施形態におけるモデル形成部33は、上述した第1実施形態の場合と同様にして球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhを形成するとともに、全天球画像Iに含まれている立体物に対応した縦平面型モデルMvを形成する。縦平面型モデルMvは、
図5の斜線部に示すように、球体型モデルMsの中心C(3次元仮想空間の基準点)から見て横方向に配置され、概ね垂直方向に広がる平面を複数のメッシュの組合せにより構成した2次元のモデルデータである。
図5に示した一例では、縦平面型モデルMvが、球体型モデルMsの中心Cに対してX軸方向に間隔を空けて配置され、Y-Z平面に略平行に形成されている。球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMvまでの距離Dvは、記憶部32に記憶された立体物距離情報に基づいて設定されている。
【0034】
具体的に、球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMvまでの距離Dvは、立体物距離情報によって示される全天球カメラ2の撮像位置から立体物までの距離D2に対応するように設定されている。つまり、全天球画像Iの撮像時における全天球カメラ2の設置位置に対して立体物が離れる(または近づく)に従って、球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMvまでの距離Dvが長くなる(または短くなる)。このような縦平面型モデルMvが球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhと組み合わされることで全体として3次元のモデルデータが生成される。モデル形成部33により形成された3次元モデル(球体型モデルMs、横平面型モデルMhおよび縦平面型モデルMv)は、描画部34に伝えられる。
【0035】
第2実施形態における描画部34は、上述した第1実施形態の場合と同様にして、横平面型モデルMh上の各頂点のXYZ座標値に対応するUV座標値を、球体型モデルMsの中心Cから横平面型モデルMh上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点に設定されているUV座標値に置き換えるとともに、縦平面型モデルMv上の各頂点のXYZ座標値に対応するUV座標値を、球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMv上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点に設定されているUV座標値に置き換える処理を実行する。そして、描画部34は、球体型モデルMs、横平面型モデルMhおよび縦平面型モデルMvに全天球画像Iをマッピングして3次元仮想空間の背景画像Imapを形成し、その背景画像Imapを出力部35経由でHMD4に出力する。
【0036】
図6は、第2実施形態における描画部34で実行される縦平面型モデルMv上の各頂点の座標値に対応するUV座標値を球体型モデルMsに設定されているUV座標値に置き換える処理を説明するための概念図である。なお、
図6は、
図5の球体型モデルMs、横平面型モデルMhおよび縦平面型モデルMvをX-Z平面で切断した断面を表している。
【0037】
図6の上段に示すように、縦平面型モデルMvは、球体型モデルMsの中心Cから横方向(X軸方向)に距離Dvだけ離れた位置に設けられている。縦平面型モデルMv上には、縦平面型モデルMvを構成するメッシュの各頂点Pv(細線白丸印)が配置されている。縦平面型モデルMvの各頂点Pvには、3次元仮想空間におけるXYZ座標系の座標値(x,y,z)が設定されている。上述した第1実施形態の場合と同様に3次元仮想空間の基準点の座標値を(a,b,c)とした場合、各頂点PvのX軸方向の座標値はx=a-Dvで表わされる。
【0038】
上記のような縦平面型モデルMvにマッピングされる画像は、縦平面型モデルMv上の各頂点のXYZ座標値に一対一の関係で設定されるUV座標値を有している。第2実施形態では、描画部34が、縦平面型モデルMv上の各頂点のXYZ座標値に対応するUV座標値を、球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMv上の各頂点に向かう各々の方向ベクトルと球体型モデルMsとの各交点に設定されているUV座標値に置き換える処理を実行する。この処理では、まず、
図6の中段に示すように、描画部34が、球体型モデルMsの中心Cと縦平面型モデルMv上の各頂点Pvとをそれぞれ結ぶ直線を設定し、該各直線を径方向外側に延長する(
図6の点線)。これらの直線は、球体型モデルMsの中心Cから縦平面型モデルMv上の各頂点Pvに向かう方向ベクトルに対応している。
【0039】
そして、描画部34は、各々の直線(方向ベクトル)と球体型モデルMsとの各交点Ps(太線白丸印)を特定する。各交点Psには、球体型モデルMsにマッピングされた全天球画像IのUV座標値がそれぞれ設定されている。そこで、描画部34は、各交点Psに設定されているUV座標値を取得して、
図6の下段に示すように、縦平面型モデル上の各頂点PvのXYZ座標値に対応するUV座標値を該取得した各UV座標値に置き換える。なお、縦平面型モデルMv上の各頂点Pvのうち、球体型モデルMsの外側に配置されている頂点PvのXYZ座標値に対応するUV座標値については、該頂点Pvと球体型モデルMsの中心Cとを結ぶ線分上にある球体型モデルMsの交点Psに設定されているUV座標値に置き換えられる。このような一連の処理により、全天球画像Iのうちの立体物に対応する画像領域が縦平面型モデルMvに貼り付けられるようになる。
【0040】
上記のような第2実施形態による画像処理装置3が適用された運転シミュレータシステム1では、全天球カメラ2によって現実空間を撮像した全天球画像Iが画像処理装置3により球体型モデルMs、横平面型モデルMhおよび縦平面型モデルMvにマッピングされて3次元仮想空間の背景画像Imapが形成され、該背景画像ImapがHMD4に投影される。立体物に対応した縦平面型モデルMvを形成して全天球画像Iをマッピングするようにしたことで、より違和感の少ない3次元仮想空間の背景画像を生成することができる。
図7は、第2実施形態による効果を説明するための概念図である。
【0041】
図7の上段および中段に示すように、全天球カメラ2によって地面Gおよび立体物Oを含む現実空間を撮像した全天球画像Iを用いて3次元仮想空間の背景画像を作成する際、球体型モデルMsおよび横平面型モデルMhだけが形成される第1実施形態の場合には、立体物Oの位置が全天球カメラ2の撮像位置から離れるほど、該立体物の画像Ioが貼り付けられる3次元モデルのメッシュの粗さが目立つようになるとともに、立体物Oから撮像位置までの距離D2に応じて、横平面型モデルMhに貼り付けられる立体物の画像Ioに歪みが生じ得る。このようなメッシュの粗さや立体物の画像Ioの歪みは、
図7の下段に示すように、立体物に対応した縦平面型モデルMvを用意することにより軽減することができる。特に、縦平面型モデルMvから球体型モデルMsの中心Cまでの距離Dvが、全天球カメラ2の撮像位置から立体物Oまでの距離D2に対応させて設定されるようにすれば、縦平面型モデルMvに立体物の画像Ioを歪みなく貼り付けることが可能になる。したがって、第2実施形態の画像処理装置3によれば、全天球カメラ2で撮像した全天球画像Iを用いて3次元仮想空間における没入感のより高い背景画像を生成することができる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係る画像処理装置について説明する。
上述した第2実施形態による画像処理装置3では、立体物に対応した縦平面型モデルMvを形成することにより、メッシュの粗さや立体物の画像Ioの歪みが軽減される場合を説明した。第3実施形態による画像処理装置3では、縦平面型モデルMvを形成する代わりに、球体型モデルMsの半径rを調整することで、第2実施形態の場合と同様な効果を実現する一例について説明する。なお、第3実施形態による画像処理装置3の機能ブロック、および第3実施形態による画像処理装置3を適用した運転シミュレータシステム1の構成は、上述の
図1に示した第1実施形態の構成と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0043】
図8は、第3実施形態において全天球画像Iが貼り付けられる3次元モデル(球体型モデルMsおよび横平面型モデルMh)をX-Z平面で切断した断面を示す概念図である。
図8に示すように、第3実施形態による画像処理装置3では、上述した第1実施形態の場合と同様にして描画部34により形成された背景画像Imapにおける立体物に対応する画像Ioの少なくとも一部が、横平面型モデルMhにマッピングされている場合に(
図8の上段)、モデル形成部33が、記憶部32に記憶された立体物距離情報に基づいて球体型モデルMsの半径をrからr’に調整する(
図8の下段)。このような球体型モデルMsの半径r’への調整によって、全天球画像Iのうちの立体物に対応する画像Ioが球体型モデルだけにマッピングされる。
【0044】
上記のような球体型モデルMsの半径の調整について、例えば、一般的な市街地の道路を走行する車両における運転者の視点を基準にした3次元仮想空間の背景を作成する場合を想定して具体的に説明すると、幅2.5mの車両が通る道路の最低の道幅は6.5mである。この道路の幅方向の中心から外側へ1m程度ずれた位置に運転姿勢があると仮定すると、運転者の視点から道路端までの距離は(6.5/2)-1.0=2.25mとなる。ここで、道路端の外側に幅1.0mの歩道をさらに仮定し、その先に家や建築物、森林などの立体物があると想定すると、運転者の視点から立体物までの距離は2.25+1.0=3.25mとなる。
【0045】
したがって、一般的な市街地の道路を走行中の車両を想定した場合には、モデル形成部33により形成される球体型モデルMsの調整後の半径r’が3.25mとなるように設定するのがよい。このように車両が走行する道路の道幅に基づいて球体型モデルMsの半径の調整を行うことにより、一般的な市街地の道路での走行シーンにおいて、運転者からの周囲の立体物の見え方に違和感のない3次元仮想空間の背景画像ImapをHMD4に投影することができる。
【0046】
また、例えば、駐車場などの開けた場所を走行する場合には、全天球カメラ2に最も近い立体物までの距離を球体型モデルMsの半径r’として設定するのがよい。すなわち、全天球カメラ2によって撮像する現実空間内に複数の立体物が含まれているときに、全天球カメラ2の撮像位置から複数の立体物のうちで全天球カメラ2に最も近い立体物までの距離を測定して、その距離を示す立体物最短距離情報を画像処理装置3の記憶部32に記憶させておく。そして、モデル形成部33で球体型モデルMsの半径の調整を行う際に、記憶部32に記憶されている立体物最短距離情報に基づいて球体型モデルMsの半径r’を設定する。
【0047】
このような球体型モデルMsの半径の調整を行うようにすれば、一般的な市街地の道路での走行シーンにおいて、駐車場などの開けた場所を通る際にも、運転者からの周囲の立体物の見え方に違和感のない3次元仮想空間の背景画像ImapをHMD4に投影することができる。なお、球体型モデルMsの調整後の半径r’が小さ過ぎる場合、地面に対応する横平面型モデルMhが球体型モデルMsの外側に位置してしまい、3次元仮想空間の背景を作成するための3次元モデルとして不適となる可能性がある点に注意する必要がある。
【0048】
以上、本発明の第1~3実施形態について述べたが、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。例えば、上述した第1~3実施形態では、全天球画像IにUV座標系が設定されている一例を示したが、UV座標系以外の他の座標系が全天球画像Iに設定されていてもよい。
【0049】
また、上述した第2実施形態では、立体物に対応した縦平面型モデルMvが1つだけ形成される場合を説明したが、2つ以上の縦平面型モデルMvを形成するようにしてもよい。具体的な一例を挙げると、トンネルや市街地のように車両が走行する道路の左右方向のみに立体物が配置されているような場合には、
図9に示すように、球体型モデルMsの半径rを適当な大きさに設定した上で、上述した第2実施形態の縦平面型モデルMvと同様な縦平面型モデルMv’を、球体型モデルMsの中心Cを挟んで縦平面型モデルMvとは反対側に形成して、左右の縦平面型モデルMv,Mv’に全天球画像Iをマッピングするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…運転シミュレータシステム
2…全天球カメラ
3…画像処理装置
4…ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
31…入力部
32…記憶部
33…モデル形成部
34…描画部
35…出力部
C…球体型モデルの中心(3次元仮想空間の基準点)
D1…撮像位置から地面までの距離
D2…撮像位置から立体物までの距離
Dh…球体型モデルの中心から横平面型モデルまでの距離
Dv…球体型モデルの中心から縦平面型モデルまでの距離
G…地面
I…全天球画像
Io…立体物の画像
Imap…3次元仮想空間の背景画像
Mh…横平面型モデル
Ms…球体型モデル
Mv,Mv’…縦平面型モデル
O…立体物
Ph…横平面型モデルの頂点
Ps…方向ベクトルと球体型モデルとの交点
Pv…縦平面型モデルの頂点
r,r’…球体型モデルの半径