(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023163718
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】水栓用ボタン
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
E03C1/042 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074799
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝典
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BB01
2D060BC01
2D060BC11
2D060BC12
2D060BE11
2D060BF01
(57)【要約】
【課題】インナーボタンにボタンカバーを取り付ける作業を簡単に行う。
【解決手段】水栓用ボタンは、インナーボタン30と、インナーボタン30に取り付けられるボタンカバー40とを備える。インナーボタン30は、第1被係合部、及び、第2被係合部を有する。ボタンカバー40は、第1被係合に係合する当接係合部を有するとともに、当接係合部が第1被係合部に当接した状態で当接係合部を中心にボタンカバー40を回動させることによって第2被係合部に係合する回動係合部を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーボタンと、前記インナーボタンに取り付けられるボタンカバーとを備える水栓用ボタンであって、
前記インナーボタンは、第1被係合部、及び、第2被係合部を有し、
前記ボタンカバーは、前記第1被係合部に係合する当接係合部を有するとともに、
前記当接係合部が前記第1被係合部に当接した状態で前記当接係合部を中心に前記ボタンカバーを回動させることによって前記第2被係合部に係合する回動係合部を有することを特徴とする水栓用ボタン。
【請求項2】
前記インナーボタンは、前記ボタンカバーの回動軸方向に沿う前記ボタンカバーの移動を規制する規制部を有する請求項1に記載の水栓用ボタン。
【請求項3】
前記インナーボタンは、前記ボタンカバーの回動軸方向に沿う前記ボタンカバーの両外側に前記規制部を有する請求項2に記載の水栓用ボタン。
【請求項4】
前記第1被係合部は、溝部であり、前記当接係合部は、爪部である請求項1に記載の水栓用ボタン。
【請求項5】
前記ボタンカバーは、前記インナーボタンの上面を覆う上面カバー部と、
前記インナーボタンの前面を覆う前面カバー部と、
前記インナーボタンの下面を覆う下面カバー部とを有し、
前記上面カバー部は、前記当接係合部を有しているとともに、
前記下面カバー部は、前記回動係合部を有している請求項1~4のいずれか一項に記載の水栓用ボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用ボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、押しボタンを備える水栓について記載している。
図17、18に示すように、押しボタン61を押圧操作すると、押しボタン61の背面の当接部62がプッシャー(図示省略)を押圧する。プッシャーが押圧されると、開閉バルブユニット(図示省略)が操作される。開閉バルブユニットが操作されることによって、吐水口64からの吐止水が行われる。
【0003】
押しボタン61は、押しボタン61の開口部61aを塞ぐ塞ぎ部材63を有している。塞ぎ部材63は、裏面の4箇所にスナップ固定用突起63aを有している。塞ぎ部材63を押しボタン61の上方から押し込み、スナップ固定用突起63aを押しボタン61の開口部61aに係合させることによって、塞ぎ部材63は押しボタン61に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の水栓60では、ボタンカバーとしての塞ぎ部材63を、インナーボタンとしての押しボタン61に取り付ける際に、4箇所のスナップ固定用突起63aの位置を正しい位置に合わせる必要があった。4箇所のスナップ固定用突起63aの位置が正しい位置にないと、スナップ固定用突起63aがインナーボタンの開口部61aに係合しないため、ボタンカバーを取り付けることができない。しかし、スナップ固定用突起63aの位置を目視で確認しながら取付作業を行うことは難しいため、インナーボタンにボタンカバーを取り付ける作業が難しいという課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための水栓用ボタンは、インナーボタンと、前記インナーボタンに取り付けられるボタンカバーとを備える水栓用ボタンであって、前記インナーボタンは、第1被係合部、及び、第2被係合部を有し、前記ボタンカバーは、前記第1被係合に係合する当接係合部を有するとともに、前記当接係合部が前記第1被係合部に当接した状態で前記当接係合部を中心に前記ボタンカバーを回動させることによって前記第2被係合部に係合する回動係合部を有することを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、ボタンカバーの当接係合部がインナーボタンの第1被係合部に当接した状態で当接係合部を中心にボタンカバーを回動させると、ボタンカバーの回動係合部をインナーボタンの第2被係合部に係合させることができる。そのため、インナーボタンにボタンカバーを取り付ける作業を簡単に行うことができる。
【0008】
上記水栓用ボタンについて、前記インナーボタンは、前記ボタンカバーの回動軸方向に沿う前記ボタンカバーの移動を規制する規制部を有することが好ましい。この構成によれば、ボタンカバーの回動軸方向に沿うボタンカバーの位置ずれを抑制することができる。
【0009】
上記水栓用ボタンについて、前記インナーボタンは、前記ボタンカバーの回動軸方向に沿う前記ボタンカバーの両外側に前記規制部を有することが好ましい。この構成によれば、規制部によって、ボタンカバーとボタンカバーの両外側に位置する他の部材との干渉を抑制することができる。
【0010】
上記水栓用ボタンについて、前記第1被係合部は、溝部であり、前記当接係合部は、爪部であることが好ましい。この構成によれば、ボタンカバーの爪部が第1被係合部に当接した状態で回動させやすくなる。
【0011】
上記水栓用ボタンについて、前記ボタンカバーは、前記インナーボタンの上面を覆う上面カバー部と、前記インナーボタンの前面を覆う前面カバー部と、前記インナーボタンの下面を覆う下面カバー部とを有し、前記上面カバー部は、前記当接係合部を有しているとともに、前記下面カバー部は、前記回動係合部を有していることが好ましい。この構成によれば、回動中心となる当接係合部と、回動係合部との離間距離が相対的に大きくなる。そのため、下面カバー部の回動係合部をインナーボタンの第2被係合部に係合させる際にボタンカバーが弾性変形しやすくなる。したがって、回動係合部とインナーボタンの第2被係合部との係合状態を形成しやすくなる。また、正面からボタンカバーを見た際に、当接係合部や回動係合部を見えにくくすることができる。そのため、ボタンカバーの意匠性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水栓用ボタンによれば、インナーボタンにボタンカバーを取り付ける作業を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3は弁ユニットと水栓用ボタンの分解斜視図である。
【
図4】
図4は別角度の弁ユニットと水栓用ボタンの分解斜視図である。
【
図5】
図5は押圧操作前の水栓用ボタンの断面図である。
【
図6】
図6は押圧操作時の水栓用ボタンの断面図である。
【
図8】
図8は別角度の水栓用ボタンの分解斜視図である。
【
図9】
図9は水栓用ボタンの組立方法を示す断面図である。
【
図13】
図13は変更例の水栓用ボタンの組立方法を示す断面図である。
【
図14】
図14は変更例の水栓用ボタンの組立後を示す断面図である。
【
図15】
図15は別の変更例の水栓用ボタンの組立方法を示す斜視図である。
【
図16】
図16は別の変更例の水栓用ボタンの組立後を示す斜視図である。
【
図18】
図18は従来技術の水栓用ボタンの裏面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
水栓用ボタンの実施形態を説明する。
図1に示すように、水栓10は、浴室の壁面Wに設置されている。以下では、壁面W側に向かって水栓10を見た場合における上下方向、左右方向、及び、前後方向をそれぞれ、水栓10の上下方向、左右方向、及び、前後方向として説明する。
【0015】
図1、2示すように、水栓10は、カラン用の吐水管12及びシャワーヘッド用のホース13が接続される水栓本体11を備えている。また、水栓10は、壁面Wに取り付けられて水栓本体11を支持する支持部材14と、水栓本体11の上部に配置される天板15と、水栓本体11を覆うカバーとを備えている。カバーは、水栓本体11の前方、及び左右両側を覆うトップカバー16と、水栓本体11の下方を覆うアンダーカバー(図示省略)とを有している。
【0016】
以下、水栓本体11について説明する。
<水栓本体10>
図2に示すように、水栓本体11は筒状に構成されている。水栓本体11は、軸方向が左右方向に沿うように配置されている。
【0017】
水栓本体11の後方側に、給水管17、及び、給湯管18が接続されている。
水栓本体11の前面には、二つのハンドル19と、二つの水栓用ボタン(以下、単にボタンともいう。)20とが配置されている。二つのハンドル19のうち、左側のハンドル19が温度調節ハンドル19aであり、右側のハンドル19が流量調節ハンドル19bである。二つのボタン20のうち、左側のボタン20がカラン吐水用のボタン20aであり、右側のボタン20がシャワー吐水用のボタン20bである。カラン吐水用のボタン20aを操作することにより、カラン用の吐水管12からの吐止水を切り替えることができる。また、シャワー吐水用のボタン20bを操作することにより、シャワーヘッド(図示省略)からの吐止水を切り替えることができる。
【0018】
図3に示すように、水栓本体11は、水栓本体11の軸方向における中央部よりも右側に、弁ユニット21を取り付けるための開口部11aを二つ有している。二つの開口部11aは、左右方向に沿って並設されている。各開口部11aの周囲には、前側に延びる周壁11bを有しており、周壁11bの内周にネジ溝が形成されている。
【0019】
2つの開口部11aのうち、左側の開口部11aである第1開口部11a1には、固定ナット22を用いてカラン吐水用の第1弁ユニット21aが取り付けられている。右側の開口部11aである第2開口部11a2には、固定ナット22を用いてシャワー吐水用の第2弁ユニット21bが取り付けられている。
【0020】
以下、弁ユニット21について説明する。
なお、第1弁ユニット21aと第2弁ユニット21bは同じ形状であるため、以下では第2弁ユニット21bについて説明し、第1弁ユニット21aについては説明を省略する。
【0021】
<第2弁ユニット21b>
図3、4に示すように、第2弁ユニット21bは、筒状に構成されており、内部に弁体(図示省略)を有している。第2弁ユニット21bは、軸方向における前側に操作子23b(23)を有している。操作子23bを後方に押し込むことにより、弁体を操作してシャワーヘッドからの吐止水を切り替えることができるように構成されている。同様に、第1弁ユニット21aでは、操作子23a(23)を後方に押し込むことにより、弁体を操作して吐水管12からの吐止水を切り替えることができるように構成されている。
【0022】
水栓本体11に弁ユニット21が取り付けられていることにより、弁体は水栓本体11に収容された状態となる。また、弁体を操作する操作子23a、23bは、水栓本体11に取り付けられた状態となる。
【0023】
以下、トップカバー16について説明する。
<トップカバー16>
図2に示すように、トップカバー16は、前面に四つの貫通孔16a、16bを有する。四つの貫通孔16a、16bは、左右方向に沿って並設されている。四つの貫通孔16a、16bのうち左側の二つの貫通孔16aは、円形の周縁を有しており、温度調節ハンドル19aと、流量調節ハンドル19bが挿通される貫通孔16aである。
【0024】
四つの貫通孔16a、16bのうち右側の二つの貫通孔16bは、四角形の周縁を有しており、カラン吐水用のボタン20aと、シャワー吐水用のボタン20bが挿通されるボタン用の貫通孔16bである。
【0025】
トップカバー16の材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用することができる。樹脂の表面に金属メッキが形成されていてもよい。トップカバー16は、金属製であると、強度を向上させることができるため好ましい。
【0026】
後述のように、トップカバー16の内側に枠部材25が取り付けられる。さらに、枠部材25に、カラン吐水用のボタン20aと、シャワー吐水用のボタン20bが取り付けられる。
【0027】
以下、枠部材25について説明する。
<枠部材25>
図3、4に示すように、枠部材25は、左右方向に長い矩形板状に構成されている。枠部材25は、カラン吐水用のボタン20aとシャワー吐水用のボタン20bが挿通される貫通孔25aを有している。これらの貫通孔25aの周縁から、枠部材25の厚さ方向に沿って延びる周壁25bを有している。また、枠部材25の上端部に、軸部材26を挿通させる挿通孔25cを有している。
【0028】
図1に示すように、枠部材25が、トップカバー16の内側に取り付けられた状態で、枠部材25の周壁25bは、トップカバー16のボタン用の貫通孔16bの内周縁に沿って配置される。
【0029】
枠部材25の材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用することができる。樹脂の表面に金属メッキが形成されていてもよい。枠部材25は、樹脂製であると、後述するインナーボタン30の材質が樹脂製であった場合に、インナーボタン30との摺動性を向上させることができるため好ましい。
【0030】
以下、ボタン20について説明する。
<ボタン20>
図3、4に示すように、カラン吐水用のボタン20aと、シャワー吐水用のボタン20bは、正面視で四角形状に構成されている。これらのボタン20a、20bの上端部には、後述するように、挿通孔32bを有する回動軸部32aが設けられている。枠部材25に設けられた挿通孔25cと、ボタン20の回動軸部32aの挿通孔32bの両方に軸部材26が挿通されることによって、枠部材25に上記二つのボタン20a、20bは取り付けられる。
【0031】
トップカバー16に枠部材25が取り付けられ、さらに、枠部材25に上記二つのボタン20a、20bが取り付けられると、二つのボタン20a、20bは、周囲を枠部材25の周壁25bで囲まれた状態になる。さらに、トップカバー16のボタン用の貫通孔16bに挿通された状態となる。そして、二つのボタン20a、20bは、枠部材25に対して回動軸部32aを中心に回動可能となる。
【0032】
図1に示すように、カラン吐水用のボタン20aとシャワー吐水用のボタン20bの周囲が枠部材25の周壁25bで囲まれている。これにより、ボタン20a、20bが押し込み操作された際に、ボタン20a、20bとトップカバー16とが干渉することを抑制することができる。
【0033】
以下、ボタン20の詳細について説明する。
なお、カラン吐水用のボタン20aとシャワー吐水用のボタン20bは同じ形状であるため、以下ではシャワー吐水用のボタン20bについて説明し、カラン吐水用のボタン20aについては説明を省略する。
【0034】
図3、4に示すように、シャワー吐水用のボタン20bは、インナーボタン30と、インナーボタン30に取り付けられるボタンカバー40とを備える。
(インナーボタン30)
図7、8に示すように、インナーボタン30は、正面視で四角形状の本体部31を有する。また、本体部31の上端部から本体部31の厚さ方向に沿って後方に延びる天壁32を有する。また、本体部31の下端部から本体部31の厚さ方向に沿って後方に延びる底壁33を有する。また、本体部31の左右両端部から本体部31の厚さ方向に沿って後方に延びる一対の側壁34を有する。本体部31、天壁32、底壁33は、それぞれインナーボタン30の前面、上面、下面を構成する。
【0035】
天壁32は、天壁32の後端部で、且つ天壁32の左右方向の両端部から上方に延びる一対の回動軸部32aを有する。回動軸部32aは、左右方向に延びる挿通孔32bを有している。
【0036】
天壁32は、一対の回動軸部32aの前方側に、一対の溝部32cを有する。一対の溝部32cは、深さ方向が下方であるとともに、左右方向に沿って延びている。一対の溝部32cは、後述するボタンカバー40の爪部42aが係合する第1被係合部として機能する。
【0037】
一対の溝部32cの左右方向の内側の端部に、一対の仕切り壁32dを有する。一対の仕切り壁32dは、後述するボタンカバー40の左右方向、すなわち回動軸方向に沿うボタンカバー40の移動を規制する規制部として機能する。一対の溝部32cの左右方向の外側の端部は、開放されている。
【0038】
天壁32は、一対の仕切り壁32dよりも左右方向の内側に、切欠き32eを有する。この切欠き32eは、天壁32の後端部から前方に向かって延びている。
本体部31は、左右方向に沿う壁面を有している。この壁面は、左右方向から見た際に、上下方向の下方側が前方に向かって突出するように若干湾曲している。
【0039】
本体部31は、本体部31の裏面側である後方側の中央部に、後方に向かって突出する凸部31aを有する。この凸部31aは、第2弁ユニット21bの操作子23bを押し込む押し込み部として機能する。
【0040】
図7に示すように、本体部31は、本体部31を厚さ方向に貫通した肉抜き部50を有する。具体的には、本体部31の上下方向の中央部よりも下側、言い換えれば、凸部31aよりも下側に第1肉抜き部51を有する。また、第1肉抜き部51に連続して、凸部31aの左右両外側に第2肉抜き部52を有する。また、第2肉抜き部52に連続して、凸部31aよりも上側に第3肉抜き部53を有する。
【0041】
言い換えれば、第1肉抜き部51は、インナーボタン30の上面と下面とが対向する方向において、凸部31aよりもインナーボタン30の下面側に位置する。また、第2肉抜き部52は、第1肉抜き部51に連続して設けられ、回動軸部32aの軸方向に沿う凸部31aの両外側に位置する。また、第3肉抜き部53は、第2肉抜き部52に連続して設けられ、凸部31aよりもインナーボタン30の上面側に位置する。
【0042】
底壁33は、左右方向の中央部に切欠き33aを有している。この切欠き33aは、底壁33の後端部から前方に向かって延びている。
図8に示すように、底壁33の後端部における切欠き33aの左右方向の外側に、下方に突出した凸部33bを有する。この凸部33bは、後述するボタンカバー40の回動係合部が係合する第2被係合部として機能する。底壁33の前後方向の長さは、天壁32の前後方向の長さよりも長く構成されている。また、底壁33は、左右方向から見た際に、前後方向の中央部が下方に向かって突出するように若干湾曲している。底壁33が上記のように若干湾曲していることにより、インナーボタン30が回動軸部32aを中心に回動した際に、底壁33の壁面が円弧に略沿った状態になるように構成されている。
【0043】
側壁34は、天壁32、本体部31、及び底壁33の左方向の端部と、右方向の端部とに一対設けられている。側壁34の壁面は、前後方向と上下方向の両方に沿って延びている。また、側壁34の前後方向の長さは、上下方向の下方側に向かうにつれて、徐々に長くなっている。
【0044】
図7に示すように、側壁34は、天壁32の壁面よりも上方に突出した突出壁35を有している。側壁34は、本体部31の壁面より前方に突出した突出壁36を有している。側壁34は、底壁33の壁面より下方に突出した突出壁37を有している。天壁32、本体部31、及び底壁33の壁面から突出した突出壁35、36、37は、互いに連続して設けられている。突出壁35、36、37の突出高さは、ボタンカバー40の厚さと略等しく構成されている。
【0045】
一対の側壁34における一対の突出壁35、36、37同士の左右方向の間隔は、後述するボタンカバー40の左右方向の寸法と略等しく、一対の突出壁35、36、37の間にボタンカバー40を収容できるように構成されている。そのため、一対の突出壁35、36、37は、ボタンカバー40の回動軸方向に沿うボタンカバー40の両外側に位置する規制部として機能する。この規制部によっても、ボタンカバー40の左右方向、すなわち、回動軸方向に沿うボタンカバー40の移動が規制される。
【0046】
側壁34は、上下方向の中央部における後端部に、左右方向の外側に突出したストッパ部34aを有する。
図3、4に示すように、ストッパ部34aは、枠部材25の後方側から取り付けられたボタン20が、枠部材25の前方側から外れることを規制する。具体的には、ストッパ部34aが枠部材25の貫通孔25aの周縁に干渉することによって、それ以上ボタン20が前方側に移動しないように規制する機能を有している。
【0047】
インナーボタン30の材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用することができる。樹脂の表面に金属メッキが形成されていてもよい。インナーボタン30は、樹脂製であると、枠部材25の材質が樹脂製であった場合に、枠部材25との摺動性を向上させることができるため好ましい。
【0048】
(ボタンカバー40)
図7、8に示すように、ボタンカバー40は、インナーボタン30の天壁32、すなわち上面を覆う上面カバー部42を有する。また、インナーボタン30の本体部31、すなわち前面を覆う前面カバー部41を有する。また、インナーボタン30の底壁33、すなわち下面を覆う下面カバー部43を有する。
【0049】
上面カバー部42は、左右方向の両端部から後方に突出して延びるとともに、先端が後方斜め下に湾曲した一対の爪部42aを有する。
左右方向における一対の爪部42aの離間距離は、インナーボタン30の天壁32の一対の溝部32cにおける左右方向の離間距離に略等しい。
【0050】
後述のように、一対の爪部42aは、インナーボタン30にボタンカバー40を取り付ける際に、インナーボタン30の溝部32c(第1被係合部)に当接させる当接係合部として機能する。
【0051】
前面カバー部41は、インナーボタン30の本体部31に沿った形状を有している。すなわち、左右方向から見た際に、上下方向の下方側が前方に向かって突出するように若干湾曲している。
【0052】
下面カバー部43は、インナーボタン30の底壁33に沿った形状を有している。すなわち、左右方向から見た際に、前後方向の中央部が下方に向かって突出するように若干湾曲している。インナーボタン30の底壁33と、ボタンカバー40の下面カバー部43が上記の形状を有していることにより、ボタン20を回動させた際に、ボタン20が枠部材25に干渉することを抑制することができる。
【0053】
下面カバー部43は、中央部に切欠き43aを有している。この切欠き43aは、下面カバー部43の後端部から前方に向かって延びている。この切欠き43aの大きさは、インナーボタン30の底壁33の切欠き33aよりも小さく構成されている。
【0054】
図8に示すように、下面カバー部43は、後端部における切欠き43aの左右方向の外側に、貫通孔43bを有する。この貫通孔43bは、インナーボタン30の底壁33の凸部33b(第2被係合部)に係合する回動係合部として機能する。
【0055】
ボタンカバー40の材質は特に制限されず、金属製、樹脂製等を採用することができる。樹脂の表面に金属メッキが形成されていてもよい。ボタンカバー40は、金属製であると、強度を向上させることができるため好ましい。
【0056】
以下、ボタン20の組立方法について説明する。
<ボタン20の組立方法>
図9、10は、インナーボタン30の右側の側壁34を取り除いた断面図を示している(
図13、14も同様)。
【0057】
図9に示すように、インナーボタン30にボタンカバー40を取り付ける際は、まず、インナーボタン30の天壁32の溝部32c(第1被係合部)に、ボタンカバー40の上面カバー部42の爪部42a(当接係合部)を挿入する。一対の溝部32cに一対の爪部42aが当接した状態で、一対の爪部42aがインナーボタン30の一対の仕切り壁32dにも当接することによって、左右方向に対するボタンカバー40の移動が規定される。
【0058】
図10に示すように、爪部42aが溝部32cに当接した状態で爪部42aを中心にボタンカバー40を反時計回りに回動させる。爪部42aが溝部32cに当接していることによって、前後方向への爪部42aの移動を抑制しながら、安定した状態でボタンカバー40を回動させることができる。ボタンカバー40の下面カバー部43の貫通孔43b(回動係合部)を、インナーボタン30の底壁33の凸部33b(第2被係合部)に係合させる。ボタンカバー40の弾性変形とその後の復元によって、下面カバー部43の貫通孔43bは、底壁33の凸部33bに係合した状態となる。以上の動作によって、インナーボタン30にボタンカバー40が取り付けられる。
【0059】
なお、上記反時計回りとは、
図9、10のように左右方向の右方側から見た状態を基準にしている。
インナーボタン30にボタンカバー40が取り付けられた状態で、ボタンカバー40の爪部42aは、前後方向、左右方向、及び上下方向への移動が抑制されて、インナーボタン30の溝部32cに係合した状態となる。ボタンカバー40の爪部42aは、インナーボタン30の溝部32cに当接した後、ボタンカバー40の回動後に溝部32cに係合するため、当接係合部と呼ぶものとする。また、ボタンカバー40の下面カバー部43の貫通孔43bは、ボタンカバー40を回動させることによってインナーボタン30の底壁33の凸部33bに係合するため、回動係合部と呼ぶものとする。
【0060】
図11、12に示すように、ボタンカバー40は、インナーボタン30に対して、左右方向、前後方向、及び上下方向への移動が規制されるため、インナーボタン30に対して安定した状態で取り付けられる。これにより、ボタンカバー40のがたつきが抑制される。
【0061】
以下、ボタン20の操作機構について説明する。
<ボタン20の操作機構>
図5は、ボタン20を押圧操作する前のボタン20の断面図を示し、
図6は、ボタン20を押圧操作している状態のボタン20の断面図を示している。
【0062】
図5に示すように、ボタン20を押圧操作する前の状態において、ボタン20の凸部31a(押し込み部)は、操作子23の前方側で、操作子23の上下方向の中央部よりも下方側に位置する。
【0063】
図6に示すように、ボタン20を押圧操作すると、ボタン20は回動軸部32aを中心に反時計回りに回動しながら後方側へ移動する。すると、凸部31aが操作子23に当接して、操作子23を後方へ押し込む。操作子23を押し込むことによって、弁ユニット21が有する弁体を操作することができる。
【0064】
インナーボタン30の本体部31が、第1肉抜き部51、第2肉抜き部52、第3肉抜き部53を有することにより、ボタン20を押圧操作した際に、本体部31が水栓本体11に干渉することが抑制される。同様に、インナーボタン30の底壁33の切欠き33aや、ボタンカバー40の下面カバー部43の切欠き43aによっても、インナーボタン30やボタンカバー40が水栓本体11に干渉することが抑制される。
【0065】
図6に示すように、インナーボタン30の本体部31等が干渉する虞がある水栓本体11としては、弁ユニット21を取り付けるための開口部11aの周辺や、開口部11aに取り付けられる固定ナット22が挙げられる。
【0066】
<作用及び効果>
本実施形態の作用について説明する。
図9に示すように、インナーボタン30にボタンカバー40を取り付ける際は、インナーボタン30の天壁32の溝部32c(第1被係合部)に、ボタンカバー40の上面カバー部42の爪部42a(当接係合部)を挿入する。ボタンカバー40の爪部42aがインナーボタン30の溝部32cに当接した状態を目視で確認することができるため、ボタンカバー40の位置合わせが容易になる。
【0067】
図10に示すように、さらに、爪部42aが溝部32cに当接した状態で爪部42aを中心にボタンカバー40を反時計回りに回動させる。そして、ボタンカバー40の下面カバー部43の貫通孔43b(回動係合部)をインナーボタン30の底壁33の凸部33b(第2被係合部)に係合させる。これらの簡単な動作によって、インナーボタン30にボタンカバー40を取り付けることができる。
【0068】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ボタンカバー40は、インナーボタン30の天壁32の溝部32c(第1被係合部)に係合する爪部42a(当接係合部)を有する。また、爪部42aが溝部32cに当接した状態で爪部42aを中心にボタンカバー40を回動させることによってインナーボタン30の底壁33の凸部33b(第2被係合部)に係合する貫通孔43b(回動係合部)を有する。
【0069】
ボタンカバー40の爪部42aがインナーボタン30の溝部32cに当接した状態で爪部42aを中心にボタンカバー40を回動させるという簡単な動作によって下面カバー部43の貫通孔43bをインナーボタン30の凸部33bに係合させることができる。したがって、インナーボタン30にボタンカバー40を取り付ける作業を簡単に行うことができる。
【0070】
(2)ボタンカバー40の爪部42aをインナーボタン30の溝部32cに当接させることによって、前後方向への爪部42aの移動を抑制しながら、安定した状態でボタンカバー40を回動させることができる。
【0071】
(3)ボタンカバー40の爪部42aがインナーボタン30の溝部32cに当接した状態を目視で確認しながらボタンカバー40を取り付けることができる。そのため、ボタンカバー40のインナーボタン30に対する位置合わせが容易になる。
【0072】
(4)インナーボタン30は、ボタンカバー40の回動軸方向に沿うボタンカバー40の移動を規制する一対の仕切り壁32d(規制部)を有する。したがって、ボタンカバー40の回動軸方向に沿うボタンカバー40の位置ずれを抑制することができる。
【0073】
(5)インナーボタン30は、ボタンカバー40の回動軸方向に沿うボタンカバー40の両外側に一対の突出壁35、36、37(規制部)を有する。したがって、ボタンカバー40の回動軸方向に沿うボタンカバー40の位置ずれを抑制することができる。また、一対の突出壁35、36、37によって、ボタンカバー40とボタンカバー40の左右方向の外側に位置する他の部材、例えば枠部材25の周壁25bとの干渉を抑制することができる。
【0074】
(6)ボタンカバー40は、インナーボタン30の上面を覆う上面カバー部42と、インナーボタン30の前面を覆う前面カバー部41と、インナーボタン30の下面を覆う下面カバー部43とを有する。上面カバー部42は、爪部42aを有しているとともに、下面カバー部43は、貫通孔43bを有している。
【0075】
回動中心となる上面カバー部42の爪部42aと、下面カバー部43の貫通孔43bとの離間距離が相対的に大きくなる。そのため、下面カバー部43の貫通孔43bをインナーボタン30の凸部33bに係合させる際にボタンカバー40が弾性変形しやすくなる。したがって、ボタンカバー40の貫通孔43bとインナーボタン30の底壁33の凸部33bとの係合状態を形成しやすくなる。また、上面カバー部42が爪部42aを有し、下面カバー部43が貫通孔43bを有することによって、正面からボタンカバー40を見た際に、爪部42aや貫通孔43bを見えにくくすることができる。そのため、ボタンカバー40の意匠性を向上させることができる。
【0076】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0077】
・本実施形態において、インナーボタン30の第2被係合部は、底壁33に設けられた凸部33bに限定されない。インナーボタン30の底壁33の凸部33bは省略されていてもよい。また、ボタンカバー40の下面カバー部43は、回動係合部としての貫通孔43bが省略されていてもよい。
【0078】
図13、14に示すように、例えば、ボタンカバー40の下面カバー部43に、厚さ方向に沿って上方に突出した凸部43cが設けられていてもよい。爪部42aを中心にボタンカバー40を回動させると、下面カバー部43の凸部43cが、インナーボタン30の底壁33における後方側の端部33cに係合するように構成されていてもよい。この態様では、インナーボタン30の底壁33における後方側の端部33cが、第2被係合部として機能する。また、下面カバー部43の凸部43cが、回動係合部として機能する。
【0079】
・インナーボタン30の第1被係合部は、溝部32cに限定されない。
図15、16に示すように、ボタンカバー40の上面カバー部42が、左右方向の中央部から後方に突出して延びるとともに、先端が後方斜め下に湾曲した爪部42bを有していてもよい。この爪部42bが、当接係合部として、インナーボタン30の天壁32の切欠き32eに係合するように構成されていてもよい。この態様では、インナーボタン30の天壁32の切欠き32eが、第1被係合部として機能する。
【0080】
・ボタンカバー40の当接係合部は、爪部42aに限定されない。また、インナーボタン30の第1被係合部は、溝部32cに限定されない。例えば、ボタンカバー40の当接係合部は、上面カバー部42に設けられた貫通孔であり、インナーボタン30の第1被係合部は、この貫通孔に係合する凸部であってもよい。すなわち、当接係合部と第1被係合部の凹凸による係合関係が、本実施形態と反対であってもよい。
【0081】
・インナーボタン30の天壁32における一対の溝部32cの内側に設けられた規制部としての仕切り壁32dは、省略されていてもよい。
・インナーボタン30の側壁34に設けられた規制部としての突出壁35、36、37は、省略されていてもよい。
【0082】
・本実施形態において、ボタン20は、回動軸部32aを中心に回動することによって押し込まれていたが、この態様に限定されない。ボタン20は、回動軸部32aを有さず、押圧方向に対して直線的に移動するように構成されていてもよい。
【0083】
・本実施形態において、水栓10は、
図1に示される向きに配置されていたが、水栓10の向きは限定されない。水栓10の向きが本実施形態と異なる態様であっても、
図1のように水栓10が配置されていると仮定して、上下方向、左右方向、及び前後方向を定義するものとする。
【符号の説明】
【0084】
20…ボタン、30…インナーボタン、32c…溝部(第1被係合部)、33b…凸部(回動係合部)、40…ボタンカバー、42a…爪部(当接係合部)、43b…貫通孔(第2被係合部)。